本記事では、甲府市職員採用試験の面接対策で必要な、甲府市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
甲府市役所の面接試験では、「なぜ甲府市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。甲府市の場合、第2次試験のなかで集団討論に加えて面接が2回課されるため、人物を見られる時間そのものが長く取られています。
話す材料をどれだけ用意できているかが、そのまま受け答えの余裕につながります。
中核市としての甲府市がどんな仕事を抱えているのかを押さえたうえで、自分の関心との接点を探しながら読み進めてください。
第1部|自治体研究編
甲府市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは甲府市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 山梨県の県庁所在地であり、平成31年4月1日に中核市へ移行して2,549項目の事務が県から移譲された。市が保健所を設置する立場になった。
- 人口は182,605人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)、市域は212.47km²、人口密度は859人/km²。
- 甲斐市・山梨市・笛吹市・北杜市・中央市など9市町と接し、北では長野県南佐久郡川上村とも境を接する。
- 市役所は甲府市丸の内一丁目18番1号。市の花はナデシコ、市の木はカシ。
- 令和6年の観光入込客数(実人数)は3,475,934人で県全体の11.0%。県内では富士吉田市・富士河口湖町に次ぐ規模である。
- リニア中央新幹線の山梨県駅(仮称)は市内の大津町に設置され、中央自動車道と直結する立地になる。
- 気象庁の甲府観測地点の日最高気温は40.7℃(2013年8月10日)が観測史上1位で、暑さの厳しい土地としても知られる。
- 定例試験(一般行政職)の受験者数は2014年の358人から2024年の166人へ減っている。市は職員確保の困難を課題に挙げている。
甲府市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「甲府市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
甲府市を数字で捉えるなら、人口18万人台という規模、中核市という位置づけ、そして県全体をやや下回る高齢化率の3点が起点になります。県の値と並べて見ておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 182,605人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 総面積 | 212.47km² |
| 人口密度 | 859人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 65歳以上の割合 | 30.0%(山梨県全体は32.1%) |
| 75歳以上の割合 | 18.2%(山梨県全体は18.6%) |
| 行政上の位置づけ | 中核市(平成31年4月1日移行) |
| 隣接自治体 | 甲斐市・山梨市・笛吹市・北杜市・中央市・中巨摩郡昭和町・南都留郡富士河口湖町・西八代郡市川三郷町・南巨摩郡身延町/長野県南佐久郡川上村 |
| 市役所所在地 | 甲府市丸の内一丁目18番1号 |
| 市の花・市の木 | ナデシコ・カシ |
| (参考)山梨県の推計人口 | 774,332人(令和8年6月1日現在。前年同月比6,652人減) |
| (参考)山梨県の総面積 | 4,465.27km²(森林が県土の約78%) |
65歳以上・75歳以上の割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。この統計における甲府市の総人口は182,605人、山梨県全体は794,684人で、割合の分母にもこれらを用いています。表に併記した県の推計人口は国勢調査を基準に算出された山梨県の公表値で、住民基本台帳とは調査の基準が異なるため、両者を直接比べることはできません。総面積・隣接自治体・市役所所在地は公表値をもとに整理した値です。
数字から考えられる市政課題
市域212.47km²は山梨県の総面積のおよそ4.8%にあたります。山梨県は総面積の約86%が山地で、平地が極めて少ない地形です。
