本記事では、堺市職員採用試験の面接対策で必要な、堺市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

堺市役所の面接試験では、「なぜ堺市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。以下の第2部は、令和8年度春季試験の大学卒程度(事務)だけを対象にしています。堺市の採用試験は堺市人事委員会が単独で実施するもので、同じ大阪府内の大阪市とは別団体の別試験です。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と堺市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|自治体研究編

堺市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは堺市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 大阪府内で大阪市に次ぐ人口をもち、7つの行政区で構成される政令指定都市。明治22年に市制を施行し、平成17年2月に美原町と合併したのち、平成18年4月1日に政令指定都市へ移行した。
  • 住民基本台帳による人口は809,032人(令和8年1月1日現在)。市域は149.83km²で、大阪市・松原市・羽曳野市・富田林市・大阪狭山市・河内長野市・和泉市・高石市の8市に接する。
  • 65歳以上の割合は28.3%で、大阪府全体の26.8%を上回る。市の人口は令和6年中に5,048人の減少となっており、増加から減少への局面転換をすでに終えた市にあたる。
  • 仁徳天皇陵古墳などを含む百舌鳥・古市古墳群は2019年に世界文化遺産へ登録された。市内の国指定文化財は38件(うち国宝1件・令和6年5月1日現在)。
  • 自転車・刃物・敷物・注染・和ざらし・線香・昆布加工が伝統産業として位置づけられ、臨海部では製造品出荷額等が年間4兆7,418億円(令和5年)にのぼる。
  • 2018年には大阪府内で最初のSDGs未来都市に選ばれている。
  • 昭和42年にまちびらきした泉北ニュータウンは50年以上が経過し、駅前の再編整備と地域の再生が市政の大きなテーマになっている。
  • 令和8年度から新しい最上位計画「堺市基本計画2030」の期間に入った。

堺市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「堺市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

堺市を数字でつかむときは、人口の総数よりも「どちらへ向かっているか」と「7区のどこで先に起きているか」の2つを先に押さえると、面接での使い勝手が上がります。

項目内容
総人口809,032人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)
65歳以上の割合28.3%(大阪府全体は26.8%)
75歳以上の割合17.8%(大阪府全体は16.4%)
65歳以上の割合(区別の最高・最低)南区35.7%が最高、北区24.5%が最低
75歳以上の割合(区別の最高・最低)南区23.3%が最高、北区15.5%が最低
行政区数7区(堺・中・東・西・南・北・美原)
総面積149.83km²(令和6年7月1日現在)
人口密度約5,400人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
令和6年中の人口増減5,048人の減少(自然増減5,634人減・社会増減586人増)
市役所所在地堺市堺区南瓦町3番1号

総人口と、65歳以上・75歳以上の割合、区ごとの最高値と最低値は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の集計によります。府全体の値を並べたのは、同じ集計に大阪府の行があるためで、市と府は同じ物差しで読めます。総面積と令和6年中の人口増減は堺市の公表統計によるもので、国勢調査を基準とする推計人口や国勢調査の確報値とは調査の系列が異なります。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

数字から考えられる市政課題

令和6年中の堺市は、出生5,032人に対して死亡10,666人で、自然増減は5,634人の減少でした。

転入37,322人・転出36,736人で社会増減は586人の増加ですが、自然減の大きさには届かず、市全体では5,048人減っています。転入超過そのものは続いており、市も令和8年度の予算説明で、近年続く社会増の流れをさらに加速させたいという意向を示しています。(出典:堺市の概要|令和7年)

将来の見通しでは、令和3年に市が示した推計として、人口が2030年に80万人、2045年に70万人を下回るという数字が出ています。もっとも、堺市はこれを受け身で受け止めてはいません。

基本計画2030は2035年度の推計値74.4万人に対し、75.6万人という「推計を上回る人口」を目標に掲げています。減少を織り込んだうえで、その線をどれだけ上に押し返せるかを指標に置いた計画だと読めます。

