本記事では、安来市職員採用試験の面接対策で必要な、安来市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

安来市役所の面接試験では、「なぜ安来市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。安来市は求める人材と採用試験で重視する点を採用案内で公表しており、しかも面接試験の前に面接カードを提出する仕組みを設けています。

本記事の第2部は、令和8年度の前期試験(令和9年4月採用予定)における一般事務(大学卒業程度)を軸に整理し、後期試験や社会人経験の区分との違いを併記しています。ご自身が申し込む試験と区分の記載を、あわせてご確認ください。

第1部|自治体研究編

安来市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは安来市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 島根県の東端に位置し、鳥取県と境を接する市。東は米子市と南部町、南は日南町と奥出雲町、西は松江市と雲南市に接している。
  • 人口は34,486人(令和8年1月1日現在)。市域の面積は420.93km²で、島根県全体(6,707km²)のおよそ6.3%にあたる。
  • 市域は東西約22キロメートル・南北約28キロメートルの広がりを持ち、中海に注ぐ飯梨川と伯太川の全流域が市の中に収まっている。人口密度は約82人/km²。
  • 高齢化率は38.5%、75歳以上は8,226人(23.9%)。いずれも島根県全体の35.2%・21.1%を上回る(令和8年1月1日現在)。
  • 「安来節」と「ヤスキハガネ」は、全国的・世界的に知られた市の看板。
  • 日本遺産「出雲國たたら風土記」の構成市町の一つで、雲南市・奥出雲町とともに平成28年4月25日に認定を受けた。
  • 島根原子力発電所を対象とする原子力災害対策重点区域の関係6市に含まれる。
  • 消防士を市の職員採用試験で募集しており、市が消防本部と消防署・分署を所管している。
  • 市の花はさくら、市の木は竹。

安来市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値を大量に暗記する必要はありませんが、「安来市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

表の後半には島根県全体の値を添えています。安来市は県の平均より高齢化が進んでいる市ですので、県の数字を借りると説明が実態から離れます。

項目内容
総人口34,486人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口13,286人(総人口の38.5%)
75歳以上人口8,226人(総人口の23.9%)
総面積420.93km²(島根県全体のおよそ6.3%)
人口密度約82人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
市域の広がり東西約22キロメートル・南北約28キロメートル。飯梨川と伯太川の全流域を含む
隣接自治体松江市、雲南市、仁多郡奥出雲町、鳥取県米子市、鳥取県西伯郡南部町、鳥取県日野郡日南町
市役所所在地〒692-8686 島根県安来市安来町878番地2
市の花・市の木市の花はさくら、市の木は竹
(参考)島根県の総人口634,459人(令和8年1月1日現在)
(参考)島根県の高齢化率35.2%(同日現在。75歳以上は21.1%)

総人口・年齢別人口・高齢化率は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の市区町村別の値です。面積・市域の広がり・隣接自治体・市の花木は公表値をもとに整理し、人口密度はこの表の総人口と面積から当研究会が算出しました。島根県が別に公表している推計人口は国勢調査を基準とする別系列ですので、この表の数値と組み合わせて増減を求めることはできません。

数字から考えられる市政課題

安来市の数字で最初に目に入るのは、高齢化率38.5%が島根県全体の35.2%を3.3ポイント上回っている点です。75歳以上の割合も市23.9%に対して県は21.1%で、市のほうが高くなっています(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)。

島根県自体が全国で人口の少ない県の一つですから、その県の平均をさらに上回る位置にあるということです。

65歳以上13,286人のうち8,226人、つまりおよそ62%が75歳以上という内訳も重要です。しかも市域は420.93km²と広く、人口密度は約82人/km²にとどまります。

人が薄く広がっている土地で、支援の必要が増える年代の割合が高い。移動や見守り、除雪、医療へのアクセスといった話題が、この一つの数字の組み合わせから出てきます。

仕事に結び付けるなら、次のような話し方ができます。

「安来市は65歳以上の方が4割近くいらっしゃると知りました。しかも、そのうちの6割ほどが75歳以上だそうです。市の広さのわりに人口密度は低いと聞きましたので、離れて暮らす方のところへどう届けるかを考える仕事に関わってみたいです」

