本記事では、田原市職員採用試験の面接対策で必要な、田原市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。愛知県の渥美半島にある田原市、読み方は「たはらし」です。

田原市役所の面接試験では、「なぜ田原市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。

田原市は年度内に性格の違う複数の試験を用意しており、自己推薦型の総合能力試験では第1次から第3次まですべての段階に面接が置かれています。準備の重心が面接に寄る試験です。

第1部には、その面接で繰り返し使える田原市の事実を集めました。読みながら、自分の経験と結び付けられそうなところに印を付けていってください。

第1部|自治体研究編

田原市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは田原市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 農業産出額は891億円(令和5年)で、全国の市町村のうち第2位。令和4年は900億円、令和3年は848億円と、高い水準が続いている。
  • 昭和43年の豊川用水の全面通水以降に、この農業が発展した。水が届いたことが産地形成の起点になっている。
  • 渥美半島に位置し、陸で接するのは豊橋市のみ。三重県鳥羽市とは海上を隔てて隣り合う。
  • 人口は57,843人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。市域は191.11平方キロメートルで、人口密度は1平方キロメートルあたり約303人。
  • 臨海部は三河港の背後地の一部にあたる。三河港は完成自動車の輸入台数で全国1位を続ける港で、豊橋市・蒲郡市の臨海部も同じ背後地に含まれる。
  • 県内では豊橋市、知多郡南知多町とともに、南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域の指定を受けている。
  • 市の花はなのはな、市の木はクスノキ。

田原市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「田原市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

半島という地形の上に、どれだけの人が、どんな広さの中で暮らしているのか。そこが分かる項目から並べます。

項目内容
総人口57,843人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口17,641人(30.5%、愛知県計25.5%)
75歳以上人口9,851人(17.0%、愛知県計15.2%)
総面積191.11km²
人口密度約303人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
隣接自治体豊橋市(三重県鳥羽市とは海上を隔てて隣接)
農業産出額891億円(令和5年・全国の市町村で第2位)
市の花・市の木なのはな・クスノキ

総人口・65歳以上人口・75歳以上人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。対比のために置いた愛知県計も、同じ統計の同じ時点の値を使っています。愛知県が令和7年国勢調査の結果速報として公表した県人口(744万9,403人)や、県の人口動向調査による高齢化率は、調査の系列そのものが異なります。同じ列に置いて比べることはできません。農業産出額は田原市公式サイトの記載、総面積・隣接自治体・市の花木は公表されている情報をもとに整理しました。人口密度は、この住民基本台帳人口を総面積で割って算出しました(本文で並べている豊橋市・豊川市の人口密度は、別に整理した基礎データによる算出値です)。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

数字から考えられる市政課題

田原市の高齢化率30.5%は、同じ住民基本台帳で県内38市を並べたときに3番目に高い水準です(瀬戸市と同率)。75歳以上の割合も17.0%で、愛知県計の15.2%を1.8ポイント上回ります。

ただし内訳を見ると、65歳以上のうち75歳以上が占める割合は55.8%で、後期高齢者への移行はこれからも続く見通しです。高齢化率の高さと、人口密度303人という市域の広がりが同時に効いてくるのが、田原市の人口の特徴です。

人がまばらに暮らす広い市域では、同じサービスを届けるのにより多くの手間と距離がかかります。買い物、通院、行政の窓口。

移動そのものが課題になりやすい構造です。たとえば面接では、次のように数字から市の姿を描いて話せます。

「田原市は高齢化率が3割を超えている一方で、市域は190平方キロを超えていて人口密度は低いと知りました。人が集まっている場所とそうでない場所で必要な支え方が違ってくるので、移動の手段をどう確保するかが大きいのではと感じています」

