本記事では、北九州市職員採用試験の面接対策で必要な、北九州市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

北九州市役所の面接では、「なぜ北九州市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「これまでの経験を市政でどう生かすのか」といった問いが想定されます。上級等採用試験【通常枠】は、第1次試験の段階から個別面接が課され、しかもその配点が大きいため、面接の準備を後回しにできない構造になっています。

なお、北九州市の上級等採用試験には【春季枠】【通常枠】【秋季枠】の3つの枠があり、枠によって試験方式も段階数も異なります。

本記事の第2部は、令和8年度の上級等採用試験【通常枠】の内容を中心に整理しています。ご自身が受ける枠と試験区分を確かめながら読み進めてください。

第1部|自治体研究編

北九州市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは北九州市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 1963年(昭和38年)2月10日に門司市・小倉市・若松市・八幡市・戸畑市の五市が合併して誕生した、九州初の政令指定都市。
  • 現在は7つの行政区(門司区・小倉北区・小倉南区・若松区・八幡東区・八幡西区・戸畑区)で構成される。
  • 人口は905,635人(令和8年1月1日現在・住民基本台帳)。福岡県内で政令指定都市に指定されているのは、福岡市と北九州市の2市。
  • 令和7年国勢調査の速報値では、令和2年から34,740人(3.70%)の減少。この減少数は、全国のすべての市区町村の中で最も大きい。
  • 一方で、令和8年度当初予算は、1964年以来となる2年連続の人口転入超過を「潮目の変化」として位置づけている。
  • 九州最北端に位置し、関門海峡をはさんで本州と向き合う。洞海湾・響灘・周防灘に面し、小倉南区には日本三大カルストのひとつ平尾台や曽根干潟がある。
  • 北九州港は本州と九州の結節点にある国際拠点港湾。北九州空港は連絡橋で結ばれた24時間利用可能な海上空港で、滑走路の延長事業が進む。
  • 高齢化率は、令和4年度末時点で政令指定都市の中で最も高い。人口のピークは昭和54(1979)年の約106万8千人で、平成17(2005)年に100万人を割った。

北九州市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、統計値を細かく暗記する必要はありませんが、政令市としての規模と、その中で進んでいる変化を数字で言える状態にはしておきたいところです。

政令市の話をするときに使う項目に、7つの行政区と予算規模を加えて並べています。

項目内容
総人口905,635人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口286,188人(31.6%)
75歳以上人口171,504人(18.9%)
総面積492.50km²(県内29市で最も広い)
人口密度約1,839人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
行政区数7区(最大は小倉南区171.51km²、最小は戸畑区16.61km²)
名目市内総生産約3兆8,000億円
令和8年度一般会計当初予算6,476億84百万円(前年度比0.7%増)

総人口・65歳以上人口・75歳以上人口は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。総面積・行政区の面積は令和7年1月1日現在の市公表値、市内総生産は令和元年時点の分析(令和5年7月公表)によります。人口密度は住民基本台帳人口を面積で割った値です。国勢調査を基準とする人口とは調査の枠組みが異なるため、直接比較はしないでください。

数字から考えられる市政課題

北九州市の人口を見るときは、総数よりも中身の動きを追ってください。令和7年国勢調査の速報値(市の独自集計)では人口904,289人で、令和2年から34,740人・3.70%の減少。

区別に見ると八幡西区242,450人(構成比26.81%)が最も多く、小倉南区202,764人、小倉北区180,182人と続きますが、7つの区すべてで令和2年から人口が減っています。(出典:令和7年国勢調査 北九州市の人口(速報))

世帯数は437,836世帯と令和2年から0.36%増え、1世帯当たり人員は2.07人になりました。人が減りながら世帯が増える、つまり一人暮らしと小規模世帯が広がっているという構図です。