もうひとつ、7区の内側の差も見ておきましょう。65歳以上の割合は南区の35.7%が最も高く、北区の24.5%が最も低い。

その差は11ポイントを超えます。南区は泉北ニュータウンを抱えるエリアで、まちびらきから半世紀を経た住宅地の高齢化がそのまま数字に出ています。

この区ごとの差を面接で口にするなら、たとえば次のような言い方になります。

「堺市は人口が減り始めていると知って、暗い話なのかと思っていました。ですが調べてみると、よそから移ってこられる方はいまも転出より多くて、市は推計より人口を増やすという目標を立てているんですね。区ごとに見ると、高齢の方の割合が3割を超えるところと2割台のところがありますので、どの区の話をしているのかを意識できる職員になりたいです」

堺市の経済・産業

経済・産業構造の概要

  • 市内の事業所数は32,340事業所、従業者数は339,838人(令和3年6月1日現在)。
  • 製造業(従業者4人以上)は事業所数1,257・従業者数45,950人で、製造品出荷額等は年間4兆7,418億円(令和5年6月1日現在)。
  • 就業者の産業3部門別構成比は第1次0.5%・第2次23.2%・第3次76.3%(令和2年国勢調査。全国は第2次23.7%・第3次72.8%)。
  • 堺泉北港の貿易額は輸出9,363億円・輸入1兆8,521億円(令和5年)。
  • 令和8年度当初予算案の規模は一般会計5,217億円、全会計8,758億円。このうち一般会計は令和7年度から338億円増え、過去最大となった。

就業者の割合だけを見れば、堺市の産業構成は全国平均と大きく変わりません。しかし出荷額に目を移すと風景が変わります。

4万6千人の働き手で4兆7千億円を出荷する臨海部の重厚な製造業と、自転車や刃物のように江戸期からの技を継いできた伝統産業が、同じ市の中に同居している。この二重構造が堺市の経済の特徴です。

産業を語るなら、どちらか一方だけを見て組み立てないようにしましょう。(出典:令和8年度当初予算案市長説明|令和8年2月)

世界遺産と観光

百舌鳥・古市古墳群が2019年に世界文化遺産へ登録され、堺市の観光は大きな資産を得ました。観光ビジター数は令和元年度の推計で1,179.6万人と増加してきています。

一方で、市内のホテル宿泊者数は令和元年度660,666人と平成29年度からほぼ横ばいで、日帰り客が大勢を占めます。市の観光戦略は、世界遺産の効果が大仙公園エリアに集中して他のエリアへ波及していないこと、長時間の滞在につながっていないことを、はっきり課題として書いています。(出典:堺観光戦略|令和3年5月)

令和8年度は、大仙公園とさかい利晶の杜、堺駅周辺を結ぶ無料シャトルバスの運行や、環濠エリアでのイベント開催支援が予算に入りました。文化観光施設の利用者はさかい利晶の杜203,584人、百舌鳥古墳群ビジターセンター91,559人(いずれも令和5年度)です。点在する資源をどうつなぐかという順で語れると、観光の話が名所の紹介で終わりません。

茶の湯と歴史文化のブランド化

堺は中世に自治都市として繁栄し、その面影が環濠エリアに残ります。令和8年度には、三千家合同によるお点前や、大阪・関西万博で堺市の催事に使われた現代アーティストの茶器を用いたイベントが大仙公園で予定されています。

築45年の堺市博物館に替わる「(仮称)堺ミュージアム」も、基本計画の策定に着手する段階です。歴史を保存の対象としてだけでなく、都市のブランドを組み立てる材料として扱っているのが、いまの堺市の姿勢です。

交通と都心の再編

市内の鉄道は堺東駅の1日平均乗降人員が54,612人で最多、次いで三国ヶ丘駅(JR)45,690人、鳳駅36,028人と続きます(令和5年度)。

市が進めるSMIプロジェクトでは、堺都心部の都心ラインで自動運転レベル4の実現を見据えた大型車両の実証実験が行われ、都心部と市域東部を結ぶ美原ラインは、実証実験を経て令和8年度に本格運行を開始する予定です。市域の東西を結ぶ交通の弱さを市自身が課題として扱っている点は、まちづくりや交通を志望する人が押さえておきたい論点です。

堺市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、堺市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

都市間競争のなかで「選ばれる都市」になれるか

堺市の都市計画マスタープランは、人口減少と高齢化、産業構造の変化、大規模災害の頻発、都市間競争の激化を背景に、都市の拡大成長を前提とした都市計画から、成熟社会に対応した質の向上への転換が求められると書いています。そのうえで、都市間競争のなかで「選ばれる都市」になることを正面から課題に掲げています。

