本記事では、明石市職員採用試験の面接対策で必要な、明石市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。事務職(正規)の採用試験を軸に整理しました。
明石市役所の面接試験では、「なぜ明石市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。市の実情や政策を理解しておくことで、抽象的な回答を避け、明石市ならではの事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と明石市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
明石市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは明石市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 日本の標準時を決める東経135度の子午線が通る「日本標準時のまち」。明治19年(1886年)に、イギリスのグリニッジからちょうど135度離れたこの経線上の時刻を日本の標準時と定めたことに由来する。
- 市域は瀬戸内海に面し、東は神戸市、西は加古川市、北は加古郡稲美町・播磨町と接する。南は明石海峡を挟んで淡路市に向かい合う。
- 住民基本台帳による人口は307,487人(令和8年1月1日現在)。面積は49.41平方キロメートルで、限られた土地に30万人を超える市民が暮らす。
- 子午線上には昭和5年(1930年)に建てられた標識があり、地球をかたどったかごの上に、あきつ島を象徴するトンボが乗る。
- 明石市立天文科学館は、子午線を示すとともに時と宇宙の知識を広めることを目的に、昭和35年(1960年)6月10日の「時の記念日」に開館した。
- 65歳以上人口の割合は26.1%で、兵庫県全体の29.5%を下回る。
- 市の自主防災組織の組織率は100.0%(令和6年4月1日現在)で、県平均98.4%を上回っている。
- 市の花はキク、市の木はキンモクセイ。市役所は中崎一丁目にある。
明石市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「明石市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口規模、市域の広さ、高齢化の進み方、採用の規模など、市政の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 307,487人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 80,372人(26.1%、兵庫県29.5%) |
| 75歳以上人口 | 48,356人(15.7%、兵庫県17.6%) |
| 総面積 | 49.41km² |
| 人口密度 | 約6,223人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接する自治体 | 神戸市・加古川市・加古郡稲美町・播磨町(明石海峡を挟んで淡路市) |
| 事務職の採用予定人数 | 45名程度(2026年3月募集・新卒第2新卒/社会人経験の2区分の合計) |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口とその割合、および兵庫県の値は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の数値です。国勢調査を基準とする数値とは集計の考え方が異なるため、両者を直接比較することはできません。総面積と隣接自治体は当研究会が整理した基礎データ、採用予定人数は明石市の2026年3月募集の受験案内によります。
数字から考えられる市政課題
明石市の高齢化率26.1%は、兵庫県全体の29.5%より3ポイント以上低い水準です。75歳以上の割合も15.7%で、県の17.6%を下回ります。
同じ台帳の数字で比べる限り、明石市は県内でも比較的若い年齢構成を保っている都市だといえます。
ただし、これは「高齢化に備えなくてよい」という話ではありません。80,372人という65歳以上の実数は、そのまま福祉・医療・交通の需要として存在しています。
もうひとつの特徴は密度です。総人口を総面積で割ると1平方キロメートルあたり約6,223人。
同じ台帳の県全体の人口5,364,773人を県の面積8,400.95平方キロメートルに当てはめると約640人ですから、明石市はその10倍近い密度で人が暮らしている計算になります。
狭い市域に住宅と施設が詰まっているということは、道路や公園、避難場所の確保が土地の制約と直結するということでもあります。たとえば面接では、明石市の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。
明石市の経済・産業
都市の骨格と暮らしの密度
明石市の経済を考えるうえで最初に押さえたいのは、面積49.41平方キロメートルという市域の小ささと、そこに30万人が暮らすという事実です。東は神戸市、西は加古川市という2つの大きな市に挟まれ、北は稲美町・播磨町と接します。
