本記事では、京都市職員採用試験の面接対策で必要な、京都市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
京都市役所の面接試験では、「なぜ京都市を志望したのか」「市職員としてどんな仕事をしたいのか」「その考えはどんな経験から来ているのか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。市の実情や政策を理解しておくことで、抽象的な回答を避け、京都市ならではの事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。
なお、京都市の採用試験は、上級一般事務職〈一般方式〉・上級<京都方式>・中級など、区分によって試験の組み立ても面接の回数も異なります。以下は令和8年度の受験案内をもとに、一般事務職(行政)を中心に整理したものです。自分がどの区分を受けるのかを確かめながら読み進めてください。
第1部|自治体研究編
京都市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは京都市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 京都府の府庁所在地であり、11の行政区で構成される政令指定都市。
- 人口は約137万人で、京都府全体の半分以上が京都市に住んでいる。
- 市域面積は827.83平方キロメートルと京都府全体の約17.9%を占め、府内で最も広い。三方を北山・東山・西山に囲まれ、京都盆地と山科盆地に市街地が形成されている。
- 市域の土地利用は森林が約74%、農地が約3.4%で、大都市でありながら大部分は山林。人が密集して暮らすのは一部に限られる。
- 都市の理念として1978年の世界文化自由都市宣言を掲げ、令和7年12月には2050年までを見通す最上位の方針「京都基本構想」を市会の全会一致で策定した。
- 令和7年の観光客数は6,279万人、観光消費額は2兆474億円で、ともに過去最高を更新した。人口約137万人の市に、その何十倍もの人が毎年訪れる。
- 京都市伝統産業活性化推進条例に基づき74品目を市の伝統産業に決定している。国の法律に基づく伝統的工芸品の指定も17品目にのぼる。
- 財政は改善が進む一方、令和6年度決算の経常収支比率は102.1%。実質公債費比率と将来負担比率は、市自身が「指定都市の中で依然高い水準」と評価している。
- 大都市制度をめぐる府と市の関係は、対立よりも府市協調が前面に出ている。
京都市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「京都市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口と年齢構成、市域の広さとその使われ方、11ある行政区の姿を中心に並べました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 1,369,750人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 391,016人(高齢化率28.5%。京都府全体は29.7%) |
| 75歳以上人口 | 242,594人(総人口の17.7%。京都府全体は18.4%) |
| 総面積 | 827.83km²(京都府全体の約17.9%で府内最大) |
| 人口密度 | 約1,655人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 行政区数 | 11区(北・上京・左京・中京・東山・山科・下京・南・右京・西京・伏見) |
| 市域の土地利用 | 森林が約74%、農地が約3.4%、市街地が約17% |
| 人口が最も多い区/少ない区 | 伏見区263,959人/東山区32,589人 |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口および行政区別の人口は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。総面積は令和6年10月1日時点、土地利用の割合は平成22年現在の値で、人口密度は総人口を総面積で割って算出しました。なお、京都市が公表する令和7年国勢調査の速報値(令和7年10月1日現在)の人口は1,431,713人ですが、調査の基準が異なるため、住民基本台帳の人口と直接比べたり、差を増減として扱ったりすることはできません。
数字から考えられる市政課題
京都市の高齢化率は28.5%で、京都府全体(29.7%)をやや下回ります。大学が多く学生が集まる都市であることを考えれば意外な数字ではありませんが、市全体の平均だけを見ていると足元を見誤ります。
