本記事では、岡崎市職員採用試験の面接対策で必要な、岡崎市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

岡崎市役所の面接試験では、「なぜ岡崎市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。

岡崎市は、どんな職員を求めているかを短い一文にして公表している市です。その一文を読み飛ばしたまま準備を進めると、せっかくの手がかりを使わずに本番を迎えることになります。

本記事に並べた事実を材料にして、自分の経験と岡崎市政との接点を組み立て、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|自治体研究編

岡崎市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは岡崎市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 平成15年4月1日に中核市へ移行し、全国で31番目、愛知県内では3番目の中核市となった。移行に伴い岡崎市保健所が設置された。
  • 中核市について市は「地方自治法により定められた、政令で指定する人口20万人以上の都市」と説明している。
  • 人口は38万1,179人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。西三河地域の主要都市の一つ。
  • 市域は387.20平方キロメートルで、人口密度は約984人/平方キロメートル。豊川市・豊田市・安城市・西尾市・蒲郡市・新城市・額田郡幸田町の7市町と接する。
  • 徳川家康公の生誕地であり、令和6年9月14日に「岡崎市徳川家康公顕彰条例」を公布・施行した。
  • 同条例は、市が未来に語り伝えるべき偉業として「八丁味噌に見られる日本の伝統的な食文化の発達や、花火に見られる火薬の平和利用など」を挙げている。
  • 愛知県が地場産業に位置づける三河花火・三河がん具花火の産地の一つ。産地全体の製造・販売事業者は30社。
  • 市の花はフジとサクラ、市の木はミカワクロマツ。

(出典:中核市について|岡崎市/岡崎市徳川家康公顕彰条例|令和6年9月)

岡崎市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「岡崎市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、人口とその内訳、市域の広さ、市が持つ権限の範囲といった、志望動機を組み立てるときに前提となる項目を並べました。

項目内容
総人口381,179人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口9万5,654人(高齢化率25.1%)
75歳以上人口5万4,073人(総人口の14.2%)
総面積387.20km²
人口密度約984人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
市の位置づけ中核市(平成15年4月1日移行・全国31番目/県内3番目。岡崎市保健所を設置)
隣接自治体7市町(豊川市・豊田市・安城市・西尾市・蒲郡市・新城市・額田郡幸田町)
市役所所在地岡崎市十王町二丁目9番地

人口・65歳以上人口・75歳以上人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。中核市への移行年月日は岡崎市の公表資料によります。愛知県が公表する高齢化率などは国勢調査を基礎とする推計であり、住民基本台帳を基礎とする市の数値とは作り方が異なりますので、両者を並べて増減を論じることはできません。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

数字から考えられる市政課題

人口38万人という規模は、中核市の指定要件である20万人を大きく上回ります。市が保健所を持ち、保健・福祉の分野で自ら判断できる立場にあるのは、この規模があってのことです。

保健や衛生の分野を、県ではなく市の側で担っているという点は、志望理由を組み立てるときの土台になります。

年齢の内訳を見ると、令和8年1月1日現在で65歳以上が25.1%、75歳以上が14.2%です。65歳以上のうち半数以上がすでに75歳以上という構成で、いわゆる高齢化率の上昇よりも、医療や介護を実際に使う層の厚みが増している段階だと読めます。

387.20平方キロメートルの市域には市街地も中山間の地区も含まれますから、同じ支援策でも届きやすさが地区によって変わることになります。

たとえば面接では、岡崎市の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。

「岡崎市は38万人を超える市で、中核市として保健所も持っていると知りました。市民のうち7人に1人ほどが75歳以上だと聞きましたので、これから医療や介護を使う方がさらに増えていくと思います。市の判断で動かせる範囲が広い分、地域ごとの困りごとをきちんと拾って形にする仕事に関わりたいです」

