本記事では、山梨県警察・警察官採用試験の面接対策で必要な、山梨県警察の特徴基礎データ県内の治安情勢重点方針面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

山梨県警察の面接試験では、「なぜ山梨県警察を志望したのか」「警察官として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を警察の仕事でどう活かしたいか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。山梨県の治安の現状と県警察の方針を知っておくことで、抽象的な回答を避け、山梨県ならではの事情を踏まえた説明がしやすくなります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と山梨県警察の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|組織研究編

山梨県警察の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは山梨県警察という組織の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 山梨県全域を管轄し、管轄人口は約77万人。本州のほぼ中央に位置し、東京都・神奈川県・埼玉県・長野県・静岡県と接する内陸県を、ひとつの警察組織で受け持つ。(出典:山梨県の推計人口|令和8年6月1日現在
  • 県土の面積は4,465.27km²で全国の総面積のおよそ100分の1にあたるが、森林が県土の約78%を占め、平地は中央部の甲府盆地などに限られる。地形と移動距離そのものが、パトロールや事件事故への初動対応の前提条件になる(出典:山梨県の人口・面積|令和2年
  • 県警察本部は甲府市丸の内に置かれ、総務室・警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部と、警察学校および各警察署で構成される。
  • 令和6年に県内を訪れた観光客は実人数で3,158万8千人(前年比22.7%増)。県内に住む人の40倍を超える人が1年のあいだに山梨県を訪れている計算で、外国人の延べ宿泊者数も255万5千人(同79.6%増)にのぼる。(出典:山梨県観光入込客統計調査|令和6年
  • 観光客の集まり方には偏りがあり、実人数の54.8%が富士山麓や富士五湖を含む富士・東部圏域に集中している。日本を代表する活火山を管内に抱えることが、この県の警察活動を他県と分ける大きな要素になっている。
  • 県内の移動はもっぱら自動車が担い、中央自動車道・中部横断自動車道・新山梨環状道路が骨格をなす。鉄道は路線数が限られ、住民の足としての役割は大きくない。甲府市大津町にはリニア中央新幹線の県内駅の設置が予定されており、人と車の動き方はこれから大きく変わる。
  • 産業面では、令和6年産のぶどう・もも・すももの収穫量がいずれも全国第1位の果樹産地であり、ミネラルウォーターの出荷額(2023年)も全国の31.3%を占めて第1位。機械電子産業も基幹産業として集積している。(出典:統計でみる山梨県の日本一

山梨県警察の基礎データ

面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「山梨県警察の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、管轄人口、県土の広さ、犯罪情勢、訪れる人の多さなど、組織の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。

項目内容
管轄区域山梨県全域
管轄人口約77万人(774,332人・令和8年6月1日現在の推計)
県土面積4,465.27km²(全国の約100分の1)。約86%が山地で、森林は県土の約78%
県警察本部の所在地甲府市丸の内一丁目
本部の組織総務室・警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部(ほかに警察学校)
刑法犯認知件数3,292件(令和7年・前年比4.3%減)
刑法犯検挙率46.0%(令和7年)
観光入込客数実人数3,158万8千人(令和6年・前年比22.7%増)

管轄人口は山梨県公表の令和8年6月1日現在の推計、県土面積と森林の割合は山梨県の人口・面積の統計、山地の割合は山梨県公式サイトの地勢の説明、刑法犯認知件数(警察が発生を把握した犯罪の件数)・検挙率は令和7年の犯罪統計、観光入込客数は山梨県観光入込客統計調査(令和6年)にもとづく数値です。警察署や交番の数、職員数などは公表値が年ごとに更新されるため、最新の県警察の組織案内でご確認ください。

数字から考えられる治安課題

山梨県警察の数字を読むときの要点は、守るべき対象が県内に住む人の数だけでは決まらないことです。管轄人口は約77万人、令和7年の刑法犯認知件数は3,292件で、前年から4.3%減りました。

一方で、令和6年に県内を訪れた観光客は実人数で3,158万8千人、外国人の延べ宿泊者数は255万5千人と、いずれも前年から大きく伸びています。山梨県警察が引き受けている警察需要は、住民の数から想像されるものよりも広いと考えたほうが、実態に近いといえます。

