相馬地方広域消防本部を受験する方に向けて、面接で問われる前提となる組織研究の材料(本部の特徴基礎データ管轄地域の特性消防課題重点方針)と、面接本番の流れ想定される質問評価の観点を、1ページに整理しました。

相馬地方広域消防本部の面接では、「なぜ相馬地方広域消防本部を志望するのか」「なぜ警察官や自衛官ではなく消防官なのか」「自分の強みや経験を消防の仕事でどう生かしたいか」といった質問が想定されます。

4つの市町村を一つの組合が管轄しているという体制を理解したうえで臨むかどうかで、回答の説得力は大きく変わってきます。

この記事の内容を土台に、自分の強みや関心と相馬地方広域消防本部の仕事の接点を考え、面接での回答づくりに役立ててください。

第1部|組織研究編

相馬地方広域消防本部の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは相馬地方広域消防本部の全体像を押さえておきましょう。

  • 相馬地方広域消防本部は、相馬市・南相馬市・新地町・飯舘村の4市町村が一部事務組合(相馬地方広域市町村圏組合)をつくって運営している消防本部。4つの自治体の消防事務を、一つの組合が共同で担っている。
  • 消防本部は南相馬市に置かれ、相馬消防署・南相馬消防署のほか、小高分署・鹿島分署・新地分署・飯舘分署の4分署で4市町村をカバーする
  • 採用試験は相馬地方広域市町村圏組合が組合として直接実施する。受験案内の名義は「相馬地方広域市町村圏組合職員採用候補者試験委員会」で、市町村ごとに個別の試験を行う仕組みではない。
  • 消防吏員数は150人(うち女性2人)で、火災51件・救急4,858件・救助58件の出動がある(令和7年4月1日現在の吏員数・令和6年中の出動件数、総務省消防庁の公表データによる)。
  • 試験職種は「消防職」で、採用予定人員は2名程度(男女は問わない)。第1次試験は教養試験・体力試験・適性検査、第2次試験は作文試験・個別面接・身体検査で構成される。
  • 受験資格は平成11年4月2日から平成21年4月1日までに生まれた方(学歴不問)。採用後に緊急時速やかに参集できる場所に居住できることが条件で、相馬地方管内であれば満たす。

相馬地方広域消防本部の基礎データ

面接に向けた組織研究では、統計値を大量に暗記する必要はありませんが、「相馬地方広域消防本部の大体のスケール感」をつかんでおくことは重要です。

ここでは、構成市町村の顔ぶれ、管内人口、職員体制、出動件数、試験の骨格など、本部の規模と特色を説明できる項目を優先的に整理しました。

項目内容
設置形態一部事務組合(相馬地方広域市町村圏組合)
構成市町村(=管轄)相馬市・南相馬市・新地町・飯舘村(4市町村)
管内人口約98,164人(構成4市町村の合算・令和8年1月1日現在の住民基本台帳)
消防吏員数(うち女性)150人(うち女性2人)
出動件数(火災/救急/救助)51件/4,858件/58件
試験の内容教養試験・体力試験・適性検査(第1次)、作文試験・個別面接・身体検査(第2次)

管内人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在による構成4市町村の合算です。消防吏員数は令和7年4月1日現在、出動件数は令和6年中の値です(出典:女性職員の活躍推進|本部別データ検索)。試験の内容は組合が公表した令和9年度採用分の受験案内にもとづく情報です。

150人という体制と救急需要

150人という職員数と、年間4,858件という救急出動件数を並べると、1人あたり年間30件を超える救急に関わる計算になります。火災の51件を大きく上回る規模で、救急対応が本部の活動の中心を占めていることがわかります。

あわせて頭に入れておきたいのが、構成4市町村の人口規模の落差です。管内人口の合算は約98,164人ですが、最も人口の多い南相馬市(約54,791人)が半数以上を占め、飯舘村(約4,345人)とは10倍以上の開きがあります。

規模の異なる4つの自治体を1つの組合が支えているという構図を理解しておくと、面接での説明に厚みが出ます。試験職種が「消防職」の1区分にまとまっているのも、こうした規模の組合ならではの体制です。

