本記事では、向日市職員採用試験の面接対策で必要な、向日市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
向日市役所の面接試験では、「なぜ向日市を志望したのか」「市職員としてどんな仕事をしたいのか」「この市の未来をどう描いているのか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。市の実情や政策を理解しておくことで、抽象的な回答を避け、向日市ならではの事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。
なお、向日市の令和8年度の採用試験は「一般」枠と「就職氷河期世代」枠が並行して実施されています。以下は令和8年度の実施要項をもとに、事務職を中心に整理したものです。
自分がどの枠のどの区分で受けるのかを確かめながら読み進めてください。
第1部|自治体研究編
向日市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは向日市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 京都府の南部、京都市と長岡京市に挟まれた乙訓地域に位置する市。隣接するのはこの2市だけである。
- 市域面積は7.72平方キロメートル。全国におよそ790ある市のうち、市域が10平方キロメートルに満たないのは7市で、向日市はそのひとつ。京都府内にある15市の中では最も小さい。
- 人口は約5万6千人。面積が小さいぶん人口密度は1平方キロメートルあたり約7,241人にのぼり、限られた市域に人口が凝縮している。
- 高齢化率は27.2%で、京都府全体の29.7%を下回る。同じ統計で比べると、府内では若い部類にあたる市である。
- 市の木はサクラとモウソウチク、市の花はヒマワリとツツジ。竹が市のシンボルの一つに位置づけられている。
- 消防は、向日市・長岡京市・大山崎町でつくる乙訓消防組合が担っている。暮らしを支える仕組みの一部は、市の枠を越えて広域で運営されている。
- 一方で職員採用試験は向日市が単独で実施しており、隣の長岡京市とは申込方法も試験構成も別である。
- 令和8年度の職員採用試験では、事務職の区分に文化財が置かれている。専門分野に人を割いている市であることがうかがえる。
向日市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「向日市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口と年齢構成、市域の広さ、そして周りの自治体との関係を中心に並べました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 55,899人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 15,198人(高齢化率27.2%。京都府全体は29.7%) |
| 75歳以上人口 | 9,576人(総人口の17.1%。京都府全体は18.4%) |
| 総面積 | 7.72km²(京都府内15市の中で最小) |
| 人口密度 | 約7,241人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 京都市、長岡京市 |
| 市の木/市の花 | サクラ・モウソウチク/ヒマワリ・ツツジ |
| 消防の体制 | 乙訓消防組合(向日市・長岡京市・大山崎町で構成) |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口、および京都府全体の値は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。市と府を同じ統計で比べています。総面積は当研究会が整理した基礎データによるもので、人口密度は総人口を総面積で割って算出しました。国勢調査など基準の異なる統計の人口とは、直接比べたり差を増減として扱ったりすることはできません。
数字から考えられる市政課題
向日市の高齢化率27.2%は、京都府全体の29.7%を2.5ポイント下回ります。同じ統計での比較なので、府内では相対的に若い市だと言ってよいでしょう。
ただし、この数字だけを見て安心すると、次に来る局面を見落とします。65歳以上の15,198人のうち75歳以上が9,576人を占めており、高齢者の6割を超える方がすでに後期高齢者にあたります。