面接で人口の話をするなら、減少幅の大きさと世帯の小規模化を組み合わせて話すと、暮らしの実感に近い説明になります。

「北九州市は人口が90万人を超える政令市ですが、国勢調査の速報では5年間で3万5千人ほど減っていて、これは全国の市町村で一番大きい減り方だと知りました。7つの区すべてで減っている一方、世帯の数は増えていて、一人暮らしの高齢の方が増えているのだと思います。減っていく前提で、暮らしをどう支えるかを考える仕事に関わりたいです」

北九州市の経済・産業

ものづくりの構造転換

北九州市の製造品出荷額は2兆1,000億円程度(令和2年)で全国15位。構成比を見ると鉄鋼業が30.7%と最も大きく、金属製品12.1%、化学工業10.5%、輸送用機械器具8.1%と続きます。

素材型産業の割合が高いのが特徴です。(出典:北九州市の産業構造の分析|令和5年7月公表)

ただし、内訳は静止していません。平成23年から令和2年にかけて、鉄鋼業は24.0%減、窯業・土石製品は33.0%減となる一方、輸送用機械器具は255.3%増、金属製品は111.1%増と伸びています。

看板は「鉄のまち」でも、実際に増えているのは輸送用機械と金属製品という入れ替わりが進行中です。全体としては、平成24年から令和3年で事業所数12.7%減・従業者数5.0%減と、規模の縮小も同時に起きています。

港と空港が担う結節点の機能

北九州港の令和3年の海上出入貨物取扱量は9,636万トン(前年比9%増)で全国5位、コンテナ貨物取扱量は498千TEUで全国9位。東・東南アジアとの間に35航路・月152便の外貿定期コンテナ航路が就航しています。(出典:北九州港の港勢|令和3年)

北九州空港は24時間利用できる海上空港で、現在2,500mの滑走路を南側に500m延長し3,000mとする事業が進んでいます。事業者は国土交通省で、令和9年度の竣工を予定しています。

物流や産業立地を志望分野にするなら、港と空港をひとまとめの「結節点」として捉えておくと話が組み立てやすくなります。

洋上風力という新しい柱

市の沖合の響灘では、「北九州響灘洋上ウインドファーム」(総事業費約1,700億円、総出力最大22万キロワット、9.6メガワット機25基)が令和5年3月に着工しました。市はこれをグリーンエネルギーポートひびき事業と位置づけ、洋上風力の製造やメンテナンスの拠点化を進めています。(出典:グリーンエネルギーポートひびき事業|北九州市)

観光の回復と産業観光

市の観光動態の集計では、令和5年次の観光客数は延べ2,222.2万人(前年比24.5%増)で、コロナ禍前の水準にほぼ戻りました。外国人観光客数は26.9万人(同647.2%増)、工場や産業遺産をめぐる産業観光客数は28.6万人(同45.2%増)です。

観光を志望分野にするなら、名所の紹介ではなく、ものづくりの現場そのものを見せる産業観光という切り口を持っておくと、北九州市らしい答えになります。

北九州市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、北九州市が向き合っている課題が見えてきます。「市の課題は何だと思いますか」と聞かれた場面を想定して、次の5つを整理しておきましょう。

全国最大規模の人口減少と、その中の反転の芽

令和7年国勢調査の速報集計で、北九州市の人口減少数は全国のすべての市区町村で最大となりました(次いで静岡市33,769人減、京都市32,010人減)。21大都市の減少率で見ると、静岡市4.9%、新潟市3.8%に次いで北九州市が3.7%と3番目です。

将来推計では、令和22(2040)年に801,253人、令和32(2050)年に728,898人まで減る見通しが示されています。(出典:令和7年国勢調査 人口速報集計|総務省)

その一方で、市は1964年以来となる2年連続の人口転入超過(令和6年492人・令和7年443人)を「潮目の変化」と表現しています。減り続ける全体像と、転入が出ていく人を上回りはじめた足元。

この2つを同時に説明できるかどうかが、北九州市の現状認識を語るときの分かれ目になります。

政令市で最も高い高齢化率

北九州市の高齢化率は政令指定都市の中で最も高く、令和4年度末時点で31.4%(全国値29.1%)でした。総合計画も、総人口・生産年齢人口・年少人口がいずれも減る一方で高齢者の割合が上がり続けること、高齢者のみの世帯の割合が全国より高く推移していることを課題に挙げています。