大都市と工業地域の間にあって、住まいの場として選ばれてきた都市という位置づけが、市政の前提になります。
市外へ通勤・通学する市民が多い都市では、市の仕事は「昼間そこにいない市民の暮らし」も含めて設計しなければなりません。子育て支援や住宅、公共交通の話題は、この構造から考えると筋が通ります。
日本標準時のまちという固有資源
明石市の名前を全国に知らせているのは、東経135度の日本標準時子午線です。明治19年(1886年)に定められたこの経線が市内を南北に貫き、昭和5年(1930年)建立の標識が子午線上に立っています。
昭和35年(1960年)の「時の記念日」に開館した明石市立天文科学館は、子午線の標示と、時と宇宙に関する知識の普及を目的とする施設です。「時のまち」という看板は、観光の入口であると同時に、市が何を大切にしてきたかを示す物語でもあります。
志望動機で明石らしさに触れるなら、名所として挙げるのではなく、この物語を今の市民生活にどうつなぐかまで考えておきましょう。(出典:日本標準時子午線について|明石市)
兵庫県経済の中の明石市
明石市が属する兵庫県は、令和5年度の県内総生産(名目)が前年度比2.7%増の23兆9,895億円、県民総所得は25兆4,318億円で、名目・実質とも3年連続の増加となりました。県は自らの強みとして、ものづくり産業の集積、科学技術の基盤、気候風土に恵まれた食材と食文化、国際性の豊かな地域社会の4つを挙げています。
明石市は、この産業集積の中心である神戸・阪神地域と播磨地域のちょうど接点にあたる位置にあります。(出典:兵庫県民経済計算|令和5年度)
観光の広がり
兵庫県全体の令和5年度の観光入込客数は1億2,232万人(対前年度比106.8%)で、前年度を782万人上回りました。内訳は日帰り客1億1,085万人(全体の90.6%)、宿泊客1,147万人(同9.4%)と、日帰りが圧倒的です。
目的別ではスポーツ・レクリエーション3,549万人、歴史・文化2,724万人、都市型観光1,830万人の順でした。
日帰り中心という県全体の傾向は、神戸市にも淡路島にも近い明石市にとって、通過されるか立ち寄られるかの分かれ目が大きいことを意味します。
観光の話題を扱うなら、来訪者数そのものより、滞在時間と市内での消費をどう伸ばすかに視点を置きましょう。(出典:兵庫県観光客動態調査報告書|令和5年度)
明石市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、明石市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
若い年齢構成をどこまで保てるか
高齢化率26.1%という数字は、明石市の現在の強みです。しかし兵庫県全体では、人口は2009年の560万人をピークに減少に転じ、県の将来推計人口では2050年に423万人(2015年比24%減)まで減り、65歳以上が人口の4割、4人に1人が75歳以上になると見込まれています。
県は2011年以降、東京圏と大阪府への転出超過が続いており、とくに20歳代の流出が止まっていません。一方で0〜14歳と30代のファミリー層では転入超過が拡大しているとも分析しています。
20歳代は出ていき、ファミリー層は入ってくるというこの二方向の動きのうち、明石市がどちら側に立てるかが、いまの年齢構成を保てるかどうかを左右します。(出典:兵庫県 現状と課題の整理|2023年)
限られた土地でのまちづくり
1平方キロメートルあたり約6,223人という密度は、住宅と生活施設が高い密度で並んでいることの裏返しです。新しい施設を建てる余地は限られ、既にある建物や道路をどう更新し、使い方を変えていくかが問われます。
空いた土地を誰がどう使うか、老朽化した施設をどこに集約するか、といった判断は、住民の生活圏をまたいで調整することになります。行政だけで結論を出せる話ではなく、地域や事業者との合意形成が仕事の中心になる分野です。
南海トラフ巨大地震と津波への備え
兵庫県が平成26年6月に公表した南海トラフ巨大地震・津波の被害想定では、淡路地域の洲本市・南あわじ市で最大震度7、神戸市・阪神・播磨地域の広範囲で最大震度6強が想定されています。
県全体の死者は最大時(夏の昼間12時発災)で約29,100人、そのうち約27,970人が津波によるものとされ、建物全壊は最大時(冬の夕方18時発災)で約38,500棟と見込まれています。
瀬戸内海に面し、海沿いに市街地が広がる明石市にとって、津波と揺れの両方への備えは避けて通れません。(出典:南海トラフ巨大地震・津波被害想定|兵庫県・平成26年)
備えの側では、明石市の自主防災組織の組織率は100.0%(令和6年4月1日現在)で、県平均の98.4%を上回っています。組織があることと、いざというときに動けることは別ですから、この数字は到達点ではなく出発点として語るのが妥当な扱いでしょう。(出典:兵庫県消防防災年報|令和6年版)
県内の人口偏在と広域での立ち位置
兵庫県は、現在の人口の6割が県土面積の14%にあたる神戸・阪神地域に集まっているとし、今後は同地域も含めてすべての地域で人口が減少すると見込んでいます。県は神戸・阪神、播磨、但馬、丹波、淡路の五国からなり、29の市と12の町を抱えます。
