本記事では、阿波市職員採用試験の面接対策に必要な、阿波市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点をまとめています。試験の構成は令和8年度(令和9年4月採用予定)の阿波市職員採用試験をもとに、上級行政を軸として整理し、他の試験区分との違いも併記します。
阿波市役所の面接では、「なぜ阿波市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「阿波市の課題をどう見ているか」といった質問が想定されます。しかもこの市の第2次試験には、個別面接とプレゼンテーション試験の両方が置かれています。用意した文章を読み上げるだけの準備では、途中で足元が崩れる設計です。
以下に並ぶ数字や計画名は、そのまま暗唱するために載せているわけではありません。上級行政の採用予定が3名程度というこの枠に自分が入るとしたら、どの仕事で役に立てるのか。その見当をつけるための材料として読んでください。
第1部|自治体研究編
阿波市の特徴
面接の準備に入る前に、阿波市がどういう場所にある、どういう規模の市なのかを押さえておきましょう。(時間のない方はここだけでも目を通してください)
- 徳島県の北部、吉野川の北岸に広がる市。本庁は市場町に置かれ、吉野・土成・阿波の3か所に支所の地域課がある。
- 住民基本台帳人口は33,583人(令和8年1月1日現在)。同じ時点の徳島県全体は691,229人。
- 市域は191.11km²で、人口密度は約176人/km²。3万人台の人口が、この広さに散らばって暮らしている。
- 南は吉野川をはさんで吉野川市、西は美馬市、東は板野郡上板町と接する。北は讃岐山脈をはさんで香川県のさぬき市・東かがわ市と県境を接する。
- 市場町には、県の観光情報サイトが日本最大の川の中の無人島と紹介する善入寺島がある。
- 令和8年度の職員採用試験は5つの試験区分で計7名程度の募集。近隣自治体との共同実施ではなく、市が単独で行っている。
- 第2次試験には、論文試験・適性検査・個別面接に加えてプレゼンテーション試験が置かれている。
- 初任給(給料月額)は上級232,000円、中級216,500円、初級200,300円(令和8年4月1日現在)。
- 市の花はコスモス、市の木はケヤキ。
阿波市の基礎データ
基礎データは、細かい桁まで暗記するためのものではありません。阿波市で押さえておくと効いてくるのは、人口3万人台の市域が191平方キロに広がっているという条件のほうです。
この条件が、あとで見る採用予定数や支所の配置と噛み合ってきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 33,583人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 13,278人(39.5%/徳島県全体は34.9%) |
| 75歳以上人口 | 7,546人(22.5%/徳島県全体は20.3%) |
| 総面積 | 191.11km² |
| 人口密度 | 約176人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 市役所所在地 | 阿波市市場町切幡字古田201番地1 |
| 支所 | 吉野支所地域課/土成支所地域課/阿波支所地域課 |
| 隣接する自治体 | 吉野川市、美馬市、板野郡上板町、香川県さぬき市、香川県東かがわ市 |
| 市の花・市の木 | コスモス/ケヤキ |
人口・年齢別人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値です。総面積・隣接自治体・市の花木は、当研究会が整理した基礎データによります。住民基本台帳による人口と国勢調査による人口は調査の基準が違うため、両者を並べて増減を語ることはできません。
数字から考えられる市政課題
年齢構成から見ていきます。阿波市の高齢化率39.5%は、同じ時点の徳島県全体(34.9%)を4.6ポイント上回ります。75歳以上の割合も22.5%で、県全体の20.3%を上回ります。
全国3位の高齢化率だと県自身が説明する徳島県のなかで、さらに先を行く位置にあるということです。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)
そこに面積が重なります。191.11km²に約3万3千人。人口密度は約176人/km²で、本庁のほかに3つの支所が置かれています。
支えるべき人が減りながら、支える範囲は狭まりません。この組み合わせが、阿波市の行政サービスの前提条件です。
窓口で待つ形だけでは届かない相手が出てくる、ということでもあります。
面接でこの点に触れるなら、次のような言い方が考えられます。
阿波市の経済・産業
吉野川の平野に置かれた農のまち
