本記事では、大田原市職員採用試験の面接対策で必要な、大田原市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
大田原市役所の面接試験では、「なぜ大田原市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。前期試験の受験案内には1次試験の結果を2次試験に引き継がない旨が明記されており、論文と2回の面接で何を語れるかが結果を大きく左右します。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と大田原市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
大田原市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは大田原市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 人口67,033人・面積354.36km²・人口密度189人/km²の市である。
- 那須塩原市・さくら市・矢板市・那須郡那須町・那珂川町に加え、茨城県久慈郡大子町・福島県東白川郡棚倉町とも接する。県境を二方向に持つ、県北の広がりのある市である。
- 人口密度189人/km²は、市域に対して人口が薄く分布していることを示す。市街地と農地・山あいの地域が同居する市だと理解しておきたい。
- 市名の正式表記は「大田原市」。「太田原市」と誤記しないこと、群馬県太田市や島根県大田市と混同しないことに注意したい。公式サイトのドメインは city.ohtawara.tochigi.jp。
- 市役所は〒324-8641 大田原市本町1丁目4番1号に置かれている(団体コード09210-0)。市の花はキク、市の木はイチョウ。
- 職員採用試験は前期試験と後期試験に分けて実施されており、受験案内には高等学校在学中の方は後期試験を受験するよう明記されている。
- 栃木県全体の人口は1,857,921人(令和8年6月1日現在)で、前月から948人減少している。大田原市の課題も、この減っていく母数を前提に読む必要がある。
大田原市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「大田原市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口規模、市域の広さ、位置関係など、市政の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。市の規模を測るときの比較先として、栃木県全体の数値もあわせて載せています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 67,033人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 総面積 | 354.36km² |
| 人口密度 | 189人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 那須塩原市、さくら市、矢板市、那須郡那須町、那須郡那珂川町、茨城県久慈郡大子町、福島県東白川郡棚倉町 |
| 市役所所在地 | 〒324-8641 栃木県大田原市本町1丁目4番1号 |
| 市の花・市の木 | キク・イチョウ |
| (参考)栃木県の総人口 | 1,857,921人(令和8年6月1日現在・毎月人口推計) |
| (参考)栃木県の面積 | 6,408.09km²(全国第20位・関東地方で最大) |
| (参考)県内の市町数 | 14市11町(村はなし) |
大田原市の人口・面積・隣接自治体・市の花木は、公表値をもとに整理したものです。栃木県の総人口・面積・市町数は栃木県公式サイトの統計による数値です。市の統計の最新値は、大田原市公式サイトであわせてご確認ください。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。
数字から考えられる市政課題
大田原市の数字で押さえたいのは、面積354.36平方キロメートルに対して人口密度が189人/km²という組み合わせです。
栃木県の面積6,408.09平方キロメートルは関東地方で最大で、県内は日光国立公園などの山岳部と鬼怒川・那珂川などの沿岸平野部に大別されます(参考:栃木県の人口・面積|令和6年)。
人が薄く広く住むということは、同じ量の道路や上下水道、公共施設を、より少ない人数で支えるということでもあります。
県全体の人口は令和8年6月1日現在で1,857,921人、前月から948人減りました(出典:栃木県毎月人口推計月報|令和8年6月)。
県の人口は平成17年の2,016,631人をピークに減少へ転じ、令和5年の出生数は9,958人と初めて1万人を割り込み、同年の合計特殊出生率は1.19と全国の1.20を下回りました(出典:栃木県人口未来会議資料|令和7年4月)。
