本記事では、蕨市職員採用試験の面接対策で必要な、蕨市の特徴基礎データ行政課題重点政策面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

蕨市役所の面接試験では、「なぜ蕨市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の経験を市の仕事にどう活かすのか」といった質問が想定されます。蕨市は面積5.11km²と、日本で最も小さい市です。この条件が、そのまま市政の性格になっています。

本記事の掲載内容を参考に、日本一小さい市という条件と自分の経験を結び付け、面接での回答づくりに役立ててください。

第1部|自治体研究編

蕨市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは蕨市の全体像を押さえておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 面積5.11km²で、日本で最も小さい市。人口密度も日本一で、約7万7千人が暮らしている(令和8年度の職員採用試験案内による)。
  • 公表値をもとに整理した人口は77,289人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。人口密度は15,125人/km²。
  • 接しているのは川口市・戸田市・さいたま市の3市のみ。市域のすぐ外側まで、県内有数の人口集積が続いている。
  • 市の人口は増加傾向が続いている。子育て世帯の80%が「子育てしやすい」と答えている(令和8年度の職員採用試験案内による)。
  • 中山道の宿場町・機織物のまちとして栄えた歴史を持ち、綿織物「双子織」を地域資源に位置付けて、まちぐるみで蕨ブランドの創出に取り組んでいる。
  • 中山道では当時を偲ばせる街並みを整備し、「中仙道武州蕨宿宿場まつり」「わらび機まつり」を開催している。
  • 成人式は昭和21年に蕨町青年団が開催した「成年式」が発祥で、市では現在も「成年式」の名称で開催している。
  • 令和5年秋に市民サービスの拠点である新庁舎が開庁。蕨の「顔」である蕨駅西口再開発事業は「来年竣工を予定」と令和8年度の採用試験案内に記載されている。
  • 市の花はサツキ、市の木はケヤキ。市役所は〒335-8501 蕨市中央五丁目14番15号に置かれている。

蕨市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、統計値を細かく暗記する必要はありませんが、「蕨市がどういう形をした市なのか」を数字で言えることは重要です。

ここでは、人口規模、市域の広さ、位置関係など、市政の性格を説明できる項目を優先して整理しました。規模を測るときの比較先として、埼玉県全体の数値もあわせて載せています。

項目内容
総人口77,289人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
総面積5.11km²(日本で最も小さい市)
人口密度15,125人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
隣接自治体川口市、戸田市、さいたま市
市役所所在地〒335-8501 埼玉県蕨市中央五丁目14番15号
市の花・市の木サツキ・ケヤキ
将来ビジョン「コンパクトシティ蕨」将来ビジョンⅡ
(参考)埼玉県の総人口7,287,169人(令和7年国勢調査速報・令和8年5月20日公表)
(参考)埼玉県の面積約3,798km²(47都道府県中第39位)

蕨市の人口・面積・隣接自治体・市の花木は、公表値をもとに整理したものです。埼玉県の総人口・面積は埼玉県公式サイトの統計による数値です。市の統計の最新値は、蕨市公式サイトであわせてご確認ください。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。

数字が語る蕨市政の輪郭

7万7千人という人口は、それだけを見れば県内で目立つ数字ではありません。意味が出てくるのは、面積5.11km²と並べたときです。人口密度15,125人/km²という値は、市域のどこを歩いても人の暮らしが途切れないということを示しています。

蕨市の行政は、余っている土地を前提にできない行政です。新しい施設をつくるにも、災害時の避難先を確保するにも、まず「今ある場所をどう使い直すか」から考えることになります。

県全体の動きも押さえておきましょう。埼玉県の人口は令和7年国勢調査の速報結果で7,287,169人となり、前回(令和2年)から57,596人、0.8%減少しました。大正9年の調査開始以来、初めて前回調査を下回っています。

人口が増加したのは10市町にとどまり、53市町村で減少しました(出典:令和7年国勢調査速報結果|埼玉県

県全体が減少に転じるなかで人口が増えているという蕨市の位置は、面接で説明する価値のある事実です。

「蕨市は面積が5平方キロメートルほどで、日本で一番小さい市だと知りました。人口密度も日本一だそうです。県全体では人口が減り始めたと聞きましたが、蕨市では増える傾向が続いているとのことでしたので、その人たちに選ばれ続ける理由を、実際に働きながら確かめて広げていきたいと思っています」