人口が減る局面で、それでも住む場所として選ばれ続けるにはどうするか。堺市の課題はほぼすべて、この問いにつながっています。(出典:堺市都市計画マスタープラン(概要)|令和3年7月改定)

泉北ニュータウンの再生

昭和42年のまちびらきから50年以上が経ち、泉北ニュータウンでは人口減少と高齢化の進行、住宅や施設の老朽化が顕在化しているとマスタープランは指摘しています。実際、この地域を抱える南区の65歳以上の割合は、先に見たとおり市内で最も高い35.7%です。

市は泉ヶ丘・栂美木多・光明池の各駅前の再編整備を進め、令和8年度は泉ケ丘駅前南広場デッキ等の再編調査と泉ヶ丘公園の整備を予定しています。あわせて「SENBOKUスマートシティコンソーシアム」と連携し、新しい技術やサービスを地域課題の解決へ実装しようとしています。

大規模地震への備え

堺市地震災害想定総合調査は、内陸活断層と南海トラフの双方を対象にしています。上町断層帯地震はマグニチュード7.4から7.8・震度5弱から7で、建物全壊70,929棟・死者3,017人。東南海・南海地震はマグニチュード7.9から8.6・震度4から6強で、建物全壊6,004棟・死者26人と想定されています。足元の活断層のほうが被害の桁が大きいという構図です。令和8年度には浸水想定区域図の見直しを踏まえた防災マップのリニューアルと全戸配布、災害対策本部事務局のレイアウト再構築、宿泊機能を備える支援車両の導入が予定されています。(出典:堺市地震災害想定総合調査|平成20年度から21年度)

硬直化した財政と構造改革

令和5年度決算の経常収支比率は100.9%で、毎年決まって入る収入が毎年固定的にかかる支出を下回っています。実質公債費比率は5.4%(3か年平均)で早期健全化基準の25.00%を大きく下回り、将来負担比率は算定されていません。

基準そのものは満たしていても、自由に動かせる財源はほとんどないという状態です。基本計画2030は計画推進の視点に「不断の改革」を挙げ、財政面だけでなく組織運営面にも踏み込む構造改革を打ち出しました。

令和8年度には、定型的な申請手続を一括処理する「(仮称)堺スマート事務オフィス」の設置が盛り込まれています。(出典:堺市決算の概要|令和5年度)

政令指定都市としての立ち位置と広域の連携

堺市は基本計画2030の推進の視点に、利便性が高く住民から真に信頼される区役所の実現を掲げ、政令指定都市としての都市経営を戦略的に推進するとしています。7つの区役所を持ち、市民のいちばん近くで手続きを受ける仕組みと、府県並みの事務を担う大都市としての仕事の、両方を同時に動かす立場です。

実務でも、令和8年度には大阪府の都市OSであるORDENを活用した大阪総合行政ポータルとのID連携が予定され、関西広域連合の域内で開かれるワールドマスターズゲームズ2027関西では、J-GREEN堺での競技会の準備が進みます。

「なぜ府庁ではなく市役所なのか」という問いに、規模や親しみやすさで答えると平板になります。近い距離と広い視野を1つの組織で持っているという堺市の立場を材料にすると、答えが具体になります。

堺市の重点政策|堺市基本計画2030

堺市の最上位計画は「堺市基本計画2030」です。計画期間は2026年度から2030年度までの5年間で、2035年度を見据えて策定されました。

前の「堺市基本計画2025」の考え方と構造を引き継ぎつつ、より効果的な内容へ見直す形で作られています。令和8年度は、この計画の対象期間が始まる最初の年度にあたります。(出典:堺市基本計画2030)

都市像と4つの基本姿勢

計画が掲げる都市像は「未来を創るイノベーティブ都市」で、「変化を恐れず、挑戦・創造し続ける堺」という副題が添えられています。厳しい都市経営が予想されるなかでも持続的に発展するには、未来に向けてイノベーションを生み続けなければならない、という認識から置かれた言葉です。

その下に、持続可能性(Sustainable)、多様性(Diversity)、ともに創造(Co-creative)、Society5.0(Smart)という4つの基本姿勢が並びます。「挑戦」という語が計画の中心にあることは、後で見る職員像とも重なります。

