本記事では、呉市職員採用試験の面接対策で必要な、呉市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

呉市役所の面接試験では、「なぜ呉市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。呉市の試験案内は科目ごとの得点配分を明示しているので、人物試験にどれだけの重みが置かれているかが数字ではっきりわかります。

本記事で扱う試験の内容は、呉市が公表した令和8年度(9月実施)の職員採用試験案内にもとづき、一般行政(Ⅱ種)を中心に整理したものです。呉市は9月実施のほかにも6月実施やSCOA枠の採用試験を行っていますので、掲載内容を参考に、自分の強みや関心と呉市政の接点を考えながら、ご自身が受ける試験に合わせて回答を作っていってください。

第1部|自治体研究編

呉市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは呉市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 平成28年4月1日に中核市へ移行した、全国で46市目の中核市(佐世保市と同時)。その前の平成12年11月には特例市の指定を受けていた。
  • 広島県の南西部に位置し、県内では広島市・東広島市・江田島市・坂町・熊野町・大崎上島町と隣り合う。南は瀬戸内海を挟んで愛媛県の松山市・今治市と境を接する。
  • 市域の面積は352.04km²で、広島県全体(8,478.16km²)の約4.2%にあたる。
  • 人口は19万7,092人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。
  • 高齢化率は36.8%で、広島県全体の30.2%を6.6ポイント上回る。75歳以上の割合も23.7%。
  • 平成30年7月豪雨では市内で死者30人(うち災害関連死5人)を数え、住家等の建物被害は3,243件にのぼった。
  • その災害復旧事業は令和6年3月にすべて完了している。
  • 令和8年度(9月実施)の職員採用試験では、各科目の得点配分が公表されている。一般行政(Ⅱ種)では人物試験の配点が筆記系を上回る。

呉市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「呉市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

市の経済規模については、広島県が「市町民経済計算」として市町内総生産を公表しています。ただしこれは市ごとに積み上げた数字ではなく、県全体の県民経済計算をさまざまな統計指標で市町別に按分したものです。

面接で細かい金額まで持ち出す種類の数字ではないと考えてください。呉市の場合はむしろ、人口の年齢構成と市域の広さに加えて、中核市という位置づけを外せません。

県から移ってきた事務の量が、市の仕事の幅を決めているからです。

項目内容
総人口197,092人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口(高齢化率)7万2,489人(36.8%/広島県全体は30.2%)
75歳以上人口(75歳以上率)4万6,667人(23.7%/広島県全体は18.2%)
総面積352.04km²(広島県の約4.2%)
人口密度約560人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
市の位置づけ中核市(平成28年4月1日移行)
隣接自治体広島市・東広島市・江田島市・坂町・熊野町・大崎上島町、愛媛県松山市・今治市
市の花・市の木つばき・かし
市役所の所在地呉市中央4丁目1番6号

表の人口と年齢別の内訳、それぞれの割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。並記した広島県全体の割合も同じ調査の県の値ですので、そのまま比較できます。人口密度は、上記の人口を面積で割って当研究会が求めた値です。後述する国勢調査の人口は調査の基準が異なる別系列の数値ですので、本表の人口と並べて増減を計算しないようご注意ください。

数字から考えられる市政課題

呉市の高齢化率36.8%は、広島県全体の30.2%を6.6ポイント上回ります。

75歳以上に絞ると23.7%で、県全体の18.2%を5.5ポイント超えています(いずれも令和8年1月1日現在)。人口19万人台という規模を持ちながら、年齢構成は県平均よりはっきり先行しているのが呉市の姿です。

ここに、中核市であるという条件が重なります。中核市は県から多くの事務を引き受けている自治体ですから、福祉や保健の分野で市が直接担う範囲が広くなります。

高齢化の進んだ人口構成と、福祉分野の権限の広さが同時にあるという点が、呉市で働くことの中身を決めていきます。

この2つを重ねると、面接では次のように話せます。

「呉市の高齢化率は3割台の後半で、県全体より6ポイントほど高いと知りました。中核市なので、福祉や保健の仕事を市が直接担う部分も広いと聞いています。だからこそ、高齢の方の暮らしを支える仕組みを市の裁量で工夫できる余地があるのではと感じています」

