本記事では、一宮市職員採用試験の面接対策で必要な、一宮市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
一宮市役所の面接試験では、「なぜ一宮市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。一宮市は職員候補者試験を春・夏・秋の3回に分けて実施しているため、どの回で受けるかを決めるところが対策の出発点になります。
読み進めながら、自分のこれまでの経験のどこが一宮市政と噛み合うのかを、手元にメモしていってください。
第1部|自治体研究編
一宮市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは一宮市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 2021年4月に中核市へ移行し、市が自ら保健所を設置しています。市の説明では、保健衛生や福祉、環境の分野で愛知県が担っていた多くの仕事が市へ移りました。
- 人口は374,964人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。愛知県内の市では、名古屋市・豊田市・岡崎市に次ぐ規模です。
- 市域は113.82km²。西は木曽川をはさんで岐阜県と向かい合い、県内では稲沢市・江南市・岩倉市・清須市・北名古屋市と、県外では岐阜県の羽島市・各務原市・笠松町・岐南町に接しています。
- 一宮市を含む濃尾平野一帯は、毛織物の一大産地「尾州(びしゅう)」と呼ばれ、イギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラとともに世界三大毛織物産地に数えられます。
- 綿織物から毛織物への転換が進んだのは1891年の濃尾地震のあとから大正時代にかけてで、戦後の1950年代には「ガチャマン景気」と呼ばれる隆盛期を迎えました。
- 65歳以上の割合は27.6%、75歳以上は16.9%。いずれも愛知県全体の25.5%・15.2%を上回ります(同じ住民基本台帳)。
- 職員候補者試験は春・夏・秋の年3回。春試験に申し込んだ人は、同じ職種で夏試験・秋試験に申し込むことができません。
- 一般事務の第1次試験は、SPI検査と筆記試験のどちらかを受験者が選ぶ方式です。両方を併願することはできません。
- 市の花はキキョウ、市の木はハナミズキ。市役所は一宮市本町2丁目5番6号にあります。
一宮市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「一宮市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口規模、年齢構成、市域の広さ、行政上の位置づけなど、一宮市政を説明するときに手元にあると効く項目をまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 374,964人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳) |
| 65歳以上の人口 | 103,604人(27.6%。愛知県全体は25.5%) |
| 75歳以上の人口 | 63,339人(16.9%。愛知県全体は15.2%) |
| 総面積 | 113.82km² |
| 行政上の位置づけ | 中核市(2021年4月1日移行)。市が保健所を設置 |
| 県内の隣接自治体 | 稲沢市・江南市・岩倉市・清須市・北名古屋市 |
| 県外の隣接自治体 | 岐阜県羽島市・各務原市・笠松町・岐南町 |
| 市役所所在地 | 一宮市本町2丁目5番6号 |
| 市の花・市の木 | キキョウ・ハナミズキ |
総人口と65歳以上・75歳以上の人口および割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。割合の分母にも同じ統計の総人口を用いており、並記した愛知県全体の割合も同じ統計にもとづきます。国勢調査を基準とする県の推計人口とは調査の性質が異なるため、直接の比較はできません。総面積・隣接自治体・市役所所在地・市の花と木は公表値をもとに整理しています。
数字から考えられる市政課題
一宮市の65歳以上は10万3,604人で、割合にすると27.6%です。愛知県全体の25.5%を2.1ポイント上回り、75歳以上の16.9%も県の15.2%を1.7ポイント超えています(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)。
県内で4番目に大きい市でありながら、年齢構成は県平均より高齢側に寄っています。つまり一宮市は、県全体より一歩先に高齢化が進んでいる37万人都市だという理解が出発点になります。
ここに中核市という条件が重なります。保健所を市が持つということは、感染症対策、母子保健、精神保健、食品衛生、環境衛生といった分野の窓口が市役所の側にあるということです。
