本記事では、名古屋市職員採用試験の面接対策で必要な、名古屋市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
名古屋市役所の面接試験では、「なぜ名古屋市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。
名古屋市の採用試験は名古屋市人事委員会が実施する独自の試験で、愛知県庁とは区分体系も配点も別に組まれています。市の実情を自分の言葉で語れるかどうかが、そのまま得点差に出やすい設計です。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と名古屋市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
名古屋市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは名古屋市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 愛知県の県庁所在地であり、16の行政区で構成される政令指定都市。昭和31年に政令指定都市へ移行し、昭和50年に名東区と天白区が置かれて現在の16区となった。
- 住民基本台帳による人口は2,310,721人(令和8年1月1日現在)。集計の系列が異なる令和7年国勢調査の速報集計では、令和7年10月1日現在で2,345,892人となり、過去最多を記録している。
- 市域は326.45km²で、瀬戸市・春日井市・清須市・北名古屋市・あま市など11市5町村と接する。人口密度は7,078人/km²(令和7年国勢調査速報値)。
- 名古屋駅周辺地区と栄地区を「2核一体」の都心と位置づけ、名古屋大都市圏の中枢都市にふさわしい都心部の形成を目指している。
- リニア中央新幹線の開業に向け、名古屋駅のスーパーターミナル駅化、東西の駅前広場の再整備、地下歩行者空間の整備などが動いている。
- 名古屋港の総取扱貨物量は1億5,671万トンで、平成14年から23年連続で日本一(令和6年)。完成自動車の輸出台数は約146万台で46年連続日本一となっている。
- 市営地下鉄は6路線。名古屋城の令和6年度の年間入場者数は2,234,976人で、城と城下の観光が市の集客の柱になっている。
- 財政は緊急避難的に公債償還基金から借入れをせざるを得ない状況にある。令和8年度の予算編成の方針は、これを「極めて厳しい」と記している。
名古屋市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「名古屋市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
名古屋市の数字は、市全体の1行だけで覚えるより、16区に分けたときの幅とセットで持っておくほうが面接で使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 2,310,721人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳) |
| 65歳以上の割合 | 24.9%(愛知県全体は25.5%) |
| 75歳以上の割合 | 14.8%(愛知県全体は15.2%) |
| (区別の幅)65歳以上の割合 | 最も高い南区29.8%、最も低い中区17.3% |
| 行政区数 | 16区(千種・東・北・西・中村・中・昭和・瑞穂・熱田・中川・港・南・守山・緑・名東・天白) |
| 総面積 | 326.45km² |
| 総世帯数 | 1,181,671世帯(令和7年国勢調査速報値・過去最多) |
| 人口密度 | 7,078人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 名目市内総生産 | 15兆217億円(令和5年度) |
| 市役所所在地 | 名古屋市中区三の丸三丁目1番1号 |
総人口、65歳以上および75歳以上の割合、区別の値は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の数値です。比較のために置いた愛知県全体の値も同じ統計から取っています。総世帯数・人口密度は令和7年国勢調査の速報集計(令和7年10月1日現在)、名目市内総生産は令和5年度の名古屋市市民経済計算による値です。国勢調査を基準とする県の推計人口や年齢別人口は調査の系列が異なるため、同じ列に並べて比べることはできません。
数字から考えられる市政課題
名古屋市の人口は増えています。ただし中身を見ると、令和7年(令和6年10月から令和7年9月まで)の自然増減は12,173人の自然減で、平成25年以降13年連続、しかも過去最大でした。