明石市はこの中で、神戸市と加古川市に挟まれた位置にあります。周辺市町と通勤圏・生活圏を共有している以上、公共交通や医療、防災といった分野では市境で線を引けない課題が出てきます。
対話と共創という進め方そのもの
明石市は、職員採用の受験案内で「SDGs未来安心都市・明石」を目標に掲げ、対話と共創によるまちづくりを進めていると説明しています。裏を返せば、行政が単独で決めて実行するやり方では届かない領域が広がっているという認識です。
市民・地域団体・事業者と一緒に案をつくり、実行できる形に落とし込む作業そのものが、市職員の仕事の相当部分を占めることになります。(出典:明石市職員採用試験(事務職)受験案内|2026年3月募集)
明石市の重点政策|SDGs未来安心都市・明石
明石市が職員採用の受験案内で掲げているまちづくりの目標は、「SDGs未来安心都市・明石」です。
受験案内はこの目標のもとで対話と共創によるまちづくりを進めているとし、応募者に向けて「笑顔あふれるやさしいまちをつくるために、熱意をもって行動できるあなたの応募をお待ちしております」と呼びかけています。採用の入口に置かれた言葉であるだけに、志望動機を組み立てるときの手がかりとしては強いものです。
目標をどう読むか
この目標は、3つの部分に分けて考えると扱いやすくなります。ひとつめは「SDGs」で、環境・福祉・経済を切り離さずに扱うという発想です。
ふたつめは「未来安心」で、いま困っている人を支えることと、これから困る人を減らすことの両方を指します。みっつめは「都市」で、30万人が高い密度で暮らす生活圏を土台にするという意味です。
この3つを合わせると、単発の事業ではなく、暮らしの安心を積み重ねる方向へ市政が向かっていることが読み取れます。
そして、その進め方として置かれているのが「対話と共創」です。市民の声を聞くところで終わらせず、一緒に形をつくるところまでを含む言い方になっています。
面接で施策の話をするときは、「何をやりたいか」だけでなく「誰と一緒にやるか」まで触れられると、この目標の向きに沿った答えになります。
市政の背景として押さえたい兵庫県の状況
| 分野 | 兵庫県の状況(明石市政の背景) |
|---|---|
| 人口 | 2009年の560万人をピークに減少。将来推計では2050年に423万人(2015年比24%減)、65歳以上が4割・4人に1人が75歳以上 |
| 人口の偏在 | 県人口の6割が県土面積の14%にあたる神戸・阪神地域に集住。今後は全地域で減少見込み |
| 転出入 | 2011年以降、東京圏と大阪府への転出超過が継続。20歳代の流出が続く一方、0〜14歳と30代では転入超過が拡大 |
| 経済 | 令和5年度の県内総生産(名目)23兆9,895億円で3年連続の増加。ものづくり産業の集積と科学技術基盤を県の強みとする |
| 交通 | 公共交通空白地域が可住地面積の23.4%を占め、その地域の人口は県人口の3.1%(約169,638人) |
| 防災 | 南海トラフ巨大地震で播磨地域の広範囲に最大震度6強を想定。県内の自主防災組織率は98.4%(令和6年4月1日現在) |
市の施策は、こうした県全体の動きの上に置かれています。自分の関心が県のどの動きと噛み合うのかを一文で言えると、明石市を選んだ理由に厚みが出ます。
POINT|施策名を並べるより一つを深く掘る
名称をすべて覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心分野を一つか二つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③現在の事業 → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験・強みをどう生かすか」の順で調べましょう。
悪い例「明石市の子育て支援に魅力を感じました」
改善例「明石市は面積が50平方キロメートルほどで、公園や広場をこれから大きく増やすのは難しいと思います。ですので、いまある場所を親子が使いやすい形に変えていく仕事に、地域の方と話しながら関わっていきたいです」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
- 明石市職員採用試験(事務職)の受験案内(最新の募集回のもの)/市の職員採用情報のページ
- 明石市の総合計画とその実施計画(市公式サイトの計画・方針のページ)
- 最新年度の当初予算の概要と、関心分野の個別計画
- 明石市の統計情報(人口・世帯)と、兵庫県の推計人口・県民経済計算
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、明石市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。明石市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
明石市役所の面接の概要
ここからは、明石市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
明石市役所の面接の流れ
明石市の事務職(正規)採用試験は、市役所総務局職員室が実施します。受験案内の表紙には「公務員試験対策は不要! 人物重視の試験です!」と明示されており、実際の設計もその通りになっています。