人が減っていく速さと、暮らしの基盤を保てる限界の速さは同じではありません。この差にどう手を打つかが、広い市域を持つ市の中心的な仕事になります。
減り方の速さと基盤を保てる限界の差を、自分の言葉に置き換えてみましょう。たとえばこう話せます。
大田原市の経済・産業
製造業と農業が並び立つ県で
7万人弱の市の産業は、県全体の姿と重ねると位置づけが見えてきます。栃木県の県内総生産に占める製造業の割合は39.6%(令和3年度)で全国第3位、製造品出荷額等は全国12位です。
出荷額が全国1位の品目には、医療用X線装置、歯科用機械器具・同装置、硬質プラスチック発泡製品、シャッター、砕石、ふとんが並びます。
一方、農業産出額は2,718億円(令和4年度)で全国9位、いちごは昭和43年から半世紀以上にわたり生産量日本一です。
1人当たり県民所得3,307千円(令和3年度)は全国5位でした(出典:栃木県の財政状況(IR資料)|令和6年)。
つまり栃木県は、工場の集積と農地の広がりが同時に県の稼ぐ力になっている県です。広い市域に農地を抱え、県北の交通軸の上にある大田原市は、そのどちらの側面からも語れます。
産業を志望動機に使うなら、どちらの軸に自分の関心があるのかをはっきりさせてから話を組み立てましょう。
県北の観光と、その隣にいるということ
令和6年の栃木県の観光客入込数は8,997.3万人(前年比107.3%)、宿泊数は延べ830.4万人(前年比105.8%)で、外国人宿泊数は延べ27.9万人と過去最高を更新しました。市町別では宇都宮市1,573.6万人(県全体の17.5%)が最多で、日光市1,019.2万人、那須塩原市771.2万人、佐野市740.2万人と続きます(出典:栃木県の観光客入込数・宿泊数推計調査結果|令和6年)。
大田原市が接する那須塩原市は、県内でも有数の観光地を抱えています。多くの人が県北を目指して動いているということです。
その流れの中で、隣接する市が何を差し出せるのか。宿泊は隣で、日中の時間は大田原で、という組み合わせも考えられます。
観光や地域振興を語るなら、市の中の資源を数え上げるより、県北という広がりの中での役割分担という視点のほうが、実務に近い話になります。
県外との近さをどう見るか
栃木県はJR東北新幹線で東京まで約50分、仙台まで約70分という位置にあり、東北自動車道と北関東自動車道に加え圏央道の利用で国内各地や空港へつながります。
大田原市はさらに、茨城県久慈郡大子町と福島県東白川郡棚倉町にも接しています。買い物や通院、通勤といった暮らしの動きは県の境目で止まりません。
行政の制度が県単位で組み立てられている部分があることを踏まえると、住民の生活圏と行政の枠組みのずれをどう埋めるかは、県境の市に固有の実務上の論点になります。
大田原市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、大田原市を含む栃木県内の市町が向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の4つを押さえておきましょう。
進学・就職の時期に出ていく世代
栃木県の社会動態は平成17年以降、転出超過が続いています(出典:栃木県人口未来会議資料|令和7年4月)。
中でも20歳代前半の女性の転出超過が顕著で、東京都・埼玉県・神奈川県への流出が多いと県は分析しており、地方創生の10年の取組でも東京圏への一極集中の流れを変えるには至らなかったとしています(出典:新とちぎ未来創造プラン|2026〜2030年度)。
県北の市では、進学や就職の時期に一度離れる人が多くなりがちです。戻ってくる選択肢を用意できるか、離れたままでも関わり続けてもらえるかが、市の側の課題になります。
支える世代が細っていく
栃木県の年齢構成は、2020年の実績で15歳から64歳が約1,137千人(約58.8%)、65歳から74歳が約292千人(約15.1%)、75歳以上が約273千人(約14.1%)、0歳から14歳が約232千人(約12.0%)でした。
総人口は2040年に約165万人、2060年に約128万人と推計されています。人口密度189人/km²の市域では、買い物や通院のための移動そのものが暮らしの大きな課題になります。
地域の見守りや自治会活動を担う人も減っていく前提で、仕組みをどう作り替えるかが問われます。
大規模地震への備え
栃木県は自然災害が比較的少ない県だとされますが、県地域防災計画は「栃木県庁直下地震」(マグニチュード7.3)を想定しています。
この地震で見込まれる被害は、建物全壊70,812棟、冬深夜のケースで死者3,926人、負傷者32,081人(うち重傷者6,746人)、1週間後の避難者339,833人、経済被害は合計58,324億円という規模です(いずれも栃木県全体の想定値で、大田原市だけの数字ではありません)。