その限られた平地である甲府盆地に人口が集まり、市の人口密度は859人/km²になっています。都市の機能が集中しているぶん、道路も上下水道も学校も、更新の時期がまとまってやってくるという事情も抱えます(参考:山梨県の人口と面積|令和2年)。
年齢構成は、令和8年1月1日現在の住民基本台帳で65歳以上が30.0%、75歳以上が18.2%。県全体(32.1%・18.6%)をわずかに下回る水準です(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)。
もっとも、市自身は将来を厳しく見ています。甲府市は2040年までに人口が約2万人減少する見込みだとしています。
18万人台の市で2万人が減るということは、税収も、通う人も、支える人も、同じ割合では残らないということです。市自身の見通しを引いてくると、答えはたとえば次のようになります。
甲府市の経済・産業
機械電子産業という県の基幹
- 山梨県の製造品出荷額等は2兆5302億20百万円である。
- 構成比の最上位は生産用機械器具製造業の7,915億54百万円(31.3%)。
- 次いで食料品製造業2,490億5百万円(9.8%)、電子部品・デバイス・電子回路製造業2,300億80百万円(9.1%)が続く。
- はん用・生産用・業務用機械、電子部品、電気機械、情報通信機械、輸送用機械からなる機械電子産業が県の基幹産業とされる。
つまり、「精密な機械と電子部品づくりが県経済の中心にある」という構造を押さえておくと、産業振興や雇用の話題に対応しやすくなります(出典:山梨県の工業(経済センサス活動調査)|令和3年)。県庁所在地である甲府市には、行政機能とともに商業・業務の機能が集まっています。
ものづくりの現場が県内各地にあり、その本社機能や商談、生活の消費が中心市に集まる、という関係で読むと市の役割が見えてきます。
果樹とワインとミネラルウォーター
山梨県はぶどうの収穫量43,600t(全国の26.0%)、ももの31,500t(29.0%)、すももの5,090t(31.0%)がいずれも全国第1位です。ミネラルウォーターの出荷額は約585億円で全国の31.3%を占めて第1位、日本ワインの製成数量は4,278kl(全国の29.9%)、ワイナリー数は89場(18.0%)にのぼります(出典:山梨県の日本一|令和6年産ほか)。
県庁所在地で働くということは、こうした産品の販路や情報が集まる場所で働くということでもあります。農業の現場が市外にあっても、その商いと発信の一部は中心市を通ります。
県庁所在地としての観光
令和6年の甲府市の観光入込客数(実人数)は3,475,934人で、県全体31,587,960人(前年比22.7%増)に対する構成比は11.0%でした。県内では富士吉田市の5,719,640人、富士河口湖町の5,155,767人に次ぐ位置です(出典:山梨県観光入込客統計調査報告書|令和6年)。
県全体では富士・東部圏域が実人数の54.8%を占め、観光の重心は富士山側にあります。甲府市の観光を語るなら、人数で富士山側と競う話ではなく、県内各地へ向かう人がどう甲府に立ち寄り、泊まり、使うかという流れの設計に踏み込むほうが実態に合います。
リニアが変える市の位置
リニア中央新幹線の山梨県駅(仮称)は甲府市大津町に設置されます。中央自動車道と直結し、新山梨環状道路や国道358号が利用しやすい立地で、リニア開業によってもたらされる世帯あたりの経済効果は山梨県が全国で最も高くなると見込まれています(出典:リニア駅前エリア整備方針|令和3年3月)。
駅ができれば人が来る、という話では終わりません。周辺の道路、駐車場、二次交通、土地利用、そこで暮らす人の生活環境まで、市の仕事として設計する対象になります。
志望分野がまちづくりや交通でなくても、この変化は市政全体の前提になります。
甲府市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を並べると、甲府市が抱える論点の輪郭が見えてきます。面接で市の課題を問われたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
人口減少と、支える側の細り方
山梨県の高齢化率は2020年の30.8%から2080年には42.5%まで上昇する見込みで、県は2003年に自然減、2001年に社会減へ転じています。労働力人口は2020年の約45万人から2050年には35万人を下回る見通しです(出典:山梨県人口ビジョン2.0|令和7年)。
甲府市はその中で、2040年までに約2万人の減少を見込んでいます。支えられる人が増え、支える人が減る局面に、県庁所在地も例外なく入っています。