介護や医療の需要は、高齢化率の上昇より先に動き始めます。
もうひとつ、この市を語るうえで外せないのが面積です。7.72平方キロメートルという市域は、端から端まで歩いて回れる広さです。
市民にとって役所や施設が近いのは大きな利点で、行政サービスを届けるうえでも移動の負担は小さくなります。
その一方で、用地に余裕がないということは、施設の建て替えや新設が「どこに建てるか」という問いから始まることを意味します。狭さは利点と制約の両方の顔を持っています。
狭さが持つ二つの顔は、答えのなかでたとえばこう扱えます。
向日市の経済・産業
京都府全体の産業の姿
向日市のような市の経済を考えるときは、市の内側だけを見ても像を結びません。まず広域の姿から押さえます。
令和3年の経済センサス活動調査によると、京都府内の民営事業所数は11万564事業所(全国12位)、従業者数は114万8,970人(同13位)、売上金額の試算値は25兆5,663億円(同14位)でした。(出典:経済センサス活動調査の京都府結果|令和3年)
内訳を見ると、事業所数では卸売業・小売業が2万6,212事業所で全産業の23.7%を占めて最多、次いで宿泊業・飲食サービス業が12.5%、製造業が10.8%です。
従業者数でも卸売業・小売業が20.9%で最多ですが、続くのは製造業15.7%、医療・福祉15.3%となります。店の数では商業が、働く人の数では商業・製造業・医療福祉の三つが府の雇用を支えているという構図です。
京都市に隣り合うという立地
向日市が接しているのは京都市と長岡京市の2市だけで、市域は7.72平方キロメートルしかありません。この条件のもとでは、通勤・通学・買い物といった日々の営みが市の境界で完結することはまずありません。
市内で経済が一巡する構造ではなく、近隣と一体で動く生活圏の中で、向日市が何を担うかという問いのほうが実態に近いのです。
面接で産業や経済に触れるときも、「市内にどんな企業があるか」を並べる方向より、この立地条件から考えるほうが話が通ります。
住む場所として選ばれ続けるために何が要るのか、近さという条件をどう価値に変えるのか。市の規模に見合った問いの立て方をしておきましょう。
広域の観光の流れ
令和6年の京都府の観光入込客数は8,425万人(対前年比112%)でした。注目したいのは内訳で、京都市を除く府域では2,819万人となり、対前年比113%、令和元年比では135%と、京都市の外側の伸びのほうが大きくなっています。
観光消費額も府全体で2兆581億円、京都市を除く府域で1,507億円(令和元年比166%)でした。(出典:京都府観光入込客調査報告書|令和6年)
つまり、これまで京都市に集中してきた人の流れが、府南部へ広がりつつある局面にあります。
京都市に隣接する向日市にとって、この流れは機会であると同時に、生活環境や交通への影響という課題も連れてきます。観光を語るなら、この両面をセットで扱うのが誠実な整理です。
向日市の主な行政課題
向日市の課題は、ここまで見てきた面積と人口の組み合わせから、ほとんど自動的に導かれます。面接で市の課題を問われたときに取り出せるよう、4つに整理しておきます。
人口減少と、高齢化の進み方
京都府の人口は、令和7年国勢調査の速報集計で250万2,747人となり、令和2年の前回調査から5年間で2.9%減少しました。世帯数は逆に2.5%増えています。
人が減りながら世帯は増えるという、単身・小規模世帯の増加を示す動きです。(出典:令和7年国勢調査 京都府の人口・世帯数(速報集計)|令和7年)
先を見ると、内閣府の推計では京都府の高齢化率は令和32(2050)年に38.5%まで上昇すると見込まれています。これは令和6年時点の29.8%からの推計で、住民基本台帳の統計とは別の系列の数字です。
向日市は現時点で府平均より若いものの、後期高齢者の割合はすでに高く、この流れの外側にいるわけではありません。(参考:高齢社会白書|令和7年版)
花折断層帯地震への備え
京都府が最大の被害を想定しているのは花折断層帯地震です。気象庁マグニチュード7.5(モーメントマグニチュード7.1・右横ずれ)で、京都市北区・上京区・左京区等の一部で最大震度7、市街地から山城地域にかけて震度6強が想定されています。
府全体の被害想定は、建物の全壊が約11万棟、半壊が約15万棟、焼失が約2.4万棟、人的被害は死者が約4.6千人、発災直後の避難者が約24万人(いずれも冬18時のケース)です。(出典:花折断層帯地震の被害想定調査報告書|令和5年度)
