上伊那広域消防本部を受験する方に向けて、面接で問われる前提となる組織研究の材料(本部の特徴・基礎データ・管轄地域の特性と災害リスク・消防課題・重点方針)と、面接本番の流れ・想定される質問・評価の観点を、1ページに整理しました。

上伊那広域消防本部の面接試験では、「なぜ警察官や自衛官ではなく消防官なのか」「なぜ上伊那広域消防本部なのか」「入庁後にどの署所でどう働きたいか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。

上伊那広域連合という設置形態と、令和8年度からの試験制度の変更点を知っておくと、どの消防本部にも当てはまる一般論を避けた、説得力のある説明がしやすくなります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と上伊那広域消防本部の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

受験区分(中級・初級・消防経験者区分)によって受験資格や試験の一部が異なりますので、自分の区分にあたる部分を意識しながら読み進めてください。

第1部|組織研究編

上伊那広域消防本部の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは上伊那広域消防本部の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 上伊那広域消防本部は、伊那市・駒ヶ根市・辰野町・箕輪町・飯島町・南箕輪村・中川村・宮田村の8市町村で組織される「上伊那広域連合」(特別地方公共団体)が設置する消防本部である。平成27年4月に上伊那地域2市3町3村(2市=伊那市・駒ヶ根市、3町=辰野町・箕輪町・飯島町、3村=南箕輪村・中川村・宮田村)の枠組みで発足した。
  • 広域連合の発足以来、現場は202人(うち女性4人)の消防吏員によって担われてきた。指揮系統が階級に沿って組まれる職であり、消防士がその出発点にあたる。
  • 救急出動は令和6年中8,019件に上り、火災69件の約116倍という規模で、日々の活動の大半を救急が占める。
  • 勤務予定場所は上伊那広域消防本部および消防署(伊那・辰野・箕輪・高遠・伊南北・伊南南)で、管内は南アルプスと中央アルプスに挟まれた広い区域に及ぶ。
  • 令和8年度の試験から、上限年齢を25歳から30歳に、第一次試験の学科を教養試験からSPI検査に変更するなど、採用制度が大きく見直された。
  • 採用後は伊那市、駒ヶ根市又は上伊那郡内に居住することが要件とされている。

上伊那広域消防本部の基礎データ

面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「上伊那広域消防本部の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

8市町村で1つの広域連合を組む構成と、その区域を受け持つ人員や出動件数は、次の表で一度に見渡せます。

項目内容
設置団体上伊那広域連合(特別地方公共団体)
構成市町村伊那市・駒ヶ根市・辰野町・箕輪町・飯島町・南箕輪村・中川村・宮田村(8団体)
管内人口175,497人(令和8年1月1日現在・8市町村の合算)
所在地伊那市荒井(本部所在地)
消防吏員数202人(うち女性4人)※令和7年4月1日現在
火災出動件数69件(令和6年中)
救急出動件数8,019件(令和6年中)
救助出動件数98件(令和6年中)

構成市町村・所在地は上伊那広域連合の公式資料、管内人口は住民基本台帳に基づく令和8年1月1日現在の値、消防吏員数・出動件数は総務省消防庁が公表する本部別データによります。管内人口と消防吏員数・出動件数は時点が異なります。

数字から考えられる上伊那広域消防の課題

表の中で目立つのは、救急と火災の件数差です。火災の発生が年間69件であるのに対し、救急出動は8,019件で、救急が活動量の大部分を占めるという実態がうかがえます。

消火だけを思い描いて志望すると、業務理解の浅さがそのまま面接に出ます。

救急が中心にあるという前提から組み立ててください。

また、8市町村の人口を見ると、伊那市64,499人・駒ヶ根市31,073人という2つの市に対し、中川村4,546人・宮田村8,732人のような小規模な村も含まれます。人口規模の異なる8市町村を1つの本部で管轄している点は、志望動機を考えるうえでも意識しておきたい構造です。

「上伊那広域消防本部は、伊那市や駒ヶ根市のような市だけでなく、中川村や宮田村といった小さな村も含めた8つの市町村を管轄していると知りました。地域ごとに規模の異なる自治体を1つの本部で支えていくためには、どの署所に配属されても対応できる姿勢が大切になると考えています」