これを19,782人の社会増が上回り、差引で7,609人の増加になっています。(出典:愛知県人口動向調査結果(名古屋市分)|令和7年)
つまり名古屋市の人口増は、転入してくる人に支えられた増加だということです。名古屋市総合計画2028も、現在の趨勢では市が人口減少局面に入っていくことが想定されるという課題認識を示しています。
転入の勢いが弱まったときに何が起きるかを、市自身が織り込んで計画を立てている状態です。世帯数は1,181,671世帯で過去最多となった一方、1世帯当たりの人員は1.99人と過去最少になりました(令和7年国勢調査速報値)。(出典:令和7年国勢調査 人口速報集計(名古屋市)|令和7年)
もう一つ、16区の内側の差も押さえておきましょう。65歳以上の割合は南区の29.8%から中区の17.3%まで12ポイント以上の幅があり、75歳以上でみても南区17.8%と中区9.8%で倍近い開きがあります。
同じ制度を同じように動かしても、区によって届き方は変わります。たとえば面接では、次のように数字を暮らしの場面へつなげて話せます。
名古屋市の経済・産業
経済・産業構造の概要
- 名目市内総生産は令和5年度で15兆217億円(名目経済成長率3.8%、実質経済成長率0.8%)。
- 市民所得は9兆7,641億円、1人当たり市民所得は419.7万円(令和5年度)。
- 主な産業別の事業所数・従業者数は、卸売業・小売業が28,936事業所・330,961人(令和3年経済センサス)。
- 次いで医療・福祉が9,845事業所・160,894人、製造業が9,104事業所・128,685人、建設業が8,774事業所・93,253人(同)。
- 有効求人倍率は1.64(令和6年度平均)。
つまり、ものづくりの県の中心にありながら、名古屋市自身の雇用は売る仕事と支える仕事に厚いという構造です。従業者数でみると卸売業・小売業は製造業の2倍を超え、医療・福祉も製造業を上回ります。
産業振興や雇用を語るときに工場の話だけで組み立てると、市の実態からずれてしまいます。(出典:名古屋市の経済(市民経済計算・経済センサスほか)|令和5年度)
名古屋港と物流
名古屋港の令和6年の総取扱貨物量は1億5,671万トンで、平成14年から23年連続で日本一です。完成自動車の輸出台数は約146万台で46年連続日本一、輸出額は16兆1,659億円で平成11年から26年連続日本一、貿易差引額は8兆5,966億円で平成10年から27年連続日本一となっています。
港湾管理者は愛知県と名古屋市が共同で設立した名古屋港管理組合で、県と市が組んで一つの港を運営しているという構図は、県と市の役割を問われたときにそのまま使える具体例です。(出典:名古屋港の取扱貨物量・貿易額|令和6年)
都心の再編とリニア中央新幹線
「2核一体」という位置づけが意味するのは、名古屋駅と栄をそれぞれ別に整えるのではなく、一体の都心として名古屋大都市圏の中枢都市にふさわしい国際競争力を持たせるという方針です。
名古屋駅側ではスーパーターミナル駅化、東西の駅前広場の再整備、リニア駅周辺街区の面的整備、地下歩行者空間の整備が進み、栄地区では「栄地区グランドビジョン」に基づく魅力向上が動いています。
まちづくりや都市計画を志望するなら、個別の事業名を並べるだけでなく、2つの核をどうつなぐかという視点まで用意しておきましょう。
観光と大規模イベント
名古屋城の令和6年度の年間入場者数は2,234,976人(確定値)。市全体の観光入込客数は令和5年で延べ約5,773万人、実人数で約3,522万人でした。
令和8年度予算には、名古屋城天守閣の木造復元関連、金シャチ横丁第二期整備、東山動植物園の再生整備と開園90周年記念事業、宿泊税の導入を見据えた観光地域づくりが並びます。
さらに市はアジア・アジアパラ競技大会の開催都市として、大会の運営とレガシー形成を市政の柱の一つに置いています。観光を語るなら、名所の紹介ではなく来訪をどう市内の消費と雇用につなげるかまで踏み込みましょう。(出典:名古屋城の年間入場者数|令和6年度)
名古屋市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、名古屋市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
転入に支えられた人口と、その先の減少局面
名古屋市総合計画2028は、現在の趨勢では市が人口減少局面に入っていくことが想定されると明記しています。実際、自然減は13年連続で拡大し、令和7年には12,173人と過去最大でした。
