本記事では、松江市職員採用試験の面接対策で必要な、松江市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
松江市役所の面接試験では、「なぜ松江市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。市の成り立ちと置かれた条件を知っているかどうかで、同じ経験を話しても説得力が変わります。
第2部で扱う試験の構成は、令和8年度松江市職員採用試験の前期日程で公表された内容です。区分によって配点も面接の回数も異なりますので、本記事では大学卒業程度の教養試験が課される一般事務員(22-26)を軸に置き、高校卒業程度の一般事務員(20-21)については扱いの違いを併記していきます。
第1部|自治体研究編
松江市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは松江市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 島根県の県庁所在地であり、平成30年4月1日に中核市へ移行した市。
- 中核市への移行にあたり、市は県から約2,000の事務権限の移譲を受け、保健所も市が設置することになった。
- 人口は192,512人(令和8年1月1日現在)。島根県全体の634,459人のおよそ3割にあたり、県内の市では最も多い。
- 市域は572.96km²。出雲市・雲南市・安来市と接し、県境を越えて鳥取県境港市とも隣り合う。
- 高齢化率は31.0%で、島根県全体の35.2%を下回る(いずれも令和8年1月1日現在の住民基本台帳人口による)。
- 市内には島根原子力発電所が立地する。2号機は令和6年12月に原子炉が起動し、令和7年1月10日に約12年ぶりの営業運転再開に至った。
- 松江城の観光入込客延べ数は令和5年で373,237人。県内の主要観光地の一つに数えられている。
- 職員採用試験の第1次試験は、松江会場のほかに大阪会場でも実施されている。
- 市の花は椿と牡丹、市の木は松と桜。
松江市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「松江市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
人口と年齢の構成、市域の広さ、県境をまたぐ隣接関係、そして中核市という立場を並べます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 192,512人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 59,654人(31.0%。島根県全体は35.2%) |
| 75歳以上人口 | 35,311人(18.3%。島根県全体は21.1%) |
| 総面積 | 572.96km² |
| 人口密度 | 約336人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 出雲市・雲南市・安来市・鳥取県境港市 |
| 中核市への移行 | 平成30年4月1日(保健所を含む約2,000の事務権限を県から移譲) |
| 市の花・木 | 椿と牡丹(花)・松と桜(木) |
総人口・年齢別人口・高齢化率は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の市区町村別の値によります。島根県全体の数値も同じ調査の県の値です。面積・隣接自治体・市の花木は公表値をもとに整理し、人口密度は上記の人口と面積から当研究会が算出しました。島根県が国勢調査を基礎に公表している推計人口とは基準が違いますので、本表の数値と並べて増減を出さないようご注意ください。
数字から考えられる市政課題
松江市の高齢化率31.0%は、島根県全体の35.2%を4ポイント余り下回ります。75歳以上の割合も18.3%で、県全体の21.1%より低い水準です(令和8年1月1日現在)。
県内では年齢構成が若いほうに属しますが、それでも市民のおよそ3人に1人が65歳以上である事実は動きません。
もう一つ、面接で使えるのが人口の集まり方です。県人口の3割ほどが松江市に暮らしており、市は保健所まで自前で持っています。
県全体で起きている高齢化や人口減少の影響が、松江市の窓口や現場に濃く現れる構造だといえます。数字を並べるだけで終わらせず、この構造と重ねて話すと厚みが出ます。
たとえば次のような言い方です。
松江市の経済・産業
島根県経済のなかでの位置
- 島根県内の事業所は32,637(全国比0.6%)、従業者は296,596人(全国比0.5%)。いずれも令和3年6月1日現在の値。
- 産業大分類で見ると、事業所数も従業者数も卸売業、小売業が最多(事業所8,218、従業者57,786人)。
