日立市消防本部を受験する方に向けて、面接で問われる前提となる組織研究の材料(本部の特徴基礎データ管轄地域の特性と災害リスク消防課題重点方針)と、面接本番の流れ想定される質問評価の観点を、1ページに整理しました。

日立市消防本部の面接試験では、「なぜ警察官や自衛官ではなく消防官なのか」「なぜ日立市消防本部なのか」「自分の経験や強みを消防の仕事でどう活かしたいか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。震災の経験を踏まえてどのように体制を整えてきたかという歩みを知っておくことで、どの消防本部にも当てはまる一般論を避け、日立市に固有の事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。

組織研究と面接対策をあわせて1ページに整理していますので、この記事を志望動機づくりの手引きとして役立ててください。

第1部|組織研究編

日立市消防本部の特徴

面接対策を本格的に始める前に、まずは日立市消防本部の全体像をつかんでおきましょう。

  • 日立市消防本部は、日立市を単独で管轄する消防本部市の北部から南部まで太平洋沿いに細長く広がる市域を、複数の署所で受け持っている
  • 本部・日立消防署のほか、北部消防署・南部消防署・多賀消防署の3署と、田沢出張所・西部機関員派出所・十王出張所の3出張所を置く。
  • この体制を担う消防吏員(消防士などの階級を持つ職員)は288人、うち女性は5人となっている(令和7年4月1日現在)。
  • 令和6年中の出動件数は火災44件・救急10,410件・救助140件で、救急が業務量の大半を占める。
  • 消防職の採用は日立市職員採用試験委員会(人事課内)が実施する消防専用の受験案内にもとづき行われる。
  • 北部消防署は令和8年4月1日に新庁舎の供用を開始する予定とされる。
  • 東日本大震災で救助艇や出張所の望楼が被災した経験を踏まえ、高度救助隊の発足署所の再編など、その後の体制整備を重ねてきた。

日立市消防本部の基礎データ

面接に向けた組織研究では、統計値をすべて暗記する必要はありませんが、「日立市消防本部の大体のスケール感」をつかんでおくことは重要です。

以下の表に、管内人口や吏員体制、出動件数など、規模感を説明できる項目をまとめました。

項目内容
管内人口161,010人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
高齢化率34.6%(令和8年1月1日現在)
75歳以上率21.2%(令和8年1月1日現在)
設置形態単独(日立市)
消防吏員数288人(うち女性5人)※令和7年4月1日現在
火災出動件数44件(令和6年中)
救急出動件数10,410件(令和6年中)
救助出動件数140件(令和6年中)
署所日立消防署(本部)・北部消防署・南部消防署・多賀消防署の4署と3出張所

管内人口・高齢化率・75歳以上率は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在によります。消防吏員数・出動件数は総務省消防庁の全国消防本部データ検索(日立市消防本部のページ)の年次明記値によります。署所は日立市消防本部の消防署紹介ページによります。

年間1万件を超えた救急出場が示す業務の重心

表を見ると、火災44件に対して救急は10,410件と、およそ236倍もの開きがあります。

日立市の救急出場は2023(令和5)年に初めて年間1万件を超え、そのうち入院の必要がない軽症者の占める割合は約50%となっています。件数の多さだけでなく、緊急性の低い利用への対応も課題であることがうかがえます。

日立市の高齢化率は34.6%、75歳以上率は21.2%(いずれも令和8年1月1日現在)です。同じ住民基本台帳・令和8年1月1日現在で見た茨城県全体の高齢化率30.5%を4ポイント余り上回る水準にあり、市の人口構成の高齢化が進むほど、救急需要はさらに高い水準で推移していくと考えられます。

「日立市消防本部の救急出場は、令和5年に初めて1万件を超えたと聞きました。そのうち軽症の方の割合が半分近くを占めているそうなので、緊急性の見極めも含めた対応力が求められているのだと感じています」

管轄地域の特性と災害リスク

管轄地域の全体像

  • 日立市は茨城県北部の太平洋に面した市で、東日本大震災では消防の施設や資機材そのものにも被害が及びました。
  • 管内人口は161,010人、高齢化率は34.6%です(前章参照)。
  • 本部を置く日立消防署のほか、北部・南部・多賀の各消防署が地域ごとの拠点となり、田沢出張所・西部機関員派出所・十王出張所がこれを補完する配置です。

