本記事では、千曲市職員採用試験の面接対策で必要な、千曲市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

千曲市役所の面接試験では、「なぜ千曲市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。千曲市は求める人物像を短い一文で公表しており、その言葉に自分の経験をどう重ねるかが、回答づくりの中心になります。

ここから先に並べた事実は、その一文と自分の経験をつなぐための材料です。志望動機を組み立てながら読み進めてください。

第1部|自治体研究編

千曲市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは千曲市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 長野市と上田市の間に位置し、市域119.79km²に58,537人が暮らす。人口密度489人/km²は長野県内19市で2番目に高い。
  • 接するのは長野市・上田市・麻績村・筑北村・坂城町の5団体。県内でも人口の多い2市に挟まれた位置にある。
  • 市の木も市の花もアンズ。市の花にはセツブンソウも定められている。
  • 市は「人をてらす 人をはぐくむ 人がつながる 月の都 ~文化伝承創造都市・千曲~」を標語として掲げている。
  • 令和8年1月1日現在の住民基本台帳による65歳以上の割合は33.0%、うち75歳以上は20.0%。
  • 令和元年東日本台風では住家被害1,363棟を数え、長野市に次いで県内2番目の被害棟数となった。
  • 職員採用試験の求める人物像として、「市民から信頼され 共に考え 共に行動できる方」を公表している。
  • 採用試験には市が単独で行うものと、長野市が主催する広域の共同選考に参加するものの2系統がある。

千曲市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「千曲市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

千曲市を捉える手がかりは、5万8千人という人口、119.79km²というまとまった市域、そして県内でも高い人口密度の3つです。県の値と並べながら確認してください。

項目内容
総人口58,537人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
総面積119.79km²
人口密度489人/km²(上記の総人口と総面積から算出。長野県内19市で2番目)
65歳以上の割合33.0%(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)
75歳以上の割合20.0%(同上)
隣接自治体長野市・上田市・東筑摩郡麻績村・筑北村・埴科郡坂城町
市の花・市の木アンズ、セツブンソウ/アンズ
市役所所在地千曲市大字杭瀬下2丁目1番地
(参考)長野県の総人口1,970,876人(令和7年11月1日現在)
(参考)長野県の総面積13,561.56km²(全国4位)

65歳以上・75歳以上の割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。同統計における千曲市の総人口は58,537人で、これを割合の分母としています。表の総人口・総面積・人口密度・隣接自治体・市の花と木・市役所所在地については、基準日の異なる公表値をそれぞれ整理しました。参考に置いた県の総人口は毎月の推計による公表値で、住民基本台帳とは調査の基準が異なります。市の割合と県の割合を同じ尺度に並べて比べることはできませんので、その前提でお読みください。

数字から考えられる市政課題

千曲市の119.79km²は、長野県全体の13,561.56km²のおよそ0.9%にすぎません。それでいて人口密度489人/km²は県内19市で2番目に高く、限られた平地に人と生活が集まっている市だとわかります。

県内で最も人口の多い長野市と、3番目に多い上田市に挟まれている点も見逃せません。通勤や通学、買い物の流れが市の境を越えて動く前提で、市政は組み立てられています。

年齢構成も確かめておきましょう。千曲市は住民基本台帳の令和8年1月1日現在で、65歳以上が33.0%、75歳以上が20.0%。

県が推計人口で公表する令和7年10月1日現在の県全体の値は33.3%と20.0%ですが、統計の基準が異なるため、両者を同じ物差しで比べることはできません。それでも、市民のちょうど5人に1人が75歳以上という構成であることは動かない事実です(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)。

人が集まって暮らしているということは、災害時に一度に避難が必要になる人数も多いということです。

たとえば面接では、千曲市の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。

「千曲市は5万8千人ほどの市ですけれども、県内の市のなかでは人口密度が高いほうだと知りました。限られた平地に暮らしが集まっているぶん、大きな水害が起きたときに一度に動かなければならない人の数も多くなるのではと感じています」