徳島県は自らの産業を説明するとき、農業について「吉野川沿いの平野を中心に、なると金時(さつまいも)やすだち等の生産が盛ん」という書き方をしています。阿波市は、その吉野川沿いの平野のただ中に市域を持つ市です。
県が農業の舞台として名指ししている場所に、この市はそのまま乗っています。
同じ県の説明は、工業の側では別の顔を見せます。
県は自らを「LED王国」と位置づけ、医薬品・LED・リチウムイオン電池といった大きな工場に加えて、機械製品の製造業、家具や仏壇の木工業を代表的な地場産業として挙げています。農と工の両方を県内に抱えているのが徳島県の産業構造で、阿波市の受験者は、そのうち農の側に近い場所から市の経済を語ることになります。
県全体の経済規模という物差し
市単独の経済規模を語る前に、県の大きさを押さえておくと話が安定します。令和4年度の徳島県の県内総生産は名目で3兆2,658億円(対前年度比2.6%減)、県民所得は2兆2,309億円(同3.0%減)、1人当たり県民所得は317万円(同1.9%減)でした。
生産も所得も、前年度を下回っています。(出典:徳島県県民経済計算|令和4年度)
この縮み方は、市の税収の見通しにも、地域の事業者の体力にも跳ね返ります。産業振興や商工を志望分野にするなら、「阿波市の産業を盛り上げたい」で止めず、県全体が縮んでいる局面でどこに手を打つのかまで踏み込みましょう。
移動の条件が仕事の形を決める
徳島県内の道路は、国道13路線・県道202路線・市町村道31,940路線で実延長は計15,050km。国県道の改良率は65.4%、舗装率は57.5%で、県自身が全国的にみて低い水準だと説明しています。
急峻な山地と河川の橋梁費用が要因です。一方で、吉野川沿いを東西に走る四国縦貫自動車道は県内88.8kmが平成12年3月に全区間開通しました。(出典:徳島県の道路整備の現状|令和6年)
阿波市は、この東西軸の沿線にありながら、北へ向かえば讃岐山脈が香川県との間に立ちはだかります。東西には抜けやすく、南北には条件が変わるという地形です。
福祉や地域交通の分野を志望するなら、移動にかかる時間そのものが行政サービスの届き方を左右する点を、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
阿波市の主な行政課題
ここまでの数字と地形を踏まえると、阿波市が抱えている課題の形が見えてきます。面接で「市の課題」を振られたときに備えて、次の4つを押さえておきましょう。
高齢化の先行と、県が言う「静かなる有事」
徳島県は「徳島新未来創生総合計画」(令和6年3月策定、計画期間は令和6年度から令和10年度)の現状認識として、人口減少に伴う労働力不足や過疎化といった『静かなる有事』の進行を挙げています。県自身の高齢化率も、総務省の人口推計(令和6年10月1日現在)で35.8%と全国3位です。
なお、この35.8%は先に挙げた住民基本台帳の34.9%とは別系列の統計であり、両者を直接比べることはできません。阿波市の39.5%は、そのいずれの県値よりも高い水準にあります。(出典:徳島新未来創生総合計画|令和6年3月策定)
津波は来ないが、揺れは来る
徳島県が令和8年2月4日に公表した南海トラフ巨大地震の被害想定では、県全体の死者数は最大ケースで21,700人、建物の全壊・焼失は81,100棟とされています。市町村別の内訳を見ると、阿波市の死者数は冬・深夜の最大ケースで80人、そのうち津波による死者は0人。
建物の全壊・焼失は冬・夕のケースで1,200棟です。津波の被害を受けない代わりに、揺れと建物の倒壊が被害の中心になるのが、内陸に位置するこの市の地震の姿です。(出典:徳島県南海トラフ巨大地震被害想定|令和8年2月4日公表)
そしてこの市には、もう一つの地震があります。中央構造線活断層帯は讃岐山脈の南縁を走っており、県は吉野川以北の地域で被害が大きくなると説明しています。
県の中央構造線・活断層地震被害想定(平成29年7月25日公表)の最悪ケースは、死者3,440人・建物全壊63,700棟・停電率87%・断水率75%・被災1週間後の避難者25万人超。県はこれを南海トラフ巨大地震に匹敵する規模だとし、建物の耐震化によって死者数を約9割減らせるとしています。
阿波市は、この「吉野川以北」にあたる市です。(出典:徳島県中央構造線・活断層地震被害想定|平成29年7月25日公表)
吉野川とつきあうということ
市の南を流れる吉野川は「四国三郎」と呼ばれてきた川です。幹川流路延長194km、流域面積3,750km²は四国のおよそ20%にあたり、計画高水流量は毎秒24,000tと全国最大規模。
明治40年に国による本格的な治水事業が始まり、昭和2年に現在の堤防がほぼ形づくられました。阿波市市場町と吉野川市川島町にまたがる善入寺島は、この第1期改修事業で全島が買収されて遊水地となった土地で、それまでは約500戸・約3,000人が暮らしていました。