5つの重点戦略

重点戦略扱う主な分野
1 堺の特色ある歴史文化(Legacy)歴史文化資源の継承と観光地としての魅力向上、戦略的な観光誘客、文化芸術と国際交流、伝統産業のブランド力、サイクルシティ堺
2 人生100年時代の健康・福祉(Well-being)健康で長生きできる都市、包括的な支援と地域福祉、高齢者が地域で暮らし続けられる社会、障害者の社会参加、生涯スポーツ
3 将来に希望が持てる子育て・教育(Children's future)妊娠から青年期まで切れめのない子育て支援、可能性を伸ばす教育、多様性を尊重した教育、教育環境の充実、厳しい環境にあるこどもと家庭への支援
4 人や企業を惹きつける都市魅力(Attractiveness)行政のデジタル化とスマートシティ、都心エリアの形成、イノベーションの創出、泉北ニュータウンの新たな価値、民間投資の誘導、農業、多様な人材の活躍
5 強くしなやかな都市基盤(Resilience)自助・共助・公助のバランスのとれた防災・減災、インフラと公共施設の最適化と交通ネットワーク、カーボンニュートラル、循環型社会、犯罪のない地域社会

この5つに加えて、計画は2035年度にめざすゴールとして3つのKGIを置いています。将来推計を上回る人口(2035年推計74.4万人に対して目標75.6万人)、健康寿命の延伸、事業従事者1人当たりの付加価値額(2021年467万円に対して2035年度577万円)の3つです。

人口・健康・生産性という3本の指標で計画の成否を測るという設計は、志望動機を語るときの足場になります。空間像として、交流ゾーン・成長ゾーン・居住環境ゾーンという3つのゾーン区分も示されています。

令和8年度の市政運営のポイント

堺市で市政運営の方針にあたるのは、市長が議会で行う当初予算案の説明です。「施政方針演説」という名前の別文書は置かれていません。

令和8年度の予算案は『次世代につなぐ「堺の未来投資」予算』と位置づけられ、「安心できる堺の確保」と「堺の未来への挑戦」という2つに重点が置かれました。前者では市立小学校等の給食費の恒久的な無償化、のびのびルームの負担金の引き下げ、防災マップの全戸配布などが、後者では観光誘客、産業用地の確保に向けた調査、駅周辺の活性化、脱炭素の前倒しなどが並びます。

POINT|27の施策名をすべて暗記しなくてよい

名称を覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心分野を一つか二つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③現在の事業 → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験・強みをどう生かすか」の順で調べましょう。

悪い例「堺市の子育て支援に携わりたいです」

改善例「学校の体育館に空調を入れる計画を、5年から4年に縮めて進めていると知りました。急いでいるということは、それだけ現場が困っているのだと思います。私は、こうした整備を待っている学校の声を聞いて回って、順番を決める側の仕事に関わりたいです」

あわせて確認したい公式資料

堺市の資料は、計画・予算・統計がそれぞれ別の部署から出ています。手当たり次第に開くと本番までもちません。開くのは下の4点だけで十分です。志望分野に関わる箇所は、読んだ内容を話し言葉に直すところまでやっておきましょう。

  • 堺市人事委員会の受験案内(自分が受ける試験区分と実施時期のもの)と、職員採用ホームページの仕事紹介
  • 堺市基本計画2030(概要版でも可)と、志望分野に関わる個別の計画
  • 最新年度の当初予算案市長説明(4ページ程度で市政の方針がひととおりつかめます)
  • 「堺市の概要」(人口・産業・財政・交通の主要な数字が1冊にまとまっています)

どれも1年で内容が動きます。前の年度の版で頭に入れた施策名や金額をそのまま口にしないよう、受験の年に出ている版で必ず引き直してください。

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、堺市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。堺市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

堺市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

堺市役所の面接の概要

ここからは、堺市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

堺市役所の面接の流れ

令和8年度春季試験の大学卒程度(事務)は、第一次から第三次までの3段階で行われます。採用予定人数は50名程度です。

堺市は他の多くの市と違い、各試験の配点を受験案内で公表しています。そして、その数字を最終判定の段階で見ると、この試験の性格がはっきり出ます。

最終合格者は、第三次試験の得点に第二次試験の得点の2分の1を合計した総合得点順に決まります。その総合得点は500点。

内訳は、第二次の面接試験150点と第三次の面接試験300点を合わせた面接450点と、論文50点です。第一次試験の適性検査(SPI3)100点は、最終判定の配点表には計上されません。

