本記事では、久留米市職員採用試験の面接対策で必要な、久留米市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
久留米市役所の面接では、「なぜ久留米市を志望したのか」、「市職員として何に取り組みたいのか」、「これまでの経験を市政のどこで生かすのか」といった質問が想定されます。
久留米市は中核市として、県から約2,000項目の事務を引き受けている市です。県と市の役割の違いを語るとき、これ以上ない足場があります。
なお、第2部で扱う試験の構成は、令和8年度夏期の受験案内で確認できる範囲のものです。久留米市は令和8年度に春期・夏期・秋期の各期で採用試験を実施しており、申込は1つの試験区分に限られます。
夏期の受験案内には、春期および夏期に実施する各試験区分との併願はできないと明記されています。どの期のどの区分の話なのかを意識しながらお読みください。
第1部|自治体研究編
久留米市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは久留米市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 福岡県久留米市は、平成20年4月1日に中核市へ移行した市。中核市指定の政令が公布されたのは平成19年11月21日で、移行と同じ日に保健所を設置した。
- 中核市移行により、民生、保健衛生、環境、都市計画・建設、文教など、市民生活に身近な約2,000項目の事務が県から移譲されたと市が説明している。
- 人口は299,047人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。高齢化率28.4%、75歳以上率16.1%で、福岡県全体の28.2%・16.2%とほぼ同じ水準にある。
- 面積は229.96km²、人口密度は約1,300人/km²(住民基本台帳の人口を面積で割った値)。
- 境を接するのは小郡市・朝倉市・筑後市・大川市・うきは市・八女市・三潴郡大木町・八女郡広川町・三井郡大刀洗町と、佐賀県の鳥栖市・神埼市・三養基郡みやき町。県境をまたいで12の市町と接している。
- 明治6年の「つちやゴム足袋」(倉田雲平)、明治25年の「志まや」(石橋徳次郎)で地下足袋やゴム底運動靴などのゴム産業の基礎がつくられ、昭和6年に石橋正二郎がブリヂストンタイヤ株式会社を創業した。
- 昭和9年に操業を開始したブリヂストン久留米工場は同社のマザー工場。ブリヂストン、アサヒコーポレーション、ムーンスターの三大ゴムメーカーを中心とする近代産業都市である。
- 平成30年から令和3年まで4年連続で内水による浸水被害が発生し、令和2年3月に「金丸川・池町川総合内水対策計画」が策定された。
- 市の花は久留米つつじとコスモス、市の木は櫨、久留米つばき、くろがねもち、けやき、くすのき。
久留米市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「久留米市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
久留米市を説明するときの軸は、人口の規模と年齢構成、市域の広さ、そして中核市としての権限の3つです。順に確認していきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 299,047人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 84,889人(28.4%、福岡県全体は28.2%) |
| 75歳以上人口 | 48,219人(16.1%、福岡県全体は16.2%) |
| 総面積 | 229.96km² |
| 人口密度 | 約1,300人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 中核市への移行 | 平成20年4月1日(同日に保健所を設置。政令公布は平成19年11月21日) |
| 県から移譲された事務 | 民生、保健衛生、環境、都市計画・建設、文教など約2,000項目 |
| 境を接する市町 | 小郡市・朝倉市・筑後市・大川市・うきは市・八女市・三潴郡大木町・八女郡広川町・三井郡大刀洗町、佐賀県鳥栖市・神埼市・三養基郡みやき町 |
