本記事では、南房総市職員採用試験の面接対策で必要な、南房総市の特徴基礎データ行政課題重点政策面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

南房総市役所の面接試験では、「なぜ南房総市を志望したのか」「市職員として何をやりたいのか」「自分の強みを市政のどこで発揮できるのか」といった質問が想定されます。南房総市は求める職員像を3項目で公表しており、令和8年度は年3回の採用試験を予定しています。どんな職員に来てほしいかを言葉にし、受け入れる入口も複数用意している市だということです。

本記事の内容を手がかりに、自分の経験と南房総市政の接点を整理し、面接での受け答えづくりに役立ててください。

第1部|自治体研究編

南房総市の特徴

面接対策を始める前に、南房総市がどういう条件の市なのかを押さえておきましょう。(先を急ぐ方は、この章だけでも読んでおいてください)

  • 人口33,391人・面積229.55km²・人口密度145人/km²の市である(人口は住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。
  • 市役所は〒299-2492 南房総市富浦町青木28に置かれている(団体コード12234-3)。
  • 隣接するのは館山市、鴨川市、安房郡鋸南町の3つ。接する相手がすべて安房地域の市町である。
  • 住民基本台帳をもとにした令和8年1月1日現在の集計では、高齢化率が48.1%、75歳以上の割合が30.2%。市民のおよそ2人に1人が65歳以上、3人に1人が75歳以上という構成である。
  • 市が公表する求める職員像は、「市民の視点に立ち、市民とともに考え行動する職員」「広い視野で総合的に判断・行動できる職員」「社会の変化に的確に対応できる柔軟性のある職員」の3項目。
  • 令和8年度は年3回の採用試験(第1回、第2回、追加募集)を予定している。
  • 年3回のうち第1回と第2回は、館山市・鴨川市・南房総市・鋸南町・安房郡市広域市町村圏事務組合(消防職)が参加する「市町等職員採用試験」の枠組みで行われる。
  • 新規採用職員には入庁後およそ3か月間の庁内研修が組まれ、配属先には年齢の近い先輩職員がトレーナーとして選任される。
  • 令和7年国勢調査の速報値による千葉県の総人口は625万8,512人。前回調査比で25,968人の減少となり、大正9年の第1回調査以来はじめて人口が減った。

南房総市の基礎データ

統計を一つ残らず頭に入れる作業は、面接の準備としては割に合いません。ただ、南房総市の規模と人口構成だけは、表を見ずに口で説明できるところまで持っていきたいところです。

次の表は、人口と面積、年齢の構成、接している自治体をまとめたものです。市単独の数値では規模がつかみにくいため、千葉県全体の値も添えています。

項目内容
総人口33,391人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
総面積229.55km²
人口密度145人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
65歳以上人口16,070人(高齢化率48.1%)
75歳以上人口10,096人(住民基本台帳の総人口に対する割合は30.2%)
隣接自治体館山市、鴨川市、安房郡鋸南町
市役所所在地〒299-2492 千葉県南房総市富浦町青木28
(参考)千葉県の総人口625万8,512人(令和7年10月1日現在・国勢調査速報値)
(参考)千葉県の面積5,156.48km²(全国第28位)

南房総市の人口・面積・隣接自治体・市役所所在地は自治体の公表値をもとに整理したもので、人口は住民基本台帳・令和8年1月1日現在の値です。65歳以上・75歳以上の人口と割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の集計によります。千葉県の数値は千葉県公式サイトの統計資料によるものです。

年齢構成が市政の最大の与件になる

229.55km²という面積は、千葉県全体のおよそ22分の1にあたります。そこに3万人あまりが暮らし、人口密度は145人/km²。

県を平均した密度がおよそ1,200人/km²であることを考えると、人はかなり広く散らばっています

ただ、南房総市を理解するうえで決定的なのは面積ではありません。住民基本台帳による令和8年1月1日現在の集計で、高齢化率は48.1%、75歳以上の割合は30.2%です(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在

市民のほぼ2人に1人が65歳以上で、3人に1人が75歳以上という構成です。窓口に来る人の年齢層も、災害時に支援を要する人の数も、市が回すべき事業の順番も、この一点から逆算されていきます。