高齢化の進み方と、それに対応する保健衛生の権限が、同じ市の中でそろっているのが一宮市の形です。面接で市の現状を説明するときは、この2つを別々に話すより、つないで話すほうが伝わります。
一宮市の経済・産業
尾州という産地の重み
一宮市を語るうえで外せないのが、毛織物産地としての歴史です。市は自らの地域の特徴として、一宮市など濃尾平野一帯が「尾州」と呼ばれる毛織物の一大産地であり、イギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラとともに世界三大毛織物産地に数えられると説明しています。
1891年の濃尾地震のあとから大正時代にかけて綿織物から毛織物への転換が進み、第二次世界大戦後の1950年代には「ガチャマン景気」と呼ばれる隆盛期を迎えました(出典:一宮市域の特徴)。世界の産地名と並べて自分を説明する市である以上、産業振興の話題では、この看板をどう次の世代へ渡すかという問いが必ず後ろに控えています。
愛知県のものづくりという土台
市単体の産業統計に入る前に、県の輪郭を押さえておくと説明が安定します。愛知県の製造品出荷額等は58兆218億円で全国1位、全国シェアはおよそ15.5%にのぼります。
1977年に神奈川県を追い越して以来、この位置を保ち続けてきました。県内総生産(名目)は43兆831億円です(出典:愛知県の産業構造|2024年経済構造実態調査・県民経済計算2022年度)。
自動車を軸とする巨大な製造業圏の一角に、繊維という別系統の産地が組み込まれている点が、一宮市の産業の位置づけです。就職先の選択肢が県内に厚くあるという条件は、若い世代の定着を考えるうえで有利にも不利にも働きます。
木曽川をはさんだ岐阜県との近さ
一宮市は市域の西側で岐阜県と接し、羽島市・各務原市・笠松町・岐南町と隣り合っています。県境をまたいだ通勤や買い物が日常的に成り立つ位置です。
愛知県の人口動向を見ると、令和7年の1年間で転入40万3,559人に対し転出37万4,647人、県外からは2万9,429人の転入超過となっており、4年連続の社会増が続いています(出典:愛知県人口動向調査 年報|令和7年)。人が集まる県の中で、名古屋市への通勤圏でもあり岐阜県側とも往来がある市として、住む場所として選ばれ続けられるか。
面接で定住や移住の話題に触れるなら、この立地条件から入ると具体的になります。
一宮市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、一宮市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
県より一歩先に進む高齢化
令和8年1月1日現在の住民基本台帳で見た65歳以上27.6%、75歳以上16.9%という数字は、愛知県全体をそれぞれ2.1ポイント・1.7ポイント上回ります。10万人を超える高齢の市民が暮らし、そのうち6割強が75歳以上という構成です。
介護や医療の需要が集中する75歳以上の層が、すでに6万3千人規模で存在していることが、一宮市の福祉行政の前提になります。人数が多いということは、制度の運用ひとつで影響を受ける市民の数も多いということです。
中核市として引き受けた保健・福祉・環境の事務
2021年4月の中核市移行により、保健衛生や福祉、環境の分野で県が担っていた多くの事務が市へ移り、市は保健所を開設しました(出典:中核市「一宮市」(一宮市))。権限が増えることは、市民に近い場所で判断できるようになる一方で、専門職の確保と育成、県との役割分担の再整理という宿題を同時に抱え込むことでもあります。
移行から数年が経ち、制度を動かす段階から、成果で語る段階へ移りつつある時期だといえます。志望動機で中核市に触れるなら、移行したという事実の紹介で止めず、そこで何ができるようになったのかまで進めてください。
濃尾平野の地盤と南海トラフ地震
愛知県の南海トラフ地震被害予測調査(過去地震最大モデル、マグニチュード8.9程度)では、県内の死者数は早期避難率が低い場合で最大約5,300人、早期避難率が高く呼びかけがある場合は約2,900人と想定されています。建物の全壊・焼失は計約92,000棟、避難者は1週間後で最大約158万人という規模です。
さらに理論上最大モデルでは、濃尾平野を中心に液状化の危険度が極めて高いと評価されています(出典:愛知県南海トラフ地震被害予測調査|令和8年6月公表)。一宮市が立地するのは、まさにその濃尾平野です。
防災を語るなら、揺れそのものより、地盤と、木曽川に沿う低平地という条件から話を起こしましょう。
産地の看板をどう次につなぐか
尾州は世界の産地と並び称される歴史を持ちますが、繊維産業全体が国内で縮小してきた流れの中にあることも事実です。市が公式サイトで産地の由来を丁寧に説明しているのは、この歴史が市民の共通の記憶であり、同時に手放したくない資産だからでしょう。
産業振興、観光、シティプロモーション、教育のどの分野を志望するにしても、尾州をどう語り直すかという問いは避けて通れません。「伝統がある」で終わる説明と、誰に向けてどう届けるかまで踏み込んだ説明では、面接での印象がはっきり分かれます。
