本記事では、埼玉県警察・警察官採用試験の面接対策で必要な、埼玉県警察の特徴・基礎データ・県内の治安情勢・重点方針・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
埼玉県警察の面接試験では、「なぜ埼玉県警察を志望したのか」「警察官としてどの分野で働きたいのか」「これまでの経験を警察の仕事でどう活かせるのか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。埼玉県の治安の現状と、県警察が毎年公表している重点施策を押さえておくことで、どこの県警察でも通じてしまう抽象的な答えを避け、埼玉の実情を踏まえた説明がしやすくなります。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と埼玉県警察の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|組織研究編
埼玉県警察の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは埼玉県警察という組織の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 埼玉県全域を管轄し、管轄人口は約729万人(令和7年国勢調査速報)。県土の面積は3,797.75km²で全国39位、限られた広さに人口が集まっている。
- 令和7年国勢調査の速報結果では、県人口の93.6%が市部に居住している。人口が増えたのは10市町、減ったのは53市町村で、県内でも地域による差が大きい。(出典:国勢調査速報結果|令和7年)
- 県庁所在地のさいたま市は政令指定都市で、本部組織にはさいたま市警察部が置かれている。県警察本部の所在地もさいたま市浦和区。
- 本部は、総務部・警務部・生活安全部・地域部・刑事部・交通部・警備部の7部のほか、警察学校とさいたま市警察部で構成される。
- 生活安全部には「サイバー局」が置かれている。被害防止と広報啓発を担うサイバー対策課と、捜査を担うサイバー捜査課の2課体制。(出典:生活安全部の組織|令和8年)
- 県土は西の山地と東の平地に分かれ、平地が総面積の約61%を占める。最高峰は秩父山地の三宝山(標高2,483m)で、市街地から山間部まで管轄が及ぶ。
- 東北自動車道・関越自動車道・常磐自動車道・東京外環自動車道が走り、圏央道の県内区間58.4km(入間市から幸手市まで)も全線が供用されている。1都6県と接する内陸県として、広域を移動する犯罪への対応が求められる。
- 県内総生産は令和4年度で24兆6,656億円と全国5位を20年連続で維持し、製造業の事業所数も令和6年で全国4位。人と物と車の動きが多い地域である。(出典:産業と雇用のすがた|令和7年度版)
埼玉県警察の基礎データ
面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「埼玉県警察の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、管轄人口、管轄区域、本部の組織、犯罪情勢など、組織の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄区域 | 埼玉県全域 |
| 管轄人口 | 約729万人(7,287,169人・令和7年国勢調査速報) |
| 管轄面積 | 3,797.75km²(全国39位) |
| 本部所在地 | さいたま市浦和区 |
| 本部の組織 | 総務部・警務部・生活安全部・地域部・刑事部・交通部・警備部の7部、警察学校、さいたま市警察部 |
| 世帯数 | 3,285,878世帯(令和7年国勢調査速報・前回調査比3.9%増) |
| 刑法犯認知件数 | 53,471件(令和7年確定値・前年比3.5%増) |
| 刑法犯検挙率 | 32.1%(令和7年) |
管轄人口・世帯数は令和7年国勢調査の速報結果(令和8年5月公表)、管轄面積と全国順位は埼玉県統計年鑑の地勢、本部の組織は埼玉県警察の公表情報、刑法犯認知件数(警察が発生を把握した犯罪の件数)と検挙率は埼玉県警察が公表する犯罪統計(令和7年確定値)にもとづく数値です。警察署・交番の設置数や職員数は、最新の公表資料でご確認ください。
数字から考えられる治安課題
埼玉県警察の規模をつかむときに外せないのが、人口と県土の関係です。面積は全国39位にとどまるのに約729万人を抱え、しかも市部に住む人が県人口の93.6%を占めます。
住宅と商業地が連なる市街地が広く分布し、そこへ高速道路網が縦横に通っているのが埼玉の地理的な条件です。「密集した市街地と広域交通網の組み合わせ」という理解を持っておくと、このあと見る犯罪の内訳が腑に落ちます。
