高萩市消防本部を受験する方に向けて、面接で問われる前提となる組織研究の材料(本部の特徴・基礎データ・管轄地域の災害リスク・消防課題・重点方針)と、面接本番の流れ・想定される質問・評価の観点を、1ページに整理しました。
高萩市消防本部の面接試験では、「なぜ警察官や自衛官ではなく消防官なのか」「なぜ高萩市消防本部なのか」「東日本大震災を経験したまちで消防官として何を大切にしたいか」といった、組織の成り立ちと市が受けた被害への理解を前提とする質問が想定されます。単独で設置された比較的小さな本部ならではの事情を押さえておけば、どこの消防でも言える話に落ち着かずに済みます。
下でまとめた事実を手元に置きながら、自分の経験や関心が高萩市消防本部の仕事のどこにつながるのかを、回答づくりの中で確かめていってください。
第1部|組織研究編
高萩市消防本部の特徴
まずは高萩市消防本部という組織の輪郭をつかんでおきましょう(時間のない方はここだけでも目を通してください)。
- 高萩市消防本部は、高萩市が単独で設置する1本部1署体制の消防本部で、昭和40年4月1日に消防吏員総員21名で発足した。
- 平成16年11月から平成20年3月までは高萩市・日立市事務組合消防本部として運営されていた時期があり、平成20年4月1日に組合が解散して現在の高萩市消防本部が発足した。このとき十王消防署は日立市消防本部に移管されている。
- 消防吏員は63人(女性0人・令和7年4月1日現在)。
- 令和6年中の出動件数は火災出動15件・救急出動1,634件・救助出動38件。
- 昭和41年6月5日制定の「消防人訓」を組織の理念として掲げている。
- 消防職員は高萩市が市の職員採用試験の一区分として直接採用しており、令和8年度の消防職採用予定人員は2名程度である。
高萩市消防本部の基礎データ
組織研究では細かな数字の暗記よりも、単独設置の小規模本部としての体制の大きさを把握しておくことが役に立ちます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄 | 高萩市(単独設置・1本部1署) |
| 所在地 | 〒318-0014 高萩市東本町3-11 |
| 管内人口 | 25,174人(住基人口・令和8年1月1日現在) |
| 消防吏員数 | 63人(女性0人)※令和7年4月1日現在 |
| 火災出動件数 | 15件(令和6年中) |
| 救急出動件数 | 1,634件(令和6年中) |
| 救助出動件数 | 38件(令和6年中) |
消防吏員数・出動件数は総務省消防庁が公表する全国の消防本部データによります(吏員数は令和7年4月1日現在、出動件数は令和6年中)。市が公式サイトで公表する「災害出場件数」は年ごとの集計単位や年途中の累計値を含む別の指標であり、ここでは時点が明確な消防庁データを採用しています。管内人口は住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数(令和8年1月1日現在)によります。全国の消防本部データ|高萩市消防本部
63人が支える25,174人のまち
高萩市の高齢化率は39.0%、75歳以上人口の割合も22.1%にのぼります(いずれも住基令和8年1月1日現在)。
消防吏員63人という体制は、市内の火災・救急・救助のすべてを担う人数としては決して多くありません。火災出動15件に対して救急出動は1,634件と大きな差があり、限られた人数で救急を中心とした需要に応える体制になっていることがわかります。
管轄地域の特性と災害リスク
地理と気候
- 高萩市は茨城県の北東部に位置し、東は太平洋に面し、西は阿武隈山系南端の多賀山地が連なる。北は北茨城市、南は日立市、西は常陸太田市に接する。
- 面積は193.55km²で、茨城県平均(138.56km²)より広く、県内44市町村のうち13番目の面積規模にあたる。
- 山間部は海抜300〜500mという地理的条件により、海岸部より年平均気温が約2〜4度低い内陸性気候を示す。
市は北茨城市・日立市・常陸太田市と隣接消防相互応援協定を結んでおり、いずれも平成20年4月1日に締結されています。単独の小さな1本部1署体制であるからこそ、近隣本部との日頃からの連携が、管内の消防力をしっかりと支える重要な要素になっています。
東日本大震災の記録
平成23年3月11日に発生した東日本大震災(マグニチュード9.0)で、高萩市は本町・安良川ともに震度6強を観測しました。市は地震発生の4分後にあたる同日14時50分に災害対策本部を設置し、避難勧告を発令しています。
避難勧告が解除されたのは3月13日17時58分でした。(出典:東日本大震災の記録|市制70周年記念)
