本記事では、札幌市職員採用試験の面接対策で必要な、札幌市の特徴基礎データ行政課題重点政策面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

札幌市役所の面接試験では、「なぜ札幌市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。市の実情や政策を理解しておくことで、抽象的な回答を避け、札幌市ならではの事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と札幌市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|自治体研究編

札幌市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは札幌市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 北海道庁が置かれる道内唯一の政令指定都市で、市域は10の行政区で構成される
  • 推計人口は約196万人(令和8年6月1日現在)。北海道全体の人口は約497万人(令和8年4月末現在)で、道内人口のおよそ4割が札幌市に集まっている
  • 総面積は1,121.26km²で、東京23区のおよそ2倍。市域は東西42.30km・南北45.40kmに広がり、最高地は南区定山渓の余市岳(1,488.0m)、最低地は北区西茨戸(1.6m)と、標高差の大きい市である。
  • 大正11年(1922年)の市制施行以来、近隣町村との合併・編入を重ねて市域を広げてきた。現在は7市3町1村と境を接する。
  • 年降雪量の平年値は479cm(1991年から2020年の平均)。毎年5メートル近い雪が降るなかで約196万人の暮らしが動いており、除排雪は市政の最重要テーマのひとつになっている。
  • 産業は第三次産業が中心。令和3年6月1日現在の市内の事業所数は73,576、従業者数は930,326人で、卸売業・小売業と医療・福祉が事業所数・雇用の両面を支えている。
  • 増え続けてきた人口は減少局面に入り、2015年の195万人から2060年には155万人まで減ると推計されている
  • 令和8年度の一般会計当初予算は1兆3,185億円(前年度比4.1%増)と過去最大。一方で経常収支比率は98.0%(令和6年度)で、使いみちを自由に決められる財源は限られている。
  • 北海道新幹線の札幌延伸を見据え、札幌駅周辺の再開発や新たなMICE施設の検討が進んでいる。
  • 令和8年4月に宿泊税が導入され、観光がもたらす財源を市民の暮らしにも還元する仕組みづくりが始まっている。

札幌市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「札幌市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、人口規模、市域の広さ、行政区の構成、雪の量など、市政の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。

項目内容
総人口1,954,588人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
総世帯数1,002,936世帯(100万世帯超)
行政区数10区
総面積1,121.26km²(東京23区の約2倍)
人口密度約1,743人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
市域の広がり東西42.30km・南北45.40km(最高地1,488.0m/最低地1.6m)
隣接自治体7市3町1村
年降雪量(平年値)479cm
事業所数・従業者数73,576事業所・930,326人
一般会計当初予算1兆3,185億円(過去最大)

総世帯数は札幌市の推計人口(令和8年6月1日現在)、総面積・市域の広がりは市の参考資料、年降雪量は気象庁の平年値(1991年から2020年の平均)、事業所数・従業者数は令和3年経済センサス活動調査(令和3年6月1日現在)、一般会計当初予算は令和8年度当初予算による数値です。市制施行は大正11年(1922年)8月1日です。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。

数字から考えられる市政課題

札幌市は道内人口のおよそ4割を占める北海道最大の都市ですが、規模の大きさをそのまま強みと言い切れる局面ではありません。

将来推計では、2015年に195万人だった人口が2040年に183万人、2060年には155万人となり、45年間で40万人減る見通しです。(出典:札幌市の推計人口|令和8年6月1日現在第2期さっぽろ未来創生プラン(人口ビジョン編)

注目すべきは減り方の内訳です。生産年齢人口(15歳から64歳)は2015年の124万人から2060年に76万人へと48万人減り、年少人口(0歳から14歳)も22万人から13万人へ減ると推計されています。

減少分の大半を働く世代が占めるため、税収を生む層が細る一方で、高齢化に伴う社会保障費と老朽化した公共施設の更新費用は増えていきます。

面接では、この構図を短くまとめて話せると強みになります。

「札幌市はおよそ196万人が暮らす北海道最大の都市ですけれども、人口はすでに減少局面に入っていて、2060年には155万人ほどになると推計されていると聞きました。減っていくのは働く世代が中心だと知って、支える人が減っても回る仕組みをつくることが、これからの市役所の大きな仕事になるのではと感じています」