田原市の経済・産業

経済・産業構造の概要

  • 愛知県の農業産出額は3,207億円で全国8位(令和5年)。田原市はその県の中で、市町村単位では全国第2位の産出額を持つ。
  • 県の製造品出荷額等は58兆218億円で全国1位(全国シェア約15.5%)。1977年に神奈川県を追い越して以来、連続日本一を保っている(2024年経済構造実態調査)。
  • 県内総生産(名目)は43兆831億円で、主要産業は自動車に代表される輸送機械産業(県民経済計算2022年度)。
  • 田原市の臨海部は三河港の背後地の一部で、完成自動車の物流に直接つながっている。

つまり、「全国屈指の農業産地でありながら、臨海部は日本一の自動車の港に接している」という二重構造を押さえておくと、産業や雇用の話題に対応しやすくなります。(出典:あいちの産業構造|2024年経済構造実態調査ほか)

農業産出額全国2位を支える三つの柱

田原市の農業産出額は令和5年で891億円、全国の市町村のうち第2位です。特徴は、一つの品目に偏っていないことにあります。

露地栽培ではキャベツ、ブロッコリー、レタス、スイカ、スイートコーン、露地メロン。施設園芸ではトマト、メロン、キク、カーネーション、バラ、洋花、鉢物。

畜産では乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏、ブロイラー、うずら。野菜と花きと畜産の三方向がそろっているのが田原市の農業です。

農業を志望動機に据えるなら、産出額の順位を挙げるだけでなく、品目を一つか二つ具体的に出せるようにしておきましょう。(出典:田原市の農業|令和5年)

豊川用水がつくった産地

この農業が形になったのは、昭和43年の豊川用水の全面通水以降です。水が届いたことで、それまでとは違う作物と規模の農業が成り立つようになりました。

産地は自然にできたのではなく、水を引く事業の上に築かれたということです。なお、豊川の上流にあたる北設楽郡設楽町では、東三河地域へのかんがい用水の補給と水道用水の供給を目的の一つとする設楽ダムの建設が進んでおり、令和16年度の完成が目指されています。

市の農業は、市域の外で決まる水の前提の上に乗っているという視点は、農政でも防災でも使えます。(出典:設楽ダム事業概要|令和7年度)

三河港の背後地としての臨海部

三河港は、田原市の臨海部を豊橋市・蒲郡市の臨海部とあわせて背後地とする港です。完成自動車の輸入台数は令和5年で209,301台と31年連続で全国1位、輸出台数は860,294台で全国2位。

貿易額は4兆7,561億円、取扱貨物量は1,968万トン(令和4年)にのぼります。農業のまちという印象が強い市ですが、臨海部にはまったく性格の違う経済が動いています。

志望動機を組み立てるときは、農と港のどちらの側から市を見るのかを自分の中ではっきりさせておくと、話がぶれません。(出典:三河港の完成自動車取扱実績・貿易額|令和5年)

田原市の主な行政課題

ここまでに並べた事実は、そのまま市が抱える課題の輪郭になります。面接で課題を尋ねられたときのために、5つに絞って整理しておきます。

全国2位の産地を誰が担い続けるか

891億円という農業産出額は、それを生み出す人がいて初めて成り立つ数字です。市の高齢化率は30.5%、75歳以上の割合は17.0%(いずれも令和8年1月1日現在の住民基本台帳)で、いずれも愛知県計を上回ります。

産地の規模と、担い手の年齢構成は別々に動くということです。新しく農業に入る人をどう迎えるか、規模の大きな経営をどう引き継ぐか。

農政に関心があるなら、産出額の話から一歩進めて、この担い手の論点まで触れられるようにしておきましょう。

半島という地形と津波への備え

愛知県は県全域が南海トラフ地震防災対策推進地域に指定され、そのうえで豊橋市・田原市・知多郡南知多町の3市町が津波避難対策特別強化地域に指定されています(指定は2014年3月時点)。

県の被害予測調査の過去地震最大モデル(駿河湾から四国沖を震源域とするマグニチュード8.9程度)では、死者数は早期避難率が低い場合に最大約5,300人、早期避難率が高く呼びかけがある場合は約2,900人と想定されています。

