本記事では、廿日市市職員採用試験の面接対策で必要な、廿日市市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
廿日市市役所の面接試験では、「なぜ廿日市市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。令和8年度の事務職は第1次から第3次までの3段階で、第2次と第3次にそれぞれ30分の面接が置かれています。
合計1時間を話す試験ですから、用意した一言だけで乗り切ることはできません。
本記事で扱う試験の内容は、廿日市市が公表した令和8年度職員採用試験受験案内(事務)にもとづき、事務(教養)・事務(SPI)の2区分を中心に整理したものです。掲載内容を参考に、自分の関心と廿日市市政の接点を考え、面接での回答づくりに役立ててください。
第1部|自治体研究編
廿日市市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは廿日市市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 広島県の西部に位置し、県内では広島市・大竹市・江田島市・安芸太田町と隣り合う。山口県岩国市、島根県益田市とも境を接する。
- 市域の面積は489.49km²で、広島県全体(8,478.16km²)の約5.8%にあたる。
- 人口は11万4,773人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。
- 高齢化率は32.0%で、広島県全体の30.2%を1.8ポイント上回る。75歳以上の割合は18.4%。
- 嚴島神社を含む宮島は、平成8年にユネスコの世界文化遺産に登録された。
- 令和6年の市町別総観光客数は830.8万人(前年比3.5%増)。宮島を抱えるこの市には、市の人口をはるかに超える人数が毎年訪れている。
- 令和5年10月から、法定外目的税である宮島訪問税の課税を始めた。
- 令和8年度の事務職採用は事務(教養)と事務(SPI)の2区分で、採用予定は合わせて15人程度。
廿日市市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「廿日市市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
市ごとの経済規模については、広島県が「市町民経済計算」として市町内総生産などを公表しています。ただしこれは県全体の県民経済計算を各種の統計指標で市町別に按分した推計で、市が自前で積み上げた決算のような数字ではありません。
金額そのものを面接で挙げる必要はないでしょう。ここでは年齢構成と市域の広さ、そして周りとの接し方が一度に見える形に並べました。(参考:市町民経済計算|広島県統計情報)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 114,773人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口(高齢化率) | 3万6,710人(32.0%/広島県全体は30.2%) |
| 75歳以上人口(75歳以上率) | 2万1,101人(18.4%/広島県全体は18.2%) |
| 総面積 | 489.49km²(広島県の約5.8%) |
| 人口密度 | 約234人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 広島市・大竹市・江田島市・安芸太田町、山口県岩国市、島根県益田市 |
| 市の花・市の木 | サツキ・サクラ |
| 市役所の所在地 | 廿日市市下平良一丁目11番1号 |
表の人口と年齢別の内訳は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。かっこ内に並べた広島県全体の割合も同じ調査の県の値ですので、そのまま比べられます。人口密度は、この人口を面積で割って当研究会が算出しました。広島県が別に公表している国勢調査や毎月の推計人口は調査の基準が違いますので、本表の人口と並べて増減を出さないようご注意ください。
数字から考えられる市政課題
廿日市市の高齢化率32.0%は、広島県全体の30.2%を1.8ポイント上回ります。一方で75歳以上の割合は18.4%と、県全体の18.2%とほとんど変わりません(いずれも令和8年1月1日現在)。
高齢化は県平均を少し超えたところまで進んでいるのに、後期高齢層の厚みはまだ県と同じ。これから75歳以上が一気に増えていく手前の局面にいる市だと読むことができます。
介護でも住まいでも、間に合ううちに手を打てるかどうかが問われる時期です。
県全体の動きも背景に置いておきましょう。令和7年国勢調査の速報値による広島県の人口は2,683,399人で、令和2年の前回調査から116,303人(4.2%)減りました。