岡崎市の経済・産業

愛知県の経済のなかでの位置

岡崎市が属する愛知県は、製造品出荷額等58兆218億円で全国1位(全国シェア約15.5%)。1977年に神奈川県を上回って以来、連続で1位を続けています。

県内総生産(名目)は43兆831億円(県民経済計算2022年度)、年間商品販売額は47兆5,903億円で全国3位、農業産出額は3,207億円で全国8位(令和5年)です(出典:愛知県の産業構造(2024年経済構造実態調査ほか))。

ものづくりと商業の両方で全国の上位にある県の中で、岡崎市は西三河の主要都市の一つとして位置しているという構図を、まず頭に置いておきましょう。産業振興の話題では、県全体の厚みを前提にしたうえで、市が担う部分をどう語るかが問われます。

歴史資源と観光

岡崎市の産業を語るとき、製造業と並んで外せないのが歴史資源です。市は徳川家康公の生誕地であり、令和6年9月14日に岡崎市徳川家康公顕彰条例を公布・施行しました。

条例は、市が未来に語り伝えるべき偉業として「八丁味噌に見られる日本の伝統的な食文化の発達や、花火に見られる火薬の平和利用など」を挙げています。歴史を観光の看板として掲げるだけでなく、条例という形で市の姿勢を明文化した点が、この市の特徴です。

ここで挙げられている二つが、どちらも観光名所ではなく産業だという点にも注目してください。味噌づくりも花火づくりも、原料の調達から製造、販売までを担う事業者がいて初めて成り立ちます。

歴史を語ることが、そのまま地域の事業者の話につながる構造になっているわけです。観光の話題を志望動機に使うなら、訪れる人の数ではなく、来訪者の消費が市内の事業者にどう回るかという角度で組み立てると、行政の仕事としての具体性が出ます。

三河の地場産業

条例が挙げる「花火」は、産業としても現に続いています。愛知県は三河花火・三河がん具花火を地場産業に位置づけており、産地は岡崎市のほか安城市、蒲郡市、豊川市、豊田市、稲沢市、豊橋市、額田郡幸田町、刈谷市、西尾市、名古屋市に広がります。

製造・販売事業者は30社。戦国期に軍事用だった火薬が、徳川家康が天下統一の後に地元三河での製造を特別に許可したことで、江戸期の和平のもと観賞用の花火へ転じたと県の資料は説明しています(参考:あいちの地場産業(三河花火・三河がん具花火)|愛知県)。

歴史と現在の産業が一本の線でつながる素材ですから、志望動機で歴史に触れるなら、ここまで押さえておくと話に厚みが出ます。

岡崎市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、岡崎市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

75歳以上が5万4千人を超える段階へ

令和8年1月1日現在で、65歳以上は9万5,654人(25.1%)、75歳以上は5万4,073人(14.2%)です。注目すべきは、65歳以上のうち半数以上が75歳以上だという内訳のほうでしょう。

医療や介護の利用が現実に始まる層が、市民のおよそ7人に1人にまで積み上がっているということです。中核市として保健所を持つ岡崎市は、この分野で県の判断を待たずに動ける立場にありますが、その分だけ市が自ら答えを出す場面も多くなります。

市域の広さと、地区ごとの事情の違い

387.20平方キロメートルの市域には、市街地から中山間の地区までが含まれます。人口密度は約984人/平方キロメートルですが、これは市全体をならした数字にすぎません。

同じ制度を用意しても、徒歩圏に施設がある地区と、車がなければ移動が難しい地区では、届き方がまったく違います。「市民」という言葉を一括りにせず、地区ごとの条件を想像できるかが、面接での話の解像度を左右します。

南海トラフ地震と、足元の直下型地震

県が公表した南海トラフ地震被害予測調査(過去地震最大モデル・マグニチュード8.9程度)の想定死者数は、早期避難率が低い場合で最大約5,300人。早期避難率が高く呼びかけがある場合には約2,900人まで下がるとされています。