出生数は昭和47(1972)年のピーク時の約3割まで減り、人口千人当たりの出生率も令和3年で6.8(全国値6.6)です。(出典:北九州市総合計画(市民を取り巻く状況と課題))

素材型産業からの転換

鉄鋼と窯業・土石が二桁で減り、輸送用機械と金属製品が大きく伸びる。この入れ替わりは、働く場所の中身が変わっていくということでもあります。

名目市内総生産が約3兆8,000億円という水準にある市で、この生産の総額をどう押し上げていくかは、産業政策の中心にある問いです。企業誘致や創業支援を志望動機に置くなら、「にぎわい」ではなく「所得と雇用」の言葉で語れるようにしておきましょう。

財政の健全化と、投資の両立

令和5年度決算では、実質公債費比率10.1%(前年度10.4%)、将来負担比率143.2%(前年度147.2%)といずれも改善しました。

ただし市債残高は臨時財政対策債を含めて1兆1,975億50百万円と前年度から0.7%増え、地方交付税750億30百万円が示すとおり依存財源が歳入の大きな部分を占めます。令和8年度当初予算は一般会計6,476億84百万円と過去最大規模で、健全化と投資を同時に進める舵取りが続いています。(出典:北九州市の令和5年度決算)

地震と津波への備え

市が想定する小倉東断層による地震では、震度7の揺れ、死者約500人、建物の全壊・全焼約9,500棟、半壊約25,000棟が見込まれています。南海トラフ地震については震度5弱(一部5強)、最高津波水位3.5メートルが想定され、令和7年3月に国が公表した新たな被害想定では津波の高さが最大5メートルとされました。

直下の活断層と、海側からの津波という2種類のリスクを同時に抱えるのが、海峡と湾に囲まれたこの市の条件です。(出典:北九州市で想定されている地震|北九州市)

北九州市の重点政策|北九州市・新ビジョン

北九州市の最上位計画は「北九州市・新ビジョン(北九州市基本構想・基本計画)」(令和6年3月策定)です。基本構想が目指す都市像を示し、基本計画が目標年次2040年までの重点戦略と主要政策を定める構造で、おおむね5年ごとに内容を検証し見直すこととされています。(出典:北九州市・新ビジョン(基本構想・基本計画))

目指す都市像と3つの重点戦略

掲げられている都市像は「つながりと情熱と技術で、『一歩先の価値観』を体現するグローバル挑戦都市・北九州市」です。人と人の「つながり」、熱い「情熱」、ものづくりや環境の「技術」という3つを、市の歴史とDNAから抽出した強みとして位置づけています。

重点戦略目指す姿と主な柱
Ⅰ「稼げるまち」の実現好循環の起点であり最優先課題。稼げる「基盤」(陸・海・空のネットワーク、メガリージョンの推進、新たな産業用地の創出)、稼げる「人」(スタートアップ、若者のチャレンジ支援)、稼げる「産業」(バックアップ首都構想、未来産業、北九州グリーンインパクト、物流拠点構想)
Ⅱ「彩りあるまち」の実現彩りある「空間」(街並み、住まい環境、デジタル)、彩りある「時」(文化芸術・スポーツ、エンターテインメント、観光資源)、彩りある「人」(グローバル人材・理工系人材の育成、教育環境の充実)
Ⅲ「安らぐまち」の実現生活基盤の「安心」(災害に強いまちづくり、犯罪のないまちづくり、都市基盤の維持)、子ども・子育ての「安心」、暮らしの「安心」(多様性、地域医療、地域コミュニティ、生涯現役)

3つは並列ではありません。「稼げるまち」で都市の経済力を高めることを起点に、「彩りあるまち」「安らぐまち」へつなげ、「成長と幸福の好循環」を生み出すという順序が明示されています。

