本記事では、尾道市職員採用候補者試験の面接対策で必要な、尾道市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
尾道市役所の面接試験では、「なぜ尾道市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。尾道市の試験は第一次試験の段階から面接が始まり、最終試験では集団討議と個別面接の両方が行われます。
市の実情を語る準備は、筆記の対策と同時に進める必要があります。
本記事で扱う試験の内容は、尾道市試験委員会が公表した令和8年度前期の職員採用候補者試験案内にもとづき、事務職を中心に整理したものです。掲載内容を参考に、自分の強みや関心と尾道市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
尾道市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは尾道市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 海と山にはさまれた斜面市街地に、寺社・坂道・路地が重なる「箱庭的都市」。「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」として日本遺産に認定されている。
- 広島県の南東部に位置し、県内では福山市・三原市・府中市・世羅町と隣り合う。南は瀬戸内海を挟んで愛媛県の今治市・上島町と境を接する。
- 市域の面積は284.89km²で、広島県全体(8,478.16km²)の約3.4%にあたる。
- 人口は12万4,410人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。
- 高齢化率は37.4%で、広島県全体の30.2%を7.2ポイント上回る。75歳以上の割合も22.9%。
- 市が発信するしまなみ海道サイクリングロードは、海峡を横断できる国内初の自転車道で全長は約70km。
- 試験案内は求める職員像を「尾道創生への使命感を持ち、果敢に挑戦し実現する職員」と明示し、【人物重視】の採用候補者試験を実施すると冒頭に掲げている。
- 第一次試験の段階から全試験区分で集団面接が課される。最終試験は集団討議と個別面接の2本立て。
尾道市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「尾道市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
尾道市を含む市町ごとの経済規模は、広島県の市町民経済計算で公表されています。
ただ、面接の準備という目的からすると、細かい経済統計より先に押さえておきたいのは、人口の構成と市域の広さ、そして周囲との位置関係です。この3つが分かれば、尾道市の規模はおおよそつかめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 124,410人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口(高齢化率) | 4万6,548人(37.4%/広島県全体は30.2%) |
| 75歳以上人口(75歳以上率) | 2万8,447人(22.9%/広島県全体は18.2%) |
| 総面積 | 284.89km²(広島県の約3.4%) |
| 人口密度 | 約437人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 福山市・三原市・府中市・世羅町、愛媛県今治市・上島町 |
| 市の花・市の木 | ともにサクラ |
| 市役所の所在地 | 尾道市久保一丁目15番1号 |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口とそれぞれの割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値を用いています。広島県全体の割合も同じ調査による県の値なので、市の値とそのまま並べられます。人口密度は、上の人口を面積で割って当研究会が出した値です。広島県が公表している国勢調査や毎月の推計人口とは調査の基準が異なりますので、本表の人口と混ぜて増減を出さないようご注意ください。
数字から考えられる市政課題
尾道市の高齢化率37.4%は、広島県全体の30.2%より7.2ポイント高い水準です。75歳以上に絞ると22.9%で、県全体の18.2%を4.7ポイント上回ります(いずれも令和8年1月1日現在)。
人口12万4,410人という規模を考えると、県平均を大きく上回る高齢化のもとにある12万人都市という位置づけになります。
