栃木県警察・警察官採用試験の面接対策に必要な材料を、このページ1本に集約しました。取り上げるのは、栃木県警察の特徴・基礎データ・県内の治安情勢・重点方針・面接の流れ・想定される質問・評価の観点の7項目です。
栃木県警察の面接試験では、「なぜ栃木県警察を志望したのか」「警察官として何に取り組みたいのか」「栃木県の治安の課題をどう考えるか」といった、組織と地域の両方を知らなければ答えられない質問が想定されます。栃木県の現状と県警察が掲げる方針を押さえておけば、どこの県警察にも当てはまる回答を避け、栃木ならではの事情を踏まえた説明ができるようになります。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と栃木県警察の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|組織研究編
栃木県警察の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは栃木県警察という組織の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 栃木県全域を管轄し、管轄人口は約186万人。令和8年6月1日現在の推計で1,857,921人が暮らしている。(出典:栃木県毎月人口推計月報|令和8年6月)
- 県土は6,408.09平方キロメートルで、関東地方では最大(全国20位)。管轄区域は14市11町で、村はない。(出典:栃木県の人口・面積|令和6年)
- 県庁所在地の宇都宮市には約51万人(令和6年時点)が暮らし、県人口のおよそ4分の1が集中している。
- その一方で、日光市は市域だけで1,449.83平方キロメートルと県面積の22.6%を占め、市としての面積は全国3位。人口が密集する市街地と広大な山間部が、同じ管轄区域の中に併存している。
- 本部は宇都宮市塙田に置かれ、警務部・生活安全部・地域部・刑事部・交通部・警備部のほか、サイバー対策センターと警察学校が設けられている。
- 採用でも、通常の区分とは別にサイバー犯罪捜査官の特別区分が案内されており、専門分野の人材を独自に集める姿勢がうかがえる。
- 県内総生産の39.6%を製造業が占め(令和3年度)、その比率は全国3位。いちごの生産量は半世紀以上にわたって日本一で、農業産出額も全国9位(令和4年度)と、ものづくりと農業の両方が地域経済を支えている。(出典:栃木県の財政状況(IR資料)|令和6年)
栃木県警察の基礎データ
面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「栃木県警察の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、管轄人口や県土の広さ、犯罪情勢など、組織の置かれた環境を説明できる項目を優先的に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄区域 | 栃木県全域(14市11町・村なし) |
| 管轄人口 | 約186万人(令和8年6月1日推計で1,857,921人) |
| 管轄面積 | 6,408.09平方キロメートル(全国20位・関東地方で最大) |
| 本部所在地 | 宇都宮市塙田 |
| 刑法犯認知件数 | 12,780件(令和7年・前年比5.1%増) |
| 刑法犯検挙率 | 31.2%(令和7年) |
| 主な罪種の認知件数 | 侵入盗1,887件・自動車盗291件・強盗15件・殺人12件(令和7年) |
管轄人口は栃木県毎月人口推計月報(令和8年6月1日現在)、面積と市町数は県公表資料(令和6年時点)、刑法犯認知件数(警察が発生を把握した犯罪の件数)・検挙率・罪種別の件数は令和7年の犯罪統計にもとづく数値です。警察署や交番の数、職員数は、本記事の作成時点で当研究会が公表資料を確認できなかったため掲載していません。
数字から考えられる治安課題
栃木県の刑法犯認知件数は、大都市を抱える都府県と比べれば多い部類ではありません。注目したいのは水準よりも変化の向きで、令和7年は前年から増加しています。
加えて検挙率が3割台にとどまっており、認知が増えるほど捜査の負担が積み上がる構図になっています。
数字を単体で覚えるのではなく、「件数は多くない、しかし増えていて、検挙は追いつききれていない」という組み合わせで理解しておきましょう。
たとえば面接では、栃木県の治安の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。
栃木県の治安情勢
刑法犯認知件数と検挙率
令和7年の刑法犯認知件数は12,780件で、前年から5.1%増加しました。全国的にも刑法犯は減少から増加へ転じており、栃木県も同じ流れの中にあります。