中核市としての仕事量と職員の確保
中核市への移行で、民生行政・保健衛生行政・環境行政・都市計画建設行政・文教行政の各分野にわたる事務が市に移りました。保健所の設置、飲食店の営業許可や監視指導、感染症の予防、産業廃棄物処理業の許可、身体障害者手帳の交付など、いずれもそれまで県が担っていた仕事です。
一方で定例試験の受験者数は10年で半分以下に減りました。仕事の幅が広がるなかで担い手をどう確保するかは、市政運営そのものの課題です。
大規模地震への備え
令和5年の山梨県地震被害想定調査で最大の被害が想定されているのは、曽根丘陵断層帯による地震です。建物の全壊・全焼94,102棟、死者3,843人、1週間後の避難者207,242人が見込まれています。
南海トラフの巨大地震(東側ケース・M9クラス)でも県中西部で最大震度7が想定され、建物の全壊・全焼60,017棟、死者3,019人、1週間後の避難者140,329人という想定です(出典:山梨県地震被害想定調査(概要版)|令和5年)。人口が集まる盆地の中心市で、この規模の避難をどう回すか。
避難所の運営も要支援者の把握も、日々の窓口業務と地続きです。
暑さと市民の健康
甲府の観測地点では、日最高気温の観測史上1位が40.7℃(2013年8月10日)、2位が40.6℃(2013年8月11日)、3位が40.4℃(2004年7月21日)と記録されています。夏の暑さは、高齢者の熱中症、学校の授業環境、屋外で働く人の安全に直結します。
保健所を持つ市になったことで、健康を守る施策を市自身が設計できる立場になりました。気候と保健を結び付けて語れると、中核市であることの意味が具体的に伝わります。
リニア開業を見据えたまちづくり
山梨県駅(仮称)の設置は決まっており、県は駅前エリアの整備方針を示しています。市にとっては、駅ができる前にやるべきことと、開業後に効いてくることの両方を並行して進める局面です。
中心市街地の商業、宿泊、交通の結節、移住や企業立地の受け皿づくり。どれも一つの部署では完結しません。
市民や事業者、周辺の市町と組んで進める仕事だという前提を持っておきましょう。
甲府市の重点政策|中核市としての市政と人財マネジメント方針
総合計画は改定のたびに名称も体系も姿を変えるため、現行のものは甲府市の公式サイトで確かめるのが確実です。ここで整理するのは、その計画の土台に据えられている2つの枠組みのほうです。
中核市移行で市が担うことになった事務
甲府市が中核市へ移行したのは平成31年4月1日です。平成26年5月の地方自治法の一部改正で特例市が廃止され、中核市の要件が人口30万人以上から20万人以上に引き下げられたこと、そして改正法施行から5年間の経過措置が設けられたことにより、人口19万3千人(平成27年国勢調査)の同市が要件を満たしました(出典:中核市への移行について|平成31年4月1日移行)。
| 分野 | 市に移った主な事務 |
|---|---|
| 民生行政 | 社会福祉審議会の設置、身体障害者手帳の交付、保育所や特別養護老人ホームなど社会福祉施設の設置認可・指導監督、小児慢性特定疾病医療費の助成 |
| 保健衛生行政 | 感染症の予防、難病・精神保健に関する相談、飲食店などの営業許可・監視指導、食中毒対策、旅館業や公衆浴場の営業許可、狂犬病予防 |
| 環境行政 | 浄化槽設置等の届出受理、一般廃棄物・産業廃棄物処理施設の設置許可、産業廃棄物処理業の許可、大気汚染状況の常時監視・公表 |
| 都市計画・建設行政 | 屋外広告業への指導・助言及び勧告、屋外広告物の表示方法の基準等の設定、サービス付き高齢者向け住宅事業の登録 |
| 文教行政 | 市立小中学校及び特別支援学校の県費負担教職員の研修、重要文化財に関する現状変更等の許可 |
市は移行にあたり、保健所と保健センターを一体化した施設を設け、市が担ってきた保健・福祉・介護のサービスと、県が担ってきた医療機関との連携を併せて行うとしました。不妊に関する相談事業や小児慢性特定疾病医療費の助成も市が実施し、産前から子育て期までの支援を一貫して提供する体制です。
市民にとっての中核市移行の意味は、県の窓口と市の窓口を行き来しなくてよくなることにあります。
甲府市人財マネジメント方針が示す職場像
甲府市は令和7年3月に「甲府市人財マネジメント方針(Ver1.0)」を策定し、人財確保・人財育成・人財活用・職場環境づくりという4つの戦略的方向性を示しました。掲げる目標は「働きがいと働きやすさが両立した持続的に成長できる組織」の実現で、目指す職場の姿は「互いを尊重し、成長と活躍を支え合う、心理的安全性の高い職場」とされています(出典:甲府市人財マネジメント方針(Ver1.0)|令和7年3月)。