人的被害は死者1名・重傷者2名・軽傷者18名の計21名、建物被害は全壊222棟・大規模半壊205棟・半壊971棟・一部損壊4,305棟にのぼりました。津波の高さは3m程度で、床上浸水10件・床下浸水18件が発生しています。
ライフラインは市内全域で断水・停電し、上水道の全線通水は3月23日、電気の全域通電は3月15日でした。避難所は14箇所開設され、避難者数は最大時で4,845人に達しています。
将来の地震・津波リスク
茨城県が公表した地震被害想定調査報告書(平成30年12月)では、沿岸に津波被害をもたらす「茨城県沖から房総半島沖にかけての地震」で、死者50人・建物全壊焼失9,500棟(いずれも夏12時の想定)とされ、沿岸部全域で津波被害が発生するとされています。
東日本大震災で実際に床上・床下浸水が生じた高萩市にとって、沿岸部の津波想定は現在の備えに直結する数字です。(出典:茨城県地震被害想定調査報告書|平成30年12月公表)
高萩市の主な消防課題
震災で市内全域の断水と停電を経験した市を、1本部1署・吏員63人で守る。その体制のもとで何に力を入れているのかを追うことが、課題を語るときの手がかりになります。
面接で使える論点は、次の3つです。
大規模災害への備え
高萩市消防本部は、緊急消防援助隊茨城県隊として出動した実績を公表しているほか、令和4年度緊急消防援助隊関東ブロック合同訓練にも参加しています。東日本大震災で自らも被災した経験を踏まえ、市は「消防計画に係る日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策の作成例」を案内するなど、次の大規模災害への備えを継続しています。
救急需要と新しい取組
救急出動は全国的にも増え続けており、令和6年中は771万8,380件と集計開始以降の最多を更新しました。高萩市消防本部でも、令和7年10月からマイナ救急実証事業を実施し、スマートフォンを活用した映像通信システム「Live119」の試行運用やラピッドカーの運用など、新しい取組を進めています。(出典:令和7年版 救急・救助の現況)
予防業務と人材確保
市は令和8年1月1日から林野火災注意報・警報の運用を新たに開始しました。山間部を抱える高萩市らしい予防の取組といえます。
一方で、消防吏員63人のうち女性は0人という体制にあります。全国平均は約3.8%(消防吏員168,230人中6,386人・令和7年4月1日現在)で、国は「令和8年度当初までに5%」という目標を掲げています。
小規模な本部だからこそ、性別を問わず幅広い人材を確保していくことが、今後の課題として意識されます。(参考:女性消防吏員の活躍推進|消防庁)
重点方針|消防人訓にみる使命と現在の取組
高萩市消防本部の活動の土台にあるのは、昭和41年6月5日に制定された「消防人訓」です。「消防人は勇気を尊ぶべし」「消防人は迅速を旨とすべし」「消防人は責任を重んずべし」「消防人は規律を正しくすべし」「消防人は協同一致すべし」の5訓と、「消防が水火災等の災害を防ぎ、社会公共の安寧と福祉に寄与することの甚大なことを自覚し」市民に奉仕するという前文からなります。
半世紀以上前に定められた理念ですが、勇気・迅速・責任・規律・協同という5つの言葉は、現在の消防の仕事にもそのまま通じるものです。(出典:消防年報 令和6年版)
この理念を体現する形で、高萩市消防本部は現在も新しい取組を重ねています。マイナ救急実証事業、映像通信システム「Live119」の試行運用、ラピッドカーの運用、林野火災注意報・警報の新設など、限られた人員体制の中でも救急・予防の両面で工夫を続けている点は、志望動機を考える上での材料になります。
あわせて確認したい公式資料
読んでおきたい資料は3点あります。採用試験案内は募集が始まったらすぐに、消防年報と震災の記録は準備期間の早いうちに手を付けておくと、組織研究に厚みが出ます。
- 高萩市職員採用試験案内(消防職区分を含む)
- 高萩市消防年報(消防人訓・組織の沿革・災害出場件数を収録)
- 東日本大震災の記録(市制70周年記念)
消防年報には、組織の沿革や消防相互応援協定の一覧まで掲載されています。組織の歴史を体系的に知っておくと、面接で組織の変遷を問われたときにも落ち着いて答えられます。
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。震災の被害数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、高萩市消防本部専用の面接想定問答集をご用意しています。高萩市消防本部の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