海に面した市を管轄する本部でありながら、東日本大震災では救助艇が大破し、出張所の望楼を撤去することになりました。日立市消防本部の管轄地域を説明するときは、この被害の事実と、その後に組み直された設備・隊の編成をひと続きで語れるかどうかで厚みが変わります。

東日本大震災による被災と、その後の体制整備

日立市消防本部は東日本大震災で、保有していた救助艇が大破し廃船となったほか、臨港消防署久慈出張所の望楼が被災し撤去されるという被害を受けました(出典:日立市消防総合基本計画。この経験を踏まえ、平成24年4月には隊員16人体制の高度救助隊を発足させました。

令和2年4月には、臨港消防署・臨港消防署久慈出張所・多賀消防署大沼出張所の1署2出張所を統合し、訓練用プールを備えた南部消防署を新たに開庁しています。あわせて、平成26年には国の事業により水陸両用バギーを搭載した津波・大規模風水害対策車が配備され、令和3年には熱海市伊豆山土石流災害の現場へ、指揮隊車と津波・大規模風水害対策車を派遣した実績もあります。

現在は、統合機動部隊である指揮隊・救急小隊・特殊装備小隊等11隊を緊急消防援助隊に登録し、特別救助隊員64人(うち高度救助隊員16人・水難救助隊員16人)の体制で活動しています(いずれも令和6年現在)。

令和5年台風第13号の教訓

2023(令和5)年の台風第13号では、日立市内全域で土砂崩れや河川の氾濫が発生し、日立市役所の本庁舎も浸水被害を受けました。震災という過去の大規模災害だけでなく、近年の風水害についても被害の実績があるという事実は、この管轄地域の災害リスクを説明するうえで欠かせません。

令和6年4月1日現在、日立市消防本部が保有する消防車両はポンプ車8台・救急車9台・はしご車3台・化学車2台・救助工作車2台・津波風水害車1台・水陸両用車1台で、消防水利は消火栓1,192か所・防火水槽885か所にのぼります。震災と風水害の両方を経験した本部として、車両と水利の両面から備えを積み重ねてきたことがうかがえます。

日立市の主な消防課題

ここまでの数字と地域の姿を踏まえると、日立市消防本部が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「消防の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

救急需要の増加

日立市消防本部の救急が令和5年に1万件の大台に乗ったのと同じころ、全国の救急出動も令和6年中で771万8,380件という過去最多の水準に達しています(出典:令和7年版 救急・救助の現況

令和6年中の10,410件という日立市消防本部の数字は、その全国的な水準の中にあります。軽症の割合が約半分を占める状況とあわせて、増えた要請にどう向き合うかが問われ続けています

震災・風水害を踏まえた大規模災害への備え

救助艇の大破や出張所望楼の被災という経験を経て体制を整えてきた日立市消防本部にとって、備えを止めないことは組織としての一貫した課題です。全国の消防本部の約99%にあたる718本部(6,661隊・令和6年4月1日現在)が加わる緊急消防援助隊の枠組みのもと、統合機動部隊11隊を登録し、熱海市への派遣実績も持つ本部として、管轄を越えた応援体制への理解も引き続き求められます

予防・住宅防火

日立市消防本部の令和6年中の火災は44件で、救急の10,410件とは大きな開きがあります。ただし件数が少ない業務ほど、平時の立入検査や防火指導といった予防の仕事は表に出にくくなります。

出動の統計に表れない業務まで視野に入っているかどうかは、志望動機の説明の幅にそのまま直結します。拠点の面では、多賀消防署が平成29年9月に新庁舎を開庁するなど、施設の更新も順に進められてきました。

日々の予防と警防の活動は、こうした庁舎や車両の更新に支えられています

人材確保と女性吏員の活躍

日立市消防本部の吏員288人のうち、女性は5人で、割合は約1.7%です。全国平均(約3.8%・168,230人中6,386人・令和7年4月1日現在)と比べると低い水準にあり(出典:女性消防吏員の活躍推進|消防庁、国が掲げる「令和8年度当初までに5%」という目標に向けて、どう人材を確保していくかが課題として浮かび上がります