1次試験は2段構成で、まずエントリー課題(100点)があり、その合格者にだけ個別面接(100点)が行われます。
ここから2次試験・3次試験へと進み、個別面接は1次・2次・3次の計3回。1次試験と2次試験の点数は各試験の合格決定後にリセットされ、最終合格者は3次試験の結果に基づいて決定されます。
積み上げ方式ではないため、段階が進むほど目の前の一回に集中する必要があります。
| 段階 | 内容(2026年3月募集・事務職正規) |
|---|---|
| 1次試験①|エントリー課題 | 【100点】志望動機や過去の取り組み等を問うもので、エントリー時に入力する。資格加点の対象 |
| 1次試験②|個別面接 | 【100点】①の合格者にのみ実施。原則、対面。受験者の負担軽減や試験の効率化等の観点からオンラインとなる場合がある |
| 2次試験 | 申込時に選んだAコースまたはBコースの科目に加え、両コース共通で【面接】【100点】(個別面接・対面のみ) |
| 3次(最終)試験 | 【面接】【100点】のみ。個別面接・対面のみ |
| 人物評価の比重 | 個別面接が計3回で300点。Aコースはこれに集団討論100点が加わり400点 |
| 基準点 | 各試験科目のいずれかにおいて一定の基準に達しない人は、他の成績にかかわらず不合格 |
| 合否の決め方 | 1次試験・2次試験の点数は各試験の合格決定後にリセットされ、最終合格者は3次試験の結果に基づき決定 |
この配点は、準備の時間配分にそのまま置き換えられます。1次は書いたもの(エントリー課題100点)と話したもの(個別面接100点)が半々で、2次は選んだコースの筆記に個別面接100点が加わり、3次は面接100点だけになります。
対策すべき対象が、段階を追って筆記から面接へ絞られていく形です。
ですから、2次の合格が決まった時点で筆記の勉強は完全に終わり、そこから最終合格までは個別面接1回のための期間になります。ここで新しい材料を探し始める必要はありません。
3次の面接官が1次・2次と同じ人とは限りませんから、これまでに語ってきた話を、初めて聞く相手に向けてもう一度最初から届けられるように組み直しておくほうが確実です。
もうひとつ押さえておきたいのが、2次試験のコース選択です。申込時にどちらかを選ぶ形で、選び方によって筆記の負担がまったく変わります。
| コース | 2次試験の科目(両コース共通の面接100点を除く) |
|---|---|
| Aコース(公務員専門試験対策不要コース) | 基礎能力試験【100点】(文章読解能力・数的能力・推理判断能力。択一式試験SCOAを使用予定、所要時間約45分)+集団討論【100点】(与えられた課題について受験者同士で討論し、グループとしての意見集約を行う) |
| Bコース(公務員専門試験コース) | 適性検査(性格検査、所要時間約35分。得点化はせず面接試験の参考資料とする)+公務員専門試験【200点】(法律や経済等の基礎知識の確認。択一式20問・60分。出題分野は憲法、民法、行政法、経済原論、政治学等) |
ここは取り違えやすいところですが、集団討論が課されるのはAコースだけです。
Bコースを選んだ場合、集団討論の代わりに公務員専門試験200点が科されます。どちらを選んでも個別面接3回は変わりませんので、「討論が得意かどうか」と「専門科目を仕上げられるか」の両面から決めることになります。
選び方の目安を、もう少し踏み込んで整理しておきます。Aコースの筆記は基礎能力試験100点で、択一式SCOAを使用予定、所要時間は約45分とされています。
出題は文章読解能力・数的能力・推理判断能力ですから、法律や経済の学習歴がなくても短期間で形になります。そのぶん、その場で顔を合わせた受験者同士で意見をまとめる集団討論100点が、採点対象に加わります。
Bコースはその逆で、討論はありませんが、憲法・民法・行政法・経済原論・政治学等から択一20問60分の公務員専門試験200点を仕上げなければなりません。
判断の軸は「討論が苦手だからB」という消去法ではなく、法律や経済の学習をすでにどこまで積んでいるかと、話し合いの場で自分がどう動いたかを具体例で説明できるかどうかの2つです。
コース選択で見落としやすい点もあります。Bコースの2次試験では公務員専門試験200点が最も大きい配点になりますが、その点数も2次試験の合格決定と同時にリセットされます。
専門で高い点を取っても、最終合格を決める3次試験の面接100点に持ち込めるわけではありません。Bコースは専門試験の負担と引き換えに集団討論を避ける選択であって、筆記の得点で人物評価の不足を補う選択ではない、と理解しておくほうが安全です。
エントリー課題には資格加点もあります。公認会計士・税理士・司法書士・中小企業診断士・社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士・不動産鑑定士・土地家屋調査士・情報処理技術者試験は10点、2023年4月以降に取得した自治体法務検定(ゴールドクラス以上)・日商簿記(2級以上)・実用英語技能検定(2級以上)・TOEIC(600点以上)は5点で、加点されるのはいずれか1つの資格のみです。