呉市の経済・産業

市域の姿と周囲との関係

呉市の市域352.04km²は、広島県全体の約4.2%にあたります。人口密度は約560人/km²です。

県内では県都の広島市に隣り合い、南は瀬戸内海を挟んで愛媛県の松山市・今治市と境を接します。県都の隣にありながら、海を越えて四国とも向き合う位置という条件が、通勤・物流・防災のどの話題でも前提になります。

県内で4番目の人口規模

令和7年国勢調査の速報値(広島県独自集計)で市町別の人口を見ると、広島市が1,172,423人で最も多く、次いで福山市439,994人、東広島市198,496人、呉市191,653人と続きます。

呉市は県内で4番目の人口規模という位置づけです。県全体の人口は2,683,399人で、令和2年の前回調査から116,303人(4.2%)減りました。(出典:令和7年国勢調査 広島県の人口速報|令和7年)

ここで挙げた国勢調査の数値は、前の章で示した住民基本台帳の人口とは調査の基準が違います。

県内での相対的な位置を語るときにはこちらを、市の年齢構成を語るときには住民基本台帳の値を、というように使い分けてください。面接で数字を出すときも、どの調査の値かを一言添えられると印象が変わります。

広島県の産業と観光

広島県の産業は「ものづくり」を軸に組み立てられています。造船や鉄鋼、自動車といった重工業に加え、電気機械や電子部品などの先端分野まで層が厚く、製造品出荷額等は中国・四国・九州地方で11年連続して1位です。(出典:広島県の産業・企業情報|県公式)

観光の面でも県全体は伸びています。令和6年の総観光客数は6,474万人で前年比7.2%増、観光消費額は5,918億円で同18.4%増、外国人観光客数は422万人で同57.2%増でした。

産業と観光のどちらから志望動機を組み立てるにしても、県全体の経済がどう動いているかを一言で言えるようにしておくと、話の土台が安定します。

呉市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、呉市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

高齢化の先行と人口減少

呉市の高齢化率36.8%は県全体を6.6ポイント上回り、75歳以上の割合23.7%も県全体の18.2%を大きく超えます。

県レベルでは、令和7年国勢調査の速報値で人口が前回調査から4.2%減り、人口月報でも対前年同月差の減少が254か月続いています。県全体の長い減少局面の中で、呉市は高齢化がより進んだ位置にいるという認識が、市政課題を語るときの出発点になります。

平成30年7月豪雨という経験

呉市にとって、平成30年7月豪雨は市政の前提を変えた出来事です。市の被害状況では、死者30人(うち災害関連死5人)・負傷者22人、住家等の建物被害3,243件、橋梁の流失15橋(令和5年3月31日時点)。

JR呉線は約5か月にわたって全線が運休しました。地区別に見ると、安浦地区で991件、天応地区で598件の建物被害が生じています。(出典:平成30年7月豪雨の被害状況|呉市復興記念館)

鉄道が長期間止まったという事実は、通勤・通学・通院の足がまとめて失われたということです。地形と交通の条件が災害の影響を大きくするという構図は、呉市の防災を語るうえで欠かせません。

土砂災害への備え

令和6年11月28日現在、広島県内では土砂災害警戒区域・特別警戒区域が合計47,842箇所指定されています。県は平成26年8月に広島市で発生した土砂災害を受けて砂防・治山の施設整備計画を策定し、対策施設の整備を令和2年9月に完了させました。

山が海際まで迫る地形を持つ呉市では、警戒区域の把握と避難情報の伝え方が日常の業務に直結します。(出典:土砂災害警戒区域等の指定状況|令和6年11月)

南海トラフ巨大地震への備え

令和7年10月にまとめられた広島県地震被害想定調査報告書は、マグニチュード9.0の南海トラフ巨大地震について、県内最大震度6強、死者数約1万4千人(うち津波による死者が約1万3千人)、全壊棟数約9万棟(液状化約4万5千棟・津波約3万8千棟)という想定を示しました。