安来市の経済・産業

たたらが残した鉄のまち

安来市の産業を語るうえで欠かせないのが、鉄です。島根県東部では約1400年前から砂鉄と木炭を用いる「たたら製鉄」が盛んで、江戸時代後半から明治にかけての最盛期には、全国のおよそ8割の鉄が中国山地の麓でつくられました。

この歴史は日本遺産「出雲國たたら風土記 〜鉄づくり千年が生んだ物語〜」として平成28年4月25日に認定され、令和4年7月29日には重点支援地域に選ばれています。構成するのは安来市・雲南市・奥出雲町の3市町です(出典:日本遺産「出雲國たたら風土記」|平成28年認定)。

安来市自身も、「安来節」と「ヤスキハガネ」が全国的・世界的に高い知名度を持つと説明しています(出典:安来市の概要|市公式)。

県の製造業と鉄鋼の位置

この歴史は、現在の県の産業構造にも顔を出します。2024年の経済構造実態調査によると、島根県の製造品出荷額等は1兆3,838億円で全国第44位、事業所数1,206、従業者数42,265人です。

規模としては小さいものの、業種別の出荷額で上位に来るのは電子部品・デバイス・電子回路に次いで鉄鋼で、付加価値額でもこの2業種が上位を占めます(出典:経済構造実態調査(製造業事業所調査)島根県分|2024年)。

県全体の事業所数は32,637事業所、従業者数は296,596人で、事業所数・従業者数ともに最も多いのは卸売業・小売業です(令和3年経済センサス)。産業振興に関心があるなら、千年続いた鉄づくりの歴史と、いま県の柱になっている業種が地続きだという点を押さえておきましょう。

高速道路網と県境という位置

島根県内の高速自動車国道等は、令和7年4月1日現在で路線延長289キロメートル・開通延長244キロメートル、開通比率は84%です。このうち山陰道は路線延長197キロメートルに対し開通は152キロメートルで、開通比率77%にとどまります。

県は暫定2車線区間の安全性と信頼性を高めるため、県内優先区間5区間68キロメートルの4車線化などを要望しています。安来市は島根県の東端で鳥取県と接していますので、人も物も県境をまたいで日常的に動いているのが前提です。

県内の西側を向いた議論と、鳥取県側との行き来と、その両方が市の仕事に入ってきます。

安来市の主な行政課題

ここまでの数字を踏まえると、安来市が向き合っている課題の形が見えてきます。「市の課題」を問われる場面に備えて、次の4つを手元に置いておきましょう。

県全体で進む人口減少と創生計画

島根県の推計人口は令和7年10月1日現在で633,105人となり、前年から8,291人(1.29%)減りました。年齢の内訳では65歳以上が223,987人でおよそ2.8人に1人、75歳以上は133,300人でおよそ4.7人に1人です。

75歳以上は令和2年比で8.11%増える一方、0歳から14歳は11.14%、15歳から64歳は6.49%減っています(出典:島根県の人口の状況|令和7年10月1日現在)。

県は第2期島根創生計画(令和7年度から11年度まで)で「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根をつくる」ことを掲げ、合計特殊出生率を2045年までに2.07へ、人口の社会移動を2040年までに均衡させるという長期目標を置いています。令和5年の合計特殊出生率は1.46で、目標には遠いのが現状です。

県の平均より高齢化が進む安来市では、この流れが早く表に出ます。

県境をまたぐ原子力防災

島根原子力発電所を対象とする原子力災害対策重点区域には、島根県の松江市・出雲市・安来市・雲南市と、鳥取県の米子市・境港市の関係6市が含まれます。重点区域の人口は457,496人(令和2年12月末現在)です。

原子力災害時のオフサイトセンターは松江市の島根県原子力防災センターに置かれ、島根県・鳥取県と関係6市がそれぞれ災害対策本部を設置する体制がとられています。避難計画を含む「島根地域の緊急時対応」は、令和3年7月30日に島根地域原子力防災協議会で確認され、同年9月7日に原子力防災会議で報告・了承されました。

なお、島根原子力発電所2号機は令和6年12月7日に原子炉が起動し、令和7年1月10日に営業運転を再開しています。県境をまたぐ2県6市の枠組みの一員として計画を回していることは、安来市の仕事の性格を語るときの中心です。

内陸の活断層と大雨への備え

島根県地震・津波被害想定調査(平成30年3月)は、陸域5と海域5の計10の想定地震を設定しています。陸域で被害が最大となるのは宍道断層の地震(マグニチュード7.1)で、全壊約3,260棟、死者は計102人と想定されています。