合否を決める500点のうち9割が、面接室で交わした受け答えに割り当てられているということです。

この配点は、そのまま準備の重心を指しています。適性検査の100点は第一次試験の中でだけ意味を持つ点数で、ここで人より高く取っても最終得点は動きません。

論文試験は第二次試験の総合得点400点のうち100点を占めますから手は抜けませんが、最終判定に残るのは50点です。これに対して第三次の面接試験は300点がそのまま残り、これ1つで最終判定の6割を占めます。

筆記の準備は「通過に必要な水準まで」で切り上げ、空いた時間を面接に回す。堺市の場合、その判断には公表された配点という裏づけがあります。

項目内容(令和8年度春季試験・大学卒程度(事務))
実施主体堺市人事委員会(事務局は堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所高層館19階)
段階構成3段階。第一次試験 → 第二次試験 → 第三次試験
第一次試験適性検査(SPI3)。基礎能力検査(約35分)と性格検査(約30分)から成り、全国のテストセンター会場で受検します
第二次試験論文試験(60分・800字以内)と面接試験(個別面接)
第三次試験面接試験(個別面接)
面接の形式個別面接のみ。受験案内に集団面接・集団討論・グループワークの記載はありません
配点(第一次)適性検査(SPI3)100点。総合得点100点。性格検査は面接試験の参考資料とし、配点はありません
配点(第二次)論文試験100点+面接試験300点。総合得点400点
配点(第三次)論文試験50点+第二次の面接試験150点+第三次の面接試験300点。総合得点500点
最終合格の決め方第三次試験の得点に第二次試験の得点の2分の1を合計し、総合得点順に決定します
採用予定人数50名程度

提出書類にも堺市らしさがあります。大学卒程度(事務)だけは、第一次試験の合格者が堺市電子申請システムの「面接カード提出フォーム」から項目を入力して申請する方式で、期限までに申請しないと第二次試験を受験できません。

入力するのは基本情報のほか、学生生活や就業経験のなかで心掛けてきたことを箇条書きにしたうえで、最も印象に残っているエピソードについてどのような状況でどのような行動をしたのかを具体的に書く欄(400字程度)と、自分自身を自由に表現する欄(400字程度)の2問です。面接カード自体は採点されませんが、面接試験の参考資料として使われます。(出典:堺市職員採用試験受験案内(事務等)|令和8年度)

上記の試験構成と配点は、堺市人事委員会が公表する令和8年度春季試験の受験案内(事務等)における大学卒程度(事務)のものです。大学卒程度(事務)以外の試験区分では、面接カードが所定様式を自筆で記入して第二次試験の筆記試験日に持参する方式になるなど、手続や試験種目が異なります。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。

POINT|配点表を準備の時間割に置き換える

適性検査は、テストセンターの形式に慣れて基礎能力検査を通しで解けるところまで。論文は、60分で800字を書き切る感覚をつかむところまで。そこから先の時間は、面接カードの2問と、書いた話を声に出して説明する練習に充てましょう。

面接カードは採点されません。ただし面接試験の参考資料とされる以上、面接官の手元にはこの2問に書いた文章があります。点はつかないのに、450点分の受け答えがここから始まる書類だということです。締切間際に埋めると、手元の文章とその場で話す内容がずれます。逆に、各400字を早い段階で固めておけば、それを軸に受け答えの練習を積み上げられます。

堺市役所がめざす職員像

堺市は令和5年3月に策定した「堺市職員力・組織力向上基本方針」で、めざすべき職員像を示しています。その言葉は「市民生活の安定・充実を図るため、向上心を持って挑戦し組織変革できる職員」です。基本計画2030の都市像に置かれた「変化を恐れず、挑戦・創造し続ける堺」と、同じ方向を向いた表現になっています。

注目したいのは、この職員像が「挑戦」で終わらず「組織変革できる」まで書いていることです。個人として新しいことに手を出すだけでなく、それを職場の仕組みの側に定着させるところまで含んでいます。

令和8年度に設置が予定されている「(仮称)堺スマート事務オフィス」のように、市が実際に着手しているのも、個々の頑張りではなく手続そのものの組み替えです。面接で挑戦の経験を話すなら、自分がやってみた話で止めず、その後まわりのやり方がどう変わったかまで置いておくと、この職員像に届きます。