あわせて押さえたいのが検挙の状況で、同じ令和7年の検挙率は31.2%。認知された事件のうち、解決に至るのはおおむね3件に1件という水準です。
「治安は年々良くなっている」という説明は、今の栃木県には当てはまりません。
目立つのは侵入盗と自動車盗
罪種別に見ると、令和7年の侵入盗は1,887件で、刑法犯全体のおよそ15%を占めます。自動車盗も291件にのぼりました。
一方で強盗は15件、殺人は12件と、生命に直接関わる重要犯罪の認知件数は限られています。栃木県で数として目立つのは、住まいと車という生活の土台がねらわれる犯罪だと整理できます。
特殊詐欺とニセ警察詐欺
栃木県警察は「栃木県内の特殊詐欺被害状況」というページを設け、被害の状況を月ごとに公表しています。直近では、警察官をかたって現金やキャッシュカードをだまし取るニセ警察詐欺が被害額を押し上げている状況です。
数字は毎月動くため本記事では件数を挙げませんが、面接の直前に県警察のページで最新の公表値を確かめ、いま栃木でどの手口が増えているかを言える状態にしておいてください。(出典:栃木県内の特殊詐欺被害状況|令和8年)
県外から訪れる人の多さ
令和6年の観光客入込数は8,997.3万人(前年比107.3%)、宿泊数は延べ830.4万人にのぼり、外国人宿泊数は延べ27.9万人と過去最高を更新しました。市町別では宇都宮市が1,573.6万人で最多、日光市が1,019.2万人と続きます。
県内に暮らす約186万人だけでなく、その数十倍の来訪者の安全までが守備範囲に入るという点は、栃木の治安を語るときに見落とせない前提です。(出典:栃木県観光客入込数・宿泊数調査|令和6年)
栃木県の主な治安課題
ここまでの数字を踏まえると、栃木県警察が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「栃木県の治安上の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを用意しておきましょう。
増加に転じた刑法犯と、ねらわれる住まいと車
令和7年の刑法犯認知件数が前年比5.1%増となったことは、単なる統計の変化ではなく、県民の体感治安に直結します。自宅の近くで事件が起きたという実感は、統計の数字よりも速く広がるからです。
検挙率が31.2%である以上、認知の増加はそのまま未解決事件の積み上がりにつながりかねません。捜査に充てる力を厚くすることと、被害そのものを未然に減らすことを、同時に進める必要があります。
増えた中身を見ると、侵入盗1,887件、自動車盗291件という数字が、栃木県では住宅と車が繰り返しねらわれていることを示しています。侵入盗は、鍵のかけ忘れや空き家の増加といった生活側の事情と結びつきやすく、自動車盗も、車が生活の必需品である地域ほど被害の影響が大きくなります。
令和8年の重点目標では、重要窃盗犯の徹底検挙と、パトロールや初動対応を厚くする街頭活動の推進が別々の項目として掲げられており、検挙と抑止の両面から窃盗に向き合う構えが読み取れます。
特殊詐欺と、匿名・流動型の犯罪グループ
特殊詐欺は、県警察が毎月の被害状況を公表し続けるほど、腰を据えた対応が要る課題です。その背後にあるのが、SNSなどで実行役を募って犯行を繰り返す匿名・流動型犯罪グループの存在です。指示役は匿名の陰に隠れ、末端の実行役だけが短期間で入れ替わっていくため、実行役を検挙するだけでは被害が止まりません。
令和8年の重点目標に、実態解明と取締りに加えて犯罪収益への対策が並んでいるのは、この構造そのものに手を届かせるためです。
サイバー空間の脅威と、専門人材の確保
栃木県警察は本部にサイバー対策センターを置き、令和8年の重点目標でも、取締りと被害防止に加えて職員の技術力を高めることを柱に据えています。さらに採用の段階でも、サイバー犯罪捜査官の特別区分が案内されています。
ネット上の犯罪は、被害に気づいた時点で相手をたどる手がかりが乏しいことも多く、対処するには専門的な知識と、それを持つ人を育て続ける仕組みの両方が必要になります。情報系の学習経験や資格がある人にとっては、志望動機と結びつけやすい領域です。
交通死亡事故の抑止と、変わりつつある交通環境
栃木県は東北新幹線で東京から約50分の位置にあり、東北自動車道と北関東自動車道が県内で交差し、圏央道も利用できます。南北方向の幹線と東西方向の幹線が県内で重なる一方、県民の日常の移動は車が中心です。(参考:栃木県の財政状況(IR資料)|令和6年)
令和8年の重点目標では交通死亡事故抑止対策が独立した項目に据えられ、事故分析に基づく対策、悪質で危険な違反の取締り、自転車や小型モビリティへの対応、道路環境の整備が並びます。
加えて令和5年には芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)が開業し、宇都宮市街の移動手段そのものが変わりつつあります。車と軌道と自転車が交わる場所に新しい危険が生まれていないかを見極める仕事は、これから重みを増していきます。
