本記事では、広島市職員採用試験の面接対策で必要な、広島市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。試験の構成と配点は令和8年度Ⅰ種(一般枠)の行政事務を軸に整理し、Ⅱ種についても要点を併記します。

広島市役所の面接試験では、「なぜ広島市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「広島市の課題をどう捉えているか」といった、市政の中身を知らなければ踏み込めない質問が想定されます。市の実情や政策を理解しておくことで、抽象的な回答を避け、広島市ならではの事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。

掲載した数字や計画名は、暗記するために並べたものではありません。自分の経験と広島市の仕事が重なる場所を見つけるための材料として読み進めてください。

第1部|自治体研究編

広島市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは広島市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 広島県の県庁所在地であり、8つの行政区で構成される政令指定都市。
  • 明治22年(1889年)4月1日に全国で最初の市の一つとして市制を施行し、昭和55年(1980年)4月1日に全国で10番目の政令指定都市となった。
  • 政令指定都市への移行にあたって、県が所掌していた事務や権限が市へ移譲され、あわせて行政区制が導入された。県と市の役割分担は、面接で「なぜ県庁ではなく市役所か」を問われたときの土台になる。
  • 住民基本台帳人口は約116万8千人(令和8年1月1日現在)。同じ時点の広島県全体(約270万6千人)の4割強にあたる。
  • 都市づくりの最高目標として、昭和45年(1970年)以来一貫して都市像「国際平和文化都市」を掲げている。
  • 市域は906.69km²と広く、総合計画が「デルタ市街地やその周辺部」「中山間地・島しょ部」と並べて記すとおり、性格の違う地域を一つの市が抱える。区別では安佐北区の353.33km²が最も広く、中区の15.32km²が最も狭い。
  • 市の人口ビジョンによれば、全国の総人口が2008年にピークを迎えるなか、広島市でも2019年以降、総人口は減少に転じている。2017年以降は転出超過も続いている。
  • 令和6年(2024年)の入込観光客数は1,434万人(対前年比16.6%増)で、市の統計開始以来過去最高となった。
  • 経済・生活面で結び付く周辺市町とともに「200万人広島都市圏構想」を掲げており、構成は2025年4月時点で3県34市町。
  • 都心では、サッカースタジアム「EDION PEACE WING HIROSHIMA」(2024年2月開業)や、JR広島駅の新駅ビル「minamoa」(2025年3月開業)など、大型の施設整備が相次いだ。

広島市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありません。必要なのは、広島市の大きさと、その中身の偏りを自分の言葉で言えることです。

ここでは、人口規模と年齢構成、市域の広さ、行政区の構成、産業と財政の規模など、市政の性格に直結する項目を選んで並べました。

項目内容
総人口1,167,911人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口311,869人(26.7%/広島県全体は30.2%)
75歳以上人口185,127人(15.9%/広島県全体は18.2%)
総面積906.69km²(令和7年10月1日現在)
人口密度約1,288人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
行政区数8区(中区・東区・南区・西区・安佐南区・安佐北区・安芸区・佐伯区)
製造品出荷額等2兆8,049億円(令和3年、従業者4人以上)
卸売業の年間商品販売額6兆214億円(令和3年)
令和8年度当初予算(一般会計)7,940億1,135万9千円(対前年度当初予算9.8%増)

人口・年齢別人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)、総面積は広島市の面積統計(令和7年10月1日現在)、産業の数値は広島市統計プロフィール(令和3年6月1日時点)、予算は令和8年度当初予算の数値です。住民基本台帳による人口は、国勢調査による人口とは調査の基準が異なるため、そのまま比較することはできません。

数字から考えられる市政課題

広島市の高齢化率26.7%は、同じ時点の広島県全体(30.2%)を3.5ポイント下回ります。県内では若い都市だといえますが、問題はその平均が市内でほとんど通用しないことです。

区別に見ると、安佐北区は36.0%、安佐南区は22.3%。同じ市の中に、高齢化率が13ポイント以上開いた区が並んでいます。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

面積の偏りも同じ方向を向いています。8区のうち最も広い安佐北区は、最も狭い中区の20倍以上の面積を持ちます。

人口が密集する区と、広い区域に集落が点在する区が、一つの市役所の守備範囲に同居しているということです。たとえば面接では、広島市の現状を次のように説明できます。

「広島市全体の高齢化率は3割弱で、県の平均よりは低いんですけれども、区ごとに見ると3割半ばの区もあれば2割台前半の区もあると聞きました。同じ市の同じ制度でも、区によって困りごとの出方が違ってくるのではと感じています」