県全体が減少局面に入ったこと
令和7年国勢調査結果速報によると、愛知県の総人口は744万9,403人で全国第4位ですが、前回調査から1.2%減少し、1950年以降の国勢調査結果としては初めての減少となりました(出典:令和7年国勢調査結果速報(愛知県))。県は人口問題を県全体に関わる重要な課題と位置づけ、人口問題対策プランを含む総合戦略を策定しています。
製造品出荷額で全国1位を続けてきた県ですら人口が減り始めたという事実は、市の施策を「増やす」前提から「限られた資源をどこへ振り向けるか」の判断へ切り替える必要を意味します。
重点政策|中核市として広がった市の仕事
一宮市の総合計画と、その年度の予算方針については、市公式サイトに掲載されている最新版で内容を確かめてください。年度が替われば重点も変わるためです。ここでは、その計画を読むときの下地として、市が自分をどう位置づけているかと、愛知県という政策環境の側から整理します。
中核市移行が変えたもの
一宮市は2021年4月1日に中核市へ移行しました。市の公式ページは「2021年4月1日スタート!中核市『一宮市』」という表題を掲げ、保健衛生や福祉、環境分野などの多くの仕事が県から市へ移ったことと、保健所の開所を伝えています。
同じ規模の市の中で、保健所を自前で持つかどうかは仕事の幅を大きく変える条件です。感染症への対応、飲食店の営業許可、動物愛護、精神保健の相談といった業務が、県の出先ではなく市役所の仕事になります。
志望分野が福祉や環境、健康づくりであれば、この点は必ず押さえておきましょう。
愛知県という政策環境
市の施策は県の動きと無関係ではいられません。愛知県は令和7年度予算の重点施策としてリニア中央新幹線の開業を見据えた「リニア大交流圏」の形成を掲げ、2026年9月19日から10月4日にかけては第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)が開催されます。
県全体に人の流れが生まれる局面で、名古屋市の北西に位置する37万人の市がどう関わるかは、地域振興の話題で使える視点です。大会そのものを志望動機にする必要はありませんが、市外から人が動く時期に市が何を用意するのか、という問いの立て方は面接で効きます。
POINT|産地の話を、いまの市民の暮らしに着地させる
尾州は一宮市の志望動機で最も選ばれやすい題材です。だからこそ、歴史の紹介で止まると他の受験者と区別がつきません。「①この産地が市に残したものは何か → ②いま困っているのは誰か → ③市が打てる手は何か → ④県や民間ではなく市が担う理由 → ⑤自分の経験のどこが使えるか」の順に降ろしてみてください。
悪い例「一宮市は繊維の伝統があるまちなので、その魅力を発信する仕事がしたいです」
改善例「一宮市が世界三大毛織物産地のひとつだと知って驚きました。ただ、私と同世代でそれを知っている人は少ないと思います。まずは市の広報や商工の仕事を覚えながら、地元の事業者の方と一緒に、若い世代が生地に触れられる機会をつくる仕事に関わっていきたいです」
あわせて確認したい公式資料
下の4点は、志望動機の材料としても、面接での受け答えの裏づけとしても使えます。受ける回と職種が決まったら、上から順に手を付けてください。
- 受験する回(春・夏・秋)の一宮市職員候補者試験 募集案内
- 一宮市の総合計画と、その年度の予算に関する市の説明資料(いずれも最新版)
- 中核市移行について市が公表しているページ(移譲された事務の範囲がわかります)
- 愛知県の人口動向調査と南海トラフ地震被害予測調査(県の前提を押さえるため)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、一宮市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。一宮市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
一宮市役所の面接の概要
ここからは、一宮市役所の試験の形と質問の全体像を、市が公表している募集案内および採用ウェブサイトと、当研究会の分析にもとづいて整理します。
一宮市役所の面接の流れ
一宮市の試験でまず確認すべきは、自分がどの回のどの職種で受けるかです。回によって募集職種が変わり、職種によって第1次試験の科目が違います。そして第2次試験と第3次試験の両方に面接が置かれている点が、この市の試験の性格をよく表しています。
| 項目 | 内容(2026年度採用・春試験ほか) |
|---|---|
| 実施回数 | 職員候補者試験は春・夏・秋の年3回。春試験に受験申込をした人は、同一職種で夏試験・秋試験に申し込めません |
| 試験の段階 | 第1次試験・第2次試験・第3次試験の3段階 |
| 第1次試験(一般事務) | SPI検査(性格検査及び基礎能力検査。テストセンター会場・オンライン会場)または筆記試験(一般教養)のいずれかを申込時に選択。両方の併願はできません |
| 第1次試験(一般事務以外) | 一般事務(障害者)・消防・消防(救急救命士)は筆記試験(一般教養)、土木・保育士は筆記試験(専門科目) |