災害への備えと、地域を守る担い手の減少
栃木県は、地震や風水害といった大規模な自然災害が比較的少ない土地とされ、地震との関わりが深い県北部の関谷断層についても、今後100年間の地震発生確率はほぼ0%と評価されています。
ただし、県の地域防災計画が想定する栃木県庁直下地震(マグニチュード7.3)では、冬の深夜に起きた場合で死者3,926人、建物全壊70,812棟、1週間後の避難者339,833人という被害が見込まれています。(出典:栃木県地震被害想定調査(概要版))
災害が少ないという実感そのものが、備えを後回しにさせるという難しさがあり、令和8年の重点目標にも、テロの未然防止とあわせて大規模災害に備えた諸対策が掲げられています。
そして、備える側の足元でも変化が進んでいます。栃木県の人口は平成17年の201万6,631人をピークに減少に転じました。
令和5年の出生数は9,958人と、はじめて1万人を下回り、同年の合計特殊出生率も1.19で過去最低となりました。(出典:栃木県人口未来会議資料|令和7年)
県は令和42年の人口を約128万人と見込んでおり、社会動態でも、20歳代前半の女性を中心に首都圏への転出超過が続いています。(出典:新とちぎ未来創造プラン|2026-2030)
守られる側の高齢化が進み、地域の見守りの担い手が減っていくという流れは、警察の仕事の前提そのものを変えていきます。自治会や事業者と手を組んで見守りの網をつなぎ直す工夫が、これまで以上に問われることになります。
重点方針|令和8年栃木県警察基本姿勢及び重点目標
栃木県警察は、職員が共通の認識のもとで業務を進めるための指針として、毎年「基本姿勢及び重点目標」を定めています。令和8年の基本姿勢は「誠実 仁愛 強靱」の3語で、そこに掲げられた目標は「安全で安心な“とちぎ”の実現」です。(出典:栃木県警察基本姿勢及び重点目標|令和8年)
3つの基本姿勢が示すもの
基本姿勢の3語は、それぞれ次の考え方を短く言い表したものです。当研究会の言葉に置き換えると、こう整理できます。
- 誠実
手続きの正しさと、相手への思いやり。そのどちらも欠かさないという構えです。厳しく取り締まる場面でも、相手に向ける姿勢は変えないという意味を含みます。 - 仁愛
県民と、栃木という郷土そのものへの慈しみを土台に据えて職務に当たるという意味です。日常ではあまり使われない言葉を、あえて基本姿勢に置いている点が特徴です。 - 強靱
折れない強さと、状況に合わせて動けるしなやかさ。その両方を組織として備えるという意味です。個人の頑張りに頼らず、仕組みで支える発想が読み取れます。
3語のうち、面接で使いやすいのは「仁愛」です。栃木で生まれ育った人であれば土地への愛着をそのまま語れますし、県外出身であっても、栃木のどこに魅力を感じてこの県を選んだのかという説明に直結します。
なぜ栃木県警察なのかという問いに対する足がかりが、方針の側から示されていると考えてよいでしょう。
8つの重点目標
基本姿勢に基づいて、令和8年は8つの重点目標が定められています。項目名とあわせて、それぞれが指す内容を受験生向けに当研究会の言葉でかみ砕きました。
| 重点目標(公式の項目名) | 受験生向けの解説 |
|---|---|
| ① 県民生活の安全を確保するための対策の推進 | ストーカーやDV、児童虐待など命に関わりかねない事案への早い対処、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の被害防止、生活環境を脅かす事犯や歓楽街の対策 |
| ② サイバー空間の脅威に対する対策の推進 | ネットを舞台にした犯罪の取締りと被害防止に加え、職員を育て技術支援を厚くして、組織としての対処能力を底上げする取組 |
| ③ 街頭活動等の一層の推進 | パトロールや初動の警察活動を厚くし、交番・駐在所を軸に地域へ密着した活動を積み重ねる取組 |
| ④ 重要犯罪等の徹底検挙 | 生命や身体に危害を加える犯罪と重要窃盗犯の検挙、社会の基盤を揺るがす知能犯罪への対応、捜査の基本の徹底と科学技術の活用 |
| ⑤ 組織犯罪総合対策の推進 | 匿名・流動型犯罪グループの実態解明、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の摘発、組織的な窃盗や暴力団、薬物・銃器、犯罪収益への対策 |
| ⑥ 交通死亡事故抑止対策の推進 | 事故分析に基づく安全対策、悪質で危険性の高い違反の取締り、自転車や小型モビリティへの対応、安全な交通環境の整備 |
| ⑦ 緊急事態や複雑化する脅威への対策の推進 | テロの未然防止と大規模災害への備え、多様化する治安上の課題への対応、警衛・警護の徹底 |