| 市の花・市の木 | 久留米つつじ、コスモス/櫨、久留米つばき、くろがねもち、けやき、くすのき |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口と、比較に用いた福岡県全体の値は、いずれも総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の数値です。国勢調査を基礎とする推計人口とは調査の基準が異なりますので、他の資料の人口と直接比べないでください。
数字から考えられる市政課題
久留米市の年齢構成には、少し珍しい特徴があります。
高齢化率28.4%は福岡県全体の28.2%とほぼ重なり、75歳以上率16.1%にいたっては県の16.2%をわずかに下回っています(いずれも令和8年1月1日現在)。
県全体の平均に、ほぼそのまま乗っている市だということです。
これは「まだ余裕がある」という意味ではありません。県全体で今後起きることが、この市でも同じ速さで起きるということです。
福岡県は、県全体の高齢化率が2060年に36%台へ上がると見込んでいます。久留米市の未来図も、その線の上にあります。
目の前で困っている人への対応と、10年後20年後に備える仕込みを、同時に進める必要があるわけです。
久留米市の事務職の試験は、第1次と第2次で計2回の面接があります。しかも第1次の面接は、筆記試験の得点が一定の基準を超えた人だけが受ける仕組みです。
筆記を通ったあとは、2回の面接で人物を見ていく形になります。数字は、その2回で自分の関心を説明するために使いましょう。
面接での言い回しにすると、次のような形です。
久留米市の経済・産業
経済・産業構造の概要
- 福岡県の名目県内総生産は全国第9位(令和2年度県民経済計算)。中小企業が県内企業数の99.8%、従業員数の77.3%を担っている。
- 筑後を含む県の農業は水田割合81%(全国平均54%)が特徴で、耕地面積は7万8,000ha(県土の16%)。小麦・いちご・甘柿は全国2位。
- 久留米市は明治期の足袋づくりから始まったゴム産業の集積地で、ブリヂストン、アサヒコーポレーション、ムーンスターの三大ゴムメーカーを中心とする近代産業都市。
- 昭和9年に操業を開始したブリヂストン久留米工場は、同社のマザー工場と位置づけられている。
つまり、水田の広がる筑後の平野に、世界的なメーカーを生んだ製造業の集積が重なっているのが久留米市の産業構造です。農業の話をしても、ものづくりの話をしても、どちらもこの市の本筋に触れられます。(出典:福岡県の産業|令和5〜6年/久留米市のゴム産業のあゆみ)
足袋から始まった産業の系譜
明治6年、倉田雲平が「つちやゴム足袋」を、明治25年には石橋徳次郎が「志まや」を興し、地下足袋やゴム底運動靴といった製品でゴム産業の基礎がつくられました。
そこから昭和6年、石橋正二郎がブリヂストンタイヤ株式会社を創業します。昭和9年操業のブリヂストン久留米工場は、いまも同社のマザー工場です。
この系譜が面接で効くのは、産業振興を語る場面だけではありません。人が働く場所があるということは、そこに通う人の暮らしがあり、子育てがあり、老後があるということです。
産業の話を、市民の暮らしの話へ折り返せるかどうかで、答えの深さが変わります。
中核市が持つ産業関連の権限
久留米市の試験案内は、「公権力の行使に該当する職務」の例として、市税等の賦課・滞納処分、生活保護の決定、土地収用、開発行為の監視・規制、建築基準法に基づく許可、違反建築物に対する命令、食品衛生監視を挙げています。
この顔ぶれを見ると、中核市の意味が具体的に見えてきます。飲食店を監視するのも、建物の許可を出すのも、開発を規制するのも、市の職員の仕事です。(出典:久留米市職員採用試験案内|令和8年度夏期)
事業者と向き合う場面は、支援だけではありません。止めたり、直させたりする役回りもあります。
ここまで踏まえたうえで志望動機を語れると、行政の仕事への理解の深さが伝わります。
久留米市の主な行政課題
ここまでの内容から、久留米市の課題を5つ取り出します。志望分野に近いものを一つ選んで深く掘るほうが、5つを浅くなぞるより面接では効きます。
繰り返す浸水と、内水対策
久留米市の課題として、まず挙げるべきは水です。平成30年から令和3年まで4年連続で内水による浸水被害が発生し、筑後川水系では4年間で5度の浸水被害を数えました。
令和元年7月の大雨では、市を中心とした局所的なエリアで24時間雨量351mm(6時間260mm・最大時間雨量95mm)を観測し、気象庁久留米観測所では1時間から24時間までのすべての雨量が観測史上最大となっています。(出典:福岡県の豪雨災害の記録)