ここに、尾道市ならではの地形が重なります。海と山にはさまれた斜面市街地という町の成り立ちは、坂道と路地の景観を生んだ一方で、年齢を重ねた住民にとっては日々の移動そのものが負担になり得る条件でもあります。
景観の魅力と暮らしやすさが、同じ地形から生まれているという構図を押さえておくと、市政課題の説明に深さが出ます。
面接でこの構図を説明するなら、次のような言い方ができます。
尾道市の経済・産業
日本遺産の町並みという資産
尾道市は「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」として日本遺産に認定されています。海と山にはさまれた斜面市街地に、寺社と坂道と路地が織りなす町並みが残るという構成です。
町そのものが一つの資産として国に認められている市だという点は、志望動機を組み立てる出発点になります。(出典:日本遺産「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」|尾道市公式)
面接でこの話題に触れるなら、名所の紹介では止めないでください。景観をどう守り、そこに人が住み続けられる状態をどう保つかという行政の仕事に引きつけたとき、はじめて志望動機の材料になります。
しまなみ海道と交流の広がり
市が観光情報として発信しているしまなみ海道サイクリングロードは、海峡を横断できる国内初の自転車道で、全長は約70kmに及びます。自転車で海を渡るという体験を目的に訪れる人がいるという意味で、尾道市の観光は「見る」だけでなく「通る」形の交流を持っています。(出典:しまなみ海道サイクリングロード|尾道市観光情報)
県全体の数字も背景として押さえておきましょう。広島県の令和6年の外国人観光客数は422万人で前年比57.2%増、外国人宿泊客数は180万人泊で同74.5%増と大きく伸びました。
県全体の総観光客数は6,474万人(前年比7.2%増)、観光消費額は5,918億円(同18.4%増)です。海外からの来訪が急速に増えている局面で、その流れをどう地域の経済につなげるかが問われています。(出典:広島県観光客数の動向|令和6年)
広島県のものづくりという土台
広島県は造船・鉄鋼・自動車といった重工業から、電気機械・電子部品などの先端産業まで層の厚い産業群を抱えており、製造品出荷額等は中国・四国・九州地方で11年連続して1位を保っています。卸売業・小売業の中国5県におけるシェアも高い水準です。(出典:広島県の産業・企業情報|県公式)
市の産業統計を細かく覚えるより、県の産業の骨格を説明できるほうが面接では効きます。観光と産業のどちらから話を始めるにしても、県全体の経済がどこで動いているのかを一言添えられると、話の土台が安定します。
尾道市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、尾道市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
高齢化の進行と世帯の小規模化
尾道市の高齢化率37.4%(令和8年1月1日現在)は、広島県全体を7.2ポイント上回ります。県レベルでは、令和7年国勢調査の速報値で世帯数が1,244,311世帯(前回比0.1%増)、1世帯当たり人員は2.16人。
人口が減っているのに世帯数は減らないという形で、世帯の小規模化が進んでいます。高齢化と単身世帯の増加が重なると、見守りや生活支援の担い手を地域の中でどう確保するかが直接の課題になります。(出典:令和7年国勢調査 広島県の人口速報|令和7年)
斜面市街地という条件
日本遺産に認定された町並みの背景には、海と山にはさまれた斜面という地形があります。魅力の源泉と生活上の制約が同じ地形から生まれているという点が、尾道市政の難しさであり面白さでもあります。
景観を保ちながら移動や住まいの負担を減らすには、一つの部署だけでは完結しない調整が要ります。この構造は、志望動機で「まちづくりに関わりたい」と述べるときの具体的な足場になります。
交流人口をどう受け止めるか
広島県の外国人観光客数は令和6年に422万人へ達し、前年から57.2%増えました。自転車で海を渡る道が通っている尾道市は、この流れの受け皿の一つです。
ただし、来訪者が増えることは、案内・交通・宿泊・ごみといった生活面の負担が増えることでもあります。来る人の満足と住む人の暮らしを両立させるという視点で語れると、観光を志望動機にしたときの説得力が変わります。
災害への備え
広島県内の土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定は合計47,842箇所にのぼります(令和6年11月28日現在)。平成30年7月豪雨では県内で死者153名(うち災害関連死44名)を数え、住家被害は全壊1,176棟・半壊3,632棟などにのぼりました。
