本記事では、松山市職員採用試験の面接対策で必要な、松山市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。試験の構成と得点配分は、令和8年度の事務職上級等の実施要領を軸に整理しています。

松山市役所の面接試験では、「なぜ松山市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「松山市の課題をどう捉えているか」といった、四国最大の市が抱える事情を知らないと表面で終わる質問が想定されます。市の実情を理解しておくことで、抽象的な回答を避け、松山市ならではの事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。

この市の試験は、得点配分が実施要領で公表されています。どこで差がつくのかが数字で分かる以上、対策の配分もそこから決められます。

第1部|自治体研究編

松山市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは松山市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 愛媛県の県庁所在地であり、四国4県の市のなかで人口が最も多い市。市役所は二番町に置かれている。
  • 住民基本台帳人口は492,661人(令和8年1月1日現在)。同じ時点の愛媛県全体は約127万9千人で、県人口の約4割がこの市に住んでいる。
  • 市域は429.35km²、人口密度は約1,147人/km²。愛媛県全体の約225人/km²の5倍を超える。
  • 平成12年(2000年)4月に中核市へ移行し、中核市の権限で松山市保健所を設置している。
  • 2018年には中枢中核都市にも選定され、全国82の中枢中核都市の一つとして、圏域全体の経済・生活を支え、圏域から東京圏への人口流出を抑止する機能を期待されている。
  • 東温市・今治市・松前町・砥部町(いずれも伊予郡)・久万高原町(上浮穴郡)と接し、海上では大洲市、山口県周防大島町(大島郡)、広島県呉市とも隣り合う。
  • 松山空港は国内10路線・1日68便に加え週14便が就航し(2023年1月時点)、四国内の4空港のなかで最も便数が多い。
  • 令和8年度の事務職上級等の採用試験は三段階で、実施要領に段階ごとの得点配分が明示されている。
  • 市の花はヤブツバキ。

松山市の基礎データ

面接で問われるのは統計の暗記量ではありません。県全体に対してこの市がどれだけの重さを持っているかを、数字で説明できることが土台になります。

ここでは、志望動機でも課題認識でも繰り返し使う項目を選びました。それぞれの時点もあわせて確認してください。

項目内容
総人口492,661人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口146,348人(29.7%/愛媛県全体は34.2%)
75歳以上人口83,975人(17.0%/愛媛県全体は20.2%)
総面積429.35km²
人口密度約1,147人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
市役所所在地松山市二番町四丁目7番地2
隣接する自治体東温市、今治市、伊予郡松前町・砥部町、上浮穴郡久万高原町。海上では大洲市、山口県大島郡周防大島町、広島県呉市
採用予定人数(事務職上級A)40人程度(令和8年度)

表中の人口と年齢別人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の値です。総面積・市役所所在地・隣接自治体は当研究会が整理した基礎データ、採用予定人数は令和8年度の実施要領によります。住民基本台帳による人口は国勢調査による人口と調査の基準が異なるため、両者を組み合わせて増減を求めることはできません。

数字から考えられる市政課題

最初に年齢構成を見ます。

松山市の高齢化率29.7%は、同じ時点の愛媛県全体(34.2%)を4.5ポイント下回り、愛媛県内の市のなかで唯一3割を切っています。

75歳以上の割合17.0%も、県全体の20.2%より3.2ポイント低い水準です。ただし、割合が低いことと負担が軽いことは別です。

人数で見れば65歳以上は146,348人、75歳以上は83,975人。

県全体の高齢者のおよそ3人に1人が松山市に住んでいる計算になります。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

密度も他の市とは桁が違います。429.35km²の市域に約49万人が暮らし、人口密度は約1,147人/km²。

県全体の約225人/km²の5倍を超えます。県内で唯一、都市部としての課題が前面に出る自治体だということです。

この2つを重ねて話すと、面接ではこうなります。

「松山市は人口が49万人ほどで、高齢化率は3割を切っていると知りました。愛媛県の平均より低いのですけれども、人数で見ると65歳以上の方が14万人以上いらっしゃいます。割合が低いから大丈夫ということではなくて、支える対象の絶対数が県内で一番多いのが松山市なのだと感じています」