なお、ここで挙げた割合は住民基本台帳を基礎にしたものです。後の章で扱う県の高齢化率は国勢調査をもとにしており、出どころが違う以上、両者を直接比べることはできません。

面接では、規模と仕事のかたちを次のようにつないで話せます。

「南房総市は人口3万人ほどで、そのうち半分近くが65歳以上だと聞きました。75歳を超えている方も3人に1人ということですので、窓口に来られない方のところへこちらから出向く仕事が、かなりの比重を占めるのではと思っています」

南房総市の経済・産業

半島の南端という立地が支えるもの

千葉県は太平洋に突き出た半島で三方を海に囲まれ、200メートルから300メートル級の山々が続く房総丘陵を除けばほぼ平坦な地形です。海岸線は531キロメートルに及び、南房総沿岸は暖流である黒潮の影響を受けます(出典:千葉県のすがた|令和7年4月1日現在

この気候条件の上に、県の農業産出額4,029億円(全国第4位・令和5年)や、年間観光客数164,419千人(令和5年)といった数字が積み上がっています(出典:千葉県の産業|令和5年ほか

もっとも、南房総市の産業を語るうえで見落とせないのは、その担い手のほうです。気候にも景観にも恵まれた地域で、人手が足りないという事態が同時に起きています。市の採用の実績が、そのことをはっきり示しています。

職種によって、応募が集まる仕事と集まらない仕事がある

南房総市が公表している令和6年度の採用状況を見ると、一般行政職初級には採用予定10人に対し28人の申込がありました。一方で同じ年度、土木技術職の2回目・建築技術職・化学技術職・保健師職などは「受験なし」、学芸員職・看護師職などは「採用なし」となっています(出典:南房総市職員採用試験の実施状況|令和6年度

事務職には人が集まる一方、技術職と専門職には集まりません。この落差が、そのまま市の課題になっています

令和8年度第2回の募集職種は、一般行政職初級4人(別枠で障害者を対象とする区分1人)、土木技術職初級2人、建築技術職初級1人、保育教諭職3人、学芸員職1人です。

事務職として入る場合も、こうした専門職の枠が埋まらない前提で、限られた人数の中でどう仕事を回すかという問いは避けて通れません。

南房総市の主な行政課題

ここまでの数字を並べると、南房総市が向き合う課題が見えてきます。面接で課題について問われたときの引き出しとして、次の3つを持っておきましょう。

県の長期見通しをすでに大きく追い越した高齢化

千葉県の高齢化率は2020年で27.6%、およそ3.6人に一人が高齢者という水準でした。県はこの水準が2055年に37.2%、2.7人に一人まで上がると見込んでいます(出典:第3期千葉県地方創生総合戦略|人口の将来展望

これに対し、住民基本台帳による南房総市の高齢化率は令和8年1月1日現在で48.1%です。県が2055年の姿として描く水準を、10ポイント以上も上回っています

集計の方法が違うため厳密な比較にはなりませんが、県が数十年先の課題として扱っている状況が、この市ではすでに日常だということです。

この認識を持っているかどうかで、志望動機の説得力は変わります。

県の推計を引いて「これから備えるべきです」と語る受験者と、市はもうその段階を越えていると理解したうえで「いま困っている人に何を届けるか」を語る受験者とでは、聞く側の受け取り方がまるで違ってきます

想定される地震によって被害の姿がまったく違う

千葉県地震被害想定調査(令和8年5月26日公表)は3つの地震を想定していますが、規模の幅がきわめて大きいことに注意してください。

大正型関東地震(地震動はモーメントマグニチュード7.9、津波は8.0、最大震度7)では避難者が約19.0万人と想定される一方、房総半島東方沖の地震(モーメントマグニチュード8.5、最大震度7)では全壊・焼失建物が約113,600棟、死者が約42,100人、避難者が約79.6万人にのぼり、外房を中心に広く津波浸水すると想定されています(出典:千葉県地震被害想定調査|令和6・7年度