採用の話をする文書ではありませんが、市が職員に何を期待し、どんな職場をつくろうとしているかが読み取れる資料です。
POINT|移譲された事務の一覧を暗記しなくてよい
2,549項目を覚えることが自治体研究ではありません。①移譲された分野のうち関心のあるものを1つ選ぶ、②その分野で市民が困る場面を具体的に思い描く、③県ではなく市が担うと何が変わるかを言葉にする、④自分の経験のどこが役に立つかを添える。この4段で、中核市の話が自分の志望動機になります。
悪い例「中核市である甲府市で、幅広い分野の仕事に挑戦したいです」
改善例「中核市への移行で、甲府市が保健所を設置していると知りました。まずは窓口の仕事を覚えたいですが、いずれは感染症の予防や食品の衛生のように、市民の暮らしのすぐ隣にある仕事に関わっていきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
次の4点は、順番をつけて当たれば十分です。受験案内を最初に、そのうえで志望分野に近いものを1つ選ぶ、という進め方をおすすめします。
- 甲府市職員採用試験案内(受ける試験・職種の最新年度)
- 甲府市人財マネジメント方針(市が目指す職場の姿を知るため)
- 甲府市の総合計画と、その年度の予算に関する市の説明資料
- 中核市への移行に関する市の説明ページ(移譲された事務の全体像を押さえるため)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、甲府市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。甲府市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
甲府市役所の面接の概要
ここからは、甲府市の定例試験がどう進み、どの場面で何を見られるのかを、市の採用試験案内と当研究会の分析から押さえていきます。
甲府市役所の試験の構成
令和8年度の甲府市職員採用試験(令和9年4月1日採用)は、第1次試験と第2次試験の二段階です。ただし段階の数だけで判断すると読み違えます。
集団討論も、2回実施される面接試験も、すべて第2次試験の中に組み込まれています。面接が2回あるからといって第3次試験が用意されているわけではなく、人物を見る時間がまとめて第2次に置かれている、という設計です。
| 項目 | 内容(令和8年度・令和9年4月1日採用) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験・第2次試験の二段階(第2次試験は第1次試験合格者が対象。第3次試験はない) |
| 第1次試験(行政事務職・保健師) | 全職種共通の性格検査(20分間)と教養試験(90分間。一般知識と一般知能)。専門試験は実施されない |
| 第1次試験(技術系ほか) | 文化財主事・土木職・建築職・電気職・機械職は専門試験のみで、教養試験は実施されない |
| 第1次試験の実施方式 | 行政事務職(大学・短大)と保健師はテストセンター方式で、期間内に受験日と会場を選択する。文化財主事・土木職・建築職・電気職・機械職は甲府市役所本庁舎で実施 |
| 第2次試験 | 集団討論(社会性、貢献度、指導性等をみる)、面接試験(人柄、性格、態度、意欲等をみる。この第2次試験の中で2回実施)、職場適応性検査、事務適性検査 |
| 面接カード | 第1次試験合格発表後に合格者へ送付される。様式は受付期間終了後に市ホームページで公開される |
| 採用予定人員 | 行政事務職15人程度、文化財主事1人、土木職6人程度、建築職2人、電気職1人、機械職3人、保健師2人 |
| 配点(人物試験の比重) | 公表されていないため、最新の受験案内でご確認ください |
| 結果の開示 | 口頭請求により、第1次試験は不合格者、第2次試験は受験者が対象。開示内容はいずれも総合得点及び総合順位 |
| 初任給 | 行政事務職(大学卒業・新卒)で月額約243,600円(地域手当を含む) |
読み取っておきたいのは、第2次試験の道具立てです。集団討論で他の受験者との関わり方を見て、面接を2回重ねて一人ずつ掘り下げ、さらに職場適応性検査と事務適性検査をペーパーで課す。
人柄と作業の適性を別々の手段で確かめる構えになっています。もう一つ、面接カードが届くのは第1次試験の合格発表後です。