松山市の経済・産業

圏域の中心という役割

松山市は2018年に中枢中核都市に選定されています。

全国82市の一つとして、圏域全体の経済と生活を支え、圏域から東京圏への人口流出を抑止する機能を国から期待されている立場です。

自分の市の中だけを見る仕事にとどまらないという点が、県内の他の市と最も違うところだといえます。

県人口の約4割が住む市であり、周辺の市町から通勤・通学・通院で人が集まる構造でもあります。(出典:松山市議会総務理財委員会の調査報告|令和2・3年度)

中核市の権限と、保健所を持つということ

松山市は平成12年4月に中核市へ移行し、中核市の権限で松山市保健所を設置しました。

保健所は、保健センターと保健所・消防合同庁舎の2施設で業務を行い、身近な保健サービスから、結核・エイズをはじめとする感染症対策、精神保健といった専門的サービス、さらに医療監視や施設・食品の衛生指導まで一体的に担っています。

県が担う業務の一部を市が自ら引き受けているという事実は、「なぜ県庁ではなく市役所か」を語るときの具体的な材料になります。(出典:松山市保健所の業務案内|松山市公式)

空の玄関と、県全体の観光の動き

松山空港は国内10路線・1日68便に加えて週14便が就航しており(2023年1月時点)、高松・高知・徳島を含む四国内4空港のなかで最も便数が多い空港です。人と物が県外から入ってくる入口が市内にある、ということになります。(出典:四国の空港の就航状況|国土交通省四国地方整備局)

一方で、令和6年(1月から12月)の愛媛県内の観光客総数は延べ2,304万人(県外992万人・県内1,312万人)、観光消費総額は926億円で、前年の1,054億円から128億円、12.1%の減少でした。

入口があっても、消費が伸びるとは限らないということです。なお令和8年5月には、第76回全国植樹祭えひめ2026が松山市の愛媛県総合運動公園で開催されました。

県内外から約3,500人が招待され、愛媛県では60年ぶり2回目の開催となりました。

こうした機会をその日限りで終わらせないための設計が、観光や産業振興の現場の課題になります。(出典:愛媛県の観光客数と観光消費額|令和6年)

松山市の主な行政課題

県庁所在地であり、中核市であり、中枢中核都市でもあります。この重なりが、松山市の課題の形を決めています。

面接で「市の課題」を問われたときのために、次の5つを押さえておきましょう。

圏域から東京圏への人口流出を抑えるという役割

中枢中核都市に期待されている機能の一つが、圏域から東京圏への人口流出の抑止です。愛媛県総合計画も、若者の転出超過による労働力人口の減少を課題に挙げています。

県人口は昭和60年の153.0万人を境に減少へ転じ、直近5年間の減少率は過去最大の3.64%。2060年の推計人口は78万4千人という見通しです。

県内の若い人が最後にとどまる場所が松山市であり、そこから出ていけば県外へ出ることになるという位置づけを理解しておきましょう。(出典:愛媛県総合計画(未来につなぐえひめチャレンジプラン)|令和5年度)

割合ではなく人数で迫る高齢化

高齢化率29.7%、75歳以上の割合17.0%(いずれも令和8年1月1日現在)という数字は、愛媛県内では低いほうです。

しかし65歳以上146,348人、75歳以上83,975人という人数は県内で最大で、県全体の高齢者のおよそ3分の1にあたります。

制度の設計も、施設の数も、人数を前提に考えなければならないのがこの市です。率で語ると実感を外すので、面接では人数を添えて話すことをおすすめします。

中核市として保健衛生を自前で担う責任

松山市保健所は、感染症対策から精神保健、医療監視、食品衛生の指導までを一体で担っています。市議会の調査報告も、この保健所がコロナ禍で市民の命を守る役割を担ったと記しています。