どの地震を想定するかで、避難者の規模だけでも4倍以上変わるということです。

ここに、市民の3割が75歳以上という人口構成が重なります。避難の呼びかけが届くか、届いた後に自力で動けるか、避難先で健康を保てるか。

県全体の被害数を暗記するより、市のハザードマップで自分の関わる地区の想定を確かめ、そこで誰がどう動くのかまで考えておくほうが、面接では役に立ちます。

担い手不足の解消という県全体の課題

千葉県は県内をゾーンに分けて人口動態を分析し、東葛・湾岸、印旛、内房を社会増の地域、香取・東総、九十九里、南房総・外房を社会減の地域としています。そのうえで県は、社会減の地域における様々な分野の担い手不足の解消を、取り組むべき課題として名指ししています(出典:第3期千葉県地方創生総合戦略|人口の現状分析

市の採用で技術職や専門職に応募が集まらない状況は、この県全体の課題が市役所の中に現れたものだと読むこともできます。

南房総市の重点政策|求める職員像と人材育成の仕組み

南房総市の総合計画や最新の施政方針は、市公式サイトの最新版で必ず確認してください。この章で扱うのは、市が公表している求める職員像と、採用から育成までの仕組みです。ここには、市がどんな人と働きたいと考えているかが、はっきり言葉になって現れています。

公表されている求める職員像は3項目

南房総市が第3期南房総市職員に対する人材育成基本方針で掲げる求める職員像は、「市民の視点に立ち、市民とともに考え行動する職員」「広い視野で総合的に判断・行動できる職員」「社会の変化に的確に対応できる柔軟性のある職員」の3項目です(出典:南房総市の職員採用情報|求める職員像・研修制度

この3つは並列ではなく、順番に意味があると読むこともできます。1つ目は立ち位置の話で、市民の側から考えることを求めています。

2つ目は視野の話で、担当の枠を越えて全体を見ることを求めています。3つ目は変化への構えです。

面接では、この3項目を暗唱するのではなく、自分のどの経験がどの項目にあたるのかを対応させて話せるようにしておきましょう。

3つとも埋めようとする必要はありません。1つでも、実際にやったことと結び付いていれば十分に伝わります。

年3回の採用サイクル

令和8年度の南房総市は、第1回、第2回、そして追加募集という年3回の採用試験を予定しています(出典:南房総市職員採用試験|令和8年度。このうち第1回と第2回は、安房郡市広域市町村圏事務組合が実施する市町等職員採用試験に参加する形をとります。

応募は原則としてインターネットからで、職員採用サイト「パブリックコネクト」の申し込みフォームを使います。同じ合同試験でも、鴨川市や鋸南町、安房郡市広域市町村圏事務組合(消防職)は紙書類の提出とされており、申込方法は団体ごとに異なります。

年に何度も機会があることは受験者に有利に働きますが、油断はできません。回によって募集職種も受験資格も入れ替わるからです。

令和8年度第2回の一般行政職初級の受験資格は、平成3年4月2日から平成21年4月1日までに生まれた者で、学歴を問いません。生年月日の範囲がおよそ18年に及び、社会人にも開かれた設計になっています。

なお、令和8年度の合同試験に一般行政職の上級区分は設けられていません。大学卒程度・上級を前提に準備を進めないよう気をつけてください。

入庁後3か月の研修とトレーナー制度

南房総市は新規採用職員に対し、入庁後およそ3か月間の庁内研修を用意しています。内容は庁内システム、防災関連業務、公用文作成、人口減少対策、自治体DXの概要などです。さらに配属先では、年齢の近い先輩職員がトレーナーとして選任されます。

この研修の中身は、そのまま市の関心の在りかを映しています。防災関連業務と人口減少対策が新人研修の項目に並んでいることからは、それが特定の部署だけの仕事ではなく、全職員に共通する前提として扱われている様子がうかがえます。

面接で「入庁後にやりたいこと」を語るときは、この2つの論点に自分の話がどう接続するのかを、一言でよいので添えられるようにしておきましょう。

POINT|3項目の職員像を、自分の経験で裏づける

求める職員像が公表されている市では、その言葉をそのまま繰り返しても評価は上がりません。見られているのは、その資質を自分が実際に発揮した場面を出せるかどうかです。3項目のうち自分に一番近いものを選び、いつ、どこで、何をして、相手や周囲がどう変わったのかを語れる状態にしておいてください。