管轄地域の特性と災害リスク

2つのアルプスに挟まれた伊那谷

上伊那地域は、「南アルプスと中央アルプスの狭間を縫うように流れる天竜川。その流域の河岸段丘に様々な都市や農村が存在」すると長野県が紹介するとおり、伊那谷と呼ばれる細長い盆地に8市町村が連なる地域です。

電気機械・精密機械などの先端技術産業と、河岸段丘を生かした農業がともに盛んで、令和2年3月には木曽山脈(中央アルプス)が全国57か所目の国定公園に指定されました。

2つのアルプスと天竜川に囲まれた山がちな地形を管轄している点が、上伊那広域消防本部の管轄理解の出発点になります。(出典:上伊那地域の情報|長野県/中央アルプス国定公園の指定|環境省)

山がちな地形と土砂災害への警戒

長野県全体では、土砂災害の危険箇所として土石流5,912渓流(全国8位)、地すべり1,241箇所(全国1位)、急傾斜地8,868箇所(全国15位)が確認されており、地すべり危険箇所数は全国最多とされています。

南アルプス・中央アルプスに挟まれた上伊那地域も山がちな地形が多く、大雨や地震の際に土砂災害への警戒が必要な地域が管内に含まれると考えられます。

標高差の大きい地形は、平地の多い都市部の消防本部とは異なる備えを求められる要因にもなります。(出典:長野県砂防資料)

南アルプスの自然と観光

伊那市は、飯田市・富士見町・大鹿村など3県10市町村にまたがる「南アルプスユネスコエコパーク」(2014年6月登録)の構成自治体の一つです。

令和6年の上伊那地域の観光地延利用者数は407万人余り、観光地消費額は99億9,000万円で、日帰り客の比率が85%前後と高いのが特徴です。

日帰り客が多いということは、行楽シーズンに管内の道路や観光地周辺の人出が一時的に増えることも意味しており、救急・救助の需要にも影響し得る要素です。

自然環境と観光地としての側面も、地域理解の材料になります。(参考:南アルプスユネスコエコパーク/長野県観光地利用者統計調査結果|令和6年)

上伊那広域消防本部の主な消防課題

ここまでの数字と地域の姿を踏まえると、上伊那広域消防本部が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「消防の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

救急需要への対応

救急出動は全国的にも増加傾向にあり、令和6年中の全国の救急自動車の出動件数は771万8,380件で、統計開始以降で最多を更新しました。

上伊那広域消防本部の8,019件(令和6年中)もこの流れの中にあり、火災69件との差は前述のとおりです。

限られた救急隊で広い管内をカバーする工夫が欠かせません。(出典:令和7年版 救急・救助の現況)

山岳地帯を含む地形への対応

南アルプス・中央アルプスに挟まれた地形を管轄し、長野県全体では地すべり危険箇所数が全国最多とされている以上、大雨や地震の際の土砂災害、山岳地域での救助活動への備えは避けて通れません。

全国では緊急消防援助隊として718本部から6,661隊が登録されており(令和6年4月1日現在)、大規模な災害が起きた際には広域応援の受け入れ・派遣の両面が想定されます。

6拠点体制の維持

上伊那広域消防本部は伊那・辰野・箕輪・高遠・伊南北・伊南南という6つの拠点に職員を配置し、8市町村という広い管内をカバーしています。拠点ごとの規模や地域性の違いを理解した上で、どこに配属されても力を発揮できる体制を維持することが、組織運営の土台になります。

採用制度の見直しと人材確保

上伊那広域消防本部は令和8年度の試験から、受験の上限年齢を25歳から30歳へ引き上げ、第一次試験の学科を教養試験からSPI検査(SPI3-H)へ変更しました。

消防吏員202人のうち女性は4人(約2.0%)にとどまり、全国の消防吏員168,230人中女性6,386人・約3.8%(令和7年4月1日現在)と比べても低い水準です。

国が掲げる「令和8年度当初までに5%」という目標を踏まえると、受験の間口を広げる取組と女性の採用拡大は、この本部にとって重なり合う課題だといえます。(参考:女性消防吏員の活躍推進|消防庁)