こうした被害が続くなかで、市は令和2年3月に「金丸川・池町川総合内水対策計画」を策定しました(下弓削川・江川についても総合内水対策計画を策定)。
それでも令和3年8月の大雨では、市内で72時間雨量718.5mm(8月の平均雨量の約3倍)を観測しています。
いまは計画に沿って、国・福岡県・久留米市が連携した古賀坂排水機場の増強(令和4年度事業費9億1,000万円)などが進んでいる段階です。(出典:久留米市の総合内水対策)
県平均をなぞる高齢化
福岡県人口ビジョンは、社人研の推計方法に準拠した場合の2060(令和42)年の県人口を408万人、現在の約8割と見込んでいます。
高齢化率は2020年の28.0%から36.1%へ上がる見通しです。出生率の改善等を前提とした将来展望では、40万から60万人程度の緩和が示されています。
久留米市の年齢構成は県の平均とほぼ重なりますから、この見通しは市の見通しでもあります。(出典:福岡県人口ビジョン)
地震への備え
福岡県の地震防災アセスメント調査報告書(令和7年10月31日公表)は、県内7つの主要活断層(小倉東断層、福智山断層帯、西山断層帯、宇美断層、警固断層帯、日向峠-小笠木峠断層帯、水縄断層帯)と南海トラフ地震を想定しています。活断層はいずれも最大震度7の予測で、南海トラフ地震については県内最大震度5強、避難者3,100人とされています。(出典:福岡県地震防災アセスメント調査報告書|令和7年10月)
約2,000項目を担う体制をどう維持するか
中核市への移行で、久留米市は民生、保健衛生、環境、都市計画・建設、文教にわたる約2,000項目の事務を引き受けました。保健所も市の組織です。
人口299,047人の市がこれだけの範囲を担うということは、一人ひとりの職員が受け持つ守備範囲も広いということになります。
専門性と、分野をまたぐ柔軟さを同時に求められる組織だと考えておきましょう。
県境をまたぐ広域の課題
久留米市が境を接するのは12の市町で、そのうち3つは佐賀県です。川も道も、通勤や買い物の流れも、県境で止まりません。
福岡県総合計画(令和4年度から令和8年度)が挙げる4つの変化のうち、頻発化・激甚化する自然災害は、まさに流域全体で受け止めるものです。
市の中だけで完結する課題のほうが少ない、という前提を持っておくと、政策の話に幅が出ます。
久留米市の重点政策|中核市の役割と県の計画
久留米市がどんな枠組みのなかで仕事をしているかを、中核市としての権限と、県の計画との関係から整理します。市が定めている個別の計画については、名称と最新版を久留米市の公式サイトでご確認ください。
約2,000項目の移譲が意味するもの
平成19年11月21日に中核市指定の政令が公布され、平成20年4月1日、久留米市は中核市へ移行しました。同日、保健所が設置されています。
市の説明によれば、この移行で民生、保健衛生、環境、都市計画・建設、文教など、市民生活に身近な約2,000項目の事務が県から移りました。(出典:久留米市の中核市移行について)
受験生にとって重要なのは、項目数そのものではありません。感染症への対応も、食品衛生の監視も、建築の許可も、久留米市では県ではなく市の窓口で完結するという点です。
志望する分野の仕事が、県と市のどちらの手にあるのか。これを一度整理しておくと、志望動機の説明が具体的になります。
国・県・市が組んで進める仕事
もう一つ、久留米市の仕事の性格を示すのが内水対策です。金丸川・池町川の総合内水対策計画は、市が単独で進めるものではありません。
国土交通省、福岡県、久留米市が連携して排水機場の増強などに取り組む形になっています。
面接で防災を語るなら、市がどこまでを担い、どこから先を国や県と組むのかまで触れられると強いです。行政の仕事は市の境界で切れていない、という理解が伝わります。
県の総合計画が見ている変化
福岡県総合計画(計画期間は令和4年度から令和8年度)は、県を取り巻く状況の大きな変化として、人口減少・少子高齢化の進行、デジタル化・脱炭素社会への対応、グローバル化の進展、頻発化・激甚化する自然災害の4つを挙げ、SDGsの「誰一人取り残さない社会」の考え方が一層重要だとしています。
中核市である久留米市は、これらの変化を県の枠組みのなかで受け止めつつ、移譲された事務については自分の判断で動く立場にあります。(出典:福岡県総合計画|令和4年度〜令和8年度)
POINT|暗記より、掘られても続く形をつくる
