本記事では、警視庁・警察官採用試験の面接対策で必要な、警視庁の特徴基礎データ東京都の治安情勢重点方針面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

警視庁の面接試験では、「なぜ警視庁を志望したのか」「警察官としてどの分野で働きたいのか」「これまでの経験を警察の仕事でどう活かせるのか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。東京の治安がいまどう動いているのか、警視庁が令和8年に何を重点として掲げているのかをつかんでおけば、志望動機が「規模が大きいから」で止まらず、自分の関心と結び付いた説明ができるようになります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と警視庁の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|組織研究編

警視庁の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは警視庁という組織の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 東京都全域を管轄し、管轄人口は約1,427万人で全国最多。うち約7割にあたる994万人余りが23区に集まっている。(出典:東京都の人口(推計)|令和7年
  • 管轄区域は23区と26市5町8村。伊豆諸島や小笠原諸島といった島しょ部も受け持つため、都心の繁華街から船で向かう島の集落までが同じ組織の担当になる。(出典:東京の概要|令和8年
  • 都の面積は約2,194平方キロメートルで、全国で3番目に小さい。狭い土地に全国最多の人口が積み上がっているという条件が、東京の警察活動の前提になっている。
  • 本部の組織は、総務部・警務部・生活安全部・地域部・刑事部・交通部・警備部に公安部を加えた8部と警察学校。本部のもとには、地域を受け持つ方面本部と警察署が置かれる。
  • 部の枠を越えた組織として、匿名・流動型犯罪グループ対策本部とサイバーセキュリティ対策本部が置かれている。後者は2016年4月に設置された、サイバーセキュリティ対策の司令塔である。
  • 中長期の指針として「警視庁組織運営ビジョン」を掲げ、特殊詐欺連合捜査班(TAIT)、匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な取締り体制、サイバー空間への犯罪の広がりとサイバー人材の育成、首都直下型地震や降灰・風水害への対処を明記している。(出典:警視庁組織運営ビジョン|令和8年
  • 令和7年(確定値)の刑法犯認知件数は99,349件で、前年比4.9%増。都道府県別に見ても最も多い件数を受け持っている。
  • 本部の所在地は千代田区霞が関。全国47の警察本部のうち、都道府県名を冠さない名称を用いているのは警視庁だけである。

警視庁の基礎データ

面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「警視庁の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、管轄人口、管轄区域、本部の組織、犯罪情勢など、組織の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。

項目内容
管轄区域東京都全域(23区・26市5町8村。伊豆諸島・小笠原諸島などの島しょ部を含む)
管轄人口約1,427万人(14,273,066人・令和7年10月1日現在推計)で全国最多
人口の内訳区部9,947,644人・市部4,249,936人・郡部53,258人・島部22,228人
世帯数7,664,866世帯(令和7年10月1日現在推計)
管轄面積約2,194平方キロメートル(全国で3番目に小さい)
本部所在地千代田区霞が関
本部の組織総務部・警務部・生活安全部・地域部・刑事部・交通部・警備部・公安部の8部、警察学校、方面本部、警察署
刑法犯認知件数99,349件(令和7年確定値・前年比4.9%増)
刑法犯検挙率35.3%(令和7年)

管轄人口・人口の内訳・世帯数は東京都の推計人口(令和7年10月1日現在)、管轄区域と面積は東京都観光公式サイトの「東京の概要」、本部の組織は警視庁の公表情報、刑法犯認知件数(警察が発生を把握した犯罪の件数)と検挙率は警視庁が公表する犯罪統計(令和7年確定値)にもとづく数値です。警察署・交番の設置数や職員数は、最新の公表資料でご確認ください。

数字から考えられる治安課題

警視庁のスケールをつかむ手がかりになるのは、面積と人口の落差です。東京都の面積は約2,194平方キロメートルで全国3番目の小ささですが、そこに全国最多の約1,427万人が暮らしています。

しかもその約7割が23区に偏っており、残りが多摩地域と島しょ部に広がっています。つまり同じ警視庁の中に、駅前の人波をさばく仕事と、船で渡る島の駐在所の仕事が同時に存在するということです。