まちを守るために島の集落を移した歴史が、この市の足元にあるということです。(出典:吉野川の概要|徳島河川国道事務所)
吉野川は、水が多すぎるときだけ問題になるわけではありません。平成6年の列島渇水では、吉野川水系で6月29日から11月14日までの139日間にわたって取水制限が行われ、徳島県の渇水対策本部は104日間設置されました。
このとき影響を受けた水道事業体として、国の記録に阿波市の名が残っています。洪水と渇水の両方に備える必要がある川と、この市は向き合っています。(参考:平成6年列島渇水の記録|国土交通省)
限られた人数で、広い市域を受け持つ
令和8年度の採用予定は、5つの試験区分を合わせて7名程度です。うち上級行政は3名程度。
この規模の採用で、191.11km²の市域と、本庁および3つの支所を回していくことになります。一人の職員が担当する仕事の幅は、大きな市とは比べものになりません。
制度を組み立てる場面と、住民に直接説明する場面と、関係機関と話す場面が、同じ人のところに来ます。職員体制の確保そのものが行政課題になる規模だと理解しておきましょう。
阿波市の重点政策|県の計画と市の公表資料から
阿波市が掲げる計画の中身については、受験前に市の最新版にあたってください。ここでは、当研究会が確認できた公表資料の範囲で、面接に持ち出せる形になっている材料を取り上げます。
県の計画が置いている前提
徳島県の「徳島新未来創生総合計画」は、ビジョンに『未来に引き継げる徳島』の実現を掲げ、ミッションとして『安心度UP』『魅力度UP』『透明度UP』の3つを置いています。
5年間の重点施策は17項目の『戦略』、75項目の『戦術』、93項目の『KPI』に整理されました。県はこの計画の中で、今後10年を地方の正念場である『地方創生戦国時代』と位置づけています。
県が挙げている現状認識は、人口減少に伴う労働力不足や過疎化の進行と、南海トラフ巨大地震をはじめとする自然災害の頻発化・激甚化です。
高齢化率39.5%で、中央構造線活断層帯の南側に市域を持つ阿波市は、この2つの認識がそのまま当てはまる位置にあります。志望動機を固めるときは、県が挙げるこの2つのうち、どちらに自分の関心が乗るのかを先に決めておくとよいでしょう。
本庁と3支所という配置が語るもの
阿波市は市場町に本庁を置き、吉野・土成・阿波の3か所に支所の地域課を構えています。令和8年度の試験案内と受験申込書の配布場所にも、この3つの支所が並んでいます。
人口3万人台の市が支所を維持しているという事実は、市域が広く、生活圏が一つにまとまりきらないことの裏返しでもあります。窓口をどこに、いくつ置くのかという判断は、この市にとって単なる事務の話ではありません。
採用の設計から読み取れる姿勢
もう一つ、市の考え方が具体的に表れているのが採用試験の設計です。申込みできる試験区分は1つに限られ、受理後の変更はできません。
第2次試験には論文試験と適性検査に加えて、個別面接とプレゼンテーション試験が置かれています。さらに、不合格者本人が口頭で請求すれば、第1次・第2次それぞれの総合得点と総合順位が開示されます(各合格発表日の翌日から1か月間、企画総務部秘書人事課の窓口のみ)。
選考の結果を数字で本人に返す仕組みを持っている市だ、ということです。
POINT|「農業のまち」で終わらせない
産業の名前を挙げられることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つに絞り、①何が課題か、②市はどんな状態を目指すか、③いまどんな取組があるか、④市だからこそ担える役割は何か、⑤自分の経験や強みをどう生かすか、の順に調べていきましょう。
悪い例「農業が盛んなまちなので、農業振興に関わりたいです」
改善例「県が農業の中心と説明している吉野川沿いの平野に阿波市はあります。ただ高齢化率も高いと聞きましたので、まずは作っている方が何歳まで続けられそうなのか、そこを聞いて回るところから関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
面接前に一度は開いておきたい資料を挙げます。読む順番は、自分が語りたい話に近いものからで構いません。
- 阿波市の職員採用情報のページと、最新年度の試験案内
- 阿波市が公表している総合計画の最新版
- 阿波市の地域防災計画と、市が公表しているハザードマップ
- 徳島県の総合計画(県が挙げる人口と防災の課題を確認するため)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、阿波市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。阿波市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
阿波市役所の面接の概要