県内で地震との関係が深い活断層は県北部の関谷断層ですが、その発生確率は今後100年間でほぼ0%とされています(出典:栃木県地震被害想定調査(概要版))。
確率が低いことと、備えが要らないことは別です。過去には東日本大震災でも県内が被害を受けています。
広い市域では、被災した地区に支援が届くまでの時間差も課題になります。
生活を支える仕組みの維持
人口減少と少子高齢化が進むと、生活関連サービスの縮小、地域コミュニティの弱体化、公共交通機関の縮小、税収減少や社会保障費の増加による財政の圧迫、行政サービス水準の低下といった影響が連鎖します。
これは県の公式資料が明記している見立てです(出典:栃木県人口未来会議資料|令和7年4月)。
大田原市の採用予定を見ても、一般事務が10名程度、技師や社会福祉士、保健師は若干名という規模です。
限られた人数で広い市域を担うことになる以上、何を優先し、何を地域や民間と分担するかという判断が、日々の仕事の中で求められます。
重点政策|新とちぎ未来創造プランと大田原市
大田原市の総合計画の内容と最新の施政方針は、市公式サイトの最新版で必ず確認しておきましょう。ここでは、県の計画が描く方向と、その中での市の位置づけを順にたどります。
人が薄く広く住む市で何を残し何を集めるかという判断は、県の先行きと切り離せません。
新とちぎ未来創造プランが掲げる課題認識
県の最上位計画は、計画期間を2026年度から2030年度とする新とちぎ未来創造プランです。
プランは、人口減少・少子高齢化の進行による労働力や地域の担い手の不足、気候変動によるリスクの高まりを課題として挙げ、「オール栃木体制」で人口減少・少子化対策に取り組む必要があるとしています。
県が単独で完結する話ではなく、市町と一緒に進めるという構えが示されているということです。
これは県の計画であって、大田原市の計画ではありません。ただ、県が挙げた課題と市の施策は無関係ではいられません。
市の総合計画を読むときは、県の課題認識に対して市がどの順番で、どんな手段で答えようとしているかという目線を持つと、理解が早くなります。
県北の広がりの中での立ち位置
栃木県は、地震や風水害など大規模な自然災害が比較的少なく、日最高気温の月平均の最高値と日最低気温の月平均の最低値の差が34.5℃と大きい県です。
この寒暖の差は全国7位にあたり、はっきりした四季をもたらしています。県北に位置し、農地と山あいを抱える大田原市では、この気候が農業の条件にも、暮らしの実感にも直結します。
県全体の特徴として語られている事柄が、市では具体的な生活の話になる。この翻訳ができると、面接での発言が借り物に聞こえません。
POINT|論文と面接は、同じ材料から組み立てる
大田原市の前期試験では、2次試験で60分・800字の論文と面接が同じ日程の中に置かれています。準備を別々にすると、時間も足りず内容もぶれます。①人口67,033人・面積354.36km²・人口密度189人/km²という規模をつかむ → ②県北で県境に接する位置を地図で確かめる → ③県全体の人口と産業の見通しの中に市を置く → ④自分の関心分野を一つ選び、論文でも面接でも使える材料に育てる、という順で進めましょう。
悪い例「大田原市の地域活性化に取り組みたいです」
改善例「大田原市は人が薄く広く住んでいて、移動の負担が大きい地域もあると思います。まずは窓口や現場で、どの地区の方が何に困っているのかを聞き取るところから始めたいです。その上で、限られた人数でも続けられる形の支え合いを地域の方と考える仕事に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
- 大田原市職員採用試験の受験案内(受験する回・職種のもの。前期と後期で構成が異なる可能性があります)
- 大田原市公式サイトの市政情報・総合計画・最新の広報紙
- 市のハザードマップ(自分の関わる地区の想定を知る材料として)
- 新とちぎ未来創造プラン、栃木県の統計資料(市政の背景を知る参考として)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、大田原市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。大田原市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
大田原市役所の面接の概要
ここからは、大田原市役所の採用試験の構成と、面接で問われやすい質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
大田原市役所の試験の構成
令和8年度の前期試験(令和9年4月1日採用)は、1次試験が基礎能力検査SCOA-Aとパーソナリティ検査SCOA-B、2次試験①が論文試験と集団面接試験、2次試験②が個別面接試験という組み立てです。