林野火災・山岳救助への備え

上伊那地域は南アルプスと中央アルプスに挟まれ、令和2年3月には中央アルプス(木曽山脈)が国定公園に指定されました。

森林や山岳が管内の広い面積を占める地形を踏まえると、林野火災の予防や山岳地帯での救助活動に対応できる知識・体力も、都市部の消防本部とは異なる形で求められる能力だと考えられます。

管内には南アルプスユネスコエコパークの構成自治体である伊那市も含まれており、自然環境の豊かさと隣り合わせの災害リスクへの理解が、面接でも役立つ視点になります。

重点方針|採用試験制度の見直しにみる姿勢

上伊那広域消防本部には、名称を持つ単独の運営方針・基本計画にあたる公表文書は確認できません(2026年9月時点・当研究会調べ)。その代わりに読み解く材料になるのが、令和8年度に行われた採用試験制度の見直しです。

受験案内は「【年齢要件】上限年齢を『25歳』から『30歳』に引き上げました。【試験種目】教養試験からSPI検査に変更しました。」と明記しており、この2点の変更が同時に打ち出されたことに意味があります。(出典:令和8年度上伊那広域連合職員採用試験受験案内(消防士))

受験の間口を広げる方向性

上限年齢の引き上げは、社会人経験を積んでからの転職者や、他の進路を経験した人にも門戸を開く方向の変更です。

あわせて学科試験を教養試験からSPI検査に切り替えたことは、公務員試験特有の科目対策をしていない人にも受験しやすくする狙いがあると読み取れます。

受験の間口を広げつつ、面接試験と体力テストで人物・適性を確かめるという設計は、上伊那広域消防本部が人材確保に力を入れていることの表れだと考えられます。

実際に、消防吏員として一定の実務経験を積んだ人向けの「消防経験者区分」も別枠で用意されており、新卒者だけでなく経験者にも目を向けた採用設計になっている点も、あわせて押さえておきたいところです。

求める姿勢を示す唯一の公表文言

受験案内は「上伊那広域連合は上伊那地域8市町村の行政事務の共同処理を行う特別地方公共団体です。消防士は、住民の生命・財産を守るという重大な責任の伴う職業です。やる気、知力、責任感を持ちバイタリティあふれる方の受験を歓迎します。」と記載しています。

これが求める人物像に最も近い公表文言であり、面接準備の出発点になります。

「やる気」「知力」「責任感」「バイタリティ」という4つのキーワードのうち、自分の経験に最も重なるものはどれかを考えておくと、志望動機を組み立てやすくなります。

POINT|制度変更の背景まで理解しておく

単に「年齢要件が変わった」「試験科目が変わった」という事実だけでなく、なぜその変更が行われたのかまで自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。「①どんな課題があったと考えられるか→②どう変更したか→③自分がこの変更後の受験にどう当てはまるか」の順で整理すると、面接で聞かれても慌てません。

悪い例「消防の仕事にあこがれがあるので、上伊那広域消防本部を志望しました」

改善例「前職では体力を使う仕事に就いており、チームで動く現場経験を積んできました。上伊那広域消防本部が令和8年度から受験の上限年齢を引き上げたと知り、これまでの経験を生かせる機会だと感じましたので、体力テストと面接の両方に向けて準備を進めています」

あわせて確認したい公式資料

上伊那広域連合が公式に発信している情報のうち、押さえておきたいものを挙げます。制度変更の背景を理解する材料と、申込手続きに必要な情報の両方に目を通しておきましょう。

  • 令和8年度上伊那広域連合職員採用試験受験案内(消防士)
  • 上伊那広域連合職員採用試験申込フォーム
  • 総務省消防庁の消防本部データ検索(吏員数・出動件数などの公表統計)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、上伊那広域消防本部専用の面接想定問答集をご用意しています。上伊那広域消防本部の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

上伊那広域消防本部の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

上伊那広域消防本部の面接の概要

ここからは、上伊那広域消防本部の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。制度の変更点が多い年度だからこそ、最新の受験案内に沿った理解が欠かせません。