指令業務の広域化への対応

日立市は令和7年度から「茨城消防救急無線・指令センター運営協議会」に加入し、令和10年度からは「いばらき消防指令センター」で指令業務の共同運用を始める予定です。

単独の消防本部として培ってきた指令のノウハウを、広域の枠組みにどう引き継いでいくかも、これからの体制づくりの課題です。共同運用の開始を見据えて計画期間を10年から5年へ短縮したという判断そのものが、変化への向き合い方を映しています

重点方針|日立市消防総合基本計画

日立市消防本部の活動の土台にあるのが、「日立市消防総合基本計画」です。

現行の計画は2025(令和7)年度から2029(令和11)年度までの5年間を計画期間としています。これまでの計画期間は10年間でしたが、令和10年度からのいばらき消防指令センターでの共同運用等を踏まえ、計画をより実情に即した柔軟なものとするため、5年間へと改められました(出典:日立市消防総合基本計画

計画期間の設定そのものに、指令業務の広域化という近い将来の変化を織り込む姿勢が表れています。北部消防署の新庁舎が令和8年4月に供用を開始する予定であることも、この計画期間の中に位置づけられる動きの一つです。

あわせて、日立市消防本部は毎年の活動実績を消防年報「ひたち消防」として公表しており、直近では令和8年上半期(1月〜6月)の火災・救急件数等が速報値として掲載されています。数字の動きを年ごとに追える体制も、この本部の情報公開の姿勢を示しています

POINT|「被災の経験」をどう自分の言葉にするか

震災の被害を知っているだけでは、面接での評価にはつながりません。被害の事実を挙げたら、そこから高度救助隊の発足や南部消防署の統合開庁へ話をつなぎ、最後は自分の経験や強みをその流れのどこに置きたいのかまで届かせてください。ここが一続きになって初めて、調べたことが志望動機の材料になります。

悪い例「災害から人を助けたいので、消防官を志望します」

改善例「日立市消防本部は、震災で救助艇を失ったあとに高度救助隊を発足させ、訓練用プールを備えた署へ統合するところまで進めてきたと知りました。私も、うまくいかなかった経験を次の準備に変えていく働き方をしたいと考えて志望しています」

あわせて確認したい公式資料

採用試験案内はエントリー動画の登録期限が絡むため最優先で目を通し、消防総合基本計画と消防年報は、震災を経た体制整備の歩みを自分の言葉で語れるようにするための素材として活用してください。

  • 令和8年度日立市職員採用試験案内【消防】
  • 日立市消防総合基本計画
  • 日立市消防本部の消防署紹介ページ
  • 消防年報「ひたち消防」(消防統計ページ)
  • 総務省消防庁の全国消防本部データ検索(日立市消防本部のページ)

受験案内と消防総合基本計画は、試験の手続きと組織の方向性をそれぞれ確認できる基本の2点です。消防年報は年度ごとの実績を確かめられるため、面接直前の数字の見直しにも使いやすい資料です

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、日立市消防本部専用の面接想定問答集をご用意しています。日立市消防本部の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

日立市消防本部の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

日立市消防本部の面接の概要

ここからは、日立市消防本部の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて詳しく整理していきます。

日立市消防本部の採用試験の流れ(令和8年度時点)

日立市の消防職採用試験は日立市職員採用試験委員会(人事課内)が実施する消防専用の受験案内にもとづきます。エントリー動画(録画面接)の登録から始まり、第一次のSCOA総合適性検査、第二次・第三次の個別面接へと続く3段階の選考です。

エントリー期間中に動画を登録しないと、そもそもSCOA総合適性検査を受験できない仕組みになっています。

項目内容(令和8年度)
試験の段階3段階。第一次=エントリー動画(録画面接)+SCOA総合適性検査(テストセンター)、第二次=作文試験・適応性試験・個別面接・体力検査、第三次=個別面接
面接の種類録画面接(第一次)+個別面接(第二次・第三次の計2回)。方法はいずれも「個別面接」と公表され、集団面接・集団討論の記載はない
体力検査懸垂、上体起こし、腕立て伏せ、反復横跳び、274.3m疾走の5種目(第二次試験)
試験会場第二次試験は日立市消防本部、第三次試験は日立市役所
採用予定数3名程度