県の人口月報でも、令和8年5月1日現在で、対前年同月差での減少が254か月続いています。
県内で人口十万人台を保っている市は多くありませんので、広島市の西隣という立地の効き方も、あわせて考えておきたいところです。(出典:令和7年国勢調査 広島県の人口速報|令和7年)
この関係は、面接では次のような言い方で示せます。
廿日市市の経済・産業
島から山まで続く市域
廿日市市の市域489.49km²は、広島県全体の約5.8%にあたります。南は瀬戸内海の宮島まで、北は中国山地の吉和地域までが一つの市です。
海の観光地と山あいの集落を同じ市役所が所管していることは、産業を語るときも防災を語るときも前提になります。国土交通省が指定する豪雪地帯には、県内6市町の一つとして廿日市市の旧吉和村の区域が挙げられています。
人口密度が約234人/km²という数字も、市街地と過疎地が同居する市域の姿を示しています。
広島県全体の面積は8,478.16km²で、全国47都道府県のうち11番目の広さです。県内には広島市・福山市という大きな都市があり、令和7年国勢調査の速報値では広島市が1,172,423人、福山市が439,994人。
廿日市市は、県内最大の都市の西隣で、県境の手前に位置しています。県内での自分の志望先の位置を言葉で説明できると、県と市の役割の違いを問われたときに答えが具体的になります。
宮島がもたらす来訪者の規模
令和6年の市町別総観光客数で、宮島を擁する廿日市市は830.8万人(前年比3.5%増)でした。広島県全体の総観光客数は6,474万人(前年の6,037万人から7.2%増)、宿泊客数は1,167万人泊(同16.5%増)、観光消費額は5,918億円(同18.4%増)です。
外国人観光客数は422万人(同57.2%増)、外国人宿泊客数は180万人泊(同74.5%増)と伸びが際立ちます。(出典:広島県観光客数の動向|令和6年)
市の人口11万4,773人に対し、年間の来訪者はその70倍を超えます。観光を志望動機に使うなら、名所の紹介ではなく、この規模の人の出入りを受け止める側の仕事として語りましょう。
ごみの処理や交通の混雑、住民の生活道路の使われ方まで、訪れる人が増えるほど行政が調整する場面は増えていきます。
広島県の産業のなかでの位置
広島県は造船・鉄鋼・自動車といった重工業から、電気機械・電子部品などの先端産業まで層の厚い産業群を持ち、製造品出荷額等は中国・四国・九州地方で11年連続して1位を保っています。卸売業・小売業の中国5県におけるシェアも高い水準です。(出典:広島県の産業・企業情報|県公式)
廿日市市は、この工業県の中心都市である広島市に隣接し、西へ進めば山口県岩国市に至る位置にあります。市単独の産業統計を細かく覚えるより、県の産業の骨格を説明したうえで、その中で自分の志望先がどんな役回りにあるかを言えるほうが、面接では役に立ちます。
廿日市市の主な行政課題
人口の年齢構成、令和6年に830.8万人を数えた来訪者、そして海から山まで伸びる市域。この3つが重なるところに、廿日市市の行政課題があります。
面接で課題を問われたときに取り出せる引き出しとして、5つに整理しました。
後期高齢層がこれから厚くなる局面
市の高齢化率32.0%は県全体を1.8ポイント上回る一方、75歳以上の割合は18.4%と県の18.2%にほぼ並びます。これから数年で後者が動くことになります。
県レベルでは、合計特殊出生率が令和6年実績で1.29となり、国立社会保障・人口問題研究所の推計や県独自推計の見込みを上回るペースで低下しています。
社会動態でも転出超過が続き、とくに20歳から24歳までの若年層が「就職」を契機に転出超過となっている点が県の課題に挙がっています。広島市に隣接し通勤先の選択肢が広い市だからこそ、住み続けてもらうための条件づくりが問われます。
観光の集中と住民生活の両立
廿日市市は令和5年10月1日から、法定外目的税である宮島訪問税の課税を始めました。
訪れる人に負担を求める仕組みを市が独自に設けたという事実は、観光と住民の暮らしをどう両立させるかが実務上の課題になっていることを示しています。(出典:宮島訪問税|廿日市市公式)
年間830万人規模の来訪を受け入れる島を抱えながら、島にも山あいにも生活者がいます。
財源をどう確保し、受入環境と住民サービスにどう配分するか。志望動機で観光に触れるなら、ここまで踏み込んで話したいところです。
土砂災害への備え
広島県内の土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定は、合計47,842箇所にのぼります(令和6年11月28日現在)。平成30年7月豪雨では県内で死者153名(うち災害関連死44名を含む)を数え、住家被害は全壊1,176棟・半壊3,632棟・一部損壊2,183棟・床上浸水3,180棟・床下浸水5,579棟という規模でした。
山が海際まで迫る地形を抱える市にとって、警戒区域の把握と避難情報の伝え方は日常業務の一部です。
雪の降る地域と、通年で人が来る島