上伊那広域消防本部の面接の流れ

上伊那広域消防本部の採用試験は、上伊那広域連合が直接実施し、直接採用する試験です。第一次から第三次まで進む三段階制で、個別面接試験が第二次・第三次の計2回組み込まれているのが特徴です。

項目内容(令和8年度実施・中級/初級)
試験の段階三段階制。第一次=適性検査(SPI3-H)・論文/作文試験、第二次=個別面接試験・体力テスト・資格審査、第三次=個別面接試験
面接の種類個別面接試験が第二次・第三次の計2回。集団面接・集団討論の記載はない
面接以外の検査体力テスト(握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、立ち幅とび他。男女の体力差を考慮した判定基準あり)
提出書類救急救命士免許証の写し・大型自動車運転免許証の写し(該当者のみ)、高校卒業証明書の写し(初級のみ)
身体検査第三次合格後に健康診断書の提出が求められる

注目してほしいのは、令和8年度から学科試験がSPI3-Hに変わった点です。公務員試験特有の科目対策をしていなくても受験できる道が広がった分、面接や体力テストで差がつく度合いは大きくなったと考えられます。

加えて個別面接が2回ある試験では、1回目に話した内容をもとに、2回目でさらに踏み込んだ確認が行われると考えておきましょう。(出典:令和8年度上伊那広域連合職員採用試験受験案内(消防士))

上記の試験構成は、上伊那広域連合が公表する令和8年度実施の受験案内にもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は年度によって変わることがあります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の受験案内をご確認ください。

上伊那広域消防本部が求める人材

上伊那広域消防本部は、受験案内で「やる気、知力、責任感を持ちバイタリティあふれる方」の受験を歓迎すると明記しています。これが公表されている求める人物像に最も近い文言です。

あわせて、8市町村が共同で1つの本部を持っているという成り立ちも押さえておきましょう。

上伊那広域消防本部では採用後に伊那市、駒ヶ根市又は上伊那郡内への居住が求められ、勤務先も伊那・辰野・箕輪・高遠・伊南北・伊南南のいずれかの拠点になります。

8市町村のどこに配属されても力を発揮する覚悟と、地域ごとの事情への理解を、自分の言葉で語れるようにしておきましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。上伊那広域消防本部の面接も、この見取り図の上で準備しておけば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク会場までの道のりで、何か目についたものはありましたか?場を和ませる導入の質問ですが、素の反応や表情もよく見られています
② 動機・志望なぜ上伊那広域消防本部を志望するのですか?消防官という仕事と上伊那という土地を、自分の言葉で選べているか
③ 自己理解自分の性格で、消防の仕事に向いていると思う点はどこですか?自分を客観視できているか。弱みへの向き合い方に人柄が出ます
④ 経験・行動予定通りに進まなかった物事に、どう対応した経験がありますか?想定外の事態への対応力。とっさの判断や行動の筋道が見えるか
⑤ 学業・経歴何を基準にこれまでの進路を決めてきましたか?意思決定の背景。何を優先して進路を選んできたかが伝わるか
⑥ 適性・将来体力テストに向けてどんな準備をしていますか?目標に向けて計画的に体力づくりを続けられているか
⑦ 公共性・社会性消防官という仕事の公共性について、どう考えていますか?仕事の公共性への理解と、社会の出来事への当事者意識

7つの枠組みは、学科をSPI検査に切り替えた上伊那広域消防本部でも、教養試験を続けている本部でも、おおむね共通します。ここから先、上伊那を受ける理由まで踏み込めるかどうかは、次の固有質問で決まります。

合否を分けるのは上伊那広域消防本部に固有の質問

「同じ公安系の仕事として警察官や自衛官もありますが、消防官を選んだ決め手は何ですか」
「上伊那広域消防本部は8つの市町村で構成されていますが、管内のどの地域で、どんな役割を担いたいと考えていますか」