県に頼らず市の判断で動く領域を持つということは、平時から専門職と事務職の連携を保っておく必要があるということでもあります。

保健・福祉分野を志望するなら、この構造は必ず押さえておきましょう。

南海トラフ地震への備え

愛媛県が令和7年9月2日に公表した地震被害想定調査の中間報告では、南海トラフ巨大地震で震度7が想定される7市に松山市は含まれず、県内の残る13市町とともに震度6強が想定されています。

市町別の浸水面積(1cm以上)は1,148ha。

松山港の最大津波高は3.2m、最大津波到達時間は146分、30cm浸水開始時間は113分とされ、宇和海沿岸の市町に比べれば時間の余裕がある地点です。

もっとも、49万人が暮らす市で避難と帰宅困難への対応を組むことは、時間の余裕とは別の難しさを持ちます。(出典:愛媛県地震被害想定調査(中間報告)|令和7年9月)

豪雨災害の記憶

平成30年7月豪雨では、愛媛県内で死者33人(直接死27人・関連死6人)、重傷者35人、住家被害は全壊627棟・半壊3,118棟を含む総数6,663棟の被害が生じました(令和5年6月1日時点の県取りまとめ)。

市町別では、松山市の直接死は4人、関連死は2人と記録されています。

県総合計画も「増大するリスクに対処する体制づくり」として、南海トラフ地震と頻発化・激甚化する豪雨災害への対応を掲げています。

都市部であっても、雨の被害は無縁ではありません。

松山市の重点政策|市長メッセージが示す市政の方向

松山市は、採用情報サイトに市長からのメッセージを掲げ、そこで市政の方向と職員に求める姿勢を同時に示しています。

市の総合計画などの計画本体は公式サイトで公開されていますから、分野が決まっている方はそちらも必ず併せて確認してください。ここでは、受験者に向けて書かれた文章から市政の重心を読み取ります。

掲げられているまちの姿

市長メッセージは、松山市が「より優しく より強い まつやまへ ~一人でも多くの人を笑顔に~」の実現を目指し、市民が主役のまちづくりを進めていると述べています。

優しさと強さを並べ、その先に笑顔を置いています。

抽象的に見えますが、中核市として保健衛生を自前で担い、中枢中核都市として圏域を支える市の立場に重ねると、輪郭がはっきりしてきます。(出典:松山市長からのメッセージ|松山市職員採用情報)

職員に求められる姿勢

同じメッセージは、職員に必要な姿勢についても具体的に触れています。要点は3つです。

  • 現地・現場を大切に
    子どもからお年寄りまで、一人でも多くの人が笑顔になり、幸せを実感できるまちを、市民の皆さんと一緒に作り上げていく姿勢が必要だとされています
  • 市民目線を大切に
    市民が主役のまちづくりという市政の方針と対になる言葉として置かれています
  • 前向きにチャレンジし続ける
    困難に打ち勝つ力や、逆境に強い志を持つ新しい仲間を待っている、と結ばれています

現地・現場、市民目線、前向きなチャレンジ。この3つが、この市の面接で確かめられる軸だと考えてよいでしょう。

とくに1つ目と2つ目は、机の上で考えたことではなく、実際に足を運んで相手の話を聞いたかどうかを問う言葉です。自己PRを組むときは、その場に自分がいた場面を選んでください。

県の課題のなかで松山市が立つ位置

愛媛県総合計画(未来につなぐえひめチャレンジプラン、令和5年度から令和8年度)は、人口減少・超少子高齢化が全国より深刻であること、若者の転出超過による労働力人口の減少、そして大規模災害への対応を課題に掲げています。

松山市はこのうち2つ目に対して、圏域の受け皿としての役割を国からも期待されている市です。志望動機を組むときは、県全体の課題のなかで松山市がどの位置に立つのかを一言で言えるようにしておきましょう。