たとえば面接では、山梨県の治安の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。

「山梨県は人口が77万人ほどの県で、去年の刑法犯の件数も3千件台と、前の年より減っていると聞きました。ただ、観光で訪れる方は年間で3千万人を超えていて、海外から泊まりに来る方も大きく増えているそうなので、住んでいる人の数だけでは測れない守り方が必要になるのではと感じています」

山梨県の治安情勢

刑法犯認知件数の動向

山梨県内で警察が把握した刑法犯認知件数は、令和7年に3,292件で、前年から4.3%減少しました。件数だけを見れば落ち着いた方向に動いている県です。

ただし、1年の増減はその年の事情に左右されます。件数が減ったという事実を、そのまま「課題が少ない県」という説明にすり替えてしまうと、現状認識の甘さとして受け取られかねません

あわせて押さえたいのが検挙の状況です。刑法犯全体の検挙率は46.0%(令和7年)で、認知した事件の半数近くで被疑者の検挙に至っています。

面接では、検挙(起きた犯罪への対応)と抑止(犯罪を起こさせない取組)の両輪で治安を語れると、仕事理解の深さが伝わります。

罪種から見た特徴

罪種別に見ると、山梨県で目立つのは住宅や事業所に入り込んで金品を狙う侵入盗です。令和7年の認知件数は297件で、刑法犯全体のおよそ1割を占めています。

一方で、ひったくりは1件、殺人4件・強盗3件と、凶悪な事件や路上での犯罪が目立つ県ではありません。街頭の安全がおおむね保たれているなかで、生活の場に入り込む財産犯をどう減らすかという構図になります。

主な罪種認知件数(令和7年)
侵入盗297件
自動車盗24件
殺人4件
強盗3件
ひったくり1件

認知件数は令和7年の犯罪統計(確定値)にもとづく主な罪種の数値です。

組織犯罪とサイバー空間の脅威

件数の推移とは別の軸で見ておきたいのが、犯罪の担い手と手口の変化です。山梨県警察は令和8年の重点目標に、匿名・流動型犯罪グループ等による組織犯罪の根絶と、サイバー空間の脅威に対する総合対策の2つを掲げています。

SNSなどで実行役を募って犯行を繰り返す形態は、指示役が匿名の陰に隠れ、末端だけが短期間で入れ替わっていくため、実行役の検挙だけでは被害が止まりません

この分野が受験生にも正面から問われる領域であることは、論文試験の課題例からも読み取れます。山梨県警察の警察官A採用試験では、令和7年度の第1回に「SNSを利用した犯罪が全国的に発生しているが、これらの特徴に触れつつ、警察官として特に力を入れたい取組」を問うものが示されています。

採用の場でこの手口への理解が求められていることが、出題からうかがえます。

交通情勢と飲酒運転の根絶

通勤も買い物も自動車で、という前提が広く共有されているのが山梨県です。運転免許を持つことが日常生活の条件に近い県では、道路上で起きた事故がそのまま県民の暮らしの安全に跳ね返ります

令和8年の重点目標で交通死亡事故抑止総合対策が2番目に置かれているのは、この事情と無関係ではありません。

なかでも県警察が長く力を入れているのが飲酒運転への対応です。山梨県警察は飲酒運転の根絶に向けて「絶対にしない、させない、許さない」を合言葉に掲げ、運転する本人だけでなく、酒を勧める側や車を貸す側も含めた働きかけを続けています。

論文試験の課題例としても、令和8年度の第2回に飲酒運転の根絶が、令和7年度の第2回には交通事故のない社会の実現が公表されており、県警察が受験生に向き合ってほしいテーマがはっきり表れています。(出典:飲酒運転の根絶|山梨県警察

山梨県の主な治安課題

ここまでの数字を踏まえると、山梨県警察が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「山梨県の治安上の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

身近な犯罪の抑止と、地域を支える担い手の減少

令和8年の重点目標の先頭には、県民の身近で発生する犯罪を抑止する総合対策が置かれています。刑法犯の件数が減っていても、自宅の近くで空き巣が起きたという実感は、統計の数字よりも速く体感治安を悪化させます。