2問とも、その場しのぎでは深みのある答えになりません。

上伊那広域消防本部について何を調べ、どう考えてきたかが、回答の説得力を左右します。

面接で使いやすい「上伊那広域消防本部の事実」を絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい上伊那広域消防本部の事実答え方のヒント
採用試験制度の変更令和8年度から上限年齢を25歳から30歳に引き上げ、学科試験を教養試験からSPI検査に変更した(詳細は第1部4章・5章)制度変更を自分が受験する理由の一つとして、自分の経験と結び付けて語る
救急需要の大きさ救急出動は令和6年中8,019件で、火災69件の約116倍。全国的にも救急需要は増加を続けている(詳細は第1部2章・4章)件数の差に加えて、限られた救急隊で対応する体制の工夫まで接続すると具体性が増す
広域の管轄構造伊那市・駒ヶ根市・辰野町・箕輪町・飯島町・南箕輪村・中川村・宮田村の8市町村で構成され、6つの拠点で運用されている(詳細は第1部1章・2章)特定の一市町村だけでなく、8市町村全体への理解を示す一言を添える
山がちな地形南アルプスと中央アルプスに挟まれた伊那谷を管轄する。長野県は地すべり危険箇所数が全国最多とされる(詳細は第1部3章・4章)地形の特徴を、大規模災害への備えという課題意識まで接続して話す

使い方のコツは、4つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 消防吏員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

上伊那広域消防本部は、試験の段階と種目は公表していますが、各種目の配点や評価語までは明らかにしていません。配点等が非公表である以上、観点は公表されている選考の設計と、一般的な公務員試験の考え方を手がかりに組み立てるほかありません。

設計から言えるのは、第二次・第三次の2回にわたって個別面接が置かれ、体力テストが第二次に組み込まれているという構造です。

一般的な公務員試験の評価手法として知られているのが、コンピテンシー評価です。過去の行動の事実をもとに、入庁後にも同じように力を発揮できるかを確かめる考え方です。

上伊那広域消防本部が評価方法として公表しているわけではありませんが、一般的な考え方として押さえておくと安心です。

評価の観点(一般論)面接でどう確かめられるか準備のポイント
責任感・使命感難しい状況でも自分の持ち場を投げ出さずにやり切った経験があるか受験案内が求める「やる気、知力、責任感」を意識し、責任を持ってやり遂げた出来事を選ぶ
地域理解・協調性立場や考え方の異なる相手と、うまく折り合いをつけた経験があるか上伊那広域消防本部は8市町村を管轄するため、地域ごとの違いを理解しようとする姿勢を伝える
体力・生活管理握力・上体起こし・長座体前屈など複数種目の体力テストに耐えられる基礎体力があるか日頃の体づくりへの取組を、具体的な種目名を交えて語れるようにしておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。上伊那広域消防本部のように面接が2回ある試験ではなおさらです。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 令和8年度の受験案内を読み、自分の受験区分(中級・初級・消防経験者区分)の受験資格と提出書類を確認する
  2. 高校・大学生活やこれまでの経験を棚卸しする。チームで動いた具体例、体力を継続的に鍛えた経験を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。体力テストに向けたトレーニングと生活リズムづくりも並行して進める

優先順位に注意

ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を消防の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で上伊那広域消防本部の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

上伊那広域消防本部の申込みはインターネットのフォームのみで受け付けられており、郵送や持参はできません。

手続きの入口を間違えないよう、早めに申込方法を確認しておくと安心です。

また、採用は法律の規定に基づく条件附採用で、6か月の条件附採用期間を経て正式採用となる点もあわせて知っておきましょう。

面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、上伊那広域消防本部専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。上伊那広域消防本部の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。

上伊那広域消防本部の想定問答集を見る

さいごに

上伊那広域消防本部は、伊那市・駒ヶ根市を中心に8つの市町村を管轄し、南アルプスと中央アルプスに挟まれた伊那谷を守る消防本部です。令和8年度からは受験の上限年齢を引き上げ、学科試験をSPI検査に切り替えるという大きな制度変更を行いました。

救急出動が火災の約116倍という数字が示すとおり救急対応の比重が大きく、山がちな地形ゆえの災害リスクも抱える管内で、受験の間口を広げてでも人材を確保しようとする姿勢がうかがえます。

伊那・辰野・箕輪・高遠・伊南北・伊南南という6つの拠点のどこに配属されても対応できる柔軟さを持ちながら、この記事で押さえた事実を、自分自身の経験や強みとどうつなげられるか、ぜひ言葉にして準備を進めてください。