志望分野が福祉や教育であっても、この順序を理解したうえで語ると、計画を読み込んでいることが伝わります。

令和8年度の市政運営のポイント

令和8年度の一般会計当初予算は6,476億84百万円で、市の資料では過去最大と位置づけられています。予算のテーマは「成長加速予算 ~3つの『あつまる』と『地域の力』で~」で、①“人”があつまる ②“投資”があつまる ③“経験”があつまる の3つの重点テーマと、土台となる基盤テーマ「地域の力」で構成されています。(出典:令和8年度当初予算|北九州市)

具体的な事業としては、小学校給食の無償化や学校体育館へのエアコン設置を束ねた「学びの質向上パッケージ」、政令市で初めてとなる第2子以降の保育料の完全無償化、「小倉・黒崎ブースト」大作戦、旦過・折尾の次世代まちづくり、滑走路3,000m化を進める北九州グローバルエアロジスティクス拠点の構築などが並びます。

高齢化率の高さを逆手にとった「ケイケン・タカラ」プロジェクトのように、課題を資源として読み替える事業がある点も、この市の予算の特徴です。

POINT|事業名を並べるより、戦略のどこに立つかを言う

新ビジョンの柱も予算の事業も、数はかなりあります。全部覚える必要はありません。関心のある分野を一つ選び、「①北九州市で何が起きているか → ②新ビジョンのどの戦略に位置づくか → ③今どんな事業があるか → ④自分の経験のどこが使えるか」の順で1本だけ通してください。

悪い例「北九州市の子育て支援に関わりたいです」

改善例「第2子以降の保育料を完全に無償化するという話を知って驚きました。子育ての負担を減らす取り組みが、そのまま人に選ばれるまちづくりにつながっているのだと思います。転入が2年続けて増えているタイミングなので、その流れを止めない仕事に関わりたいです」

あわせて確認したい公式資料

量が多いので、受ける枠と志望分野に関わるものから開いてください。開いていない資料の名前は、面接で出さないほうが安全です。

  • 北九州市職員採用試験の受験案内(最新年度・自分が受ける枠のもの)/北九州市職員募集ホームページ
  • 北九州市・新ビジョン(概要版)
  • 最新年度の当初予算の概要と、関心分野の個別計画
  • 令和7年国勢調査の市集計(区別の人口と世帯の動き)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、北九州市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。北九州市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

北九州市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

北九州市役所の面接の概要

ここからは、上級等採用試験【通常枠】を軸に、試験の形と配点、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

北九州市役所の面接の流れ

北九州市の職員採用試験を実施しているのは北九州市人事委員会で、事務は行政委員会事務局任用課が所管しています。福岡県職員採用試験を実施する福岡県人事委員会や、福岡市の実施機関とは別の組織であり、試験区分名も配点も別の体系です。

県や福岡市の情報をそのまま当てはめないよう注意してください。

【通常枠】は第1次試験・第2次試験の2段階です。特徴は第1次試験の中身にあります。

第1次試験は筆記試験だけではなく、筆記の総合成績で選ばれた人が受ける第1次口述試験(個別面接)までを含みます。そして消防士を除く各試験区分では、第1次試験の合計400点のうち200点が口述試験の配点です。