千曲市の経済・産業

千曲川がつくった平地に集まる暮らし

千曲市の産業を考えるうえで前提になるのが、市域の使われ方です。119.79km²のうち人が集まって暮らせる平地は限られ、その結果として人口密度489人/km²という県内で2番目に高い値が生まれています。

市の木も市の花もアンズであることが示すとおり、この平地は果樹をはじめとする農地としても使われてきました。住む場所と育てる場所が同じ土地を分け合っているのが千曲市の姿です。

土地利用の調整が市政の日常的な仕事になる、と考えておくとよいでしょう。

県経済の主役はものづくり

長野県の製造業は、事業所数6,148事業所、従業者数20万6,238人、製造品出荷額等7兆1,391億6,000万円です(2023年経済構造実態調査・2023年6月1日時点)(出典:長野県の製造業(経済構造実態調査)|2023年)。

観光地としての知名度とは裏腹に、県の雇用と出荷額を支えている中心は製造業です。千曲市で産業振興や雇用の仕事を志望するなら、農業と観光だけでなく、働く場としての製造業を前提に置いて話しましょう。

文化を掲げる市と、県内観光の流れ

令和6年の長野県内の観光地利用者数は延べ8,515万人(前年比6.1%増)、観光地消費額は3,327億円(同7.6%増)でした。県外客は5,442万人、宿泊客は2,734万人にのぼります(出典:長野県観光地利用者統計調査結果|令和6年)。

県全体で人の流れは太くなっています。千曲市が自らを「文化伝承創造都市」と名乗っているのは、この流れのなかで何を売りにするかという選択の表明でもあります。

観光を志望分野に挙げるなら、来訪者数の話ではなく、受け継いできた文化をどう見せ、どう次の世代に渡すかという角度で準備しておきましょう。

千曲市の主な行政課題

ここまでの数字と土地の使われ方を踏まえて、千曲市が抱える論点を5つに整理します。面接では、このうち自分の関心に近いものを1つ選んで深く話せれば十分です。

人が減ることを前提にした市政へ

長野県の人口は2001年の2,220,208人をピークに減り続け、2024年2月には200万人を割り込みました。2023年の出生数は11,125人まで落ち、合計特殊出生率は全国を上回るものの4年連続の低下で1.34と過去最低になっています(出典:長野県の人口減少の現状と課題)。

この先に待つのは、社会インフラや医療、教育、行政サービスを維持しきれなくなる状況だと県は明言しています。人が集まって住んでいる千曲市であっても、この流れの外にはいられません。

進学と就職の時期に起きること

長野県では18歳から22歳の進学・就職期に男女とも転出超過が生じており、その年齢層の転出超過数は16,950人にのぼります。これは静岡県に次いで全国で2番目に多い数で、とくに20代前半の女性の転出超過が課題とされています。

千曲市は長野市と上田市に挟まれた位置にあり、通勤や通学の選択肢は多い一方、県外への流出という県全体の傾向は共有しています。若い世代が戻ってくる理由をどう用意するかは、市の施策全体に関わる論点です。

令和元年東日本台風という経験

令和元年東日本台風で、千曲市の住家被害は全壊1棟・半壊326棟・一部損壊560棟・床上浸水2棟・床下浸水474棟の計1,363棟にのぼりました。影響を受けたのは1,677世帯・4,049人で、人的被害は軽傷5人です。

この棟数は、千曲川の堤防が決壊した長野市に次いで県内で2番目の規模でした(出典:令和元年東日本台風の人的被害・住家被害の状況|令和6年)。市の記録では、発災直後の令和元年10月14日13時の時点で床上浸水1,195戸・床下浸水654戸が推定されていました(出典:令和元年東日本台風による被害・復旧の状況(千曲市)|令和元年)。