POINT|「現地・現場」を自分の経験で証明する

市長メッセージの言葉をそのまま引くだけでは、面接では足りません。「自分が実際にその場へ行った経験はどれか → 行く前と行ったあとで何が変わったか → その変化を市の仕事にどうつなげるか」の順で書き出してみてください。行った、聞いた、変えたの3点がそろっている経験が、この市では強い材料になります。

悪い例「松山市は県庁所在地で人口も多いので、大きな仕事ができると思って志望しました」

改善例「松山市は県の人口の4割が住んでいて、周りの市や町から通ってくる方も多いと知りました。人が多い分だけ声も届きにくくなると思いますので、まずは現場に出て、直接お話を聞くところから始める仕事に関わりたいです」

あわせて確認したい公式資料

出願を決める前に、次の4点には目を通しておいてください。この市は得点配分が公表されていますので、1つ目を読むだけで対策の重心が決まります。

  • 令和8年度の事務職上級等の実施要領(試験の段階と得点配分の確認)
  • 事務職上級(早期募集枠)の実施要領(併願する場合は両方の申込みが必要)
  • 広報まつやまと市勢要覧松山(早期募集枠の第1次試験の出題範囲)
  • 愛媛県総合計画(圏域の中心という役割を県の課題認識と重ねるため)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、松山市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。松山市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

松山市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

松山市役所の面接の概要

ここからは、松山市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

松山市役所の面接の流れ

採用試験の実施要領は松山市の名前で公告され、申込みと問い合わせの窓口は総務部人事課です。ここでは令和8年度の事務職上級等を軸に整理します。

この試験は三段階選抜で、しかも実施要領が段階ごとの得点配分まで公表している点が大きな特徴です。

項目内容(令和8年度・事務職上級等)
試験の段階三段階。第1次試験 → 第2次試験(第1次試験の合格者が対象)→ 第3次試験(第2次試験の合格者が対象)
第1次試験の種目教養試験(択一式40問・120分)、事務適性試験(職務遂行に必要な適性として正確さ、迅速さ等の作業能力をみるもの。択一式100問・10分)、専門試験(事務職上級は択一式40問・120分)
第1次試験内の得点配分教養試験:事務適性試験:専門試験=2:1:2
専門試験の出題分野(事務職上級A)憲法、行政法、民法、経済学、財政学、社会政策、政治学、行政学、国際関係
第2次試験(前半)適性検査(職務遂行に必要な個人特性等について・約60分。試験の参考とするもので得点化されません)と、集団面接(主として人物についての集団面接・約45分)
第2次試験(後半)集団討論(出された題に対する集団での討論・約45分)。前半と後半の両方を受験する必要があります
第3次試験口述試験(主として人物についての個別面接・約20分)
得点配分(第2次試験の判定)第1次試験:第2次試験=1:9。第2次試験の内訳は集団面接4.5、集団討論4.5
得点配分(第3次試験の判定)第2次試験:第3次試験=4:6
第1次試験の会場松山会場(松山大学)、東京会場(ビジョンセンター赤坂〔永田町〕)、大阪会場(富士ビル)。東京会場・大阪会場は各50名の定員があり先着順で、希望の会場で受け付けられなかった場合は松山会場での受験になります
結果の通知総合得点・科目別得点・受験者数・順位・合格最低点の5項目を、第1次試験と第2次試験は受験者全員に、第3次試験は不合格者のみに通知します
試験区分と採用予定人数事務職 上級A40人程度、事務職 上級 学芸員(史学)B2人程度、事務職 幼稚園教諭C3人程度、技術職 保健師D6人程度、技術職 保育士E16人程度