内訳は揺れによる建物倒壊71人、急傾斜地崩壊18人、屋内収容物の転倒3人などです。海域では鳥取県沖合のF55断層のケースで死者計約397人(うち津波による死者176人)が見込まれています(出典:島根県地震・津波被害想定調査報告書(概要版)|平成30年3月)。

水害の側では、令和3年7月の大雨に際して安来市と雲南市に災害救助法が適用されました。飯梨川と伯太川の全流域が市域に含まれるということは、上流で降った雨の行き先まで市が受け持つということでもあります。

広い市域に薄く広がる暮らし

420.93km²の市域に34,486人が暮らし、人口密度は約82人/km²です。高齢化率38.5%、75歳以上23.9%という年齢構成と重ねると、支援を必要とする人が広い範囲に散らばっている状態が見えてきます。

島根県は、高齢化が進み人口が減った集落で社会的共同生活の維持が難しくなっていることを課題として挙げており、こうした小規模で高齢化した集落が中山間地域や離島に散在していると説明しています。窓口で待つのではなく、こちらから出向く形の仕事が増えていくという見通しは、志望動機を現実的なものにしてくれます。

安来市の重点政策|市が掲げる将来像

安来市は、令和8年度の受験案内の冒頭で市の将来像を「ワザを磨き、安らぎをつむぎ、シンカするまち」と掲げています。あわせて、島根県と鳥取県の県境にある安来市は豊かな自然と文化、ものづくりの伝統が息づくまちだと紹介し、市民と協働し、時代の変化を捉え、自らを高め続ける思いを持つ人の力を市の未来に活かしてほしいと受験者へ呼びかけています(出典:令和8年度安来市職員採用試験受験案内(前期試験)|令和8年度)。

この将来像は3つの言葉でできています。ワザを磨くはものづくりの伝統に、安らぎをつむぐは暮らしの側に、シンカするまちは変化への対応に対応していると読めます。

千年続いた鉄づくりの歴史を持ち、県の平均を超えて高齢化が進み、県境をまたぐ防災の当事者でもある市の条件が、そのまま3つの言葉に重なっています。

志望分野を絞り込む視点

自治体研究の目的は、計画の目次を覚えることではありません。関心のある分野を一つか二つに決めて、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指しているか → ③今どんな事業があるか → ④市役所だからこそ担える部分はどこか → ⑤自分の経験や強みをどう生かせるか」の順にたどってみてください。

安来市の場合、④の答えは広い市域での暮らしの支え方、ものづくりの伝統をどう次へ渡すか、県境をまたぐ防災のいずれかに見つかりやすいでしょう。なお、総合計画をはじめとする市の計画は数年ごとに改まりますので、名称と年次は市の公式サイトで現行のものを直接確かめてから使ってください。

POINT|計画の名称を丸暗記しなくてよい

名称を並べるより、志望分野と安来市の事情がどこで結び付くかを説明できるほうが、面接試験では効きます。

悪い例「安来節やヤスキハガネといった全国に知られた文化のある安来市で、まちの魅力を広めていきたいです」

改善例「まずは窓口の仕事から覚えたいです。その上で、安来市は65歳以上の方が4割近くいらっしゃるうえに市域が広いと知りましたので、離れて暮らす方に情報や支援が届く形をつくる仕事に関わっていきたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

次の4つは、志望分野が決まっていない段階でも順に開いておく価値があります。読んだ内容を口頭で説明できる状態にしておきましょう。

  • 令和8年度安来市職員採用試験の受験案内(前期・後期のうち自分が申し込むもの)
  • 安来市職員採用案内のパンフレット(求める人材と採用状況が示されています)
  • 安来市の総合計画と、福祉、防災、産業振興の分野別計画(いずれも現行版)
  • 最新年度の当初予算と、市政運営に関する市長の説明

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、安来市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。安来市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

安来市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

安来市役所の面接の概要

ここからは、安来市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、差がつく質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

安来市役所の面接の流れ

令和8年度(令和9年4月採用予定)の安来市職員採用試験は、前期試験と後期試験の年2回で実施され、いずれも第1次試験・第2次試験の2段階です。前期試験の一般事務(大学卒業程度)を見ると、第1次試験は教養試験・性格特性検査・事務適性検査・作文試験の4種目、第2次試験は面接試験のみで、集団討論は行われません。