もう一点、堺市という職場の幅にも触れておきます。市民のすぐ隣で手続きを受ける区役所の仕事と、大都市として都市計画や産業振興を動かす仕事が、同じ組織に並んでいます。

どちらか一方の視点だけで志望動機を組むと、面接で反対側から問われたときに答えが続きません。当研究会としては、窓口の目線と都市の目線を行き来できる話し方を用意しておくことをすすめます。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。堺市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク個別面接は2回目になりますが、前回と比べていかがですか?2度目の面接で緊張がほぐれた分、話し方が雑になっていないか。同じ話を繰り返すだけになっていないか
② 動機・志望大阪府内には他にも市がありますが、なぜ堺市なのですか?近隣の市と並べたうえで堺を選んだ理由があるか。世界遺産や伝統産業の話が、志望の筋道につながっているか
③ 自己理解面接カードに書かれた「自分自身を自由に表現してください」の欄について、あらためて口頭で説明してください400字で書いた内容を、その場の言葉で言い直せるか。書いた自分と話す自分がずれていないか
④ 経験・行動心掛けてきたことのうち、最も印象に残っているエピソードを聞かせてください面接カードの設問そのもの。どのような状況で、どのような行動をしたのかという2点が具体的に出てくるか
⑤ 学業・経歴学んだことのなかで、市の仕事に活かせそうなものはありますか?税や保険から都市計画まで及ぶ職務内容のどこかに接続できているか。無理に結び付けていないか
⑥ 適性・将来7つの区役所のいずれかに配属された場合、どのように働きたいですか?区役所の窓口を出発点として受け止められているか。区によって事情が違うことを知っているか
⑦ 公共性・社会性堺市が力を入れている取組で、関心を持ったものはありますか?泉北ニュータウンの再生や自動運転の実証など、進行中の取組を自分の関心とつないで話せるか

とはいえ、この7つは堺市に限った枠組みではありません。同種の対策は受験者の間で行き渡っており、ここでの出来ばえは似通います。

450点が動く2回の面接で他と分かれるのは、次に挙げる堺市固有の問いに答えられるかどうかです。

合否を分けるのは「堺市役所ならでは」の質問

「なぜ大阪府庁ではなく、堺市役所なのですか?」
「堺市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

面接が2回あり、その2回で500点中450点が動く試験ですから、この種の問いは1回で終わりません。1回目に答えた内容を、2回目に別の面接官から違う角度で問い直される前提で備えることになります。