そこへ令和7年の刑法犯認知件数99,349件(前年比4.9%増)が重なります。人口が多ければ事件も増えるのは道理ですが、いま起きているのはそれだけではありません

母数の大きさと増加局面が同時に来ているのが、東京の現状です。数字は単独で覚えるより、この組み合わせで理解しておきましょう。

たとえば面接では、東京の治安の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。

「東京は全国でいちばん人口が多くて、約1,400万人が暮らしていると聞きました。刑法犯の認知件数も昨年は10万件近くまで増えていて、前の年より5%ほど多いそうです。人が多い分だけ件数も多くなるのだと思いますけれども、被害に遭った方にとっては件数ではなく自分のその一件がすべてだと思いますので、一件ずつに丁寧に向き合える警察官になりたいと考えています」

東京都の治安情勢

刑法犯の認知状況と検挙率

令和7年(確定値)の都内の刑法犯認知件数は99,349件で、前年比4.9%増となりました。検挙率は35.3%です。

10万件に迫る数を35.3%の検挙率で追いかけている、というのが数字の上での構図になります。認知件数が増える局面では捜査の負担も重くなるため、検挙を追い付かせること自体が課題になります

面接で治安を語るときは、起きた事件を解決する検挙の話と、そもそも起こさせない抑止の話を行き来できると、仕事の全体像をつかんでいると伝わります。

罪種別に見た東京の特徴

刑法犯の内訳のうち、面接で話題にしやすい主な罪種を挙げると次のとおりです。

罪種認知件数(令和7年)
刑法犯総数99,349件(前年比4.9%増)
侵入盗2,698件
強盗258件
自動車盗164件
殺人110件
ひったくり84件

警視庁が公表する犯罪統計(令和7年確定値)にもとづく数値です。

表に挙げた罪種を合計しても、刑法犯全体から見ればごく一部です。認知件数の大半を占めるのは、暮らしの中で起きる身近な事件の積み重ねです。

そのうえで目を引くのは、強盗が258件を数えることです。件数の比率は小さくても、路上や店舗で人と直接向き合う形の犯罪であり、報道されれば「自分の街でも起こりうる」という不安が一気に広がります。

件数の多い罪種と、都民の不安に直結する罪種は必ずしも一致しません。この視点を持っておくと、治安を語る言葉が一段深くなります。

特殊詐欺の被害と高齢化

東京がとりわけ重い課題を抱えているのが特殊詐欺です。令和6年の特殊詐欺認知件数は、東京都が3,494件で都道府県別の全国最多でした。(出典:特殊詐欺の認知・検挙状況|令和6年

背景のひとつに高齢層の厚みがあります。令和7年9月時点の都内の高齢者人口は312万人(前年比3千人増)で過去最多となり、高齢化率は23.4%、うち75歳以上が184万6千人を占めます。

全国最多の人口を抱える都市であるということは、狙われる側の絶対数も全国最大だということです。(出典:東京都の高齢者人口(推計)|令和7年

警視庁は、この分野に専従の体制を置いています。組織運営ビジョンに明記された特殊詐欺連合捜査班(TAIT)がそれにあたり、令和8年の重点目標にも特殊詐欺およびSNS型投資・ロマンス詐欺への対策が掲げられています。

志望動機で詐欺対策に触れるなら、ここが出発点になります。

サイバー空間の脅威

詐欺も投資の勧誘も、入口がインターネットであることが当たり前になりました。相手の顔が見えないまま被害が広がるため、気づいたときには足取りをたどる手がかりが乏しい、ということも珍しくありません。

警視庁が2016年4月にサイバーセキュリティ対策本部を設置し、この分野の司令塔と位置づけているのは、脅威の重みの表れといえます。組織運営ビジョンにも、犯罪がサイバー空間へ広がっている現状と、サイバー人材の育成が書き込まれています。

デジタル分野の知識や関心がある人にとっては、志望動機と結び付けやすいテーマです。

東京都の主な治安課題

ここまでの数字と体制を踏まえると、警視庁がいま向き合っている課題が見えてきます。面接で「東京の治安上の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを整理しておきます。

増加局面にある刑法犯と体感治安

刑法犯認知件数が令和7年に99,349件(前年比4.9%増)へ増えたことは、統計上の変化にとどまりません。近所で事件があったという実感は、数字よりも速く「この街は大丈夫か」という不安に変わります。