防災を志望分野にするなら、被害の大きさを述べるだけで終わらせず、被災の直後に何がどれだけ必要になるかという実務の側から語りましょう。

震度7が想定されている市であること

千曲市が備えるべき災害は、水だけではありません。県の被害想定調査は、県内6つの主要活断層帯のうち糸魚川-静岡構造線断層帯について、気象庁マグニチュード8程度の地震を想定しています。

さらに断層帯の全体が動く場合(Mj8.5)の想定では、千曲市は最大震度7が見込まれる市町村に名前が挙がっています(出典:第3次長野県地震被害想定調査報告書(概要版)|平成27年)。

斜面の危険も同時に抱えます。長野県の地すべり危険箇所1,241か所は全国で最多、土石流の危険渓流5,912渓流は全国8位です。

水害の記憶の上に、揺れと斜面の想定が重なっているということになります。

限られた採用枠と2つの入口

令和9年4月1日採用の上級・中級試験では、上級の行政が5名程度、土木・建築・社会福祉士・保健師・図書館司書と中級の保育士がそれぞれ若干名という採用予定です。

加えて千曲市は、社会人経験者の技術職について、長野市が主催する広域の共同選考にも参加しています。市が単独で行う試験と、広域で行う共同選考の2系統があるということです。

どちらの入口から入っても、配属後に担う仕事の幅は変わりません。少人数の組織で、一人が受け持つ範囲は自然と広くなります。

重点政策|「月の都」の標語と千曲市政

千曲市の総合計画そのものは、市公式サイトに掲載されている最新版で確かめるようにしてください。ここでは、市が公式サイトに掲げている標語と、その外側にある県の計画を、市政の性格を読み解く2つの手がかりとして扱います。

市が掲げる一文を読む

千曲市は公式サイトに、「人をてらす 人をはぐくむ 人がつながる 月の都 ~文化伝承創造都市・千曲~」という標語を掲げています(出典:千曲市職員採用情報|令和8年度)。

並んでいる3つの動詞は、てらす、はぐくむ、つながる。どれも人を主語にした言葉で、施設や産業ではありません。

そのうえで「文化伝承創造都市」と名乗っています。受け継いだものを守るだけでなく、新しく創り出す側にも立つという構えです。

志望動機を組み立てるときは、この動詞のどれか一つを自分の経験と結び付けておくと、話の軸が定まります。

県が置いた基本目標との関係

市の標語の外側には、県の計画があります。2023年度から2027年度までを計画期間とする「しあわせ信州創造プラン3.0」が長野県の総合5か年計画にあたり、人口減少・少子化・気候変動という危機を大変革により乗り越えて「ゆたかな社会」を実現することが、その基本目標に据えられています(出典:しあわせ信州創造プラン3.0|2023〜2027年度)。

市の事業の多くは県の補助や交付金と組み合わさって動きます。市の標語と県の基本目標が、どの施策で交わっているのかという目で読むと、事業の意図がつかみやすくなるはずです。

POINT|事業名を覚えることが目的ではない

事業の名称をいくつ挙げられても、面接の評価は動きません。①千曲市の現状を示す数字を1つ選ぶ、②そこから生じている困りごとを場面として書き出す、③市がすでに動いている領域を確かめる、④自分の経験のどこが使えるかを言葉にする。この順に組み立てれば、名称を並べずに話が立ちます。

悪い例「歴史と文化が息づく千曲市で、地域に貢献できる仕事がしたいです」

改善例「はじめは市民の方の手続きをお手伝いするところから仕事を覚えたいです。そのうえで、千軒を超える家が水につかった経験のある市ですので、いざというときにどう動くかを普段から地域の方と確かめておく仕事に関わりたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

次の4つを通読する必要はありません。自分が受ける系統と区分に関わるものから開き、面接で一言添えられる程度に押さえておけば十分です。

  • 千曲市職員採用試験の受験案内(自分が受ける系統と区分の最新のもの)
  • 共同選考を受ける場合は、長野市が公表している共同選考の案内
  • 千曲市の総合計画と、その年度の予算に関する市の説明資料
  • 市の防災に関する計画や、令和元年東日本台風の被害・復旧に関する市の記録