この想定で目を引くのは、全壊とは別に焼失が約2.4万棟計上されている点です。住宅が密集する市街地では、揺れそのものより火災の広がりと避難者の集中が問題の中心になります。
人口密度が高い向日市にとっても他人事ではありません。なお、向日市域でどの程度の揺れが想定されているかは、市が公表するハザードマップで必ず確認しておきましょう。
広域で担う仕組みと、市が自前で担う仕組み
向日市の行政は、単独でこなす部分と広域で分担する部分の組み合わせで成り立っています。消防は向日市・長岡京市・大山崎町でつくる乙訓消防組合が担当します。
一方、職員採用試験は市が単独で実施しており、隣接する長岡京市とは申込方法も試験構成も日程も異なる別個の試験です。電子申請には京都府と府内市町村が共同で使うシステムを利用していますが、これは申請の受け皿が共通というだけで、試験を共同で実施しているわけではありません。
どの仕事を市が自前で持ち、どこから先を広域に委ねるのか。この線引きの感覚は、小規模な市の行政を理解するうえで欠かせません。
面接の定番質問である「なぜ府庁ではなく市役所か」に答えるときも、この理解があるかどうかで説得力が変わります。
限られた市域での文化財の保全とまちづくり
向日市は令和8年度の職員採用試験で、一般事務職の区分のひとつに文化財を設けています。人口約5万6千人という規模の市が、事務職の募集区分を分けてまで専門分野の人材を求めているという事実は、それだけでこの分野の重みを示しています。
京都府全体を見ても、府総合計画は文化庁の京都移転を府の発展に生かす契機と位置づけています。
市域が7.72平方キロメートルしかない中で、守るべきものを守りながら住まいや施設の需要にも応えていく調整は、簡単な仕事ではありません。文化財の分野を志望するかどうかにかかわらず、この緊張関係は押さえておく価値があります。
向日市の重点政策|京都府総合計画と向日市
向日市のまちづくりを考えるときは、市が置かれた広域の枠組みから入るとつかみやすくなります。
京都府総合計画(計画期間は令和5年4月1日から令和9年3月31日まで)は、少子高齢化や人口減少、地域社会の衰退といった構造的課題が一層深刻化しているという認識を示したうえで、「それぞれの地域だけでは地域の魅力と活力の創造に取り組むことが困難になっている」と明確に述べています。(出典:京都府総合計画(概要版)|令和5年)
この一文は、消防を広域組合で担い、生活圏を近隣市と共有する向日市の実情とそのまま重なります。同計画は同時に、文化庁の京都移転や2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を、府の発展に生かす取組の契機として位置づけています。
市の施策を調べるときは、この広域の方向性を背景に置いてから、市固有の取組を見ていくと関係が整理できます。
向日市が受験者に問うていること
向日市のまちづくりの方向性を知るうえで、実はもっとも直接的な手がかりが採用試験そのものにあります。向日市は第1次試験で書類選考を行いますが、その対象は、申込時に記入する「あなたが考える向日市の魅力を生かした未来のまちづくりについて」と「今までの人生でどのような困難に直面し、どのようにして乗り越えてきたか」という2つの欄です。(出典:向日市職員採用試験実施要項|令和8年度)
この市が受験者に何を考えてほしいかは、2つの設問にそのまま表れています。1つ目は志望動機ではなく「魅力を生かした未来のまちづくり」を尋ねている点が重要です。
現状への賛辞でも批判でもなく、提案を求めているのです。2つ目は、順風だった経験ではなく困難への向き合い方を尋ねています。
市の仕事を進めるうえで何が必要だと市が考えているのかが、この組み合わせから読み取れます。
POINT|まちづくりの提案は、規模より具体性
大きな構想を打ち上げる必要はありません。「①市の何を魅力だと考えるか → ②その魅力が今どう生かされていないか → ③だから何をするか → ④それは市が担うべき仕事か → ⑤自分の経験がどこで役に立つか」の順で組み立てると、面接で掘られても崩れません。
悪い例「向日市の自然や歴史を生かして、もっと多くの人に来てもらえるまちにしたいです」
改善例「向日市は歩いて市内を回れる広さなので、そこを生かしたいと考えました。点在する場所を個別に紹介するのではなく、歩いてつなげる案内のしかたにすれば、住んでいる方にも来られた方にも同じように使ってもらえるのではと感じています」
あわせて確認したい公式資料
向日市の場合、最初に開くべきは実施要項です。試験の流れと申込時の記入欄が分かれば、そのあと何を調べればよいかが自然に決まります。