侵入盗が刑法犯全体のおよそ1割を占める県では、この抑止こそが日常の警察活動の中心になります。

ここに重なるのが人口減少です。山梨県人口ビジョン2.0は、県内すべての地域で人口減少が見込まれ、峡南地域と東部地域では減少の速度がとくに速いと整理しています。

同じ資料は、このまま推移すれば地域の生活関連サービスが縮小し、消防団のような地域を支える組織の担い手も大きく減ると見通しています。防犯ボランティアや自治会と連携した見守りが成り立ちにくくなる地域が出てくるということであり、警察が地域とどう組み直すかという課題につながります。

匿名・流動型犯罪グループによる組織犯罪

重点目標では、匿名・流動型犯罪グループ等による組織犯罪の根絶に向けた総合対策が独立した項目として掲げられています。指示役と実行役が直接つながらず、SNSを通じて短期間だけ人が集められる構造は、従来の暴力団対策とは異なる難しさを持ちます。

実態の解明と取締りを進めることに加えて、犯罪組織に資金が流れ込む経路を断つこと、そして募集に応じてしまう若い人を出さないための働きかけまでが、ひと続きの課題になります。志望動機でこの分野に触れるなら、検挙の話だけで終わらせないことが大切です。

サイバー空間の脅威への対応

いまの犯罪は、インターネットやSNSを入口とするものが目立つようになりました。相手の顔が見えないサイバー空間では、被害に気づいた時点で相手をたどる手がかりが乏しいことも珍しくありません。

山梨県警察はこの領域を重点目標のひとつに位置づけており、警察官A採用試験には「情報技術」の区分が設けられ、教養試験に加えて専門試験が課される仕組みになっています。情報系の知識や資格を持つ人にとっては、自分の学びと県警察の課題を素直に結び付けられる分野です。

交通死亡事故の抑止と飲酒運転の根絶

令和8年の重点目標では、交通死亡事故抑止総合対策が身近な犯罪の抑止に次ぐ2番目に置かれました。車が生活の前提になっている県では、取締りを強めるだけでは事故は減りません。

県警察が飲酒運転の合言葉で運転者本人だけを名宛人にしていないのも、酒席に居合わせる人の行動が変わらないかぎり根絶には届かないからでしょう。面接でこのテーマを扱うなら、自分や家族の運転の場面を思い浮かべながら、身近な人にどう声をかけられるかまで語れると具体性が出ます。

大規模地震と富士山という性格の異なる災害リスク

山梨県は、地震と火山という性格の異なる災害リスクを同時に抱えています。県が令和5年に公表した地震被害想定調査では、最大の被害となる曽根丘陵断層帯による地震で、死者3,843人・建物の全壊全焼94,102棟、1週間後の避難者は207,242人と想定されています。

南海トラフの巨大地震(東側ケース)でも県中西部で最大震度7が想定され、死者3,019人という数字が示されています。(出典:山梨県地震被害想定調査(概要)|令和5年

もうひとつが富士山です。富士山のハザードマップは令和3年3月に約17年ぶりの改定が行われ、令和5年3月には山梨・静岡・神奈川の3県や国などでつくる富士山火山防災対策協議会が富士山火山避難基本計画を策定しました。

火山災害は、前兆をとらえて段階的に避難を始められる可能性がある点が地震と異なります。誰を、どの経路で、どの順番で動かすのかという計画が事前にあるということは、交通規制や避難誘導を担う警察の役割もあらかじめ想定されているということです。

しかも山梨県の場合、避難の対象は住民だけではありません。年間3千万人を超える来訪者があるという前提で考える必要があります。(出典:富士山火山避難基本計画|令和5年3月

重点方針|令和8年山梨県警察活動指針及び重点目標

山梨県警察は、毎年の警察活動の方向づけとして「山梨県警察活動指針及び重点目標」を定めています。令和8年の活動指針は「県民のために、県民とともに」で、あわせて「安全・安心なやまなしをめざして」という言葉が掲げられました。

公表されているのはA4判1枚に活動指針と重点目標6項目を収めた簡潔な資料で、細かな取組内容までは公開されていません。(出典:令和8年山梨県警察活動指針及び重点目標

指針を貫く考え方

注目したいのは、活動指針が「県民のために」で終わらず、「県民とともに」と続いていることです。警察が県民を一方的に守るという構図ではなく、地域の人と一緒に安全をつくるという姿勢が言葉の並びに表れています。