同じモデルで建物の全壊・焼失は計約9万2,000棟、避難者は1週間後で最大約158万人にのぼります。陸続きの隣が豊橋市だけという半島の地形では、逃げる方向そのものが限られるという条件が重なります。

田原市で防災を語るなら、施設や備蓄の話に加えて、この地形の話を必ず入れましょう。(出典:愛知県南海トラフ地震被害予測調査結果|2026年公表/愛知県の地震活動の特徴(地震調査研究推進本部)|2014年3月時点の指定)

距離が前提になる市域でのサービスの届け方

人口密度は1平方キロメートルあたり約303人。同じ東三河にある豊橋市の約1,367人、豊川市の約1,135人と比べると、人の集まり方はかなり緩やかです。

市域が広いということは、窓口も、路線も、防災の拠点も、距離を前提に配置しなければならないということです。高齢化が進む市域で、移動そのものが行政サービスの前提条件になるという構図が生まれます。

公共交通、移動販売、オンラインでの手続き。どの手立てを挙げるにしても、この距離の条件を先に置くと話が通ります。

農と港という二つの経済

市の経済には、農業産出額全国2位という顔と、完成自動車輸入日本一の港の背後地という顔があります。求められる行政の関わり方は、この二つでまったく違います。

農業なら担い手や販路、水と土。港湾なら企業や国の機関との調整、雇用と物流。

どちらも市の一部であり、どちらかだけを語ると市の半分しか見ていないことになります。二つの経済が同じ市役所の守備範囲にあることは、志望動機を組み立てる前に頭に入れておきましょう。

陸で接するのが一市だけという立地

田原市が陸で接しているのは豊橋市だけです。三重県鳥羽市とは海上を隔てて隣り合いますが、日常の行き来という意味では豊橋市との関係が中心になります。

隣接する自治体が少ないということは、広域で分担できる相手も限られるということです。消防も福祉も教育も、市が自前で持つ比重が相対的に大きくなりやすい。

この条件は、市役所の仕事の幅にそのまま反映されます。

重点政策|採用と公表資料から見る市政

市が何に力を入れているかを押さえておくことは、志望動機を語る前提になります。ただし、確認した田原市の令和8年度実施の募集要項と試験スケジュールには、総合計画の名称にあたる記載がありませんでした。

計画の名称と現行の版については、田原市公式サイトの総合計画のページをご覧ください。ここでは、募集要項が発している言葉と採用の中身から、田原市の姿勢をたどります。

募集要項が呼びかけている相手

田原市の募集要項は、「『田原市のために働きたい!』『渥美半島を元気にしたい!』という意欲ある方の応募をお待ちしています」と呼びかけています。市の名前と、半島の名前が並んでいる点に注目してください。

行政区域としての田原市と、地域としての渥美半島。市の職員でありながら、半島全体を元気にする担い手であることを期待されているという読み方ができます。

志望動機に「渥美半島」という言葉を自分の文脈で使えるかどうかは、一つの分かれ目になります。

市政の現在地を一覧にする

分野押さえておきたい事実
農業農業産出額891億円(令和5年)で全国の市町村第2位。露地栽培・施設園芸・畜産の三方向がそろう
水・国土昭和43年の豊川用水の全面通水以降に農業が発展。上流では東三河地域への用水補給を目的の一つとする設楽ダムが建設中
人口・高齢化57,843人。高齢化率30.5%・75歳以上17.0%(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)で、いずれも愛知県計を上回る
防災県内3市町だけが指定されている南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域のひとつ
産業・港湾臨海部は三河港の背後地の一部。三河港の完成自動車輸入台数は209,301台で31年連続全国1位(令和5年)
地理市域191.11km²、人口密度約303人/km²。陸で接するのは豊橋市のみ