- 向日市職員採用試験の実施要項(最新年度)/市の職員採用ページ
- 向日市の総合計画(市公式サイトの最新版を確認しましょう)
- 向日市のハザードマップ・地域防災計画
- 京都府総合計画(概要版)/京都府の統計ページ
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、向日市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。向日市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
向日市役所の面接の概要
ここからは、向日市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。向日市の採用試験は市(総務部人事課)が単独で実施しており、他の自治体との共同実施ではありません。
向日市役所の面接の流れ
まず全体像です。向日市の事務職の試験は3段階で構成され、3つの段階のうち2つが個別面接です。
令和8年度の実施要項と採用ページには集団討論・集団面接の記載がなく、人物試験は第2次と第3次の個別面接の計2回です。集団形式の練習に時間を割く必要はありません。
| 項目 | 内容(令和8年度・事務職) |
|---|---|
| 実施主体 | 向日市(総務部人事課)が単独で実施 |
| 試験の段階 | 3段階(第1次試験・第2次試験・第3次試験) |
| 第1次試験 | SPI3試験(基礎能力検査、性格検査)及び書類選考 |
| 第2次試験 | 個別面接・小論文 |
| 第3次試験 | 個別面接(事務職2・6の手話通訳のみ実技試験を併実施) |
| 面接の種類 | 個別面接が2回(第2次試験・第3次試験) |
| 集団形式 | 令和8年度の実施要項・採用ページに集団討論・集団面接の記載はありません |
| 配点 | 各試験の配点および人物試験の比重は公表されていません |
| 提出書類 | 申込時に「あなたが考える向日市の魅力を生かした未来のまちづくりについて」「今までの人生でどのような困難に直面し、どのようにして乗り越えてきたか」の欄を記入。第1次試験の書類選考はこの2つの欄を審査するもの |
| 募集の枠組み | 「一般」枠と「就職氷河期世代」枠を並行して実施。事務職は一般事務職1〜4(一般/手話通訳/障がいのある人/文化財)と就職氷河期世代事務職5〜8の8区分 |
SPI3は、業務遂行に必要な基礎能力についての検査と、業務への適性についての性格検査で構成されます。性格検査は自宅等で受験し、基礎能力検査は自ら受験会場(テストセンター)を予約したうえで受験する方式です。
予約が必要である以上、日程の管理そのものが最初の課題になります。
もうひとつ、実施要項ではっきり示されている点があります。第1次試験では、申込時に入力された内容や添付された証明写真について、指示どおりに手続きを進められていない不備があった場合など、申込みの過程も考慮されるとされています。
スマートフォンなどで撮影した自撮り写真は認められません。選考の対象は申込時の記入内容だけでなく、手続きを指示どおりに進められたかどうかにも及びます。
第2次試験・第3次試験の会場はいずれも向日市役所です。各段階の合格発表や詳細の通知は、Web申込に使用した京都府・市町村共同電子申請システムを介してメールで行われます。
最終合格者は向日市職員採用候補者名簿に登録され、令和9年1月1日以降、採用希望日を考慮して必要に応じて採用される仕組みです。名簿の登録有効期限は令和9年12月31日までで、採用予定日は令和9年1月1日・2月1日・3月1日・4月1日から選んだ希望日となります。
なお、技術職・保健師・保育士も事務職と同じ3段階の構成です(保育士のみ実技試験を併実施)。
上記の試験構成は、向日市の令和8年度実施要項および職員採用ページにもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
向日市役所が求める人物像
向日市の職員採用ページと令和8年度の実施要項には、文章の形での人物像は掲載されていません。向日市は職員採用ページで「市長メッセージ 〜求める人材像〜」という動画を公開しており、そちらで直接発信する形をとっています。
受験を決めたら、まずこの動画を視聴しておきましょう。(参考:向日市職員採用情報|令和8年度)
そのうえで、試験の設計そのものからも読み取れることがあります。第1次で提出書類の2つの欄を審査し、第2次で小論文と個別面接、第3次でもう一度個別面接を行う流れは、同じ人物を、書く形式と話す形式の両方で、時間を置いて確かめる設計です。