広島市の経済・産業

経済・産業構造の概要

  • 製造業は事業所数2,393、従業者数58,872人、製造品出荷額等(従業者4人以上)2兆8,049億円。
  • 卸売業は事業所数5,082、従業者数53,596人、年間商品販売額6兆214億円。
  • 小売業は事業所数7,871、従業者数80,063人、年間商品販売額1兆4,067億円。
  • 事業所数・従業者数は小売業が最も多く、金額の規模では卸売業が突出している(いずれも令和3年6月1日時点)。

ここで目を引くのは金額の並び方です。卸売業の年間商品販売額は、製造品出荷額等の2倍を超えています。

工場の集積そのものよりも、商品が集まって各地へ流れていく機能のほうが、金額の上では大きく出ているということです。

企業支援や雇用の話題では、この重心の置き方を踏まえて語ると具体性が増します。(出典:広島市統計プロフィール|令和3年)

観光の伸びと、その内訳

令和6年(2024年)の入込観光客数は1,434万人で、対前年比16.6%増と統計開始以来の過去最高を記録しました。牽引したのは外国人観光客で、251万3千人(同69.7%増)と大きく伸びています。

市はその要因として、G7広島サミットの開催と、広島空港の国際便再開・新路線就航を挙げています。日本人一般観光客も1,149万5千人(同9.8%増)と増加しました。(出典:広島市の観光客数|令和6年)

ただし、内訳をよく見ると修学旅行生等は33万2千人(同5.1%減)と、この年は減っています。「観光客が過去最高」という一行だけを覚えていると、この落差に気づけません。

伸びている層と減っている層が同時にあることを押さえておくと、観光の話題で一段深い受け答えができます。

都心の再整備と交通ネットワーク

2024年2月には、中区基町の中央公園内にサッカースタジアム「EDION PEACE WING HIROSHIMA」(収容約30,000人)が開業しました。街の中心部にあるサッカー専用スタジアムとしては国内初とされます。

翌2025年3月にはJR広島駅の新駅ビル「minamoa」が開業し、約220店舗の商業施設に加え、広島電鉄の路面電車が駅ビル2階に乗り入れる構造となりました。(参考:サッカースタジアムの整備|広島市)

令和8年度も、広島駅南口広場の再整備や基町相生通地区などの市街地再開発事業、西広島駅北口地区や西風新都のまちづくり、東部地区連続立体交差事業が進みます。道路・交通では広島高速5号線の整備と4号線の延伸、新交通西風新都線、高陽地区のスマートインターチェンジに向けたアクセス道路整備が並びます。

加えて、市とバス事業者8社による官民共同の組織を中心に、乗合バス事業の共同運営システムの構築が進められています。まちづくりや交通を志望するなら、個々の事業名より「なぜ今この順番で進めているのか」を考えておきましょう。

広島市の主な行政課題

ここまでの数字を並べると、広島市が向き合っている課題の輪郭が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

人口減少と、若い世代の転出超過

市の人口ビジョン(令和7年改訂版)は、自然動態と社会動態の両面から人口減少が加速していると認識しています。出生数は2018年に1万人を割って以降減少が加速し、2023年には7,868人。

自然増減は2017年に自然減へ転じ、以後一貫して自然減です。社会動態でも2017年以降は転出超過が続き、東京圏・関西圏を中心に15〜39歳の転出超過が多いと分析されています。

社人研推計に準拠した見通しでは、2060年の総人口は96.8万人と、2020年の81%まで縮むとされています。(出典:広島市人口ビジョン|令和7年改訂版)

高齢化の進行と、支える側の負担

同じ推計では、広島市の高齢化率は2020年の25.7%から2040年に33.0%、2060年には35.5%となり、市民の3人に1人以上が高齢者になると見込まれています。

より重いのは支える側の比率で、生産年齢人口に対する老年人口の比率は2020年の42.1%から、2040年に59.2%、2060年に65.9%へ上がる見通しです。人口ビジョンは、現行の社会保障制度が続くと仮定した場合、医療費等にかかる生産年齢人口の負担増加が予測されると指摘しています。