検挙率が35.3%という水準にあることも、被害に遭った人の納得感を考えれば軽い話ではありません。令和8年の重点目標が「都民生活の安全と平穏の確保に向けた諸対策の推進」という1項目を立てている理由も、ここにあります。

起きた事件を確実に検挙することと、街頭で警察官の姿が見える安心感をつくることが、同時に求められているということです。

匿名・流動型犯罪グループと特殊詐欺

令和8年の重点目標は、9項目のうち冒頭の2つを匿名・流動型犯罪グループ対策と、特殊詐欺およびSNS型投資・ロマンス詐欺対策に充てています。本部組織にも匿名・流動型犯罪グループ対策本部が置かれています。

この種の犯罪では、SNSで集められた人が短期間だけ現場に送り込まれ、その人を検挙しても上の層には届かない、という構造が繰り返されます。だからこそ警視庁は、事件ごとの検挙とは別に、グループそのものの実態を解明する専門の体制を用意しているわけです。

募集に応じてしまう人を出さないための働きかけまで含めて、ひと続きの課題になっています。

サイバー分野の捜査力と人材の育成

サイバー空間の脅威への対策も重点目標のひとつです。ここで見落とされがちなのは、取締りの担い手を育てること自体が課題になっている点です。

組織運営ビジョンがサイバー人材の育成をわざわざ明記しているのは、技術の変化に追いつける人をどう確保し、どう育てるかが組織の将来を左右するからにほかなりません。理系の学びや情報系の資格を持つ人は、その経験がどの場面で役立つかを具体的に語れると強みになります。

首都直下地震と風水害への備え

令和4年5月に東京都が公表した被害想定は、冬の夕方に都心南部直下地震が起きたケースを試算しています。被害の規模は、死者約6,100人、負傷者約9万3,400人、建物被害約19万4,400棟。

避難者は約299万人にのぼり、帰宅困難者は約453万人と見込まれました。揺れそのものも、震度6強以上に達する区域が23区の約6割に及ぶとされています。(出典:首都直下地震等による東京の被害想定|令和4年

警察の仕事に引き寄せると、帰宅困難者453万人という数字は、駅前や幹線道路で人と車の流れをどう整えるかという課題に直結します。組織運営ビジョンでは、首都直下型地震に加えて降灰や風水害への対処も挙げられており、備えるべき災害は地震だけではありません。

東部の低地に広がるゼロメートル地帯を抱える都でもあり、水害時の避難誘導や交通の規制もまた警察が担う仕事です。

人が集まる街の安全と交通

令和5年に東京都を訪れた旅行者は約4億9,410万人。このうち外国からの旅行者が約1,954万人を占め、過去最多となりました。

ここに毎日の通勤通学の流れが重なるのが東京です。(出典:訪都旅行者数等の実態調査|令和5年

人が集まる場所の安全確保は、警察にとって具体的な仕事になります。令和8年の重点目標に「テロ等不法事案の防圧検挙」と「交通事故防止対策と安全で快適な交通社会の実現」が並んでいるのも、その表れです。

イベント会場や駅周辺で人の流れを整理すること、道路利用者の安全を確保することは、全国最多の人が行き交う都市だからこそ重い意味を持ちます

重点方針|令和8年警視庁重点目標

警視庁は、その年の警察活動の方向性を『令和8年警視庁重点目標』として公表しています。他の道府県警察で「運営方針」「運営重点」と呼ばれているものにあたります。(出典:令和8年警視庁重点目標|令和8年

基本方針は、職員一人ひとりが新しい時代の変化に適応し、国民から託されていることを自覚し、住民の思いや暮らしの実感に近づきながら職務にあたることで、首都東京の安全・安心を守るという趣旨のものです。誰のために働くのかを職員一人ひとりの行動にまで下ろして書いている点が、この方針の特徴です。

公表されているのは「項目名」まで

警視庁の重点目標は1ページのPDFで公表されており、書かれているのは基本方針と重点目標9項目だけです。各項目の取組内容や数値目標、設定の趣旨までは記載されていません。

公表資料を読むだけでは項目名しか手に入らないということです。

そこで差がつきます。たとえば「特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺対策の推進」という項目名の背後には、令和6年に都内で3,494件という都道府県別で最多の認知件数があり、組織運営ビジョンには特殊詐欺連合捜査班(TAIT)という専従体制の記載があります。

