本記事では、市原市職員採用試験の面接対策で必要な、市原市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
市原市役所の面接試験では、「なぜ市原市を志望したのか」、「市職員としてどんな仕事をしたいのか」、「あなたの強みは市原市で何に使えるのか」といった質問が想定されます。
市原市の受験案内は、職種ごとの配点を表にして公表しています。何にどれだけ力を割くべきかが、受験する前から分かる試験です。
本記事の掲載内容を参考に、自分の経験と市原市政の接点を整理し、面接での回答づくりに役立ててください。
第1部|自治体研究編
市原市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは市原市の全体像を押さえておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 面積368.16km²は、千葉県内の37市の中で最も広い。県全体の面積5,156.48km²のおよそ7%を、この一つの市が占めている。
- 人口は265,371人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)、人口密度は721人/km²。広さの割に人口密度は高くない。
- 隣接するのは千葉市、茂原市、袖ケ浦市、木更津市、君津市、夷隅郡大多喜町、長生郡長南町、長柄町の8団体。県内最大の都市である千葉市から、内陸の町までが同じ市の周りに並んでいる。
- 東京湾アクアラインの接岸地である木更津市とは隣り合っており、県内の広域交通の動きが市域の近くを通る位置にある。
- 市役所は国分寺台中央一丁目にあり、採用試験の結果開示は第2庁舎2階の人事課窓口で受け付けられている。
- 市の花はコスモス、市の木はイチョウ。
- 職員採用試験は年に複数回実施される。令和8年度は6月試験と9月試験などに分かれ、試験区分も一般行政職Ⅰ・資格免許職Ⅰ、民間企業等職務経験者、公務員経験者、消防吏員、障がい者を対象とした選考考査に分かれている。
- 千葉県全体の人口は、令和7年国勢調査の速報値で6,258,512人。前回(令和2年)から25,968人減り、大正9年の第1回調査以降ではじめての減少となった。
市原市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、統計値を細かく暗記する必要はありませんが、「市原市の大体のスケール感」を押さえておくことは重要です。
ここでは、人口規模、市域の広さ、年齢構成、周囲との位置関係を中心に並べました。県全体の数値は、市の値がどのあたりに位置するかを確かめるために添えています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 265,371人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 総面積 | 368.16km²(県内37市で最も広い) |
| 人口密度 | 721人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 高齢化率(65歳以上) | 31.1%(82,568人/令和8年1月1日現在・住民基本台帳) |
| 75歳以上の割合 | 17.9%(47,380人/同上) |
| 隣接自治体 | 千葉市、茂原市、袖ケ浦市、木更津市、君津市、夷隅郡大多喜町、長生郡長南町、長柄町 |
| 市役所所在地 | 〒290-8501 千葉県市原市国分寺台中央一丁目1番地1 |
| 市の花・市の木 | コスモス・イチョウ |
| (参考)千葉県の高齢化率 | 27.6%(75歳以上は16.5%/令和8年1月1日現在・住民基本台帳) |
| (参考)千葉県の総人口 | 6,258,512人(令和7年10月1日現在・国勢調査速報値) |
人口・面積・隣接自治体・市の花木は公表値をもとに整理したものです(人口は住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。高齢化率と75歳以上の割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の集計によります。千葉県の総人口は国勢調査の速報値で、調査の基礎が異なるため住民基本台帳による数値とは直接比較できません。最新値は市原市公式サイトであわせてご確認ください。
数字が示す市原市の輪郭
面積368.16km²に26万5千人。人口密度721人/km²という数字は、市街地だけで構成された市では出てきません。
隣り合う自治体の顔ぶれを見ても、県内最大の都市である千葉市から、夷隅郡大多喜町や長生郡長南町といった内陸の町までが並びます。
