本記事では、南丹市職員採用試験の面接対策で必要な、南丹市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
南丹市役所の面接試験では、「なぜ南丹市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。市名の読みは「なんたん」です。
以下で試験の構成を扱うのは令和8年度の後期募集(一般事務職)の実施要項にもとづく内容です。この募集には一般試験・社会人試験・ふるさとチャレンジ試験の3つの区分があり、併願はできません。
自分が受ける区分の条件を確かめながら読み進めてください。
第1部|自治体研究編
南丹市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは南丹市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 面積616.40平方キロメートルに人口3万人弱が暮らす、市域の広さが際立つ市。
- 接しているのは京都府内の京都市・綾部市・亀岡市・京丹波町に加え、福井県おおい町、滋賀県高島市、大阪府能勢町、兵庫県丹波篠山市。5つの府県、8つの自治体と境を接する。
- 人口は2万9,111人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。市の花は桜、市の木はぶな(いずれも2008年4月1日制定)。
- 65歳以上が36.7%、75歳以上が22.0%(同)。京都府全体の29.7%、18.4%をいずれも大きく上回る。
- 美山町北の「かやぶきの里」は、平成5年12月8日に国の重要伝統的建造物群保存地区(種別は農村集落)に選定された。面積は127.5ヘクタールで、かやぶき民家は「北山型」と呼ばれる形式。
- 市域は京都丹波高原国定公園の区域に含まれ、由良川源流の芦生の森など原生的な自然を抱える。
- 消防は市単独ではなく、亀岡市・京丹波町とともに構成する京都中部広域消防組合消防本部が担う。
- 採用試験に「公務員試験対策不要」と明記し、第1次試験に面接を置く構成をとっている。
- 市役所は南丹市園部町小桜町に置かれている。
南丹市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「南丹市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
南丹市の数字は、面積と人口を割り算したところに本質があります。市域の広さに対して住んでいる人が少ないという関係が、道路にも施設にも人員配置にも同じように効いてきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 29,111人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 1万691人(36.7%) |
| うち75歳以上人口 | 6,402人(22.0%) |
| 総面積 | 616.40平方キロメートル |
| 人口密度 | 約47人/平方キロメートル(上記の総人口と総面積から算出) |
| 接している自治体 | 京都府内は京都市、綾部市、亀岡市、京丹波町。ほかに福井県おおい町、滋賀県高島市、大阪府能勢町、兵庫県丹波篠山市 |
| 市の花・木 | 桜(花)・ぶな(木)。いずれも2008年4月1日制定 |
| 市役所の所在地 | 京都府南丹市園部町小桜町47 |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。本文で比べている京都府全体の割合も同じ統計から取っています。人口密度は、この総人口を総面積で割って算出しました。総面積・接している自治体・市の花と木・市役所の所在地は、当研究会が整理した基礎データによります。内閣府の白書や京都府が別に公表している推計人口は調査の基準が異なりますので、この表の値と並べて増減を計算することはできません。
数字から考えられる市政課題
南丹市の65歳以上は36.7%で、京都府全体の29.7%を7ポイント上回ります。75歳以上でも22.0%と、府の18.4%より3.6ポイント高い水準です。
市民の5人に1人以上がすでに75歳以上という構成ですから、医療・介護・見守りが市の業務量の中心にあることは、どの分野を志望するとしても前提になります。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)
もう一つは密度です。2万9,111人が616.40平方キロメートルに暮らし、1平方キロメートルあたりは約47人。
京都府の面積は4,612.21平方キロメートルで、府全体を単純に割れば1平方キロメートルあたり約530人ですから、南丹市の人口密度は府平均の10分の1に満たない計算になります。