- 製造品出荷額等は1兆3,838億円、全国では第44位。事業所数1,206、従業者数42,265人、付加価値額4,571億円(2024年調査)。
- 製造品出荷額等の業種別上位は、電子部品・デバイス・電子回路、鉄鋼、情報通信機械器具の順。
つまり、日々の暮らしを支える卸売・小売が雇用の最大の受け皿で、製造業は電子部品と鉄鋼に厚みがあるのが島根県経済の輪郭です。県人口の3割が集まる松江市は、その中で商業とサービスの需要が大きく積み上がる場所にあたります。
産業や雇用の話題では、この二層を前提に組み立てると筋が通ります。(出典:経済センサス‐活動調査の島根県結果|令和3年/経済構造実態調査(製造業事業所調査)の島根県結果|2024年)
観光と交流
令和5年の島根県の観光入込客延べ数は30,194千人で前年より4,243千人増え、観光入込客実人数は12,592千人(前年比12.9%増)でした。全県の観光消費額は約1,143億円と、前年を約195億円上回っています。
主要観光地別では出雲大社の7,114,000人が最も多く、玉造温泉494,495人、足立美術館464,873人に続いて松江城が373,237人と並びます。観光を志望動機に使うなら、名所の紹介で止めるのではなく、訪れた人の消費をどう市内の商店や宿に行き渡らせるかという視点まで踏み込みましょう。(出典:島根県観光動態調査|令和5年)
発電所の立地という条件
松江市には島根原子力発電所が立地しています。2号機は令和6年12月7日に原子炉が起動し、同月23日に発電を再開、令和7年1月10日に営業運転へ戻りました。
約12年ぶりの再稼働です。発電所の立地は、雇用や地域経済の面だけでなく、次章で扱う防災の実務にも直結します。
市職員を志望するうえでは、賛否の議論としてではなく、市が引き受けている業務の一つとして理解しておくのが実務的です。(出典:島根原子力発電所の状況|島根県)
松江市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、松江市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
人口減少と少子化
国勢調査を基礎とする島根県の推計人口は、令和7年10月1日現在で633,105人となり、前年から8,291人(対前年比1.29%減)減りました。令和2年と比べると5.67%の減少です。
年齢3区分では65歳以上が223,987人で2.8人に1人、75歳以上は133,300人で4.7人に1人という割合になっています。合計特殊出生率は令和5年で1.46、人口の社会移動は同年で2,041人の転出超過(仮の値)でした。
県は第2期島根創生計画(令和7〜11年度)で、2045年までに合計特殊出生率2.07、2040年までに社会移動の均衡という長期目標を掲げています。県内で最も人口の多い松江市が若い世代をどれだけ引き留められるかは、県全体の目標にも跳ね返ります。(参考:第2期島根創生計画|島根県)
原子力災害への備えという固有の責任
島根地域の原子力災害対策重点区域(おおむね半径30kmの範囲)の人口は457,496人(令和2年12月末現在)で、このうち発電所からおおむね5km圏にあたるPAZの人口9,487人はすべて松江市域です。5〜30km圏のUPZには、島根県の松江市・出雲市・安来市・雲南市と鳥取県の米子市・境港市を合わせて448,009人が暮らしています。
避難計画を含む「島根地域の緊急時対応」は、令和3年7月30日の協議会で確認されたのち、同年9月7日に原子力防災会議へ報告され了承されています。避難先の調整、住民への情報提供、要配慮者の移動手段の確保といった仕事が、平時から市の業務として続いています。
地震と水害への備え
島根県の地震・津波被害想定調査(平成30年3月)は、陸域5・海域5の計10地震を想定しています。陸域で被害が最大となるのはマグニチュード7.1の宍道断層の地震で全壊約3,260棟、死者は計102人という想定です。
海域では鳥取県沖合(F55)断層のケースで死者計約397人(うち津波による死者176人)が見込まれています。水害では、令和3年7月6日からの大雨で松江市に災害救助法が適用されました。
地震と大雨の双方に備えが要る土地だという前提で、防災の話題を準備しておきましょう。(出典:島根県地震・津波被害想定調査(概要版)|平成30年3月)
中核市として引き受けた事務の広がり
中核市への移行で松江市が県から受け取ったのは、福祉行政、まちづくり関連事務、保健衛生行政、文教行政、環境保全行政という5分野にわたる事務です。市は、市民の生活に身近な行政サービスについては政令指定都市と同様にそのほとんどを市で処理することになる、と説明しています。