ここからは、阿波市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、差がつく質問への備え方を、公表資料と当研究会の分析にもとづいて整理していきます。
阿波市役所の面接の流れ
令和8年度阿波市職員採用試験(令和9年4月採用予定)を実施するのは阿波市で、窓口は企画総務部秘書人事課です。選考は第1次試験と第2次試験の二段階。人物を見る場は第2次試験の「口述試験」に置かれ、個別面接とプレゼンテーション試験の2つで構成されます。
| 項目 | 内容(令和8年度・令和9年4月採用予定) |
|---|---|
| 試験の段階 | 二段階。第1次試験 → 第2次試験 |
| 試験区分と採用予定 | 上級行政3名程度、初級行政A 1名程度、初級行政B(障がい者対象)1名程度、一般行政(社会人枠)2名程度、保育教諭1名程度の計7名程度。申込みできる試験区分は1つに限られ、受理後の変更はできません |
| 第1次・教養試験(一般行政(社会人枠)以外の全区分) | 上級は大学卒業程度、保育教諭は短期大学卒業程度、初級は高等学校卒業程度。時事、社会・人文及び自然に関する一般知識、文章理解、判断・数的推理、資料解釈(択一式40題・2時間) |
| 第1次・職務能力試験(一般行政(社会人枠)のみ) | 教養試験に代えて〈BEST-A〉(択一式60題・1時間) |
| 第1次・専門試験(上級行政) | 大学卒業程度の憲法、行政法、民法、経済学、財政学、社会政策、政治学、行政学及び国際関係(択一式40題・2時間) |
| 第1次・専門試験(保育教諭) | 社会福祉・子ども家庭福祉(社会的養護を含む。)、保育の心理学、教育学・教育法規、保育原理・保育内容及び子どもの保健(択一式30題・1時間30分) |
| 第1次・適性検査 | 初級行政Aは事務適性検査(100題・10分)、一般行政(社会人枠)は職務適応性検査(150題・20分) |
| 第2次試験の構成 | ①論文試験 ②適性検査(一般行政(社会人枠)を除く) ③個別面接 ④プレゼンテーション試験(初級行政B(障がい者対象)を除く)。③と④が「口述試験」に括られます |
| 個別面接の内容 | 「主として、人柄・性格等について面接を行います」と示されています |
| プレゼンテーション試験 | 試験当日に控室で課題が与えられ、試験室で自分の考えを3分程度で述べ、その様子が観察・評価されます |
| 集団形式 | 阿波市の試験案内に、集団面接・集団討論を実施する旨の記載はありません |
| 配点 | 令和8年度の試験案内に、各試験種目の配点(得点配分)を示した記載はありません。受験の際は最新の試験案内でご確認ください |
| 提出書類 | 受験申込書と受験票。一般行政(社会人枠)のみ第1次試験当日にエントリーシートの提出が必要です。面接カードの提出については試験案内に記載がありません |
| 試験会場 | 第1次・第2次とも阿波市役所本庁 |
この試験で最も意識したいのは、プレゼンテーション試験が当日に課題を渡される形だという点です。控室で課題を受け取り、試験室で3分程度話します。
事前に作り込んだ原稿を持ち込む余地がありません。試験案内が評価の対象として書いているのは「その様子」、つまり考えを組み立てて口に出すまでの過程です。
仕上げた原稿の出来を競う場ではない、と読んでよいでしょう。詰まったときにどうするか、言い直せるか、というところまでが見られていることになります。
個別面接で語る人柄と、プレゼンテーションで表に出る素の反応。この2つがずれていると、同じ第2次試験のなかでそのずれが見えてしまいます。
上記の試験内容は、令和8年度阿波市職員採用試験(令和9年4月採用予定)の試験案内によります。試験区分・試験内容・受験資格は年度によって変わることがありますので、受験の際は必ず最新の受験案内でご確認ください。(出典:令和8年度阿波市職員採用試験案内|令和8年度)
試験結果が数字で返ってくる仕組み
阿波市では、不合格になった場合でも本人が口頭で請求すれば、第1次試験・第2次試験それぞれについて総合得点と総合順位が開示されます。開示の期間は各合格発表日の翌日から1か月間、場所は企画総務部秘書人事課の窓口のみで、電話やはがきによる請求はできません。
自分がどこで届かなかったのかを数字で受け取れる制度がある、ということです。複数年かけて挑む人にとっては、次の準備の起点になります。
阿波市役所が求める人物像
確認した阿波市の令和8年度試験案内と市の採用情報のページの本文には、「求める人物像」や「求める職員像」にあたる一覧や定義は示されていません。手がかりになるのは、試験案内が評価の対象として書いている中身のほうです。
個別面接は「主として、人柄・性格等について」行うとされ、プレゼンテーション試験では自分の考えを述べる「様子」が観察・評価されます。整えられた経歴ではなく、その人の反応そのものを見に来ている試験だと読めます。