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、千曲市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。千曲市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

千曲市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

千曲市役所の面接の概要

千曲市を受けるうえで最初に確かめるべきなのは、自分がどの系統の試験を受けるのかという点です。市が単独で実施する試験と、広域の共同選考とでは、申込先も第1次の中身も異なります。順に見ていきましょう。

千曲市役所の試験の構成(市が単独で実施する上級・中級)

令和9年4月1日採用の上級・中級試験は、第1次試験と第2次試験の2段階です。第2次試験の口述試験が個別面接による試験で、人物を直接確かめる場はここ1回に集約されています。第1次を通過したあとの一度きりの面接で判断されるということですから、その場での受け答えの重みは相応に大きくなります。

項目内容(令和8年度・令和9年4月1日採用の上級・中級)
試験の段階第1次試験・第2次試験の2段階
面接の形式第2次試験の口述試験が個別面接による試験
第1次試験(全区分共通)職務能力試験〈BEST-A〉(60題・4肢択一・1時間。論理的に思考する力、文章を正確に理解する力、統計等の資料を分析する力、国内外の社会情勢への理解等)、職務適応性検査〈BEST-P〉(150項目・20分)、作文試験(一般事項について800字程度・1時間)
上級の専門試験行政は40題・5肢択一・2時間(憲法、行政法、民法、経済学、財政学、社会政策、政治学、行政学、国際関係)。土木・建築は30題・5肢択一・2時間、保健師は30題・5肢択一・1時間30分
専門試験のない区分上級の社会福祉士・図書館司書は専門試験がなく、作文試験に代えて小論文試験(800字程度・1時間)を行う
試験区分と採用予定上級は行政5名程度、土木・建築・社会福祉士・保健師・図書館司書が各若干名。中級は保育士が若干名
申込方法「ながの電子申請サービス」から申込。受験票は電子メールで案内されるURLからダウンロードして印刷し、写真を貼付して当日持参する
初任給上級235,000円、中級219,400円(令和8年4月1日現在)

第1次試験について、受験案内は職務能力試験〈BEST-A〉を「基礎的な内容が出題されますので、特別な対策や勉強は不要です」と明記しています。筆記で受験者をふるいにかけるのではなく、人物を見る段階に多くの人を進ませたいという設計だと読めます。

また千曲市は受験案内に、第1次から第2次を通じて口利き行為を固くお断りする旨と、判明した場合は本人の承知の有無を問わず採用を取り消す旨を明記しています。選考の公正さを正面から宣言している市だということです(出典:千曲市職員採用試験受験案内(上級・中級)|令和9年4月1日採用)。

社会人経験者の技術職は広域の共同選考

もう一つの系統が共同選考です。令和9年4月1日採用の社会人経験者・上級(土木・建築)は、「長野市・長野地域連携中枢都市圏内市町村職員採用共同選考」の枠組みで実施され、申込は長野市のホームページから行います。

参加団体は長野市・須坂市・千曲市・小布施町・高山村・信濃町・飯綱町の7市町村です。ここで取り違えてはいけないのが、共同で行われるのは第一次選考だけだという点です。

第二次選考以降は各自治体がそれぞれ実施し、千曲市の合格者は千曲市が決めます。

第一次選考は、教養選考(テストセンター方式・大学卒業程度の文章読解能力、数的能力、論理的思考能力、人文・社会・自然に関する一般知識、基礎英語の択一式・1時間)、行政Ⅰのみの企画書選考またはそれ以外の区分の作文選考、そして職務実績とエントリーシートによる書類選考で構成されます。