高萩市消防本部の面接の概要
ここからは、高萩市消防本部の試験の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公表されている資料と当研究会の分析にもとづいて整理していきます。
採用試験の流れ
高萩市消防本部の消防職員は、高萩市が市の職員採用試験の一区分として直接採用しています。令和8年度(令和9年4月1日採用)の消防職採用予定人員は2名程度で、大学卒・短大卒・高校卒の3区分に分かれます。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 実施主体 | 高萩市(市の職員採用試験の一区分・消防職) |
| 採用予定人員 | 2名程度(大学卒・短大卒・高校卒の3区分) |
| 試験の段階 | 第1次試験(作文試験、終了後に別会場で体力試験)、第2次試験(口述試験・ストレス耐性テスト) |
| 面接の種類 | 口述試験(個別面接)。集団討論の記載はなし |
| 体力試験の内容 | 懸垂・跳躍・腕立て伏せ・起き上がり・疾走等により持久力及び基礎体力を評定 |
| 求める人物像 | 「市民が主役のまちづくりの実現」を基本理念とし、前例にとらわれず時代の変化に柔軟に対応し、市民と協働のもとに課題の解決に取り組むことができる人材 |
上記の内容は、2026年9月時点で高萩市が公表している令和8年度職員採用試験案内にもとづくものです。表には、同案内で消防職について確認できた内容を記載しています。試験の内容は年度ごとに見直される場合があります。受験の際は、必ずご自身が受験する年度の最新の受験案内をご確認ください。
高萩市消防本部が求める人材
高萩市は、「市民が主役のまちづくりの実現」を基本理念とし、前例にとらわれず、時代の変化に柔軟に対応し、市民と協働のもとに課題の解決に取り組むことができる人材を求めていますと、求める人物像を明確に示しています。
決められたやり方に固執せず、状況に応じて柔軟に対応できるかどうかは、少人数体制の高萩市消防本部で働くうえでも重要な資質だと考えられます。第2次試験でストレス耐性テストが行われる点も、変化やプレッシャーへの対応力を重視している表れといえるでしょう。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。高萩市消防本部の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 会場までの道のりで、何か目についたものはありましたか? | 雑談への切り返し方に、緊張の中でも自然に受け答えできるかが表れます |
| ② 動機・志望 | なぜ高萩市消防本部を志望するのですか? | 消防官という仕事と、この地域で働くことを、自分の言葉で選べているか |
| ③ 自己理解 | 自分の弱いところをどう克服してきましたか? | 弱みを認めたうえで、どう向き合ってきたかに人柄が表れます |
| ④ 経験・行動 | 状況が変わったときに、自分から対応を変えた経験を教えてください | 過去の行動の事実。柔軟さが求める人物像に通じるか |
| ⑤ 学業・経歴 | 学業やアルバイトで工夫したことはありますか? | 限られた条件の中で、自分なりの工夫を重ねられるか |
| ⑥ 適性・将来 | 夜間の勤務や急な出動にも対応できますか? | 不規則な勤務サイクルの中で生活リズムを保つ覚悟 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 地域の安全を守る仕事に、どんな責任を感じますか? | 公務員として担う責任の重さを、自分の言葉で理解できているか |
ここまでは全国どこの面接でも土台になる部分です。高萩市消防本部という選択の中身は、次の固有質問で掘り下げられます。
合否を分けるのは高萩市消防本部に固有の質問
1問目は消防官という職業への理解の深さを、2問目は市が経験してきた災害をどれだけ調べているかを見る質問です。
両方とも、下調べの量が答えの説得力にそのまま直結します。面接で使いやすい事実を絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい高萩市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 東日本大震災の経験 | 震度6強を観測し、死者1名・建物全壊222棟などの被害。避難者数は最大4,845人(詳細は第1部3章) | 被害の大きさに触れつつ、そこから現在の備えにどうつながっているかまで話せると理解の深さが伝わります |