建物の全壊・焼失は計約92,000棟です(出典:愛知県南海トラフ地震被害予測調査|2026年6月公表)。

これらは県全体を対象とした想定で、市ごとの内訳ではありませんので、面接で触れるときは県の調査の数字だと断ってください。

県はさらに、より規模の大きい理論上最大モデル(マグニチュード9を超える地震)について、濃尾平野・岡崎平野・豊橋平野を中心に液状化の危険度が極めて高いとも指摘しています。さらに、1945(昭和20)年1月13日の三河地震(マグニチュード6.8)では県内で死者2,306人・全壊家屋7,221棟の被害が出ており、県の伝承サイトは被害地域の一つとして岡崎市を挙げています(参考:愛知県の地震活動の特徴|地震調査研究推進本部)。

海溝型と直下型の両方に備えが要る土地だという理解が、防災の話題での出発点になります。

歴史資源を市の力にどう変えるか

家康公顕彰条例を持つ市として、歴史資源をどう活かすかは継続的な課題です。条例をつくること自体が目的ではなく、そこから観光や地域の商いへどうつなげるかが問われます。

条例が名指しした八丁味噌も花火も、担い手のいる産業です。作り手が高齢化すれば技術は途切れますし、来訪者が増えても消費が市内に落ちなければ事業者の体力は増えません。

この論点は、経済分野を志望する場合はもちろん、市民協働や文化の分野を志望する場合にも接続できます。

県全体の人口減少という外枠

愛知県の総人口は744万9,403人(令和7年国勢調査結果速報)。全国第4位の規模を保ちながらも、前回調査比で1.2%の減少となり、国勢調査としては1950年以降で初めて人口が減りました(出典:令和7年国勢調査結果速報(愛知県)|令和7年10月1日現在)。

県は人口問題を県全体に関わる重要な課題と位置づけています。中核市として一定の規模を持つ岡崎市であっても、働く世代や子育て世帯に選ばれ続けるための条件づくりは、他の政策と切り離せません。

重点政策|中核市20年と、家康公顕彰条例

岡崎市が現在どの分野に力を入れているかは、市が公表している最上位の計画と、その年度の予算に関する市の説明資料に記されています。ここでは、それらを読むときに前提となる岡崎市の立ち位置を、二つの角度から整理します。

中核市に移行して二十年余りという蓄積

岡崎市が中核市になったのは平成15年4月1日、全国で31番目、愛知県内では3番目でした。移行に伴って岡崎市保健所が設置されています。

保健所を二十年以上にわたり自前で運営してきた経験の蓄積は、感染症対策や食品衛生、母子保健といった分野での市の判断力に表れます。「なぜ県庁ではなく市役所なのか」を問われたとき、この事実は制度論を暗記しなくても語れる具体材料になります。

条例に書かれた市の姿勢

もう一つの角度が、令和6年9月に公布・施行された家康公顕彰条例です。条例が挙げる「八丁味噌に見られる日本の伝統的な食文化の発達」「花火に見られる火薬の平和利用」という表現からは、歴史を観光の材料としてだけでなく、市民が共有する物語として位置づけようとする姿勢が読み取れます。

市の計画や予算資料を開くときは、文化・観光の項目だけでなく、教育や市民協働の項目にもこの考え方が反映されていないかを見てみてください。

POINT|「家康公のまち」から先へ進む

岡崎市を志望する受験者の多くが歴史に触れます。差がつくのはその先です。「①歴史資源のどの部分に関心があるか → ②市の仕事として関われるのはどの場面か → ③人口38万人・高齢化率25.1%という市の条件とどうつながるか → ④自分の経験のどこが使えるか」の順に降ろしてみてください。

悪い例「家康公ゆかりの岡崎市で、歴史を活かしたまちづくりに携わりたいです」

改善例「岡崎市は家康公の顕彰条例をつくって、八丁味噌や花火といった地元の産業にも目を向けていると知りました。観光で来た方が市内のお店にも立ち寄るような流れをつくる仕事に関わりたいです。市民の4人に1人が65歳以上ですので、地元の方が続けてきたお店をどう残すかという話にもつながると思っています」