市域北部の旧吉和村の区域は、国が指定する豪雪地帯に含まれます。県内で指定を受けているのは6市町で、特別豪雪地帯の指定はありません。
冬に雪の対応が必要な集落と、通年で来訪者が絶えない島。同じ市役所がこの両方を所管しているという条件は、道路の管理でも避難の呼びかけでも、地域ごとにやり方を変えざるを得ないことを意味します。
市街地の感覚だけで市を語ると、この落差を見落とします。
南海トラフ巨大地震への備え
広島県地震被害想定調査報告書(令和7年10月)は、マグニチュード9.0の南海トラフ巨大地震で県内最大震度6強、想定死者数約1万4千人(うち津波による死者約1万3千人)、全壊棟数約9万棟(液状化約4万5千棟・津波約3万8千棟)と見込んでいます。
津波の高さは最大4メートル、浸水想定面積は1万2千ヘクタール以上、避難者は70万人を超え、災害関連死は約1,900人から3,700人と初めて示されました。(出典:広島県地震被害想定調査報告書|令和7年10月)
瀬戸内海に面し、島に大勢の来訪者を抱える市では、住民の避難に加えて、土地勘のない旅行者をどう動かすかという論点まで含めて考える必要があります。
幅広い職種を市が自前で採る体制
令和8年度、廿日市市の職員採用試験のページには、事務のほかに事務(職務経験者)、保健師、栄養士、消防、保育士(職務経験者)、事務(障がいのある人対象)、事務・保育士といった試験が並び、土木・建築は早期枠と2回目の2回に分けて募集されています。
土木・建築にはエントリーシートによる選考という記載があり、事務の2区分とは選考の入口から異なります。
人口十万人台の市が、これだけの職種を年度内に自前で回しているという事実は、職員一人あたりが受け持つ範囲の広さを示しています。
廿日市市の重点政策|広島県のビジョンが示す方向と廿日市市
市の施策を理解するには、広島県が何を心配しているかを先に知っておくと早道です。県が改定作業を進めている「ひろしまビジョン」の改定案は、人口減少が県独自の推計をも上回るペースで進んでいる点を主要課題に据えています。
県の見通しが実際の減り方に追いついていないという認識は、県内の市町が共通して背負っているものです。(出典:ひろしまビジョン改定案|令和7年)
県の課題認識と、廿日市市での見え方
| 県が挙げる課題認識 | 廿日市市での見え方 |
|---|---|
| 想定を上回るペースで進む人口減少 | 令和7年国勢調査の速報値で県人口は前回比4.2%減。市の人口は11万4,773人で、高齢化率32.0%は県全体を1.8ポイント上回る |
| 出生率の低下による自然減と、20〜24歳の就職を契機とした転出超過 | 広島市に隣接する立地は通勤先の選択肢が広い反面、若い世代が市外へ住まいを移す動きとも隣り合わせになる |
| 避難生活の長期化による要配慮者の災害関連死という課題の顕在化 | 島しょ部と中国山地側の集落を抱え、避難にかかる条件が地域ごとに大きく異なる |
3つを並べると、県が挙げる課題が廿日市市では地域ごとに違う顔で現れることが分かります。
都市近郊の課題と、中山間地・島しょ部の課題が一つの市に同居している。ここを自分の言葉にできると、志望動機に厚みが出ます。
関心分野の掘り下げ方
POINT|計画名を覚えることが目的ではない
計画の名前を暗記しても、面接での評価には直結しません。関心のある分野を一つか二つ決めて、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指しているか → ③今どんな取組があるか → ④市役所だからこそ担える役割は何か → ⑤自分の経験をどう生かすか」の順に調べていきましょう。
悪い例「廿日市市の観光振興に携わりたいです」
改善例「宮島には年間800万人を超える方が来られていると知りました。訪れる方の数と島で暮らす方の数がこれだけ違うのなら、どちらにも無理のない受け入れ方を探る仕事があるはずだと思っています。窓口や現場で実際の困りごとを聞くところから、その仕組みづくりに関わっていきたいです」
あわせて確認したい公式資料
面接前に開いておきたい資料を挙げます。宮島を抱える市の施策は観光と生活の両方にまたがりますので、そのつながりが見える資料から手を付けると理解が早まります。
- 令和8年度の職員採用試験受験案内(事務)
2区分の試験科目と3段階の流れ、提出書類までが1冊にまとまっています - 廿日市市が公表している求める職員像
職員採用試験のページに3項目で掲げられており、評価の観点を考える土台になります - 廿日市市の総合計画
市がどの分野に力を入れているかを、自分の関心と照らし合わせられます - 宮島訪問税の使い道に関する市の説明
集めた財源を何に充てるかという、観光施策の具体が読み取れます - ひろしまビジョンと県の地震被害想定
県全体の方向と災害リスクを、市の条件と重ねて理解できます