権限が増えるということは、判断と説明の責任も市に移るということです。人口19万人台の組織でこの範囲を回すには、一人の職員が受け持つ分野の幅が自然と広くなります。(出典:松江市の中核市移行について|市公式)
交通基盤と移動の確保
島根県内の高速自動車国道等は令和7年4月1日現在、路線延長289kmのうち244kmが開通しており、開通比率は84%です。うち山陰道は路線延長197km、開通延長152kmで開通比率77%にとどまります。
県は暫定2車線区間の4車線化や未事業化区間の事業着手を国に要望している段階です。県内でも東部に位置し、鳥取県境港市と県境で接する松江市にとって、道路網の整備状況は通勤・通学や物流、そして災害時の輸送路の話にも直結します。(出典:高速道路の整備状況と要望|島根県)
松江市の重点政策|中核市移行が広げた仕事の範囲
松江市がどこへ向かおうとしているかを一つの出来事で示すなら、平成30年4月1日の中核市移行です。市は平成29年7月25日に国へ指定の申出を行い、同年11月27日に指定の政令が公布されて移行が正式に決まりました。
背景には、平成26年の地方自治法改正で特例市制度が廃止され、中核市の人口要件が30万人以上から20万人以上へ引き下げられたという制度の変化があります。旧・特例市であった松江市は、この改正を受けて中核市へと進みました。(出典:松江市の中核市移行について|市公式)
移行で何が市の仕事になったか
移譲を受けた事務は約2,000にのぼり、保健所の設置もその一つです。分野は福祉、まちづくり関連、保健衛生、文教、環境保全にわたります。
志望分野を考えるときは、自分の関心がこのうちどこに当たるのかを確かめておくと、話の位置づけがはっきりします。たとえば感染症対策や食品衛生、動物の取扱いに関する仕事は、多くの市では県が担っている領域です。
松江市ではそれが市の職員の仕事になっている、という違いが説明できると、市役所を選んだ理由に具体性が出ます。
受験案内が掲げるメッセージ
令和8年度前期日程の受験案内は、冒頭に「夢を実現できるまち 誇れるまち 松江」というメッセージを掲げています。市はここで、自分たちの考える「夢を実現できるまち」とは「新しい未来」を前向きに受け入れていくことができる社会であり文化である、と述べています。
そして、松江に暮らす人たちのことを想像し、誇りある豊かな松江の未来を創造しよう、という呼びかけで結んでいます。総合計画をはじめとする市の計画は市公式サイトで公表されていますので、関心のある分野を決めてから開くと頭に入りやすくなります。
POINT|事業名を覚えるより、県と市の境目を一つ調べる
事業名をどれだけ書き出せても、それ自体が採点されるわけではありません。松江市であれば、受験案内が掲げる「新しい未来」を前向きに受け入れていくという姿勢と、自分が取り組んでみたい仕事がどこで重なるのかを言葉にしてみてください。重なりが一点でも見つかれば、志望理由はそこから組み立てられます。
悪い例「松江市の子育て支援に関わりたいです」
改善例「松江市は保健所を持つ市だと知りました。乳幼児の健康相談から食品の衛生まで、暮らしの安全に関わる仕事を市の職員が直接担っていますので、子育て中のご家庭に近いところで支える仕事に取り組みたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
面接で使う材料は、次の資料から集まります。松江市の採用情報は日程ごとに公表されますので、受験する回の案内が出たら早い段階で手元に置いてください。
- 松江市職員採用試験の受験案内(区分ごとの試験種目・配点・提出書類が示されます)
- 松江市の中核市移行に関する市公式サイトの説明ページ
- 松江市の総合計画や分野別の計画、最新年度の当初予算に関する市の公表資料
- 島根県が公表する推計人口・観光動態調査・地震津波被害想定などの統計や調査
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、松江市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。松江市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
松江市役所の面接の概要
ここからは、令和8年度松江市職員採用試験の前期日程で公表された内容をもとに、面接の位置づけと備え方を整理していきます。前期日程で募集されたのは、一般事務員(20-21)、一般事務員(22-26)、土木技術員、建築技術員、建築技術員・電気、文化財専門職(埋蔵文化財/建造物/民俗)、化学、保健師、幼稚園教諭・保育士共通の11区分です。
以下は、断りのない限り一般事務員の2区分についての説明です。
配点に表れている試験の性格
この試験でまず確認してほしいのは配点です。一般事務員(22-26)は、合計300点のうち面接試験が計180点を占めます。