「相馬地方広域消防本部は、相馬市と南相馬市を中心に、新地町と飯舘村を含む4つの市町村で構成されているようです。管内人口には大きな差があり、それぞれの地域の実情に合わせた対応力が求められていると感じています」

管轄地域の特性と災害リスク

管轄地域の全体像

  • 相馬地方広域市町村圏組合の管轄は、相馬市・南相馬市・新地町・飯舘村の4市町村。4市町村の人口を合わせると約98,164人で、南相馬市が管内人口の過半数を占める。
  • 高齢化率は飯舘村47.5%・南相馬市38.3%・新地町36.4%・相馬市33.9%と、4市町村ともに3割を超える水準にある(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。
  • 消防本部の所在地は南相馬市で、相馬消防署・南相馬消防署の2つの消防署と、小高分署・鹿島分署・新地分署・飯舘分署の4つの分署が管内をカバーする。
  • 管内は太平洋に面した沿岸部と阿武隈高地側の内陸部をあわせ持つ。消防本部は令和7年版消防年報の「圏域の特色」で、南相馬市の沿岸地域にロボットの研究施設が造られ、世界各地から企業が参入していることを復旧復興の進展として記述している。

東日本大震災の記録が示す初動と受援

相馬地方広域消防本部は、自ら「東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)中間報告書」を作成し公表しています。

同報告書は地震の規模をマグニチュード9.0、震度を新地町6強、相馬市・南相馬市・飯舘村6弱と記録し、初動を14時48分の地震災害消防対策本部設置、14時49分の大津波警報発令、15時40分の津波第1波到達確認、16時30分の緊急消防援助隊要請という時系列で示しています

3月11日当日の活動は、火災出動5件、救急出場25件、救助出動19件、油流出対応1件と行方不明者の捜索でした。職員の参集は同日が147名中129名、3月13日には147名中144名です。

受援の規模は、緊急消防援助隊が10都県で延べ725隊2,652名、消防防災ヘリコプターが14府県14機、福島県内の応援隊(救急隊)が7本部で延べ68隊214名でした。消防本部は水道の断水と電話回線の不通により相馬消防署へ機能を移し、その後は緊急消防援助隊との協議で鹿島分署へ対策本部を移して活動を続けています(出典:東日本大震災中間報告書|相馬地方広域消防本部

本部はこの経験を平成23年10月に消防活動の検証として消防長に答申し、同年12月に相馬地方地震対策計画を見直しました。

以後は毎年3月に、この計画に基づく地震対策訓練が続けられています

本部と南相馬消防署が入る南相馬市消防・防災センターは、震災からの教訓を後世に残すため、市の災害対応の記録や防災情報を展示する施設です。

原子力災害への対応と管内の線引き

総務省消防庁は令和5年版消防白書で、相馬地方広域消防本部を双葉地方広域市町村圏組合消防本部とともに名指しし、放射性物質による汚染や、地震等による消防施設・水利の被災といった厳しい条件のもとで消防活動を継続してきた本部として記述しています(出典:東日本大震災への対応|令和5年版 消防白書

中間報告書にも、職員全員へのポケット線量計の携帯と2か月間の測定、安定ヨウ素剤の服用、3月17日から22日にかけて屋内退避区域や周辺地域の病院・施設から入院患者らを緊急消防援助隊・県内消防応援隊・自衛隊・消防防災ヘリコプターで搬送し、管外へ搬送する際は放射線スクリーニングを行ったうえで送り出したことが記録されています。

ここで正確に押さえておきたいのが、管内の線引きです。

原子力災害対策重点区域(UPZ)に含まれるのは管轄4市町村のうち南相馬市と飯舘村で、相馬市と新地町は重点区域の一覧に入っていません

管内が一律に同じ位置づけではないという点は、面接で取り違えたくないところです。

体制の面では、令和8年4月1日現在の消防車両配置状況に「原子力災害避難指示区域消防活動費交付金事業」と記載された車両が計10台あり、消防本部の災害救援車、ブーム付多目的消防ポンプ自動車、特殊災害対応消防支援車、高規格救急自動車、小高・鹿島・飯舘の各分署の配備分などが含まれます。

通信施設にも原子力災害緊急時連絡網システムと原子力災害対応衛星携帯電話が整備されています(令和7年版消防年報)。職員教養でも、平成24年に放射線と健康障害をテーマとする研修の記録が残ります。

