本記事では、長野市職員採用試験の面接対策で必要な、長野市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

長野市役所の面接試験では、「なぜ長野市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。長野市は年度内に性格の異なる2系統の採用試験を置いており、6月の試験は近隣の4町村と第一次試験を共同で実施する枠組みです。

どちらの入口から受けるかで選考の流れも面接の回数も変わりますので、まず自分が受ける試験を確かめたうえで、ここから並べる事実を志望動機の材料として読み進めてください。

第1部|自治体研究編

長野市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは長野市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 長野県の県庁所在地であり、平成11年4月に中核市へ移行した保健所設置市。市の公式資料は中核市制度を、政令指定都市以外で規模や能力が比較的大きな都市の事務権限を強化する仕組みだと説明している。
  • 明治30年4月1日に県内で最初の市として市制を施行した。昭和41年10月の2市3町3村の大合併と、平成17年・平成22年の周辺町村の編入を経て、現在の市域になっている。
  • 人口は約36万人で、長野県内19市のなかで最も多い。面積は834.81平方キロメートルで、松本市に次ぐ県内2番目の広さ。
  • 北陸新幹線は平成9年10月に東京から長野まで開業し、平成27年3月に金沢まで延伸された。東京から長野市まで約1時間20分という時間距離が、観光と移住施策の前提になっている。
  • 令和元年東日本台風では、千曲川の堤防が穂保地先で約70メートルにわたって決壊した。市内の浸水面積は約1,541ヘクタールに及び、この災害への対応がいまも市政の柱に残っている。
  • 令和10年には、長野県で第82回国民スポーツ大会・第27回全国障害者スポーツ大会(愛称「信州やまなみ国スポ・全障スポ」)が開かれる。長野県での国民スポーツ大会開催は昭和53年の「やまびこ国体」以来50年ぶり。
  • 長野地域9市町村による「2050ゼロカーボン宣言」が令和4年(2022年)2月14日に共同で発出されている。
  • 財政力指数は0.715(令和5年度)で、中核市平均の0.765を下回る。市自身が「強固な財政基盤を有しているとは言えない」と財政推計に明記している。

長野市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、統計値を細かく暗記する必要はありませんが、長野市がどれくらいの規模の市なのかを数字で言えるようにしておくことで、志望動機の解像度が変わります。ここでは人口・年齢構成・市域・財政の4つに絞って、面接で使える範囲の数字を並べました。

項目内容
総人口359,886人(令和8年1月1日現在・住民基本台帳。県内19市で最多)
65歳以上人口112,171人(31.2%)
75歳以上人口67,294人(18.7%)
世帯数166,750世帯(令和8年7月1日現在・住民基本台帳)
総面積834.81km²(県内19市で2番目の広さ)
市域の広がり東西36.5km・南北41.7km(最高地点2,353m/最低地点327.4m)
隣接自治体15市町村(新潟県妙高市を含む)
財政力指数0.715(令和5年度・中核市平均0.765)
経常収支比率91.8%(令和5年度)/実質公債費比率5.2%
市の花・市の木リンゴ・シナノキ

総人口と65歳以上・75歳以上人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値で、割合の分母にも同じ総人口を用いています。世帯数・面積は長野市の公表値、県内順位は当研究会が長野県19市の基礎データを比較したものです。

数字から考えられる市政課題

長野市の高齢化率は31.2%で、市民のおよそ3人に1人が65歳以上です。そのうち75歳以上が67,294人と、65歳以上の約6割を占めています。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

より重いのは、この先の推計のほうです。市の財政推計は国立社会保障・人口問題研究所の推計を用いて、総人口が2020年の372,760人から2050年には304,037人へ、15〜64歳人口は215,950人から151,472人へ減ると見込んでいます。

一方で65歳以上人口は112,385人から123,961人へ増えます。合計特殊出生率も2023年に1.30まで下がりました。(出典:長野市財政推計|令和6年10月)