合格を知ってから書き始めると時間が足りません。志望動機と自己PRの骨格は、第1次を受け終えた時点で用意しておくのが現実的です。
上記は甲府市の令和8年度職員採用試験案内(令和9年4月1日採用の定例試験)にもとづく内容です。各試験種目の配点および人物試験の比重は公表されておらず、開示されるのも総合得点及び総合順位のみです。甲府市は定例試験のほかに早期枠・随時募集や資格職の別枠試験を並行して実施しており、枠によって構成が異なります。受験の際は、必ずご自身が受ける試験と職種の最新の案内をご確認ください。
甲府市役所が求める人物像
令和8年度の甲府市職員採用試験案内には、求める人物像にあたる項目は置かれていません。ただし市は、令和7年3月の人財マネジメント方針のなかで「甲府市職員として特に大切な姿勢」を誇り・主体性・成長・思いやりの4つとして示しています。
これは受験案内が掲げる「求める人物像」ではなく、職員全体に向けて市が示した方針です。面接で言葉を借りるときも、その前提で扱ってください。
- 誇り:市の今と未来は自分たちの仕事にかかっているという使命感のもと、中立・公正な立場で誠実に職務を遂行すること
- 主体性:自身の役割や課題を広く自覚し、他人任せにせず解決策を考え、最後まで粘り強くやり遂げること
- 成長:先入観や前例にとらわれず市民の声や時代の変化をとらえ、必要な知識やスキルを磨き続けること
- 思いやり:一人ひとりが能力を発揮し、支え合いながら、個人では達成できない仕事をチームとして成し遂げること
方針が語っているのはここまでで、面接で何を見るかは書かれていません。そこで、この市が置かれている状況のほうから考えます。
中核市への移行で県から2,549項目の事務が移り、保健所の運営まで市が担うようになりました。仕事の幅が広がった結果、市役所の中だけで完結する課題は減っています。
医療機関、事業者、周辺の市町、県。相手のある仕事をどう前に進めるかが問われる場面が多くなるはずです。
第2次に集団討論を置き、面接を2回重ねる設計は、そこを確かめたいという意思の表れとも読めます。
もう一点、第1部でふれた定例試験の受験者数の減少も、面接の場に影響します。市は職員の確保が一層難しくなる恐れがあると自ら述べています。
採用する側もまた選ばれる側だという関係のなかで、市がどんな職場をつくろうとしているかを読んだうえで志望を語れる人は、それだけで印象が違います。方針の4語を暗唱するのではなく、そのうちの1つを自分の経験で言い直すことが準備の中身になります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。甲府市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | ここまでの交通手段は何でしたか | 開始直後の受け答えににじむ落ち着き |
| ② 動機・志望 | 数ある自治体のうち、なぜ甲府市なのですか | 他と比べたうえでの選択になっているか |
| ③ 自己理解 | 集団の中では、どんな役割になることが多いですか | 集団討論とも重なる観点。自分の型を自覚しているか |
| ④ 経験・行動 | 人を巻き込んで動かした経験を教えてください | 働きかけの中身と、相手がどう動いたかの描写 |
| ⑤ 学業・経歴 | 専門として学んだことを、市の仕事にどう活かしますか | 知識の量ではなく、仕事の言葉への翻訳 |
| ⑥ 適性・将来 | 市が中核市として担っている仕事をご存じですか | 市の権限の広がりをどこまで調べてきたか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 関心を持って追いかけているニュースはありますか | 関心の対象と、そこに自分の考えを添えられるか |
とはいえ、この7つの並びは甲府市に固有のものではありません。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
差がつくのは、次の質問です。
合否を分けるのは「甲府市役所ならでは」の質問
とくに1問目は、甲府市では答えの重みが変わります。中核市への移行で県の事務が大きく市へ移り、県と市の境目が実際に動いた場所だからです。
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい甲府市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 平成31年4月1日に中核市へ移行し、2,549項目の事務が県から移譲された。保健所も市が設置している | 移譲された事務のうち関心に近いものを1つ挙げ、県ではなく市が担うことで市民に何が変わるのかを具体で語ります |