土砂災害と地震への備え

平成26年(2014年)8月20日に市内で発生した土砂災害では、死者・行方不明74人(災害関連死を除く)の被害が生じました。

地震については、広島市地震防災マップが想定地震を示しており、南海トラフ巨大地震(マグニチュード9.0)で市内最大震度6弱、五日市断層による地震(マグニチュード7.0)と己斐-広島西縁断層帯による地震(マグニチュード6.5)では市内最大震度6強を想定しています。

防災を語るなら、過去の災害を出来事として述べるだけでなく、市が現在どこに力を入れているかまで調べておきましょう。

拡大する予算と、行政経営改革の両立

令和8年度当初予算は、全会計で1兆4,229億4,439万5千円(対前年度当初予算11.4%増)、一般会計は7,940億1,135万9千円と4年連続のプラスで政令市移行後最大となりました。

一方で市は、行政経営改革推進プランと財政運営方針に基づいて持続可能な行政体制の構築にも意を用いるとしています。令和5年度決算に基づく健全化判断比率は実質公債費比率9.6%、将来負担比率165.4%で、いずれも早期健全化基準には達していません。

予算規模の拡大と改革の同時進行が、いまの広島市の運営スタイルです。(出典:健全化判断比率|令和5年度決算)

圏域の中枢としての役割と、市域内の落差

市は「200万人広島都市圏構想」を掲げ、経済・生活面で結び付く周辺市町と連携して圏域経済の活性化と圏域内人口200万人超の維持を目指しています。構成は2025年4月時点で3県34市町。

他方、市域の内側では、似島や戸山地域・湯来地域の活性化、高陽地域・白木地域の活性化プランに基づく地域主体の取組の支援といった、中山間地・島しょ部への手当が続いています。圏域全体を引っ張る役割と、市域内の小さな地域を支える役割を同時に担うのが広島市の立ち位置です。

広島市の重点政策|広島市総合計画

広島市の市政運営の最上位に置かれているのは「広島市総合計画」(広島市基本構想と第6次広島市基本計画)です。令和2年(2020年)6月に議会の議決を経て策定され、基本計画の期間は令和2年度から令和12年度までとされています。

基本構想が都市像と施策の構想を定め、基本計画が施策の大綱を体系的に定める、という役割分担です。(出典:広島市総合計画(基本構想・第6次基本計画))

都市像「国際平和文化都市」と3つの柱

基本構想は、都市像を実現するための要素として「世界に輝く平和のまち」「国際的に開かれた活力あるまち」「文化が息づき豊かな人間性を育むまち」の3つを掲げ、そこから6つのまちづくりへ施策を展開する構成をとっています。

この3つの柱は令和8年度の予算編成でもそのまま章立てに使われており、計画と毎年度の予算が同じ言葉でつながっているのが広島市の特徴です。志望動機を語るときは、自分のやりたいことがどの柱に載るのかを意識しておくと、話の置き場所が定まります。

第6次基本計画の6章

章扱う主な分野
第1章 「平和への願い」を世界中に広げるまちづくり核兵器廃絶と世界恒久平和の実現、「ヒロシマの心」の共有の推進、市民生活の安寧の確保に向けた貢献
第2章 活力の創出と都市の個性の確立を目指したまちづくり都市機能の充実強化、産業の振興、観光の振興、国際交流・国際協力や多文化共生の推進
第3章 地域特性に応じた個性的な魅力を生かしたまちづくりデルタ市街地やその周辺部・中山間地・島しょ部のまちづくり、区における住民主体のまちづくり活動、広島広域都市圏の発展への貢献
第4章 多様な市民が生き生きと暮らせるまちづくり高齢者や女性を始め全ての市民の意欲と能力が発揮できる環境づくり、文化・スポーツの振興、地域コミュニティや市民活動の活性化
第5章 保健・医療・福祉、子どもの育成環境の充実を目指したまちづくり地域共生社会の実現、保健・医療・福祉の充実、未来を担う子どもの育成と教育
第6章 安全で安心して生活でき、豊かな自然を将来に引き継ぐまちづくり安全・安心に暮らせる生活基盤の整備、環境と調和した循環型社会の形成

区に関する節が独立して立っているのは、8区の区役所を持つ市ならではの構成です。区における住民主体のまちづくり活動の充実が計画本体に位置づけられていることは、区役所配属を志望する人にとって使いやすい材料になります。