11ある行政区の高齢化率は、最も高い東山区の32.4%から最も低い下京区の23.0%まで9ポイント以上開いています。75歳以上の割合も、東山区の21.0%と下京区の14.0%では性格がまったく違います。
人口規模の差はさらに大きく、最も多い伏見区は約26万人、最も少ない東山区は約3万人です。区役所ごとに求められる仕事の中身が変わるのは、この構造から来ています。
加えて、京都市が公表した令和7年国勢調査の速報値では、総人口が前回の令和2年調査から32,010人(2.2%)減りました。
これは国勢調査どうしを比べた数字で、住民基本台帳とは別の系列ですが、市が人口減少局面に入っていること自体ははっきりしています。たとえば面接では、次のように数字と課題を結び付けられます。(出典:令和7年国勢調査 京都市の人口・世帯数(速報値)|令和7年)
京都市の経済・産業
伝統産業と近代工業が重なる産業構造
上京・中京・下京・東山の都心4区を中心とする旧市街地では、商業・業務の集積に加えて西陣織や京焼といった伝統産業が今も残り、職と住が同じ場所に共存しています。一方、市街地の西部・南部には機械・電気・化学など近代工業を営む工場が数多く立地しています。
つまり、歴史的な市街地に伝統産業が残り、その外側を近代工業が支えるという二層の構造が、京都市の経済の土台です。文化を「観光資源」としてだけ扱うと、この産業としての側面が抜け落ちます。
観光
令和7年の観光客数は6,279万人(日本人5,011万人・外国人1,268万人)で過去最高、観光消費額は2兆474億円、経済波及効果は2兆2,193億円と、いずれも過去最高を更新しました。宿泊客数は1,659万人で、その内訳は日本人809万人に対し外国人849万人と、外国人宿泊客が日本人を上回っています。修学旅行生は67万人でした。(出典:京都観光総合調査|令和7年)
令和7年の調査から、観光客数の推計手法が観光庁の調査を用いる方法に変更され、過年度の数値も遡って修正されています。過去の公表値と単純に比べられない点にご注意ください。
観光を支える財源と、その使い道
これだけの規模になると、観光は「にぎわい」ではなく財政と生活に直結する分野になります。京都市は令和8年3月の宿泊税の税率見直しを機に、観光施策を強化する方針を打ち出しました。
修学旅行生の積極的な誘致、ユニークベニューを活用したMICE誘致、京町家の保全・継承に向けた支援の大幅な強化、文化財への補助制度の充実などが並びます。
同時に、市が掲げる観光施策の方向性には「多様で奥深い魅力の継承・発展」と並んで「市民生活と観光の調和・両立の更なる推進」が置かれています。観光を伸ばす話と抑える話が同じ計画の中に同居しているのが京都市の特徴で、面接で観光を語るなら、この両立をどう考えるかまで踏み込みたいところです。
京都市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿から、京都市がいま向き合う問題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
人口減少局面への転換と、若い世代の市外流出
京都市は平成23年以降、さまざまな施策で社会動態を反転させ、人口規模を維持してきました。
しかし近年は、「結婚・子育て期」にあたる25歳から39歳の層が大阪府や府南部、滋賀県へ転出し、「就職期」にあたる20歳から24歳の層が関東や大阪府へ転出する傾向が顕著になっています。これに少子化が重なり、市は人口減少局面に入ったと分析しています。
大学のまちとして若者を集めながら、その若者が就職と結婚を機に外へ出ていくという流れをどう変えるか。これが京都市の人口政策の中心にある問いです。
令和8年度予算でも、私立幼稚園の第2子以降の2歳児保育料の無償化、小学校給食の無償化、住まいへの支援金の子ども3人以上世帯への加算など、若者・子育て世代の定住と移住を促す事業が重点に置かれています。
指定都市の中でも重い財政
令和6年度決算の財政力指数は0.807(単年度0.795)、経常収支比率は102.1%で、毎年決まって入る収入だけでは毎年決まって出ていく支出をまかないきれていない状態です。
実質公債費比率は12.0%、将来負担比率は132.0%で、市はこれらを「着実に低減しているものの、指定都市の中で依然高い水準にあり予断を許さない」と自ら評価しています。一般会計の市債残高は令和7年度末の見込みで1兆2,356億円です。(出典:京都市の決算カード|令和6年度)
令和7年度の一般会計当初予算は9,575億円で、1兆円を組んだ令和3年度に次ぐ規模でした。事業を増やすなら何かを見直すという判断が日常的に求められます。
花折断層による地震への備え