市が文言として掲げていない以上、ここから先は推測になります。ただ、上級行政3名程度という採用予定と、市域191.11km²に本庁と3つの支所という配置は、推測の足場としては十分に固いはずです。
この規模で仕事を回すとき、一人の職員が持つ担当の枠は、日々の必要のほうに合わせて動きます。本庁で組み立てた話を、そのまま支所の窓口で説明する側にも回ることは珍しくないはずです。
担当がはっきり決まっていない仕事を、調べながら形にできる人が働きやすい環境だといえるでしょう。
もう一つ、人口3万人台の市では、職員と住民が仕事の場以外でも顔を合わせます。買い物先で、地域の行事で、子どもの学校で。
窓口で名乗った自分と、休日の自分が、同じ人として見られます。誠実さや丁寧さ、公私のけじめといった資質の比重が重くなるのは、この環境の帰結です。
だからこそ、志望動機は「阿波市でなければならない理由」まで降りている必要があります。なぜこの市なのか、どの課題に関心があるのか、暮らす人としてどう関わるつもりなのか。
この3点が具体で埋まっていれば、面接で掘られても足元は崩れません。
第2次試験には、論文試験・適性検査・個別面接・プレゼンテーション試験が並びます。書いた文章、検査に出た傾向、面接での受け答え、その場で組み立てた3分間。この4つが一つの選考の中に並ぶ以上、どれか一つだけを磨き上げても全体は揃いません。
逆にいえば、飾らずに答えたものが4つとも同じ方向を向いているなら、それがこの試験では最短の道です。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。阿波市の個別面接も、この見取り図の上で準備すれば基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 緊張していますか? | 「人柄・性格等」を見ると明記された面接の入り口で、構えを解いて話せるか |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 徳島県庁でも隣接する香川県側の市でもなく、阿波市を選んだ理由まで届いているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 第2次試験で適性検査を受けたうえで面接に臨むため、検査に出た傾向と話す自己像が重なるか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | 上級行政3名程度という枠で、入ってすぐ任される場面を想像させる具体性があるか |
| ⑤ 学業・経歴 | 卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください | 専門試験で問われる行政法や財政学の知識を、話し言葉に置き換えられるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 本庁と3支所という配置のもとで、配属の幅を前提に働けるか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 出来事を人口3万人台の市の暮らしに引き寄せて語れるか。プレゼンテーション試験の下地にもなる |
この7つは、準備してくる人ほど同じ形に仕上がります。阿波市で差がつくのは、その先に置いた2問のほうです。
合否を分けるのは「阿波市役所ならでは」の質問
1問目は、県境に近い阿波市では特に重みを持ちます。北へ讃岐山脈を越えれば香川県のさぬき市・東かがわ市、南へ吉野川を渡れば吉野川市。
選択肢が周囲にあるなかで、この市を選んだ理由が問われるからです。どちらの質問も、調べていなければ一般論で終わります。
裏返せば、阿波市の具体に触れられるかどうかで、答えの重みが変わる質問です。持ち出しやすい事実を下の表にまとめました。
| 質問テーマ | 知っておきたい阿波市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と年齢構成 | 住民基本台帳人口は33,583人、高齢化率39.5%、75歳以上の割合は22.5%(令和8年1月1日現在)。徳島県全体は34.9%と20.3% | 県との差をポイントで示したうえで、市域が191.11km²と広いことを重ねて話します |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 上級行政の採用予定は3名程度。市域191.11km²を本庁と吉野・土成・阿波の3支所で受け持つ | 県と市の役割の違いを論じるより、この人数で市域全体を受け持つ現場に自分を置いて話します |
| 阿波市の魅力 | 県が農業の中心と説明する吉野川沿いの平野に市域があり、市場町には日本最大の川の中の無人島とされる善入寺島がある | 善入寺島や吉野川沿いの平野を挙げたら、そこで農業を続ける人の暮らしを市がどう支えているかへ話をつなげます |