悪い例「市民の視点に立って、市民とともに考え行動する職員になりたいと思っています」

改善例「アルバイト先で高齢のお客様から同じ質問が続いたことがあって、案内の紙を大きな字に作り直したことがあります。南房総市は市民の3人に1人が75歳を超えていると聞きましたので、そういう受け手に合わせて伝え方を変える仕事に関わっていきたいです」

あわせて確認したい公式資料

すべてを読む必要はありません。自分の志望と関わるものだけを選び、その要点を口で説明できる状態にしておけば十分です。

  • 南房総市の職員採用試験の受験案内(自分が受ける回と職種の最新のもの)
  • 南房総市公式サイトの職員採用情報のページ(求める職員像・研修制度・初任給)
  • 南房総市職員採用試験の実施状況(職種ごとの応募と合格の実績)
  • 南房総市の総合計画・ハザードマップ・最新の広報紙
  • 第3期千葉県地方創生総合戦略、千葉県の統計資料(市政の背景を知る参考として)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、南房総市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。南房総市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

南房総市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

南房総市役所の面接の概要

ここからは、南房総市役所の採用試験の構成と、面接で問われやすい質問の全体像、差がつく質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析にもとづいて整理します。

第1次試験は合同、第2次試験以降は各団体が組み立てる

合同試験に参加する回では、第1次試験は参加団体共通の受験案内に沿って行われます。一般行政職初級であれば、職務能力試験(60題・1時間)、職務適応性検査(150題・20分)、作文(1題・1時間)の3種目。

職務能力試験については「基礎的な内容が出題されますので、特別な対策や勉強は不要です」と受験案内に明記されています。

一方、第2次試験は「各団体による」実施とされ、その内容は公表されていません。日時は第1次試験の合格者へ別途通知され、団体によっては第3次試験が実施される場合があるとされています。

項目内容(令和8年度第2回・南房総市)
試験の段階第1次試験、第2次試験等。第2次試験は「各団体による」実施で、団体によっては第3次試験を実施する場合があると受験案内に明記
第1次試験(一般行政職初級)職務能力試験(択一式60題・1時間)、職務適応性検査(150題・20分)、作文(1題・1時間)
職務能力試験の出題分野論理的に思考する力、文章を正確に理解する力、統計等の資料を分析する力、国内外の社会情勢への理解等を確認するための基礎的な出題
第2次試験以降の科目個別面接か集団討論かの別を含め、公表されていない
募集職種(令和8年度第2回)一般行政職初級4人(別枠で障害者を対象とする区分1人)、土木技術職初級2人、建築技術職初級1人、保育教諭職3人、学芸員職1人
受験資格(一般行政職初級)平成3年4月2日から平成21年4月1日までに生まれた者。学歴は問わない
申込方法原則としてインターネット申込(職員採用サイト「パブリックコネクト」の申し込みフォーム)
初任給一般行政職は大学新卒225,600円、短大新卒210,600円、高校新卒194,500円、保健師職は大学新卒242,000円(いずれも地域手当2%を加えた額・令和7年4月1日現在)。奨学金返還支援制度がある

上記は令和8年度第2回市町等職員採用試験の受験案内および南房総市公式サイトの職員採用情報に基づく内容です。各試験の配点と第2次試験以降の科目は、確認したこれらの資料に記載がありません。また、回によって段階数が異なる可能性があります。受験の際は必ず最新の受験案内でご自身の区分をご確認ください。

実績の数字が示す通過の姿

南房総市は職種ごとの採用状況を公表しています。令和6年度の一般行政職初級は、採用予定10人に対し申込28人、第1次試験の受験21人、第1次合格17人、第2次受験16人、第2次合格13人、第3次受験13人、最終合格10人で、合格倍率は2.1倍でした(うち2人が辞退)。