項目名から数字と体制まで手を伸ばして、はじめてその項目が中身を持ちます

9つの重点目標

令和8年の重点目標は次の9項目です。あわせて、それぞれが指す内容を受験生向けに当研究会の言葉でかみ砕きました。

重点目標(公式の項目名)受験生向けの解説
① 匿名・流動型犯罪グループ対策の推進構成員が固定せず、その都度SNSで人を募って犯行に及ぶグループについて、実態の解明と取締りを進める
② 特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺対策の推進都内で全国最多の認知件数が続く特殊詐欺と、投資や恋愛感情を装って金銭をだまし取る詐欺の被害を防ぐ
③ サイバー空間の脅威に対する諸対策の推進インターネットを悪用した犯罪の捜査力を高め、被害防止の広報とサイバー人材の育成も進める
④ テロ等不法事案の防圧検挙首都に集まる人や施設を狙う事案を未然に防ぎ、発生した場合は速やかに検挙する
⑤ 人身安全関連事案等への迅速かつ的確な対処ストーカーや配偶者からの暴力、虐待など、被害者の生命身体が危ぶまれる事案に時機を逃さず動く
⑥ 大規模災害への的確な備えと対応首都直下地震や風水害を想定した装備と訓練、発災時の救出救助や交通の確保
⑦ 交通事故防止対策と安全で快適な交通社会の実現取締りと交通安全教育で事故を減らし、人と車が行き交う都市の流れを安全に保つ
⑧ 都民生活の安全と平穏の確保に向けた諸対策の推進身近な犯罪の抑止と検挙、街頭での活動を通じて日常の安全を守る
⑨ 変化し続ける社会に即した警察組織の構築新しい技術や社会の変化に合わせて、組織の体制や仕事の進め方そのものを見直していく

並び順にも読みどころがあります。冒頭の2項目が匿名・流動型犯罪グループと特殊詐欺で占められていることは、警視庁がいまどこに人と時間を割いているかの表れと読めます。

志望動機を語るときは、自分の関心がどの項目に近いのかを一言添えるだけで、方針を踏まえた話になります。

POINT|9項目を暗記しても点にはならない

項目名を並べて言えることが組織研究の目的ではありません。関心のある分野を1〜2つ選び、東京でその分野の数字がどう動いているかを調べ、そのうえで自分がどの現場で何をしたいのかまで言葉にしておきましょう。

悪い例「都民の安全を守れる警察官になりたいと思っています」

改善例「まずは交番の勤務から、担当する地域の方の顔と暮らしを覚えていきたいです。その上で、東京は特殊詐欺の被害が3千件を超えて全国でいちばん多いと聞きましたので、高齢の方への声かけや金融機関との連携など、被害を止める場面に関わっていきたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、大事なところを自分の口で語れる状態に仕上げておきましょう。

  • 警察官採用試験の受験案内(試験の種目・受験資格・申込方法)
  • 採用サイトの職種紹介・職員インタビュー(仕事の中身と1日の流れ)
  • 令和8年警視庁重点目標(基本方針と重点目標9項目)
  • 警視庁組織運営ビジョン(中長期の方向性。重点目標より踏み込んだ記述がある)
  • 犯罪統計のページ(数字は毎年更新されるため最新値を確認)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、警視庁専用の面接想定問答集をご用意しています。警視庁の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

警視庁の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

警視庁の面接の概要

ここからは、警視庁の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

警視庁の面接の流れ

警視庁の警察官採用試験は、第1次試験と第2次試験の2段階です。種目の全体像は次の表のとおりです。(出典:警察官採用試験情報|令和8年度

項目内容(令和8年度・警察官)
試験の段階第1次試験 → 第2次試験の2段階
第1次試験筆記試験(教養試験またはSPI3から選択)、論(作)文試験、資格経歴等の評定、適性検査
論(作)文試験課題式の論(作)文試験(Ⅲ類の採用サイトには1題・1時間と記載。字数指定の記載はなし)
第2次試験面接試験、身体検査、体力検査、適性検査
身体検査の内容視力・色覚・聴力・運動機能の検査、医師による診察、身長体重測定、レントゲン、血液検査、尿検査
体力検査の種目腕立て伏せ、バーピーテスト、上体起こし、反復横跳び
合否の決定第1次及び第2次試験の結果を総合的に判定して決定