さらに広島県地震被害想定調査報告書(令和7年10月)は、マグニチュード9.0の南海トラフ巨大地震で県内最大震度6強、想定死者数約1万4千人(うち津波による死者約1万3千人)、全壊棟数約9万棟と見込んでいます。
津波の高さは最大4メートル、避難者は70万人を超える想定です。山が海際まで迫る市域では、土砂と津波の両方を視野に入れる必要があります。(出典:広島県地震被害想定調査報告書|令和7年10月/土砂災害警戒区域等の指定状況|令和6年11月)
職員の確保と育て方
尾道市は令和8年度前期の試験で、事務職8人程度、技術職(土木)5人程度、技術職(建築)1人程度、保健師1人程度、幼稚園教諭・保育士2人程度、障害者対象1人程度の採用を予定しています。
あわせて市は人材育成基本方針を定め、職員研修・人事管理・職場風土づくりを連動させる考え方を示しています。採る段階と育てる段階の両方を市が設計しているという点は、志望者として知っておいて損のない情報です。
尾道市の重点政策|「尾道創生」と広島県のビジョン
尾道市が職員に何を期待しているかは、試験案内の冒頭にはっきり書かれています。求める職員像は「尾道創生への使命感を持ち、果敢に挑戦し実現する職員」。
続けて、自然の景観に恵まれ古い歴史を持つ「尾道」を愛するとともに、風土や個性を活かしながら新しい時代の「尾道」を創る使命感を持つ人を求める、と説明されています。(出典:尾道市職員採用候補者試験案内(前期)|令和8年度)
この文章は2つのことを同時に求めています。ひとつは既にあるものへの愛着、もうひとつは新しいものを創る使命感です。
守る姿勢と変える姿勢の両方を1文の中に置いているところが、この市の人物像の特徴だといえます。
「人が最大の財産である」という人材育成の考え方
尾道市は人材育成基本方針を定め、「人が最大の財産である」という観点から、職員研修・人事管理・職場風土づくりといった取組を効果的に連動させ、職員が自ら学び育とうとする意欲を喚起し支援するとしています。
新規採用職員には、市独自の入庁時集合研修に加えて、県内の他自治体との合同研修への派遣も行われます。入庁後にどう育てられるのかが公表されているので、「入ってから何を身につけたいか」という質問に対しても、根拠のある答えが用意できます。
広島県が挙げる課題認識
市の方向とあわせて、県が何を課題としているかも背景として押さえておきましょう。広島県が改定作業を進めている「ひろしまビジョン」の改定案は、次の3点を主要な課題に挙げています。(出典:ひろしまビジョン改定案|令和7年)
- 想定を上回るペースで進む人口減少
県の総人口が国の推計も県独自推計も上回る速さで減っている - 自然減と社会減の同時進行
合計特殊出生率は令和6年実績で1.29。20歳から24歳までの若年層が「就職」を契機に転出超過となっている - 防災・減災対策の充実
避難生活の長期化により、高齢者などの要配慮者を中心とした災害関連死につながる課題が顕在化した
3つのどれも、高齢化率37.4%で斜面市街地を抱える尾道市に当てはまります。県の課題認識を借りながら、市の数字で具体化するという話し方ができると、面接での説明に厚みが出ます。
POINT|計画の名前を並べても評価にはつながらない
名称を覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つ決めて、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指しているか → ③今どんな取組があるか → ④市役所だからこそ担える役割は何か → ⑤自分の経験をどう生かすか」の順で調べていきましょう。
悪い例「尾道市の観光振興に携わりたいです」
改善例「自転車で海を渡る道を目当てに来る方が増えていると知りました。まずは目の前の仕事を覚えることからですけれども、その上で、来た方に楽しんでもらいながら、住んでいる方の生活も守れるような受け入れの仕組みを整える仕事に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
面接前に開いておきたい資料を挙げます。いずれも公式に公開されているものですから、志望する分野に近いところから読み進めましょう。
- 尾道市職員採用候補者試験案内(最新の回次)
求める職員像、試験区分、採用予定人員、加点措置がすべて載っています - 尾道市の総合計画
「尾道創生」という言葉が、施策の面でどう具体化されているかを確かめられます - 日本遺産と町並みの保全に関する市の説明ページ
景観をどう守っているかを、行政の取組として理解できます - 広島県のひろしまビジョンと地震被害想定の資料
県が何を課題と見ているか、どんな災害を想定しているかを一度に確認できます