令和8年度の市政運営のポイント

広島市は独立した施政方針演説の文書を公表しておらず、市長の年度方針にあたるのは当初予算の概要に置かれた「予算編成の基本的な考え方」です。

令和8年度版は、市税収入が増収となる見込みの一方で食料品を中心とした物価高の影響が続いていること、少子高齢化や人口減少への対応が待ったなしであることを出発点に、転出超過の抑制と合計特殊出生率の向上に資する対策の強化を掲げています。(出典:令和8年度広島市当初予算の概要|令和8年度)

重要課題として並ぶのは「地域コミュニティの活性化」「公共交通の充実強化」「平和文化の振興」「こども・若者や子育て支援」の4つで、なかでも子ども・若者施策には力点が置かれています。

具体策としては、こども医療費補助の対象年齢を中学3年生から高校生年代まで拡大し所得制限を撤廃すること、放課後児童クラブの基本料金引下げと多子軽減措置の拡充、小学校の給食費について令和8年度は保護者等に負担を求めないこと、5歳児健康診査の試行実施、北部児童相談所(仮称)の新設、SNSによる24時間体制の相談窓口の設置などが挙げられています。

POINT|計画の章立てを暗記しても点にはならない

名称をすべて覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心分野を一つか二つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③現在の事業 → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験・強みをどう生かすか」の順で調べましょう。

悪い例「広島市の子育て支援に携わりたいです」

改善例「こども医療費の対象拡大や給食費の負担軽減のように、子育て世帯のお金の心配を減らす取り組みを、実際に利用している家庭の声を聞きながら整えていく仕事に携わりたいです」

あわせて確認したい公式資料

次の資料は、面接までに一度は開いておきたいものです。関心のある分野から順に、要点を自分の言葉で言い直せるところまで読み込んでおきましょう。

  • 広島市職員採用試験の受験案内(Ⅰ種・Ⅱ種など、自分の受ける枠のもの)
  • 広島市総合計画(基本構想・第6次基本計画)の本編または概要
  • 令和8年度当初予算の概要(Ⅳ「令和8年度当初予算のポイント」)
  • 広島市人口ビジョン(令和7年改訂版)と、志望分野の個別計画

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、広島市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。広島市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

広島市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

広島市役所の面接の概要

ここからは、広島市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

広島市役所の面接の流れ

広島市職員採用試験を実施するのは広島市人事委員会です。令和8年度のⅠ種(一般枠)行政事務は三段階選抜で、第2次試験と第3次試験がどちらも個別面接という構成になっています。

しかも、面接試験の配点は合計900点で、総得点1350点の3分の2を占めます。(出典:令和8年度広島市職員採用試験(Ⅰ種)受験案内|令和8年度)

項目内容(令和8年度・Ⅰ種(一般枠)行政事務)
実施主体広島市人事委員会(広島県人事委員会が実施する広島県職員採用試験とは別の試験です)
試験の段階三段階選抜。第1次試験 → 第2次試験(面接試験)→ 第3次試験(面接試験)
筆記試験教養試験(大学卒業程度・2時間30分・55問。知識分野は30問中20問を選択解答、知能分野は25問を全問解答)と、専門試験(2時間・40問全問解答)
小論文試験第1次試験と同日に実施(1時間・約1,000字)。ただし採点されるのは第1次試験の合格者のみで、得点は第2次試験の成績となります
面接の種類個別面接が2回。第2次・第3次とも「主として人物、識見等についての個別面接」と記載されています
集団形式なし。受験案内の冒頭に「全ての試験区分で集団討論試験を廃止しました」と明記されています
配点教養試験150点・専門試験150点・第2次面接試験300点・小論文試験150点・第3次面接試験600点の合計1350点
提出書類第2次試験の受験者は、市の職員採用情報サイトに掲載される「面接カード」を第2次試験日当日に提出します
合否の決め方第1次は教養試験と専門試験の総合成績。第2次・第3次はそれまでの試験の成績を総合して決定。ただし各試験項目の成績が一定基準に達しない場合は不合格となります

注目してほしいのは、令和8年度から集団討論試験が廃止され、人物を見る試験が個別面接だけになったことです。過年度の情報をもとに集団討論の練習に時間を割く必要はなくなりました。

そのぶん、900点の配分先はすべて一対一の受け答えです。加えて、単一の種目としては第3次面接試験の600点が最大で、第1次試験で問われる教養試験と専門試験を合わせた300点の、ちょうど2倍にあたります。