| 第2次試験(一般事務・一般事務(障害者)・土木・学芸員) | 小論文、適性検査、事務適性試験、面接 |
| 第2次試験(消防・消防(救急救命士)) | 小論文、適性検査、体力測定、面接 |
| 第2次試験(保育士) | 小論文、適性検査、保育実践 |
| 第3次試験(全職種) | 面接。土木(実務経験者)はプレゼンテーション(面接含む) |
| 面接の形式 | 個別か集団かの別、集団討論の有無は、募集案内にも採用フローのページにも記載がありません |
| 配点 | 各試験種目の配点と人物試験の比重は公表されていません |
| 結果の通知 | 各試験の不合格者には、総合得点および総合順位が合否通知とあわせて通知されます |
| 申込 | 一宮市職員採用ウェブサイトの採用情報ページから。所管は総務部人事課 |
配点が公表されていないため、人物試験の比重を数字で語ることはできません。ただ、一般事務の場合、第2次試験で小論文と適性検査と事務適性試験と面接を受け、第3次試験でもう一度面接を受けるという事実は動きません。
選考の後半は人物を見る場が連続する設計だと読んでおけば、準備の重心を外しません。不合格者に総合得点と総合順位が通知される点も特徴で、受験者が自分の位置を確かめられる運用になっています。
上記の試験構成は、一宮市が公表した2026(令和8)年度採用 春試験の募集案内および市の職員採用ウェブサイトの採用フローにもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験する回、職種によって異なる可能性があります(出典:2026年度採用 一宮市職員候補者試験(春試験)募集案内/一宮市職員採用ウェブサイト 採用フロー)。受験の際は、必ずご自身の職種と回の最新の試験情報をご確認ください。
一宮市役所が求める人物像
一宮市の2026年度採用 春試験の募集案内と、市の職員採用ウェブサイトの採用フローのページには、「求める人物像」として定型化された箇条書きは掲載されていません。市が公表しているのは、試験の段階と科目、申込の方法、結果の通知の仕方といった手続の情報です。
以下は、募集案内に書かれていることの外側です。人口37万人の市が保健所まで自前で持ち、事務・土木・学芸員・保育士・消防という職種を年3回に分けて採用しているという条件から、当研究会が組み立てた見立てとして読んでください。
この規模の市になると、市役所だけで完結する課題はほとんどありません。高齢化は医療機関や介護事業者と、産地の再生は事業者や組合と、防災は自治会や近隣市町と組まなければ動かないためです。
となると、立場の違う相手と話をまとめ、その場で決まったことを実行できる形まで落とせる人への需要が高くなるはずです。第2次試験に小論文と事務適性試験が並び、第3次試験でもう一度面接があるという構成も、考えを文章にする力と、それを口頭で説明し直す力の両方を見ようとしていると読めます。
一宮市を受けるなら、これまでに人を巻き込んで何かを形にした経験をいくつか思い出したうえで、37万人規模の市役所の仕事に照らしてどれを前に出すかを決めておく作業が、準備の中心になります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。一宮市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | ここまでは、どのように来られましたか | 小論文や適性検査と同じ段階に置かれた面接でも、会話のトーンを保てるかどうか |
| ② 動機・志望 | 春・夏・秋のうち、この回を選んだ理由はありますか | 同一職種で回をまたげない試験で、いつ受けるかを自分で決めた筋道 |
| ③ 自己理解 | あなたの短所を教えてください | 自分を客観的に見たうえで、その扱い方まで言葉にできるか |
| ④ 経験・行動 | 複数の人を巻き込んで進めた経験を教えてください | 関係者と組まなければ動かない仕事が多い市で働けるかどうか |
| ⑤ 学業・経歴 | 学んできたことを、専門外の人に説明してみてください | 小論文で書いた内容を口頭で言い直せる、翻訳の力 |
| ⑥ 適性・将来 | 保健所や福祉の部署へ配属されたらどう働きますか | 中核市になって広がった仕事の範囲を理解しているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近気になった地域の話題は何ですか | 市民として地域を見ている視線と、それを短く述べる力 |
ただ、この表に並ぶ質問は、受ける先が一宮市でなくてもほとんど同じ形で登場します。対策の量で差はついても、内容そのもので抜きん出るのは難しい領域です。差がつくのは次に挙げる質問のほうです。
合否を分けるのは「一宮市役所ならでは」の質問
とくに1問目は、中核市である一宮市では答えに深みを出しやすい質問です。県が担っていた仕事の一部が実際に市へ移っているため、県と市の違いを制度の言葉ではなく、市の実例で語れるからです。