札幌市の経済・産業

経済・産業構造の概要

  • 令和3年6月1日現在の事業所数は73,576事業所、従業者数は930,326人。市内でおよそ93万人が働いている。
  • 事業所数で最も多いのは卸売業・小売業の17,071事業所(全体の23.2%)で、次いで医療・福祉が7,677事業所(10.4%)。
  • 従業者数でも卸売業・小売業が189,631人(20.4%)で最多。
  • 全国と比べて製造業などの第二次産業の割合が低く、第三次産業が中心の構造となっている。

つまり、ものを作る産業ではなく、人にサービスを届ける産業が雇用を支えている都市だということです。景気の話でも雇用の話でも、この一点を押さえておけば札幌市の実情に沿った説明ができます。

裏を返せば、消費や人の流れが細ると雇用もすぐに影響を受けます。人口減少や観光客の増減が、市民の働く場へ直結しやすい構造です。(出典:経済センサス活動調査の札幌市集計|令和3年

観光と宿泊税

2023年度に札幌を訪れた観光客は約1,454万人で、前年度の約1,310万8千人から増加しました。

2025年度上期(4月から9月)の来札観光客数は約961万1千人(前年同期比3.1%増)、外国人宿泊者数は約94万1千人(同17.2%増)と、訪日客の伸びが際立っています。(出典:札幌市の観光統計|2025年度上期

この流れを受けて、市は令和8年4月に宿泊税を導入しました。令和8年度の税収見込みは31億円で、観光地域づくり法人(DMO)の本格稼働、さっぽろ雪まつりやさっぽろホワイトイルミネーションの魅力向上、定山渓温泉の開湯160周年を記念した市民の利用促進策などに充てられます。

その使いみちには、都心部や観光地周辺の除排雪の強化も入っています。観光の成長を観光の中だけで完結させず、市民生活の質にも還元しようとする設計になっています。

都心の再開発と北海道新幹線

札幌駅前では、令和元年10月に策定された札幌駅交流拠点北5西1・西2地区再開発基本構想にもとづき、北5西1街区約12,100m²・北5西2街区約10,300m²でバスターミナルや新幹線駅施設と一体の再開発が進んでいます。

構想が目標年次として掲げるのは北海道新幹線の札幌開業で、策定時は令和12年度(2030年度)を見込んでいました。

新函館北斗駅から札幌駅までの延伸区間は約212kmで、2026年6月現在も札幌工区でシールド掘進工事などが行われています。

令和8年度予算でも、再開発事業への支援や都市機能の更新に加え、新しいMICE施設の整備・運営手法の検討、GX関連投資の呼び込みや資産運用会社等の誘致が並びます。まちが物理的に作り替わる時期に採用される世代だという自覚は、志望動機に厚みを与えます。

暮らしを支える交通

札幌市営地下鉄は南北線(14.3km・16駅)・東西線(20.1km・19駅)・東豊線(13.6km・14駅)の3路線49駅で、南北線は昭和46年(1971年)12月16日に全国4番目の地下鉄として開業しました。

豪雪地でありながら定時性の高い移動ができるのは、この地下ネットワークがあってこそです。

一方で地上のバス路線の維持は難しさを増しており、令和8年度もバス路線維持の補助、廃止路線に対する代替交通等の導入、外国人材の受け入れも視野に入れた運転手の確保支援が続けられます。交通は雪対策と福祉と経済が交わる分野です。

札幌市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、札幌市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

人口減少局面への転換と少子高齢化

札幌市まちづくり戦略ビジョンは、増加を続けてきた人口が減少局面を迎え、少子高齢化と生産年齢人口の減少がさらに進むことを主要課題に挙げています。

2060年には人口155万人・生産年齢人口76万人という推計が示すのは、単なる規模の縮小ではなく、支える側と支えられる側の比率そのものの変化です。

子育て支援や教育、雇用の魅力を高めて働く世代に選ばれ続けることと、増えていく高齢の市民の暮らしを支えることを、限られた財源のなかで同時に進められるかが問われています。