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、廿日市市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。廿日市市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
廿日市市役所の面接の概要
ここからは、令和8年度の事務(教養)・事務(SPI)を対象に、面接の形式と流れ、質問の全体像、差がつく質問への備え方を、市の公表資料と当研究会の分析から整理していきます。
3段階のうち2段階が面接
廿日市市の令和8年度事務職の採用試験は、第1次試験・第2次試験・第3次試験の3段階です。第2次と第3次にそれぞれ30分の面接が置かれ、人物を見る場が2回設けられています。
受験案内には面接の内容が「協調性、積極性及び識見等についての面接」(対面・30分)と記されており、個別か集団かの別は示されていません。
どちらの形式でも通用するよう、自分の経験を短くも長くも語れる状態にしておくのが安全です。
| 項目 | 内容(令和8年度・事務(教養)/事務(SPI)) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験 → 第2次試験 → 第3次試験の3段階 |
| 第1次試験(事務(教養)) | 教養試験(大学卒業程度・択一式120分)と作文試験。教養試験の出題は「時事、社会・人文及び自然に関する一般知識並びに文章理解、判断・数的推理及び資料解釈に関する一般知能」 |
| 第1次試験(事務(SPI)) | SPI(大学卒業程度・択一式70分/職務に共通して求められる基礎的な能力の検査)と作文試験 |
| 作文試験(両区分共通) | 記述式40分。「文章による自己PRなどの記述」とされています |
| 第2次試験 | 職場適応性検査(WEB・35分/職場における適応性についての検査)と、面接(対面・30分/協調性、積極性及び識見等についての面接)の2科目 |
| 第3次試験 | 面接(対面・30分/協調性、積極性及び識見等についての面接)の1科目 |
| 提出書類 | 第2次試験の受験時に、最終学歴の成績証明書(在学生は直近のもの)を提出します |
| 申込 | インターネットによる申込みのみ。市ホームページの「エントリー」ボタンまたは受験案内のQRコードから、必要項目をすべて入力します |
| 採用予定 | 事務(教養)・事務(SPI)を合わせて15人程度 |
| 配点 | 各試験・各科目の配点は公表されていません |
| 成績の照会 | 最終合格者を除く希望者に、不合格となった時点での総合順位を知らせる制度があります。第1次試験時に配付される「成績照会書」により請求します |
上記は、廿日市市が公表した令和8年度職員採用試験受験案内(事務)に基づく内容で、事務(教養)・事務(SPI)の2区分についてのものです。面接は「対面・30分」と示されており、個別面接か集団面接かの区別は同案内に記載されていません。配点についても同案内に記載はありません。試験の区分・科目・実施回数は年度によって変わりますので、受験の際は廿日市市が公表する最新の受験案内でご確認ください。(出典:令和8年度廿日市市職員採用試験受験案内(事務)|令和8年度)
この構成から読み取れることが2つあります。1つは、申込のエントリーシートが採用の条件として扱われていることです。
受験案内には、エントリーシートの記載事項が正しくないと判明した場合は採用される資格を失うことがある、と明記されています。
書いた内容と面接で話す内容がずれないよう、申込の段階から一貫させておく必要があります。
もう1つは、書面で自分を伝える機会が作文試験に集約されていることです。記述式40分の作文が「文章による自己PRなどの記述」とされている以上、この40分と、第2次・第3次で合わせて1時間の面接で語られる人物は、同じでなければ筋が通りません。
廿日市市が掲げる求める職員像
廿日市市は、職員採用試験のページで求める職員像を3項目で公表しています。
- はつかいちを愛し、市民に信頼される職員
- 相手を思いやり、職員や組織の連携・チームワークを大切にする職員
- 変化・変革を恐れず、未来に向かって挑戦する職員
3項目のうち2項目が、人との関わり方に触れています。面接の科目説明で最初に挙がる語が「協調性」であることと重ねると、市が確かめたい方向はおおよそ見えてきます。(出典:廿日市市職員採用試験|令和8年度)
3項目の文言はいずれも市の公表資料に載っているものですが、その言葉が置かれた順番をどう読むかは、当研究会の解釈になります。人口11万4,773人という規模の市役所は、県庁のように分野ごとに人を厚く配置することも、小さな町のように全職員が顔見知りで回すこともできません。
一つの係が制度の組み立てから窓口の応対までを引き受けながら、隣の係とも仕事を分け合う。この中間の大きさで働くには、担当が変わるたびに一から覚え直すのを面倒がらない姿勢と、隣の担当へ自分から声をかけられる距離感の両方が要るでしょう。
「連携・チームワーク」が職員像の2番目に置かれているのは、この構造と無関係ではないと当研究会は読んでいます。