一度きりの受け答えのうまさではなく、記述と発言が一貫しているかが見られていると考えられます。
もう少し踏み込んで考えてみます。向日市は人口約5万6千人、市域7.72平方キロメートルの市です。
消防のように広域組合へ委ねる分野がある一方、採用試験は市が自前で設計し、第2次・第3次の会場も市役所です。この規模の組織では、一人の職員が受け持つ範囲が自然と広がります。
担当が細かく分かれた組織のように「これは自分の仕事ではない」と線を引きにくい場面が、日常的に生じます。
そうした環境では、はじめて任された仕事でも自分で手順を組み立て、周囲と確かめ合いながら着実に形にしていける人が求められやすい、というのが当研究会の見立てです。加えて、歩いて回れる広さの市では、職員が市民と生活の場でも顔を合わせます。
第1次の書類選考が「向日市の魅力を生かした未来のまちづくり」を尋ねているのは、制度を運用する側の視点だけでなく、このまちで暮らす人としての視点を持っているかを見ているとも読めます。
そして向日市の場合、準備の入口は迷いようがありません。書類選考の2設問、第2次の小論文、2回の個別面接という流れは、同じ材料を3つの形式で繰り返し確かめる構造になっています。
申込の時点で書いた2つの答えは、最後まであなたに付いてきます。だからこそ、まずその2設問に本気で向き合うことが、この試験では最も効率のよい準備になります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。向日市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 市役所までは迷わず来られましたか? | 第2次・第3次の会場はいずれも市役所。市内を実際に歩いたことがあるかどうかは、こうした一言への返し方に表れる |
| ② 動機・志望 | なぜ京都府庁ではなく向日市役所なのですか? | 規模の小ささを消極的な理由にしていないか。市が自前で担う仕事の範囲を理解したうえでの選択か |
| ③ 自己理解 | ご自身の弱みは何だと思いますか? | 弱みを認めたうえで、どう付き合っているか。申込時に書いた内容や小論文の主張とぶれていないか |
| ④ 経験・行動 | 申込書に書かれた「乗り越えた困難」について詳しく教えてください | 書類選考で審査された記述が、そのまま面接の起点になる。自分が書いた内容を細部まで説明し切れるか |
| ⑤ 学業・経歴 | これまでの学びや仕事を、市の仕事にどう生かせますか? | 専門を抱え込まずに話せるか。担当の枠を越えた相談にも動ける柔らかさがあるか |
| ⑥ 適性・将来 | 幅広い業務を担当することになりますが大丈夫ですか? | 小規模な組織で複数の分野を兼ねて担うことへの理解と、異動や兼務への構え |
| ⑦ 公共性・社会性 | 向日市の魅力を一つ挙げるとしたら何ですか? | 申込時に書いたまちづくりの提案と地続きになっているか。名所の紹介で終わっていないか |
もっとも、この表を埋めただけでは準備は半分です。ここに挙げた質問は誰もが想定して臨むもので、答えを持っているかどうかではなく、その中身で比べられます。
向日市が第1次の段階から書類選考を置いているのは、まさにその中身を早いうちに見るためだと考えられます。
合否を分けるのは「向日市役所ならでは」の質問
この2問は、市の現状を知らなければその場で組み立てようのない質問です。逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
しかも向日市の場合、1問目に対する答えの一部は、申込時に自分で書いた「未来のまちづくり」の記述にすでに含まれているはずです。こうした質問に答えるための「向日市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい向日市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ府庁ではなく市役所か | 消防は向日市・長岡京市・大山崎町でつくる乙訓消防組合が担う一方、職員採用試験は向日市が単独で実施している | 広域で担う仕事と市が自前で担う仕事の線引きに触れたうえで、市の側でやりたい仕事を具体的に挙げます |
| なぜ隣の市ではなく向日市か | 隣接するのは京都市と長岡京市の2市のみ。長岡京市とは申込方法も試験構成も日程も異なる別個の試験で、向日市は第1次から書類選考でまちづくりの提案を求めている | 「近いから」ではなく、申込時に自分が書いた提案の中身を根拠として示します |