| ⑧ 県民の期待と信頼に応える活動の推進 | 意見や要望への対応と的確な情報発信、犯罪被害者等へのきめ細かな支援、警察組織全体を最適化していく取組 |
面接では、自分が取り組みたい仕事が8つのどれに当たるのかを一言添えられるだけで、県警察の方向性を踏まえた志望だと伝わります。
なお、この8項目は年度ごとに改められるため、本記事の内容は令和8年版として読んでください。受験する年の版は、県警察のページでご自身で当たっておくと確実です。
POINT|8つの項目名は覚えなくてよい
名称をそらんじることが組織研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つ選んだら、まず栃木で何が起きているのかを数字で確かめ、次にそれへ県警察がどう対処しようとしているのかを重点目標で確かめ、最後に自分はどの現場で何をしたいのかを言葉にする。この順序で調べていきましょう。
悪い例「栃木県の治安をよくしたいと思い、警察官を志望しました」
改善例「まずは交番の勤務から地道に力をつけたいです。その上で、栃木では住宅への侵入盗や車の盗難が多いと聞きましたので、地域の見回りや防犯の呼びかけを通じて、身近な被害を一件でも減らす仕事に関わっていきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、要点を自分の口で語れる状態に仕上げておきましょう。
- 栃木県人事委員会が公表する警察官採用試験の受験案内(試験種目・受験資格・申込方法)
- 栃木県警察の採用ページ(仕事の紹介・職員の声・説明会の案内)
- 令和8年栃木県警察基本姿勢及び重点目標(基本姿勢と8つの重点目標)
- 栃木県内の特殊詐欺被害状況のページ(月ごとに更新されるため、面接前の最新値を確認)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、栃木県警察専用の面接想定問答集をご用意しています。栃木県警察の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
栃木県警察の面接の概要
ここからは、栃木県警察の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
栃木県警察の面接の流れ
栃木県警察の警察官採用試験は、受験案内が栃木県人事委員会のサイトに掲載され、県警察の採用ページからはその案内やPDFへのリンクという形で公表されています。
つまり、試験の段階構成、面接の形式や回数、各種目の配点を確定できるのは、人事委員会が出すその年の受験案内です。ここでは、確認できた事実と、受験案内で必ず確かめてほしい項目を分けて整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 採用区分 | 「第1回」「第2回」に加え、サイバー犯罪捜査官の「特別区分」が案内されている |
| 受験案内の掲載先 | 栃木県人事委員会のサイト。県警察の採用ページには、案内とPDFへのリンクが置かれている |
| 論(作)文試験 | 作文1題・60分・800字程度(近年の出題実績) |
| 近年の出題例 | 令和7年度は、受験した区分により「将来の警察組織に導入したいことは何か」「警察官の魅力は何か」 |
| 試験の段階構成・面接の形式・配点 | 公表内容を最新の受験案内でご確認ください |
ここで注意したいのが区分名です。当研究会が収集してきた過去問データでは「警察官A」「警察官B」という区分名が使われてきましたが、近年の受験案内では「第1回」「第2回」という表記が用いられています。
両者の対応関係は公表資料で確認できていないため、申込みの際は受験案内に書かれた区分名をそのまま確認してください。
そして、配点が公表されていないことは、準備の方針としてはかえって単純です。どの種目で何点稼げるかを逆算できない以上、筆記の手応えで気を緩める余地がないからです。
段階構成や配点が公表されていない試験ほど、面接の準備を早く始めた人が有利になります。
上記のうち採用区分と受験案内の掲載先は、当研究会が令和7年度の公表状況を確認した時点の整理です。論(作)文試験の形式・時間・字数と出題例は、当研究会が収集した栃木県警察の過去問データにもとづきます。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
作文の出題テーマから読み取れること
栃木県警察の作文で問われてきたのは、「警察官の魅力は何か」「自分を成長させた出来事について」のように、受験者自身の経験と職業観を書かせる問いが中心です。
時事問題の知識そのものを問う出題は見当たらず、「将来の警察組織に導入したいことは何か」のように組織のあり方を考えさせるテーマも、突き詰めれば、どんな警察官になりたいかを自分の言葉で説明させる問いです。