| 市が示す職員の姿勢 | 人財マネジメント方針は「誇り」「主体性」「成長」「思いやり」を職員として特に大切な姿勢に挙げている | 4つのうち1つを選び、方針の言葉をなぞらずに、自分に起きた出来事のほうで説明します |
| リニアと市の将来 | リニア中央新幹線の山梨県駅(仮称)は市内の大津町に設置され、中央自動車道と直結する立地になる | 開業への期待だけで終わらせず、駅の周辺で市が整えるべきものは何かというところまで踏み込みます |
| 観光の位置づけ | 令和6年の観光入込客数は3,475,934人で県全体の11.0%。県内では富士吉田市・富士河口湖町に次ぐ | 客足が富士山側に偏る県内で、県庁所在地としてどんな滞在をつくるかという角度に持っていきます |
| 甲府市の魅力と課題 | 65歳以上は30.0%。市は2040年までに人口が約2万人減少する見込みだとしている | 魅力は都市機能と交通の変化、課題は人口と担い手の確保、と対にして述べると褒めるだけの回答になりません |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接で確かめられているのは、市が掲げる姿勢が、あなたの過去の行動のどこかに現れているかどうかです。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 主体性 | 与えられた役割の外側まで、自分で拾いに行ったか | 方針は「他人任せにすることなく主体性を持って解決策を考え」と述べています。誰にも頼まれずに動いた場面を1つ用意しておきましょう |
| 集団の中での立ち回り | 第2次試験の集団討論で、他の受験者の意見をどう扱うか | 社会性・貢献度・指導性が観点として示されています。仕切ることより、議論を前へ進めた場面を思い出しておきましょう |
| チームで成し遂げる力 | 一人では届かない仕事を、誰とどう分けたか | 方針には「個人では達成できない仕事はチームとして成し遂げる」とあります。役割分担を自分で決めた経験を具体的に話しましょう |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。甲府市では第2次試験の中で面接を2回受けますから、同じ経験を別の面接官から角度を変えて問われると考えておきましょう。
自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを、集団討論の準備と並行して仕込んでおいてください。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新の採用試験案内で、自分の職種の第1次試験が教養試験か専門試験か、テストセンター方式か本庁舎での実施かを確かめる
- テストセンターで受ける職種は、期間内の受験日と会場を早めに押さえ、対策の時間から逆算して決める
- 学業・課外活動・アルバイトや職場から、人を巻き込んで進めた場面を1つずつ書き留める
- 集団討論に備え、初対面の相手と結論を出す場を1度は経験しておく。話す量より、議論をどう前へ運んだかを振り返る
- 第1部から甲府市の事実を2つか3つ選び、メモを見ずに30秒で説明できるか試す。面接カードは第1次合格後に届くため、志望動機の下書きもこの段階で作る
- 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ3の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、甲府市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
甲府市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
甲府市の選考は段階こそ二つですが、第2次試験に集団討論と2回の面接が並びます。他の受験者と同じ場に置かれる時間と、一対一で掘られる時間の両方があるということです。
県から2,549項目の事務を引き受け、保健所を持ち、リニアの駅を迎える市が、10年で半分以下になった受験者の中から仲間を選ぼうとしています。方針が掲げる誇りや主体性という言葉を借りるより、自分がこれまで引き受けて、途中で投げ出さずにやり切った出来事を思い出してください。
それが集団討論でも面接でも、同じ人物として受け答えができる土台になります。