一方で、人口は令和7年の国勢調査速報で7,287,169人となり、前回調査から57,596人(0.8%)減って、大正9年の調査開始以来はじめて減少に転じました。人が増え続ける前提で語られてきた県が、局面を変えつつあるということです。
たとえば面接では、埼玉県の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。
埼玉県の治安情勢
刑法犯の認知状況と検挙率
令和7年(確定値)の埼玉県内の刑法犯認知件数は53,471件で、前年比3.5%増となりました。検挙率は32.1%です。
「治安は年々良くなっている」という一般論は、今の埼玉には当てはまりません。認知件数が増える局面では捜査の負担も重くなるため、検挙を追い付かせること自体が課題になります。
面接で治安を語るときは、検挙(起きた犯罪への対応)と抑止(犯罪を起こさせない取組)の両輪で話せると、仕事理解の深さが伝わります。
罪種別に見た埼玉の特徴
刑法犯の内訳を見ると、埼玉の地理的な条件と重なる傾向が浮かびます。
| 罪種 | 認知件数(令和7年) |
|---|---|
| 刑法犯総数 | 53,471件(前年比3.5%増) |
| 侵入盗 | 4,423件 |
| 自動車盗 | 756件 |
| 強盗 | 135件 |
| 殺人 | 82件 |
| ひったくり | 49件 |
埼玉県警察が公表する犯罪統計(令和7年確定値)にもとづく数値です。
目を引くのは、住宅などに侵入する侵入盗が4,423件を数え、自動車盗も756件にのぼることです。密集した住宅地が県内に広く分布し、しかも高速道路で東京都や北関東と直結しているという条件を重ねると、被害品や車両が短時間で県外へ運び出されやすい地域だという見方もできます。
埼玉県警察は、住宅街で起きる身近な犯罪と、県境をまたいで動く犯罪の両方に向き合う立場にあります。
特殊詐欺への対応
埼玉県警察は、令和8年の重点施策の2番目に「特殊詐欺対策をはじめとした犯罪対策の推進」を掲げています。具体的な取組の一つが特殊詐欺予防オートコールセンター事業で、民間に委託した自動音声の架電によって県民へ注意喚起を行うものです(令和7年7月から令和8年6月までの運用)。
人海戦術だけに頼らず、外部の力を使って注意の呼びかけを広く届けようとする発想がここに表れています。(参考:特殊詐欺予防オートコールセンター事業|令和8年)
また、県には「埼玉県防犯のまちづくり推進条例」(平成16年条例第36号)があり、県民や事業者と力を合わせて犯罪を防ぐ枠組みが以前から用意されています。警察単独ではなく地域ぐるみで守るという考え方は、志望動機を組み立てるうえでも押さえておきたい前提です。
交通安全と自転車の安全利用
交通事故防止対策の推進も、令和8年の重点施策に並んでいます。なかでも埼玉県警察が力を入れているのが自転車の乗車用ヘルメットの着用促進で、「かぶる・ひろがる・命を守る みんなでカチッと!!プロジェクト」として、ヘルメット着用を統一行動に掲げる団体を募る形で県内へ広げようとしています。(参考:自転車ヘルメット着用促進プロジェクト|令和8年)
背景には全国の統計があります。警察庁の公表によると、令和3年から令和7年までの5年間で、自転車乗用中に亡くなった人の約5割が頭部に致命傷を負っていたとされ、ヘルメット非着用時の致死率は着用時の約1.7倍にのぼります。
着用が努力義務にとどまるなかで、いかに行動を変えてもらうかが問われている分野です。(出典:自転車乗用中の頭部保護|令和3〜7年)
この分野は、面接だけの話題ではありません。令和8年度のⅠ類の論文試験で公表された例題は、まさに自転車ヘルメットの普及と自転車運転時の事故防止をテーマにしたものでした。
組織研究がそのまま論文の材料になるのが、埼玉県警察の試験の特徴です。
埼玉県の主な治安課題
ここまでの数字と取組を踏まえると、埼玉県警察が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「埼玉県の治安上の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
体感治安の回復と身近な犯罪の抑止
刑法犯認知件数が令和7年に53,471件(前年比3.5%増)へ増えたことは、統計上の変化にとどまりません。自宅の近くで空き巣や車上狙いが起きたという実感は、数字よりも速く「この街は大丈夫か」という不安に変わります。
検挙率が32.1%という水準にあることも、被害に遭った人の納得感を考えると軽い話ではありません。起きた事件を確実に検挙することと、街頭で警察官の姿が見える安心感をつくることの両方が、いま求められています。
匿名・流動型犯罪グループと実行役の募集
令和8年の重点施策には「暴力団や匿名・流動型犯罪グループ等の犯罪組織の壊滅」が入っています。近年問題になっているのは、SNSや掲示板で仕事の中身を伏せたまま高額報酬をちらつかせて実行役を募り、応募した人が強盗や詐欺に加担してしまう手口です。