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、尾道市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。尾道市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
尾道市役所の面接の概要
ここからは、尾道市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
尾道市役所の面接の流れ
尾道市の試験は第一次試験と最終試験の2段階です。注目したいのは、面接が始まる時期です。
第一次試験の段階で、全試験区分に集団面接(1グループ約5分)が課されます。筆記を突破してから人物対策を始めるという段取りが、そもそも成り立ちません。
試験案内の冒頭にも「多様な行政ニーズに対応していくために、【人物重視】の採用候補者試験を実施します。」と書かれています。
| 項目 | 内容(令和8年度前期) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第一次試験 → 最終試験の2段階。試験案内の発行主体は尾道市試験委員会で、人事委員会は設置されていません |
| 第一次試験の科目 | 基礎能力試験(SPI3。事務職・技術職(土木)・技術職(建築)等は大卒向け、保健師・幼稚園教諭・保育士等は高卒向け。文章等の意味の理解力、数的処理の力や論理的な思考力等についての択一式筆記試験・110分)、性格適性試験(全試験区分共通)、面接試験(集団面接・1グループ約5分) |
| 最終試験の科目 | 全試験区分で集団討議(指定されたテーマについての討議)と面接試験(個別面接)。試験区分E幼稚園教諭・保育士とF障害者対象〔幼稚園教諭・保育士〕には、実技試験(ピアノ弾き歌い1人約5分、絵本読み聞かせ1人約5分)が加わります |
| 加点措置 | 「総合的選考(一能に秀でた人等)」に該当する場合、実績等に応じた加点が行われます |
| 配点 | 科目ごとの得点配分は公表されていません |
| 申込・提出書類 | インターネットによる申込のみ。総合的選考を申請する場合は、別途配布される「課外活動証明書」の様式で実績を証明します |
| 合格発表 | 市ホームページに合格者の受験番号を掲載するとともに、申込サイトのマイページへ結果が通知されます(第一次試験・最終試験とも同じ方式) |
| 採用候補者名簿 | 試験区分別に作成され、有効期間は原則として名簿登載後1年間です |
集団面接が1グループ約5分という長さである点にも意味があります。一人あたりに割ける時間はごく短く、長い自己紹介を用意しても最後まで話せません。
短く言い切れる形を先に作っておくことが、第一次試験の実質的な対策になります。
上記は、尾道市試験委員会が公表した令和8年度前期の職員採用候補者試験案内にもとづく内容です。各科目の配点・満点は、この試験案内には記載されていません。試験の構成・区分・年齢要件は回次や年度によって異なりますので、受験の際は尾道市が公表する最新の試験案内でご確認ください。
試験区分と前期の採用予定人員
| 試験区分(令和8年度前期) | 受験できる年齢 | 採用予定人員 |
|---|---|---|
| A 事務職 | 22歳から26歳まで | 8人程度 |
| B 技術職(土木) | 22歳から33歳まで | 5人程度 |
| C 技術職(建築) | 22歳から33歳まで | 1人程度 |
| D 保健師 | 39歳まで | 1人程度 |
| E 幼稚園教諭・保育士 | 27歳まで | 2人程度 |
| F 障害者対象〔事務職、技術職(土木)、技術職(建築)、保健師、幼稚園教諭・保育士〕 | 22歳から39歳まで | 1人程度 |
「総合的選考」という加点のしくみ
尾道市の試験には、もう一つ押さえておきたい仕組みがあります。「総合的選考(一能に秀でた人等)」に該当すると、実績等に応じた加点措置が行われます。
対象は高校以降の実績で、次のいずれかに当たる場合です。
| 区分 | 対象となる実績等 |
|---|---|
| ① 部活動での役割 | 学校での部活動において、キャプテン、部長、マネージャー等の経験がある人 |
| ② 全国レベルの実績 | 芸術文化・スポーツ・学術等の活動で、全国大会出場・入賞等の優秀な実績がある人。市技に制定している「囲碁」での全日本大学囲碁選手権出場、全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会3回戦進出、全国高等学校野球選手権大会出場などが例示されています |
| ③ 語学力・資格 | TOEFL iBT 70点以上取得者、中国語検定(HSK)3級以上取得者等の高度な語学力・会話力を有する人、または建築主事・建築士一級・二級の資格を有する人等 |