あわせて確認したい公式資料

下に挙げたのは、面接での発言に裏づけを持たせるための資料です。自分が話そうとしているテーマに近いものから開いてください。

  • 受ける区分の岡崎市職員採用候補者試験の受験案内(市の職員採用のページに掲載されています)
  • 岡崎市が公表している「求める職員像」のページ
  • 岡崎市の総合計画と、その年度の予算に関する市の説明資料
  • 岡崎市徳川家康公顕彰条例の本文(歴史・文化・観光を志望分野にする場合)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、岡崎市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。岡崎市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

岡崎市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

岡崎市役所の面接の概要

ここからは、岡崎市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

岡崎市役所の面接の流れ

岡崎市の採用試験のうち、選考の中身が受験案内で細かく示されているのは民間企業等職務経験者の区分です。令和8年度実施のこの区分では、第1次試験が録画面接試験のみ、第2次試験が性格検査(Web)・基礎能力試験・個人面接試験という構成になっています。最初の関門が筆記ではなく録画面接だという設計は、この区分の性格をよく表しています。

区分のちがいに注意

下の表は民間企業等職務経験者の区分の受験案内をまとめたものです。大学・短大等卒業程度をはじめとする他の区分は別の要項によりますので、段階構成や科目をそのまま自分の受験に当てはめないでください。

他の区分を受ける方は、表を「岡崎市は採用選考で何を確かめようとしているのか」を読み取る材料として使ってください。区分を問わず全員に効く手がかりは、このあとに扱う公表された職員像のほうにあります。

項目内容(令和8年度実施・民間企業等職務経験者の区分)
第1次試験録画面接試験のみ。パソコン、スマートフォン又はタブレットを使い、専用フォームから質問に対し動画で回答します
第2次試験性格検査(Web)、基礎能力試験、個人面接試験
基礎能力試験出題分野は「基礎的な語彙力と読解力及び論理的思考力と数的処理」。性格検査(Web)の受検後、テストセンター会場を受験者自身が予約して受験します
個人面接の会場岡崎市役所分館(十王町二丁目3番地)
受験上の注意「一つでも受験していない科目がある場合は、受験辞退として取り扱います」と明記されています
提出書類最終試験の合格者のみ、誓約書とともに職歴証明書・最終学校の卒業証明書・最終学校の成績証明書を提出します
併願の可否令和8年度に岡崎市が実施する他の職員採用候補者試験(令和9年4月採用の任期付職員採用候補者試験を除く)及び岡崎市民病院が実施する職員採用候補者試験との併願はできません
申込方法採用専用サイトから、エントリーフォームと録画面接用の動画を提出する方式

この区分でもう一つ押さえておきたいのが、試験成績の提供制度です。第1次試験の不合格者と第2次試験の不合格者は、本人の求めに応じて「総合順位」「総合得点」の提供を請求できます(請求期間は各試験の合格者発表の日から1か月間)。

各科目の配点そのものは受験案内に記載がありませんが、順位と得点が開示される仕組みがある点は、選考の透明性を考えるうえで知っておいて損はありません(出典:岡崎市職員採用候補者試験[民間企業等職務経験者]受験案内|令和8年度実施)。

なお、岡崎市が募集する職種は、事務職員(一般事務、臨床心理士・公認心理師、精神保健福祉士、学芸員)、技術職員(土木、建築、電気、化学、薬剤師、歯科衛生士、保健師)、消防職員、保育職員(一般選考、担任経験者特別選考)と幅があります(令和7年度実施)(出典:岡崎市職員採用候補者試験の職種|令和7年度実施)。

上記の段階構成・科目・提出書類は、岡崎市の令和8年度実施「民間企業等職務経験者」の受験案内にもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の受験案内をご確認ください。

岡崎市役所が求める人物像

岡崎市は、求める職員像を一文で公表しています。それが「自ら学び、自ら考え、自ら責任を持って市民のために行動する職員」です(令和8年度)(出典:岡崎市が求める職員像|令和8年度)。

短い文ですが、「自ら」が三度繰り返されている点に目を留めてください。学ぶ・考える・責任を持って行動するという三段階が、いずれも他人任せではなく自分の側から始まることを求めています。