名称の暗記は、面接では最初のひと言で行き止まりになります。関心のある分野を一つか二つ決めて、「①現場で何が起きているのか → ②市は何を目指しているのか → ③いま動いている事業は何か → ④中核市として市が自分で決められるのはどこまでか → ⑤そこに自分の経験をどう差し込めるか」の5段を踏んでおけば、面接官がどの段に入ってきても答えが用意できています。
悪い例「久留米市の防災に携わりたいと考えています」
改善例「市の中だけでは水は止められないと知りました。国や県と一緒に進める排水の対策と、住民の方が実際に避難できるようにする取り組みの、両方に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
久留米市を調べる足がかりは、次の5点です。志望分野がもう決まっている人は、4点目から先に開いても構いません。
- 久留米市職員採用試験の受験案内(受験する期・区分のもの。春期・夏期・秋期で内容が異なります)
- 久留米市新・人材育成基本方針(目指すべき職員像と5つの志向)
- 久留米市の総合計画をはじめとする市の主要な計画(市公式サイト掲載の最新版)
- 久留米市の総合内水対策に関する公表資料
- 福岡県総合計画(令和4年度から令和8年度)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、久留米市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。久留米市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
久留米市役所の面接の概要
ここからは、令和8年度夏期の受験案内で確認できる内容をもとに、久留米市の試験の形と面接への備え方を整理します。春期・秋期は別に実施されており、申込は1つの区分に限られます。
令和8年度夏期の試験区分
| 種別・試験区分 | 採用予定人員(令和8年度夏期) |
|---|---|
| Ⅰ種 事務職A[専門] | 10人程度 |
| Ⅰ種 事務職B[論文] | 5人程度 |
| Ⅰ種 土木職A[専門] | 2人程度 |
| Ⅰ種 土木職B[SPI] | 2人程度 |
| Ⅰ種 建築職[SPI] | 1人程度 |
| Ⅰ種 文化財職(学芸員) | 1人程度 |
| Ⅰ種 文化財職(埋蔵文化財発掘調査員) | 1人程度 |
| Ⅰ種 保健職 | 2人程度 |
| Ⅱ種 保育職 | 3人程度 |
事務職はAとBの選択制
久留米市の事務職には、専門試験で受けるAと、論文試験で受けるBの2つの入口があります。同じ事務職でも、A[専門]とB[論文]で第1次試験の中身が違うため、どちらを選ぶかは準備の内容そのものを左右します。
| 項目 | 事務職A[専門](令和8年度夏期・Ⅰ種) | 事務職B[論文](令和8年度夏期・Ⅰ種) |
|---|---|---|
| 第1次試験の筆記 | 教養試験(職員として必要な一般教養についての大学卒業程度のマークシート式・120分)、専門試験(大学卒業程度のマークシート式・120分)、事務能力試験(音声による進行のもとで行うマークシート式・50分) | 基礎能力試験(SPI)(職員として必要な基礎能力についての大学卒業程度のマークシート式と、適性等についてのマークシート式の検査・120分)、論文試験(文章による論理的思考力、構成力、表現力、理解力等について・90分)、事務能力試験(50分) |
| 第1次試験の面接 | 面接試験(面接を通じて職員としてふさわしい人物かどうか判定するもの)。筆記試験(論文試験を除く)の得点が一定の基準を超える人が対象 | 同じく面接試験。筆記試験(論文試験を除く)の得点が一定の基準を超える人が対象 |
| 論文の採点 | 該当なし | 論文試験の採点は、面接試験の対象者のみ行うと明記されています |
| 第2次試験 | 面接試験と、性格検査(職員として必要な適性等についてWeb形式で行う検査)。性格検査の案内は面接対象者に電子メールで送付されます | 面接試験 |
| 受験資格の年齢 | 22歳から35歳(平成3年4月2日から平成17年4月1日までに生まれた人)。学歴・職歴は問いません | 同じく22歳から35歳。学歴・職歴は問いません |
もう一つ、区分によって第1次試験の形式そのものが違う点にも注意してください。土木職B[SPI]と建築職[SPI]は、第1次試験の段階でWeb形式の面接が入ります。