蕨市の経済・産業

機織物のまちから受け継いだもの

蕨市の産業を語るとき、出発点になるのは中山道の宿場町・機織物のまちという成り立ちです。特徴の章で触れた双子織の取り組みは、伝統をそのまま保存するための事業ではありません。地域資源を市の名前と結び付け、まちぐるみで売り出そうとする産業政策です。

歴史の資源を観光の見世物で終わらせず、まちの経済につなげようとしている点が、蕨市の産業政策の性格です。

中山道の街並み整備と、「中仙道武州蕨宿宿場まつり」「わらび機まつり」という2つの催しは、その具体的な形にあたります。

ものづくりの県のなかで

市の外側にも目を向けておきましょう。埼玉県の製造業の事業所数は令和6年で13,159事業所(全国第4位)、従業者数は385,901人(全国第4位)です(出典:産業と雇用のすがた|令和7年度版

事業所数と従業者数がともに全国上位という構成は、大きな工場が少数あるというより、中小の事業所が県内に広く分布していることを示しています。面積5.11km²の蕨市で働く人の多くは、市の外にも職場を持ちます。

市の経済を考えるときは、市内で完結する話としてではなく、通勤圏のなかで暮らしと仕事をどう支えるかという視点を持っておきましょう。

まちを歩いてもらう産業へ

県全体では、令和5年の観光入込客数100,204千人のうち日帰りが98,299千人と、日帰りが98.1%を占めます(出典:観光入込客統計|令和5年。宿泊を伴わない来訪が中心という県の構造は、鉄道で都心とつながる蕨市にそのまま当てはまります。

祭りや街並みで来てもらった人に、その日のうちに市内でどれだけお金を使ってもらえるか。令和5年秋に開庁した新庁舎と、竣工を控える蕨駅西口再開発は、その回遊の入口をつくり直す事業でもあります。

にぎわいを志望動機に据えるなら、催しの数ではなく、来た人の行き先をどう増やすかという言い方に変えてみてください。

蕨市の主な行政課題

ここまでの数字と成り立ちを踏まえると、蕨市が向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときのために、次の4つを引き出しに入れておきましょう。

増える人を5.11km²で受け止める

人口の増加傾向が続いていることは、蕨市にとって明らかな強みです。同時に、増えた人の暮らしを収める余地が、面積の側にはほとんどないという制約でもあります。

住宅、保育、学校、公園、駐輪場。どれも新しい土地を用意して足すという解き方が取りにくく、既存の施設や空間を組み替えることで対応することになります。

市が「コンパクトシティ蕨」という言葉を掲げているのは、標語としてではなく、市域の条件そのものを言い当てているからだと理解しておきましょう。

密集した市街地での高齢化

埼玉県の高齢化率は令和2年で27.0%、65歳以上人口は約193万人と過去最高でした。令和7年には27.8%、令和22年(2040年)には33.3%となる見込みで、県の5か年計画は「2040年には県民の3人に1人が高齢者」と記載しています。

75歳以上人口は令和7年に約121万人、令和32年(2050年)には約146万人に達する見込みです(出典:埼玉県の高齢化の状況

ただし、この県の数字をそのまま蕨市に当てはめることはできません。基準をそろえて住民基本台帳(令和8年1月1日現在)で見ると、蕨市の高齢化率は22.6%、75歳以上の割合は13.2%で、同じ住民基本台帳ベースの埼玉県全体である27.0%・16.0%を下回ります(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在

なお、先に挙げた県の高齢化率は国勢調査にもとづく値で、調査の方法が違うため直接は比べられません。県内では、高齢化が進んでいない側に位置する市だということです。

人が密に暮らす市では、外出先が近いという利点がある一方、住宅そのものの古さや階段の上り下りが、そのまま暮らしにくさになります。子育て世帯の80%が「子育てしやすい」と答える市が、同じ密度のなかで高齢の市民の暮らしをどう支えるか。

面接で高齢化に触れるなら、県全体の傾向をなぞるのではなく、蕨市はいまどの位置にいて、密度日本一という条件のもとで何が起きるのかまで踏み込んでください。

県南東部を中心に被害が広がる地震

埼玉県地震被害想定調査の東京湾北部地震(マグニチュード7.3)では、県南東部を中心に建物全壊が揺れで8,127棟・液状化で5,253棟、死者585人、避難所避難者54,180人が想定されています。南関東でのマグニチュード7級地震の30年以内発生確率は70%とされます(出典:埼玉県地震被害想定調査|平成24〜25年度

蕨市が位置するのは、まさにこの県南部です。人口密度日本一という条件は、平時には便利さとして働きますが、災害時には避難所の収容力と道路の通行確保という形で重くのしかかります。