埼玉県警察も令和7年度のⅠ類の論文試験の公表例題で、この問題の背景と対策を受験者に問うています。指示役が匿名の陰に隠れ、末端だけが短期間で入れ替わる構造のため、実行役を捕まえるだけでは被害が止まりません。
組織の実態解明と資金源を断つ取組に加えて、募集に応じてしまう若者を出さないための働きかけまでが、ひと続きの課題になっています。
サイバー空間の脅威への対処
「サイバー空間の脅威への的確な対処」も重点施策の一つです。埼玉県警察が生活安全部にサイバー局を置き、被害防止を担う課と捜査を担う課を分けているのは、この領域に人と体制を割く必要があるという判断の表れといえます。
詐欺も投資勧誘も、入口がインターネットであることが当たり前になり、被害に気づいた時点では相手をたどる手がかりが乏しいことも珍しくありません。令和6年度のⅠ類の論文試験の公表例題でもサイバー犯罪が取り上げられており、デジタル分野の知識や関心がある人にとっては、志望動機と結び付けやすいテーマです。
交通事故の防止と自転車利用者の安全
埼玉県は、高速道路が何本も県内を貫いて交通量が多い一方、通勤や通学で自転車を使う人も多い県です。自転車のヘルメット着用は努力義務とされたものの、着用が広がりきっていない現状のなかで、県警察は団体を巻き込む形で着用を根づかせようとしています。
取締りだけでは変わらない領域であり、教育や広報を通じてどう行動を変えてもらうかが問われます。
高齢化の進行と大規模災害への備え
埼玉県の高齢化率は令和2年の27.0%から令和7年には27.8%へ上がり、令和22年(2040年)には33.3%に達する見通しです。県の計画に「2040年には県民の3人に1人が高齢者」という一節が置かれているのも、この推計を踏まえてのことです。
詐欺の被害者としても、交通事故の当事者としても、高齢者を守る取組の重みは増していきます。(出典:高齢者を取り巻く状況|令和7年)
緊急事態への備えも重点施策に位置づけられています。県の地震被害想定調査では、関東平野北西縁断層帯地震で建物全壊(揺れ)53,013棟、死者3,599人、避難所避難者144,968人と、5つの想定地震のうち最大の被害が見込まれています。
マグニチュード7.3の東京湾北部地震では死者585人が想定され、被害は県の南東部に偏ります。内陸の県であっても、備えるべき規模は決して小さくありません。(出典:埼玉県地震被害想定調査|平成24〜25年度)
重点方針|令和8年基本姿勢・重点施策
埼玉県警察は、毎年の警察活動の方向性を「基本姿勢・重点施策」という名称で公表しています。他県で「運営方針」「運営重点」と呼ばれているものにあたります。
令和8年の基本姿勢は「県民の安全・安心の確保」で、これに「県民の期待と信頼に応える力強い警察活動の推進」という一文が添えられました。(出典:基本姿勢・重点施策|令和8年)
方針の読み方
埼玉県警察の公表は、基本姿勢と重点施策8項目という簡潔な形にまとめられており、各施策の推進事項や数値目標までは示されていません。つまり、項目名そのものが方針の全体像だということです。
ここは受験生にとって有利にも不利にもなります。読み込むべき分量は少ない一方で、中身は自分で調べて埋めるしかないからです。
逆に言えば、項目名の先を自分で調べてきた受験者は、それだけで違いが出ます。
8つの重点施策
令和8年の重点施策は次の8項目です。あわせて、それぞれが指す内容を受験生向けに当研究会の言葉でかみ砕きました。
| 重点施策(公式の項目名) | 受験生向けの解説 |
|---|---|
| ① 人身安全関連事案への的確な対処 | ストーカー・DV・児童虐待など、命や身体に危害が及ぶおそれのある事案に、本部と警察署が連携して素早く対応する |
| ② 特殊詐欺対策をはじめとした犯罪対策の推進 | 高齢者を狙う特殊詐欺の被害防止を軸に、注意喚起や水際対策で身近な犯罪を減らしていく |
| ③ 交通事故防止対策の推進 | 事故を防ぐための取締りと交通安全教育、自転車利用者へのヘルメット着用の働きかけ |
| ④ サイバー空間の脅威への的確な対処 | インターネットを悪用した犯罪の捜査力を高め、被害に遭わせないための広報啓発も進める |
| ⑤ 凶悪・重要事犯の迅速な検挙 | 殺人や強盗など県民の不安に直結する事件について、初動捜査と科学捜査で早期に犯人を検挙する |
| ⑥ 暴力団や匿名・流動型犯罪グループ等の犯罪組織の壊滅 | 犯罪組織の実態解明と資金源を断つ取組、実行役の募集に応じさせないための対策 |
| ⑦ 迅速・的確な初動警察活動の推進 | 110番通報から現場到着、初動対応までの速さと確かさを組織として高める |
| ⑧ テロ・災害等緊急事態への的確な対処 | テロの未然防止と、大規模地震などの緊急事態に備えた装備・訓練の充実 |