| 項目 | 内容(令和8年度夏期・土木職B[SPI]、建築職[SPI]) |
|---|---|
| 第1次試験 | 基礎能力試験(SPI)(大学卒業程度のテストセンター方式)と、テストセンター(職員として必要な適性等についてのテストセンター方式による検査)の計65分、および面接試験(Web形式) |
| 第2次試験 | 事務能力試験(50分)と面接試験 |
上記は、久留米市の令和8年度夏期の受験案内に基づく内容です。同案内には各試験科目の配点・満点・合否判定方法の記載がありません。試験の構成・区分は、期や年度によって異なりますので、必ずご自身が受ける期・区分の最新の受験案内をご確認ください。なお、試験成績は本人に限り開示を請求でき、開示内容は順位・科目別得点・総合得点、開示期間は各試験の合格発表の日から1か月間とされています。
この並びから読み取れることを整理しましょう。
まず、久留米市の事務職は第1次と第2次で計2回の面接があるうえ、第1次の面接は筆記試験(論文試験を除く)の得点が基準を超えた人だけが受けます。
筆記は関門として置かれ、そこを通ったあとの判断は面接に集まる構成です。
受験案内の成績開示の欄も、この構成を裏づけています。
開示の期間は「面接試験対象者発表」「第1次試験合格者発表」「最終合格者発表」のそれぞれの日から1か月間とされており、第1次試験のなかに、面接へ進む人を選ぶ発表が独立して置かれていることが分かります。
準備の行動に直せば、筆記を終えた日から対象者の発表までは待ち時間ではありません。ここで自分の話を組み直しておかないと、発表後に残る日数はかなり短くなります。
事務職Bを選ぶ人には、もう一つ見逃せない記載があります。論文試験の採点は、面接試験の対象者のみ行われます。
つまり論文は、筆記の関門を通った人の中身を見るための材料という位置づけです。書いた内容が面接の場に持ち込まれる可能性を織り込んで、自分の考えとずれない論文を書く必要があります。
ここまでを重ねると、AとBで学習の組み立てが別物になることが見えてきます。
面接へ進む人を選ぶ基準は「筆記試験(論文試験を除く)」の得点ですから、Aでは教養・専門・事務能力の3科目すべてがその点数に数えられ、Bで数えられるのは基礎能力試験(SPI)と事務能力試験だけということになります。
Aを選べば専門試験の1問が面接に座れるかどうかに直結し、Bを選べば論文はその判定の外に置かれます。Bの受験者は、席を取るための勉強と、席に着いてから採点される論文の練習を、別々に時間を配ってください。
専門科目に半年かけられるかどうかだけで選ぶと、この違いを見落とします。
なお、令和8年度夏期の受験案内には、集団討論やグループワークの記載がありません。また「面接カード」「自己PRシート」「エントリーシート」という名称の提出書類の記載もなく、申込は電子申請のみです。
人物を見る場面は、2回の面接と、事務職A等に課される性格検査に絞られていることになります。
久留米市が公表する「目指すべき職員像」
久留米市の受験案内には、「求める人物像」という見出しの記載がありません。
公表されている職員像は、久留米市新・人材育成基本方針(平成27年3月改訂)に示された「市民と郷土のために、自ら考え、行動する職員」です。
試験ごとに更新される文言ではなく、市の人材育成の方針として置かれているものです。
同じ方針は、職員に求める姿勢を5つの志向として挙げています。
- 市民の立場に立って物事を考え、地域に貢献する職員(市民志向)
- 市民とともに久留米のまちづくりに取り組む職員(協働志向)
- 高い人権感覚を持ち、市民の幸せのために行動する職員(人権志向)
- 新たな課題に対応するため自己研鑽に取り組む職員(自己実現志向)
- 課題解決に組織の枠組みを越えて一体となり取り組む職員(連携志向)
目指すべき職員像と5つの志向の出所は、久留米市新・人材育成基本方針(平成27年3月改訂)です。受験案内に掲載されているものではありません。(出典:久留米市新・人材育成基本方針|平成27年3月改訂)
この5つの志向は、採用の場面でどう使われるかまでは市が説明していません。ここから先は当研究会の読み取りとしてお読みください。
久留米市は、約2,000項目の事務を県から引き受けた中核市です。食品衛生の監視も、建築基準法に基づく許可も、開発行為の監視・規制も、市の職員が担います。
同時に、境を接する市町は12あり、うち3つは佐賀県。川も道も県境をまたいでいます。
市の中だけで完結する課題のほうが少ない環境だといえます。