自分の関わる地区の想定は、市のハザードマップで確認しておきましょう。

再開発のあとに何を残すか

令和5年秋の新庁舎開庁と、竣工を控える蕨駅西口再開発事業は、市の姿を短い期間で変える事業です。建物ができたところが終わりではなく、そこから先、駅前に来た人がどこへ向かい、誰がその場所を使い続けるのかを設計するのが市の仕事になります。

5.11km²の市では、駅前の変化がまち全体に及ぶ速さも大きさも違います。面接で再開発に触れるなら、完成の話ではなく、完成後の使われ方に踏み込んでみてください。

蕨市の重点政策|「コンパクトシティ蕨」将来ビジョンⅡ

蕨市の最上位計画は「コンパクトシティ蕨」将来ビジョンⅡです。掲げているのは「安心・にぎわい・未来 みんなで創る みんなにあたたかい みんなのまち蕨」の実現で、市民とともに住みやすさ日本一のまちを目指すとしています(出典:蕨市職員採用試験案内|令和8年度

ビジョンの言葉を仕事に翻訳する

この将来像には「みんな」という言葉が3回出てきます。みんなで創る、みんなにあたたかい、みんなのまち。

市の政策を読むときは、この3つを別々の意味として受け取ると理解が進みます。創る段階で市民が関わっているか、届く先から誰かがこぼれていないか、できあがったものが特定の層のためだけになっていないか、という3つの問いです。

日本一小さい市で「住みやすさ日本一」を掲げるということは、規模ではなく暮らしの質で勝負すると宣言していることでもあります。面接でビジョンに触れるなら、言葉をなぞるのではなく、自分ならどの「みんな」に手を伸ばしたいのかまで言えるようにしておきましょう。

県の計画を背景として重ねる

市政の背景には、県の計画もあります。埼玉県5か年計画(令和4年度から令和8年度)は、県が直面する最大の課題を「人類が経験したことのない超少子高齢社会への対応」と位置づけ、2040年を見据えた将来像と分野別施策を設定しています。

感染症拡大や激甚化する自然災害への対応も「待ったなし」の課題として明記されています(出典:埼玉県5か年計画(ダイジェスト版)|令和4年3月策定

県が広い視野で方向を示し、市が5.11km²の暮らしの現場で形にする。この役割分担は、後述する「なぜ県庁ではなく市役所なのか」という質問に直結します。

POINT|ビジョンの全文を暗記しなくてよい

計画の項目名をすべて覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を1〜2つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③今どんな取り組みがあるか → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験をどう生かせるか」の順に調べていきましょう。

悪い例「蕨市の子育て支援に携わりたいです」

改善例「子育て世帯の8割が子育てしやすいと答えていると知りました。まずはその答えの中身を、実際に使っている方から聞き取る仕事に関わりたいです。その上で、日本一小さい市だからこそできる距離の近さを、支援の届け方に生かしていきたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。

  • 蕨市職員採用試験の案内と実施要項(受験する年度・職種のもの)
  • 蕨市公式サイトの市政情報と「コンパクトシティ蕨」将来ビジョンⅡ
  • 市のハザードマップ(自分の関わる地区の想定を知る材料として)
  • 埼玉県5か年計画、埼玉県の統計資料(市政の背景を知る参考として)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、蕨市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。蕨市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

蕨市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

蕨市役所の面接の概要

ここからは、蕨市役所の採用試験の構成と、公表されている求める職員像、面接で問われやすい質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析にもとづいて整理していきます。

まず押さえたい、募集職種と年度の関係

蕨市の採用試験を調べるうえで、最初に確認しておきたいことがあります。令和8年度の蕨市職員採用試験の募集職種は、技術職(土木・建築・電気・機械。各職種に有資格者対象の枠あり)が3名程度と保健師が若干名で、事務職はこの試験案内に含まれていません(出典:蕨市職員採用試験実施要項|令和8年度

市公式サイトに残る過年度の採用試験情報で確認できる範囲では、令和7年度も技術職・保育士・保健師の募集で、事務職の募集はありませんでした。

したがって、事務職を志望する方が構成を知る手がかりになるのは、直近で事務職の募集があった令和6年度の実施要項です。市公式サイトの「過去の常勤職員採用試験情報」には各年度の実施要項が置かれており、試験内容の詳細は各年度ページの本文ではなく、添付されている実施要項のPDFに記載されています。