割合にして6割です。第1次試験の段階でweb面接80点、第2次試験で対面の面接100点という配分で、筆記で開いた差が最後まで効き続ける設計にはなっていません。
一般事務員(20-21)は合計200点中100点が面接で、第1次試験に面接はありません。
この数字を、準備の重みに置き換えておきましょう。第1次試験のweb面接80点は、第2次試験の対面面接100点の8割にあたります。
同じ第1次試験に並ぶ教養試験100点と比べても、15分間程度の面接に近い重さが与えられている計算です。1次のwebは顔合わせで勝負は2次の対面から、という受け止め方は、この配点とは噛み合いません。
画面越しの15分も得点の付く試験の一つだと考えて、対面と同じ密度で準備を割り当ててください。
もう一つ、この試験には順番の縛りがあります。第1次試験の面接を受けられるのは教養試験の成績によって決まる対象者だけで、その受験番号が市ホームページに掲載されます。
教養で対象に入らなければ、面接の80点は加点の機会そのものが回ってきません。かといって、対象者の発表を見てから面接の中身を組み立てるのでは遅すぎます。
志望動機も自己PRも、申込の時点でエントリーシートに書いて提出し終えているからです。筆記を仕上げてから面接へ移るという直列の計画ではなく、申込書を書く時期から面接の材料づくりを並行して走らせるのが、この試験の形に合った進め方です。
| 項目 | 内容(令和8年度前期日程) |
|---|---|
| 採用予定人数 | 一般事務員(22-26)は16人程度、一般事務員(20-21)は2人程度 |
| 第1次試験(一般事務員(22-26)) | 性格検査、教養試験(100点・マークシート・難度は大学卒業程度)、文章要約試験(20点)、面接試験(80点・個人面接(web)) |
| 第2次試験(一般事務員(22-26)) | 面接試験(100点・個人面接(対面)) |
| 配点の合計(一般事務員(22-26)) | 300点。うち面接試験が計180点で6割を占めます |
| 第1次試験(一般事務員(20-21)) | 性格検査、教養試験(80点・マークシート・難度は高校卒業程度)、文章要約試験(20点)。この区分の第1次試験に面接はありません |
| 第2次試験(一般事務員(20-21)) | 面接試験(100点・個人面接(対面))。合計200点のうち100点を占めます |
| 個人面接の実施方法 | 一般事務員(22-26)の第1次試験の面接はweb面接で15分間程度。対象者は教養試験の成績により決定され、対象者の受験番号が市ホームページに掲載されます。第2次試験の面接は松江市役所での対面で20分間程度です |
| 集団形式 | 受験案内の試験種目に集団討論・集団面接の記載はなく、人物試験は個人面接のみです |
| 文章要約試験 | 長文を簡潔な文章に要約し、理解力・把握力・表現力を問う試験。全区分に課され、配点は20点です |
| 第1次試験の会場 | 松江会場(松江市役所)と大阪会場(KITENA新大阪)の2会場 |
| 提出書類 | 申込専用サイトのエントリーシート(受験申込書)。基本情報・顔写真・資格・語学力・学歴・職歴のプロフィールに加え、志望動機(300文字以内)、自己PR(300文字程度)、経験を通じて自分自身が成長した点(300文字以内)、経験で得た成果や実績をどのように市政に生かしていけるか(300文字以内)、苦手なこと・短所について(300文字以内)、就職活動状況を入力します |
| 基準点の取扱い | 試験科目によっては一定の基準があり、基準に満たない場合は総合得点にかかわらず不合格とされます |
| 試験結果の開示 | 第1次試験は不合格者のみ、第2次試験は受験者全員に、総合得点と総合順位を各合格発表日以降マイページ内で開示します |
| 初任給(一般事務員(22-26)) | 大学新卒(22歳)は232,000円、職務経験を5年有する場合は256,900円。期末・勤勉手当は年間4.65月分(令和8年4月1日現在の基準) |
上記は、松江市の令和8年度職員採用試験の前期日程の受験案内にもとづく内容です。同じ年度でも日程や区分が異なれば試験種目・配点・採用予定人数は変わります。受験の際は、必ずご自身が受ける日程と区分の最新の受験案内でご確認ください。
松江市が求める人物像
令和8年度前期日程の受験案内には、「求める人物像」や「求める職員像」という見出しでまとめられた記載は置かれていません。代わりに冒頭に据えられているのが、「夢を実現できるまち 誇れるまち 松江」というメッセージです。
ここで市が使っているのは、暮らす人のことを想像する、そして未来を創造する、という二つの言葉でした。面接対策の言葉に翻訳すれば、市民の側から物事を考える姿勢と、前向きに新しいものを受け入れる構えの二つが評価の方向として読み取れます。