| ④ 社会貢献活動 | 青年海外協力隊、消防団活動などの社会貢献活動の実績がある人 |
| ⑤ その他 | 上記と同等の実績等がある人 |
①を見てください。全国大会の実績がなくても、部活動でキャプテンやマネージャーを務めた経験が対象に含まれています。
役割を引き受けた経験そのものを市が評価対象に置いているということです。該当しそうな人は、証明書類の準備を早めに始めておきましょう。
尾道市が求める職員像
前章で見たとおり、尾道市は求める職員像を「尾道創生への使命感を持ち、果敢に挑戦し実現する職員」と明記しています。面接での言い方に置き換えるなら、①この土地の歴史や景観に自分なりの愛着を持っていること、②現状を良くするために自分から動いた経験があること、③その動きを最後まで形にした経験があること、の3点を用意しておくと、公表された言葉に正面から応えられます。
「果敢に挑戦し実現する」という表現は、挑んだだけでなく実現したところまでを見ている言い方です。
ここから先は公表資料にない、当研究会の補いです。人口12万4,410人という人口帯の市役所は、部署ごとに担当が分かれる程度の大きさはありつつ、一人の職員の仕事が細かく切り分けられきってはいない中間の位置にあります。
政策を考える机の仕事と、地域に出て住民と話す仕事の両方に足をかける場面が出てきやすい。そういう前提で捉えておくとよさそうです。
斜面市街地の景観保全や、増えていく来訪者の受け入れのように、部署をまたいだ調整が必要なテーマを抱えている市であればなおさらです。
部署をまたぐテーマを抱えている以上、自分の担当の外にも話を通しにいける人のほうが動きやすいはずです。当研究会はそう受け止めています。
尾道市の試験は集団面接から始まり、集団討議を経て個別面接へ進む流れです。他の受験者と同じ場にいる時間が長い分、人と一緒に何かを進めた経験は語る機会が多くなります。
集団面接では短く、集団討議では他の人の意見の上に重ねて、個別面接では深く。同じ経験を3つの形で出せるように準備しておくと、どの場面でも足元が揺れません。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。尾道市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 試験会場までは、どうやって来ましたか? | 1グループ約5分の集団面接でも、最初の一言を落ち着いて返せるか |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 民間ではなく市役所を選んだ理由が、自分の経験と地続きになっているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 短所を認めたうえで、その付き合い方まで語れるか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | 困難の大きさではなく、その場面で何を考えてどう動いたか |
| ⑤ 学業・経歴 | 学生時代に打ち込んだことを教えてください | 短い持ち時間の中で、要点から先に出せるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 市の仕事の幅への理解と、希望と異なる配属になったときの構え |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 集団討議のテーマにもなり得る社会の動きを、普段から追っているか |
この7つは、どの受験者も一度は準備してくる領域です。1グループ約5分の集団面接では、ここでの差はほとんど見えません。
差が見えるのは、次の「尾道市ならではの事情を踏まえた質問」のほうです。
合否を分けるのは「尾道市役所ならでは」の質問
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。尾道市の場合、同じ材料が最終試験の集団討議でも使えます。
テーマが市政に関わる内容だったとき、具体的な事実を1つ差し出せる人は、議論の中で位置を取りやすくなります。使いどころのある事実を5つに絞り、答え方まで含めて表にしました。
| 質問テーマ | 知っておきたい尾道市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と高齢化の現在地 | 人口12万4,410人、高齢化率37.4%(広島県全体は30.2%)、75歳以上率22.9%(令和8年1月1日現在) | 数字を挙げたあと、県より7ポイント先行しているという相対の話まで進めると、現状認識の精度が伝わります |