性格の異なる地域を一つの市役所が受け持っていると考えると、市原市の仕事の幅が想像しやすくなります。同じ「市民サービス」でも、届け方は場所によって変わるということです。
もう一つ押さえたいのが年齢構成です。住民基本台帳をもとにした集計では、令和8年1月1日現在の市原市の高齢化率は31.1%、75歳以上の割合は17.9%。
同じ集計による千葉県全体は27.6%・16.5%ですから、市は県平均を3.5ポイント上回っています(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)。
なお、この住民基本台帳による数値と、国勢調査をもとに算出される県の高齢化率は調査そのものが異なるため、並べてそのまま比べることはできません。
26万5千人規模でありながら、高齢化は県平均より進んでいます。しかも市域は県内の市でもっとも広くなっています。
この2つを重ねると、市原市の課題の輪郭が見えてきます。
市原市の経済・産業
千葉県の産業構造の中で
市の産業を考えるときは、まず県全体の姿を知っておくと話が組み立てやすくなります。
千葉県では京葉臨海地域に石油精製・石油化学・鉄鋼などの素材産業の企業がコンビナートを形成しており、製造品出荷額等は約15兆8,925億円で全国第6位(2023年経済構造実態調査)。
年間商品販売額は約13兆3,998億円で全国第9位(2022年同調査)です(出典:千葉県の産業|経済構造実態調査ほか)。
農業も県の柱です。農業産出額は4,029億円で全国第4位(令和5年)。
品目別では野菜が1,336億円で第4位、米が569億円で第9位、鶏卵は504億円で全国第1位です。
重化学工業と農業が同じ県の中で並び立っているのが千葉県の産業構造で、その両方の性格が及ぶ範囲にあるのが、県内最大の市域を持つ市原市です。
広い市域と広域交通
千葉県は首都圏の東側に位置し、太平洋に突き出た半島として三方を海に囲まれています。
地形は200メートルから300メートル級の山々が続く房総丘陵を除いてほぼ平坦で、海岸線の長さは531キロメートルに及びます(出典:千葉県のすがた|令和7年4月1日現在)。
県の面積5,156.48km²は全国第28位で、東京都と神奈川県を合わせた面積を上回ります。
その中で、市原市の隣には東京湾アクアラインの接岸地である木更津市があります。
アクアラインは川崎と木更津を結ぶ全長15.1キロメートルの自動車専用有料道路で、平成9年12月18日に開通しました。
土日祝の混雑緩和のため、時間帯によって料金を変えるETC時間帯別料金の社会実験も、令和5年7月から令和8年3月末までの期間で行われました(出典:東京湾アクアラインの概要|千葉県)。
人とものが県外から入ってくる経路のすぐ隣に、県内で最も広い市域が広がっています。面接で産業や交通に触れるなら、この位置関係を出発点にすると話が具体的になります。
市原市の主な行政課題
ここまでの数字を踏まえると、市原市が向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の4つを押さえておきましょう。
県平均より先に進む高齢化
千葉県の高齢化率は2020年の27.6%から、2055年には37.2%まで上昇する見込みです。
3.6人に一人が高齢者だった状態が、2.7人に一人になるということです(出典:第3期千葉県地方創生総合戦略|人口の将来展望)。
市原市の高齢化率は住民基本台帳の集計ですでに31.1%に達しており、県全体が向かう先を先に歩いている位置にあります。
広い市域と高齢化が重なると、移動の問題が最初に表面化します。買い物、通院、行政の手続き。
人口密度721人/km²の市で、年齢を重ねた市民がこれらにどう届くのかは、福祉だけでなく交通やまちづくりにもまたがる論点です。
市原市を志望するなら、部署の枠を越えて考える構えを持っておきたいところです。
減少局面に入った県の中で
千葉県の人口は、令和7年国勢調査の速報値で6,258,512人となり、大正9年の第1回調査以降ではじめて減少しました。
一方で世帯数は287万5,923世帯と10万2,083世帯増えており、世帯数は第1回調査から継続して増え続けています(出典:令和7年国勢調査 速報値|千葉県)。
人は減り、世帯は増えています。一世帯あたりの人数が減っているということです。
県はさらに、人口動態には地域差が大きいことを課題に挙げています。
社会増の地域として東葛・湾岸、印旛、内房の3ゾーンを、社会減の地域として香取・東総、九十九里、南房総・外房の3ゾーンを挙げ、社会減の地域では様々な分野の担い手不足の解消が必要だとしています。
県全体の平均だけを見ていては、市町村ごとの実情には届かないということです。
大規模地震への備え
千葉県が令和8年5月26日に公表した地震被害想定調査では、複数の地震が想定されています。