雪と向き合う都市経営

年降雪量の平年値479cmという数字は、他の政令指定都市にはない前提条件です。雪対策は、毎年必ずやってくるうえに市民生活へ直接跳ね返る、札幌市で最も避けて通れない行政課題だといえます。

令和8年度は、除排雪体制を整えることに加えて、パートナーシップ排雪制度の見直しに向けた検討のため生活道路排雪の試験施工範囲を拡大し、宿泊税を活用して都心部や観光地周辺の除排雪を強化します。(出典:気象庁 過去の気象データ(札幌の平年値)|1991年から2020年

面接でこのテーマを扱うなら、「雪が大変です」で止めないことが大切です。同じ市内でも、幹線道路と生活道路、都心と住宅地では求められる水準も費用も違います。

どこに、どれだけ、どういう順番で資源を配るのかという配分の話まで踏み込めると、行政の仕事として語れるようになります。

冬の大規模災害への備え

札幌市第4次地震被害想定(令和3年8月公表)は、最大級の被害を及ぼす5つの想定地震を設定しています。

被害が最大となるのは月寒断層の地震(マグニチュード7.2)で、市街地の約7割が震度6強以上に達すると想定されています。ほかに石狩低地東縁断層(同7.9)、野幌丘陵断層帯(同7.5)、西札幌断層(同6.7)なども対象です。

月寒断層の地震が冬の18時に発生した場合、全壊は約15,000棟、避難者数は最大で約16万人にのぼります。

冬の5時に発生し要救助者がすべて助からないという厳しい条件では、死者約4,900人のうち約4,000人が凍死者と想定されています。(出典:札幌市第4次地震被害想定|令和3年8月

札幌の防災では、寒さそのものが人の命に直結します

実際、平成30年(2018年)の北海道胆振東部地震では、市内で死者3名・負傷者295名の人的被害が生じ、道内全域の約295万戸が停電しました。

市内では300か所の避難所が開設され、一時1万人を超える市民や観光客が身を寄せています。

停電と寒さと大量の避難者が同時に来る事態への備えが、札幌市の危機管理の中心にあります。

弾力性の乏しい財政と公共施設の更新

令和6年度決算でみると、財政力指数は0.70、経常収支比率は98.0%で、財政の弾力性・自由度が低い状況とされています。

健全化判断比率は実質公債費比率3.2%(令和5年度2.9%)、将来負担比率22.2%(同18.2%)で、いずれも早期健全化基準は下回るものの前年度から上昇しました。

市自身も、少子高齢化と人口減少により市税をはじめとする財源の大幅な伸びは期待できない一方、社会保障費の増加と公共施設の老朽化に伴う更新費用の増加が続く見込みだと認識しています。(出典:なまらわかる!財政のあらまし|令和6年度決算

令和8年度予算では、全庁での見直しにより37億円の財源を圧縮し、そのうち8億円を新規・拡充事業の財源に充てることで、差し引き29億円の継続的な財政効果を生み出したと説明されています。過去最大の予算規模と、こうした地道な圧縮が同時に行われていることを知っておくと、「やりたいことを増やす」だけでは通らない仕事なのだと理解できます。

北海道のなかの札幌という立場

北海道の面積83,422.27km²のうち、札幌市は1,121.26km²で全体の1%強にすぎません。そこに道内人口の約4割が集まっているという偏りは、道全体の人口が減っていくなかで、札幌市が担う役割をますます重くします。

政令指定都市は、児童福祉や保健衛生、都市計画といった分野で、通常は道府県が担う事務の多くを市が自ら処理する仕組みです。

広域の調整を担う道と、暮らしの現場を担う市という役割の違いは、後述する定番質問「なぜ北海道庁ではなく札幌市役所なのか」に直結します。自分の言葉で説明できるように整理しておきましょう。

札幌市の重点政策|第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン

札幌市の最上位に位置づけられる総合計画は「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」(計画期間は令和4年度から令和13年度までの10年間)です。

札幌市自治基本条例第17条にもとづいて策定され、目指すべき都市像を描いた「ビジョン編」(令和4年10月に市議会で議決)と、その実現に向けて市が取り組む手法を示す「戦略編」で構成されています。(出典:第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン

目指すべき都市像と3つの重要概念

ビジョン編が掲げる都市像は、「ひと」「ゆき」「みどり」の織りなす輝きが、豊かな暮らしと新たな価値を創る、持続可能な世界都市・さっぽろです。全国の総合計画のなかでも、都市像そのものに「ゆき」が入っているのは札幌市の際立った特徴で、雪を負担としてだけでなく都市の資源として位置づける姿勢が読み取れます。

その都市像を支えるのが、次の3つの「まちづくりの重要概念」です。面接で計画の話をするなら、この3語だけは自分の言葉で言い換えられるようにしておきましょう。

重要概念計画が示す考え方と、結び付く取組
ユニバーサル(共生)多様性を尊重して互いに手を携え、支える人と支えられる人という一方向の関係を超えて双方向に支え合うこと。移動環境や建物のバリアフリー化、心のバリアフリーが結び付きます
ウェルネス(健康)誰もが幸せを感じながら生活し、生涯現役として活躍できること。人生100年時代を前提とした働く世代・若年層の予防と健康づくり、学び直しの場の充実が結び付きます
スマート(快適・先端)先端技術の利点を誰もが享受でき、新たな価値の創出に挑戦できること。スマートシティの推進、スタートアップの創出・育成、「ゆき」の利活用、ゼロカーボンやレジリエンスの向上が結び付きます

8つの分野と20の基本目標

ビジョン編は、都市像の実現に向けて8つの「まちづくりの分野」と20の「まちづくりの基本目標」を定めています。全体像を一覧で押さえ、自分の志望分野がどこに位置づくかを確認しておきましょう。

分野基本目標が扱う主な内容
子ども・若者安心して生み育てられる環境、子どもの権利の保障と居場所、一人一人の良さを大切にする教育(基本目標1から3)
生活・暮らし健康づくりと生涯学習、住まいと医療介護の連携、手続のオンライン化、持続可能な除排雪体制を含む交通環境(基本目標4から5)
地域年齢や国籍などの違いを認め合う社会、町内会やNPOなど多様な主体によるまちづくり活動(基本目標6から7)
安全・安心冬季の災害も想定した備えと地域防災力、強じんな消防・救急体制、犯罪や交通事故の防止、食の安全(基本目標8から9)
経済食と観光、IT・クリエイティブ・健康福祉医療の産業、中小企業とスタートアップ、安定した雇用と多様な働き方(基本目標10から12)
スポーツ・文化ウインタースポーツ環境と大会の誘致・開催、四季を通じたスポーツ、文化芸術と文化財の継承(基本目標13から15)
環境脱炭素と再生可能エネルギー・水素の活用、循環型社会の構築、身近なみどりの保全と生物多様性(基本目標16から17)
都市空間コンパクトで歩きたくなるまち、都心と拠点の機能強化、インフラの計画的な維持・更新(基本目標18から20)

個別分野の計画としては、障がい福祉の「さっぽろ障がい者プラン2024」、デジタル分野の「札幌DX推進方針」「第2次札幌市ICT活用戦略」があります。

環境分野では市がゼロカーボンシティを宣言し、気候変動対策の行動計画を持っています。計画名は正確に覚えておくと、面接での一言に説得力が生まれます。

令和8年度の市政運営のポイント

令和8年度の一般会計当初予算は1兆3,185億円(前年度比4.1%増)で、過去最大の規模となりました。

予算は「市民生活を守り、安心して快適に暮らせる街」「次世代の支援・育成、未来の札幌の成長に向けた投資」「持続可能な観光都市としての発展」という三つの柱で編成されています。(出典:令和8年度予算案に関する市長記者会見|令和8年1月

一つ目の柱では、健康アプリ「アルカサル」の本格実施と40歳以上の国民健康保険加入者の特定健診の自己負担無料化、救急需要の増加に対応するための救急隊の1隊増強、ドローンなどを活用したヒグマの出没・捕獲への対応強化が並びます。