上記は日立市が公表する令和8年度職員採用試験案内【消防】にもとづくものです。試験の構成・内容は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ず最新の受験案内をご確認ください。第二次試験の会場は日立市消防本部、第三次試験の会場は日立市役所と、段階によって場所が変わる点も覚えておきましょう。

受験資格は4区分に分かれています。区分1は大学卒業者(見込みを含む)、区分2は短大・専門学校(2年制以上)卒業者、区分3は高校・専門学校(1年制)卒業者を対象とし、それぞれ生まれた年月日の範囲が定められています。

区分4だけは学歴要件によらない枠で、消防学校の初任教育を修了した方、または原典の表記で「救命救急士の資格を有する方」が対象です。試験結果の開示は第一次・第二次の不合格者に限られ、開示内容は総合得点及び総合順位等で、電話やはがきによる開示、写しの交付は行われません。

学校卒業直後に採用された場合の給料月額(地域手当8%を含む)は、大学卒286,848円、短大卒272,592円、高校卒253,908円(令和8年4月1日現在)です。学歴区分によって初任給に差が設けられていることも、あわせて押さえておくとよいでしょう。

日立市消防本部が求める人材

令和8年度の職員採用試験案内【消防】と日立市消防本部の公式ページの本文には、消防職に向けた「求める人物像」の明文は置かれていません。代わりに手がかりになるのが、震災の被害を体制整備につなげてきたこの本部の歩みです。

高度救助隊の発足、署所の再編、水陸両用バギーを搭載した車両の配備を重ね、他の被災地へ応援に出向くところまで力量を伸ばしてきた組織ですから、決められた手順を守る堅実さに加えて、起きたことを次の備えに変えていく構えが歓迎される職場だと見てよいでしょう。

もう一つ、吏員300人前後で市域全体を単独で受け持つ本部では、救急が出動の大半を占める一方、救助の専門的な業務から立入検査のような行政的な仕事まで一人の職員が順に経験していきます。体力や現場対応力だけを見るのではなく、住民への説明や書類の仕事にも向き合える幅が選考で見られやすい、という一般的な整理も成り立ちます。

ただしこちらは日立市が選考基準として掲げたものではなく、同じ規模・形態の本部から引き出した一般論にとどまります。録画面接から第三次の対面面接まで3回にわたって人物を確かめる設計である以上、最初の動画で語った内容を、対面の場でどこまで具体的に補強できるかが、この本部への適性を示す実質的な勝負どころになります。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。日立市消防本部の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日はどうやってここまで来ましたか?緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます
② 動機・志望なぜ日立市消防本部を志望するのですか?消防官という仕事と日立という土地を、自分の言葉で選べているか
③ 自己理解あなたの短所(弱み)は何ですか?自分を客観視できているか。弱みへの向き合い方に人柄が出ます
④ 経験・行動これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください過去の行動の事実。壁にぶつかったときの対処が現場の仕事に通じるか
⑤ 学業・経歴学生生活で最も力を入れたことは何ですか?物事への取り組み方の筋道を、自分の言葉で説明できるか
⑥ 適性・将来体力に自信はありますか?交替制勤務と現場活動を続けるための体力・生活習慣・覚悟
⑦ 公共性・社会性消防官(公務員)に最も必要な資質は何だと思いますか?仕事の公共性への理解と、社会の出来事への当事者意識

この7つの型は面接準備の骨格として使えますが、日立市消防本部ならではの答えになるかどうかを分けるのは、動画審査から数えて3回の選考でくり返し確かめられる次の固有質問です。

合否を分けるのは日立市消防本部に固有の質問

「なぜ警察官や自衛官ではなく、消防官を志望するのですか」
「なぜ日立市消防本部なのですか」

録画面接から第三次の個別面接まで、3回にわたって人物を確かめられる試験だからこそ、その場の思いつきではなく、一貫して語れる材料を事前に準備しておく必要があります。似た仕事との違いや、日立市ならではの事情を、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