廿日市市の場合、そこに市域の条件が加わります。令和6年で年間830万人が訪れる島と、豪雪地帯の指定を受ける山あいの集落を、同じ市役所が受け持っています。
同じ制度でも、島で説明する場面と山で説明する場面では、伝え方が変わるはずです。相手に応じて話し方を選べることは、「相手を思いやり」という職員像の言葉とも重なってくるように思われます。
大事なのは、選考の全体を通して同じ人物でいられるかどうかです。40分の作文で自己PRを書き、その後に30分の面接を2回受ける。
この3つの場面で立ち上がる人物像がそろっていれば、話の中身が特別に華やかである必要はありません。
すでに手元にある経験のうち、この市の仕事の進み方と噛み合うものを選び、噛み合う理由まで説明できるようにしておきましょう。
事務以外の区分と、土木職の別ルート
土木職を志望する人は、もう一つの枠組みを知っておく必要があります。廿日市市は、広島県が実施する広島県市町合同職員採用試験(土木職)の参加市町の一つです。
令和7年度は呉市・竹原市・三原市・福山市・府中市・庄原市・東広島市・廿日市市・熊野町・大崎上島町の10市町が参加し、市町が合同で面接試験を実施して採用者を決める仕組みで、受験者は3市町まで受験できます。(出典:広島県市町合同職員採用試験(土木職)|令和7年度)
この合同試験は土木職を対象とする枠組みで、廿日市市が単独で実施する事務の採用試験とは別のものです。事務をはじめ他の職種は対象に含まれません。参加市町や実施内容は年度によって変わりますので、最新の情報は広島県および廿日市市の公表資料でご確認ください。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。廿日市市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 試験会場までは、どうやって来ましたか? | 30分の面接が始まった直後に、普段どおりの話し方へ戻せるか |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 事務(教養)と事務(SPI)のどちらで申し込んだかまで含めて、選び方に理由があるか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 40分の作文に書いた自己PRと、話す内容がずれていないか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | 山場の大きさではなく、行き詰まった局面で次の手を出せたか |
| ⑤ 学業・経歴 | 学生時代に力を入れて学んだことを説明してください | 第2次試験で成績証明書を出す試験として、学びの中身を自分の言葉で語れるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 島しょ部から山間部まで抱える市で、配属の幅をどう受け止めているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 科目名にある「識見」が指す、社会への目配りがあるか |
この7項目は、受験案内が面接の内容として挙げる「協調性、積極性及び識見等」という言葉に、おおむね収まります。裏を返せば、ここまでは同じ準備をしてきた相手と横並びになる部分です。
差がつくのは、次に挙げる市の中身に踏み込んだ質問のほうでしょう。
合否を分けるのは「廿日市市役所ならでは」の質問
この2問に、宮島の名前や市の面積を挙げるだけで答えると、観光パンフレットの要約で終わってしまいます。逆にいえば、材料を持って臨めば、答えの密度で違いを見せられる質問でもあります。
面接が第2次と第3次の2回ありますから、同じテーマを角度を変えて重ねて聞かれることも想定しておきましょう。宮島と市域の条件から、面接で使える事実を5つ取り出し、答え方まで添えました。
| 質問テーマ | 知っておきたい廿日市市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と高齢化の現在地 | 人口11万4,773人、高齢化率32.0%(広島県全体は30.2%)、75歳以上率18.4%(同18.2%)。いずれも令和8年1月1日現在 | 県平均に近い数字であることを認めたうえで、後期高齢層がこれから厚くなる時期だという時間の話へ進めると、現状認識の精度が伝わります |
| 宮島と観光の規模 | 令和6年の市町別総観光客数は830.8万人(前年比3.5%増)で、市の人口の70倍を超える来訪がある | 観光地としての魅力を語るのではなく、この人数を受け止める側で何が起きるかまで具体化すると、市職員の視点になります |
| 独自財源の仕組み | 令和5年10月から、法定外目的税である宮島訪問税を課税している | 税を集める話で止めず、その財源で受入環境をどう整えるかという使い道の側から話すと厚みが出ます |