区役所の窓口で申請書類を書かずに手続きができる「書かない窓口」は、令和9年度のモデル実施に向けてシステムの導入が進みます。

物価高対策には総額240億円が計上され、全市民を対象とした食料品物価高支援などが実施されます。

二つ目の柱では、不登校の傾向がある児童生徒や家庭を支援する相談支援パートナーの配置拡大、学校体育館への冷房設備の整備、未就園の5歳児を対象とした健康診査などが挙がります。

小学校の給食費は、保護者が負担する食材費と国が算定した基準との差額に交付金を充てることで、令和8年度の保護者負担をゼロとします。

三つ目の柱は宿泊税を活用した観光施策で、DMOの本格稼働や各種イベントの魅力向上、観光地周辺の除排雪の強化が進みます。

POINT|20の基本目標をすべて暗記しなくてよい

名称をすべて覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を1〜2つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③現在の事業 → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験や強みをどう生かすか」の順で調べましょう。

悪い例「札幌市の雪対策に関わりたいです」

改善例「まずは目の前の仕事を覚えるところからだと思っています。その上で、生活道路の排雪は試験的に範囲を広げていると聞きましたので、雪を出したい人と運ぶ現場の両方の話を聞いて、限られた予算のなかで納得してもらえる進め方を考える仕事に関わりたいです」

あわせて確認したい公式資料

すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。

  • 札幌市職員採用試験の受験案内(最新年度。大学の部は一般方式とSPI方式で構成が異なります)
  • 第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン(ビジョン編の概要版)
  • 最新年度の予算に関する資料と、市長の予算発表記者会見の記録
  • 札幌市の統計情報(推計人口、経済センサスの市集計、観光統計など)
  • 関心分野の個別計画(さっぽろ障がい者プラン2024、札幌DX推進方針、第2次札幌市ICT活用戦略など)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、札幌市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。札幌市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

札幌市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

札幌市役所の面接の概要

ここからは、札幌市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

札幌市役所の面接の流れ

はじめに確認しておきたいのは、大学の部には「一般方式」と「SPI方式」の2つがあり、試験の構成が異なることです。

SPI方式に申し込んで審査完了メールが届くと、試験区分や受験の有無にかかわらず、同じ年度の一般方式には申し込めません。ここでは一般方式(令和8年度)を前提に整理します。

一般方式は第1次試験と第2次試験の2段階で、第3次試験の設定はありません。第1次試験は筆記試験(択一式)と1次面接試験で構成され、第2次試験は全区分共通で「面接試験(個別面接により、主として人物評価をします)」と定められています。

ただし1次面接の対象は一般事務(行政コース・福祉コース)と学校事務に限られ、対象者は筆記試験の成績によって決まります。

受験案内には「1次面接試験は筆記試験の受験状況等により実施しない場合があります」との注記があるため、面接が必ず2回あると決めつけず、最新の受験案内で確認してください。

そして、札幌市の面接対策で最も注意したいのがここです。面接カードは事前提出ではなく、筆記試験の当日に会場で20分かけて記入する方式になっています。

受験案内には「受験者自身に関することをテーマに沿って記入するもの」とあり、詳しい内容は当日知らされます。

つまり、自宅で何日もかけて文章を練り上げる対策は使えません。どんなテーマを示されても書ける材料を、あらかじめ自分の中に用意しておく必要があります

項目内容(令和8年度・大学の部・一般方式)
試験の段階2段階。第1次試験(筆記試験および1次面接試験)→ 第2次試験(面接試験)。第3次試験の設定はありません
筆記試験一般事務(行政コース・福祉コース)・学校事務・資格・免許職(保健師)は教養系20題に専門系を加えた択一式で120分。一般技術と消防吏員は教養系30題のみで90分
1次面接試験個別面接。対象は一般事務(行政コース・福祉コース)と学校事務で、対象者は筆記試験の成績により決定。受験状況等により実施しない場合があります
第2次試験の面接全区分共通で個別面接。主として人物評価を行います(消防吏員は身体検査・体力検査を併せて実施)
集団形式受験案内に集団面接・集団討論を実施する旨の記載はありません
面接カード事前提出ではなく、筆記試験当日に会場で記入(記入時間20分)。詳しい内容は試験当日に知らされます
配点受験案内に各試験種目の配点・満点の記載はありません
論文(作文)大学の部・一般方式の試験種目に論文(作文)試験の記載はありません
試験会場筆記試験は札幌会場と東京会場。1次面接は原則として札幌会場の受験者は札幌市内、東京会場の受験者は東京都内
採用予定数一般事務(行政コース)75名程度、一般事務(福祉コース)8名程度、学校事務6名程度、消防吏員45名程度ほか

