中津市消防本部を受験する方に向けて、面接で問われる前提となる組織研究の材料(本部の特徴・基礎データ・管轄地域の災害リスク・消防課題・重点方針)と、面接本番の流れ・想定される質問・評価の観点を、1ページに整理しました。

中津市消防本部の面接試験では、「なぜ警察官や自衛官ではなく消防官なのか」「なぜ中津市消防本部を志望したのか」「自分の強みや経験を消防の仕事でどう活かしたいか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。管轄地域の災害リスクや採用試験の仕組みを知っておくことで、どの消防本部にも当てはまる一般論を避け、中津に固有の事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と中津市消防本部の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。特に人口8万人規模の市域を少人数の体制で担う本部の場合、大都市の消防局とは異なる視点での準備が求められます。

第1部|組織研究編

中津市消防本部の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは中津市消防本部の全体像を把握しておきましょう(時間のない方はここだけでもチェック)。設置形態・規模・広域体制の3点を軸に整理しています。

  • 中津市消防本部は、人口約8.1万人の中津市を単独で管轄する市直営の消防本部である。一部事務組合や広域連合ではなく、他市町村からの受託・事務委託の記載もない。
  • 現場と本部を支える消防吏員は129人で、うち女性は3人である(令和7年4月1日現在)。
  • 令和6年中の出動件数は、火災37件・救急4,887件・救助65件である。
  • 消防士・救急救命士は、中津市職員採用試験(秋試験)の募集職種の一つとして市が自ら募集し、消防は市が直営で所管している。
  • 119番通報を受信する消防指令業務は大分市の「おおいた消防指令センター」に事務委託し、現場への出動は従来どおり中津市消防本部が担うという二層構造になっている。
  • 管内には日本新三景・国名勝・日本遺産に指定される耶馬溪があり、平成30年には耶馬溪町金吉で降雨のない山地崩壊が発生した経緯を踏まえた防災体制が求められている。
  • ダイハツ九州株式会社の本社・大分(中津)工場が市内に立地しており、地域の産業拠点としての性格も持つ。海上輸送に適した立地として2004年に本社機能・本社工場が移転してきた経緯がある。
  • 消防士・救急救命士の令和8年度秋試験の採用予定数は2人程度で、募集の規模は小さい。

中津市消防本部の基礎データ

面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「中津市消防本部の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

下の表には、中津市の人口規模と、それを支える消防吏員の体制・出動件数を集めています。

項目内容
管内人口81,132人(高齢化率31.4%・75歳以上率18.0%)(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
消防吏員数129人(うち女性3人)(令和7年4月1日現在)
火災出動件数37件(令和6年中)
救急出動件数4,887件(令和6年中)
救助出動件数65件(令和6年中)
119番受信体制大分市「おおいた消防指令センター」へ事務委託(令和6年10月1日本格運用)

管内人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在、消防吏員数・出動件数は総務省消防庁が公表する全国の消防本部のデータによります。

数字から考えられる中津消防の課題

出動の内訳を並べると、中津の消防が日々どこに力を割いているかが見えてきます。火災37件・救助65件に対し、救急出動は4,887件で、火災と救助を合わせた102件のおよそ48倍にのぼります。

消火や救助が消防の代表的な仕事である一方、実際の出動の大半は救急が占めているという構図を、業務理解の前提として押さえておきましょう。

また、中津市の高齢化率は31.4%、75歳以上率は18.0%(いずれも住民基本台帳・令和8年1月1日現在)です。高齢化の進み具合は救急需要の水準とも関わりが深く、出動件数の話をこの人口構成と結び付けられると、説明に厚みが出ます。

人口8万人規模の市域を129人の吏員で支えている点も、体制の規模感として押さえておきたいところです。

「中津市消防本部では、令和6年中の救急出動が約4,900件にのぼり、火災や救助の件数を大きく上回ると聞きました。高齢化率が3割を超えていることを踏まえると、今後も救急対応の比重は高い状態が続くのではと感じています」