同じテーマを角度を変えて何度も問われる前提で、暗記した答えの再生ではなく、掘り下げに耐える準備をしておきましょう。

もう一段、合否の決め方の一行も読んでおきたいところです。受験案内は、第1次試験を教養試験と専門試験の総合成績で決め、第2次試験と第3次試験はそれまでの試験の成績を総合して合格者を決定すると記しています。

第1次で取った点数は、通過した時点で役目を終えるのではなく、最終合格の判定まで持ち越されるということです。面接に900点が振られている試験だからと筆記を通過点として扱えば、この持ち越し分を自分から軽くすることになります。

しかも、各試験項目の成績が一定基準に達しない場合は不合格と明記されているため、配点の小さい種目を切り捨てる戦い方も取れません。

学習時間を配分するときは、筆記でどこまで積むかを先に決めたうえで面接準備の時間を足していく順番が、この試験には合っています。

上記は令和8年度Ⅰ種(一般枠)行政事務の試験構成です。同じⅠ種でも、その他の試験区分は専門試験が200点で合計1400点、消防は体力試験100点を加えて合計1450点となります。Ⅱ種の行政事務・学校事務は教養試験300点・第2次面接試験300点・小論文試験150点・第3次面接試験600点の合計1350点で、Ⅱ種でも集団討論試験は廃止されています。試験の構成・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。

広島市役所が求める人物像

受験案内は「本市職員が目指す『職員像』と『職場像』」という項目を設け、職員像として①使命感に満ち能動的に行動する職員 ②市民ニーズを的確に酌み取り、多様な主体と連携・協力しながら、将来を見据えた効果の高い政策を立案できる職員 ③行政経営の視点を持った職員 の3つを挙げています。

職場像は「全ての職員が、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら、その能力を存分に発揮できる広島市役所」です。使命感・政策立案・行政経営という3つの語が、広島市の職員像の骨格だと押さえておきましょう。

広島市は8つの区役所を抱える大規模な基礎自治体でありながら、都市像には昭和45年以来「国際平和文化都市」を掲げ、圏域では3県34市町からなる200万人広島都市圏構想の中枢を担っています。区の窓口で一人の市民と向き合う仕事と、圏域や国際的な発信に関わる仕事が、同じ市役所の中に並んでいるということです。

②の一文が「市民ニーズを的確に酌み取り」と「将来を見据えた効果の高い政策を立案できる」を同居させているのは、この構造と無関係ではないと当研究会は受け止めています。身近な困りごとを丁寧に受け止める姿勢と、市域を超えた絵を描く視点は、広島市ではどちらか一方では足りないと考えられます。

面接カードは第2次試験日当日に提出します。個別面接は第2次と第3次の2回あり、900点はこの2回に配分されています。

つまり、同じ経験について日を変えて二度、掘り下げの質問を受ける前提で準備することになります。

二度目で崩れないのは、盛った話ではなく、区役所の窓口や地域の集まりに置き換えても筋が通る自分の経験です。どの経験を選び、どこを厚く話すかを決める作業が、広島市の面接では準備の中心になります。

ただし、同じ個別面接でも2回の重さは同じではありません。第2次面接試験は300点、第3次面接試験は600点で、後半が前半の2倍の配点を持っています。

準備も同じ段取りで組むと、どこまで仕上げればよいかが見えやすくなります。第2次までに用意しておきたいのは、面接カードに書いた経験を、順を追って過不足なく説明できる状態です。

第3次までに必要になるのは、その経験のどこを取り出して聞かれても、当時なぜそう判断したのかまで戻って話せる状態です。集団討論の対策に充てるはずだった時間があるなら、後者の練習、たとえば選んだ経験を一つ決めて、他人に遠慮なく掘ってもらう時間へ振り替えるのが効きます。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。広島市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク緊張していますか?個別面接が2回続く試験で、最初の数十秒に出る受け答えの温度
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?民間との比較で止まらず、広島市を選んだ理由まで一続きで話せるか
③ 自己理解あなたの短所(弱み)は何ですか?第3次面接まで同じ人物像で通せるか。短所を認めたうえでの付き合い方
④ 経験・行動これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください面接カードに書いた経験を、その場で細部まで再現できるか
⑤ 学業・経歴卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください専門選択科目(法律・経済・行政)で学んだことを、市の仕事の言葉へ置き換える力
⑥ 適性・将来入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか?8区の区役所から本庁の政策部門まで、配属の幅を前提に働けるか
⑦ 公共性・社会性最近関心を持ったニュースは何ですか?小論文でも問われる、社会の出来事を自分の言葉で説明する力