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「一宮市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい一宮市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 2021年4月に中核市へ移行し、保健衛生・福祉・環境分野の多くの事務が県から市へ移った。保健所も市が設置している | 移譲された分野のうち、自分が関心を持てるものを一つ挙げ、県の窓口ではなく市の窓口で扱われることの意味を自分の言葉にしてください |
| 人口構成の位置 | 65歳以上27.6%、75歳以上16.9%で、いずれも愛知県全体の25.5%・15.2%を上回る(令和8年1月1日現在の住民基本台帳) | 県内4番目の規模なのに高齢化は県平均より進んでいる、という組み合わせで話すと、数字を並べただけの説明になりません |
| 市の魅力 | 一宮市を含む濃尾平野一帯が毛織物の一大産地「尾州」と呼ばれる。イギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラと並ぶ世界三大毛織物産地とされる | 産地の由来を市の公式説明で確かめ、いま誰に届いていないのかという課題意識まで添えると、魅力と課題の両方に答えられます |
| 防災 | 県の被害予測で、理論上最大モデルでは濃尾平野を中心に液状化の危険度が極めて高いとされる。県全体の避難者は最大約158万人と想定 | 揺れの大きさではなく、平野の地盤という条件から入ると、一宮市に即した防災の話になります |
| 県境という立地 | 木曽川をはさんで岐阜県の羽島市・各務原市・笠松町・岐南町と接する。愛知県は県外から2万9,429人の転入超過(令和7年) | 通勤や買い物で県境をまたぐ暮らしを前提に、住む場所として選ばれ続けるために市が何をするかへ話を運びましょう |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
一宮市の場合、第2次試験に小論文と事務適性試験と面接が置かれ、第3次試験でもう一度面接があるため、同じ人物を書く場面と話す場面の両方から見る構成になっています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 書いたことと話すことの一貫性 | 第2次試験は小論文と面接を同じ段階で課します。文章で示した考えを、口頭でも同じ筋で説明できるか | 志望分野のテーマを一つ決め、800字程度で書いたうえで、その要旨を1分で話す練習をセットで行ってください |
| 関係者を巻き込む力 | 市役所だけで完結しない課題について、誰と組んで進めるかを考えられるか | 部活動やアルバイトで、立場の違う人の間に立って調整した場面を一つ選び、そこで自分が何を言ったかまで思い出しておきましょう |
| 広がった仕事の範囲への構え | 中核市として市が扱う分野の広さを理解したうえで、配属を選べない前提を受け止めているか | 保健所や環境の分野など、志望と違う部署に配属されたときに何を手がかりに仕事を覚えるか、自分なりの答えを用意しておきましょう |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 春・夏・秋のどの回で、どの職種を受けるかを決める。同一職種では回をまたいで申し込めないため、ここが最初の分岐になる
- 一般事務ならSPI検査と筆記試験のどちらで受けるかを決め、募集案内で自分の職種の第1次から第3次までの科目をすべて書き出す
- これまでの経験を学業・課外活動・アルバイト・地域の活動に分けて棚卸しし、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 小論文で書きそうなテーマを一つ選び、書く形と話す形の両方で表現する。話した後は、掘られたときの返し方を書き足していく
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ3の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、一宮市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
一宮市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
一宮市の試験は、年3回のうちどの回を選ぶかで準備の期間が変わり、一般事務ではSPI検査か筆記試験かという選択も自分で決めることになります。決めきらないまま申し込むと、対策が散ります。
回と職種と第1次試験の方式を先に固めてしまいましょう。そのうえで、世界の産地と並べて語られる歴史を持ちながら、県平均より先に高齢化が進む37万人の市で、自分は何を引き受けたいのか。
小論文で書く言葉と、面接で話す言葉が同じ方向を向いていれば、第2次と第3次の2回の面接は、むしろ自分を伝える機会が2度あるということです。