この三つは、面接の場ではそれぞれ別の問いになって出てきます。学ぶ力は「知らないことにどう手をつけたか」、考える力は「なぜその方法を選んだのか」、責任を持って行動する力は「うまくいかなかったときに誰の判断で立て直したか」です。

自己PRで「主体性があります」と述べるだけでは、この三つのどれにも届きません。三つの段階が一つのエピソードの中でつながって見えるように話を組むのが、この市の職員像に沿った答え方です。

たとえば、次のように一つの出来事の中で三つが順に見えるようにすると、短い答えでも三段階が伝わります。

「アルバイト先で在庫の数がよく合わなくなったことがありました。原因が分からなかったので、まず一週間ぶんの記録を全部見返すところから始めました。曜日によってずれ方が違うと気づいたので、人手の多い日だけ確認の担当を決める形にしてみました。それでもずれが残ったときは、自分から店長に相談して、手順の紙を作り直させてもらいました」

知らないことに自分で手をつけた場面、理由があって方法を選んだ場面、うまくいかないときに自分の判断で立て直した場面が、同じ一つの話の中に順番に置かれています。三つの動詞を別々の自己PRに分けず、一本の出来事の中で示すのが、この市に向けた準備の要になります。

市が示したこの一文の外側に、規模から来る事情も添えておきます。人口38万人、市域387.20平方キロメートル、保健所を持つ中核市となると、市の課題は市役所の中だけでは片づきません。

福祉も防災も産業も、地域の団体や事業者、隣接する7市町と手分けをして進むことになります。ここから先は市が文章にしている範囲の外に出ますが、保健所を自前で抱える規模の市役所を当研究会が見てきたかぎりでは、こうした環境で自分の担当の外にいる相手と話を通しながら、手をつけられる単位まで課題を割っていく進め方に重みが置かれやすいところです。

公表された職員像の「自ら責任を持って行動する」という一節は、この現場感と重なります。

準備の話に戻します。先に見た民間企業等職務経験者の区分では、第1次試験が録画面接で、最終の合格後には職歴証明書や卒業証明書の提出が控えていました。

動画で話した内容と、書類に示される経歴と、面接での受け答えの三つが同じ人物の話として矛盾なくつながっていることが、いちばん確かな備えになります。

動画は何度でも撮り直せますが、そこだけ理想の受け答えに寄せてしまうと、後の個人面接や証明書との間に段差が生まれます。これは区分が変わっても同じで、申込のときに自分で書いて出した内容と、面接で口にする内容は、同じ材料から組んでおくのが安全です。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。岡崎市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日はどちらから来られましたか?事前に作り込んだ話し方が、その場のやり取りでも保てるかどうか
② 動機・志望民間企業ではなく行政を選んだ理由を教えてください「自ら学び、自ら考え」という職員像に照らして、志望が自分の側から始まっているか
③ 自己理解ご自身の弱みを一つ挙げてください弱みを認めたうえで、自分の責任として何を変えてきたかを言えるか
④ 経験・行動知らない分野の仕事を任されたとき、どう手をつけましたか?「自ら学び」の中身。手をつける順番と、調べた先での判断
⑤ 学業・経歴これまでの学び(職務経験)を説明してください事務職から技術職・保育職まで幅のある組織で、前提を共有しない相手に届く言葉になっているか
⑥ 適性・将来配属先の希望と、その理由を教えてください保健所を持つ中核市の業務範囲を、どこまで具体的に把握しているか
⑦ 公共性・社会性最近読んだ記事で印象に残ったものはありますか?関心の広さに加えて、市政のどの分野につながる話かを自分で結べるか

ここまでは、どの官公庁を受けても大枠が同じです。誰もが準備してくる範囲ですから、抜けがないことは前提になっても、それ以上の加点は望みにくいところです。

勝負どころは、この先の岡崎市固有の事情を踏まえた質問にあります。

合否を分けるのは「岡崎市役所ならでは」の質問

「なぜ愛知県庁ではなく、岡崎市役所なのですか?」
「岡崎市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