京都市第4次地震被害想定(令和4年度)で、市内に最も大きな被害をもたらすとされているのは花折断層による地震(マグニチュード7.5)です。
市街地のかなり広範な地域で震度6強、左京・東山・北・上京・中京・下京・山科の一部では震度7が想定されています。被害は、建物の全壊・焼失が12万1,000棟、死者が4,100人、発災直後の避難者が20万6,000人(いずれも冬18時のケース)と見込まれています。(出典:京都市第4次地震被害想定|令和4年度)
注目したいのは、全壊だけでなく焼失が同じ数字に含まれている点です。
木造家屋が密集する歴史的な市街地を抱える都市では、揺れによる倒壊だけでなく火災の広がりが被害を左右します。防災を語るなら、避難所や備蓄の話にとどめず、この延焼リスクまで視野に入れておきましょう。
観光と市民生活の調和
京都駅は市内最大の交通結節点で、新幹線の到着客などが集中します。
秋の観光シーズンには市バスの混雑が大きな課題となり、市は観光特急バスの運行、市バスと地下鉄烏丸線の臨時増発、車内混雑度のリアルタイムでの情報発信、地下鉄とバスの乗継促進といった対策を重ねてきました。京都駅周辺は平常時から主要な渋滞箇所を抱えており、混雑は観光期だけの問題ではありません。
令和8年度予算では、祇園や伏見稲荷大社での啓発員の増員、旅客流動調査とデータ分析基盤の整備に加えて、全国で初めてとなる市バス等の市民優先価格を令和9年度に導入することを見据えた制度周知やシステム改修支援が盛り込まれました。観光客と市民で運賃の考え方を変えるという判断です。
北陸新幹線の延伸ルートと、府市の関係
北陸新幹線の敦賀・新大阪間について、令和8年6月時点で与党の整備委員会が8つのルート案を比較・検討しています。
京都市は、市域を通るルート案となる場合に想定される課題として、地下水への影響、ヒ素を含む可能性のある大量の残土処理、工事期間中の渋滞、長期にわたる多額の地方負担を指摘してきました。市会は、敦賀から小浜を経由して京都市内の大深度地下にトンネルを建設する計画に反対する決議を、賛成多数で可決しています。(出典:北陸新幹線に関する京都市長説明資料|令和8年6月)
大都市制度に関しては、京都市の場合、府との対立よりも協調が目立ちます。令和8年度予算には、銭湯の子ども入浴料の無料化や、府の制度である就労・奨学金返済一体型支援事業の実施など、府市協調の事業が並びます。
「府と市のどちらが担うか」ではなく「府と市が一緒に何を届けるか」という組み立てになっている点は、面接の定番質問である「なぜ府庁ではなく市役所か」に答えるときの前提になります。
京都市の重点政策|京都基本構想
京都市の市政の基本方針は、令和7年12月11日に市会で全会一致により議決・策定された「京都基本構想」(2026年〜2050年)です。千年先を見据えた今後25年間の指針で、従来の「はばたけ未来へ!京プラン2025」の終了に伴う新しい市政の方針にあたります。(出典:京都基本構想|令和7年)
政策の体系と、構想を貫く3つの価値
京都市の政策は4つの層で組み立てられています。
最上位に都市の理念である世界文化自由都市宣言(1978年)があり、その下に市政の基本方針として京都基本構想、これを具体化する分野別計画と「新京都戦略」、そして単年度の事業である毎年度予算が続きます。志望動機で計画名を挙げるときは、自分が触れているのがどの層なのかを意識しておくと、話が噛み合いやすくなります。
構想が「これからも大切にしていきたい」として掲げるのは、①歴史と文化を介して人間性を恢復できるまち ②自然への畏敬と感謝の念を抱けるまち ③自他の生をともに肯定し尊重し合えるまち、の3つの価値です。この3つの価値それぞれに、合計9つの「めざすまちの将来像」がひもづく構成になっています。
9つのめざすまちの将来像
| 3つの価値 | めざすまちの将来像 |
|---|---|
| 歴史と文化を介して人間性を恢復できるまち | 本物(ほんまもん)を追究・創造し続ける/世界の文化と交流し、新たな文化を創造し続ける/「夢中」と「感動」に溢れ、学び続けられる/平穏と静寂のもとで自己と世界に深く向き合える |
| 自然への畏敬と感謝の念を抱けるまち | 謙虚に自然と関わり続ける/災害や感染症などの危機からしなやかに立ち直る |
| 自他の生をともに肯定し尊重し合えるまち | 多層的でゆるやかなつながりが続く/支え合いの中で日々の生活を営める/ひとりひとりの個性や価値観を尊重し合える |
「本物(ほんまもん)」「不易流行」「進取の気性」「粋」「居場所」と「出番」といったキーワードが添えられ、行政計画としてはかなり文化的な語彙で書かれています。この語彙そのものが京都市の自己認識です。
令和8年度の市政運営のポイント