この構成で押さえておきたいのが、作文試験の扱いです。作文は第1次試験の日に実施されますが、一般事務、土木技師A、建築技師A、幼稚園教諭・保育士の受験者については、作文試験の採点は第1次試験の合格者に対してのみ行われます。

書いた時点では採点されず、第1次を通過してはじめて中身が読まれるということです。そして第2次試験は面接試験だけですので、実質的には作文と面接の2つで最終の判断がなされる形になります(出典:令和8年度安来市職員採用試験受験案内(前期試験)|令和8年度)。

もう一つの特徴が面接カードです。受験案内は面接試験を、所定の面接カードを事前に提出したうえで人物と職務遂行能力等をみる試験だと説明しています。

面接官は、受験者が先に書いた文章を手元に置いて質問を組み立てるということですから、カードに何を書くかが面接の内容そのものを左右します。

項目内容(令和8年度前期試験・一般事務〈大学卒業程度〉)
実施主体安来市が実施します。島根県人事委員会が行う島根県職員採用試験とは、申込先も試験種目も別のものです
試験の実施回前期試験と後期試験の年2回。いずれも第1次試験・第2次試験の2段階です
第1次試験4種目。教養試験〔120分。時事、社会・人文、自然に関する一般知識と、文章理解、判断・数的推理、資料解釈に関する能力〕、性格特性検査〔20分。公務員に求められる資質について性格特性をみる検査〕、事務適性検査〔10分。事務職員としての適応性を正確さ、迅速さ等の作業能力の面からみる検査〕、作文試験〔90分〕
作文試験の採点一般事務、土木技師A、建築技師A、幼稚園教諭・保育士の受験者は、作文試験の採点が第1次試験の合格者に対してのみ行われます
第2次試験面接試験のみ。所定の面接カードを事前に提出し、人物並びに職務遂行能力等をみる試験です
集団形式集団討論の実施はありません
社会人経験の区分保健師、土木技師B、建築技師Bは第1次試験がSPI3で、全国のSPIテストセンターまたは自宅等でのWEBテスティングにより受験します。第2次試験は作文試験と面接試験です
採用予定人数前期試験は一般事務(大学卒業程度)3名程度、保健師1名程度、土木技師A1名程度、土木技師B1名程度、建築技師A1名程度、建築技師B1名程度、幼稚園教諭・保育士1名程度
受験資格一般事務(大学卒業程度)は平成8年4月2日から平成17年4月1日までに生まれた人。日本国籍を有しない人は受験できません
「卒業程度」の意味市は採用案内で、「○○卒業程度」とはその学歴の学力を要する試験という意味であり、年齢等の受験資格を満たしていれば学歴に関係なく受験できると説明しています
申込方法インターネット(しまね電子申請サービス)による申込み。最近3か月以内に撮影した上半身、脱帽、正面向き、無背景の顔写真が必要です
初任給大学卒232,000円、短大卒216,500円、高校卒200,300円。社会人経験の区分では、大学卒業で30歳・職務経験8年の場合257,500円から、34歳・職務経験12年の場合262,300円からという例が示されています

後期試験は試験区分の顔ぶれが変わり、一般事務、土木技師、調理師・栄養士、消防士、一般事務(埋蔵文化財)、幼稚園教諭・保育士が対象となります。消防士の第1次試験は教養試験・消防特性検査・作文試験・体力試験の4種目で、第2次試験は面接試験です。

消防特性検査は消防職員としての適応性を性格的な面からみる検査、体力試験は業務に必要な体力を有するかをみる試験で、男女の体力差を考慮するとされています。市が消防本部を所管しているため、消防士も市の採用試験で募集される形です。

上記の試験構成は、令和8年度安来市職員採用試験(令和9年4月採用予定)の受験案内に記載された内容にもとづくもので、前期試験の一般事務(大学卒業程度)を基準に整理しています。各種目の配点は公表されていません。試験の構成・種目・試験区分は年度や実施回によって変わりますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の受験案内でご確認ください(参考:安来市職員採用試験情報|令和8年度)。

安来市役所が求める人材

安来市は、職員採用案内のパンフレットをQ&A形式で構成し、求める人材をはっきり書いています。どのような人材を求めているかという問いへの答えが、「安来市をより良くしていこう」という想いを持った人、また、何事にも進んで学び、行動できる人です。