管轄地域の特性と災害リスク

管轄地域の全体像

  • 中津市は大分県の北端に位置し、日本新三景・国名勝・日本遺産に指定される耶馬溪を市域に持つ。
  • 市内にはダイハツ九州株式会社の本社・大分(中津)工場が立地する(2004年に本社機能・本社工場を移転)。海上輸送に適した立地条件が移転の背景にある。
  • 管轄区域は中津市のみで、山間部の耶馬溪地域と市街地部・臨海部の双方を単独の本部でカバーする体制である。

つまり中津市消防本部は、耶馬溪の山地災害リスクと南海トラフ地震による津波リスクの両方に向き合う本部だと整理できます。山間部特有の土砂災害と、沿岸部にも及ぶ地震・津波の想定が同居している点は、面積の限られた単独本部としては押さえておきたい特徴です。

どちらのリスクを軸に管轄理解を語るかで、志望動機の説得力は変わってきます。

耶馬溪の山地災害

平成30年4月11日午前3時50分ごろ、中津市耶馬溪町金吉で、降雨のない中で幅約200mの山地崩壊が発生しました。(出典:平成30年4月11日中津市耶馬溪町金吉地区の土砂災害|国土交通省(平成30年4月11日発生))

大分県は検証委員会を設置し、治山・復旧事業を実施してきました。(出典:中津市耶馬溪町金吉地区の山地災害|大分県)

地震や台風による降雨がない中で発生した崩壊であり、地質・地形に起因する災害としての備えが求められています。

南海トラフ地震のリスク

内閣府の南海トラフ巨大地震の新想定(令和7年3月31日公表)では、中津市の最大津波高は4mとされています(大分県内の最大値は佐伯市の14m)。

降雨のない山地崩壊という実績と、津波という想定の両面を押さえておくと、管轄地域への理解として説得力が増します。(出典:南海トラフ巨大地震の被害想定|内閣府(令和7年3月31日公表))

中津市の主な消防課題

ここまでの数字と地域の姿を踏まえると、中津市消防本部が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「消防の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

救急需要への対応

全国の救急出動は令和6年中に771万8,380件へ達し、昭和38年に統計を取り始めてから最も多い水準となりました。

中津市消防本部の4,887件(令和6年中)を吏員129人で割ると1人あたり約38件にあたり、火災・救助と比べて桁違いに多い件数を限られた人員でこなしているのが実情です。(出典:令和7年版 救急・救助の現況|総務省消防庁)

大規模災害への備え

耶馬溪町金吉の山地崩壊(平成30年発生)と南海トラフ地震の津波想定(最大4m)という性格の異なる二つのリスクを抱える中津市消防本部では、単独本部の手に余る規模の災害が起きたときにどう連携するかが問われます。

地方自治法第252条の14に定める事務の委託により、大分県内14消防局・本部の消防指令業務は共同運用へ移行しており、中津市消防本部は委託する側として119番受信を大分市に委ね、現場対応は自らの本部で担う立場にあります。(出典:市町村消防指令業務の共同運用について|大分県)

予防・住宅防火と救命講習

中津市消防署は、水火災の警戒防御・鎮圧、救急・救助業務、火災原因調査に加えて、演習・消防訓練の指導、防火教育、救命講習といった予防面の業務も担っています。消火や救助の件数だけでなく、こうした啓発の積み重ねが火災の未然防止につながっている点も、業務理解として押さえておきましょう。

火災出動が37件(令和6年中)にとどまっている背景には、日頃の予防・啓発活動の積み重ねがあるという見方もできます。(出典:中津市消防署|中津市)

人材確保と女性吏員の活躍

消防吏員129人のうち女性は3人で、割合は約2.3%にとどまります(令和7年4月1日現在)。

全国では消防吏員168,230人中女性6,386人・約3.8%(令和7年4月1日現在)で、国は「令和8年度当初までに5%」を目標に掲げています。

中津市消防本部の採用予定数は2人程度と少人数であり、性別を問わず多様な人材をどう確保していくかは、これから消防に入る受験者自身にも関わるテーマです。(出典:女性消防吏員の活躍推進|消防庁)