防犯ボランティアや自治会との連携が欠かせない一方で、その担い手が人口減少で細っていく県の事情を重ねると、この一言の重みが見えてきます。

もうひとつの手がかりが、項目の並び順です。県公安委員会の定例会議では、令和8年の重点目標について、項目そのものは前年と同じだが、身近で起きる犯罪や事故は体感治安に直結することから身近な犯罪の抑止と交通死亡事故の抑止を6項目の先頭と2番目に置き直したと説明されています。

何を新しく加えたかではなく、何を前に出したかに方針の意図が表れた形です。面接で「どんな警察官になりたいか」を考えるときも、この順序は軸になります。

6つの重点目標

令和8年の重点目標は次の6項目です。あわせて、それぞれが指す内容を受験生向けに当研究会の言葉でかみ砕きました。

重点目標(公式の項目名)受験生向けの解説
① 県民の身近で発生する犯罪を抑止する総合対策の推進侵入盗をはじめとする生活圏の犯罪を減らす取組。パトロールや広報、地域の関係団体との連携を通じて体感治安を回復させる
② 交通死亡事故抑止総合対策の推進車への依存度が高い県で、死亡事故につながる違反や危険な場所に絞った警戒・取締りと、飲酒運転を許さない環境づくりを進める
③ 悪質・凶悪犯罪の徹底検挙県民の生命や身体に危害が及ぶ事件への初動捜査と証拠収集を徹底し、確実な検挙につなげる
④ 匿名・流動型犯罪グループ等による組織犯罪の根絶に向けた総合対策の推進SNSで実行役が集められる新しい形の組織犯罪に対し、実態解明と取締り、資金の流れの遮断、加担させない働きかけを一体で進める
⑤ サイバー空間の脅威に対する総合対策の推進ネットを入口とする犯罪の捜査力を高め、被害防止の広報啓発と、専門的な知識を持つ人材の確保・育成に取り組む
⑥ 災害・テロ等緊急事態総合対策の推進地震や富士山の火山災害、テロなどの緊急事態に備え、装備資機材の整備と訓練を通じて対処能力を高める

これら6項目の達成に向けて、勤務環境や服務規律、健康支援といった警察活動の基盤を強化することも、あわせて示されています。面接では、自分の取り組みたい仕事がこの6つのどれに位置づくのかを一言添えられるだけで、組織の方向性を踏まえた志望だと伝わります。

POINT|6つの重点目標をすべて暗記しなくてよい

6項目を一字一句そのまま覚えることが、組織研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つに絞り、山梨県ではいまどんな数字が動いているのか、県警察はどの重点目標で対処しようとしているのか、そのうえで自分はどの現場で何をしたいのか、という順で掘り下げていきましょう。

悪い例「県民に信頼される警察官になりたいです」

改善例「まずは交番の勤務から始めて、地域の方に顔と名前を覚えてもらえる警察官になりたいです。その上で、山梨県は去年の刑法犯のうち住宅などへの侵入盗がおよそ1割を占めていると聞きましたので、留守がちなお宅への声かけや、戸締まりの呼びかけといった地道な活動に力を入れていきたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の口で語れる状態に仕上げておきましょう。

  • 警察官採用試験の受験案内(試験の段階・種目・受験資格・提出書類・申込方法)
  • 山梨県警察の採用ページと採用案内の資料(仕事内容と職員の声)
  • 令和8年山梨県警察活動指針及び重点目標(活動指針と重点目標6項目)
  • 犯罪統計・交通事故統計のページ(数字は毎年更新されるため最新値を確認)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、山梨県警察専用の面接想定問答集をご用意しています。山梨県警察の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

山梨県警察の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

山梨県警察の面接の概要

ここからは、山梨県警察の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

山梨県警察の面接の流れ

山梨県の警察官採用試験には、警察官A(大学卒)と警察官B(大学卒以外)の区分があり、いずれも第1次試験・第2次試験・第3次試験の3段階で実施されます。実施の時期は春季と秋季に分かれ、春季に警察官Aの第1回、秋季に警察官Aの第2回と警察官Bが行われます。