なお内閣府は、京都府の高齢化率が令和32(2050)年に38.5%まで上昇すると見込んでいます。こちらは住民基本台帳とは別の統計にもとづく数値で同じ列では比べられませんが、南丹市はすでにその水準の近くにいるということです。(出典:京都府の位置と面積|京都府/高齢社会白書|令和7年版・内閣府)
南丹市の経済・産業
森が市域の骨格をつくっている
南丹市の市域は、京都丹波高原国定公園の区域に含まれます。この国定公園は平成28年3月25日に指定され、府公式ページの記載によれば京都市・綾部市・南丹市・京丹波町にまたがり、面積は68,851ヘクタールに及びます。
区域には由良川源流の芦生の森など原生的な自然と、かやぶき屋根の民家が残る集落が含まれます。保護すべき自然と、人が暮らす集落が同じ区域の中に重なっているのが南丹市の土地の使われ方です。
開発と保全のどちらか一方だけを語る志望動機が通用しにくいのは、この構造があるためです。(出典:京都丹波高原国定公園|京都府)
かやぶきの里と、伸びている府域の観光
美山町北の伝統的建造物群保存地区、通称「かやぶきの里」は、平成5年12月8日に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。種別は農村集落で、面積は127.5ヘクタール。
かやぶき民家は「北山型」と呼ばれる形式です。観光の追い風もあります。
令和6年の京都府の観光入込客数は8,425万人でしたが、このうち京都市を除く府域は2,819万人で、令和元年比135%。観光消費額も京都市を除く府域で1,507億円、令和元年比166%に達しています。
京都市を除いた府域の観光は、感染症拡大前を大きく上回る水準まで戻っているという数字です。ただし、集落に人が住み続けているからこそ景観が保たれているという点は忘れないでください。
観光を語るなら、訪れる人ではなく暮らす人の側から話を始めるのが、この市では筋が通ります。(出典:美山町北 重要伝統的建造物群保存地区|南丹市/京都府観光入込客調査報告書|令和6年)
雇用の受け皿としての医療・福祉
京都府全体の従業者数を産業別に見ると、卸売業・小売業が20.9%で最も多く、製造業15.7%、医療・福祉15.3%と続きます(令和3年経済センサス活動調査、府内の従業者数は114万8,970人)。この構成のうち、65歳以上が36.7%という南丹市では、医療・福祉が働く場としての比重を高めやすいという関係が生じます。
産業振興を志望動機に置く場合も、工場や店舗を誘致する話だけでなく、介護や医療の担い手をどう地域に留めるかという視点を持っておくと、この市の実情に合った議論になります。(出典:経済センサス活動調査結果の概要|令和3年・京都府)
南丹市の主な行政課題
ここまでの数字と土地の条件を、市役所の仕事の側から並べ直してみます。面接で「南丹市の課題」を問われたときのために、次の4つを手元に置いておきましょう。
府平均を大きく上回る高齢化
65歳以上36.7%、75歳以上22.0%(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)という構成は、京都府全体をどちらも大きく上回ります。支える側が減りながら支えられる側が増えるという二重の圧力がかかる局面です。
サービスの数を増やす議論より、限られた人と予算をどこへ残すかを決める議論のほうが多くなります。福祉分野を志望するなら、その優先順位をどう考えるかまで自分の言葉で持っておきましょう。
616平方キロメートルにサービスを届けること
人口密度は約47人。集落は森と川のあいだに点在し、市役所から遠い地域ほど、日常の移動そのものが負担になります。
同じ人数の職員でも、受け持つ面積が広いほど一件あたりに割ける手間は減るという関係は避けられません。高齢化と重なれば、通院や買い物の足をどう確保するかという問題として現れます。
窓口をどこに置くか、巡回でどこまで補うか。答えの出しにくい問いが日常的に生じます。
大規模地震への備え
府内でもっとも大きな被害が想定されているのは、花折断層帯を震源とする地震です。令和6年4月公表の府の調査では、気象庁マグニチュード7.5の右横ずれ断層による地震として、京都市北区・上京区・左京区等の一部で最大震度7、市街地から山城地域にかけて震度6強が想定されました。
冬の18時に発災した場合、府全体の被害は建物全壊約11万棟、半壊約15万棟、焼失約2.4万棟、死者約4.6千人、発災直後の避難者約24万人と見込まれています。
想定の中心は京都市域から山城地域にかけてですが、府内でこの規模の災害が起こりうるという前提は、隣接する南丹市も共有すべき事柄です。
加えて、かやぶき民家が並ぶ集落を抱える市として、火災への備えが景観の保全と直結している点も押さえておきましょう。(出典:京都府地震被害想定調査報告書|令和6年4月公表)