質問テーマ知っておきたい日立市の事実答え方のヒント
震災・大規模災害への理解東日本大震災で救助艇が大破。その後高度救助隊を発足させ、南部消防署を統合開庁(詳細は第1部3章)被害の事実と、その後の体制整備をセットで説明できるようにする
救急需要への理解令和6年中の救急出動は10,410件。令和5年に初めて年間1万件を超えた(詳細は第1部2章・4章)件数の推移と、軽症搬送という論点をあわせて説明する
風水害への理解令和5年台風第13号で市内全域が被災、市役所本庁舎も浸水(詳細は第1部3章)震災とは別の災害リスクとして、区別して説明できるようにする
組織の方向性と指令の広域化「日立市消防総合基本計画」は令和7〜11年度の5年計画。令和7年度に茨城消防救急無線・指令センター運営協議会へ加入し、令和10年度からいばらき消防指令センターで共同運用(詳細は第1部4章・5章)単独本部として培った指令の経験を、広域の枠組みにどう引き継ぎたいかまで言えると具体性が増す
人材確保・女性吏員吏員288人中女性5人・約1.7%(全国平均は約3.8%、詳細は第1部4章)震災を経て体制を整えてきた文脈に、自分の関わり方を重ねて語る

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 消防吏員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

日立市は、試験の段階と種目までは公表していますが、各段階の配点までは明らかにしていません。判断材料が乏しい部分は、公務員試験で広く使われるコンピテンシー評価という一般的な考え方を手がかりに整理します。

録画面接・第二次・第三次と3回にわたって人物が確かめられる設計から考えると、一度の受け答えの出来映えよりも、複数の選考をまたいで話がぶれないことのほうが効いてくる設計だといえます。エントリー動画という書類選考とは異なる形式が最初に置かれている点も特徴で、対面以外の場でも自分の言葉で語れるかどうかが、早い段階から見られていると考えておくとよいでしょう。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
災害への理解と当事者意識震災や台風の被害・体制整備をどこまで自分の言葉で説明できるか被害の事実と対策をセットで整理し、自分の関わり方まで言えるようにする
体力・現場対応への適性体力検査5種目を経て、実際に現場で動ける準備ができているか日頃の体づくりの取組を、具体的なエピソードとあわせて説明する
一貫性のある人物像録画面接・第二次・第三次と、3回の選考で話す内容にぶれがないか1回目に話した内容を、後の回でさらに深掘りされても崩れない粒度で整理しておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

録画面接を含め3回の選考がある日立市消防本部ではなおさらです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新の受験案内を読み、エントリー動画の登録期限と受験資格の区分、提出書類、体力検査の5種目を確認する
  2. これまでの経験を棚卸しする。部活動・アルバイトや学業の中で、自分から動いた場面を1つずつ書き出す。動画審査を見据え、初対面の相手にも伝わる話し方も意識しておく
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。体力検査に向けたトレーニングも並行して進める

優先順位に注意

ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を消防の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で日立市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。エントリー動画の準備に時間を取られすぎて、肝心の自己分析が手薄にならないようにも注意しましょう。

なお、動画審査から始まる選考を独学で仕上げていく場合は、日立市消防本部専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

日立市消防本部の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。エントリー動画から第三次まで、3回の選考で語る内容をそろえておくには、早い時期から手をつけておくのが得策です

日立市消防本部の想定問答集を見る

さいごに

日立市消防本部の消防職採用試験は、エントリー動画から始まり、第二次・第三次の個別面接へと続く、人物を何度も確かめる構成です。

東日本大震災で救助艇が大破するという被害を受けながら、高度救助隊の発足や南部消防署の統合開庁を経て、熱海市伊豆山土石流災害へ応援に出向く力量まで備えてきたのが、この本部の歩みです。

救急出場が年間1万件を超え、令和5年の台風第13号でも市役所本庁舎が浸水する被害を受けた現状まで踏まえたうえで、3回の選考を通じて崩れずに語れる自分の言葉を用意していってください。日立市の16万人余りの暮らしを預かる仕事を志す皆さんの準備を、当研究会は最後まで支えていきます。