県庁所在地の規模と将来推計は、面接で次のように結べます。

「長野市は約36万人が暮らす県庁所在地ですが、2050年には30万人ほどまで減ると市自身が推計しています。働く世代がおよそ3割減る一方で高齢の市民は増えますので、いまの暮らしを支えるサービスをどう組み替えていくかが、これからの市役所の大きな仕事になると考えています」

長野市の経済・産業

ものづくりの姿

  • 製造業(従業者4人以上の事業所)の製造品出荷額等は5,937億8,338万円、事業所数459、従業者数19,725人(出荷額は令和元年、事業所数と従業者数は令和2年6月1日現在)。
  • 産業細分類別の出荷額で1位は無線通信機械器具製造業(115億8,860万円)、2位は電子回路基板製造業(84億8,554万円)、3位は味そ製造業(51億4,963万円)。

細分類の上位を並べると、電子・通信の部品づくりと、味噌に代表される食品加工が並び立つ構造が見えてきます。精密で単価の高い工業製品と、地域の風土に根ざした食品産業が同居している点は、産業振興や企業誘致の話題を語るときの出発点になります。(出典:長野市 工業統計調査結果報告書|令和2年調査)

観光と交流人口

令和6年度の観光入込客数は957万7千人で、前年度の930万8千人から2.9%増えました。総宿泊客数の推計は185万2千人、そのうち外国人宿泊客数は37万856人と前年度の約2倍に伸びています。

一人あたり観光消費額は24,580円、観光による経済波及効果は972.0億円で、市が設定した目標値の120.4%にあたります。(出典:長野市観光振興計画の指標達成状況|令和6年度)

ただし内訳を見ると、地点別では戸隠が目標を達成した一方で、善光寺と松代は目標に届いていません。入込客数そのものは全体で目標の89.5%にとどまっており、来訪者数と消費額の伸び方が一致していないことがわかります。

平成27年の善光寺御開帳では参拝客総数が707万人にのぼりました。令和9年には次の御開帳が控えており、受入環境の整備と、宿泊や消費への波及をどう設計するかが問われています。

広域のなかでの位置

長野市は長野地域連携中枢都市圏の中心市として、周辺市町村と施策や事務を共同で進める立場にあります。2050年ゼロカーボン宣言が市単独ではなく長野地域9市町村の共同宣言として出されたことも、職員採用の第一次試験を近隣4町村と共同で実施していることも、同じ広域連携の流れの上にあります。

市の仕事を「長野市の中だけで完結するもの」と捉えていると、この視点が抜け落ちます。

長野市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、長野市がいま向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

若い世代の流出と人口減少

市の人口ビジョンは、自然動態の課題として出生数の減少・合計特殊出生率の低下・婚姻割合の減少を挙げ、社会動態の課題としては、10代後半から20代前半の若い世代が進学や就職を機に東京圏へ多数流出することを挙げています。転入数のピークは平成8年(1996年)の17,490人で、そこから流入の勢いは落ちてきました。(出典:長野市人口ビジョン改訂版|令和7年4月)

余裕のない財政と施設更新の集中

長野市財政推計は、令和7年度以降に年間20〜60億円程度の財源不足が生じると見込み、財政調整等3基金の残高が令和10年度末に令和5年度末比で約7割(186億円)減る一方、市債残高は183億円増えると推計しています。

背景にあるのは、長野オリンピック施設をはじめとする公共施設の長寿命化対策と、令和10年の国スポ・全障スポに向けた施設整備が同じ時期に重なることです。何を残し、何を見直すかの判断が続く前提で市の仕事を考える必要があります。

千曲川と向き合う防災

令和元年東日本台風による市内の人的被害は死者15人(災害関連死13人を含む、令和3年3月31日時点)、住家だけでも8,300棟以上が損壊し、長沼・豊野地区では住家全壊が1,000棟を超えました。

浸水は長沼・豊野・古里地区の934ヘクタールを中心に、篠ノ井・松代・若穂の各地区にも及びました。

市は「ながの治水対策研究会」の成果を流域治水の取組へ実装することや、浸水被害軽減対策、住宅と建築物の耐震化、地区の第2災害支援ターミナルの活用を進めています。(出典:長野市 令和元年東日本台風災害対応検証報告書)