津波の高さは最大4メートル、浸水想定面積は1万2千ヘクタール以上、避難者数は70万人超、災害関連死は約1,900人から3,700人と、いずれも大きな数字が並びます。

海に開いた市域を持つ呉市にとって、津波と避難生活の長期化は正面から向き合う論点です。(出典:広島県地震被害想定調査報告書|令和7年10月)

若い世代をどう迎え入れるか

県の課題認識では、合計特殊出生率が令和6年実績で1.29まで下がり、20歳から24歳までの若年層が「就職」を契機に転出超過となっている点が挙げられています。

これに対し呉市は、令和8年度(9月実施)の一般行政について、令和9年4月1日時点で18歳及び19歳を対象とするⅡ種の区分を設けました。高校を出てすぐ市の職員になる道を用意しているという事実は、若い世代の流出という課題と表裏の関係にあります。

呉市の重点政策|中核市としての権限と復旧の到達点

呉市を志望するなら、まず中核市であることの意味を押さえておきましょう。呉市は平成28年4月1日に中核市へ移行し、全国で46市目(佐世保市と同時)の中核市となりました。

これに伴い、広島県から呉市へ約430法令項目の事務が新たに移譲されました。(出典:中核市への移行|呉市公式)

中核市になって何が変わったか

移譲された事務は分野をまたいでいます。市の説明では、次のような例が挙げられています。

  • 民生行政
    母子・寡婦福祉資金の貸付など
  • 都市計画・建設行政
    屋外広告物の条例による設置制限等の事務など
  • 文教行政
    県費負担教職員の研修実施の事務など

あわせて押さえておきたいのは、呉市が移行前からすでに保健所を設置していたという点です。地域保健法に基づく保健所政令市の事務をはじめ、中核市の権限とされる事務の約8割の項目は移行の時点で移譲済みでした。

つまり呉市は、県の仕事を段階的に引き受けてきた市だということです。この経緯は「なぜ県庁ではなく市役所か」という質問への答えを組み立てるときに効いてきます。(出典:中核市移行に伴う移譲事務|呉市公式)

豪雨災害からの復旧という到達点

もう一つ、呉市の現在地を示す事実があります。平成30年7月豪雨に係るすべての災害復旧事業が、令和6年3月をもって完了したことです。

被害の大きさだけでなく、そこからの復旧が区切りを迎えたという事実まで押さえておくと、話の射程が変わります。「大変でしたね」で終わらせず、復旧を終えた市がこれから何に備えるのかという方向で話せると、市政への理解の深さが伝わります。(出典:平成30年7月豪雨災害復旧事業の完了|呉市公式)

POINT|制度の名前を覚えることが目的ではない

中核市という言葉を知っているだけでは、面接の答えにはなりません。関心のある分野を一つか二つ決めて、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指しているか → ③今どんな取組があるか → ④中核市だからこそ市が担える役割は何か → ⑤自分の経験をどう生かすか」の順で調べていきましょう。

悪い例「呉市の福祉に携わりたいです」

改善例「呉市は中核市で、保健所も前から持っていると知りました。まずは仕事を覚えることからですけれども、その上で、高齢の方が多い地域で健康の相談を受ける仕組みを、市の判断で使いやすくしていく仕事に関われたらと思っています」

あわせて確認したい公式資料

面接前に開いておきたい資料を挙げます。中核市として市が何を引き受けているのかが分かる資料から手をつけると、話の芯が早く決まります。

  • 呉市職員採用試験の試験案内(最新の日程)
    試験区分・採用予定者数・科目・得点配分がすべて載っています
  • 呉市の総合計画
    市がどの分野に重点を置いているかを、自分の関心と照らせます
  • 中核市への移行に関する市の説明ページ
    県から移ってきた事務の中身を、分野ごとに確認できます
  • 平成30年7月豪雨の被害と復旧の記録
    被害の規模と、その後に何が行われたかを一続きで理解できます