志望する自治体は第2志望まで選べ、受験者が選んだ志望自治体を優先して自治体ごとの合格者が決まるため、第1志望で不合格でも第2志望で合格となる場合があります。千曲市がこの枠組みで募集しているのは行政Ⅱ(技術職・土木)と行政Ⅱ(技術職・建築)で、いずれも若干名です。

上記のうち市単独の内容は千曲市の令和9年4月1日採用(上級・中級)の受験案内、共同選考の内容は同採用の社会人経験者向け案内にもとづきます。試験種目ごとの配点・満点も、人物試験の比重も、受験案内には示されていません。集団面接・集団討論に関する記載もなく、明記されている面接形式は個別面接です。また千曲市は第1次試験の合格者を受験番号のみで公表しており、申込者数・受験者数・合格者数といった実施状況は公表していません。第1次試験に用いられるBEST-AおよびBEST-Pは、他市で使われるSCOAや標準的な教養試験とは出題形式が異なります。令和8年度の千曲市の採用試験は複数の系統に分かれて実施されますので、受験の際は必ず、ご自身が受ける系統と区分の最新の案内をご確認ください。

千曲市役所が求める人物像

千曲市は職員採用試験の募集にあたって、「あなたの力を千曲市に!市民から信頼され 共に考え 共に行動できる方 ご応募をお待ちしております。」と公表しています。

短い一文ですが、要素は3つに分かれています。信頼されること、共に考えること、共に行動すること。

順序にも意味があると読めます。信頼が先にあって、そのうえで一緒に考え、最後に動く。

行政の側が旗を振るのではなく、市民と並んで進むという立ち位置が示されています。

この一文を面接の言葉に置き換えてみましょう。「信頼され」は、約束したことを果たしてきたかという実績の話です。

「共に考え」は、自分の案を通すのではなく相手の言い分を材料にできるかという姿勢の話。「共に行動できる」は、考えるだけで終わらせずに手を動かした経験があるかという話になります。

自己PRでは、この3つのうちどれか1つについて、実際にそうした場面を挙げられるようにしておきましょう。

市の言葉に加えて、当研究会から補助線を1本引くとすれば、それは組織の規模です。上級の行政の採用は5名程度で、専門職は若干名。

5万8千人の市民に向けた行政サービスを、この積み重ねで担っています。市が「共に」という言葉を二度重ねているのは、この規模で市民の側の手を借りずに回る仕事がそもそも少ないからだとも読めます。

だからこそ、前例のない相談を持ち込まれたときに、庁内で抱え込まずに相談先を開拓できるかどうかが、面接でも見られやすいと考えるのが自然です。

加えて、市が水害の当事者であったことも忘れないでください。1,363棟という被害を経験した市では、平時の窓口業務と非常時の対応が地続きになります。

共に考え共に行動できる、という市の言葉に自分を寄せていくのではなく、自分がすでに誰かと考え、動いた場面を思い出して、そこから話し始めてください。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。千曲市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日はよく眠れましたか台本の外の一言に、どれだけ自然に返せるか
② 動機・志望なぜ公務員という働き方を選んだのですか民間と比べたうえでの選択になっているか
③ 自己理解自分に足りないと感じるところはどこですか弱点の告白ではなく、補い方まで語れるか
④ 経験・行動誰かと一緒に何かを続けた経験を教えてください共に考え共に行動するという市の言葉との重なり
⑤ 学業・経歴これまでに一番力を注いだ学びは何ですか内容の難易度ではなく、仕事への橋のかけ方
⑥ 適性・将来希望と違う部署に配属されたらどうしますか少人数の組織で異動が広くなることへの理解
⑦ 公共性・社会性気になっている社会の動きを一つ挙げてください関心の広さと、自分の意見を短く言い切る力

この7つの領域は千曲市に固有のものではなく、全国の官公庁の面接に共通します。誰もが備えてくるぶん、ここで抜きん出るのは難しいでしょう。

では、どこで印象が変わるのか。それが次に挙げる「千曲市ならでは」の質問です。

合否を分けるのは「千曲市役所ならでは」の質問

「なぜ長野県庁ではなく、千曲市役所なのですか」
「千曲市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