この環境で効いてくるのは、5つの志向のうち協働志向と連携志向のあたりでしょう。市民や事業者と一緒に進める力と、組織の枠を越えて動く力です。
内水対策が国・福岡県・久留米市の連携で進んでいることは、その具体例にあたります。
加えて、299,047人の市でこれだけの事務を回すには、手をつける順番を決め、抱え込みすぎない線を引く場面も多くなりそうです。
そして、久留米市の受験案内には面接カードにあたる様式の記載がありません。面接の場に持ち込まれるのは、話す言葉と、事務職Bなら論文、事務職Aなら性格検査の結果です。
書いて渡せる材料が少ないぶん、当日の受け答えで挽回しようと考えたくなりますが、順序は逆になります。市民志向、協働志向、人権志向、自己実現志向、連携志向。
この5つを横に置いて、自分の経験がどれに触れているのかを先に洗い出しておく。2回の面接で同じ話題を別の角度から聞かれても、そこへ戻れば答えは崩れません。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。久留米市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 今日はここまで、どうやって来られましたか? | 張りつめた場でも普通の会話ができるか。面接が2回ある試験では、1回目の印象が土台になります |
| ② 動機・志望 | 県庁も受けられるなかで、なぜ久留米市役所なのですか? | 他の市でも通る言い方になっていないか。約2,000項目の移譲という事実に触れられているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所を教えてください | 事務職Aでは第2次試験に性格検査があります。検査で出た傾向と、口で語る自己像がかみ合っているか |
| ④ 経験・行動 | 立場の違う人と一緒に進めた経験を教えてください | 連携志向に直接つながる問い。誰と何を分担したかという中身 |
| ⑤ 学業・経歴 | これまでの学びや仕事を、専門外の人にも分かるように説明してください | 専門の話を外の人に渡せるか。事務職Bなら論文で示した力が、口頭でも確かめられます |
| ⑥ 適性・将来 | 採用後は、どんな仕事に取り組みたいですか? | 約2,000項目の事務を持つ市で、自分がどの領域に立ちたいのかを言えるか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近、気になったニュースを一つ挙げてください | 関心を持った理由まで言えるか。2回の面接で同じ話題を出すなら、掘られる前提で選びます |
この7つに答えられるようになるのが最低ラインです。久留米市の場合、面接が2回あるぶん、同じ問いを別の角度から掘られる機会も2倍になります。
そのうえで差がつくのは、次の2問です。
合否を分けるのは「久留米市役所ならでは」の質問
1問目には、久留米市の場合はっきりした足場があります。中核市として県から約2,000項目の事務を引き受けているという事実です。
県と市の役割が実際に組み替えられた市ですから、抽象論に逃げずに答えられます。第1部で扱った事実のうち、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい久留米市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 平成20年4月1日に中核市へ移行し、同日に保健所を設置。民生、保健衛生、環境、都市計画・建設、文教など約2,000項目の事務が県から移譲された。受験案内は「公権力の行使に該当する職務」の例に、開発行為の監視・規制、建築基準法に基づく許可、食品衛生監視などを挙げている | 項目数を言うだけで終えず、自分が関わりたい分野の許認可や監視が市の手にあることまで具体的に示します |
| 人口と高齢化の現在地 | 住民基本台帳(令和8年1月1日現在)で人口299,047人、高齢化率28.4%、75歳以上率16.1%。福岡県全体の28.2%・16.2%とほぼ同じ水準 | 進んでいるとも遅れているとも言えない位置をどう捉えるか。県全体で起きることが同じように起きる市だ、という読み方を示します |
| 浸水と内水対策 | 平成30年から令和3年まで4年連続で内水による浸水被害。令和2年3月に「金丸川・池町川総合内水対策計画」を策定し、国・福岡県・久留米市が連携して古賀坂排水機場の増強(令和4年度事業費9億1,000万円)などを進めている | 被害の記憶で止めず、3者が組む仕組みのなかで市が何を担うのかまで踏み込みます |