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、呉市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。呉市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

呉市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

呉市役所の面接の概要

ここからは、呉市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

呉市役所の面接の流れ

令和8年度(9月実施)の一般行政(Ⅱ種)は、第1次試験から第3次試験までの3段階です。

第1次で筆記系の2科目、第2次で集団討論と個別面接、第3次でもう一度個別面接。個別面接が2回、集団討論を含めれば人物を見る場が計3回ある構成になっています。

項目内容(令和8年度・9月実施・一般行政(Ⅱ種))
試験の段階第1次試験 → 第2次試験 → 第3次試験の3段階
第1次試験教養(公務員として必要な一般知識等(時事、社会・人文、文章理解、判断・数的推理、資料解釈)についての択一式の筆記試験。高校卒業程度)と適性検査(事務職員としての適応性を、正確さ・迅速さ等の作業能力の面からみる検査)
第2次試験性格適性検査(SCOA。自身の性格について回答する二肢択一式の適性検査で、指定する期日までに自宅等のパソコンやスマートフォン等で受検します)、集団討論(テーマに関して一定の答えを出すグループワーク)、個別面接(人物、識見等についての個別面接)
第3次試験個別面接(人物、識見等についての個別面接)
合格者数の目安第1次試験の合格者数は採用予定者数の3倍程度、第2次試験の合格者数は採用予定者数の2倍程度
採用予定者数2名
提出書類申込は原則としてインターネットで行い、マイページの指示に従って必要項目の入力と写真等の添付をします。面接カード・エントリーシート・自己PR書等の別途提出は指定されていません
成績の通知不合格となった人のうち希望する人に対して、試験成績を通知する制度があります

公表されている得点配分の中身

呉市の試験案内は、科目ごとの得点配分と基準の有無を明示しています。ここでは、その数字をそのまま並べます。

科目(一般行政(Ⅱ種))得点配分基準・基準点
教養(第1次試験)100基準点あり
適性検査(第1次試験)100基準点なし
性格適性検査(SCOA)(第2次試験)得点配分なし記載なし
集団討論(第2次試験)125基準あり
個別面接(第2次試験)125基準あり
個別面接(第3次試験)125基準あり

公表されている得点配分をそのまま足し上げると、人物試験は375点、筆記系は200点となります。集団討論と2回の個別面接がそれぞれ125点、教養と適性検査がそれぞれ100点という構成です。

人物を見る科目の配点が、筆記系を大きく上回っていることになります。

もう一つ、配点と同じくらい重要なのが基準の扱いです。基準または基準点を「あり」としている科目で基準に達しない科目が一つでもあれば、他の科目の成績にかかわらず不合格となります。

集団討論も2回の個別面接も、いずれも「基準:あり」です。高い得点を狙う前に、どの科目でも基準を下回らないことが先に来ます。

上記は、呉市が公表した令和8年度(9月実施)の職員採用試験案内にもとづく一般行政(Ⅱ種)の内容です。得点配分の合計は、試験案内の得点配分欄の記載を当研究会が単純に足し上げたものです。試験の構成・科目・配点は日程や試験区分によって異なりますので、受験の際は呉市が公表する最新の試験案内でご確認ください。(出典:呉市職員採用試験(9月実施)試験案内|令和8年度)

9月実施の試験区分と採用予定者数

同じ9月実施でも、区分によって科目も段階も異なります。自分が受ける区分の欄を正確に読むことが準備の第一歩です。

試験区分(令和8年度・9月実施)採用予定者数
一般行政(Ⅱ種)2名
一般行政(職務経験者)5名
一般行政(行政実務経験者枠)<非常勤経験者>2名
土木一般(Ⅱ種)2名
保育士3名
消防吏員(Ⅰ種)3名
消防吏員(Ⅱ種)2名
清掃作業員1名