人物試験の比重は、第1次の段階ですでに5割に達しています。

項目内容(令和8年度・上級等採用試験【通常枠】)
実施主体北九州市人事委員会。事務は行政委員会事務局任用課が所管します
試験の枠上級等採用試験には【春季枠】【通常枠】【秋季枠】があり、枠によって試験方式と段階数が異なります。以下は【通常枠】の内容です
試験の段階第1次試験・第2次試験の2段階。第1次試験は第1次筆記試験と第1次口述試験で構成されます
面接の種類第1次口述試験・第2次口述試験ともに個別面接。第2次試験は全試験区分で個別面接のみです
集団形式集団討論・集団面接は実施されません
配点(消防士以外の各区分)第1次試験=筆記200点+口述200点の合計400点、第2次試験=口述100点。筆記200点の内訳は区分により異なり、行政Ⅰや技術系は教養80点+専門120点、行政Ⅱ(民間等経験)・行政Ⅱ(行政経験)・土木Ⅱ(行政経験)は教養200点のみです
配点(消防士)第1次試験=筆記150点(教養100点+体力テスト50点)+口述150点の合計300点、第2次試験=口述100点
社会人経験者の区分行政Ⅱ(民間等経験)・行政Ⅱ(行政経験)・土木Ⅱ(行政経験)は、SPI3(テストセンター方式)+WEB面接(第1次口述試験)+個別面接(第2次口述試験)。試験会場への来場は1回のみです
合否の決め方第1次試験の合否は第1次筆記試験と第1次口述試験の総合成績により決定。第2次試験の合否は第2次口述試験の成績順に決定し、同点者内の順位のみ第1次試験の成績順によります。各試験の成績が一定の基準を満たさない場合は不合格となります
提出書類全区分共通で履歴書を電子申請により提出します(期限までに提出できない場合は受験できません)。行政Ⅱ(民間等経験)・行政Ⅱ(行政経験)・土木Ⅱ(行政経験)は、申込時にエントリーシートの電子データを添付します
性格検査第1次試験合格後にSPI3の性格検査(WEB受検)を実施。結果は口述試験の参考資料として使用されます
試験地第1次筆記試験は北九州と東京の2会場(消防士は北九州のみ)。第1次口述試験は北九州市内および東京都区部内、第2次口述試験は北九州市内で実施されます

上記の試験構成は、北九州市の令和8年度上級等採用試験【通常枠】の受験案内にもとづくものです。【春季枠】【秋季枠】の技術区分は第3次試験(専門個別面接)まで実施されるなど、枠により構成が異なります。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の枠と区分の最新の試験情報をご確認ください。

もうひとつ押さえたいのが、最終盤の決まり方です。受験案内は「第2次試験の合否は、第2次口述試験の成績順に決定します」と明記しており、第1次の成績が使われるのは同点者内の順位を決めるときだけです。

最終合格の順位は、最後の個別面接の成績で決まる構造になっており、筆記で稼いだ差を最終盤まで持ち越すことはできません。第1次と第2次で同じ話題を角度を変えて掘られる前提で、暗記した答えの再生ではなく、掘り下げに耐える準備をしておきましょう。

なお、令和8年度は、土木Ⅰ・建築Ⅰ・電気Ⅰ・機械Ⅰの受験可能年齢の下限が20歳に引き下げられ、行政Ⅱ(民間等経験)と行政Ⅱ(行政経験)の合計採用予定数が20名程度へ拡大されました。消防士では第2次筆記試験(小論文)が廃止されています。

参考までに、令和7年度の行政Ⅱの2区分は、採用予定9人に対し受験者225人・合格者11人で競争倍率20.5倍でした。

受ける区分で、筆記に仕込む中身が入れ替わる

第1次筆記試験の200点は、どの区分でも同じ中身ではありません。行政Ⅰ(専門択一)は教養試験(50問・択一式・2時間30分)に加えて、40問の専門択一を解きます。

同じ配点区分に置かれた行政Ⅰ(小論文)は、専門択一の代わりに1時間・800字以内の小論文を書きます。配点の内訳は教養試験80点ともう一方の科目120点ですから、800字の論述1本が、筆記200点のうち120点分の重さで扱われることになります。

採用予定数は専門択一45人、小論文21人。区分を決めた時点で、そこから先に積む勉強の中身も決まります。

行政Ⅱ(民間等経験)・行政Ⅱ(行政経験)・土木Ⅱ(行政経験)は、さらに形が違います。筆記200点は教養試験だけで、その中身はSPI3(テストセンター方式)。

第1次口述試験はWEB面接、第2次口述試験が対面の個別面接で、会場に足を運ぶのは1回だけです。専門科目を積む勉強がない分、準備の重さは書類と面接に寄ります。

エントリーシートは申込みの時点で添付し、再提出も返却もできませんから、送信の前に必ず手元へ控えを残してください。自分が何を書いたか確かめられないまま二度の口述試験に進むのは、避けたい状況です。