京都市は他都市のような独立した施政方針演説を公表しておらず、市長が令和8年2月の市会本会議で説明した当初予算案の内容が、その年の市政運営の重点にあたります。令和8年度予算は「すべての人に『居場所』と『出番』がある突き抜ける世界都市」というキャッチフレーズのもと、「市民生活第一の徹底」を基本姿勢として編成されました。(出典:令和8年度京都市予算の概要|令和8年度)
特に予算を強化した点として、次の3つが掲げられています。
- 京都学藝衆構想の推進
市役所・区役所が結節点となり、幅広い世代が京都の価値・魅力に触れて共に学び交流する機会を創出する取組。「ひらく」「きわめる」「つなぐ」の3つの柱で展開される。 - 暮らしやすいまち、魅力と活力あるまちの創出
ケアラーとその家族の総合相談窓口の設置、加齢性難聴の方への補聴器購入経費の支援といった包摂的な施策と、私立幼稚園の第2子以降の2歳児保育料の無償化、小学校給食の無償化、山科駅前の遊びと学びの複合施設の整備といった子育て世代向けの施策。 - 本質的な価値・魅力の継承、発展につなげる観光の推進
宿泊税の税率見直しを機に、京町家の保全支援や文化財補助制度の充実を進める一方、観光マナーの啓発や市バス等の市民優先価格の導入準備といった調和策も同時に進める。
なお、令和8年度予算の説明資料では、京都基本構想の理念を拠り所として「新京都戦略」を改定する方針が示されています。施策の具体化は年度で変わるため、受験する年度の最新版を確認しておきましょう。
POINT|9つの将来像を丸ごと覚えなくてよい
名称をすべて言えることが自治体研究の目的ではありません。関心分野に近い将来像を一つか二つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③現在の事業 → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験・強みをどう生かすか」の順で調べましょう。
悪い例「京都の文化を守る仕事に携わりたいです」
改善例「京町家の保全への支援のように、住んでいる方の暮らしと町並みの保存を両立させる仕事に携わりたいです。所有者の方の事情を伺いながら制度につなぐ役割は、市の職員だからできることだと思っています」
あわせて確認したい公式資料
まず自分の受ける区分の受験案内、次に志望分野に近いものを1点、という順で十分です。
- 京都市職員採用試験の受験案内(最新年度・上級/上級<京都方式>/中級で別冊)
- 京都基本構想(概要版・本冊・ポイント版が公開されています)
- 最新年度の京都市予算の概要/関心分野の分野別計画
- 京都観光総合調査/京都市の統計ポータル(人口・観光などの統計を分野別に収録)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、京都市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。京都市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
京都市役所の面接の概要
ここからは、京都市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。なお、京都市の採用試験は京都市人事委員会が実施しており、京都府人事委員会が実施する京都府の試験とは別の制度です。
京都市役所の面接の流れ
京都市の面接対策で最初に押さえるべきは、区分によって面接の回数も最終合格の決め方も違うという点です。そして全区分に共通する事実がひとつあります。
令和8年度の受験案内には「集団討論」「集団面接」の記載が一切なく、口述試験はすべて「個別面接」と明記されています。集団形式の対策に時間を割く必要はありません。
| 区分(令和8年度) | 第1次試験 | 第2次試験以降 | 個別面接 | 最終合格の決め方 |
|---|---|---|---|---|
| 上級一般事務職〈一般方式〉 | 教養試験(択一式30問全問解答・1時間30分)、専門試験(行政・択一式40問中30問解答・1時間30分)、作文試験(600字以内・40分)。教養と専門の総合成績で第1次口述試験の対象者を決め、第1次口述試験(個別面接)を経て、教養・専門・第1次口述の総合成績で第1次試験の合格者を決定 | 第2次口述試験(個別面接) | 2回 | 作文試験と第2次口述試験の総合成績 |
| 上級<京都方式>一般事務職(行政) | SPI3(性格検査を自宅等で受検後、テストセンター会場で基礎能力検査を受検。基礎能力検査約35分・性格検査約30分)と、第1次口述試験(個別面接・WEB面接)。両者の総合成績で合格者を決定 | 第2次試験は第2次口述試験(個別面接)と課題作文(京都市政に関する内容・40分)。第2次試験の合格は第2次口述試験の成績で決定。第3次試験は第3次口述試験(個別面接) | 3回 | 課題作文と第3次口述試験の総合成績 |