面接では、自分の取り組みたい仕事がこの6分野のどこに位置づくのかを一言添えられるだけで、市の方向性を踏まえた志望だと伝わります。

POINT|産出額の順位だけでは志望動機にならない

全国2位という数字は覚えやすいぶん、多くの受験者が口にします。差がつくのはその先です。関心分野を一つか二つに絞り、「何が課題か」から「市はどんな状態を目指すか」「いま動いている事業は何か」「市でなければ担えない役割はどこか」「自分の経験や強みをどう生かすか」へと順にたどっていきましょう。

悪い例「田原市は農業が全国2位なので、農業に関わる仕事がしたいです」

改善例「田原市の農業は野菜も花も畜産もそろっていると知りました。ただ市の高齢化率は3割を超えていますので、これから新しく農業を始める方を迎える仕組みづくりに関わりたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

田原市を受けるなら、まず次の4つに当たってください。自分が受ける試験と志望分野に関わるものから順で構いません。

  • 受ける試験の募集要項と試験スケジュール
    総合能力試験と統一試験では段階数も科目も違います。自分の区分の要項を必ず特定してから読み込みましょう。
  • 田原市の総合計画を掲載しているページ
    計画の名称と現行の版はここで押さえます。概要版があれば、そこから入ると全体像が早くつかめます。
  • 田原市の農業に関する市公式サイトのページ
    産出額だけでなく、栽培されている品目や産地の成り立ちが分かります。志望動機の具体を仕入れる場所です。
  • 市の地域防災に関するページと、県の南海トラフ地震被害予測調査の資料
    半島という地形で避難がどう設計されているかが読み取れます。

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、田原市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。田原市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

田原市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

田原市役所の面接の概要

ここからは、田原市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

田原市役所の面接の流れ

令和8年度実施(令和9年4月1日採用)の田原市職員採用試験は、「総合能力試験」「統一試験(一般採用試験)」「公務員経験者採用試験」の3本立てで、いずれの併願もできません。まず自分がどれで受けるかを決める必要があります。

もっとも大きな違いは面接の回数です。自己推薦型の総合能力試験では、第1次から第3次まですべての段階に面接試験が置かれています。

項目総合能力試験(事務職)統一試験(事務職)
試験の性格自己推薦型の試験一般採用試験
試験の段階3段階2段階
第1次試験基礎能力検査、適性検査、面接試験面接試験と、教養試験・作文試験・適性検査を2日間で実施
第2次試験作文試験、面接試験面接試験
第3次試験面接試験実施されません
面接の回数3回(全段階)2回(両段階)
筆記型の科目基礎能力検査と第2次の作文試験のみ。教養試験は課されません教養試験と作文試験(技術職は教養試験と専門試験)
採用予定人員事務職4名程度(ほかに技術職・保健師・保育職各若干名から4名程度、消防職3名程度)事務職3名程度(ほかに事務職(障害者対象)若干名、技術職若干名、消防職3名程度)
面接の形式個別か集団かの別、集団討論の有無は募集要項・試験スケジュールに記載がありません同じく記載がありません
配点各試験種目の配点は公表されていません各試験種目の配点は公表されていません
申込方法インターネットによる受付。受験票は専用サイトからダウンロードして試験当日に持参しますインターネットによる受付
提出書類受験申込時の添付書類はありません。最終合格者について卒業証明書又は卒業見込証明書、資格取得証明書等の提出が必要です同様の取扱いです
採用予定日令和9年4月1日令和9年4月1日

総合能力試験を選ぶと、教養試験を受けずに済む代わりに、面接が三度あります。筆記の得点で人物評価を補う道がないということです。

統一試験でも、第1次試験の初日から面接試験が組まれています。どちらを選んでも、最初の段階で面接を通らなければ次がない設計だと理解しておきましょう。

なお、消防職はどちらの試験でも体力検査が加わります。

上記の試験構成は、田原市の令和8年度実施(令和9年4月1日採用)の総合能力試験募集要項および試験スケジュールにもとづく事務職のものです。「統一試験(一般採用試験)」は田原市が用いている試験区分の名称で、他の自治体との共同実施や統一的な枠組みであることを示す記述は、募集要項・試験スケジュールのいずれにも確認できませんでした。公務員経験者採用試験は令和8年秋頃の実施予定とされています。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。(出典:田原市職員採用試験(総合能力試験)募集要項|令和8年度実施/田原市職員採用試験スケジュール|令和8年度実施)