| 市域の二面性 | 面積489.49km²。北部の旧吉和村の区域は国の豪雪地帯指定を受け、南部には世界文化遺産の宮島がある | 同じ市の中でサービスの届け方が変わるという理解を示すと、配属の幅に対する構えも一緒に伝わります |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 事務職は2区分で15人程度を採用し、第2次と第3次で計2回の面接が課される | 制度の比較で終えず、住民との距離の近さを求める理由を、自分が人と関わってきた場面に結び付けます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
廿日市市は求める職員像を3項目で公表していますので、ここではその言葉と試験の組み立てを突き合わせて、評価の軸を読み取ります。面接の科目説明にある語は「協調性、積極性及び識見等」。
コンピテンシー評価の考え方が土台にあり、答えの整い方ではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 協調性(連携とチームワーク) | 人と組んで進めた経験を、自分が担った役割まで具体的に話せるか | 職員像の2番目に置かれた言葉として、意見が割れた場面で自分がどう振る舞ったかを1件用意しておく |
| 積極性(変化への構え) | 前例のない状況で、自分から動いた経験があるか | 「変化・変革を恐れず」という職員像に照らし、結果よりも着手した理由を説明できるようにしておく |
| 識見(市への理解) | 廿日市市の現状を、どこまで自分の言葉で語れるか | 宮島訪問税や豪雪地帯の指定など、市域の二面性が分かる事実を1つ選び、自分の関心とつなぐ |
なお、公務員の面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
廿日市市は面接が第2次と第3次の計2回ありますので、1回目に話した内容を2回目でさらに掘られる場面まで想定しておきましょう。細部まで自分の言葉で語れる実体験に根ざした答えを持っていることが、結局のところ一番の近道です。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新年度の受験案内を読み、事務(教養)と事務(SPI)のどちらで受けるかを決める。教養試験120分とSPI70分では、必要な勉強の量も種類も変わってくる
- 経験の棚卸しをする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 申込のエントリーシートを、面接で話す内容と矛盾しない形で書き上げる。記載事項が正しくないと判明した場合は採用される資格を失うことがある、と案内に明記されている
- 40分の作文試験を想定し、自己PRを文章にまとめる練習をする。あわせて、7カテゴリーの代表質問に一言メモで答えを作っておく
- 自治体研究のインプットをする。宮島の来訪者数や市域の二面性など、志望分野に近い事実を2〜3個は数字ごと言えるようにする。そのうえで固有質問の対応表を見返し、事実と自分の関心をつないだ話をつくる
- 声に出して練習する。30分の面接が2回ある試験なので、同じ話題を角度を変えて重ねて問われる想定まで入れておく
優先順位に注意
ステップ5に置いた自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、ステップ3のエントリーシートを先に仕上げてください。廿日市市は申込に書いた内容が採用の条件として扱われる試験ですから、ここが固まらないまま市の知識だけを足しても足場が揺れます。自分のことを一貫して語れる状態がないと、集めた市の情報は面接で使いこなせません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、廿日市市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
廿日市市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度の受験案内を読むかぎり、廿日市市の事務職は、事務(教養)と事務(SPI)の2区分で15人程度を採用し、第1次から第3次までの3段階で選考する試験でした。書面で自分を伝えられるのは40分の作文と申込のエントリーシートだけで、残りは第2次と第3次に置かれた30分ずつの面接です。
人口11万4,773人、高齢化率32.0%。令和6年に830万人を超える人が訪れた宮島と、豪雪地帯の指定を受ける旧吉和村の区域を、同じ市役所が受け持っています。
この市のどこに自分の手を伸ばしたいのか、ひとつ決めて理由を三段階まで掘り下げておけば、2回の面接で同じ材料が使えます。
なお、事務以外の区分は選考の入口も方法も異なりますし、土木職には県との合同試験という別の枠組みもありますので、準備を始める前に必ず最新の受験案内でご自身の区分を確認してください。