つまり、作文の準備で掘り起こした経験は、そのまま面接で話す材料になります。作文で書いたことと、面接で話すことは地続きだと考えて、両方を一続きの準備として進めましょう。
栃木県警察が求める人材
栃木県警察の場合、人材観は組織全体の姿勢を示す言葉のなかに埋め込まれています。手がかりになるのは、基本姿勢に掲げられた「誠実」「仁愛」「強靱」の3語です。
手続きの正しさと相手への思いやりを両立させること、県民と郷土を慈しむこと、折れない強さと柔軟さの両方を備えること。いずれも、特別な経歴や派手な実績を求める言葉ではありません。
自己PRでは、決めたことを最後まで守り通した経験、身近な人や住んでいる地域に関心を向けてきた経験、思うようにいかない時期を工夫しながら越えてきた経験など、3語に重なる自分の行動を具体的な場面で示すことが軸になります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。栃木県警察の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 試験会場までは、どうやって来ましたか? | 緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく、なぜ警察官なのですか? | 他の進路と比べたうえでの職業理解の深さと、選択の理由の一貫性 |
| ③ 自己理解 | あなたの強み(自己PR)を教えてください | 自分の強みを、警察の仕事の場面と結びつけて説明できているか |
| ④ 経験・行動 | 学生時代に最も力を入れたことは何ですか? | 実績の大きさではなく、実際にとった行動の事実と、そこから学ぶ姿勢 |
| ⑤ 学業・経歴 | 専攻分野(学科・コース)を選んだ理由を教えてください | なぜその道を選んだのかを自分の言葉で話せるか。意思決定の一貫性 |
| ⑥ 適性・将来 | 体力に自信はありますか? | 交替制勤務や訓練に耐える体力の裏づけと、日頃の健康管理の習慣 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 警察官に最も必要な資質は何だと思いますか? | 職業観の成熟度と、県民を守る仕事への当事者意識 |
ただし、この7カテゴリーは栃木県警察に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者の多くが対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのが実情です。
なお、警察官の採用面接では、警察学校での集団生活への適応や、危険を伴う職務への覚悟を確かめる質問がされることがあります。そうした質問が存在すると知っておくだけでも、当日の落ち着きが変わります。
合否を分けるのは「栃木県警察ならでは」の質問
どちらも、栃木県の現状と県警察の方針を知らなければ、その場では答えようがない質問です。逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
こうした質問に答えるための「栃木県警察の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい栃木県警察の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 治安の現状 | 令和7年の刑法犯認知件数は12,780件で前年比5.1%増。検挙率は31.2% | 件数の多さではなく増加に向きが変わった点を挙げ、3割台の検挙率が現場にかける負荷まで触れると、統計を読めていることが伝わる |
| 身近な犯罪 | 令和7年の侵入盗は1,887件で刑法犯のおよそ15%を占め、自動車盗も291件 | 栃木でねらわれているのが住まいと車だと言い切り、鍵かけの呼びかけなど交番の仕事に引きつけると具体性が出る |
| 志望動機・やりたい仕事 | 令和8年の基本姿勢は「誠実 仁愛 強靱」で、8つの重点目標が掲げられている | やりたい仕事が8項目のどれに当たるかを一言添え、あわせて「仁愛」と自分の栃木への思いを重ねると、栃木県警察を選んだ理由まで一続きになる |
| 栃木で働く規模感 | 管轄人口は約186万人、県土は6,408.09平方キロメートルで関東最大。宇都宮市に県人口のおよそ4分の1が集中 | 都市部と山間部とで警察活動の中身が変わることを理解しておくと、配属先を限定しない志望であることを、根拠を添えて説明できる |
| サイバー分野への関心 | 本部にサイバー対策センターが置かれ、採用にもサイバー犯罪捜査官の特別区分がある | 情報系の学習や資格がある人は、専門区分が設けられている事実に触れたうえで、自分の知識をどの段階から役立てたいかを話す |
| 災害への備え | 栃木県庁直下地震(マグニチュード7.3)では、冬の深夜の想定で死者3,926人・建物全壊70,812棟が見込まれる一方、県は自然災害が比較的少ない土地と説明している | 「災害が少ない」という前提と想定被害の大きさの落差を指摘し、備えを続ける意味を自分の言葉で説明する |