千葉県北西部直下地震(モーメントマグニチュード7.3・最大震度6強)では全壊・焼失建物が約76,000棟、死者が約2,400人、避難者が約87.2万人(2週間後)。
大正型関東地震(モーメントマグニチュード7.9の地震動・8.0の津波、最大震度7)では全壊・焼失建物が約33,800棟、死者が約920人、避難者が約19.0万人。
房総半島東方沖の地震(モーメントマグニチュード8.5・最大震度7)では全壊・焼失建物が約113,600棟、死者が約42,100人、避難者が約79.6万人と想定されています(出典:千葉県地震被害想定調査|令和6・7年度)。
想定する地震によって、揺れの強さも津波の広がり方も変わります。防災を語るなら、県の数字を並べるだけでなく、市原市のハザードマップで自分が関わる地区の想定まで確かめておきましょう。
職員の確保と、入り口の広げ方
市原市は職員採用試験を年に複数回実施し、区分も新卒中心の一般行政職Ⅰから、民間企業等職務経験者、公務員経験者、障がい者を対象とした選考考査まで分けています。
さらに上級事務職(B)をはじめとする多くの職種では、受験案内が「公務員試験対策が不要な株式会社日本経営協会総合研究所が提供する「SCOA」を使用します。」と明記しています。
受験する側の準備の負担を下げてでも、応募の入り口を広げようとしていることが、試験の設計そのものに表れています。人材の確保は、この市にとって現在進行形の課題であることがうかがえます。
市原市の重点政策|市原市人財育成基本方針と採用の設計
市原市の総合計画や最新の施政方針については、市公式サイトの最新版を必ず確認しておきましょう。
ここでは、市が職員に何を求めているかを正面から述べた文書と、採用試験の設計に表れている考え方を続けて見ていきます。この2つを押さえておくと、面接で話す材料の置き場所が決まります。
市原市が公表する「求める人材像」
市原市人財育成基本方針(改訂版)にもとづき、市は目指すべき職員像を「市民本位の姿勢で、変革と創造に果敢に挑戦する職員」と定め、そのうえで求める人材像を3つ挙げています。
- 市民に信頼される人
市民目線に立った行政サービスを提供するため、強い責任感を持ち、自ら学び、市民と信頼関係を構築できる人 - 果敢に挑戦する人
人口減少等の社会環境の変化に対して、新たな発想で積極果敢に行動できる人 - チームで成果を出せる人
他の職員や市民、企業など多様な主体と連携し、チームワークを大切にし、成果を出せる人
注目したいのは、2つ目の「果敢に挑戦する人」に「人口減少等の社会環境の変化に対して」という前置きが付いている点です。挑戦それ自体を求めているのではなく、人口が減っていく前提の下で新しいやり方を持ち込める人を求めている、と読めます(出典:市原市が求める人材像|市原市人財育成基本方針(改訂版))。
採用の設計に表れている市の姿勢
市原市の受験案内は、受験者に対してかなり手の内を見せています。職種ごとの配点を表で全部出し、筆記試験の点数の扱い方まで説明し、不合格になった場合に何が開示されるかも書いてあります。
これらは制度の説明であると同時に、市が受験者とどう向き合おうとしているかの表明でもあります。
- 職種ごとの配点をすべて公表している(詳細は第2部で扱います)
- 教養試験と専門試験は標準点化される。受験案内は「標準点とは、標準偏差を用いて算出したもので、受験者の点数は概ね0点から100点に分布し、平均点が50点となります。」と説明している
- 第1次試験の際に、すべての職種で個人面接の参考とする適性検査(マークシート方式・40分程度)を実施する
- 不合格者本人は人事課窓口で結果の開示を請求できる。第1次試験不合格者には順位と試験科目別の出題数・正解数、第2次試験不合格者にはこれに第2次試験の順位、第3次試験不合格者にはさらに第3次試験の順位が示される(開示期間は各結果通知の日から1か月間)
- 職員採用説明会をオンラインで実施している
POINT|配点表は「暗記するもの」ではなく「使うもの」
配点が公表されている試験では、数字を覚えることに意味はありません。使い方は一つです。自分が受ける職種の配点表を書き出し、満点の内訳を見て、残り時間をどの科目に何割ずつ配るかを決めることです。それだけで、対策の優先順位が人任せでなくなります。
悪い例「筆記も面接も、どちらもしっかり対策してきました」
改善例「筆記は過去の出題範囲を一通り回したうえで、残りの時間は面接の準備に充てました。自分が受ける職種は面接の配点が半分を占めると案内に書いてありましたので、そこに時間を寄せたほうがよいと考えました」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
- 自分が受ける回次・区分の市原市職員採用試験受験案内(最新のもの)
- 市原市人財育成基本方針(改訂版)にもとづく「求める人材像」のページ
- 市原市公式サイトの市政情報(総合計画・予算・広報など、志望分野に近いもの)