申込はWebのみで、エントリーには顔写真データ(jpeg)が必要です。(出典:明石市職員採用試験(事務職)受験案内|2026年3月募集)
上記の試験構成は、明石市の2026年3月募集の受験案内にもとづく事務職(正規)のものです。試験の構成・配点等は、募集の回や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
明石市役所が求める人物像
明石市の事務職(正規)採用試験の受験案内には、「求める職員像」を項目立てで並べた記載はありません。手がかりになるのは、表紙と冒頭に置かれた市からの呼びかけです。
そこでは「SDGs未来安心都市・明石」を目標に対話と共創によるまちづくりを進めていることが述べられ、「笑顔あふれるやさしいまちをつくるために、熱意をもって行動できるあなたの応募をお待ちしております」と結ばれています。項目の列挙ではなく、姿勢を一文で示す形になっているわけです。
では、その姿勢の中身をどう具体化するか。手がかりは試験の設計そのものにあります。
エントリー課題が100点の採点対象になっているということは、応募の入口で「志望動機と過去の取り組みを、読んで伝わる文章にできるか」が問われているということです。
個別面接が3回あり、しかも点数がリセットされる仕組みは、一度うまく話せたかどうかではなく、誰に対しても同じ中身を語れるかを確かめる作りだと受け取れます。
Aコースの集団討論では、意見を出すだけでなくグループとしての意見集約まで行うことが明記されています。これらを並べると、対話と共創という進め方を実務で担える人かどうかを、角度を変えて何度も確かめている作りに見えてきます。
ただし、こうして読み取れるのは配点表の並びまでで、明石市が言葉にしているのは冒頭の呼びかけの一文にとどまります。
30万人が高い密度で暮らし、周辺市町と生活圏を共有する都市では、行政が単独で完結できる仕事のほうが少なくなります。地域の団体や事業者と条件をすり合わせ、限られた予算と土地の中で実行できる案に落とし込む場面が繰り返し出てきます。
だからこそ、話をまとめる力と、相手の事情を踏まえて着地点を探す姿勢が効いてくるのだと考えられます。準備としては、これまで実際に人と何かを進めた場面を先に洗い出し、それが3回の個別面接それぞれで同じ密度で語れるかを確かめておくほうが、点数がリセットされるこの試験には合っています。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。明石市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | ここまでは迷わずに来られましたか? | 1次面接は原則対面だがオンラインになる場合もある。場の形式が変わっても受け答えの調子が保てるか |
| ② 動機・志望 | なぜ明石市を志望するのですか? | エントリー課題に書いた志望動機と、口頭の説明がずれていないか。書いた内容を自分の言葉で補強できるか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | Bコースでは得点化されない性格検査が面接の参考資料になる。自己申告と検査結果の方向がそろっているか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | 個別面接が3回あり、点数はリセットされる。どの面接官に対しても同じ密度で語れる持ちネタがあるか |
| ⑤ 学業・経歴 | これまでの学びや仕事で身につけたことを教えてください | 新卒第2新卒と社会人経験の2区分がある。区分に応じた経験の説明ができているか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 採用予定45名程度に対して市の業務範囲は広い。希望どおりの配属でなくても働ける柔軟さ |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | Aコースの集団討論は課題への討論と意見集約が求められる。社会の出来事に自分の立場を持てているか |
ただし、この7つで拾えるのは、どの自治体を受けても同じように問われる部分です。同じ枠組みで仕上げてきた受験者と並んだとき、ここだけで抜け出すのは難しいでしょう。
差が出るのは、次に挙げる明石市の事情に踏み込んだ質問のほうです。
合否を分けるのは「明石市役所ならでは」の質問
1問目は、県内に29の市がある兵庫県では特に効いてくる質問です。神戸市にも加古川市にも接している明石市を選んだ理由を、通いやすさや知名度ではない言葉で説明できるかが問われます。
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「明石市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい明石市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 明石市は面積49.41平方キロメートルに30万人が暮らす都市で、神戸市・加古川市・稲美町・播磨町と接し、明石海峡を挟んで淡路市に向かい合う | 県と市の権限の話に逃げず、住民の生活圏がこれだけ近い都市で日々の暮らしに直接触れる仕事がしたい、という自分の動機に落として語ります |