あわせて、採用試験で重視される点についても、教養試験等の結果もさることながら人物重視のポイントが高いこと、面接試験でやる気を見せてほしいことを明記しています(出典:安来市職員採用案内|令和7年度版)。

人物重視だと市の側から先に述べている点は、準備の配分を決めるうえでそのまま使えます。

同じパンフレットには、直近3年間の一般事務の採用状況も載っています。第1回の試験では、令和4年度が受験者30人・採用者6人、令和5年度が受験者15人・採用者4人、令和6年度が受験者7人・採用者3人。

第2回の試験では、令和4年度が受験者15人・採用者5人、令和5年度が受験者13人・採用者3人、令和6年度が受験者15人・採用者1人でした。年度によって受験者数も採用者数も動くということが、市自身の公表から読み取れます。

なお、以下で述べる対応関係は当研究会が読み取ったものです。パンフレットも受験案内も、そこまでは書いていません。

求める人材の一文は、二つの要素に分かれます。前半はこの市をより良くしたいという想い、後半は自分から学んで動けること。

前者は志望先を選んだ理由に、後者は行動の実績に対応します。そして試験の形を見ると、第2次試験は面接試験だけで、しかも面接カードを事前に提出します。

想いと行動の両方を、まず文章で示してから口頭でたどり直すという順序が組まれているということです。

あわせて、この市役所で働くときの実際の条件も置いておきます。人口34,486人、前期試験の一般事務の採用予定は3名程度。

420.93km²の広い市域で、市が消防本部まで所管し、県境をまたぐ原子力防災の枠組みにも入っています。市が抱える仕事の幅に対して、事務職の採用は3名程度。

この差は、一人あたりが向き合う分野の数となって表れます。しかも人口密度は約82人/km²ですから、住民のところへ行くには距離があります。

机の前で書類を整える力だけでなく、離れた場所にいる相手の事情を想像しながら段取りを決める力が要る職場だろうと、当研究会は読んでいます。求める人材の後半に「進んで学び、行動できる」が置かれているのも、こうした条件と無縁ではないはずです。

準備の重心は、面接カードに置くことになります。安来市の第2次試験は面接試験だけで、そのカードが質問の土台になります。

書ける材料が手元になければ、カードは埋まっても中身は薄くなります。カードに書けることが、そのまま面接で話せることの上限になると考えて、書く前の棚卸しに時間を使ってください。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。安来市の面接試験も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク面接カードは書きやすかったですか?事前に提出した文章から話が始まる試験。書いたことを自分の言葉で引き受けられるか
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?「安来市をより良くしていこう」という想いが、他の市でも通る話になっていないか
③ 自己理解面接カードに書いた強みを、別の場面で説明してください提出した文章と口頭の説明が、同じ人物の話として重なるか
④ 経験・行動誰にも指示されずに、自分から学んで動いた経験はありますか?求める人材の後半に置かれた「進んで学び、行動できる」に、経験の側から届いているか
⑤ 学業・経歴これまで力を入れて取り組んだことを教えてください市は学歴に関係なく受験できると案内している。学校名ではなく取り組みの中身
⑥ 適性・将来入庁後は、どんな仕事に取り組みたいですか?採用予定3名程度という規模で、希望以外の分野も引き受ける前提が持てているか
⑦ 公共性・社会性最近気になった、安来市や島根県東部に関わる出来事はありますか?関心が市の仕事の範囲に届いているか。県境の向こう側の動きにも目が向いているか

この7つは、志望先が変わっても準備の中身がほとんど動きません。面接カードの一行ずつを支えるのは、次に挙げる安来市の側の材料のほうです。

合否を分けるのは「安来市役所ならでは」の質問

「なぜ島根県庁ではなく、安来市役所を志望するのですか?」
「安来市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