| 日本遺産の町並み | 「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」として日本遺産に認定。海と山にはさまれた斜面市街地に寺社・坂道・路地が広がる | 景観の紹介で終わらせず、その地形が高齢の住民の暮らしにどう効いているかまで一続きで話します |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 市は求める職員像に「尾道創生への使命感」を掲げ、人材育成基本方針では「人が最大の財産である」という観点を示している | 制度の比較ではなく、この土地で働き続けたい理由を、自分が人や地域と関わってきた経験に結び付けます |
| 観光と交流人口 | 市が発信するしまなみ海道サイクリングロードは海峡を横断できる国内初の自転車道で全長約70km。広島県の外国人観光客数は令和6年に422万人(前年比57.2%増) | 来訪者を増やす話と、住民の生活を守る話を必ずセットにして、両方への目配りを示します |
| 災害への備え | 広島県の地震被害想定は県内最大震度6強、津波の高さ最大4メートル、避難者70万人超。県内の土砂災害警戒区域等の指定は47,842箇所(令和6年11月28日現在) | 県全体の規模に触れたうえで、山が海際まで迫る市域で何が起きうるかまで具体化します |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
尾道市が掲げる「尾道創生への使命感を持ち、果敢に挑戦し実現する職員」という求める職員像に照らして、これまでに実際どう行動してきたかを確かめるのが面接の場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| この土地への愛着 | なぜ尾道市なのかを、他の市に置き換えられない言葉で語れるか | 町並みや海道など具体的な対象を1つ決め、そこで自分が見たこと感じたことを事実として話せるようにしておく |
| 挑戦して実現する力 | 言い出しただけでなく、最後まで形にした経験があるか | 途中でやめずに済んだ理由と、周囲をどう巻き込んだかを、時系列で説明できるように整理しておく |
| 短時間で伝える力 | 1グループ約5分の集団面接と集団討議で、要点を先に出せるか | 志望動機と自己PRを30秒版と2分版の2通り用意し、時間を計って口に出しておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
尾道市は集団面接から集団討議、個別面接へと段階を追って進みますから、前の場面で口にした内容が後で確かめられることもあります。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新の回次の試験案内を読み、自分が受ける試験区分と年齢要件を確認する。区分によって受験できる年齢の幅が大きく異なる
- 「総合的選考」の対象に自分が当たらないかを確かめる。該当しそうなら「課外活動証明書」の様式と証明書類の準備を先に進める
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 自治体研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個自分の言葉で説明できるようにしたうえで、固有質問の対応表から材料を集めて一続きの話に編む
- 声に出して練習する。集団面接の持ち時間を意識して、要点から先に言い切る形を体に入れておく
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は、あくまで上積みの工程です。時間がない場合は、ステップ2の加点の確認と、ステップ3の経験の棚卸しを先に済ませてください。加点の申請は締切を過ぎると取り返しがつきませんし、尾道市は第一次試験から面接がある試験です。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、尾道市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
尾道市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度前期の試験案内を読むかぎり、尾道市の採用試験は第一次から集団面接が入り、最終試験では集団討議と個別面接が続く構成でした。人と一緒にいる場面で見られる時間が、はじめから終わりまで長い試験だといえます。
市が掲げるのは「尾道創生への使命感を持ち、果敢に挑戦し実現する職員」という言葉です。高齢化率37.4%、日本遺産に認定された斜面の町並み、海を渡る自転車道。
この市の何に自分が向き合いたいのかを一つ決めて、集団面接の短い持ち時間でも言い切れる形と、個別面接で掘られても続く厚みの両方を用意しておきましょう。なお、試験の構成や採用予定人員は回次によって変わりますので、準備を始める前に必ず最新の試験案内でご確認ください。