- 市原市のハザードマップ(自分の関わる地区の想定を知る材料として)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、市原市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。市原市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
市原市役所の面接の概要
ここからは、市原市役所の採用試験の構成と配点、面接で問われやすい質問、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析にもとづいて整理していきます。
以下で扱うのは、令和8年度の《6月試験》一般行政職Ⅰ・資格免許職Ⅰの受験案内の内容です。
9月試験や消防吏員、障がい者を対象とした選考考査は別の受験案内によるため、構成が異なる可能性があります。
段階構成と、全職種の配点
《6月試験》の一般行政職Ⅰ・資格免許職Ⅰでは、上級事務職(A)(B)だけが第1次から第3次までの3段階で、それ以外の全職種は第2次試験までの2段階です。
| 項目 | 内容(令和8年度《6月試験》一般行政職Ⅰ・資格免許職Ⅰ) |
|---|---|
| 試験の段階 | 上級事務職(A)(B)は第1次・第2次・第3次の3段階。それ以外の全職種は第2次試験まで |
| 第1次試験 | 筆記試験。上級事務職(A)は教養試験(択一式・大学卒業程度・40問・120分)と専門試験(択一式・40問・120分)。上級事務職(B)ほか土木・建築・電気・機械・保健師・司書はSCOA(択一式120問・60分) |
| 適性検査 | 第1次試験の際に、すべての職種で個人面接の参考とする適性検査(マークシート方式・40分程度)を実施 |
| 第2次試験 | 上級事務職(A)(B)は〔動画面接〕人物等に関する個人面接。それ以外の職種は〔個人面接〕人物等に関する個人面接(保育教諭職のみ実技試験が加わる) |
| 第3次試験 | 上級事務職(A)(B)のみ。〔個人面接〕人物等に関する個人面接(会場は市原市役所) |
| 筆記の得点の扱い | 「教養試験及び専門試験は、標準点化します。標準点とは、標準偏差を用いて算出したもので、受験者の点数は概ね0点から100点に分布し、平均点が50点となります。」 |
| 合格者の決め方 | 「第1次試験、第2次試験及び第3次試験の合格者は、各試験の成績に基づいて決定します。」 |
| 採用予定人数 | 上級事務職(A)(B)は30数人程度、上級・中級・初級の土木職は10人程度、建築職・電気職・機械職・保育教諭職・保健師職・司書職は各数人 |
そして、この試験の最大の特徴が配点の公表です。
| 職種 | 配点 | 満点 | 面接系の割合 |
|---|---|---|---|
| 上級事務職(A) | 教養試験100・専門試験100・個人(動画)面接100・個人面接100 | 400点 | 200点(2分の1) |
| 上級事務職(B) | 教養試験100・個人(動画)面接100・個人面接100 | 300点 | 200点(3分の2) |
| 土木・建築・電気・機械職、保健師職 | 教養試験100・専門試験100・個人(動画)面接100 | 300点 | 100点(3分の1) |
| 司書職 | 教養試験100・個人(動画)面接100 | 200点 | 100点(2分の1) |
| 保育教諭職 | 教養試験100・専門試験100・個人(動画)面接200・実技試験100 | 500点 | 200点(5分の2) |
上記は令和8年度市原市職員採用試験(6月試験)の一般行政職Ⅰ・資格免許職Ⅰの受験案内にもとづく内容です(出典:市原市職員採用試験受験案内(6月試験)|令和8年度)。表の「満点」と「面接系の割合」は、受験案内が職種ごとに公表している各試験の配点を当研究会が合算・計算したものです。試験の構成・日程・配点等は、年度・回次・試験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身が受ける回次と区分の最新の試験情報をご確認ください。
配点表を対策の順番に翻訳する
数字を並べただけでは準備は進みません。ここからが本題です。
まず上級事務職(A)は400点のうち200点、上級事務職(B)は300点のうち200点が面接の点数です。事務職を志望するなら、面接の準備は「筆記が終わってから」ではなく、筆記と並行して進めるべき配分だと分かります。
次に、筆記側の点数の性質です。教養試験と専門試験は標準点化され、受験者の点数は概ね0点から100点に分布し、平均点が50点になるように算出されます。
つまり素点がそのまま加算されるのではなく、受験した集団の中での位置に置き換えられるということです。