職員をどう確保していくか
南丹市は令和8年度の後期募集で、一般試験・社会人試験をあわせて10名程度、ふるさとチャレンジ試験で5名程度の採用を予定していました。このうちふるさとチャレンジ試験は令和5年度に新設された区分で、基礎能力試験を免除し、作文試験と事務能力試験で選考する仕組みです。
人口3万人規模の市が必要な人数を確保するために、受験の入口そのものを増やしている、と読むことができます。市の側の事情まで見えていると、志望動機の説得力は変わります。
重点政策|森と里と街をつなぐという課題
南丹市が自ら掲げている言葉が、この市の政策の方向をよく表しています。採用試験の実施要項は、求める職員像の定義文のなかで「『森・里・街・人がきらめく ふるさと 南丹市』を実現するため」という表現を使っています。
森と、里と、街を並べて一つの市として語らなければならないという事情そのものが、616.40平方キロメートルに人口3万人弱という条件から生まれています。
志望動機を練るときは、市公式サイトで公表されている最新の総合計画にあたり、自分の関心と重なる章を先に見つけておきましょう。
志望分野を絞り込む視点
自治体研究の目的は、事業の名称を覚えることではありません。南丹市が自ら「森・里・街」と並べているのは、条件の違う地域を一つの市として運営しているからです。
気になる分野をひとつ決め、その分野の課題が森と里と街のどこで最も重く出るのかを考えてみると、語る言葉が具体的になります。
POINT|「自然が豊か」ではなく、その自然を誰が守っているのかへ
国定公園とかやぶきの里を抱える市ですから、志望動機で自然や景観に触れたくなります。ただ、美しさを述べるだけでは面接官の次の一言に答えられません。その景観を維持しているのは誰で、どこに難しさがあるのかまで踏み込みましょう。
悪い例「豊かな自然と美しい景観が残る南丹市で、その魅力を守り伝える仕事がしたいです」
改善例「かやぶきの集落は、そこに人が住み続けているから残っていると聞きました。65歳以上の方が4割近くを占める市で、住み続けられる条件をどう整えるか。景観を守る仕事は、暮らしを支える仕事と同じところにあると考えています」
あわせて確認したい公式資料
南丹市は試験区分によって受験資格も筆記の中身も変わりますから、まず実施要項を手元に置くところから始めてください。そのうえで政策の資料へ広げます。
- 南丹市職員採用試験の実施要項(最新版。試験の段階、区分ごとの受験資格、筆記の内容、提出書類が一つにまとまっています)
- 南丹市公式サイトの職員採用のページ(募集の時期と申込みの方法)
- 南丹市の総合計画(市公式サイトの最新版を、志望分野に関わる章に絞って読む)
- 京都府観光入込客調査報告書・京都府地震被害想定調査報告書(南丹市の観光と防災を、府全体の枠組みから理解できます)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、南丹市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。南丹市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
南丹市役所の面接の概要
南丹市の選考は、多くの自治体とは順序が違います。ここを取り違えると準備の組み立てごと狂いますので、まず試験の流れから確認します。
面接から始まり、面接で終わる三段階
南丹市の後期募集(一般事務職)は三段階の選考です。ただし並び方が特徴的で、第1次試験が口述試験、第2次試験が筆記試験、第3次試験が個別面接という順序になっています。
筆記は最初の関門ではなく、面接を一つ通過したあとに置かれているわけです。
しかも市は「南丹市の採用試験は公務員試験対策不要です」と明示したうえで、「基礎能力等の点数は、合格が決定した後リセットされ、最終合格決定の点数には加点されません。」と要項に記載しています。(出典:令和8年度南丹市職員採用試験実施要項(後期募集))
| 段階 | 内容(令和8年度後期募集・一般事務職) |
|---|---|
| 第1次試験 | 口述試験。一般試験・社会人試験・ふるさとチャレンジ試験の全区分に共通して実施されます |
| 第2次試験(一般試験) | 基礎能力試験〔60分・大卒程度問題〕と事務能力診断検査〔60分〕 |
| 第2次試験(社会人試験) | 基礎能力試験〔60分・高卒程度問題〕と事務能力診断検査〔60分〕 |
| 第2次試験(ふるさとチャレンジ試験) | 事務能力診断検査〔60分〕と作文試験〔70分〕。基礎能力試験は免除されます |
| 基礎能力試験の出題分野 | 文章読解力、数学的基礎知識・演算・図形把握、推理判断能力、人文・社会・自然に関する一般知識、基礎英語 |