自己PRでは、この二つに当たる経験を一つずつ用意しておくと、メッセージと自分の話が自然に噛み合います。
中核市の市役所で働くということ
ここからは、採用の公表資料には書かれていない部分の話に入ります。以下は当研究会の解釈ですので、面接で市の見解として引用しないでください。
人口19万人台の組織で、保健所を含む約2,000の事務を担う。この組み合わせが意味するのは、部局を細かく分けて専門に張り付けるよりも、一人の職員が複数の分野に触れながら仕事を回す場面が出やすいということです。
県から移ってきた分野であればなおさら、前例の蓄積は市の中では浅いところから始まります。
そう考えると、重視されやすいのは、初めて向き合う仕事でも手順を自分で組み立てられること、専門用語を使わずに市民へ説明できること、そして分からないことを抱え込まずに周りへ持ち込めることでしょう。松江市の場合、原子力防災のように県や近隣市、国の機関と足並みをそろえる必要のある業務も抱えています。
避難計画ひとつ取っても、島根県と鳥取県、6つの市が同じ枠組みの中に並んでいます。市の中だけで結論が出ない仕事があるという前提は、志望の段階で持っておいてよいはずです。
エントリーシートで問われるのは、志望動機と自己PRに加えて、成長した点、成果や実績を市政にどう生かすか、そして苦手なことです。5つのうち3つまでが、これまでの自分の経験そのものを書かせる欄になっています。
設問の並びがこうである以上、書き手が用意すべき材料は、過去に実際に起きた出来事そのものです。web面接15分間程度と対面20分間程度という持ち時間で扱えるのは、せいぜい2つか3つの場面でしょう。
どの経験を主役に据えるかを申込の段階で決めておくと、2回の面接を通して話が一本につながります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。松江市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 今日はどちらの会場から参加されましたか | 松江と大阪の2会場があり、web面接も行われる試験です。話し始めの落ち着きと声の届き方 |
| ② 動機・志望 | なぜ松江市で働きたいと思ったのですか | 県庁と同じ市内に職場がある中で、市役所を選んだ理由をどこまで具体的に語れるか |
| ③ 自己理解 | 苦手なことや短所を教えてください | エントリーシートに同じ設問があります。書いた内容と口頭の説明が食い違わないか |
| ④ 経験・行動 | これまでに成果と呼べる経験を一つ挙げてください | 成果を市政にどう生かすかを書かせる試験です。経験と仕事の接続まで語れるか |
| ⑤ 学業・経歴 | 学んできたことを、専門外の人にも分かるように説明してください | 文章要約試験が全区分に課されます。要点を選んで短く伝えられるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どのような仕事に取り組みたいですか | 保健所業務まで含む市の仕事の広がりを、どこまで把握しているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近気になった出来事を一つ挙げてください | 市内には発電所も立地します。身近な話題を自分の意見として述べられるか |
ただし、この見取り図の範囲は、他の受験者もひととおり準備してきます。差がつくのは、松江市そのものを調べていなければ言葉が続かない質問のほうです。
合否を分けるのは「松江市役所ならでは」の質問
とくに1問目は、県庁所在地である松江市では現実味のある質問です。島根県庁の行政A区分が第2次試験で集団討論試験を課すのに対し、松江市の前期日程は個人面接だけで人物を見ます。
同じ市内に職場がある二つの受験先を、自分の言葉で区別できるかが問われる場面だと考えてください。こうした質問に答えるための「松江市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい松江市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と年齢構成 | 人口192,512人で島根県全体の3割ほど。65歳以上31.0%・75歳以上18.3%で、いずれも県全体の35.2%・21.1%を下回る(令和8年1月1日現在) | 「県内では若いほう」で終わらせず、県全体の高齢化が松江市の窓口にどう返ってくるかまで述べる |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 平成30年4月1日に中核市へ移行し、保健所を含む約2,000の事務権限を県から引き継いだ | 制度の説明で止めず、県から市へ移ってきた分野のどれに関わりたいのかを一つ挙げて話す |