広域応援体制への理解

129人という限られた人員で管内をカバーする中津市消防本部にとって、単独の本部だけでは対応しきれない規模の災害が起きたときの備えも欠かせません。

全国的には、阪神・淡路大震災を教訓に平成7年9月に創設された緊急消防援助隊が、全国の消防本部の約99%にあたる718本部(6,661隊・令和6年4月1日現在)が登録されており、能登半島地震をはじめとする大規模災害で県境を越えた応援を重ねてきました。

中津市消防本部のような単独の中規模本部にとっても、こうした広域応援の仕組みの存在を理解しておくことは、大規模災害への備えを語るうえでの土台になります。(出典:令和6年版 消防白書|総務省消防庁)

重点方針|消防指令業務の広域化

中津市消防本部が独自に掲げる運営方針や重点目標は、公表資料の中で当研究会が特定できませんでした。そこで押さえておきたいのが、大分県内14の消防局・本部が足並みをそろえて進めてきた消防指令業務の広域化です。

中心にあるのは「おおいた消防指令センター」で、令和2年3月30日に知事と県内市町村長が全県エリアでの共同運用開始を目指すことに合意したことを起点に、令和4年7月に整備事業へ着手し、令和6年7月からの試験運用を経て令和6年10月1日に本格運用が始まりました。(出典:市町村消防指令業務の共同運用開始記念式典|豊後大野市(令和6年10月1日本格運用開始))

二層構造の指令体制

運営方式は地方自治法第252条の14に定める大分市への「事務の委託」で、中津市消防本部は指令業務を大分市へ委託する側にあたります。119番通報の受信・指令は大分市が一括して担いますが、現場への出動は従来どおり中津市消防本部が行う、という役割分担を理解しておくことが重要です。

通信指令という専門性の高い業務を県レベルで集約する一方、実際の消火・救急・救助活動は各本部が地域に根ざして担うという分業の考え方は、面接で組織の仕組みを問われた際の説明にそのまま使えます。

あわせて確認したい公式資料

中津市消防本部の消防士・救急救命士は3段階の試験(総合適性検査・体力テスト、消防適性検査A・B、個人面接)で選考されるため、次の資料には試験の手続きを確かめるものと、地域理解の材料になるものが混在しています。受験資格には視力(矯正視力を含む)が両眼で1.0以上かつ一眼でそれぞれ0.5以上という基準もあるため、あわせて確認しておきましょう。

  • 中津市職員採用試験(消防区分)の受験案内
  • 中津市消防本部・消防署のページ(所掌事務の説明)
  • 大分県公式サイトの消防指令業務の共同運用に関するページ
  • 内閣府の南海トラフ巨大地震の被害想定資料

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、中津市消防本部専用の面接想定問答集をご用意しています。中津市消防本部の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

中津市消防本部の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

中津市消防本部の面接の概要

ここからは、中津市消防本部の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。第1部で押さえた組織理解を、ここで面接の準備に落とし込んでいきましょう。

中津市消防本部の面接の流れ

消防士・救急救命士の試験は、中津市職員採用試験(秋試験)の一区分として実施され、第1次=総合適性検査・体力テスト、第2次=消防適性検査A(性格検査)・消防適性検査B(認知能力検査)・高所適性検査、第3次=個人面接、という3段階で構成されています。試験種目ごとに合格基準が設けられており、一つでも基準に満たなければ総合得点や順位にかかわらず不合格になる仕組みである点は、押さえておきたいポイントです。

項目内容(令和8年度秋試験・消防士・救急救命士)
試験の段階3段階。第1次=総合適性検査・体力テスト、第2次=消防適性検査A・B+高所適性検査、第3次=個人面接
面接の種類個人面接(第3次試験)
集団形式実施なし。集団討論は事務職の第2次試験の種目であり、消防士・救急救命士の試験種目には含まれない
人物試験の配点公表されていません。最新の受験案内でご確認ください
体力テスト種目握力測定・立幅跳び・腕立伏臥腕屈伸・時間往復走・5分間走(第1次試験)

第1次試験は「公務員試験対策不要の総合適性検査(SCOA)」と案内に明記され、受験者が選ぶテストセンター(全国の指定会場)で受験する方式です。中津市役所での第1次試験は行われません。