中核市としての保健衛生

中核市への移行によって、長野市は保健所を設置する市になりました。採用試験の職務内容にもそれは表れており、獣医師区分は食品や環境の衛生に関する監視・動物愛護・狂犬病予防業務等、保健師区分は市民の健康増進や社会福祉サービスの推進・保健所業務等とされ、行政A・社会福祉士・保健師の勤務地には長野市保健所が含まれます。

県が担う地域も多い分野を、長野市では市の職員が受け持っているという事実は、「なぜ県庁ではなく市役所か」に答えるときの具体的な材料になります。

脱炭素と公共交通の維持

2050年ゼロカーボンの実現に向けては、学校施設への太陽光発電設備の設置、公共施設や市営住宅のLED化などが進められています。あわせて、市営バス3路線の新規運行やAIオンデマンドシステムの導入といった、人口が減る中で移動手段をどう残すかという課題への対応も動いています。

環境と交通は別々の話に見えて、市域が広く中山間地を抱える長野市では、どちらも「どこまで公共が支えるか」という同じ問いにつながります。

長野市の重点政策|第五次長野市総合計画

長野市の市政運営の最上位に置かれているのは「第五次長野市総合計画」です。基本構想が平成29年度から令和8年度までの10年間、後期基本計画が令和4年度から令和8年度までの5年間という三層構成で、令和8年度に計画期間の終期を迎えます。

令和9年度から始まる次期総合計画は現在策定の準備が進められている段階です。(出典:第五次長野市総合計画)

計画の骨組み

まちの将来像は「幸せ実感都市『ながの』」で、副題に「"オールながの"で未来を創造しよう」が添えられています。市はこれを、住民の福祉の増進を図りながら市全体の「幸せ」の総和を広げていく姿だと説明しています。

その下に、市民の「幸せ」の実現、「持続可能な」まちづくりの推進、「長野市らしさ」の発揮とまちの活力・魅力の創出という3つの基本方針が置かれ、施策は7分野22政策として体系化されています。

分野置かれている政策の方向
行政経営市民が主役のまちづくりの推進/将来にわたり持続可能な行財政運営の確立
保健・福祉少子化対策と切れ目ない子ども・子育て支援/高齢社会の形成/だれもが自分らしく暮らせる社会/健康づくり/人権
環境環境に負荷をかけない持続可能な社会の形成/自然と調和した心地よい暮らしづくり
防災・安全災害に強いまちづくりの推進/安心して暮らせる安全社会の構築
教育・文化人材の育成と環境整備/学習機会の提供/文化の創造と継承/スポーツを軸としたまちづくり/国際交流・多文化共生
産業・経済観光の振興/農林業の振興/商工業の振興/安定した就労の促進
都市整備魅力あるまちづくりの推進/拠点をつなぐネットワークの充実

さらに後期基本計画では、総合戦略を統合した3つの分野横断テーマが置かれています。暮らしを支える機能の確保や防災・減災を含む「まち」、移住・定住や少子化対策を含む「ひと」、産業の担い手確保を含む「しごと」という並びで、分野の枠を越えて施策をつなぐ役割を担っています。

令和8年度の市政運営

令和8年度の市長施政方針は「選ばれる・世界に誇れるまち」という表題で、全ての世代が安心して暮らせる長野へ、地域コミュニティと絆の強化、強くしなやかな地域経済の構築、安全・安心な"まち"づくりという4つの柱で構成されています。

当初予算は「こども若者・子育て」「観光・まちづくり」「地域・交通」の3つを重点に配分され、一般会計は1,952.2億円、予算総額は3,158.5億円です。(出典:広報ながの 令和8年度市長施政方針|令和8年4月号)

具体的な施策としては、胎児心エコー検査費用の一部助成、第2子以降の保育料の無償化、市立小学校の給食費無償化、還元率50パーセント・発行総額60億円のプレミアム商品券、令和9年の善光寺御開帳に向けたプロモーションと受入環境の整備、(仮称)長沼総合市民センターの早期完成などが並びます。子育て支援と経済対策と災害復興が同じ年度の柱として並んでいるところに、いまの長野市の立ち位置が表れています。