| 中級一般事務職(行政) | 教養試験(50問中45問解答・2時間)と作文試験(600字以内・50分)。両者の総合成績(配点割合は9対1)で第1次口述試験の対象者を決め、第1次口述試験(個別面接)を経て、教養・作文・第1次口述の総合成績で第1次試験の合格者を決定 | 第2次口述試験(個別面接) | 2回 | 令和8年度の受験案内に明示なし(第1次試験の合格までは上記のとおり) |
| 上級一般技術職〈一般方式〉 | 基礎能力検査(SPI3)、専門試験、作文試験。基礎能力検査と専門試験の総合成績で合格者を決定 | 口述試験(個別面接) | 1回 | 作文試験と口述試験の総合成績 |
表の右端をあらためて見てください。上級一般事務職〈一般方式〉では、最終合格は作文試験と第2次口述試験の総合成績だけで決まります。教養試験と専門試験の得点は第1次試験の合格発表までで役目を終え、最後の判定には持ち越されません。
しかもその作文試験は第1次試験の日に書きますが、評価されるのは第2次試験の段階です。白紙で提出した場合は試験を棄権したものとみなされます。
上級<京都方式>はさらに徹底しています。教養試験も専門試験も課さず、すべての試験段階で個別面接を行う人物重視の選考として設計されており、受験案内は「民間企業を志望している方等にも受験しやすい試験」「これまでに有意義な経験を積んだバイタリティあふれる人物を募集」とうたっています。
第2次試験で書く課題作文は、課題そのものが第1次試験の合格発表の際に示され、第2次口述試験と同じ日に実施されます。第1次の口述試験がWEB面接である点も、対策の前提として押さえておきましょう。(参考:京都市職員採用試験受験案内(上級<京都方式>)|令和8年度)
中級一般事務職(行政)では、第1次口述試験の対象者を決める段階で、教養試験と作文試験の配点割合が9対1と明示されています。教養試験の得点が一定に達しない場合は作文が採点されません。
また、第1次試験でいずれかの成績が基準に達しなければ、他の成績にかかわらず不合格となります。
なお、この9対1という配点割合が公表されているのは中級一般事務職(行政)だけで、上級と上級<京都方式>については各試験の配点が公表されていません。他の区分に同じ比率を当てはめないよう注意してください。
方式を選ぶ段階で見ておきたいのは、この配分の違いです。一般方式は、まず教養と専門で第1次口述試験の対象に残ることが前提で、力を残しておくべきなのは最後の判定に回る作文と面接です。
京都方式は教養試験も専門試験もない代わりに、SPI3のほかに評価されるのは3回の個別面接と市政についての課題作文だけです。中級は、第1次口述試験にたどり着くまでが実質的に教養試験の勝負です。
申込時の入力項目が、面接の資料になる
京都市は採用サイト「パブリックコネクト」で申込を受け付けており、全職種共通で自己PR(300字以内)と志望動機(300字以内)、ゼミナール・卒業論文、他の就職試験の状況などを入力します。
一般事務職(行政)はこれに加えて、「これまでに力を入れて取り組んだことについて」(300字以内)と「所属した組織やグループで、目標に向かって協力して取り組んだ経験」(300字以内)を入力します。受験案内には「入力いただいた内容は面接の際の資料として用います」と明記されています。
また、上級の第1次試験合格者には、第2次試験までに最終学歴の卒業(卒業見込)証明書と成績証明書の提出が求められます。
上記の試験構成は、京都市の令和8年度受験案内にもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
京都市役所が求める人物像
令和8年度の受験案内が掲げる求める人物像は、「公務への責任感と誇りを持ち、京都のため、自ら考え行動し、チャレンジする方」です。(出典:京都市職員採用試験受験案内(上級)|令和8年度)
上級<京都方式>では、これに加えて求める人物の一例が4つ挙げられています。すなわち、様々な課題に積極的に取り組むことができる課題解決力に優れた方、京都の文化の魅力を理解し発信する担い手となれる文化的な素養を備えた方、英語をはじめとする様々な言語によるコミュニケーション能力を身に着けた方、部活動や地域貢献活動など目標に向かって取り組みやり遂げた経験のある方、の4点です。文化的な素養と語学力が名指しで挙がるのは、この都市の性格をよく表しています。
受験案内の一文はそれ自体が答えですが、なぜその資質なのかまでは書かれていません。ここから先は、京都市という職場の条件から当研究会が読み取った見立てです。市民サービスの現場は11の区役所にあり、区ごとの人口規模には8倍の開きがあります。