消防士は配点の形そのものが別です。第1次試験は筆記150点と口述150点の合計300点で、筆記150点の内訳は教養試験100点と体力テスト50点。

種目は立ち幅とび、上体起こし、反復横とび、握力、長座体前屈の5つで、机の上では上がらない点数が筆記の3分の1を占めます。先に触れた第2次筆記試験(小論文)の廃止も、消防士にとっては第2次試験が口述100点だけになるという意味を持ちます。

北九州市役所が求める人材像

北九州市は、受験案内の中で求める人材像を明示しています。「①熱く燃える『志』 ②勇気と挑戦精神 ③豊かなコミュニケーション ④未来を描き、実現する力」の4つの力を持ち、自己の能力を伸ばし、成長を重ねていく人、というのが公表されている文言です。

さらに、名称に「Ⅱ」が付く試験区分と「デジタル」については、この4つに加えて「職業人に必要な能力や経験を備え、即戦力として活躍できる人」「新たな組織風土の中で、これまで培った専門的能力や知見を発揮、実践し、市政に貢献できる人」が加わります。

「行政Ⅱ(行政経験)」「土木Ⅱ(行政経験)」では、さらに「過去の行政実務経験を踏まえ、即戦力として活躍できる人」が求められます。自分の区分にどこまでの要件がかかるのかを、案内で必ず確認してください。

受験案内が示しているのはここまでです。以降は、7つの区役所を抱える組織の形を手がかりにした当研究会の整理になります。

この市は7つの区役所を持つ大規模な基礎自治体でありながら、五市合併という成り立ちと、鉄と港に支えられた地域の歴史が今も強く残っています。市民の暮らしに直接向き合う区役所の窓口と、圏域全体の産業や物流を動かす政策の両方が、同じ市役所の中にあるということです。

この二つを行き来できる視野を持っているかどうかは、二度の個別面接のどこかで問われると考えておいてください。履歴書に書いた経歴のどこが、区役所の窓口と本庁の政策のどちらに効くのか。そこを自分で仕分けできていれば、語る材料は足ります。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。北九州市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク会場までの道のりはいかがでしたか?本題前の一言に出る、話し方の素の部分。第1次と第2次で2回とも個別面接なので、この入り方に慣れておく価値があります
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?民間でも実現できる動機で止まっていないか。職業選択の理由が経験とつながっているか
③ 自己理解あなたの短所は何ですか?自分を客観的に見られているか。短所とどう付き合ってきたかまで語れるか
④ 経験・行動これまでで最も困難だった経験と、その乗り越え方を教えてください困難の大きさではなく、その場面で何を考え、どう手を動かしたか
⑤ 学業・経歴研究や学びのテーマを簡単に説明してください専門外の相手に伝わる言葉へ置き換える力。学んだことを市の仕事につなぐ視点
⑥ 適性・将来入庁後に取り組みたい仕事は何ですか?市の仕事の理解の解像度。区役所と本庁のどちらにも配属されうる前提で話せるか
⑦ 公共性・社会性最近関心を持ったニュースは何ですか?社会の動きへのアンテナと、自分の意見を一言で述べる力

ここは受験先を問わず共通の範囲で、第1次口述試験でも第2次口述試験でも土台になります。個別面接が2回ある試験だからこそ、この7つは早い段階で片付けておきたいところです。

合否を分けるのは「北九州市役所ならでは」の質問

「なぜ福岡県庁ではなく、北九州市役所なのですか?」
「北九州市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

北九州市では、この2問に厚みが出ます。福岡県には政令指定都市が福岡市と北九州市の2つあり、しかも北九州市自身が人口減少と産業転換という大きな課題の当事者だからです。