POINT|22の政策をすべて暗記しなくてよい

政策の名称を覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③いま動いている事業 → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験をどう生かすか」の順に調べていきましょう。

悪い例「長野市の子育て支援に関わりたいです」

改善例「第2子以降の保育料無償化や小学校の給食費無償化のように、子育ての負担を直接軽くする取り組みを、利用するご家庭の声を聞きながら広げていく仕事に関わりたいです」

あわせて確認したい公式資料

全部に目を通そうとすると時間が足りなくなります。志望動機に近いものから順に読み、面接で触れられそうな箇所だけを拾っておきましょう。

  • 長野市職員採用試験の受験案内(前期の共同試験・後期でそれぞれ別冊)
  • 第五次長野市総合計画 後期基本計画(施策の体系と分野横断テーマ)
  • 広報ながのの4月号に掲載される市長施政方針と当初予算の記事
  • 長野市財政推計(財政力指数・基金残高・市債残高の見通し)
  • 令和元年東日本台風災害対応検証報告書(被害の実数と対応の反省点)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、長野市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。長野市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

長野市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

長野市役所の面接の概要

ここからは、長野市役所の選考がどんな順番で人物を見ていくのか、想定される質問にはどんな型があるのか、どこで差がつくのかを、公表資料と当研究会の分析から順に見ていきます。

長野市役所の面接の流れ

まず押さえるべきなのは、長野市の採用試験が6月の共同試験(前期)と9月の長野市単独の試験(後期)という2系統に分かれていることです。

前期は「長野市・長野地域連携中枢都市圏内市町村職員採用共同試験」といい、長野市・小布施町・高山村・信濃町・飯綱町の5団体が第一次試験だけを共同で実施します。第二次試験以降は各自治体が個別に行いますので、面接は志望した自治体ごとに受けることになります。

この共同試験では、志望する自治体を第2志望まで選んで申し込めます。受験案内には、志望自治体を優先して自治体ごとに合格者を決めるため、第1志望で不合格でも第2志望で合格となる場合があると明記されています。

一方、9月の後期試験は長野市が単独で実施し、募集する区分が前期とは異なります。令和9年度採用では、大学・短期大学卒業程度は土木・建築・電気・機械などの技術系、高等学校卒業程度は一般事務や土木・消防、このほか技能労務職の調理が置かれています。

大学・短期大学卒業程度で事務職を志望する人と救急救命士には後期の募集区分がなく、6月の共同試験が受験機会になりますので、自分の区分がどちらにあるかを最初に確かめてください。

もう一つ、名前のよく似た枠組みがあります。社会人経験者向けの「長野市・長野地域連携中枢都市圏内市町村職員採用共同選考(社会人経験者1)」で、参加団体は長野市・須坂市・千曲市・小布施町・高山村・信濃町・飯綱町の7市町村です。

5団体で行う6月の共同試験とは名称も参加団体も別のものですので、申込みの際に取り違えないよう注意してください。

項目内容(令和9年度採用)
試験の系統6月実施の共同試験(前期)と、9月実施の長野市職員採用試験(後期)の2系統。募集する試験区分が前期と後期で異なります
共同試験の参加団体長野市・小布施町・高山村・信濃町・飯綱町の5団体。第一次試験のみ共同で実施し、第二次試験以降は各自治体が個別に実施
志望自治体の選択共同試験は第2志望まで選択可能。第1志望で不合格でも第2志望で合格となる場合がある
試験の段階共同試験の長野市分は第一次・第二次・第三次の3段階。後期も3段階ですが、高等学校卒業見込等の土木・土木【上下水道】・建築・電気は第一次試験日に面接を行い、第二次が最終試験になります
面接の種類第二次・第三次とも「個別面接による試験」。集団面接・集団討論の記載はありません
第一次の科目共同試験は教養試験(択一式・1時間)、専門試験(行政A・土木・建築・電気は2時間)、論文作文試験(1時間30分)、事務適性検査(10分。消防・救急救命士は消防適性検査35分)。後期は区分により専門試験の有無が異なります
論文作文の扱い第一次試験日に実施しますが、使用されるのは第二次試験以降。未受験や規定字数に満たない場合は第一次の合格対象になりません
提出書類市ホームページのリンクから電子申請。本人顔写真データの添付が必要。後期の高卒程度の土木・建築・電気等は「受験カード」と成績証明書を郵送で事前提出
申込みの制限同じ年度内に長野市が実施した他の採用試験(チャレンジ枠・早期技術枠など)を受験した人は、原則として重ねて申し込むことができません
配点各試験種目の配点・満点および人物試験の比重は、前期・後期いずれの受験案内にも記載がありません