この2問の答えは、面接カードに書いた内容の延長線上にあります。カードに厚みがあれば口頭でも掘り下げられますし、薄ければその場で足すことはできません。

調べた量がカードの中身になり、カードの中身が面接の深さを決めるという順番です。こうした質問に答えるための「安来市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい安来市の事実答え方のヒント
なぜ県庁ではなく市役所か市の採用試験は安来市が実施し、申込先も試験種目も県の試験とは別。市は消防本部まで所管し、前期試験の一般事務の採用予定は3名程度役割分担の説明で終えず、消防まで抱える少人数の組織で自分が担いたい持ち場を具体的に述べる
ものづくりの伝統島根県東部では約1400年前からたたら製鉄が盛んで、最盛期には全国のおよそ8割の鉄が中国山地の麓でつくられた。日本遺産「出雲國たたら風土記」の構成市町の一つ歴史の紹介で終えず、その伝統がいまの県の産業や市の看板とどうつながっているかまで話す
年齢構成の深さ高齢化率38.5%、75歳以上23.9%は、いずれも島根県全体の35.2%・21.1%を上回る(令和8年1月1日現在)。人口密度は約82人/km²高齢化という言葉で止めず、広い市域に薄く広がっているという条件と組み合わせて述べる
県境をまたぐ原子力防災島根原子力発電所の原子力災害対策重点区域に関係6市として含まれ、島根県・鳥取県と6市がそれぞれ災害対策本部を設置する体制になっている制度の名称を並べず、2県6市の枠組みの一員として計画を回している立場の重さに触れる
市が掲げる将来像令和8年度の受験案内の冒頭に、市の将来像として「ワザを磨き、安らぎをつむぎ、シンカするまち」が掲げられている言葉をそのまま繰り返すのではなく、3つのうち自分が関わりたいのはどれかを選んで理由を述べる

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

安来市が公表している求める人材と、人物重視だという市自身の説明、そして第2次試験が面接試験だけで組まれている点を重ねると、確かめようとしているものが見えてきます。ここで働いているのは、いわゆるコンピテンシー評価の考え方でしょう。

言葉の整い方ではなく、経験の中身と行動の再現性が見られます。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
この市をより良くしたいという想い求める人材の前半に置かれ、面接カードと面接試験で問われる好きだという表現に頼らず、安来市の事実を一つ挙げてそこに関わりたい理由を組み立てる
自分から学んで動いた実績求める人材の後半。面接では、その行動を起こした場面が掘られる誰かに言われて始めたのではない出来事を一つ選び、始めたきっかけから説明できるようにする
書いた文章と話す内容の一致面接カードを事前に提出したうえで面接試験が行われるカードに書く出来事を先に決め、その材料だけで受け答えが成り立つか声に出して確かめる
限られた時間で書き切る力第1次試験に90分の作文試験があり、一般事務では第1次合格者のみ採点される90分という長さに合わせて、構成を決めてから書き始める練習を数回入れておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。安来市は面接カードに書いた内容が起点になりますので、書いた一行ごとに掘られる前提で用意しておきましょう。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えがあれば、どこから聞かれても話は途切れません。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。安来市は面接カードを事前に提出しますので、書く作業を先に片づける順番で組み立てると動きやすくなります。

  1. 最新年度の受験案内で、自分が申し込む試験と区分の種目を確認する(前期と後期で試験区分の顔ぶれが変わり、社会人経験の区分は第1次試験がSPI3です)
  2. 申込に必要な顔写真を用意する。最近3か月以内に撮影した上半身、脱帽、正面向き、無背景のものという条件があります
  3. 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
  4. この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い安来市の事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 棚卸しした経験と安来市の事実を組み合わせて、面接カードに書く内容を固める
  6. カードの各行について、掘り下げられたときの返しを書き足していく。あわせて90分の作文試験の練習も日程に入れる

優先順位に注意

ステップ4の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程ですが、安来市ではステップ5の材料でもあります。時間が足りないなら、まずステップ3の棚卸しを終えてください。面接カードは事前に提出するもので、第2次試験はそのカードを土台にした面接試験だけです。語れる経験が手元にない状態では、市の知識をいくら足してもカードの中身は厚くなりません。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、安来市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

安来市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

安来市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和8年度前期試験の一般事務(大学卒業程度)では、第2次試験に残るのは面接試験だけでした。しかもその面接は、事前に提出した面接カードを土台に進みます。

市は採用案内で人物重視だと自ら述べ、求める人材として「安来市をより良くしていこう」という想いと、進んで学び行動できることを挙げています。千年の鉄づくりを受け継ぎ、県境をまたいで防災の計画を回すこのまちで、自分は何を良くしたいのか。

カードに書ける一行が増えるまで、思い出せる場面を一つずつ言葉にしていってください。