1問目には、岡崎市ならではの答え方があります。平成15年から保健所を自前で運営してきた市ですから、県が広域で担う役割と市が現場で担う役割の違いを、実在する組織の話として説明できるからです。

2問目で差がつくのは、魅力と課題を別々のものとして並べないことです。岡崎市の場合、魅力に挙げやすい歴史資源は、作り手が高齢化すれば技術が途切れる、来訪者が増えても消費が市内に落ちなければ事業者の体力は増えないという課題と地続きになっています。

魅力の裏側に課題がある形で結ぶと、二つを言い当てただけの答えより一段深く聞こえます。

どちらの質問も市の実情を知らなければその場では答えようがありませんが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「岡崎市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい岡崎市の事実答え方のヒント
なぜ県庁ではなく市役所か平成15年4月1日に中核市へ移行(全国31番目・県内3番目)し、岡崎市保健所を設置。二十年以上、保健・福祉の事務を市として担ってきた保健所という実在する組織を挙げ、県が広域で持つ役割と市が現場で持つ役割を、自分の関心分野に引き寄せて対比させます
市の人口構成人口38万1,179人、高齢化率25.1%、75歳以上14.2%(令和8年1月1日現在)。65歳以上の半数以上が75歳以上率ではなく内訳を語ると、これから何の需要が伸びるかという話に自然に進みます
岡崎市の魅力徳川家康公の生誕地。令和6年9月14日に家康公顕彰条例を公布・施行し、八丁味噌や花火を市が語り継ぐ偉業として挙げている史跡の紹介で終えず、条例にまでした市の姿勢に触れると、観光の話が行政の話になります
産業の広がり三河花火・三河がん具花火の産地の一つ。産地全体の製造・販売事業者は30社で、火薬の平和利用という歴史的経緯がある歴史と現在の産業をつなげて話すと、志望動機が思いつきではないことが伝わります
防災県は理論上最大モデルで岡崎平野を中心に液状化の危険度が極めて高いと指摘。1945年の三河地震の被害地域にも岡崎市が挙がる海溝型と直下型の両方に触れたうえで、市民の一人として何ができるかまで一続きで述べます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、前述の「求める職員像」の一文に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。岡崎市の場合、公表された職員像の三つの動詞がそのまま観点になります。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
自ら学ぶ知らないことに出会ったとき、誰かの指示を待たずに手をつけた場面があるか直近で自分から調べ始めた事柄を一つ選び、最初に開いた資料と、そこから何を変えたかまで書き出しておく
自ら考える選んだ方法の理由を、他の選択肢と比べながら説明できるか採らなかった案も一つ用意しておく。比較があると、考えた過程が言葉になる
自ら責任を持って行動するうまくいかなかった場面で、誰の判断として立て直したか失敗を隠さずに話せる題材を選ぶ。区分によっては最終合格後に職歴や学歴の証明書を出すので、経歴と食い違わない事実で組む

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。録画面接のある区分では、動画で述べた内容について後の面接で理由を尋ねられることも考えられます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 受ける区分の受験案内を入手し、段階構成・科目・提出書類・併願の可否を自分の目で確認する
  2. 市が公表している「求める職員像」の一文を書き写し、三つの動詞が一つの出来事の中で順に見えるエピソードを1本つくる
  3. 高校・大学生活や職務の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイト・職歴から、話せる具体例を1つずつ用意する
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. この記事の第1部を読み返し、固有質問の対応表から材料を選んで「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2とステップ3、つまり公表された職員像に自分の経験を当てはめる作業を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、岡崎市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

岡崎市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

岡崎市役所の想定問答集を見る

さいごに

岡崎市は、求める職員像を「自ら学び、自ら考え、自ら責任を持って市民のために行動する職員」という一文で示しています。面接の準備とは、この一文に自分の過去を当てはめる作業にほかなりません。

学んだ場面、考えた場面、責任を引き受けた場面。三つとも、誰にでも一つや二つはあるはずです。

それを思い出して言葉にしておけば、本番で聞かれる順序が変わっても、話す材料が尽きることはありません。