| 年齢構成の現在地 | 住民基本台帳の令和8年1月1日現在で65歳以上は26.1%と県の29.5%を下回る一方、実数では80,372人。75歳以上は48,356人 | 「まだ若い」で終わらせず、割合と実数を分けて話します。強みと備えの両方に触れると、数字を読める人だと伝わります |
| まちづくりの目標 | 受験案内で「SDGs未来安心都市・明石」を掲げ、対話と共創によるまちづくりを進めていると説明 | 目標の言葉をなぞるのではなく、自分が誰とどう協力したいかを一文添えます。エントリー課題との整合も確認しておきます |
| 防災・危機管理 | 兵庫県の南海トラフ巨大地震被害想定では播磨地域の広範囲に最大震度6強。市の自主防災組織率は100.0%(令和6年4月1日現在、県平均98.4%) | 組織率100%を成果として誇るのではなく、組織があることと動けることの差をどう埋めるかという課題設定で話します |
| 明石市の魅力 | 東経135度の日本標準時子午線が通る「時のまち」。子午線上には昭和5年建立の標識があり、昭和35年開館の市立天文科学館が時と宇宙の知識を伝えている | 観光名所の紹介にせず、この物語を市民の暮らしや子どもの学びにどう還元するかという行政の視点でまとめます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
明石市は求める職員像を項目で公表していないため、ここでは試験の設計に照らして、確かめられていると考えられる資質を整理します。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 書いたことを語れる一貫性 | 100点の採点対象であるエントリー課題に書いた志望動機と過去の取り組みが、3回の個別面接でぶれずに説明できるか | 提出前に控えを残し、書いた一文ずつに「なぜそう書いたか」を口頭で足せるようにしておきます |
| 合意をつくる力 | Aコースの集団討論では、意見を述べるだけでなくグループとしての意見集約まで行うことが求められる | 結論を出す場で自分がどう振る舞ったかを、賛成された場面と譲った場面の両方から具体的に思い出しておきます |
| 熱意を行動で示せるか | 受験案内が呼びかける「熱意をもって行動できる」姿が、実際にやったことの積み重ねとして語れるか | 気持ちの強さを形容詞で語らず、自分から始めて続けた出来事を、始めた理由と続けた工夫まで添えて話せるようにします |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
明石市は個別面接が3回あり、しかも段階ごとに点数がリセットされます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新の募集回の受験案内を読み、2次試験をAコースとBコースのどちらで受けるかを決める。集団討論の有無と専門試験の負担が入れ替わるため、申込前に見比べておく
- 高校・大学生活や職務の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトや仕事から、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- エントリー課題の下書きを作り、志望動機と過去の取り組みを文章にまとめる。提出後も控えを手元に残し、書いた内容を口頭で補える状態にしておく
- 自治体研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、固有質問の対応表から志望分野に近い事実を2〜3個選んで、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。Aコースを選ぶなら、初対面の相手と時間内に結論を出す練習も入れておく
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、ステップ4のエントリー課題の作り込みを先に済ませてください。明石市ではエントリー課題そのものが100点の採点対象で、しかもここを通らなければ1次の個別面接に進めません。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、明石市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
明石市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
事務職(正規)の採用試験は、エントリー課題100点から始まり、個別面接が3回。Aコースならこれに集団討論が加わります。
しかも1次と2次の点数は合格決定のたびにリセットされ、最終合格は3次試験の結果で決まります。受験案内が「公務員試験対策は不要! 人物重視の試験です!」と掲げているのは、この設計をそのまま言い表したものです。
逆に言えば、逃げ場が少ない試験でもあります。書いたことと話すことが揃っているか、同じ話を三度別の相手に届けられるか。そこが繰り返し確かめられます。
日本標準時のまちで30万人の暮らしを支える仕事に、自分の何を持ち込めるのか。
エントリー課題を書き始める前に、まずその材料を紙に並べてみてください。