計画の基本方針にも人口減少への対応が掲げられ、結婚・子育て世代の希望の実現と、人口流出のダム機能の強化が課題として置かれています。「人口は増えているのに、なぜ対策が要るのか」を説明できると、それだけで他の受験者と差がつきます。
大都市制度と県との関係
総合計画2028は「市政の変革と基盤強化」の観点の一つに「名古屋市がめざす大都市制度」を挙げています。県と市が同じ地域を重ねて担う場面をどう整理するかは、名古屋市が自ら論点として抱えているテーマです。
一方で実務の側では、名古屋港を愛知県と名古屋市が共同で設立した組合が管理し、消防学校を県市共同で設置する事業が令和8年度予算に入るなど、県と組んで動かす仕事も現にあります。
定番質問「なぜ県庁ではなく市役所なのか」は、この二面性を知っているかどうかで答えの厚みが変わります。
南海トラフ地震への備え
名古屋市が平成26年2月に公表した被害想定では、南海トラフの「あらゆる可能性を考慮した最大クラス」の地震が冬の深夜に起きた場合、死者数は対策前で約6,700人、対策後で約1,500人と見込まれています。建物の全壊・焼失は同じ最大クラスで約66,000棟。
「過去の地震を考慮した最大クラス」(冬・深夜)でも死者は対策前約1,400人、対策後約100人です。
令和8年度予算にはハザードマップの全戸配布、個別避難計画の作成モデル事業の拡大、港防災センターの移転改築設計、橋りょうや上下水道施設の耐震化が並びます。対策前と対策後で数字が大きく動くという点が、この想定の読みどころです。(出典:名古屋市の地震被害想定|平成26年公表)
極めて厳しい財政と行財政改革
令和6年度決算に基づく健全化判断比率は、実質公債費比率6.4%、将来負担比率84.2%で、実質赤字比率と連結実質赤字比率は赤字なし。4つの指標はいずれも法律の定める基準を下回っています。
それでも令和8年度の予算編成の方針は、物価と賃金の上昇、福祉や医療などの義務的経費の伸び、大規模な施設整備の重なりを挙げ、緊急避難的に公債償還基金から借入れをせざるを得ない状況だとして「極めて厳しい」と表現しました。
人件費・内部管理事務・事務事業・公の施設・外郭団体の見直しと、使用料や手数料の点検改定を含む歳入確保が同時に進んでいます。何かを増やすには何かをやめるという判断が、日々の仕事の中に入ってくる環境です。
大規模イベントとリニアを見据えた都市基盤の更新
アジア・アジアパラ競技大会の開催、リニア中央新幹線の開業に向けた名古屋駅周辺の再整備、新路面公共交通システムSRTの運行開始など、期限のある大型事業が同じ時期に重なっています。
総合計画2028は5年間で42の施策・506の事業、計画事業費約2兆6,987億円を見込んでおり、これを厳しい財政の下で回していくことになります。
期限のある事業も、日常の暮らしを支える事業も、どちらも止められない。この二重の負荷が、名古屋市の今の姿です。
名古屋市の重点政策|名古屋市総合計画2028
名古屋市の市政運営の最上位計画は「名古屋市総合計画2028」です。計画期間は令和6年度から令和10年度までの5年間で、令和22年頃の姿を展望しながら取り組みを体系化しています。
指導理念は昭和52年に策定された「名古屋市基本構想」を引き継いでおり、総合計画2028はその下で動く実行計画にあたります。(出典:名古屋市総合計画2028)
計画を貫く考え方
計画の基本方針は「リニアがつなぐ巨大交流圏の中心で躍動する世界都市、誰もが幸せと希望を感じられる名古屋」です。
幸せ(ウェルビーイング)、多様性(ダイバーシティ)、共創(オープンイノベーション)の3つを掛け合わせる形で示され、人の視点では子どもどまんなか・超高齢社会への対応・人口減少への対応・多様性と包摂性が、都市の視点では都市の強靱化・イノベーション・環境問題への対応と成長の両立・文化芸術と歴史の交流拠点が並びます。
人の暮らしと都市の競争力を1つの計画に並べて置いているのが名古屋市の組み立て方です。
5つのめざす都市像
| めざす都市像 | 扱う主な分野 |
|---|---|
| 1 人権が尊重され、誰もがいきいきと暮らし、活躍できる都市 | 人権、高齢者や障害者の自立、多様な人の活躍(施策12・事業121) |
| 2 安心して子育てができ、子どもや若者が豊かに育つ都市 | 出産と子育て、子どもの権利、若者の活躍(施策5・事業97) |
| 3 人が支え合い、災害に強く安心・安全に暮らせる都市 | 地震や豪雨への備え、火災・犯罪・交通事故の抑止(施策7・事業98) |
| 4 快適な都市環境と自然が調和した都市 | 都市環境、身近な自然、脱炭素社会と循環型社会(施策9・事業97) |
| 5 魅力と活力にあふれ、世界から人や企業をひきつける、開かれた都市 | 地域の魅力、世界からの誘引、産業競争力(施策9・事業93) |