ここで最も重要なのは、受験案内に「1次試験の結果は2次試験に引き継ぎません」と明記されている点です。
1次を通過した時点で全員が横一線に戻り、論文と2回の面接で合否が決まります(出典:大田原市職員採用試験受験案内(前期試験)|令和8年度)。
| 項目 | 内容(令和8年度・前期試験・令和9年4月1日採用) |
|---|---|
| 1次試験 | 基礎能力検査SCOA-A(60分・120題)と、パーソナリティ検査SCOA-B(35分・240題)。SCOA-Bは公務員に求められる資質に関し、性格傾向の面からみる検査と説明されています |
| 受験方式 | 1次試験はテストセンター方式で、全国約300か所から会場を選択して受験します |
| 2次試験① | 論文試験60分・800字と、集団面接試験30分程度(集団面接は5人程度) |
| 2次試験② | 個別面接試験15分程度 |
| 1次と2次の関係 | 受験案内に「1次試験の結果は2次試験に引き継ぎません」と明記されています |
| 論文試験の趣旨 | 地方公務員として職務遂行に必要な表現力、論理性および判断力等についての記述式試験 |
| 職種と採用予定人数 | 一般事務(A)10名程度、技師の土木(B)・建築(C)・電気(D)・機械(E)はいずれも若干名、社会福祉士(F)若干名、保健師(G)若干名 |
| 申込方法 | 市ホームページのリンク先にある採用申込フォームへ必要事項と写真データを送信します。総務課人事係が内容を確認し、受験票を交付するメールを送信した時点で正式な受付となります(送信直後の自動返信メールは正式な受付ではありません) |
| 受験票 | 2次試験当日に必ず持参します。1次試験では必要ありません |
| 配点・提出書類 | 配点および面接カード等の提出書類は受験案内に記載がなく、公表資料からは確認できません |
上記は大田原市が公表する令和8年度前期試験の受験案内にもとづくものです。後期試験(高等学校在学中の方向け)の試験構成は公表資料からは確認できません(当研究会調べ)。前期と後期で内容が異なる可能性があります。試験の構成・科目・面接形式・配点等は年度によっても異なる可能性がありますので、受験の際は必ず最新の受験案内でご自身の職種の試験情報をご確認ください。
なお、技師(土木・建築・電気・機械)は、1級土木施工管理技士や一級・二級建築士、電気主任技術者、技術士、建築設備士などの所定の資格を有する場合、1次試験の基礎能力検査が免除されます(取得見込みは対象外)。
免除された方のパーソナリティ検査もテストセンター方式で実施されます。該当しそうな方は、資格の要件を早めに確認しておきましょう。
大田原市役所が求める人物像
「求める人物像」にあたる公表文言は、大田原市の受験案内には記載がありませんでした。そこで、試験の設計から評価されやすい資質を考えます。
1次の成績を引き継がず、論文と集団面接、個別面接で決める。しかも集団面接は5人程度で30分、個別面接は15分程度という短さです。
限られた時間で、要点から話し始められるかどうかが問われる試験だといえます。
必要な準備に言い直せば、「短く答えて深掘りに応じる話し方」「集団の中で役割を引き受ける姿勢」「文章でも口頭でも筋が通る一貫性」の3点が、短い持ち時間の中で差になります。
短い持ち時間では、「粘り強さがあります」という一言に説明を足す余裕がありません。何を粘り、その先で周りに何が起きたのかまで含めて、最初から言い切れる形にしておきましょう。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。大田原市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 自己紹介を1分でお願いします | 時間の指定を守れるか。要点から話し始められるか |
| ② 動機・志望 | 数ある市町の中で、この市を選んだ決め手は何ですか | 他の市町に置き換えても通る話で止まっていないか |
| ③ 自己理解 | 自分の弱みが出てしまった場面を教えてください | 失敗を認めた上で、その後の行動を語れるか |
| ④ 経験・行動 | 集団の中で意見をまとめた経験はありますか | 集団面接がある試験で、実際の関わり方が想像できるか |
| ⑤ 学業・経歴 | 力を入れた学びを、短く説明してください | 限られた時間で内容を圧縮して伝えられるか |
| ⑥ 適性・将来 | 広い市域を担当することに不安はありますか | 働く現場を具体的に想像できているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 行政と地域住民の役割分担をどう考えますか | 担い手が減る前提での公共の考え方を持っているか |
ただし、この7カテゴリーは大田原市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「大田原市ならでは」の質問です。