配点をもう一度読み直してください。第2次試験の合否を決める段階で、第1次試験の筆記が占めるのは10分の1です。

残る9を集団面接と集団討論が半分ずつ分け合います。さらに第3次試験の判定では、第2次試験と第3次試験が4対6。

集団面接・集団討論・個別面接という3種類の人物試験が、合否をほぼ決めている構造だと読めます。

筆記を軽視してよいという意味ではありませんが、対策の時間配分をどこに置くべきかは、この数字がはっきり示しています。

種目ごとに、やるべきことも変わります。

第1次試験の中は教養2・事務適性1・専門2ですから、択一式100問を10分で解く事務適性試験だけで、この段階の5分の1を占めます。

知識を増やして取る種目ではなく、速度と正確さの種目です。

教養や専門と同じ勉強の仕方では点になりませんので、この形式を解いた経験がなければ、時間を計った演習を何度か挟んでおいてください。

ただし第1次試験の得点そのものは、第2次試験の判定に入る段階で10分の1に縮みます。上位で通ることを狙う試験ではなく、通過することが目的の試験だと割り切ってよい、ということです。

そのうえで、第2次試験の9のうち半分は集団討論です。集団面接と同じ重さがあるのに、対策が手薄になりやすいのがこの種目です。

題は当日出されますから、前もって用意できるのは答えではなく、45分をどう使うかという振る舞いのほうになります。論点を整理して言い直す、時間を見て話を収める、反対の意見を切り捨てずに引き取ること。

いずれも一人では練習できませんので、討論に付き合ってくれる相手を確保する予定を、学習計画の中に先に入れておきましょう。

第3次試験の判定は第2次試験と4対6ですので、約20分の個別面接で最後にもう一度順番が動きます。第2次試験を通った時点の評価は、持ち越されはしても固定されません。

なお、松山市は令和8年から事務職上級に早期募集枠(採用予定15人程度)を新設しました。

こちらの第1次試験は「松山市政に関する問題」だけで、出題範囲は広報まつやま(2025年2月1日号から2026年1月15日号まで)と市勢要覧松山2025、択一式50問・90分です。

実施要領には「特別な公務員試験対策は不要。広報まつやまなどの松山市政の情報を把握するだけでOK!」と記されています。

第2次試験は基礎能力試験(SCOA。文章読解能力・数的能力・論理的思考能力に関する択一式70問・約45分と、適性検査の択一式240問・約35分)と口述試験(個別面接・約20分)、第3次試験は口述試験(個別面接・約20分)。

得点配分は第1次試験:第2次試験=2:8(基礎能力試験4、口述試験4)、第2次試験:第3次試験=3:7です。

事務職上級との併願は可能ですが、併願する場合は早期募集枠を申し込んでいても再度事務職上級を申し込む必要があります。(出典:松山市職員採用試験(事務職上級・早期募集枠)実施要領|令和8年度)

この2つの枠は、配点の形が逆を向いています。早期募集枠の第2次試験の判定は、第1次試験の2と基礎能力試験の4を合わせて択一式が6、個別面接が4。

事務職上級では同じ段階で筆記が1しかなかったことと並べると、早期募集枠のほうが筆記側に重心があります。しかも第1次試験で問われるのは広報まつやまと市勢要覧松山、つまり松山市政そのものです。

ここを読み込む作業は、択一の得点対策であると同時に、志望動機や課題認識で使う材料を集める作業にもなります。最終の判定は第2次試験と第3次試験で3対7ですから、2回ある個別面接のうち後半が重い。

併願するなら、集団討論の練習が要る事務職上級と、市政の読み込みが軸になる早期募集枠とで、準備の中身が別物になることを見込んでおいてください。

上記は、令和8年度の松山市職員採用試験(事務職上級等)の実施要領に基づく内容です。試験の構成・区分・得点配分は年度によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の実施要領をご確認ください。(出典:松山市職員採用試験(事務職上級等)実施要領|令和8年度)