この5つに横串を通すのが5つの重点戦略で、若い世代の結婚と子育ての希望、子ども若者への支援、一人ひとりに応じたやさしい福祉、災害と感染症への備え、環境と経済の好循環という順で並びます。
そのうち先行投資の性格が強い分野は「成長の原動力」として、アジア・アジアパラ競技大会のレガシーとリニア時代を見据えた投資、最先端のデジタル都市、新たなエネルギーによる産業活性化、人への投資の4つに束ねられています。
面接では、自分の取り組みたい仕事がどの都市像に位置づくのかを一言添えられるだけで、市の方向性を踏まえた志望だと伝わります。
令和8年度の市政運営のポイント
名古屋市には独立した施政方針演説の文書がなく、当初予算に付す「予算編成の方針」がそれに当たります。令和8年度の方針は、市税収入について個人市民税と固定資産税の増収で前年度当初予算を上回る見込みとしつつ、歳出の増加により財政は極めて厳しいとして、徹底的な行財政改革と重点戦略の推進を両立させる姿勢を打ち出しました。
個別の事業では、国に1年先駆けた中学2年生での35人学級、就労要件を問わない乳児等通園支援事業の本格実施、名古屋市立大学病院救急災害医療センターの開設、県市共同での消防学校設置、SRTの運行開始などが並びます。子ども・福祉・防災・都市基盤が同時に動いているのが令和8年度の姿です。(出典:令和8年度予算の概要(予算編成の方針)|令和8年度)
POINT|42の施策をすべて暗記しなくてよい
名称を覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心分野を一つか二つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③現在の事業 → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験・強みをどう生かすか」の順で調べましょう。
悪い例「名古屋市の子育て支援に携わりたいです」
改善例「就労の要件を問わずに月に一定の時間だけ子どもを預けられる事業が本格実施になると聞きました。家で子育てをしている方にも届く仕組みだと思いますので、利用する親子の声を聞きながら使いやすくしていく仕事に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
名古屋市の公表資料は量が多く、端から追いかけると本番までに時間が尽きます。志望分野に触れるものだけを開き、聞かれたときに中身をかみ砕いて話せるところまで読み込んでおきましょう。
- 名古屋市人事委員会が発行する採用試験案内(自分が受ける区分の最新年度版)と、採用情報サイトの職種紹介
- 名古屋市総合計画2028(本編・概要版)と、関心分野の個別計画
- 最新年度の予算の概要(冒頭の予算編成の方針だけでも可)
- 名古屋市の統計ページ(市民経済計算・人口動向・統計年鑑)
総合計画2028も予算の概要も、市の公式サイトでは最新版に差し替わっていきます。受験する年に出ているものを、そのつど開き直してください。
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、名古屋市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。名古屋市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
名古屋市役所の面接の概要
ここからは、名古屋市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
名古屋市役所の面接の流れ
名古屋市の採用試験を実施するのは名古屋市人事委員会です。令和8年度は春・夏・秋・冬の複数回に分けて実施され、大学卒業程度にあたる第1類には、教養試験や専門試験を課す従来型と、筆記が適性検査だけの適性検査型の2種類があります。
ここでは春実施の第1類(従来型・22歳から25歳)の構成を整理します。
設計として目を引くのは、総配点が全区分3,000点で共通なのに、そのうち個別面接に配られる点数が区分ごとに違うことです。行政は1,200点、行政(教養型)と情報は1,800点、土木・建築・機械・電気は2,100点が個別面接に置かれています〔各科目の配点は試験案内の表記、合計は当研究会による算出〕。
区分によって差はあるものの、総配点の4割から7割が、面接官の前で話す時間に配られているということです。
| 項目 | 内容(令和8年度春実施・第1類採用試験〔従来型・22歳から25歳〕) |
|---|---|
| 実施主体 | 名古屋市人事委員会(試験案内の発行は人事委員会事務局任用課) |
| 試験区分 | 行政/行政(教養型)/情報/土木/建築/機械/電気 |