田原市役所が求める人物像

田原市は、田原市職員が描く「ありたい職員像」として「変革力を持つ個性豊かな職員」を掲げ、その中身を3点で示しています。

  • 対話を重視し、皆とともに新しい一歩を踏み出せる職員
  • 自ら学び続け、強みを身につける職員
  • 市民に寄り添い、信頼される、人間性豊かな職員

この3点に共通しているのは、与えられた仕事をこなす姿ではなく、自分から働きかける姿が描かれていることです。「対話」も「学び続ける」も「寄り添う」も、待っていては起こりません。

面接対策の言葉に翻訳すれば、この3語がそのまま評価の軸になります。ただし語をなぞるだけでは足りず、それぞれに自分の経験を一つずつ当てはめておく必要があります。

公表された3点に、市の規模から言えることを一つ足しておきます。事務職の採用は総合能力試験で4名程度、統一試験で3名程度という規模です。

事務職がこの人数で回る市役所では、一つの係が抱える所管もおのずと幅を持ちます。農業者からの相談も、港に関わる調整も、避難計画の説明も、同じ庁舎の中で扱われることになります。

「自ら学び続け、強みを身につける」という言葉は、この市では掲げられた理想というより、日々の必要から出てくる言葉に近いのではないでしょうか。

そのうえで一つ。総合能力試験は自己推薦型で、教養試験による点数の裏打ちがありません。面接で語ったことが、そのまま評価の材料になるということです。

三度掘られても崩れないのは実際にやったことだけですから、面接ごとに答えを作り替えるより、一つの経験を三通りの角度から説明できるところまで詰めておくほうが確実です。

募集要項が呼びかけている「渥美半島を元気にしたい」という言葉に、自分のどの経験が届くのかを探しておきましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。田原市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日はどちらから来られましたか?半島の先にある市です。通うこと自体が現実の検討事項として意識にあるかが、答えの端に出ます
② 動機・志望3つある試験のうち、なぜこの試験を選んだのですか?性格の違う試験が並ぶ市だからこそ、自分の選択を言葉にできるか
③ 自己理解あなたの強みは何ですか?市が掲げる「自ら学び続け、強みを身につける職員」という言葉に、自分の答えを重ねられるか
④ 経験・行動意見の違う人と一緒に物事を進めた経験を教えてください「対話を重視し、皆とともに新しい一歩を踏み出せる」という職員像が、実際の場面で確かめられます
⑤ 学業・経歴学んできたことは、田原市の仕事のどこで生きそうですか?農業も港も福祉も抱える市で、自分の学びの接続先を見つけられているか
⑥ 適性・将来希望と違う部署に配属されたら、どうしますか?事務職4名程度という規模の中で、幅のある配属を受け止められるか
⑦ 公共性・社会性市民の要望と制度上の決まりが食い違ったら、どうしますか?寄り添うことと公平に扱うことを、どう両立させるつもりか

この7つの枠は、田原市だけの話ではありません。多くの受験者が同じ範囲を準備してきますから、ここだけで違いを出すのは難しいのが実情です。

差がつくのは、この後に挙げる市の事情へ踏み込んだ質問です。

合否を分けるのは「田原市役所ならでは」の質問

「なぜ愛知県庁ではなく、田原市役所なのですか?」
「田原市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

田原市では、農業産出額全国2位という分かりやすい看板があるぶん、2問目の「魅力」で多くの受験者の答えが重なります。順位を言うところから一歩進めるかどうかが、印象の分かれ目です。