多くの受験者は平均の付近に集まりますから、筆記だけで大きく抜け出すのは簡単ではありません。相対的に、面接の200点が結果を動かしやすい構造だといえます。
技術職や保健師職はこれと事情が違います。第2次試験までの2段階で、面接系は動画面接の100点。
300点のうち3分の1です。専門試験100点の重みが事務職より相対的に大きく、面接一本に賭ける配分にはなっていません。
自分の職種の配点表を見ないまま、他人の対策法をまねしても意味がないのは、このためです。
もう一つ、上級事務職(A)(B)に特有の点があります。人物を見る試験が動画面接と個人面接の2回ある構成です。
受験案内は第2次試験を〔動画面接〕人物等に関する個人面接、第3次試験を〔個人面接〕人物等に関する個人面接と記載しています。
実施方法の細かな条件までは案内に書かれていないため、撮り直しの可否などは最新の受験案内で確認してください。ただ、話す内容の準備は共通です。
カメラの前で一人で話す形になった場合、相手の相づちには助けられません。最初の15秒で結論を言い切る練習をしておくと、対面の面接でも効いてきます。
市原市役所が求める人物像
市が公表している人材像は第1部で見たとおり、「市民に信頼される人」「果敢に挑戦する人」「チームで成果を出せる人」の3つです。面接に向けては、これを自分の経験の側から言い直しておく作業が要ります。
ここまでが市の公表文言です。ここから先は当研究会の編集的な見立てになります。
市原市の職員が受け持つのは、368.16km²という県内の市で最も広い市域です。同じ制度を動かすにも、地域によって人の集まり方も移動の手段も変わります。
加えて高齢化率は県平均を3.5ポイント上回っており、限られた人と予算をどの地域から、どの順番で充てるかという判断が、日常の業務に組み込まれています。
こうした環境では、構想を語れる人よりも、地域の事情を聞き取ったうえで実行できる大きさまで話を縮められる人が重く見られやすいと考えられます。
市が「果敢に挑戦する人」の説明に「人口減少等の社会環境の変化に対して」という条件を付けているのも、同じ方向を向いた記述だといえます。
自己PRでは、「挑戦しました」で終わらせないでください。誰と組んで、何を変え、その結果どうなったのかまで話せる経験を一つ用意しておきましょう。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。市原市の動画面接と個人面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | まず自己紹介を1分でお願いします | 時間の枠に合わせて話をまとめられるか |
| ② 動機・志望 | 他の市ではなく市原市を選んだ理由を教えてください | 市の実情を調べたうえでの選択かどうか |
| ③ 自己理解 | 周囲からどんな人だと言われますか | 他者から見た自分を把握できているか |
| ④ 経験・行動 | うまくいかなかったことを、どう立て直しましたか | 失敗の後に打った手の中身 |
| ⑤ 学業・経歴 | 力を入れて学んだことを教えてください | 学びを仕事に接続する視点があるか |
| ⑥ 適性・将来 | 市原市でどんな仕事に携わりたいですか | 市の業務への理解の解像度 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 人口が減っていく社会で行政に何ができると思いますか | 社会の変化を自分の言葉で語れるか |
ただし、この7カテゴリーは市原市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「市原市ならでは」の質問です。
合否を分けるのは「市原市役所ならでは」の質問
上級事務職では、こうした問いに答える場が動画面接と個人面接の2回あります。1回目に話した内容が、2回目でさらに掘られる前提で材料をそろえておく必要があります。
以下では、答えるための「市原市の事実」を面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい市原市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 市の規模と広さ | 面積368.16km²は県内37市で最も広く、人口は265,371人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)、人口密度は721人/km² | 「広い市です」で止めず、広さのために生じる仕事の違い(同じ制度でも届け方が地域で変わること)まで自分の言葉にします |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 市が求める人材像の1つ目は「市民に信頼される人」で、市民目線に立った行政サービスの提供と、市民との信頼関係の構築が説明として付されている | 県と市の権限の違いを説明するのではなく、住民と直に信頼関係をつくる立場で働きたい理由を、自分の経験から述べます |