| 筆記の得点の扱い | 市は「基礎能力等の点数は、合格が決定した後リセットされ、最終合格決定の点数には加点されません。」と明記しています |
| 第3次試験 | 口述試験(個別面接) |
| 受験の条件と手続き | 内容(令和8年度後期募集・一般事務職) |
|---|---|
| 試験区分と採用予定人員 | 一般試験・社会人試験があわせて10名程度、ふるさとチャレンジ試験が5名程度。3区分の併願はできません |
| 受験資格 | 一般試験は平成11年4月2日から平成21年4月1日までに生まれ、大学を卒業または令和9年3月末までに卒業見込みの方。社会人試験は昭和61年4月2日以降に生まれ、高等学校以上の学校を卒業し、民間企業等での実務経験が3年以上ある方。ふるさとチャレンジ試験は平成3年4月2日以降に生まれ、高等学校以上の学校を卒業した方で、ふるさと南丹市を盛り上げる熱意とやる気をもって働くことができる方です |
| ふるさとチャレンジ試験 | 令和5年度に新設された区分です。市の説明では、南丹市をふるさととしてもっと盛り上げたいという熱意を重視し、基礎能力試験を免除して作文試験と事務能力試験で選考する試験とされています |
| 提出書類 | 受験申込書(自筆・写真貼付。写真は3か月以内に撮影したものに限られます)、最終学校の卒業証明書または卒業見込証明書。一般試験は成績証明書、社会人試験とふるさとチャレンジ試験は指定様式の事前提出資料が必要です |
| 申込みの方法 | Web申込ではなく、市役所の総務部人事課への持参または郵送(簡易書留)です。受験申込書は市ホームページからダウンロードできます |
| 初任給 | 地域手当を含み、大学卒程度248,240円、短大卒程度231,655円、高校卒程度214,321円(令和8年4月1日現在)。社会人試験での採用者は職歴等に応じて加算されます |
| 成績の開示 | 不合格となった方は、総合得点および総合順位について、合格発表の日または合否通知を送付した日から2週間、人事課で本人が直接請求できます。電話や郵便による請求はできません |
上記は、令和8年度南丹市職員採用試験実施要項(後期募集・一般事務職)にもとづく内容です。試験の段階・区分・受験資格・提出書類等は、募集の時期や職種によって異なります。受験の際は、必ずご自身が受ける募集と区分の最新の実施要項をご確認ください。
「点数が残らない」という設計をどう読むか
筆記の得点が最終合格の決定に加点されないという記載は、受験者にとって決定的な意味を持ちます。筆記は通過するための関門ではあっても、順位をつくる材料ではないということだからです。
第1次も第3次も口述試験ですから、合否を左右するのは面接の中身になります。
ここから導かれる準備の順序は、通常の公務員試験とは逆です。多くの受験者は筆記を固めてから面接に手をつけますが、南丹市では最初の関門がすでに面接です。
筆記の勉強を始める前に、話す材料をそろえておく必要があると考えてください。
POINT|筆記より先に、話す材料をそろえる
第1次が面接である以上、経験の棚卸しが遅れると出願の段階でつまずきます。自分の経験を3つか4つ選び、それぞれについて、状況と、自分がとった行動と、そのあとに何が変わったのかを書き出すところから始めてください。ふるさとチャレンジ試験を受けるなら、この材料がそのまま70分の作文の中身にもなります。
悪い例「まず筆記の勉強を一通り終えてから、面接の準備に取りかかろうと考えていました」
改善例「最初の試験が面接だと知ったので、まず自分の経験を書き出しました。書いてみると話せることと話せないことがはっきりしたので、そこから筆記の時間配分を決めました」
南丹市が求める職員像
実施要項は、求める職員像のイメージを4つのキーワードで整理しています。
- 市民志向
市民からの厚い信頼、市民協働の視点、市民感覚での職務遂行 - 多角志向
コスト意識、経営感覚、変革意識 - 未来志向
職務に対する積極性、知識や技能の向上心、チャレンジ精神 - やる気
実施要項の表紙にも「あなたの『やる気』を注ぎませんか」という一文が掲げられています
そのうえで市は、求める職員像を「『森・里・街・人がきらめく ふるさと 南丹市』を実現するため、積極的、主体的に行動し、感動や新しい価値観を生み出すことが出来る熱意とやる気を持った職員」と定義しています。
なお、この定義文では「人」が漢字ですが、実施要項の表紙に掲げられたキャッチコピーでは「ひと」がひらがなで表記されています。引用するときはどちらの文からの引用かをはっきりさせておきましょう。
この4つのうち、面接で意識しておきたいのは2つ目の「多角志向」です。コスト意識と経営感覚が、求める職員像の見出しとして正面に置かれています。