| 組織の成り立ち | 平成16年から平成20年まで日立市との事務組合だった時期があり、現在は高萩市単独の1本部1署体制(詳細は第1部1章) | 組織の成り立ちまでさかのぼって話せると、志望の理由に筋が通ります |
| 消防人訓 | 昭和41年制定の消防人訓が5訓と前文からなり、勇気・迅速・責任・規律・協同を掲げる(詳細は第1部5章) | 理念のどの部分に共感するかを、自分の言葉で説明できるようにしておきます |
| 新しい取組 | マイナ救急実証事業、Live119の試行運用、ラピッドカーの運用、林野火災注意報の新設(詳細は第1部4章・5章) | 小規模な本部でも新しい取組に挑戦している点に触れられます |
使い方のコツは、4つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 消防官としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
高萩市は、求める人物像の基本理念として「市民が主役のまちづくりの実現」を掲げています。この人物像を面接準備の物差しにするのが、最も確実な方法です。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 柔軟な対応力 | 前例にとらわれず、状況に応じて自分の対応を変えた経験があるか | マニュアルどおりに動いた経験より、自分で工夫した場面を具体的に振り返る |
| 市民との協働 | 立場の違う相手と関わりながら、物事をまとめた経験があるか | 誰に何を働きかけ、その結果どう動いたのかまで話せるようにする |
| 精神的な強さ | ストレスのかかる状況でも、落ち着いて対応できる素地があるか | プレッシャーの中で結果を出した経験を、感情の動きまで含めて振り返っておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。ストレス耐性テストのように高萩市消防本部ならではの検査もあるため、実体験に根ざした答えを事前に用意し、落ち着いて臨めるようにしておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 令和8年度の職員採用試験案内を読み、消防職の受験区分(大学卒・短大卒・高校卒)と提出書類を確認する
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学業から、状況の変化に自分から対応した具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。第1次試験の体力試験を見据えて、体づくりと生活リズムの調整も同時に進める
優先順位に注意
ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を消防の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。震災の被害数字をそのまま並べても、それは市の記録を読み上げたにすぎません。
悪い例「公務員は安定していると思ったので、高萩市消防本部を志望しました」
改善例「懸垂や疾走など、体力試験の種目を意識して日々のトレーニングに取り組んでいます。あわせて、高萩市消防本部が限られた人数で幅広い業務にあたり、新しい取組にも挑戦していると知りましたので、柔軟に対応できる消防官になりたいです」
なお、面接対策を独学で最短ルートで仕上げたい場合は、高萩市消防本部専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
高萩市消防本部の面接で想定される質問を1問ずつ並べ、回答例だけでなく、その質問で何を確かめられているのか、どんな答え方を避けるべきかまで書き添えています。第2次試験には口述試験とストレス耐性テストが置かれていますので、答えの中身を早い段階で固めておくことが、当日の落ち着きにもつながります。
さいごに
高萩市消防本部は、63人という限られた体制で25,174人の暮らしを支える単独設置の消防本部です。東日本大震災では震度6強を観測し、建物被害や市内全域の断水・停電に至る事態を経験しており、その教訓が現在の備えにつながっています。
マイナ救急やラピッドカーの運用など、小規模な本部だからこそ機動的に新しい取組を進めている点も、この組織の特徴です。昭和41年制定の消防人訓が掲げる勇気・迅速・責任・規律・協同という5つの言葉のうち、自分の経験と結び付けて語れるものはどれか、探してみてください。
見つかった一語を軸に話を組み立てられたなら、63人の輪に加わる準備はもう半分できています。残りの半分を埋める時間を、あきらめずに積み重ねてください。