令和8年度(9月実施)の一般行政は、令和9年4月1日時点で18歳及び19歳を対象とするⅡ種のみで、大学卒業程度に相当する一般行政(Ⅰ種)の区分はこの日程には含まれていません。なお、消防吏員(Ⅰ種・Ⅱ種)には集団討論が課されず、第2次試験で体力検査と身体検査が行われます。区分ごとの詳細は、呉市が公表する最新の試験案内でご確認ください。(参考:呉市職員採用試験(9月実施)|令和8年度)

呉市が求める職員像

呉市は「求める職員像」にあたる公表文言を、令和8年度(9月実施)の試験案内にも職員採用案内のトップページにも置いていません。トップページに掲げられているのは「ちょうどいいまち、呉市」というキャッチコピーで、これは職員像を示す文言ではありません。

そこで、公表されている配点と基準の置き方から、市が何を見ようとしているのかを読み取っていきます。

集団討論は「テーマに関して一定の答えを出すグループワーク」と定義されています。意見を述べ合うだけでなく、グループとして結論に到達することが作業の目的だと明示されているわけです。

ここに125点が置かれ、個別面接も2回で250点。他人と一緒に答えを出す力と、一人で自分を説明する力が、ほぼ同じ重さで並んでいると読めます。

配点という形で示された事実の先に、当研究会として一つ付け加えておきたい話があります。19万7,092人が暮らす市域を、中核市の権限を持って運営しているという条件についてです。

県から約430法令項目の事務を受けているということは、市の仕事が扱う制度の幅が県のそれに近づくということでもあります。一方で、区役所を単位に組織を細かく分ける政令市とは違い、一人の職員が受け持つ制度の範囲は広くなりやすい。

そうした職場では、はじめて触れる制度でも短い時間で理解して運用に乗せる力や、分野の違う相手に遠慮なく尋ねられる姿勢が効いてくる場面が多いとみています。

面接で125点の場が3回あるということは、同じ受験者を3回、別の角度から確かめられるということでもあります。

3回とも高い評価を狙いにいくより、どの場面でも基準を下回らない答えを返せるほうが、この配点の下では効いてきます。軸にする経験を1つ決めて、そこから枝を伸ばす形で準備を組み上げていきましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。呉市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク試験会場までは、どうやって来ましたか?集団討論のあとに個別面接へ移っても、受け答えの調子を保てるか
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?数ある就職先の中から呉市役所を選んだ筋道が、自分の経験から説明できるか
③ 自己理解あなたの短所(弱み)は何ですか?短所を認めたうえで、その付き合い方まで語れるか
④ 経験・行動これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください出来事の重さより、そのときに何を優先し、誰にどう働きかけたか
⑤ 学業・経歴高校生活で力を入れたことを説明してくださいⅡ種の受験者に共通する題材の中で、自分だけの中身を出せるか
⑥ 適性・将来入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか?中核市として市が担う仕事の幅への理解と、配属に対する構え
⑦ 公共性・社会性最近関心を持ったニュースは何ですか?教養試験の時事にも集団討論のテーマにもつながる、社会への関心

呉市の場合、この7項目をどう扱うかは配点表から逆算できます。一般行政(Ⅱ種)では人物試験の配点が筆記系を上回っているため、ここに挙げた質問への答えが持ち点の大きい部分を占めることになります。

とはいえ、この7項目そのものは全国どの市役所でも問われる内容です。得点差が開くのは、次に扱う呉市固有の事情に踏み込む質問のほうです。

合否を分けるのは「呉市役所ならでは」の質問

「なぜ広島県庁ではなく、呉市役所なのですか?」
「呉市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。呉市の場合、1問目には中核市という具体的な答えの土台があります。