| 市の高齢化 | 住民基本台帳による令和8年1月1日現在の高齢化率は31.1%、75歳以上は17.9%。県全体(27.6%・16.5%)を上回る | 数字を挙げたうえで、広い市域と高齢化が重なると移動や情報の届き方に課題が出るという読み筋まで示します |
| 求める人材像 | 「果敢に挑戦する人」には「人口減少等の社会環境の変化に対して、新たな発想で積極果敢に行動できる人」という説明が付いている | 公表文言をなぞるのではなく、減っていく前提の中で自分がどう工夫したかという経験を用意して答えます |
| 採用試験の設計 | 職種ごとの配点を公表し、筆記は標準点化。不合格者には順位や科目別の正解数が開示される | 制度を褒めるだけで終わらせず、その情報をどう使って自分の準備を組み立てたかを話すと、志望度の高さが伝わります |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。志望分野に近いテーマを1つか2つに絞り、事実から自分の問題意識、そして市職員として関わりたい仕事までを一息で話せる形にしておくことです。
想定される評価の観点
面接は、市が公表する人材像に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 市民に信頼される姿勢 | 強い責任感と、自ら学ぶ姿勢が人材像の説明に明記されている。任された役割をどこまで引き受けたかが問われる | 途中で投げ出さずにやり切った場面を選び、責任の範囲が広がったときに何を勉強し直したかまで話せるようにしておく |
| 変化に対して新しい発想で動く力 | 「人口減少等の社会環境の変化に対して」という条件付きの人材像。条件が厳しくなる場面での動き方を見られる | 人手や時間が足りない状況で、やり方そのものを変えて乗り切った経験を用意する。何を捨てたかまで言えると強い |
| 多様な相手と組んで成果を出す力 | 3つ目の人材像。他の職員、市民、企業といった立場の違う相手との連携が具体的に挙げられている | 立場の異なる人が集まる場で、自分がどの役回りを担ったのかを、結果とセットで説明できるようにしておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
上級事務職は人物を見る試験が2段階ありますから、同じ経験を別の面接官から違う角度で問われることになります。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分が受ける回次(6月試験か、それ以外か)と区分を先に決める。回次と区分で段階数も試験科目も変わる
- その受験案内の配点表を書き出し、満点の内訳を確認する。上級事務職なら面接系が半分以上を占めることを、準備計画の前提に置く
- 筆記の対策範囲を決める。上級事務職(A)は教養と専門の択一式、上級事務職(B)ほか多くの職種はSCOAで、必要な勉強がまったく違う
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る。動画面接でも個人面接でも土台になる
- この記事の前半を読み返し、固有質問の対応表から志望分野に近い事実を2つか3つ選んで、自分の言葉で説明できるようにする
- 上級事務職を受けるなら、カメラの前で一人で話す練習も入れておく。録画して見返し、結論が最初に来ているかを確認する
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の配点の確認と、自分の経験の棚卸しを優先してください。配点表を見ないまま勉強時間を配ることが、この試験でいちばんもったいない失敗です。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、市原市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
市原市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
市原市の採用試験は、配点も、筆記の点数の扱い方も、不合格のときに開示される情報も、受験案内に書いてあります。
上級事務職(A)なら400点のうち200点、上級事務職(B)なら300点のうち200点が面接の点数。この事実を知っているかどうかで、本番までの数か月の使い方は変わります。
県内の市で最も広い市域を持ち、高齢化は県平均を上回り、それでも新しいやり方で挑む人を求めている市です。自分の経験のどれを、この市のどの場面で使えるのか。
動画の前でも、市原市役所の面接室でも同じ答えができるところまで、言葉を練り上げていってください。