| 向日市の魅力と課題 | 人口密度は1平方キロメートルあたり約7,241人と高く、市域は歩いて回れる広さ。その一方で用地の余裕は小さい | 近さという魅力と、用地の制約という課題を、同じ一つの条件の表裏として説明します |
| 人口と高齢化 | 住民基本台帳の人口は令和8年1月1日現在で55,899人。高齢化率27.2%は京都府全体の29.7%を下回るが、65歳以上のうち6割を超える方が75歳以上 | 「まだ若い市」で止めず、後期高齢者の割合という次の局面まで踏み込みます |
| 広域の観光の流れ | 令和6年の京都府の観光入込客数は8,425万人。うち京都市を除く府域は2,819万人で、令和元年比135%と伸びが大きい | 京都市の外側へ人の流れが広がる中で、市がその流れとどう関わるかという視点で話します |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
向日市は文章の形で人物像を公表していないため、ここでは選考の設計から評価の観点を読み解きます。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| はじめての仕事を形にする力 | やり方が決まっていない状況で、何から手をつけ、どう進め方を組み立てたか | 前例のない作業を任された場面を1つ選び、最初の一歩に何を選んだのかまで言えるようにしておく |
| 丁寧さと段取り | 申込時の入力や証明写真の扱いなど、手続きの正確さも考慮される。面接での説明の順序や、書いた内容との整合も同じ目で見られる | 申込時に書いた2つの記述を手元に印刷し、面接の前に自分の言葉で読み直しておく |
| このまちへの関わり方 | 歩いて回れる広さの市で、職員と市民が生活の場でも接する環境をどう受け止めているか | 出身地にかかわらず、向日市のどの課題に関心があるのかを具体的に一つ決めておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。向日市は個別面接が2回あり、しかも申込時の記述が手元にある状態で進みます。
自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新年度の実施要項を読み、3段階の流れと、第1次でSPI3と書類選考が同時に見られることを確認する
- 申込時に記入する2つの欄、「向日市の魅力を生かした未来のまちづくり」と「困難に直面し乗り越えた経験」の下書きを作る。ここが書類選考の対象であり、面接の起点になります
- SPI3の基礎能力検査に向けて、テストセンターの予約時期まで含めた計画を立てる
- 2つの欄に使った経験を掘り下げる。何に困り、何を選び、その結果どう変わったのかを、記入欄に収まらない部分まで思い出しておく
- 7つのカテゴリーの代表質問に一言メモで答えを作り、この記事の第1部から向日市の事実を2つか3つ選んで自分の言葉にする
- 声に出して練習する。第2次では小論文もあるため、話す内容と書く内容がずれないように整えておく
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は他の受験者と差がつく工程ですが、向日市の場合はステップ2とステップ4を先に固めてください。第1次試験の書類選考で審査されるのは申込時の2つの記述であり、その内容は第2次・第3次の面接でも手元に置かれます。市の知識をいくら増やしても、自分が書いた2つの答えを説明できなければ、最初の段階で止まってしまいます。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、向日市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
向日市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
向日市の令和8年度の採用試験は、事務職の場合、一般枠と就職氷河期世代枠を合わせた8つの区分で募集され、いずれも第1次のSPI3と書類選考、第2次の個別面接と小論文、第3次の個別面接という3段階で進みます。集団形式は課されません。
そして最初の関門で問われるのは、あなたが考える向日市の未来のまちづくりと、これまでに乗り越えてきた困難です。7.72平方キロメートルという小さな市域に、自分は何を書き込むのか。
準備は、その2つの欄から始めてください。