県から事務が移ってきた市を選ぶ理由は、制度の言葉ではなく自分の関心で語れるはずです。使える事実を5つに絞って、答え方と一緒に並べておきます。

質問テーマ知っておきたい呉市の事実答え方のヒント
人口と高齢化の現在地人口19万7,092人、高齢化率36.8%(広島県全体は30.2%)、75歳以上率23.7%(令和8年1月1日現在)数字を挙げたあと、中核市として福祉分野の権限が広いという条件と結び付けると、話に厚みが出ます
なぜ県庁ではなく市役所か平成28年4月1日に中核市へ移行し、県から約430法令項目の事務が移譲された。移行前から保健所を設置しており、中核市権限の約8割は移譲済みだった制度の説明で終わらせず、県から市へ移った仕事のどれに自分が関わりたいのかを一つ挙げます
災害の経験と現在地平成30年7月豪雨で死者30人(うち災害関連死5人)、建物被害3,243件、橋梁流失15橋。JR呉線は約5か月全線運休。災害復旧事業は令和6年3月に完了被害の話で止めず、復旧が終わった市がこれから何に備えるべきかという先の話まで運びます
県内での位置づけ令和7年国勢調査の速報値で、広島市・福山市・東広島市に次ぐ県内4番目の人口規模(191,653人)県都に隣接する4番目の都市という立ち位置から、広島市との役割の違いに触れると独自性が出ます
災害への備え県が令和7年10月に示した地震被害想定は県内最大震度6強、津波の高さ最大4メートル。土砂災害警戒区域等の指定は県内47,842箇所(令和6年11月28日現在)県全体の規模に触れたうえで、海と山が接する呉市で何が起きうるかまで具体化します

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

呉市は職員像を文章で示していませんので、ここでは公表された配点と基準の設計から評価の軸を読み取ります。集団討論125点、個別面接125点が2回、そのすべてに基準が置かれているという組み立てです。

いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
結論まで運ぶ議論の力集団討論で、意見を出すだけでなくグループの答えをまとめる側に回れたか役割を決めつけず、時間配分の提案や論点の整理など、結論に近づける動きを一つ用意しておく
同じ芯で答え続ける一貫性2回の個別面接で、問われ方が変わっても説明が食い違わないか軸にする経験を1つ決め、そこから志望動機・強み・入庁後にしたいことへ枝が伸びる形に整理しておく
呉市で働く理由の具体性中核市であることや災害の経験を、自分の関心と結んで語れるか市の材料を1つ選び、なぜそこに関心を持ったのかを自分の生活や体験までさかのぼって話せるようにする

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

呉市は個別面接が2回ありますから、1回目で話した内容が2回目でさらに掘られることも想定できます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新の試験案内を読み、自分が受ける日程と試験区分を確定させる。呉市は9月実施のほかに6月実施やSCOA枠もあり、区分によって科目も段階も異なる
  2. 得点配分と基準の有無を書き出す。どの科目に基準があるかを把握しておくと、力の配分を間違えずに済む
  3. 高校生活を中心に経験を棚卸しする。学業・部活動・行事・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. 自治体研究のインプットをする。中核市への移行で市が引き受けた分野のうち、志望に近いものを一つ選び、そこにかかる事実を2〜3個は数字ごと言えるようにする。そのうえで固有質問の対応表から材料を拾い、一続きの話に編む
  6. 声に出して練習する。集団討論を想定して、限られた時間で結論に近づける発言を組み立てる練習も加える

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、他の受験生との差を作る部分です。時間が足りないときは、ステップ3で経験を洗い出し、それを市の仕事にどう結び付けるかを考えるほうを先に済ませてください。人物試験に375点が置かれた試験で、自分の話が薄いままでは配点の大きい場を取りこぼします。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、呉市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

呉市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

呉市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和8年度(9月実施)の一般行政(Ⅱ種)は、公表された得点配分で見るかぎり、人物試験375点に対して筆記系200点という構成でした。しかも集団討論と2回の個別面接には、いずれも基準が置かれています。

筆記の点数だけで押し切れる試験ではありません。人口19万7,092人、高齢化率36.8%、中核市として県から約430法令項目の事務を引き受けた市。

ここで自分が何をしたいのかを一つ決めて、3回ある人物試験のどこで聞かれても同じ芯から答えられる状態まで持っていきましょう。なお、呉市は9月実施のほかにも6月実施やSCOA枠の試験を行っており、日程と区分によって科目も配点も変わりますので、準備を始める前に必ず最新の試験案内でご自身の区分をご確認ください。