| 段階構成(行政・行政(教養型)) | 3段階。第1次試験 → 第2次試験(個別面接)→ 第3次試験(個別面接と論文試験) |
| 段階構成(情報/土木・建築・機械・電気) | 2段階。情報は第2次試験で個別面接と論文試験、土木・建築・機械・電気は第2次試験が個別面接のみ |
| 面接の種類 | 全区分とも個別面接。集団面接・集団討論は試験科目として記載がありません |
| 配点(行政) | 第1次=教養試験400点+専門試験800点/第2次=個別面接360点/第3次=個別面接840点+論文試験600点 |
| 配点(行政(教養型)) | 第1次=教養試験600点/第2次=個別面接600点/第3次=個別面接1,200点+論文試験600点 |
| 配点(情報) | 第1次=教養試験210点+専門試験390点/第2次=個別面接1,800点+論文試験600点 |
| 配点(土木・建築・機械・電気) | 第1次=適性検査(SPI3-U)基礎能力検査100点と性格検査(配点なし。結果は面接時の参考資料として使用)+専門試験720点+資格加点80点/第2次=個別面接2,100点 |
| 論文試験 | 与えられた課題についての記述式試験(60分)。第1次試験日に実施され、行政・行政(教養型)は第2次試験合格者のみ、情報は第1次試験合格者のみが採点の対象 |
| 提出書類 | エントリーシート(全試験区分)。「経歴、志望動機、組織の一員として目標達成に向けて心がけ、取り組んできたこと など」を記載し、指定様式に顔写真データを貼って採用マイページから提出 |
合格者は各段階とも、第1次試験以降のすべての得点を合計して決まります。そして各段階のいずれかの試験科目が一定水準に達しない場合は、他の科目の採点を行わずに不合格となります(資格加点を除く)。
論文試験の置き方も独特で、書くのは第1次試験日ですが、採点されるのは行政・行政(教養型)なら第2次試験に受かってからです。提出した時点では合否に効かないぶん後回しにしたくなりますが、書く機会は筆記本番と同じ日に一度きりだと考えておきましょう。
つまり、筆記で大きく稼いで面接をしのぐ組み立ては通りにくく、かといって筆記を捨てて面接に賭けることもできません。どの科目も水準を超えたうえで、最後に差がつくのは面接だという設計です。
そのうえで、面接の受け方は区分で分かれます。行政・行政(教養型)は個別面接が2回あり、1回目で人物の基礎を幅広く確かめ、最終面接で志望度と考えの深さを掘るという役割分担が一般的です。
同じ話題を別の面接官から角度を変えて問われる前提で、暗記した答えの再生ではなく、掘り下げに耐える材料を用意しておきましょう。
一方、情報と土木・建築・機械・電気は個別面接が第2次の1回だけで、1,800点や2,100点という配点が、たった一度の面接に集まります。話しそびれた材料を次の面接で出し直す機会はありません。
まずは自分の区分の配点と面接の回数を確かめ、そこから筆記対策と面接準備の時間配分を決めてください。(出典:名古屋市第1類採用試験案内|令和8年度春実施)
上記の試験構成は、名古屋市人事委員会が令和8年3月に発行した令和8年度春実施・第1類採用試験(従来型・22歳から25歳)の試験案内にもとづくものです。同じ春実施でも適性検査型は別の試験案内で示されており、試験構成や配点が異なる可能性があります。また名古屋市人事委員会が実施する採用試験・選考は、当該年度に原則として1つしか申し込むことができません(障害者を対象とした採用選考など、別に定めるものを除く)。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
名古屋市役所が求める人物像
試験案内は、求める人材像として「『わたしが好きな名古屋をつくる。』名古屋をよりよくしたいという熱意を持ち、主体的・積極的に行動できる人材」を掲げています。あわせて、名古屋市人財戦略ビジョンの【めざす職員像】として「自律」「協働」「成長」の3つが示されています。
自律は率先して自ら考え自ら行動すること、協働は多様な価値観や背景を持つメンバーを認め合い他組織とも共に新たな価値を創造すること、成長は日々小さな一歩でも前に進み自身の成長を組織と名古屋の成長につなげることと説明されています。
この3つの言葉だけでは、面接で何を話すかまでは決まりません。そこで、大都市の市役所という職場の作りから逆算して、当研究会の分析を一段だけ足しておきます。
名古屋市は16の行政区と多くの部局に仕事が分かれ、5年間で42の施策・506の事業を並行して動かす組織です。この規模になると1つの事業がほぼ必ず複数の部署や外部の相手をまたぐため、個人の頑張りだけでは前に進まず、人を巻き込んで動かす力が問われる比重は大きくなります。