同じ令和6年度の2回目の試験では、申込28人に対して最終合格が4人にとどまり、倍率は5.3倍でした。

ここから読み取れることが2つあります。1つは、段階が進むごとに人数が絞られる一方、脱落の幅は各段階でそれほど大きくないということ。

もう1つは、回によって倍率が倍以上動くということです。年3回のどの回を受けるかで、置かれる状況は変わります

なお、市が公表している例年の流れでは、第1次試験の合格者に第2次試験、その合格者に第3次試験という3段階で進みますが、令和8年度第1回については第2次試験の合格発表までの日程しか公表されていません。すべての回が一律に3段階だと決めつけないでください。

南房総市役所が求める職員像をどう使うか

第1部で見たとおり、南房総市は求める職員像を3項目で公表しています。ここまで言葉になっている以上、面接対策の軸をこの3項目に置かない手はありません。

市民の側から考えること、担当の枠を越えて全体を見ること、変化に対応すること。この3つに、自分の経験を対応させるところから始めてください。

そのうえで、市の規模から見える一般的な傾向も添えておきます。人口3万人あまりに対して市域は229.55km²あり、暮らしの場は広く散らばっています。

この条件では、一つの事業に何人もの担当を置く形にはなりにくく、配属先がどこであっても隣の分野の話が自分の机に回ってくることがあります。公表されている職員像の2つ目、広い視野で総合的に判断・行動するという項目は、この構造を踏まえると具体性を帯びてきます。

担当の枠が最初から広いのですから、これは自分の仕事ではないと線を引かずに動ける人が評価されやすいと考えられます。新規採用職員の研修に庁内システムも防災も公用文作成も人口減少対策も並んでいるのは、その前提に立った設計だと読めます。

市外の出身であることは、それだけで不利にはなりません。南房総市の何が気になって調べ始めたのか、その関心がいまどの課題につながっているのか、そしてここで暮らしながら働く自分をどう思い描いているのか。

この筋道を自分の言葉でたどれれば、土地との縁の薄さは十分に埋められます。

もう一つ付け加えるなら、受ける市ごとに経歴や人柄を作り変える必要はありません。話す材料はどこを受けても同じで、変えるのは、そのうちのどこを前に出すかという配分だけです。

南房総市であれば、年齢の高い相手に合わせて伝え方を変えた経験や、決められた担当の外まで手を伸ばして動いた経験が、前に出す価値のある部分にあたります。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。南房総市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク会場までは迷わずに来られましたか本題に入る前の受け答えの自然さと表情
② 動機・志望公務員を志望した理由を教えてください職業としての選択を、自分の経験と結んで説明できるか
③ 自己理解長所と短所を一つずつ挙げてください自分を客観視できているか。短所との付き合い方まで語れるか
④ 経験・行動困難だった経験と、そのときの動き方を教えてください困難の大きさではなく、その場で何を考えどう動いたか
⑤ 学業・経歴これまでに力を入れて取り組んだことは何ですか取り組みの中身と、そこから何を得たかを語れるか
⑥ 適性・将来5年後、10年後にどんな職員になっていたいですか働き続ける姿を具体的に描けているか
⑦ 公共性・社会性地域の高齢化について、行政に何ができると思いますか身近な変化を自分の言葉で捉え、意見を述べられるか

ただし、この7カテゴリーは南房総市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。

では、どこで差がつくのか。それが次の「南房総市ならでは」の質問です。

合否を分けるのは「南房総市役所ならでは」の質問

「なぜ千葉県庁ではなく、南房総市役所なのですか」
「南房総市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

どちらも南房総市の現状を知らなければ、その場では答えようがない質問です。裏を返せば、求める職員像が公表されている市だからこそ、市の資料をどこまで読んだかが表に出る質問でもあります。