| 松江市の魅力 | 松江城の観光入込客延べ数は令和5年で373,237人。県全体の観光消費額は約1,143億円(同年) | 名所の名前を並べるのではなく、来訪をどう市内の仕事や商いにつなげるかという角度で語る |
| 防災 | 県の被害想定で陸域の被害が最大となるのは宍道断層の地震(マグニチュード7.1)。全壊約3,260棟、死者計102人と想定されている | 想定の規模に触れたうえで、市の備えへの理解と自分にできる行動を並べて述べる |
| 原子力防災 | 島根原子力発電所が市内に立地し、2号機は令和7年1月10日に営業運転を再開。おおむね5km圏にあたるPAZの人口9,487人はすべて松江市域 | 賛否の主張ではなく、避難計画や住民への情報提供という行政の実務に焦点を当てる |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
松江市は求める人物像を文章の形では掲げていませんので、ここでは選考の設計と受験案内のメッセージに照らして観点を整理します。面接は、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。
いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの整い方ではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 要点を選んで伝える力 | 全区分に課される文章要約試験と、15分間程度のweb面接という短い持ち時間 | 自分の経験を1分弱で話せる長さに削り、結論から先に置く練習をしておく |
| 経験を市政につなぐ力 | エントリーシートの「成果や実績をどのように市政に生かしていけるか」の欄と、そこからの深掘り | 中核市として市が担う分野のどこに自分の経験が届くのか、場面まで言えるようにする |
| 相手を変えて話せる落ち着き | 一般事務員(22-26)では個人面接がwebで15分間程度、対面で20分間程度と2回置かれ、合計180点が配点される | 画面越しと対面の両方で声に出し、同じ話題を角度を変えて聞かれる前提で答えを足しておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。松江市の一般事務員(22-26)は個人面接が2回ありますので、一度話した内容が別の面接官からもう一度掘られる前提で備えておきましょう。
自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを用意しておいてください。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 受験する日程と区分の松江市職員採用試験の受験案内を読み、試験種目と配点、第1次試験の会場を確認する
- エントリーシートの入力項目を書き出し、志望動機・自己PR・成長した点・成果の生かし方・苦手なことの5つを300文字前後で下書きする
- 高校・大学時代や仕事の経験を洗い直し、学業・課外活動・アルバイトのそれぞれから話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 自治体研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編み、web面接を想定して画面越しに話す練習まで行う
優先順位に注意
他の受験生と差がつくのはステップ5〜6の自治体研究です。時間が足りないときは、ステップ2のエントリーシートの下書きと、ステップ3の経験の棚卸しを先に片づけてください。書いた内容はそのまま面接で掘られますので、この二つが固まっていれば受け答えの土台になります。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、松江市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
松江市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度の前期日程では、一般事務員(22-26)の合計300点のうち180点が面接試験に置かれました。一般事務員(20-21)でも、200点のうち100点が第2次試験の面接です。
どちらの区分でも、筆記の得点だけで押し切れる組み立てにはなっていません。県庁所在地でありながら保健所まで自前で持ち、発電所の立地市としての責任も背負う松江で、自分は何を引き受けたいのか。
web面接の15分と対面の20分で伝わる形に、いまのうちから言葉を削っておきましょう。日程や区分が変われば試験の設計も変わりますので、受験前に最新の受験案内で確かめることも忘れないでください。