「まとめ役をやっていました」で終わる話では届きにくく、誰と誰の言い分が食い違っていたのか、どう手を分けたのか、いつまでに何を終わらせたのか、という順で語れるかどうかが分かれ目になるとみています。
配点の多くを個別面接に振り、区分によっては2回に分けて確かめる設計も、短時間の印象で人を選ぶつもりがないことの表れです。
名古屋市のエントリーシートが書かせるのは「組織の一員として目標達成に向けて心がけ、取り組んできたこと」です。用意すべきは新しい自分像ではなく、この一問に対する実際の持ち駒を、16区と多くの部局に分かれた職場で通じる言い方に整えておくことだと当研究会は考えています。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。名古屋市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 今日は、どの路線で来られましたか? | 正解のない一言に、身構えずに返せるか。地下鉄6路線が走る市の日常を、受験者がどう受け止めているかもうっすら見えます |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく、なぜ名古屋市なのですか? | 製造業の本拠地という選択肢を検討したうえでの結論か。志望の筋道が経歴とつながっているか |
| ③ 自己理解 | 周囲からは、どんな人だと言われますか? | 自己評価と他人からの評価のずれを引き受けられるか。エントリーシートの記載と口頭の説明が重なるか |
| ④ 経験・行動 | 組織の一員として、目標の達成に向けて心がけ、取り組んできたことを教えてください | 名古屋市のエントリーシートの設問そのもの。書いた出来事の前後関係と、自分が担った役割の具体 |
| ⑤ 学業・経歴 | 専攻の内容を、専門ではない人に伝わるように説明してください | 区役所の窓口で市民に説明する場面に置き換えられる平易さ。学びを仕事へつなげる視点 |
| ⑥ 適性・将来 | 16区のどこに配属されても働けますか。入庁後はどんな仕事に取り組みたいですか? | 5つのめざす都市像のどこに関心が乗るか。希望と違う配属になったときの構え |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近、気になった名古屋市の動きはありますか? | リニア開業に向けた駅周辺の整備やアジア・アジアパラ競技大会など、動いている話題を短く説明できるか |
ただし、この表の7つは名古屋市の試験だから出るというものではありません。どの受験先でも似た形で問われるため、対策の密度では差がつきにくい領域でもあります。
名古屋市の面接で他の受験者と分かれるのは、この先の固有の問いのほうです。
合否を分けるのは「名古屋市役所ならでは」の質問
1問目は、名古屋市では単なる定番以上の重みがあります。市自身が総合計画で大都市制度を論点に掲げている一方、名古屋港のように県と市が組んで動かしている仕事も現にあるからです。
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
こうした質問に答えるための「名古屋市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい名古屋市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 総合計画2028は「市政の変革と基盤強化」の観点の一つに「名古屋市がめざす大都市制度」を掲げる。一方で名古屋港は愛知県と名古屋市が共同で設立した名古屋港管理組合が管理し、令和8年度予算には県市共同での消防学校設置が入る | 県と市を対立させて語らず、組んで動かす仕事もあることを押さえたうえで、住民に近い側で担いたい仕事を志望分野の具体で述べます |
| 人口の現在地 | 住民基本台帳では2,310,721人(令和8年1月1日現在)。令和7年国勢調査の速報集計では2,345,892人で過去最多。ただし自然減12,173人を社会増19,782人が上回った結果の増加で、総合計画2028は減少局面入りを想定する | 「増えている」で止めず、増加の中身が転入によるものだという点まで触れます。そのうえで、転入の勢いが弱まった先を市が計画で見ていることに接続します |
| 市の総合計画 | 「名古屋市総合計画2028」(令和6年度から令和10年度まで)。基本方針のもとに5つのめざす都市像を置き、42の施策・506の事業へ体系化。計画事業費は約2兆6,987億円 | 志望する仕事を5つの都市像のどれに置くかを先に決めておくと、深掘りされても話の軸がぶれません |