上記は令和8年度の受験案内(大学の部・一般方式)にもとづく整理です。SPI方式は試験構成が異なります。試験の構成・区分・実施内容は年度によって変わる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の受験案内でご確認ください。(出典:札幌市職員採用試験受験案内(大学の部・一般方式)|令和8年度

札幌市役所が求める人物像

受験案内の「求める人物像」の項は、「札幌市では、市民自治によるまちづくりをすすめるため、次のような優れた人材を求めています。」という一文から始まります。

個別の項目は受験案内に画像として掲載されており、当研究会では一次資料からの文字起こしができていないため、項目そのものは最新の受験案内でご確認ください。

とはいえ、このリード文だけでも方向性は読み取れます。市民自治とは、市民が自らまちづくりに関わることであり、まちづくり戦略ビジョンでも、区役所やまちづくりセンターを拠点に市民が計画の立案段階から参加する姿が基本目標に掲げられています。

ここに重要概念のユニバーサル・ウェルネス・スマートを重ねると、評価されやすい資質は市民とともにまちをつくる姿勢、多様な立場の人を尊重して支え合う力、新しいやり方を試して変化に対応する力の3点だと読み解けます。

自己PRでは「協調性があります」と述べるだけでなく、その力を使って何を行い、周囲がどう変わったのかまで説明しましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。札幌市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク緊張していますか?場慣れしているかではなく、不意の一言に自然に返せるか。素の表情と受け答えのトーン
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?民間でもできる動機で止まっていないか。職業選択の筋道が自分の経験とつながっているか
③ 自己理解あなたの短所(弱み)は何ですか?自分を客観視できているか。短所を認めたうえで、その付き合い方まで語れるか
④ 経験・行動これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください困難の大きさそのものではなく、その場面で何を考え、どう動いたかという行動の中身
⑤ 学業・経歴卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください専門外の相手に伝わる言葉へ翻訳する力。学んだことを仕事へつなげる視点
⑥ 適性・将来入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか?市の仕事への理解の解像度。希望どおりの配属でなくても働ける柔軟さ
⑦ 公共性・社会性最近関心を持ったニュースは何ですか?社会の動きへのアンテナと、それについて自分の意見を一言で述べられるか

ただし、この7カテゴリーは札幌市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。

では、どこで差がつくのか。それが次の「札幌市ならではの事情を踏まえた質問」です。

合否を分けるのは「札幌市役所ならでは」の質問

「なぜ北海道庁ではなく、札幌市役所なのですか?」
「札幌市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

1問目は、道内で唯一の政令指定都市を受けるなら必ず備えておきたい質問です。道と市の距離が近い分、「どちらでもよかったのでは」と受け取られる答えは印象に残りません。

どちらの質問も市の現状を知らなければその場では答えようがありませんが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。