しかもこの2問は、第1次と第2次で二度聞かれる可能性があります。一度目と同じ答えを繰り返すのか、掘り下げた先まで出せるのか。そこで印象は大きく変わります。

北九州市の事実のうち面接で扱いやすいものを、答え方とセットで挙げておきます。

質問テーマ知っておきたい北九州市の事実答え方のヒント
人口の現在地令和7年国勢調査速報で904,289人。令和2年から34,740人(3.70%)減で、減少数は全国の市区町村で最大。21大都市の減少率では3番目。7区すべてで減少減少幅の大きさだけでなく、全区に広がっているという事実まで押さえ、どの区の何に手を打つのかへ話を降ろします
反転の兆し令和8年度当初予算は、1964年以来となる2年連続の人口転入超過(令和6年492人・令和7年443人)を「潮目の変化」と位置づけている減少と転入超過が同時に起きている状態を説明できると、悲観にも楽観にも寄らない現状認識を示せます
市の最上位計画「北九州市・新ビジョン」(令和6年3月策定・目標年次2040年)。「稼げるまち」を起点に「彩りあるまち」「安らぐまち」へつなぐ3つの重点戦略やりたい仕事を3つの戦略のどれかに置いてから話すと、計画の順序を理解していることが伝わります
なぜ県庁ではなく市役所か福岡県内の政令指定都市は福岡市と北九州市の2市。北九州市は7つの区役所を持ち、窓口の仕事と圏域の産業政策の両方を同じ組織で担う制度の説明で終わらせず、区役所の窓口と本庁の政策のどちらも市役所の仕事だという点に触れます
産業の転換製造品出荷額2兆1,000億円程度(令和2年・全国15位)のうち鉄鋼業が30.7%。平成23年から令和2年で鉄鋼業は24.0%減、輸送用機械器具は255.3%増「ものづくりのまち」で止めず、何が減って何が増えたのかまで言えると、産業政策の議論に入れます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

北九州市は求める人材像を4つの力として公表しています。面接では、その4つを言葉として持っているかではなく、これまでの行動の中に現れているかが確かめられます。

いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
熱く燃える「志」なぜこの市なのかを、経験に根ざした理由で語れるか90万人規模の市の中で、自分が向き合いたい場面を一つに絞って言えるようにしておきましょう
勇気と挑戦精神前例のない場面や、うまくいく保証のない場面で何をしたか成功した話でなくて構いません。判断の理由と、その後どう修正したかまで話せる例を選びます
豊かなコミュニケーション立場や考えの違う相手と、どう折り合いをつけたか区役所の窓口も産業の現場も、相手は多様です。噛み合わなかった場面をどう動かしたかを言葉にしてください
未来を描き、実現する力先の見通しを立てて動き、形になるまで続けた経験があるか目標年次2040年の計画を持つ市です。短期の成果ではなく、続けた期間と積み上げの過程を語りましょう

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。北九州市は個別面接が2回ある分、この傾向はより強く出ます。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 受験案内で自分が受ける枠(春季・通常・秋季)と試験区分を確定し、段階数・配点・提出書類を押さえる。履歴書は全区分共通の提出物なので、期限を先に押さえる(エントリーシートを添付する区分は、送信前に控えを保存しておく)
  2. これまでの経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイト・職務経験から、話せる具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. この記事の第1部を読み返し、北九州市の事実を2〜3個、自分の言葉で説明できる状態にする
  5. 固有質問の対応表から材料を選び、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 声に出して練習する。第1次口述試験と第2次口述試験の2回を想定し、同じ話題を別の角度から掘られたときの返し方まで用意する

優先順位に注意

ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、北九州市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

北九州市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

北九州市役所の想定問答集を見る

さいごに

【通常枠】の試験は、消防士以外の区分であれば第1次試験の400点のうち200点が個別面接で、最終の合否は第2次口述試験の成績順に決まります。筆記の勉強は第1次を通過するために必要ですが、それだけでは最後まで届きません。

全国で最も大きく人口が減っている市が、2年続けて転入超過に転じている。この両面を抱えた市で自分は何をするつもりなのかを、経験に引き付けて説明できるようにしておいてください。

第1次と第2次で二度問われる前提で、答えの中身を厚くしていきましょう。