同時にこの市は、年間6,000万人を超える来訪者を迎える都市でもあります。
この環境では、目の前の一人への対応と、都市全体や広域への影響とを行き来しながら判断する場面が繰り返し生じます。
だからこそ、自分の担当の外側にある事情まで想像したうえで動ける人が評価の対象になりやすい、と当研究会は見ています。令和8年度予算が京都学藝衆構想において「市役所・区役所が結節点となる」という言い方をしているのも、職員に人と人をつなぐ役割を期待しているからでしょう。
そのうえで、この理解を準備に落とし込む入口ははっきりしています。面接の資料になるのは、申込時にあなた自身が選んで書いた4項目です。
新しい強みを探しに行くより、その4項目に何を置くかを先に決め、それぞれが京都市のどの仕事の場面につながるかを言えるようにしておくほうが、この選考の設計に合っています。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。京都市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 会場までの道のりはいかがでしたか? | 受け答えの間合いと表情。京都方式の第1次口述試験はWEB面接のため、画面越しでも伝わる話し方かどうかも含まれる |
| ② 動機・志望 | なぜ民間企業ではなく公務員なのですか? | 公務員という職業への憧れで止まっていないか。京都市人事委員会が実施する試験を選んだ理由が、自分の経験と地続きになっているか |
| ③ 自己理解 | 周囲からはどんな人だと言われますか? | 自己評価と他者評価のずれを引き受けられるか。申込時に入力した自己PRと、その場の話しぶりが食い違っていないか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も力を入れて取り組んだことを教えてください | 成果の大きさではなく、その過程で何を判断し、どう手を動かしたか。申込時の入力項目とそのまま重なる領域 |
| ⑤ 学業・経歴 | ゼミや卒業論文のテーマを説明してください | 専門外の相手に届く言葉へ置き換えられるか。上級では第2次試験までに成績証明書の提出も求められる |
| ⑥ 適性・将来 | 希望と違う区役所への配属になっても大丈夫ですか? | 11の区で事情が異なることを踏まえた答えか。異動を前提とした働き方への理解 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近の京都市政で気になった話題はありますか? | 市政の動きを自分で追っているか。観光や交通など、市民の暮らしに直結する論点を選べているか |
ただし、この見取り図は抜け漏れを防ぐためのものです。ここに並ぶ質問は多くの受験者が答えを用意して臨むため、7つを埋めた時点ではまだ横並びの状態にとどまります。
京都市で個別面接が2回から3回課される意味は、その先にあります。
合否を分けるのは「京都市役所ならでは」の質問
京都市の場合、1問目には特有の難しさがあります。第1部で見たとおり、京都では府と市が協調して事業を組み立てている場面が目立ち、制度の違いを述べるだけでは答えになりません。
どちらも市の現状を知らなければその場で組み立てようのない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「京都市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい京都市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ府庁ではなく市役所か | 京都市の採用試験は京都市人事委員会が単独で実施し、京都府の試験とは別制度。令和8年度予算には、銭湯の子ども入浴料の無料化や就労・奨学金返済一体型支援事業など、府と歩調を合わせた事業が並ぶ | 府と市を対立の構図で語らず、11の区役所という現場を持つ市の側でやりたい仕事を具体名で挙げます |
| 京都市の魅力と課題 | 令和7年の観光客数は6,279万人、観光消費額は2兆474億円でともに過去最高。同時に京都駅への集中と市バス混雑への対応が続き、令和9年度には市バス等の市民優先価格の導入が見込まれる | 名所を並べるのではなく、魅力と課題を観光という一つの事象の表裏として説明します |
| 人口の現在地 | 住民基本台帳の人口は令和8年1月1日現在で1,369,750人。市は「結婚・子育て期」の近隣府県への転出と「就職期」の関東・大阪への転出を課題に挙げている | 減少そのものを嘆くのではなく、どの年代がどこへ動いているかまで踏み込むと、対策の話へつなげられます |