論文作文が第二次試験以降で使われるという仕組みは、長野市の面接を考えるうえで見過ごせない設計です。第一次試験日に書いた文章が、そのまま面接官の手元にある状態で個別面接が2回行われます。書いた内容と話す内容がずれていれば、そこは当然掘られます。

上記の試験構成は、長野市の令和9年度採用に関する前期(共同試験)・後期の受験案内にもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。

長野市役所が求める人物像

長野市は採用情報サイトの「求める人材・職員像」として、「ナガノをもっと良いまちにしたいという熱い思い持った若い力を必要としています。」と公表しています(表記は原典のまま)。(参考:長野市職員採用情報|令和8年度)

この一文は短いだけに、受け取り方に幅があります。手がかりになるのは、長野市がどんな仕事を抱えた市なのかという事実のほうです。

第1部で見たとおり、保健所業務のように他の多くの市では県が担う分野まで市の職員が受け持ち、市域には中山間地の集落から長野駅前の再開発まで、条件のまったく異なる現場が同居しています。共同試験の区分に獣医師や保健師が並ぶのも、この構造の裏返しです。

権限が広く、現場の条件がばらつく組織では、担当する制度を正確に動かす力と同じくらい、現場で見聞きしたことを政策の言葉に置き直して持ち帰る力が求められます。

しかも財源不足が続く見通しである以上、やりたいことをそのまま実行できる場面は多くありません。市民や地域団体、周辺の町村と手を組みながら、限られた資源で成り立つ形まで案を練り直せる人が評価されやすい、というのが当研究会の見立てです。

面接の準備に落とすなら、こう考えてください。第2志望として長野市の面接に進んだ人も、そこで別人のように振る舞う必要はありません。第一次試験日に書いた論文が第二次以降で使われる以上、申込書と論文と面接での話が同じ一人の人物のものとして筋が通っているかどうかが、いちばん確かめられやすいからです。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。前期の共同試験でも9月の後期試験でも、この見取り図の上で準備しておけば、大きな抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク会場までは迷わずに来られましたか?入室直後の空気づくりは、そのまま後半の受け答えに影響します。用意していない問いへの返し方
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?民間企業でも成り立つ理由で終わっていないか。共同試験の場合、第1志望と第2志望の書き分けと矛盾していないか
③ 自己理解あなたの短所は何ですか?自分を客観視できているか。短所とどう付き合ってきたかまで語れるか
④ 経験・行動これまでで最も大変だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください困難の中身よりも、そこで何を判断し、実際にどこまで動いたか。個別面接2回で同じ話を別の角度から問われる前提
⑤ 学業・経歴卒業論文や研究のテーマを、簡単に説明してください専門外の相手に伝わる言葉へ置き換える力。第一次試験日に書いた論文作文の内容とつながっているか
⑥ 適性・将来希望する配属先はありますか?市の業務範囲の理解。長野市は保健所業務や中山間地の行政まで抱えるため、配属の幅をどう受け止めているか
⑦ 公共性・社会性最近気になった出来事は何ですか?社会の動きへの関心と、それを短く述べる力。市政に引き寄せて話せるか

もっとも、この7つの型は長野市の個別面接に固有のものではありません。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。