人口3万人弱の市が616平方キロメートルを受け持つという条件を思い出せば、この項目が飾りでないことがわかります。限られた財源をどこへ配るかという判断が、日常業務の中に組み込まれているということです。
以下の2段落には、市の公表資料の裏づけがありません。人口2万9,111人と616.40平方キロメートルという2つの数字から、当研究会が組み立てた仮説として読んでください。
3万人弱という規模だと、施策の相手は「住民一般」という抽象的なかたまりではなくなります。どの集落の誰が困っているのかが、担当者の手元でだいたい見えている。
ですから制度を一つ動かせば、誰の暮らしがどう変わるかも先に想像がついてしまいます。顔の見える相手を前にして、それでも市全体の筋を通した判断ができるか。
その線をどう引いてきたかを面接で確かめられる可能性は、低くないでしょう。
この市の言葉の使い方にも、同じことが表れています。南丹市は「ふるさと」という言葉を、試験区分の名前にまで使いました。
ふるさとチャレンジ試験という呼び名が意味しているのは、この土地との関わり方そのものが選考の材料になるということです。集落の寄り合いや近所での立ち話が、そのまま職員としての評判につながっていく規模でもあります。
出身がどこかということより、この土地とどう関わるつもりかを自分の言葉で語れるかどうかが効いてきます。
準備の順序も、この試験の形そのものが決めています。筆記の点数が残らず、口述試験が最初と最後に置かれている以上、評価されるのは話の中身だけです。
だとすれば、最初の口述試験で出した話は、第3次でもう一度掘られる前提で選ばなければなりません。その場で思いついた話ではなく、二度目に踏み込まれても足元の崩れない出来事を、いまのうちに選んでおいてください。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。南丹市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 園部までは、どのくらい時間がかかりましたか? | 選考の最初が面接である以上、この一往復から評価は始まっています。緊張の中でも言葉を返せるか |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく公務員を選んだ理由を聞かせてください | 安定という言葉に寄りかからず、3万人規模の市で働く選択として言葉にできているか |
| ③ 自己理解 | ご自身に足りないところはどこだと思いますか? | 足りなさを認めたうえで、それを補う手立てを自分で用意しているか |
| ④ 経験・行動 | 限られた予算や人手の中で工夫した経験はありますか? | 市が掲げる「コスト意識」「経営感覚」に直結する問い。制約の中での判断の仕方 |
| ⑤ 学業・経歴 | これまでで、いちばん粘り強く続けたことは何ですか? | 取り組みの高度さではなく、南丹市の業務のどこへつながるかを自分で見つけているか |
| ⑥ 適性・将来 | 市役所から離れた地域を担当することになったら、どう動きますか? | 616平方キロメートルという市域を、実際の仕事として想像できているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近気になった出来事について、考えを聞かせてください | 口述試験が最初と最後に置かれる試験。短い問いにも自分の考えを載せて返せるか |
ただし、この7つの枠組みは受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「南丹市ならではの事情を踏まえた質問」です。
合否を分けるのは「南丹市役所ならでは」の質問
どちらも南丹市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。面接で使いやすい南丹市の事実を絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい南丹市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と年齢の内訳 | 2万9,111人のうち65歳以上が36.7%、75歳以上が22.0%(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。京都府全体の29.7%、18.4%をどちらも上回る | 数字を悲観の材料で終わらせず、限られた人と予算をどこへ残すかという判断の話へ進めます |
| なぜ府庁ではなく市役所か | 南丹市は消防を亀岡市・京丹波町との組合で担う一方、窓口や福祉は市が直接担う。広域で分担する仕事と、市が自ら抱える仕事の線が引かれている | どこまでを市が単独で担うのかを具体例で示し、そのうえで自分が現場に近い側を志す理由へ接続します |