どちらも千曲市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「千曲市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい千曲市の事実答え方のヒント
なぜ県庁ではなく市役所か上級行政の採用は5名程度。長野市と上田市に挟まれた5万8千人の市で、一人が受け持つ範囲は広い長野市にも上田市にも近い場所であえて千曲市を選ぶ理由が要ります。この規模の市だからこそ担える仕事を一つ挙げて答えてください
市が掲げる標語「人をてらす 人をはぐくむ 人がつながる 月の都 ~文化伝承創造都市・千曲~」3つの動詞のうち一つを選び、自分がその動詞にあたる行動をとった場面を添えると、標語の引用が自分の話に変わります
災害の経験令和元年東日本台風の住家被害は1,363棟で長野市に次ぐ県内2番目。発災直後には床上浸水1,195戸が推定された被害の規模を語るより、その直後に市役所が何を優先することになるのかを考えて述べると、防災の理解の深さが伝わります
人口密度の高さ市域119.79km²に58,537人。人口密度489人/km²は県内19市で2番目密度の高さを利点として述べたうえで、避難や見守りの場面では同時に多くの人が動くことになる、という両面で語りましょう
2つの採用系統市が単独で行う試験と、7市町村による共同選考の2系統がある。共同選考は第一次選考のみが共同自分が受ける系統を正確に説明できるようにし、共同選考であっても採用するのは千曲市だと理解していることを示しましょう

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接の場が一度きりということは、そこで語られる経験が本当にあなたのものかを、短い時間で確かめられるということです。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
信頼を積み重ねた経験約束したことを果たしてきた場面を、具体的に語れるか市が公表する人物像の最初の要素が「市民から信頼され」です。任されたことを最後まで担った経験を1つ選んでおきましょう
相手と一緒に考える姿勢意見が割れたときに、相手の言い分をどう扱ったか「共に考え」に対応する観点です。自分の案が通らなかった場面のほうが、材料としては強く働きます
書いて伝える力800字程度・1時間の作文(区分によっては小論文)で、課題をどう組み立てたか第1次試験に作文が含まれます。千曲市の課題を800字で書く練習を、時間を計って1本は通しておきましょう

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

千曲市の市単独の試験は面接が1回ですから、その1回のなかで掘り下げが繰り返されると考えておきましょう。用意しておきたいのは、自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えです。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 自分が受けるのが市単独の試験か共同選考かを確かめ、申込先が千曲市か長野市かを間違えないようにする
  2. BEST-AとBEST-Pの形式に一度目を通す(他市のSCOAや標準的な教養試験とは出題の作りが違う)
  3. 「ながの電子申請サービス」で申込手順をたどり、受験票を自分で印刷して写真を貼る流れまで確認しておく
  4. 学業・課外活動・アルバイトや仕事から、話せる場面を1つずつ選んで書き留める
  5. 市が公表する「信頼され」「共に考え」「共に行動できる」の3要素に、自分の経験を1つずつ割り当ててみる
  6. 一度きりの面接で掘り下げに耐えられるよう、声に出して練習し、返しを書き足していく

優先順位に注意

ステップ5〜6の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ4の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、千曲市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

千曲市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

千曲市役所の想定問答集を見る

さいごに

千曲市が求める人物像として掲げた一文には、信頼、共に考えること、共に行動することの3つが並んでいました。1,363棟という被害を受けたあと、この市が復旧の日々をどう積み重ねてきたかを思えば、その3つが単なる標語でないことは想像がつきます。

市単独の試験なら、人物を見る場は個別面接の一度きりです。その席で語るべきは、あなたが誰かと一緒に何かを続けてきた時間そのものです。

「月の都」という言葉を掲げる市で、あなたが誰と何をつなぐつもりなのかを、自分の言葉にしてから臨んでください。