松山市役所が求める人物像

第1部で見たとおり、市長メッセージは現地・現場、市民目線、前向きなチャレンジという3つを挙げています。3つとも、成果ではなく行動の向きを指す言葉です。

どこへ行き、誰の目で見て、うまくいかないときにどうするか。松山市が確かめたいのはそこだと考えてよいでしょう。

この先は当研究会の見立てになります。県人口の約4割が住む中核市の職場で何が起きるのかは実施要領には書かれていませんので、経験から補う部分だとお考えください。

この規模の市役所が扱う課題は、市の力だけでは片づかないものが多くなります。人口動態も、都市基盤も、圏域の交通も、相手がいなければ動きません。

保健所を自前で持ち、周辺市町から人が集まる構造を抱える松山市では、地域団体、企業、医療機関、そして近隣の自治体と話をまとめる場面が日常業務の中にあります。

現場で聞いた話を政策の言葉に翻訳し、逆に政策を現場で通じる言葉に戻すこと。この往復ができる人が力を発揮しやすい環境だと見ています。

もう一つ、限られた資源で実行できる形に落とすという視点も要ります。採用予定は事務職上級Aで40人程度。

県内では大きな採用数ですが、49万人の市民に対しては十分とはいえません。やりたいことを全部並べるのではなく、何を先にやるかを決められること。

これも、この規模の市役所では評価に触れてくるはずです。

準備の話に移ります。この試験は、集団面接、集団討論、個別面接という3つの形式で人物を見ます。

集団の中で自分の意見を通す場面と、他人の意見を引き出す場面と、一対一で深く問われる場面。同じ経験を3つの形式で語れる状態にしておくことが、そのまま対策になります。

ひとつの経験を、45分の集団討論でも20分の個別面接でも使える形に整理しておいてください。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。松山市の集団面接・個別面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク緊張していますか?集団面接の場で、他の受験者と並んだときに出る素の受け答え
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?県庁所在地の市役所を選んだ理由が、県との役割の違いまで届いているか
③ 自己理解あなたの短所(弱み)は何ですか?第2次試験の適性検査で示した個人特性と、話す自己像がかみ合うか
④ 経験・行動これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください現地・現場という言葉に耐えるだけの具体が、話の中に入っているか
⑤ 学業・経歴卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください専門試験で問われる分野の知識を、集団討論でも通じる言葉に置き換えられるか
⑥ 適性・将来入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか?保健所を含む幅広い部署を持つ市で、希望以外の配属も引き受けられるか
⑦ 公共性・社会性最近関心を持ったニュースは何ですか?49万人が暮らし、圏域の中心でもある市の話へ引き寄せられるか

この7つは松山市の実施要領から導いたものではなく、全国の官公庁の面接に共通する骨組みです。

集団面接と集団討論の比重が大きいこの試験では、ここを押さえたうえで、他の受験者と何が違うかを示す必要があります。その差をつくるのが、次の「松山市ならではの事情を踏まえた質問」です。

合否を分けるのは「松山市役所ならでは」の質問

「愛媛県庁ではなく、松山市役所を志望したのはなぜですか」
「松山市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