項目内容(令和8年度・警察官A/B区分)
試験の段階第1次試験 → 第2次試験 → 第3次試験の3段階
実施の構造春季に警察官A(第1回)、秋季に警察官A(第2回)と警察官B
教養試験の出題分野社会科学、人文科学、自然科学、文章理解、判断推理、数的推理、資料解釈
専門試験警察官Aの「情報技術」区分では、教養試験に加えて専門試験が課される
論文・作文試験警察官A=論文(90分)、警察官B=作文(60分)。字数は公表されていない
人物試験の形式・配点、提出書類詳細は受験案内に集約されているため、最新の受験案内でご確認ください

ここで意識しておきたいのは、3段階という構成が持つ意味です。第1次試験を通過しても、そのあとに2つの関門が残ります。

選考が長い期間にわたるということは、受験者の人物像が一度きりの受け答えで判断されるわけではないということでもあります。用意した原稿をそのまま読み上げるような答え方ではなく、同じ話題を別の角度から尋ねられても崩れない状態にしておくことが、この構成では効いてきます。

もうひとつが受験機会の構造です。警察官Aには春季と秋季の2回があり、警察官Bは秋季に実施されます。

年内に複数の機会があることは、一度の結果で進路が閉じないという意味では心強い一方で、次があるという前提で準備が薄くなりやすいという面も持ちます。受ける回を決めたら、その回に照準を合わせて仕上げていきましょう。

上記の試験構成は、山梨県人事委員会が公表する令和8年度の警察官採用試験の案内と、当研究会が収集した論文・作文の課題例にもとづくものです。人物試験の形式や配点、提出書類などの詳細は受験案内の資料に記載されています。試験の構成・種目・受験資格等は年度や受験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。(出典:山梨県警察官採用試験の案内|令和8年度

山梨県警察が求める人材

山梨県警察は、「求める警察官像」といった定式化した人物像を公表資料のなかで明示していません。手がかりになるのは、令和8年の活動指針である「県民のために、県民とともに」という言葉です。

この一文は、警察官の仕事を「県民のために働くこと」だけで説明していません。「県民とともに」が並んでいるということは、地域の人と関係をつくり、その力を借りながら安全を組み立てられる人が求められているということです。

自己PRで示したいのは、その姿勢が実際の行動として表れた場面になります。役割を引き受けて周りに声をかけながら形にした出来事、立場の違う相手の言い分を聞いたうえで折り合いをつけた出来事などを、いつ・どこで・自分が何を言ったのかまで話せる状態にしておきましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。山梨県警察の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク試験会場までは、どうやって来ましたか?緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます
② 動機・志望民間企業ではなく、なぜ警察官なのですか?他の進路と比べたうえでの職業理解の深さと、選択の理由の一貫性
③ 自己理解あなたの強み(自己PR)を教えてください自分の強みを、警察の仕事の場面と結びつけて説明できているか
④ 経験・行動学生時代に最も力を入れたことは何ですか?実績の大きさではなく、実際にとった行動の事実と、そこから学ぶ姿勢
⑤ 学業・経歴専攻分野(学科・コース)を選んだ理由を教えてください進路の選び方に一貫性があるか。自分で決めた理由を自分の言葉で話せるか
⑥ 適性・将来体力に自信はありますか?交替制勤務や訓練に耐える体力の裏づけと、日頃の健康管理の習慣
⑦ 公共性・社会性警察官に最も必要な資質は何だと思いますか?職業観の成熟度と、県民を守る仕事への当事者意識

ただし、この7カテゴリーは山梨県警察に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。

なお、警察官の採用面接では、規律ある集団生活への適応や、危険を伴う職務への覚悟を確かめる質問がされることがあります。そうした質問が存在することをあらかじめ知っておくだけでも、当日の落ち着きが変わります。

合否を分けるのは「山梨県警察ならでは」の質問

「隣接する都県の警察本部ではなく、山梨県警察を志望したのはなぜですか?」
「山梨県の治安上の課題は何だと思いますか?」

どちらも、山梨県の現状と県警察の方針を知らなければ、その場では答えようがない質問です。逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。