総合適性検査の性格検査の結果は「以降の面接試験時の参考資料」とされており、第3次試験の個人面接に引き継がれる材料になっています。第2次試験の消防適性検査A(性格検査)・消防適性検査B(認知能力検査)、そして高所適性検査を経て、最後に個人面接という順番で人物面の確認が段階的に重ねられていく構成だと理解しておきましょう。

上記の試験構成は、中津市が公表する令和8年度秋試験の消防士・救急救命士のものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。

中津市消防本部が求める人材

中津市消防本部の消防士・救急救命士向けに公表された「求める人物像」は、明文の形では見当たりませんでした(当研究会調べ)。そこで手がかりになるのが、本部の規模と体制です。

129人の吏員で中津市全域(山間部の耶馬溪地域から市街地部まで)を担う中規模の単独本部では、一つの持ち場に長くとどまるより、消火・救急・予防・総務と配置が替わるたびに知識を組み替えていける適応力が求められやすいと考えられます。

採用予定数が2人程度と少人数であることも踏まえると、少ない人数の当直体制で長時間を共にする上での協調性や信頼関係づくりも、評価の視点に入ってくるでしょう。

また、119番の受信を大分市に委ねる一方で現場対応は自らの本部が担うという二層構造の中で働くことになるため、他機関と連携しながらも自分たちの持ち場に責任を持つ姿勢も間接的に問われる可能性があります。応募先ごとに人物像を作り変えるのではなく、これまでの経験や強みが、山あいの耶馬溪地域から市街地までを129人で支える組織の中でどう生きるのかを、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。中津市消防本部の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク試験会場までは、どうやって来ましたか?緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます
② 動機・志望なぜ中津市消防本部を志望するのですか?消防官という仕事と中津という土地を、自分の言葉で選べているか
③ 自己理解あなたの短所(弱み)は何ですか?自分を客観視できているか。弱みへの向き合い方に人柄が出ます
④ 経験・行動これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください過去の行動の事実。壁にぶつかったときの対処が現場の仕事に通じるか
⑤ 学業・経歴学生時代または現在の仕事で、力を入れて取り組んだことを教えてください取り組みの動機と過程。自分の歩みを順序立てて説明できるか
⑥ 適性・将来体力に自信はありますか?交替制勤務と現場活動を続けるための体力・生活習慣・覚悟
⑦ 公共性・社会性消防官(公務員)に最も必要な資質は何だと思いますか?仕事の公共性への理解と、社会の出来事への当事者意識

7つの枠組みそのものは、どの消防本部を受けても通用する土台です。まずは各カテゴリーに一言ずつ答えを用意し、抜け漏れをなくしておきましょう。

ここから先、中津を受ける理由まで踏み込めるかどうかは、次の固有質問で決まります。

合否を分けるのは中津市消防本部に固有の質問

「なぜ警察官や自衛官ではなく、消防官なのですか?」
「なぜ中津市消防本部を志望するのですか?」

なぜ中津市消防本部なのかという問いに厚みを出せるかどうかは、調べた範囲の広さで決まります。平成30年に耶馬溪町金吉で起きた山地崩壊は降雨のない中での発生であり、119番の受信を大分市のおおいた消防指令センターに委ねながら出動は中津市消防本部が担うという二層構造もあります。

山地災害と広域の指令体制のどちらも、自分の言葉で説明できる状態にしておきましょう。面接で使いやすい「中津市の事実」を絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい中津市の事実答え方のヒント
大規模災害への備え耶馬溪町金吉で平成30年4月11日、降雨のない中で幅約200mの山地崩壊が発生(詳細は第1部3章)。南海トラフ新想定での最大津波高は4m(令和7年3月31日公表)降雨がない中で起きた崩壊という実績と、最大4mという津波の想定を混ぜずに語り分けられると、管轄理解の厚みが伝わります
救急需要救急出動4,887件(令和6年中)が火災37件・救助65件を大きく上回る(詳細は第1部2章)火災・救助と桁が二つ違う点に触れると、救急を軸に業務を理解していることが伝わります
広域指令体制119番受信は大分市の「おおいた消防指令センター」に事務委託し、出動は中津市消防本部が行う二層構造(詳細は第1部5章)受信を担う大分市と、出動を担う中津市消防本部の役割の違いを整理して話せると、組織理解の正確さが伝わります
地域産業ダイハツ九州の本社・大分(中津)工場が市内に立地(2004年移転)大規模事業所を抱える地域ならではの防火・予防の視点に触れると業務理解の幅が伝わります
予防・地域対応消防署の所掌事務に防火教育・救命講習の実施が含まれる(詳細は第1部4章)消火や救急だけでなく予防・啓発も消防の仕事だと理解していることを示せます