では、どこで差がつくのか。それが次の「長野市ならではの事情を踏まえた質問」です。

合否を分けるのは「長野市役所ならでは」の質問

「なぜ長野県庁ではなく、長野市役所なのですか?」
「長野市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

とくに1問目は、長野市では答えの材料がはっきりしている質問です。第1部で見たとおり、保健所業務のように県と市の担当が分かれる分野を、長野市は中核市として自分で持っているからです。

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。

こうした質問に答えるための「長野市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい長野市の事実答え方のヒント
なぜ県庁ではなく市役所か平成11年4月に中核市へ移行し、保健所を設置。他の多くの市では県が担う食品・環境衛生の監視や動物愛護などを市が受け持つ制度の説明で終わらせず、住民に近いところで完結する仕事の具体例として保健所業務を挙げると、長野市を選んだ理由として噛み合います
人口の現在地人口は約36万人で県内最多。一方、市の財政推計は2050年に304,037人まで減り、15〜64歳が約7割の水準になると見込む県内最多という現在地と、30年後の縮小の両方に触れます。どちらか一方だけだと、志望動機が現実離れした印象になります
市の総合計画「第五次長野市総合計画」。将来像は「幸せ実感都市『ながの』」で、7分野22政策と3つの分野横断テーマで構成。令和8年度が計画の終期やりたい仕事を7分野のどれかに位置づけて話すと、計画を読んだうえで志望していることが自然に伝わります
防災・危機管理令和元年東日本台風で穂保地先の堤防が約70メートル決壊。死者15人(災害関連死13人を含む)、住家8,300棟以上が損壊被害の規模に触れたうえで、流域治水や第2災害支援ターミナルなど、その後の市の備えまで押さえておくと話が現在につながります
長野市の魅力令和6年度の観光入込客数957万7千人、外国人宿泊客は前年度の約2倍。経済波及効果は972.0億円で目標の120.4%。令和9年に善光寺御開帳名所を並べるのではなく、増えた来訪をどう市内の消費や雇用につなげるかまで踏み込むと、市職員としての視点になります

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、公表されている人物像に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
まちを良くしたいという意思の具体性「熱い思い」の中身を、これまでの行動で説明できるか長野市の公表文言は一文だけです。だからこそ、自分が良くしたいと思う場面を市内の具体的な課題まで下ろして用意しておきます
広い市域と多様な現場への構え中山間地の集落から市街地の再開発まで、条件の違う現場をどう受け止めるか県内2番目に広い市域を抱える市であることを踏まえ、自分が経験した「条件の違う相手に合わせて動いた」場面を一つ言えるようにします
限られた資源のなかでの判断やりたいことと使える資源が釣り合わない場面で、何を優先したか年間20〜60億円の財源不足という前提を知ったうえで、自分が何かを削って形にした経験を短く語れるようにしておきます

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされます。長野市は個別面接が2回あるため、同じ話題を別の面接官から角度を変えて問われることも想定しておきましょう。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えが、いちばんの備えになります。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 自分が受けるのは6月の共同試験か9月の後期試験かを確定させ、その区分の最新の受験案内で段階・科目・提出書類を確認する
  2. 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い長野市の事実を2〜3個選んで、出典と時点まで含めて頭に入れる
  5. 第一次試験日に書く論文作文を、面接で使われる前提で構想する。書いた主張と面接で話す志望動機がずれないよう、両方をひとつのメモにまとめておく
  6. 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく

優先順位に注意

ステップ4の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、長野市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

長野市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

長野市役所の想定問答集を見る

さいごに

長野市の試験は、配点こそ公表されていませんが、第二次・第三次とも個別面接で、第一次試験日に書いた論文作文まで面接の材料として使われます。申込の入力欄に書いた言葉から最終面接の受け答えまでが、ひと続きの資料として読まれる試験です。

県内最多の人口を抱えながら2050年には30万人へ縮む市で、自分は何を引き受けたいのか。その答えを、書いた文章と話す言葉の両方で揃えていってください。