| 市の最上位計画 | 令和7年12月に市会で全会一致により議決された「京都基本構想」(2026年〜2050年)。1978年の世界文化自由都市宣言を都市の理念に置き、3つの価値と9つのめざすまちの将来像で構成される | 9つの将来像から志望分野に近い1つを選び、そこに載る具体的な事業まで結び付けて話します |
| 防災・危機管理 | 第4次地震被害想定では、花折断層による地震(マグニチュード7.5)で市街地の広範な地域が震度6強、一部で震度7。冬18時のケースで死者4,100人、発災直後の避難者20万6,000人と見込まれる | 数字を挙げたうえで、木造家屋が密集する歴史的な市街地という京都市固有の条件に触れ、自分にできる備えまで続けます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
受験案内が掲げる求める人物像は一文ですが、面接で確かめられるのは、その一文にあたる行動を実際にとってきたかどうかです。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 公務への責任感と誇り | 役割を引き受けたあと、途中で投げ出さずに担い切ったか。うまくいかない場面での振る舞いまで確かめられる | 役割を任された場面を1つ選び、面倒だと感じた瞬間に何を優先したのかまで言えるようにしておく |
| 京都のため、自ら考え行動する | 指示を待たずに動いた経験と、なぜその状況で動く必要があると判断したのかという理由 | 申込時に入力する「これまでに力を入れて取り組んだことについて」と同じ題材を使い、判断の理由を書き足しておく |
| チャレンジする姿勢 | 前例のないことや不慣れなことに手を出した経験と、その途中でどう軌道修正したか | 京都市の作文試験が問題意識や困難への対処を問うてきたことを踏まえ、途中でつまずいた過程まで話せるようにしておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
京都市は個別面接が2回、京都方式では3回ある分、同じ題材を別の面接官から角度を変えて問われる前提で備えておく必要があります。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分が受ける区分の受験案内を読み、試験の流れと合格の決まり方を確認する。一般方式・京都方式・中級で、面接の回数も最終合格の決め方も違います
- 申込時に入力する自己PRと志望動機、一般事務職(行政)で追加される2項目を、それぞれ300字で下書きする。ここに書いた内容が面接の資料になります
- 下書きに使った経験を掘り下げる。何に困り、何を選び、その結果何が変わったのかを、300字に収まらない部分まで思い出しておく
- 7つのカテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い京都市の事実を2つか3つ選んで、自分の言葉で説明できるようにする。京都方式を受ける方は、この整理がそのまま課題作文の材料になります
- 声に出して練習し、答えるたびに深掘りされそうな箇所を書き足していく
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は他の受験者と差がつく工程ですが、順番としては後ろです。時間が足りないときは、ステップ2とステップ3、つまり申込時に自分で書いた4項目と、その掘り下げを先に仕上げてください。面接官の手元にあるのはその4項目であり、市の知識をいくら増やしても、そこを掘られたときの答えにはなりません。
ただし京都方式は、市政についての課題作文が最終合格の判定材料に入ります。この方式で受ける方に限っては、ステップ5を後回しにできません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、京都市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
京都市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
京都市の試験は、受ける区分によって面接の重みが変わります。上級一般事務職〈一般方式〉と中級一般事務職(行政)は個別面接が2回、上級<京都方式>は3回で、いずれも集団形式は課されません。
そして最終合格を決めるのは、一般方式なら作文試験と第2次口述試験、京都方式なら課題作文と第3次口述試験の成績です。筆記でどれだけ積み上げても、最後に残るのは、あなたが書いた文章と、面接官の前で話した内容だけということになります。
「京都のため、自ら考え行動し、チャレンジする」という受験案内の一文に、自分のこれまでの経験でどう応えるか。準備の時間は、そこに集めてください。