| 市域の広さ | 面積616.40平方キロメートルに人口密度は約47人。京都府平均の10分の1に満たない | 広さを不便としてだけ語らず、窓口の配置や巡回の仕組みなど、届け方の工夫という論点まで進めます |
| かやぶきの里と国定公園 | 美山町北は平成5年12月8日に国の重要伝統的建造物群保存地区(農村集落・127.5ヘクタール)に選定。市域は京都丹波高原国定公園の区域に含まれる | 景観の美しさではなく、住み続ける人がいるから保たれているという構造から語ります |
| ふるさとチャレンジ試験 | 令和5年度に新設された区分で、基礎能力試験を免除し作文試験と事務能力試験で選考する。採用予定は5名程度 | この区分を受けるなら、なぜ南丹市を「ふるさと」として選ぶのかを、出身の有無に関係なく自分の言葉で説明できるようにします |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、実施要項が掲げる4つのキーワードに照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 市民志向 | 相手の立場に立って進め方を変えた経験があるか | 説得した話ではなく、相手の事情を聞いて自分の案を修正した場面を選んでおきます |
| 多角志向 | 限られた時間や費用の中で、優先順位をつけた経験があるか | 何を選んだかだけでなく、何をあきらめたのかまで言えるようにしておきます |
| 未来志向 | 前例のないことに手を出し、学びながら進めた経験があるか | 知識をどう仕入れたのか、その手順まで具体的に説明できるよう整理しておきます |
| やる気 | なぜ南丹市なのかを、自分の言葉で言い切れるか | この市の何に関心があるのかを一点に絞り、その関心の出どころになった出来事を添えておきます |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。南丹市は第1次と第3次の2回にわたって口述試験がありますから、同じ経験を別の場面で改めて問われる可能性は高いといえます。
自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 実施要項を最新版で読み、一般試験・社会人試験・ふるさとチャレンジ試験のどれを受けるかを決める。3区分は併願できず、受験資格も筆記の中身も異なる
- これまでの経験を棚卸しし、話せる話を3つか4つ選ぶ。それぞれについて、状況と自分がとった行動、そのあとの変化を書き出す。第1次試験が面接なので、この作業を最初に終える
- 提出書類の準備に取りかかる。受験申込書は自筆で、貼付する写真は3か月以内に撮影したものに限られる。卒業証明書や成績証明書は学校への請求に日数がかかるため早めに動く
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- この記事の前半を読み返し、年齢構成・市域の広さ・かやぶきの里と国定公園・府域の観光の伸びのうち、志望分野に近い事実を2つか3つ選んで自分の言葉で説明できるようにする
- 声に出して練習する。第1次と第3次で2回の口述試験があるため、同じ経験を角度を変えて2通り話せるところまで持っていく。ふるさとチャレンジ試験を受けるなら、70分の作文も同じ材料で書く練習を重ねる
優先順位に注意
ステップ5で扱う自治体研究は、上積みの工程にあたります。ただし南丹市は第1次試験が口述試験ですから、筆記から手をつける通常の順序が通用しません。ステップ2の経験の棚卸しとステップ3の書類準備を先に片づけ、そのうえで筆記の時間配分を決めてください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、南丹市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
南丹市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度の後期募集は、第1次が口述試験、第2次が筆記試験、第3次が個別面接という三段階でした。しかも筆記の点数は最終合格の決定に加点されません。
最初から最後まで、話す中身で決まる試験だということです。616.40平方キロメートルの市域に3万人弱が暮らし、その4割近くが65歳以上。
かやぶきの集落と国定公園を抱えながら、そこに住み続ける人の暮らしをどう支えるかを問われ続けている市です。そこで働く一人として、自分は何を任せてほしいのか。
市が掲げる市民志向・多角志向・未来志向・やる気の4つに、自分のどの経験が重なるのかを、2回の口述試験で繰り返し語れる形まで整理してみてください。
前期の募集や他の職種を受ける方は条件が異なりますので、該当する実施要項を確かめてから準備に入りましょう。