こうした質問に答えるための「山梨県警察の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい山梨県警察の事実答え方のヒント
治安の現状令和7年の刑法犯認知件数は3,292件(前年比4.3%減)、検挙率は46.0%。侵入盗が297件と全体のおよそ1割を占める件数が減ったという話で終えず、住宅や事業所に入り込む窃盗が残っている点まで触れると、統計を自分で読んだ跡が残る
志望動機とやりたい仕事令和8年の活動指針は「県民のために、県民とともに」。重点目標6項目の先頭に身近な犯罪の抑止、2番目に交通死亡事故の抑止が置かれているこの並びは体感治安を重く見て順序を入れ替えた結果。やりたい仕事がどの項目に当たるかを言い添えると、山梨県警察の並び順まで読んだことが伝わる
山梨で働く規模感管轄人口は約77万人。一方で令和6年の観光入込客数は実人数3,158万8千人で、その54.8%が富士・東部圏域に集中している住民と来訪者の両方を守る仕事だと整理すると、人口の小ささを仕事の少なさと取り違えていないことが示せる
交通と飲酒運転日常の移動を自動車に頼る県。県警察は飲酒運転の根絶に「絶対にしない、させない、許さない」を掲げ、論文試験でも令和8年度第2回の課題例に飲酒運転の根絶が挙がっている取締りの話だけでなく、勧める側や車を貸す側にどう働きかけるかまで触れると、合言葉の意味を理解していることが伝わる
富士山と地震への備え令和5年の県地震被害想定では曽根丘陵断層帯の地震で死者3,843人。富士山では令和5年3月に3県などで富士山火山避難基本計画が策定された火山は段階的な避難が想定される災害。交通規制や避難誘導という警察の役割に引き付けて話すと、警備部門志望でなくても具体性が出る

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 警察官としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、組織が掲げる方向性に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
地域と組んで動く力周りの人を巻き込みながら物事を進めた経験があるか活動指針の後半が示すのは、住民との協働を前提にした仕事の進め方。自分ひとりで完結した話ではなく、誰と組んで何を動かしたかまで話せる場面を選んでおく
身近な安全に向ける関心日常の小さな危なさに気づき、手をかけた経験があるか重点目標の先頭は身近な犯罪の抑止。侵入盗が令和7年の刑法犯の約1割を占める山梨県の実情に、自分の生活実感を重ねて語れるようにしておく
長い選考を支える持続力準備や訓練を一定の期間続けた経験があるか第1次から第3次まで関門が続く試験。数か月単位で続けたことを一つ挙げ、途中でやめなかった理由を自分の言葉で用意する

評価の観点の3項目は、令和8年山梨県警察活動指針及び重点目標と、山梨県警察官採用試験の構成をもとに、当研究会が面接対策用に翻訳したものです。

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新の受験案内を読み、第1次から第3次までの種目と提出書類、申込方法を確認する。山梨県警察は春季と秋季で実施される区分が分かれるため、自分が受けられる回もあわせて調べておく
  2. 高校・大学生活の経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学校行事から、行動の事実を話せる出来事を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る。選考が3段階にわたる試験なので、同じ話題を別の角度から尋ねられても崩れないかを基準に見直す
  4. 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分で説明できる形にしておく
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む。山梨県警察の論文・作文では大規模災害や飲酒運転の根絶、SNSを使った犯罪が課題例として公表されており、書くために調べた内容はそのまま面接の材料になる
  6. 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。警察官の採用試験では体力や身体に関する検査が課されるのが一般的なので、具体的な種目や基準を受験案内で確かめたうえで、運動を日課に組み込み、体づくりと生活リズムづくりを並行して進める

優先順位に注意

ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を警察の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で組織の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、山梨県警察専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

山梨県警察の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。第2次・第3次と選考が続く試験ですので、早い段階で答えの土台を作っておきたい方にも向いています。

山梨県警察の想定問答集を見る

さいごに

山梨県警察の採用試験は、第1次から第3次まで関門が続く構成で、春季と秋季に実施の機会が分かれています。選考が長いということは、受験者の人物像が繰り返し確かめられるということでもあります。

そして山梨県は、県内に住む約77万人の暮らしと、年間で3千万人を超える来訪者の安全を、ひとつの県警察が受け持つ県です。令和8年の活動指針が「県民のために、県民とともに」と二つの言葉を並べているのは、地域の人と一緒でなければ守り切れない広さと地形を抱えた県だからでしょう。

部活動でも、アルバイトでも、家の手伝いでも構いません。あなたが誰かと一緒に取り組んできたことを、落ち着いて話せる形に整えて当日を迎えましょう。