| 産業の系譜 | 明治6年の「つちやゴム足袋」、明治25年の「志まや」でゴム産業の基礎がつくられ、昭和6年にブリヂストンタイヤが創業。昭和9年操業のブリヂストン久留米工場は同社のマザー工場 | 歴史の紹介で終えず、産業の集積がいまの雇用や暮らしにどうつながっているかまで言葉にします |
| 広域のなかでの位置 | 境を接するのは福岡県内の9市町と、佐賀県の鳥栖市・神埼市・みやき町。県境をまたいで12の市町と接している | 通勤も買い物も川も県境で止まらない市であることを踏まえ、周辺自治体との分担という視点を添えます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、久留米市が人材育成基本方針に掲げる目指すべき職員像と5つの志向に照らして、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 協働志向|市民とともにまちづくりに取り組む | 相手と一緒に進めた経験があるか。第1次と第2次の2回の面接で、同じ場面を角度を変えて確かめられます | 一人で成し遂げた話より、誰と何をどう分担したかを説明できる場面を選んでおきます |
| 連携志向|組織の枠組みを越えて取り組む | 立場の違う相手と動いた経験。久留米市には、国・県・市が組んで進める内水対策のような仕事が実際にあります | 自分の所属の外にいる人へ、どう話を持っていったのかを順に言えるようにします |
| 自己実現志向|新たな課題に対応するため自己研鑽に取り組む | 学び続ける姿勢。事務職Aは専門試験、Bは論文試験と、選んだ区分そのものが姿勢の表明になります | なぜその区分を選んだのかを、これまでの学び方や関心の持ち方と結び付けて話せるようにします |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
久留米市は面接が2回ある分、この傾向はより強く出ます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 受ける期(春期・夏期・秋期)と試験区分を一つに決める。申込は1つの試験区分に限られ、春期と夏期に実施する各試験区分との併願はできない。事務職はA[専門]とB[論文]の選択で、面接へ進む判定に数えられる科目まで変わるので、専門試験に時間を投じられるかどうかをこの段階で見極める
- 久留米市新・人材育成基本方針の目指すべき職員像と5つの志向を書き写し、自分の経験がどの志向に近いかを並べてみる
- これまでの経験を書き出す。学生時代の活動、職務経験、地域での関わりから、語れる場面を分野別に用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにしたうえで、固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 声に出して練習する。面接が2回ある試験なので、同じ話題を別の角度から2度聞かれる想定で、「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく
優先順位に注意
ステップ5の久留米市研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ3の書き出しと、ステップ2で並べた5つの志向との突き合わせを優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、久留米市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
久留米市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度夏期の久留米市職員採用試験は、事務職ならA[専門]とB[論文]のどちらかを選び、第1次と第2次で計2回の面接に臨む形です。
第1次の面接は筆記試験の得点が基準を超えた人が対象で、論文の採点も面接対象者だけに行われます。
配点は公表されていませんが、筆記を通過したあとの判断が面接に集まる構成であることは、この並びから読み取れます。
約2,000項目の事務を県から引き受けた中核市で、自分の経験がどの仕事に届くのかを、2回分の言葉にして用意しておいてください。