面接では、自分が取り組みたい仕事がこの8つのどれに当たるのかを一言添えられるだけで、組織の方向性を踏まえた志望だと伝わります。
POINT|語れるのは一つか二つで十分
8項目をそらで言えることに、面接での価値はほとんどありません。関心のある分野を1〜2つ選び、県内でどんな数字が動いているのかを調べ、「その施策の下で自分は何をしたいのか」まで言葉にしておきましょう。そこまで仕上げてはじめて、組織研究が面接での強みになります。
悪い例「県民の安全を守る警察官になりたいと思っています」
改善例「まずは交番の勤務から、地域の方の顔と暮らしを覚えていきたいです。その上で、埼玉では空き巣などの侵入盗が年間で4千件を超えていると聞きましたので、住宅街の見回りや戸締まりの呼びかけを重ねて、被害を一件でも減らしていきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、大事なところを自分の口で語れる状態に仕上げておきましょう。
- 警察官採用試験の受験案内(試験の種目・受験資格・申込方法)
- 採用案内・警察官募集ページ(仕事の内容と職員の声)
- 令和8年基本姿勢・重点施策(基本姿勢と重点施策8項目)
- 犯罪統計・交通事故統計のページ(数字は毎年更新されるため最新値を確認)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、埼玉県警察専用の面接想定問答集をご用意しています。埼玉県警察の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
埼玉県警察の面接の概要
ここからは、埼玉県警察の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
埼玉県警察の面接の流れ
埼玉県警察の警察官(巡査)採用試験は、第1次試験と第2次試験の2段階です。令和8年度からはⅠ類・Ⅱ類の第1次試験が「教養試験」と「基礎能力検査(SPI)」の選択制になり、民間企業等での職務経験がある人を対象とする社会人経験者Ⅰ類・Ⅱ類も新設されました。
種目と配点の全体像は次の表のとおりです。(出典:警察官採用試験受験案内|令和8年度)
| 項目 | 内容(令和8年度・Ⅰ類/Ⅱ類) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験 → 第2次試験の2段階 |
| 第1次試験 | 教養試験(80分・100点)又は基礎能力検査(SPI・70分・100点)の選択制、論文試験(Ⅰ類)/作文試験(Ⅱ類)(各60分・700〜900字・100点)、適性検査 |
| 論(作)文の扱い | 第1次試験で実施し、評価は第2次試験で行う(社会人経験者Ⅰ類・Ⅱ類を除く) |
| 第2次試験 | 身体検査、人物試験、体力検査 |
| 面接の種類 | 個別面接による人物試験①(300点)。「警察官として必要な表現力、信頼性、積極性などについて、個別面接による試験を行います」と受験案内に明記 |
| 配点 | 人物試験①300点、身体検査・体力検査200点、教養試験又はSPI100点、論(作)文試験100点(教養・SPI・論作文は標準点を使用) |
| 社会人経験者区分 | 人物試験①に加えて人物試験②(100点)を実施。社会人として培った経験やスキル等の自己アピールを行う |
| 合否の決定 | 第1次試験と第2次試験の総合得点で最終合格者を決定。一定の基準に達しない種目があると、他の種目の成績にかかわらず不合格 |
| 申込方法 | 電子申請(埼玉県警察電子申請・届出サービス)。申込時の顔写真データは人物試験まで使用される |
注目してほしい点は2つあります。1つ目は配点です。
個別面接である人物試験①の300点は、単独の種目としては最大で、教養試験(またはSPI)と論(作)文試験を合わせた200点を上回ります。人物をどう見せるかが、最も大きく点に跳ね返る設計だということです。
2つ目は日程の構造です。論(作)文試験は第1次試験で実施され、その評価は第2次試験で行われます。
適性検査も同じく第1次試験で行われ、第2次試験の人物試験の参考として使われます。つまり、第1次を通過した時点で残っているのは面接と身体・体力系の検査に絞られており、第1次の合格発表を見てから面接準備を始めるのでは間に合わないと考えてください。
加えて、一定の基準に達しない種目があると他の成績にかかわらず不合格になるため、面接や体力検査を筆記で埋め合わせるという発想も通用しません。適性検査の結果と面接での受け答えが食い違えば、そこが深掘りの入口にもなります。
作り込んだ人物像を演じるより、一貫した自分で臨むほうが確実です。
上記の試験構成は、埼玉県警察が公表する令和8年度の受験案内にもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。なお、集団討論や集団面接の実施については令和8年度の受験案内に記載がないため、この点も最新の受験案内でご確認ください。