合否を分けるのは「大田原市役所ならでは」の質問
どちらも大田原市の現状を知らなければその場では答えようがない質問です。裏を返せば、手元に材料がある人だけが、はっきりと差を示せる質問でもあります。
こうした質問に答えるための「大田原市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい大田原市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 市の規模と位置 | 人口67,033人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)、面積354.36km²、人口密度189人/km²。茨城県大子町・福島県棚倉町にも接する県境の市 | 広さと人口の薄さを結び付け、移動や施設の維持といった具体的な暮らしの負担に話を落として説明します |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 県は新とちぎ未来創造プラン(2026〜2030年度)で全体の針路を示し、市は窓口や現場で一件ずつの相談に向き合う | 県が計画で示す方向と、市が現場でさばく仕事の距離を、自分が見聞きした例を挟んで説明します |
| 市の課題 | 県の人口は平成17年の2,016,631人をピークに減少へ転じ、以降は転出超過が続く。令和5年の出生数は1万人を割った | 県北から人が出ていく時期と理由を分けて整理し、戻る道と関わり続ける道のどちらに市が力を入れるべきかを述べます |
| 県北という位置 | 隣接する那須塩原市の観光客入込数は令和6年で771.2万人と県内第3位。県北には多くの人が訪れている | 隣の市の数字を借りて終わらせず、日中の時間をどう受け止めるかという役割分担の発想で自分の考えを示します |
| 防災・危機管理 | 県北部の関谷断層は今後100年間の地震発生確率がほぼ0%とされる一方、栃木県庁直下地震の想定では1週間後の避難者が栃木県全体で339,833人にのぼる | 確率の低さを安心の根拠にせず、支援が届くまでに時間がかかる地区があるという広い市域の前提から話を始めます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、前述の「評価されやすい資質」に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 短く答えて深掘りに応じる話し方 | 結論から述べ、問い返しに具体で応えられるか | 個別面接が15分程度という短さを前提に、主要な質問への答えを30秒で言い切る形に削っておく |
| 集団の中で役割を引き受ける姿勢 | 他の受験者の発言を受けて話を進められるか | 集団面接が5人程度で30分程度であることを踏まえ、話しすぎず黙りすぎない立ち位置を決めておく |
| 文章と口頭で筋が通る一貫性 | 書いた主張と話した主張が食い違わないか | 60分800字の論文と面接が同じ日程にあることを踏まえ、志望分野の材料を書く用と話す用の両方で使えるようにしておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新の受験案内で、自分が受けるのは前期か後期かを確かめ、試験種目と申込フォームの手順、受験票の扱いを押さえる
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 自治体研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、市の人口・面積・位置関係と栃木県全体の見通しから、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
- 選んだ材料で800字の論文を一度書き、その内容をそのまま話せる形へ要約する
- 声に出して練習する。集団面接を想定して、他の人の発言のあとに続ける言い方も一度試しておく
優先順位に注意
ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、大田原市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
大田原市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
大田原市の前期試験は、1次の成績を持ち越さない仕組みです。テストセンターでの検査を通過したら、そこからは論文と集団面接、そして15分程度の個別面接で評価されます。
時間は短く、話せる分量は限られます。だからこそ、削っても残る一文を持っている人が強いのです。
人口7万人弱、面積は350平方キロメートルを超え、栃木・茨城・福島の県境に近い位置で農地と山あいを抱えるまち。ここで自分は誰の暮らしを支えたいのか。
その一文を先に決めてから、論文も面接も組み立ててください。