過去の要項で全体像をつかみ、次に事務職の募集が出た時点でその年度の案内と突き合わせる、という順番が確実です。

令和6年度実施要項に見る事務職の試験構成

令和6年度実施要項の時点では、事務職の選抜は3段階でした。第一次試験が教養・小論文・適性検査、第二次試験が個人面接、第三次試験も個人面接という構成です。

つまり令和6年度実施要項の時点では、個人面接を2回重ねて人物を確かめる試験でした。次に事務職の募集が行われる際には構成が変わる可能性がありますので、下表はあくまで過去の要項の内容として押さえてください。

項目内容(令和6年度実施要項の時点)
試験の段階事務職(福祉、障害者対象、学芸員含む)及び保育士は第一次・第二次・第三次の3段階。技術職及び保健師は第一次・第二次の2段階
第一次試験(事務職)教養、小論文、適性検査
教養試験の内容文章読解、数的能力、判断推理、基礎英語、時事・現代社会等に関する一般教養についての択一試験(60分)。事務職(学芸員)は文章読解・数的能力・判断推理の択一試験(45分)
小論文の内容文章による表現力、課題に対する理解力についての記述試験(60分)
適性検査の内容職務遂行上必要な素質及び適性についての検査(約90分)
第二次・第三次試験いずれも個人面接(主として人物についての個人面接による試験)
小論文の扱い第一次試験日に実施するが、評価は第二次試験として行う
合否の基準各試験科目のいずれかが一定の基準に達しない人は、他の成績いかんにかかわらず不合格
採用予定人員(事務職)若干名
配点受験案内・実施要項に記載がなく未公表

上表は令和6年度蕨市職員採用試験の実施要項にもとづく内容です(出典:蕨市職員採用試験実施要項|令和6年度。試験の段階・科目・採用予定人員は年度や職種によって変わります。受験の際は、必ず最新の受験案内でご自身の職種の試験情報をご確認ください。

この構成で目を引くのは、小論文の扱い方です。第一次試験日に書かせておきながら、評価するのは第二次試験としてでした。筆記の点数としてではなく、人物を見る局面で読まれるという設計です。

また、令和8年度の実施要項にも「各試験科目のいずれかが一定の基準に達しない人は、他の成績いかんにかかわらず不合格となります」との記載があり、科目ごとに基準が置かれている点は年度をまたいで共通しています。申込は電子申請のみで、受験票も電子申請・届出サービスを通じて送付されます。

蕨市役所が求める職員像

蕨市は、求める職員像を採用試験の案内で3項目にまとめて公表しています。

「明るく豊かな人間性を持ち、市民のために常に問題意識を持って新しい課題や困難な課題に果敢に自らチャレンジし、とことん汗を流せる人」
「市民と協働して、優れた『地域力』を発揮したまちづくりに取り組むため、“わらび”を愛し、市民の立場になって感じ、ともに考え、ともに行動できる人」
「市の将来を見据え、都市を経営するという視点に立ちながら、高いコスト意識を有し、限られた財源を生かすため創意工夫を発揮して、効率的かつ効果的な仕事のできる人」

並べてみると、課題に自分から向かう姿勢、市民と同じ位置に立つ感覚、限られた資源を生かす経営の視点という順で書かれていることがわかります。特に3つ目は、面積5.11km²という条件を持つ市が、限られた財源と限られた空間をどう使うかを日々問われていることの表れでもあります。

自己PRでは「行動力があります」と言い切るのではなく、何に問題を感じ、自分から何を始めたのかまで話せるようにしておきましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。蕨市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク市役所までは、どのように来られましたか構えていない場面での表情と、会話の入り方
② 動機・志望数ある自治体のなかで、なぜこの市を選んだのですか市の条件を知ったうえで選んでいるかどうか
③ 自己理解あなたが自分に足りないと感じている力は何ですか弱みを認めたうえで、補う行動まで語れるか
④ 経験・行動限られた予算や時間のなかで工夫した経験はありますか制約を前提にして考えられるかどうか
⑤ 学業・経歴学んできたことのうち、いま役に立っていることは何ですか学びを実際の場面に結び付けられるか
⑥ 適性・将来市民との距離が近い職場をどう思いますか顔の見える距離で働くことの意味をどこまで想像できているか
⑦ 公共性・社会性市民と協働するとは、具体的にどうすることだと思いますか協働という言葉を自分の言葉に置き換えられるか

ただし、この7カテゴリーは蕨市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。

では、どこで差がつくのか。それが次の「蕨市ならでは」の質問です。

合否を分けるのは「蕨市役所ならでは」の質問

「なぜ埼玉県庁ではなく、蕨市役所なのですか」
「蕨市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

どちらも蕨市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料を持っている人だけが、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。