| 防災・危機管理 | 平成26年2月公表の被害想定では、南海トラフの「あらゆる可能性を考慮した最大クラス」の地震(冬・深夜)で死者は対策前約6,700人、対策後約1,500人。建物の全壊・焼失は約66,000棟 | 対策前と対策後で数字が大きく動く想定である点を押さえ、ハザードマップの全戸配布や個別避難計画のような「対策後」に効く取組と結び付けます |
| 名古屋市の魅力と課題 | 名古屋港の総取扱貨物量は令和6年に1億5,671万トンで23年連続日本一。一方、令和8年度の予算編成の方針は公債償還基金からの借入れに触れ、財政を「極めて厳しい」とする | 魅力を挙げたあと、それを維持する財源の話まで一歩進めます。強みと制約を一組で語れると、観光案内で終わりません |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、前述の「求める人材像」と「めざす職員像」に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 主体的・積極的な行動(試験案内の求める人材像) | 言われて動いたのか、自分で決めて動き出したのか。動くと決めた理由まで説明できるか | 名古屋をよりよくしたいという熱意は、志望動機の言葉より過去の行動で伝わります。自分から始めた出来事を1つ、着手のきっかけまで含めて用意する |
| 自律(めざす職員像) | 手順が決まっていない場面で、何を材料に判断したか | 判断を外した場面も1つ持っておき、次にどう変えたかまで話せるようにする |
| 協働(めざす職員像) | 立場や考えの違う相手と、どう折り合いをつけて進めたか | 16区と多くの部局に分かれた組織で働くことを想定し、部署や組織をまたいで調整した経験を選ぶ |
| 成長(めざす職員像) | 時間をかけて伸ばしてきたものがあるか。小さな前進をどう積み上げたか | 華やかな結果より、続けた期間と、その間に変えた工夫を具体的に言えるようにする |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
名古屋市では行政と行政(教養型)で個別面接が2回あり、この傾向はより強く出ます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 名古屋市人事委員会の最新の試験案内を開き、自分が受ける区分の段階構成と配点、個別面接の点数と回数、そして併願の制限を確認する。ここで見た数字を、筆記対策と面接準備の時間配分を決める基準にする(当該年度に原則1つしか申し込めないため、区分選びが最初の関門になります)
- エントリーシートの設問「組織の一員として目標達成に向けて心がけ、取り組んできたこと」に、実際の出来事を1つ当てはめて書き出す
- 学業・部活動・アルバイト・職務経験から、自分から動き出した場面、立場の違う相手と進めた場面、時間をかけて伸ばしたことを、それぞれ1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- この記事の第1部に戻り、志望分野に近い名古屋市の事実を2つか3つ選び、資料を見ずに口頭で説明してみる
- 固有質問の対応表から材料を取り、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」の一続きの話に編み、声に出して練習する
優先順位に注意
ステップ5と6の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間が足りないときは、ステップ2と3、つまりエントリーシートに書く出来事の掘り起こしと、面接で語る場面を選び出す自己分析を先に片づけてください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、名古屋市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
名古屋市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
名古屋市の第1類(従来型)は、受ける区分によって面接の重さが変わる試験です。総配点3,000点のうち個別面接に置かれるのは、行政で1,200点、土木や建築などでは2,100点にのぼります。
しかも各段階で一つでも水準に届かない科目があれば、そこで採点は止まります。筆記を仕上げる時間と、面接で話す材料をそろえる時間は、どちらも早めに確保しておいてください。
エントリーシートに書いた一つの経験を、16区に分かれた大きな組織の中でどう活かすのか。そこまで説明できる状態になれば、名古屋市の面接で問われることの多くには、すでに答えが用意できているはずです。