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「堺市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい堺市の事実答え方のヒント
なぜ府庁ではなく市役所か堺市は7つの区役所で税・保険・年金などの窓口を担う一方、政令指定都市として都市計画や産業振興を手がける。基本計画2030は「利便性が高く信頼される区役所の実現」と「政令指定都市としての都市経営」を並べて推進の視点に置く規模の大きさを理由にすると府庁との差が出ません。区役所という単位で市民の手続きを受けながら、大都市として打つ手も持っている点を、志望する分野の例で示します
人口の現在地住民基本台帳の人口は809,032人(令和8年1月1日現在)。令和6年中は自然減5,634人に社会増586人が届かず5,048人の減少。基本計画2030は2035年度に推計74.4万人を上回る75.6万人を目標に掲げる減っているという事実から逃げないことです。そのうえで、市が推計を上回る人口を目標に置いているという能動的な構えまで言えると、現状認識が一段深く見えます
市の最上位計画「堺市基本計画2030」(2026年度から2030年度)。都市像は「未来を創るイノベーティブ都市」で、4つの基本姿勢と5つの重点戦略、3つのKGIで構成される都市像を引用するだけでは足りません。自分のやりたい仕事が5つの重点戦略のどれに入り、3つのKGIのどれを押し上げるのかまで、言葉にしておきましょう
防災・危機管理堺市地震災害想定総合調査では、上町断層帯地震(マグニチュード7.4から7.8)で建物全壊70,929棟・死者3,017人、東南海・南海地震(同7.9から8.6)で建物全壊6,004棟・死者26人と想定(平成20年度から21年度の調査)南海トラフの話だけで組み立てないことです。堺市では足元の活断層のほうが被害の想定が大きい点に触れ、防災マップの全戸配布のような「届ける側」の取組へつなげます
堺市の魅力と課題百舌鳥・古市古墳群は2019年に世界文化遺産へ登録。一方で観光戦略は、効果が大仙公園エリアに集中し、ホテル宿泊者数はほぼ横ばいで日帰り客が大勢を占めることを課題として示す世界遺産を魅力として挙げたら、そのまま市自身が書いている波及の課題へ進みます。市が自分で書いている弱点まで押さえておくと、魅力を挙げた次の一言が続きます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、堺市が示す「めざすべき職員像」に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
市民生活の安定・充実を図る姿勢(めざすべき職員像)誰の暮らしをどう良くしたいのかが具体か。抽象的な貢献の言葉で止まっていないか税、保険、年金、地域福祉といった窓口の仕事は職務内容の筆頭に並びます。地味に見える手続きの向こうに人の生活があると分かっている、と伝わる例を選ぶ
向上心を持って挑戦する力(めざすべき職員像)やったことのない場面へ、自分から入っていった経験があるか。思うように進まなかった局面で、どこに手を入れ直したか成功談でなくてかまいません。着手した理由と、途中で判断を切り替えた場面を、時系列で言えるようにする
組織変革につなげる力(めざすべき職員像)自分の工夫が、その場限りで終わったか、周囲のやり方として残ったか「私が頑張りました」の次を用意する。仕組みや手順として何が残ったのか、誰が引き継いだのかまで思い出しておく
窓口と都市の両方を見る目(当研究会の見立て)市民に近い仕事と、圏域の中での堺の立ち位置と、どちらの話にも移れるか面接カードの2問はどちらも自分の話です。そこで語る自分を、7区の窓口と大都市の企画のどちらに置いても筋が通るように、あらかじめ両方の場面で言い直しておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

堺市は個別面接が2回あり、しかも2回目の配点が300点と最も重いので、この傾向は強く出ます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておいてください。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 受験案内で自分の区分の配点表を確認し、面接と論文にそれぞれ何点が振られているかを数字で把握する。大学卒程度(事務)なら最終判定の500点のうち450点が面接ですから、そのまま勉強時間の配分を決めてしまいます
  2. 筆記の2種目を「通過に必要な水準まで」で仕上げる。適性検査(SPI3)の基礎能力検査をテストセンターでの受検を想定して通しで解き、論文は60分で800字を書き切る練習を数本重ねます
  3. 面接カードの2問(心掛けてきたことと印象に残るエピソード、自分自身の自由表現)に、それぞれ400字程度の下書きを作る。第一次合格後に期限までの申請が必要なので、この段階で骨組みを作っておきます。書けたら、原稿を見ずに同じ内容を1分で話せるか試してください
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る。このとき、面接カードに書いた2つの話と食い違っていないかを突き合わせます
  5. この記事の第1部へ戻り、志望分野に近い堺市の事実を2つか3つ拾って、手元の資料を閉じたまま声に出して説明してみる
  6. 固有質問の対応表から材料を取り、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」の一続きの話に編む。同じ話題が第二次と第三次で別の面接官から出てくることを見込み、切り口を変えた言い回しも手元に置いておく

優先順位に注意

順番に迷ったら、ステップ3の面接カードを先頭に置いてください。期限までに申請しなければ第二次試験を受けられないうえ、ここで書いた2つの話が2回の面接を通じて使う材料になります。次がステップ2の筆記2種目ですが、こちらは通過できる水準までで十分です。ステップ5と6の自治体研究は他の受験生に差をつけるための上積みで、手が回らない日は後ろに回してかまいません。ただし、自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、堺市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

堺市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

堺市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和8年度春季試験の大学卒程度(事務)は、最終判定の500点のうち450点が面接に置かれた試験です。適性検査は面接の場に立つための関門であって、最後の点数には残りません。

つまり、合否のほとんどは2回の個別面接で話した中身が決めます。人口が減り始めた80万人の都市が、それでも推計を上回る人口を目標に掲げ、世界遺産と臨海部の工場と半世紀を経たニュータウンを同時に抱えている。

その堺市に職員として加わるなら、自分はどの持ち場に立ちたいのか。面接カードの400字を書くときに、その答えを先に決めておいてください。

2回の面接は、その一貫性を確かめる時間になります。