もっとも、ここまでは受験者の多くが同じように備えてくる範囲です。準備量だけで抜け出すのは難しい。

差が出るのは、次の「広島市ならではの事情を踏まえた質問」です。

合否を分けるのは「広島市役所ならでは」の質問

「広島県庁ではなく、広島市役所を志望したのはなぜですか」
「広島市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

とくに1問目は、政令指定都市である広島市では重みのある質問です。昭和55年の移行によって県の事務や権限の一部が市へ移り、区役所という住民に近い現場が置かれた経緯があるからです。

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、広島市の事実を手元に持っているかどうかが、そのまま答えの厚みに出る質問でもあります。こうした質問に答えるための材料を、面接で使いやすい形に絞って整理しました。

質問テーマ知っておきたい広島市の事実答え方のヒント
人口の現在地住民基本台帳人口は1,167,911人(令和8年1月1日現在)、高齢化率26.7%で県全体の30.2%より低い。一方、2019年以降は減少に転じ、2017年以降は東京圏・関西圏を中心とする15〜39歳の転出超過が続く規模の大きさと減少局面のどちらか一方に寄せず、両方を一息で言えるようにしておきます
なぜ県庁ではなく市役所か昭和55年4月1日に全国で10番目の政令指定都市となり、県の事務や権限が市へ移譲され、行政区制が導入された制度の説明で終えず、8つの区役所という住民に近い現場があることと、自分がやりたい仕事を接続します
市の総合計画広島市総合計画(基本構想と第6次基本計画、計画期間は令和2年度から令和12年度)。都市像は「国際平和文化都市」で、3つの柱から6章に施策を展開やりたい仕事が6章のどれに載るのかを一言添えると、計画を読んだ人の話になります
防災・危機管理2014年8月20日の土砂災害で死者・行方不明74人。地震防災マップは五日市断層による地震などで市内最大震度6強を想定過去の被害を述べるだけで終えず、市が今どこに力を入れているかと、自分にできる備えまでつなげます
広島市の魅力と課題令和6年の入込観光客数1,434万人は過去最高で、外国人観光客は251万3千人(対前年比69.7%増)。一方、修学旅行生等は33万2千人(同5.1%減)名所の紹介で終えず、増えた来訪をどう市内へ還元するかと、減っている層への手当の両方に触れます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、受験案内が掲げる3つの職員像に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの整い方ではなく、行動の中身とその繰り返しやすさが見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
使命感に満ち能動的に行動する指示を待たずに自分から動いた場面と、そのときの動機誰かに頼まれる前に気づいて動いた経験を、時系列で書き出しておく
市民ニーズを酌み取り、連携して政策を立案する相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、背景を確かめてから動いたかⅡ種の小論文でも問われた「困難な要求への対処」のように、断りながら関係を壊さずに済んだ場面を用意する
行政経営の視点を持つ限られた時間や費用の中で、何を先にやるかを決めた経験予算が政令市移行後最大でありながら改革プランが併記されている市であることを踏まえ、増やす話と見直す話をセットで語れるようにする

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

広島市は個別面接が2回ある分、この傾向はより強く出ます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新年度の受験案内で、自分が受ける枠(Ⅰ種の一般枠かⅡ種かなど)の試験の段階と配点を確認する
  2. 第2次試験日当日に提出する面接カードの記入項目を確認し、書ける経験が手元にあるかを点検する
  3. これまでの経験を棚卸しする。Ⅰ種は学歴を問わず年齢の上限まで幅があるので、学業・課外活動・アルバイト・職務経験のうち自分にある領域から、話せる具体例を1つずつ用意する
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い広島市の事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  6. 固有質問の対応表から材料を選び、声に出して練習しながら「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の面接カードの確認と、ステップ3の経験の棚卸しを先に終わらせてください。面接カードに書けることが薄いまま市の知識だけを足しても、900点の面接では返す言葉が続きません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、広島市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

広島市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

広島市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和8年度のⅠ種(一般枠)行政事務では、総得点1350点のうち900点が面接試験の配点です。集団討論が廃止された分、人物を見る時間はすべて一対一の受け答えに置き換わりました。

116万人が暮らし、8つの区がそれぞれ違う顔を持つ市で、自分は誰のどんな困りごとに手を伸ばしたいのか。面接カードに書ける形になるまで、経験を選び直す作業を続けてください。