| 災害への備え | 南海トラフ巨大地震(最大ケース)の市の死者想定は冬・深夜で80人、うち津波は0人。建物全壊・焼失は冬・夕で1,200棟。中央構造線活断層帯は讃岐山脈南縁を走り、県は吉野川以北で被害が大きいとする | 想定のケース条件を添えたうえで、津波ではなく揺れと建物への備えが要るという読み方を示します |
| プレゼンテーション試験 | 当日に控室で課題が与えられ、試験室で3分程度述べ、その様子が観察・評価される | 結論を先に置き、理由を2つに絞る型を体に入れておき、詰まっても言い直せる状態にします |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
阿波市は求める職員像を定型の文言では示していません。そこで評価の観点は、選考の設計、つまり個別面接が「人柄・性格等」を対象とし、プレゼンテーション試験が「その様子」を観察するという書き方から読み取ることになります。
いわゆるコンピテンシー評価が土台にあり、問われるのは答えの整い方ではなく、実際に何をしたのか、それが偶然でなかったのかどうかです。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| その場で考えて口に出せるか | 当日課題のプレゼンテーション試験で、3分程度の話を組み立てる様子が観察される | 身近な題材で「結論→理由2つ→締め」を3分で話す練習を、原稿を書かずに繰り返しておく |
| 適性検査と面接の自分が一致するか | 同じ第2次試験で受ける適性検査の結果と、面接で語る自分が食い違わないか | 作った長所を用意せず、自分で認めている傾向を短い言葉で言えるようにしておく |
| 広い市域を前提に働けるか | 本庁と3支所のどこに配属されても力を出せる根拠を語れるか | 上級行政3名程度という規模を踏まえ、担当が決まりきらない仕事を引き受けた経験を1つ用意する |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
人柄と性格を見ると明記している阿波市では、この掘り方はより深くなると考えたほうがよいでしょう。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新年度の試験案内で、自分が受ける試験区分の内容と受験資格を確認する。申込みできる区分は1つだけで、受理後の変更ができない点に注意する
- 区分に合わせて第1次試験の対策をする。上級行政は教養試験と専門試験の両方、一般行政(社会人枠)は職務能力試験〈BEST-A〉が中心になる
- これまでの経験を棚卸しする。学業、部活動や課外活動、アルバイトや職務経験のそれぞれから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 第2次試験の適性検査を見据えて、自分の傾向を言葉にしておく。飾らずに答えることを前提に、認めている短所とその付き合い方まで整理する
- この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い阿波市の事実を2つか3つ、自分の言葉で説明できるようにする
- 7カテゴリーの代表質問に一言メモで答えを作り、あわせて当日課題のプレゼンテーション試験に備えて、原稿なしで3分話す練習を重ねる
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は、最後に乗せる工程です。時間が足りないときは、ステップ3の経験の棚卸しと、ステップ4の自己理解を先に片づけてください。人柄と性格を見ると明記された面接で、自分を説明できないまま市の知識だけを足しても、話が浮いて聞こえます。ステップ6の3分間の練習も、材料が自分の中にあってはじめて形になります。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、阿波市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
阿波市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度(令和9年4月採用予定)の阿波市職員採用試験は、第1次試験と第2次試験の二段階で、人物を見る場は第2次の口述試験、つまり個別面接とプレゼンテーション試験に置かれています。面接は人柄と性格を見ると明記され、プレゼンテーションの課題は当日その場で渡されます。
原稿を用意して臨む余地がないぶん、これまで自分が何をしてきたかがそのまま出ます。
吉野川の北岸に191平方キロの市域を持ち、高齢化率は県より高く、津波ではなく揺れに備える必要があるまち。その市役所で、上級行政3名程度のうちの一人として、自分は何を引き受けるつもりなのか。
そこを自分の言葉で言えるところまで、経験を見直しておきましょう。