使い方のコツは、6つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、挙げた事実からどんな問題意識を持ったのか、そこに警察官としてどう関わりたいのかまで、ひと息で話せる長さにまとめておくことです。
想定される評価の観点
面接は、前述の基本姿勢のような組織の価値観に照らして、「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 誠実=正しさと思いやりを両立できるか | 面倒な場面でも決められた手順や約束を省かなかった事実があるか | 誰も見ていない場面で決まりどおりにやり切った出来事を1つ選び、そのとき何を考えて判断したのかまで話せるようにしておく |
| 仁愛=県民と郷土への思いがあるか | 自分が暮らす地域や栃木という土地に、どんな関心を向けてきたか | 通学路や地元の行事、家族や近所の人との関わりなど、栃木と自分をつなぐ場面を具体的な地名を交えて語れるようにしておく |
| 強靱=折れない強さと柔軟さの両方があるか | 思うような結果が出ない時期に、心と体をどう保ち、やり方をどう変えたか | 部活動や受験勉強で取り組み方を組み替えた経験を、変える前と後の違いが分かる形で言葉にしておく |
評価の観点の3項目は、令和8年栃木県警察基本姿勢及び重点目標に掲げられた基本姿勢をもとに、当研究会が面接対策用に翻訳したものです。
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に仕込んでおくことが欠かせません。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 栃木県人事委員会のサイトで最新の受験案内を確認し、自分が受ける区分と試験種目、申込方法を押さえる。区分名は過去問データの表記と異なる場合があるので、案内の記載をそのまま確認する
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学校行事から、自分がとった行動を事実として話せる出来事を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 作文の過去テーマを1つ選び、60分・800字程度という条件で実際に書いてみる。手が止まった箇所が、面接でも答えに詰まる箇所になる
- 組織研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、刑法犯の増加、侵入盗の多さ、8つの重点目標のうち関心のある項目など、自分が語りたい事実を2つか3つ選んで自前の言葉に置き換えておく
- 声に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。あわせて、体力を確かめる種目に備えて、走り込みや腕立て伏せなど道具の要らない運動を日課にし、生活リズムを整えることも並行して進める
優先順位に注意
ステップ5の組織研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間が足りない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を警察の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で組織の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学で、しかも限られた期間で仕上げたい場合は、栃木県警察に特化した面接想定問答集を使うという選択肢もあります。
栃木県警察の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。配点が公表されていないぶん備えを厚くしておきたい試験ですから、残り日数が少ない方は、こうした教材で仕上げを前倒しするのも一つの方法です。
さいごに
栃木県警察の採用試験は、段階構成も配点も広くは公表されていません。手応えを点数に換算できない試験ですから、筆記の出来に一喜一憂せず、作文と面接の準備を早い段階から並行して進めた人が、静かに差をつけていきます。
作文で問われてきたのは「警察官の魅力は何か」「将来の警察組織に導入したいことは何か」といった、あなた自身の職業観を言葉にさせる問いでした。面接で聞かれることと、地続きの問いです。
令和8年の基本姿勢に並ぶ誠実・仁愛・強靱のうち、自分に一番近いと思う言葉はどれか。約186万人が暮らす栃木の日常を、自分はどの現場で支えたいのか。
この2つに自分なりの答えを持てたとき、栃木県警察の面接で語るべきことは、もう手元にそろっています。