この表から読み取ってほしい点が2つあります。1つ目は、種目別の配点や人物試験の比重が公表されていないことです。

面接が何点分なのかを逆算する材料がない以上、「筆記で稼いで面接は無難に」といった配分の作戦は立てられません。第2次試験に置かれた面接、身体検査、体力検査、適性検査のいずれかで引っかかれば、そこで終わりになると考えて準備するのが妥当です。

2つ目は種目の構造です。筆記試験も論(作)文試験も第1次試験の段階で終わるため、第2次試験で自分の言葉を使って評価される場は面接だけになります。

同じ第2次試験でも、身体検査・体力検査・適性検査はその場の受け答えで挽回できる種目ではありません。合格発表を見てから面接の準備を始めるのでは間に合いません

もうひとつ見落とされやすいのが、第1次試験に資格経歴等の評定が含まれている点です。これまで取り組んできたことは、面接室に入る前からすでに評価の対象になっているということです。

上記の試験構成は、警視庁の採用サイト(令和8年度)にもとづくものです。面接(口述)試験の形式が個別面接か集団面接か、集団討論があるかどうか、面接時に提出する書類、試験別の配点については、採用サイトに記載がなく公表されていません。試験の構成・日程・配点等は年度や受験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の受験案内でご確認ください。

警視庁が求める人材

警視庁は、「求める人物像」と題した独立の文章を警察官の採用ページで公表していません。手がかりになるのは、『令和8年警視庁重点目標』の冒頭に置かれた基本方針です。

ここに書かれているのは、変化への適応、国民からの負託の自覚、住民の思いを知ろうとする姿勢という3つの要素で、そのうえで首都東京の安全・安心を守る、という順序になっています。

組織の方針でありながら、主語が「職員一人一人」で書かれているのが特徴です。つまりこの3つは、組織として掲げる理想であると同時に、職員一人ひとりに求められる姿勢でもあります。

面接で見られるものを推し量るうえで、いま公表されている中では最も採点基準に近い言葉だと考えてよいでしょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。警視庁の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク試験会場までは、どうやって来ましたか?緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます
② 動機・志望民間企業ではなく、なぜ警察官なのですか?他の進路と比べたうえでの職業理解の深さと、選択の理由の一貫性
③ 自己理解あなたの強み(自己PR)を教えてください強みを、警察の仕事の具体的な場面に置き換えて説明できているか
④ 経験・行動これまでで最も力を入れて取り組んだことは何ですか?実績の大きさではなく、そのときとった行動の事実と、そこから学ぶ姿勢
⑤ 学業・経歴いまの学科(進路)を選んだ理由を教えてください進路の選び方に、その人らしい一貫性があるか
⑥ 適性・将来体力に自信はありますか?交替制の勤務や訓練に耐える体力の裏づけと、日頃の健康管理の習慣
⑦ 公共性・社会性警察官に最も必要な資質は何だと思いますか?職業観の成熟度と、都民を守る仕事への当事者意識

ただし、この7カテゴリーは警視庁に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここで大きな差はつきにくいのです。

また、警察官の採用試験では、規律の下で行動することへの適応や、危険と隣り合わせの職務に就く覚悟を確かめる質問が向けられることがあります。そうした問いが用意されていると知っておくだけでも、当日あわてずに済みます。