こうした質問に答えるための「札幌市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい札幌市の事実答え方のヒント
人口の現在地推計人口は約196万人(令和8年6月1日現在)で、道内人口のおよそ4割が集中。一方で人口は減少局面に入り、2060年には155万人と推計される。減少分の大半は生産年齢人口「道内最大の都市なのに減っていく」という二面性をそのまま口に出すと、現状を直視していることが伝わります。減る前提で何を残すかまで触れると、志望の芯が見えます
なぜ北海道庁ではなく札幌市役所か北海道の面積83,422.27km²のうち札幌市は1,121.26km²。全体の1%強の市域に道内人口の約4割が集まる。政令指定都市は、通常は道府県が担う分野の事務も市が自ら処理する制度の話は入口です。10区それぞれに区役所とまちづくりセンターがある近さを、自分がやりたい仕事の理由として結び付けると答えが立ち上がります
市の総合計画「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」(令和4年度から令和13年度)。都市像は「ひと」「ゆき」「みどり」の織りなす輝きが、豊かな暮らしと新たな価値を創る、持続可能な世界都市・さっぽろ。8つの分野と20の基本目標で構成都市像に「ゆき」が入っていることに触れると、概要版まで読んだ受験者だと分かります。やりたい仕事が8つの分野のどこに入るかまで言い添えましょう
雪との向き合い方年降雪量の平年値は479cm。令和8年度は除排雪体制の確保に加え、生活道路排雪の試験施工範囲の拡大や、宿泊税を活用した都心部・観光地周辺の除排雪強化に取り組む限られた予算をどこへ先に配るかが判断の中身です。パートナーシップ排雪の見直しにも触れ、費用と順番の納得をどうつくるかまで語れると説得力が出ます
冬の災害への備え第4次地震被害想定では、月寒断層の地震(マグニチュード7.2)で市街地の約7割が震度6強以上。冬の18時に発生した場合の避難者は最大約16万人。平成30年北海道胆振東部地震では道内約295万戸が停電した停電と寒さが同時に来る事態を具体的に思い描き、自分が住む地域で何ができるかまで話せると、防災を人ごとにしていないことが伝わります
札幌市の魅力2023年度の来札観光客は約1,454万人。令和8年4月に宿泊税を導入し、令和8年度は31億円の税収を見込む。財源はDMOの本格稼働やイベントの魅力向上、観光地周辺の除排雪強化に充てられる好きな場所を挙げるだけで終えないことです。観光で得た財源が市民の暮らしに戻る流れまで説明できると、市の設計を理解した答えになります

使い方のコツは、6つを覚えきることよりも絞り込むことです。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおきましょう。

想定される評価の観点

面接は、求める人物像に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
市民自治の担い手として動けるか与えられた役割をこなすだけでなく、周りを巻き込んで動いた経験があるか札幌市が掲げる市民自治は、町内会やまちづくりセンターが舞台です。任された役割を自分なりに作り替えた場面を選び、誰にどう声をかけたかまで話せる状態にしておく
多様な立場の人を尊重できるか事情の違う相手と、どこで折り合いをつけてきたか重要概念のユニバーサルは、支える側と支えられる側を固定しない考え方です。意見が割れた場面で、自分がどこを譲りどこを譲らなかったかを整理しておく
変化に向き合い、新しいやり方を試せるかうまくいかない状況で、やり方そのものを変えた経験があるか市では「書かない窓口」のように手続きの形を変える取組が進んでいます。自分が手順や道具を変えて負担を減らした小さな工夫を、変える前と後の違いが分かる形で用意しておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

札幌市では面接カードをその場で書くため、書いた内容と話す内容を事前にすり合わせておく対策も使えません。

どの経験を掘られても細部まで語れる実体験に根ざした答えを、日ごろから用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新年度の受験案内を読み、一般方式とSPI方式のどちらで受けるかを決めたうえで、自分の区分に1次面接があるかを確認する(面接カードは当日会場で記入するため、事前提出書類との整合ではなく、その場で書き切る準備が必要です)
  2. 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
  3. 7つのカテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 自治体研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、雪・人口減少・観光と宿泊税・冬の防災のうち志望分野に近いものを2つか3つ選び、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の対応表から材料を集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。面接カードを想定して、20分で自分のことを書き切る練習も一度はしておく

優先順位に注意

ステップ4と5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、札幌市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

札幌市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

札幌市役所の想定問答集を見る

さいごに

札幌市の受験案内には、各試験種目の配点が示されていません。「面接だけで決まる」とも「筆記さえ通れば安心」とも言えません。

だからこそ、筆記試験の当日にその場で面接カードを書き、その内容をもとに人物を見られるという流れに、落ち着いて臨めるかどうかが効いてきます。

約196万人が暮らす北海道最大の都市が、人口減少と毎年5メートル近い雪を抱えながら次の10年をどう歩むのか。

まちづくり戦略ビジョンの都市像に「ゆき」が入っている意味を、自分の経験と重ねて説明できるようになれば、志望動機は他の受験者と同じ形をしなくなります。

時間が限られていても、まずは自分の経験を一つ、雪か人口か観光のどれかに結び付けてみるところから始めてみてください。