5つのテーマはいずれも第1部で扱った内容の延長にあります。数字だけを覚えるのではなく、その数字が中津市消防本部のどんな体制や課題につながっているのかまでセットで押さえておくと、深掘りの質問にも動じずに答えられます。

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 消防吏員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

中津市消防本部は、消防士・救急救命士向けの評価観点や配点を明文では公表していません。そのため、一般論としてのコンピテンシー評価、すなわち過去にとった行動の事実から入庁後の再現性を確かめる考え方を軸に、本部の体制から読める観点を組み立てます。経験の中身と行動の再現性が問われるという点は、本部の規模を問わず変わりません。

3段階の試験を通じて総合適性検査の性格検査が個人面接の参考資料として引き継がれる構成である以上、第1次から第3次まで一貫した人物像を示せるかどうかも意識しておきたいところです。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
相手に配慮した対応力救急現場や救命講習など、住民と直接向き合う場面で相手の状況を見ながら動けるか相手の事情をくみ取って対応を変えた経験を、そう判断した理由まで説明できるようにしておく
新しい知識を吸収する力未経験の業務でも、自ら調べ、周囲に確認しながら着実に身につけられるか短期間で新しい役割や技能を覚えた経験を、そのときの手順とセットで用意しておく
チームでの協調性少人数の体制の中で、当直や訓練を通じて信頼関係を築けるかチームの一員として役割を果たした経験を、自分がどう動いたかまで語れるようにする

3つの観点はいずれも、消火・救急・救助という現場業務と、防火教育・救命講習といった住民対応の両方に通じるものです。片方の経験しかない場合でも、もう一方に近い場面を振り返ってみると、語れる材料が見つかることがあります。

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。試験の段階が進むごとに人物確認の比重が増えていく構成であることを踏まえ、早めに取りかかりましょう。

  1. 令和8年度の受験案内を読み、総合適性検査(SCOA)と体力テストの内容、消防適性検査A・Bの流れを確認する
  2. これまでの経験を棚卸しする。学業・アルバイト・部活動などから、体力面と対人面それぞれで語れる具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。体力テストに向けたトレーニングも並行して進める

第1次試験から第3次試験まで段階を追うごとに人物面の確認が重ねられていく試験構成なので、早い段階から一貫性のある自己分析を積み上げておくことが、最後の個人面接での説得力につながります。

優先順位に注意

ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を消防の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で中津市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、中津市消防本部専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

中津市消防本部の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。第1次試験のSCOA対策と並行して人物試験の準備を進めたい方は、必要に応じてご活用ください。

特に、消防適性検査A・Bから個人面接まで人物確認が連続する試験構成では、早い段階から回答の軸を固めておくことが有利に働きます。

中津市消防本部の想定問答集を見る

さいごに

中津市消防本部の消防士・救急救命士採用は、総合適性検査・体力テスト、消防適性検査A・B、個人面接という3段階で、各段階に合格基準が設けられた仕組みです。採用予定数は2人程度と少なく、耶馬溪の山地災害の実績や南海トラフ地震の想定、大分市への指令業務の委託という広域体制まで理解した上で、なぜこの規模の本部で働きたいのかを自分の言葉で語る準備が欠かせません。

救急出動が火災・救助を大きく上回るという実態を踏まえれば、体力面の準備だけでなく、住民と向き合う対応力への意識も同時に育てておく必要があります。129人の吏員が中津市全域の暮らしを支える仕事に挑む皆さまが、悔いのない面接を迎えられるよう願っています。