どちらの質問も市の現状を知らなければその場では答えようがありませんが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「田原市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい田原市の事実答え方のヒント
なぜ県庁ではなく市役所か事務職の採用は総合能力試験4名程度・統一試験3名程度。陸で接するのは豊橋市だけで、広域で分担できる相手が限られる「住民に近いから」の先へ。市が自前で抱えざるを得ない仕事の幅に触れ、そこに自分がどう入るかまで言い切ります
田原市の魅力農業産出額891億円(令和5年)で全国の市町村第2位。露地栽培・施設園芸・畜産の三方向がそろう順位で止めず、キャベツやキクといった品目を一つ挙げると、資料の見出しだけで話していない印象になります
農業の成り立ち昭和43年の豊川用水の全面通水以降に発展。上流の設楽ダムは東三河地域への用水補給を目的の一つとし、令和16年度完成目標「昔から農業が盛んな土地」ではなく、水を引く事業の上に築かれた産地だと言えると、話の解像度が一段上がります
防災県内3市町だけが指定されている南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域のひとつ。陸続きの隣が豊橋市だけという半島の地形指定の事実に地形の話を重ねます。農作業中や観光で市内にいる人の避難まで触れられると、視野の広さが伝わります
田原市の課題高齢化率30.5%で県内38市のうち3番目に高い水準。人口密度は1km²あたり約303人高齢化と、人がまばらに暮らす広い市域を重ねて、移動や見守りをどう届けるかという論点に運びます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、前述の「ありたい職員像」に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
対話を重視し、ともに一歩を踏み出す姿勢面接が3回ある総合能力試験では、同じ経験を角度を変えて確かめられます。話し合いをどう運んだかが繰り返し問われます意見がまとまらなかった場面を選び、そこで自分が何を言い、何を譲ったかまで整理しておく
自ら学び続ける姿勢総合能力試験では教養試験が課されない分、学ぶ姿勢そのものを面接で確かめる比重が上がります誰にも指示されずに続けた勉強や練習を一つ、続けられた理由まで含めて用意する
市民に寄り添い、信頼される人柄農業者、高齢の市民、港湾の関係者と、向き合う相手の幅が広い市役所です立場の違う相手の話を聞いて動いた場面を選び、相手の様子がどう変わったかまで話せるようにしておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。田原市の総合能力試験は面接が三段階にわたるため、この傾向はより強く現れます。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを、あらかじめ用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 募集要項と試験スケジュールを読み、総合能力試験・統一試験・公務員経験者採用試験のどれで受けるかを決める(相互の併願はできません)
  2. 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
  3. 「変革力を持つ個性豊かな職員」の3つの職員像を書き出し、それぞれに棚卸しした経験を1つずつ当てはめる
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. 第1部に整理した事実から、志望分野に近いものを2〜3個選び、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 同じ経験を三度、違う角度から語る練習をする。総合能力試験なら面接が3段階に置かれています

優先順位に注意

他の受験生と差がつく工程はステップ5です。ただし田原市では、その前に済ませておきたいのがステップ3です。棚卸しした経験を、市が言葉にしている職員像へ当てはめる作業のほうが、面接での効き目が早く出ます。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、田原市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

田原市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

田原市役所の想定問答集を見る

さいごに

田原市の試験は、どの区分を選んでも第1次試験の段階から面接が始まります。総合能力試験なら三度、統一試験でも二度。

筆記の点数で人物評価を埋め合わせる道が用意されていない試験だ、と考えて準備の配分を決めてください。

全国2位の農業産出額を生む産地を抱え、陸続きの隣が豊橋市だけという半島の地形で津波への備えを求められ、臨海部は日本一の自動車の港につながっている。市が言葉にした「変革力を持つ個性豊かな職員」という像に、自分のどの経験を重ねるのか。

まずは募集要項を開き、受ける試験と職種を決めるところから始めましょう。