1問目は、松山市では避けて通れない質問です。県庁も市役所も同じ松山市内にあり、採用試験も別系統。

同じ街で働く2つの組織のどちらを選ぶのかを、明確に言い分ける必要があるからです。中核市として保健所を自前で持つという事実は、この問いへの具体的な足場になります。

答えるための材料を、使いやすい単位でまとめました。

質問テーマ知っておきたい松山市の事実答え方のヒント
人口と年齢構成住民基本台帳人口は492,661人、高齢化率29.7%、75歳以上の割合は17.0%(令和8年1月1日現在)。65歳以上は146,348人で、県全体のおよそ3分の1にあたる率の低さと人数の多さを両方示し、施策を人数の規模で考える姿勢を見せます
なぜ県庁ではなく市役所か平成12年4月に中核市へ移行し、中核市の権限で松山市保健所を設置。感染症対策から食品衛生指導までを市が担う制度の説明で終えず、市が自分で決めて動ける領域に関わりたいという言い方に落とします
圏域における役割2018年に中枢中核都市に選定。全国82市の一つとして、圏域の経済・生活を支え、東京圏への人口流出を抑止する機能を期待されている市内の話にとどめず、周辺市町から通ってくる人まで視野に入れて答えます
松山市の魅力松山空港は国内10路線・1日68便に週14便が加わり、四国内4空港で最も便数が多い(2023年1月時点)便利さの紹介で止めず、入ってきた人に市内で何をしてもらうかまで踏み込みます
災害への備え南海トラフ巨大地震では震度6強が想定され、浸水面積は1,148ha。松山港の30cm浸水開始時間は113分と、宇和海沿岸に比べれば時間の余裕がある時間があることを安心材料にせず、49万人規模の避難と帰宅困難への対応という難しさに触れます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

松山市の人物試験は、市長メッセージが示す現地・現場、市民目線、前向きなチャレンジという3つを手がかりに、これまでの行動を確かめる場だと考えてください。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、確かめられているのは話のまとまりではなく、経験の中身と行動の再現性です。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
現地・現場を大切にする姿勢自分が実際に足を運んだ場面と、そこで見て考えを変えたこと行った、聞いた、変えたの3点がそろう経験を選び、20分の個別面接でも掘り下げに耐える細部まで思い出しておく
市民目線相手の事情に合わせて自分のやり方を変えた経験集団面接では他の受験者の答えと重なりやすい観点なので、自分だけが語れる場面を用意しておく
前向きなチャレンジうまくいかない状況で、どこまで手を打ち続けたか集団討論で議論が行き詰まったときの振る舞いにも同じ姿勢が出ると意識しておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

松山市は第3次試験の個別面接が約20分で、しかも第2次試験と第3次試験の得点配分が4対6。短い時間で深く掘られる前提だと考えてください。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 事務職上級と早期募集枠のどちらで受けるか、あるいは両方に申し込むかを決める。併願する場合は、早期募集枠を申し込んでいても事務職上級への申込みが別に必要になる
  2. 実施要領で得点配分を確認する。事務職上級なら第1次試験は通過ラインを目標に置き、残る時間を集団面接・集団討論・個別面接に回す。早期募集枠なら、広報まつやまと市勢要覧松山の読み込みを最優先に置く
  3. これまでの経験を洗い出す。学業、課外活動、アルバイト、職務経験から、集団の場でも一対一でも語れる例を1つずつ用意する
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い松山市の事実を2つか3つ、自分の言葉で説明できるようにする
  6. 選んだ経験を、集団討論で短く出す形と、個別面接で細部まで話す形の両方に整える。討論は相手がいないと練習になりませんので、付き合ってくれる人を早めに見つけて声に出して試す

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、他の受験者と並んだときに効いてくる部分です。時間が足りないときは、ステップ3の経験の掘り起こしと、ステップ6の話し方の練習を先に回してください。第2次試験の判定で筆記が占めるのは10分の1しかない以上、自分のことを語れないまま市の知識だけを増やしても、配点の大きい場所には届きません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、松山市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

松山市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

松山市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和8年度の事務職上級等は、第1次試験の筆記を通ったあと、集団面接と集団討論の第2次試験、個別面接の第3次試験へ進む三段階でした。

第2次試験の判定では第1次試験と第2次試験が1対9、第3次試験の判定では第2次試験と第3次試験が4対6。人物試験に配点が寄せられていることが、実施要領の数字からそのまま読み取れます。

県人口の約4割が住み、県全体の高齢者のおよそ3分の1を抱え、中核市として保健所を自前で持ち、圏域の中心として周辺市町を支えています。

この市の現場で自分は何を見て、どう動くのか。集団の中でも、一対一でも同じ話ができるところまで、手持ちの経験を整理しておいてください。