埼玉県警察が求める人材
埼玉県警察は、「求める人物像」と題した独立の文章を公表していません。手がかりになるのは、受験案内が人物試験の内容として挙げる「警察官として必要な表現力、信頼性、積極性」という3つの言葉です。
公表されている評価の言葉がここにしかないということは、裏を返せば、この3語が採点基準にいちばん近い公式の表現だということです。
当研究会では、この3語を警察の仕事に引き付けて読み解いています。表現力は、雄弁さのことではなく、通報してきた人や被害に遭った人から必要なことを聞き取り、それを正確に伝え直せる力です。
信頼性は、県民が制服を見て安心できる根拠にあたるもので、これまで約束や役割をどう扱ってきたかに表れます。積極性は、危険や面倒が予想される場面でも自分から一歩を踏み出せるかどうかです。
令和8年の基本姿勢である「県民の安全・安心の確保」を担う人として、この3つが揃っているかを確かめられる場が面接だと考えると、準備の方向が定まります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。埼玉県警察の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 試験会場までは、どうやって来ましたか? | 緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく、なぜ警察官なのですか? | 他の進路と比べたうえでの職業理解の深さと、選択の理由の一貫性 |
| ③ 自己理解 | あなたの強み(自己PR)を教えてください | 強みを、警察の仕事の具体的な場面に置き換えて説明できているか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も力を入れて取り組んだことは何ですか? | 実績の大きさではなく、そのときとった行動の事実と、そこから学ぶ姿勢 |
| ⑤ 学業・経歴 | 今の学科(進路)を選んだ理由を教えてください | 進路の選び方に、その人らしい一貫性があるか |
| ⑥ 適性・将来 | 体力に自信はありますか? | 交替制の勤務や訓練に耐える体力の裏づけと、日頃の健康管理の習慣 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 警察官に最も必要な資質は何だと思いますか? | 職業観の成熟度と、県民を守る仕事への当事者意識 |
ただし、この7カテゴリーは埼玉県警察に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここで大きな差はつきにくいのです。
また、警察官の採用試験では、規律の下で行動することへの適応や、危険と隣り合わせの職務に就く覚悟を確かめる質問が向けられることがあります。そうした問いが用意されていると知っておくだけでも、当日あわてずに済みます。
合否を分けるのは埼玉県警察に固有の質問
どちらも、埼玉県の現状と県警察の重点施策を知らなければ、その場では答えようがない質問です。都内へ通勤通学する人が多く、進路の選択肢に警視庁が入ってくる受験者も少なくありません。
だからこそ、埼玉を選んだ理由をどこまで具体的に語れるかが、そのまま志望度の説明になります。こうした質問に答えるための「埼玉県警察の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい埼玉県警察の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 治安の現状 | 刑法犯認知件数は令和7年に53,471件で前年比3.5%増、検挙率は32.1%。侵入盗4,423件・自動車盗756件が目立つ | 増加へ転じた流れと、住宅街で起きる侵入盗の多さをセットで話すと、統計を眺めただけの答えとは違いが出る |
| 志望動機・やりたい仕事 | 令和8年の基本姿勢は「県民の安全・安心の確保」。人身安全、特殊詐欺、交通事故防止、サイバー、凶悪事犯、犯罪組織、初動、テロ・災害の8つの重点施策を掲げる | 埼玉県警察の公表は項目名までなので、その先を自分で調べたと分かる一言を添えられると、他の受験者と差がつく |
| 埼玉で働く規模感 | 管轄人口は約729万人。面積は全国39位ながら県人口の93.6%が市部に集中し、政令指定都市のさいたま市には市警察部が置かれている | 市街地と秩父の山間部では仕事の中身が変わる。どちらの現場も担う組織だと理解したうえで、自分がどこで経験を積みたいかを述べる |