こうした質問に答えるための「蕨市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい蕨市の事実答え方のヒント
市の規模と市域面積5.11km²で日本で最も小さい市。人口密度も日本一で、約7万7千人が暮らす「小さい」を弱点として語らず、行政の手が市域のすみずみまで届く条件として説明します
将来ビジョン「コンパクトシティ蕨」将来ビジョンⅡ。「安心・にぎわい・未来 みんなで創る みんなにあたたかい みんなのまち蕨」の実現を掲げ、住みやすさ日本一を目指す3回出てくる「みんな」のうち、自分がどの「みんな」に関わりたいのかを一つ選んで話します
まちの成り立ち中山道の宿場町・機織物のまち。綿織物「双子織」を地域資源に位置付け、蕨ブランドの創出に取り組む。成人式は昭和21年の「成年式」が発祥歴史を紹介して終わらせず、双子織や成年式を今のまちの経済やつながりにどう生かすかまで踏み込みます
いま動いている事業令和5年秋に新庁舎が開庁。蕨駅西口再開発事業は令和8年度の採用試験案内で「来年竣工を予定」と記載完成を歓迎するだけでなく、完成した駅前を誰がどう使い続けるかという運用の話に接続します
なぜ県庁ではなく市役所か県は5か年計画で超少子高齢社会への対応という県全体の方向を示し、市は5.11km²に暮らす市民の窓口を担う役割の違いを述べて終わらせず、日本一小さい市で自分が向き合いたい相手を具体的に挙げます

コツは、5つを丸ごと覚えることではありません。自分の関心に近いテーマを1〜2つ選び、事実から自分の問題意識へ、そして市職員としてやってみたいことへと一続きにつないでおくと、掘り下げられても話が崩れません。

想定される評価の観点

面接は、公表された職員像に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの整い方ではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
自ら課題に向かう力難しいとわかっている物事に、自分から手を挙げた経験があるか職員像の1つ目が「果敢に自らチャレンジし、とことん汗を流せる人」であることを踏まえ、途中で投げ出さずに続けた場面を一つ用意しておく
市民と同じ位置に立つ感覚相手の側から物事を見た経験があるか職員像が「市民の立場になって感じ、ともに考え、ともに行動できる人」と書いていることに合わせ、自分が決める側ではなく聞く側に回った場面を語れるようにしておく
限られた資源を生かす視点足りない条件のなかで、優先順位をつけて動いた経験があるか面積5.11km²の市で「高いコスト意識」が求められている意味を考え、何かを足すのではなく組み替えて解決した経験を探しておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

令和6年度実施要項の時点では個人面接が2回置かれていましたので、同じ話題を別の面接官から角度を変えて問われる前提で準備しておきましょう。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを用意しておくことが、いちばんの備えになります。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 蕨市公式サイトの職員採用のページを定期的に確認する。事務職の募集は年度によって有無が変わるため、案内が公表されたら保存し、実施要項のPDFまで開いて最後まで読む
  2. 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 小論文が課される可能性を見込み、行政に関わるテーマで60分を計って書く練習をしておく。書いたものは、面接で話す内容の土台としても使える
  5. 自治体研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、面積5.11km²という条件と将来ビジョンの言葉から、志望分野に近い事実を2つか3つ、自分の言葉で説明できるようにする
  6. 声に出して練習する。公表されている職員像の3項目それぞれに、自分の経験を1つずつ結び付けて話すところまでを型にしておく

優先順位に注意

ステップ4と5は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を蕨市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。職員像が3項目まで具体的に公表されている市では、その言葉に自分の経験を並べられるかどうかが評価を左右します

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、蕨市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

蕨市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

蕨市役所の想定問答集を見る

さいごに

蕨市は、面積5.11km²という日本で最も小さい市域に7万7千人余りが暮らし、県全体が人口減少に転じたなかで増加傾向を保っている市です。土地に余裕がないという条件は、逆に言えば、行政の判断がまち全体にすぐ届くということでもあります。

求める職員像の3項目に「高いコスト意識」と「創意工夫」が並んでいるのは、その条件を毎日引き受けている市の実感だと考えてよいでしょう。

中山道の宿場町として始まったまちが、新庁舎と駅西口の再開発で次の姿へ移ろうとしているいま、自分ならどの場面で「みんなのまち蕨」を形にするのか。そこまで具体的に描けていれば、個人面接で何を聞かれても、話の芯がぶれることはありません