こうした質問に答えるための「南房総市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい南房総市の事実答え方のヒント
市の人口構成住民基本台帳による令和8年1月1日現在の高齢化率は48.1%、75歳以上は30.2%。県が2055年に見込む37.2%を10ポイント以上上回る県の推計を借りて将来を語るのではなく、南房総市ではすでに起きていることとして、いま何を届けるかへ話を進めます
求める職員像市民の視点に立ち市民とともに考え行動すること、広い視野で総合的に判断・行動すること、社会の変化に的確に対応する柔軟性の3項目3項目を暗唱せず、自分に一番近い1項目を選び、それを実際に発揮した場面を時系列で語れる形にしておきます
なぜ県庁ではなく市役所か県は社会減の地域における担い手不足の解消を課題に挙げ、市では令和6年度に技術職・専門職の複数の区分で受験者がいなかった役割の違いを説明して終わらせず、人手が足りない現場で自分がどの仕事を引き受けたいのかまで具体化します
採用の仕組み令和8年度は年3回の採用試験を予定。第1回と第2回は安房郡市広域市町村圏事務組合の合同試験に参加する枠組みで、南房総市の申込はインターネット同じ枠組みに参加する団体がほかにもある以上、そのなかで南房総市を選んだ理由を最初のひと言で示してから、中身の話へ進みます
防災県の被害想定では、房総半島東方沖の地震(モーメントマグニチュード8.5・最大震度7)で避難者約79.6万人、大正型関東地震(地震動はモーメントマグニチュード7.9、津波は8.0、最大震度7)で約19.0万人と、想定によって規模が大きく異なる県全体の数字で止めず、市のハザードマップで確かめた地区名を挙げ、3人に1人が75歳以上という構成での避難の難しさまで話をつなげます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。志望分野に近いテーマを1つか2つに絞り、事実から自分の問題意識、そして市職員として関わりたい仕事までを一息で話せる形にしておくことです。

想定される評価の観点

面接は、市が公表している求める職員像に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
市民の視点に立てるか公表されている職員像の1つ目。相手の側から物事を見て動いた経験があるかが問われる相手の年齢や事情に合わせて自分のやり方を変えた場面を一つ選び、変えた前後で相手の反応がどう違ったかまで話せるようにしておく
広い視野で判断できるか公表されている職員像の2つ目。担当の枠を越えて全体を見た経験が問われる自分の役割の外にまで手を伸ばした場面を選び、なぜそこまで踏み込む必要があると判断したのかを説明できるようにしておく
変化に対応する柔軟性公表されている職員像の3つ目。新人研修に自治体DXや人口減少対策が並ぶ市で、前提が変わる場面への構えが問われる途中で条件が変わった経験を選び、やり方を切り替えた判断と、その結果どうなったのかを順に語れるようにしておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 南房総市の最新の受験案内を読み、自分が受ける回と職種を確定させる。年3回の試験は回ごとに募集職種と受験資格が入れ替わる
  2. 職員採用サイトの申し込みフォームから出願する段取りを確認する。同じ合同試験でも団体によって申込方法が違うので、南房総市の案内だけを見て進める
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 公表されている求める職員像の3項目を書き出し、自分のどの経験がどの項目にあたるかを対応させる。この記事の前半から、48.1%という高齢化率など志望分野に近い事実も2つか3つ拾っておく
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、事実から問題意識、やりたい仕事までを一続きの話に編む
  6. 声に出して練習する。3項目のうち自分が選んだ項目について、掘られたときに何を足すのかを書き出しておく

優先順位に注意

ステップ4と5の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間が足りない場合は、ステップ4の前半、つまり求める職員像と自分の経験を突き合わせる作業を優先してください。職員像が公表されている市で、その言葉に自分の経験を接続できていないのは大きな取りこぼしです

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、南房総市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

南房総市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

南房総市役所の想定問答集を見る

さいごに

南房総市は、求める職員像を3項目で言葉にし、年3回の入口を開き、入庁後には3か月の研修とトレーナーを用意しています。受け入れる側の設計が、これだけ言葉になって公表されています。だからこそ、受ける側にも準備の筋道が見えています。

市民のほぼ2人に1人が65歳以上、3人に1人が75歳以上。令和6年度には、技術職や専門職のいくつかの区分で受験者がいませんでした。

そういう現実の中で、3項目の職員像は理想論ではなく、日々の仕事の必要から出てきた言葉だと考えたほうがよいでしょう。

自分のどの経験がその必要に応えられるのか。市の資料を開いて確かめ、声に出して話せるところまで準備を進めていってください。