| 自転車と交通安全 | 県警察は「かぶる・ひろがる・命を守る みんなでカチッと!!プロジェクト」でヘルメット着用を促進。全国では自転車乗用中の死者の約5割が頭部に致命傷を負っている(令和3〜7年) | 令和8年度のⅠ類の論文でも同じテーマが公表例題になった。通学で自転車を使ってきた立場から、着用が広がりにくい理由まで語れると厚みが出る |
| 災害への備え | 関東平野北西縁断層帯地震について、県は死者3,599人・建物全壊(揺れ)53,013棟・避難所避難者144,968人という被害を想定している | 津波の想定がない分だけ地震の被害が軽く見られがちな点を押さえておく。数字を挙げたうえで、避難誘導や救助の場面で自分に何ができるかまで述べる |
使い方のコツは、5つすべてを覚えることではありません。志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、事実から自分の問題意識へ、そこから警察官として何をしたいかへと、ひと続きにつながる話に組み立てておくことです。
想定される評価の観点
面接は、受験案内が挙げる「表現力・信頼性・積極性」に照らして、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 表現力 | 聞かれたことに対して、事実と自分の考えを整理して届けられるか | 埼玉県警察は論(作)文も700字から900字で書かせ、第2次試験で評価する。書く練習と話す練習を切り離さず、同じ題材で両方を仕上げる |
| 信頼性 | 任された役割や交わした約束を、見ている人がいない場面でも守り通してきたか | 続けてきたことを一つ選び、投げ出しそうになった場面と、そこで踏みとどまった理由まで用意しておく |
| 積極性 | 指示を待つのではなく、自分の判断で先に動いた場面があるか | 部活動やアルバイトで自分から言い出して始めたことを挙げ、周りをどう巻き込んだかまで話せるようにする |
評価の観点の3項目は、令和8年度受験案内が人物試験の内容として挙げる「表現力・信頼性・積極性」を、当研究会が面接対策用に読み替えたものです。
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新の受験案内を読み、自分の受験区分と、第1次試験で教養試験と基礎能力検査(SPI)のどちらを選ぶかを決める。申込は電子申請なので、必要なデータの準備もあわせて確認する
- これまでの経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学校行事・学業から、そのとき何を考えて何をしたのかまで話せる出来事を一つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 組織研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個選んで、自分の言葉で説明できるようにしておく
- 固有質問の材料を対応表から集め、事実から問題意識、そしてやりたいことへとつながる話に編む。同じ材料で論(作)文の公表例題にも答えられるか試すと、準備が二重に効く
- 声に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。あわせて第2次試験の体力検査に備え、日々のトレーニングと生活リズムづくりを並行して進める
優先順位に注意
ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を警察の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で組織の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、埼玉県警察専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
埼玉県警察の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までを解説しているので、本番での受け答えを具体的にイメージできるようになります。人物試験①に300点が置かれた試験だからこそ、仕上げの精度がそのまま結果に効いてきます。
さいごに
埼玉県警察の採用試験は、個別面接である人物試験①に300点という単独では最大の配点が置かれ、第1次試験で書いた論(作)文も第2次試験で評価される仕組みです。筆記の点数だけで結果が決まる試験ではありません。
令和8年度からは第1次試験で教養試験と基礎能力検査のどちらかを選べるようになり、社会人としての職務経験がある人のための区分も加わりました。自分の経歴に合う入口を選んだうえで、人物試験にどれだけ力を注げるかで、最終の結果は大きく変わります。
約729万人が暮らす埼玉の街を、どんな警察官として守りたいのか。その答えを、統計や施策の名前ではなく自分の経験から語れる状態にして、当日の面接室に入ってください。