合否を分けるのは「警視庁ならでは」の質問

「他の道府県警察もある中で、なぜ警視庁を選んだのですか?」
「東京の治安上の課題は何だと思いますか?」

どちらも、東京の現状と警視庁の重点目標を知らなければ、その場では答えようがない質問です。裏を返せば、材料を持っている受験者だけが違いを示せる質問でもあります。

こうした質問に答えるための「警視庁の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい警視庁の事実答え方のヒント
治安の現状刑法犯認知件数は令和7年に99,349件で前年比4.9%増、検挙率は35.3%。都道府県別で最も多い件数を受け持つ認知件数が10万件に迫る一方で、検挙率は35.3%にとどまります。この落差まで語れると、統計を眺めただけの答えとは差が出ます
志望動機・やりたい仕事『令和8年警視庁重点目標』は基本方針と9項目。冒頭2項目が匿名・流動型犯罪グループ対策と、特殊詐欺およびSNS型投資・ロマンス詐欺対策警視庁の公表は項目名までです。選んだ項目について、TAITのような具体的な体制まで調べたと分かる一言があると、志望の本気度が伝わります
東京で働く規模感管轄人口は約1,427万人で全国最多。23区が全体の約7割を占め、多摩地域と伊豆諸島・小笠原諸島の島しょ部までが管轄23区の交番と島しょの駐在所では、同じ警視庁でも仕事の景色が変わります。どちらも受け持つ組織だと理解したうえで、自分がどの現場から経験を積みたいかを述べましょう
特殊詐欺への対応令和6年の特殊詐欺認知件数は都内3,494件で都道府県別の全国最多。高齢者人口は312万人、高齢化率23.4%(令和7年9月時点)全国最多という事実に、身近な高齢者へ声をかけた経験や、自宅にかかってきた不審な電話の話を重ねると、机の上だけの知識ではないと伝わります
首都直下地震への備え都の被害想定は、冬の夕方の都心南部直下地震で死者を約6,100人、帰宅困難者を約453万人と見込む。23区の約6割が震度6強以上帰宅困難者の想定は約453万人。警察が担う交通整理や誘導の場面まで思い浮かべたうえで、自分に何ができるかまで踏み込みましょう

使い方のコツは、5つすべてを覚えることではありません。志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、事実から自分の問題意識へ、そこから警察官として何をしたいかへと、ひと続きにつながる話に組み立てておくことです。

想定される評価の観点

面接は、基本方針が掲げる3つの要素に照らして、これまでに実際にどう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
変化に適応する力環境ややり方が変わった場面で、自分から合わせて動けたか令和8年の重点目標は9番目に「変化し続ける社会に即した警察組織の構築」を置いています。前提が変わった経験を1つ選び、そのとき自分の何を変えたのかまで用意しましょう
負託を自覚する責任感任された役割や交わした約束を、人が見ていない場面でも守り通してきたか第1次試験には資格経歴等の評定があります。書類に書く経歴・資格と、面接で語る責任の話が同じ人物像に見えるよう、事前に並べて確かめておきましょう
住民の思いを知ろうとする姿勢相手の話を聞き取り、その内容に応じて自分のやり方を変えた場面があるか約1,427万人が暮らし、来街者も多い東京では、相手の事情がひとつずつ違います。話を聞いた結果、当初の判断を変えた経験まで話せると厚みが出ます

評価の観点の3項目は、『令和8年警視庁重点目標』の基本方針を当研究会が面接対策用に読み替えたものです。

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新の採用サイトと受験案内を読み、第1次試験の筆記を教養試験とSPI3のどちらで受けるかを決める。あわせて、資格経歴等の評定に書ける資格や経歴を洗い出しておく
  2. これまでの経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学校行事・学業から、そのとき何を考えて何をしたのかまで話せる出来事を一つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 組織研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、9つの重点目標のうち自分の関心に近いものを1つか2つ選んで、東京の数字とセットで説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、事実から問題意識へ、そしてやりたいことへとつながる話に編む
  6. 実際に口に出して通し練習をし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。あわせて第2次試験の体力検査に備え、腕立て伏せ・バーピーテスト・上体起こし・反復横跳びの4種目を日々のトレーニングに組み込む

優先順位に注意

ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を警察の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で組織の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、警視庁専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

警視庁の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までを解説しているので、本番での受け答えを具体的にイメージできるようになります。種目別の配点が公表されていない試験だからこそ、面接で語る中身の精度を上げておくことが効いてきます。

警視庁の想定問答集を見る

さいごに

警視庁の採用試験は、種目ごとの配点が公表されていません。面接が何点分なのかを逆算できない以上、第2次試験に残る面接・身体検査・体力検査のすべてを同じ熱量で仕上げておくのが確実です

論(作)文の課題も、自分の経験に触れたうえでそれを警察官としてどう活かすかを問う形が続いています。書くときに使う経験と、面接で語る経験は同じもので構いません。

むしろ同じであるほうが、一貫した人物として伝わります。約1,427万人が暮らす東京都を、島しょ部から多摩地域、都心の繁華街までひとつの組織で受け持つのが警視庁です。

その広い受け持ちのどこで、どんな警察官として働きたいのか。統計の数字や項目名ではなく、自分の経験から出てきた言葉で説明できる状態にして、当日の面接室に入ってください。