津波浸水想定にみる浸水割合の高さ

福島県が令和4年8月31日に設定した津波浸水想定では、相馬地方沿岸の最大遡上高は内閣府モデルで相馬海岸②23.4m、原町海岸・小高海岸23.3m、鹿島海岸22.8m、新地海岸・相馬海岸①19.6m(いずれもT.P.+m)、第一波の到達時間は同じモデルで44分から60分とされています。

市町別の浸水面積(最大包絡値)は新地町970.9ha(町面積の20.9%)、相馬市2,765.5ha(14.0%)、南相馬市4,418.0ha(11.1%)で、県全体の5.6%と比べても高い部類に入ります(出典:津波浸水想定|福島県

上記の浸水面積は、内閣府モデル(東北地方太平洋沖地震津波・Mw9.0)、茨城県モデル(房総沖を波源とする津波・Mw8.4)、日本海溝モデル、千島海溝モデルという4つの計算結果の最大浸水範囲を重ね合わせた最大包絡値です。県が設定した想定であり、実際の浸水実績ではありません。条件とセットで扱ってください。

広域応援体制と採用後の研修制度

相馬地方広域消防本部の採用者は、採用後に福島県消防学校へ約6か月間入校し、消防法や危険物の基礎知識の習得、救助訓練や消防器具を取り扱う訓練などを行います。

あわせて、全国の消防本部の約99%にあたる718本部が緊急消防援助隊に登録しており(令和6年4月1日現在)、大規模な災害の際には応援出動と応援の受け入れの両面で、広域の応援体制の一翼を担うことになります(出典:緊急消防援助隊|消防白書

採用後の研修制度と、全国的な広域応援の仕組みという2つの体制を理解しておくことが、面接での組織理解を示すうえで役立ちます。

相馬地方の主な消防課題

ここまでの数字と地域の姿を踏まえると、相馬地方広域消防本部が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「消防の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

高齢化の進行と救急需要

救急出動の件数は全国的に増え続けており、令和6年中には771万8,380件という過去最多の数字を記録しました(出典:令和7年版 救急・救助の現況。令和6年中の搬送人員のうち、65歳以上が占める割合は63.3%です。

相馬地方では飯舘村の高齢化率が47.5%に達しており、150人という体制でこの需要をどこまで受け止められるかは、年を追うごとに重い問いになっていきます。

原子力災害を含む多様な災害への備え

前章で見たとおり、管内には原子力災害対策重点区域に含まれる南相馬市と飯舘村があり、交付金による車両10台や原子力災害対応の通信施設が整えられています。加えて、津波浸水想定の浸水割合は新地町20.9%、相馬市14.0%、南相馬市11.1%と、県全体の5.6%を上回ります。

毎年3月の地震対策訓練や、福島県が平成25年から毎年実施している原子力防災訓練は、こうした条件に備えるための取組です。日々の救急や火災への対応と並行して、この幅の広い備えを150人の体制で維持し続けることが課題です。

4市町村・6拠点体制の維持

相馬地方広域消防本部は、2つの消防署と4つの分署という6つの拠点で、4市町村それぞれに応える体制をとっています。

拠点の数が多い分、どの拠点に何人を配置し、拠点間の応援をどう組み立てるかという判断が、組合全体の運営に直結します。

150人という職員数で6つの拠点を維持し、どの市町村からの通報にも均質な水準で応えられる体制を保つことが、組織運営における中心的な課題です。

予防・住宅防火への取組

住宅火災の死者(放火自殺者等を除く)に占める65歳以上の割合は74.5%にのぼります(令和5年中762人・出典:消防白書)。

飯舘村のように高齢化率の高い自治体を管内に抱える以上、住宅用火災警報器の普及や高齢者世帯への防火指導は欠かせない活動です。

火災の出動件数自体は年間51件と救急に比べて少ないものの、一件の重さを考えれば、日頃の予防活動が効いてきます

人材確保と女性消防吏員の活躍

消防吏員150人のうち、女性は2人です。全国の消防吏員に占める女性の割合は約3.8%(168,230人中6,386人・令和7年4月1日現在)で、国は「令和8年度当初までに5%」という目標を掲げています(出典:女性消防吏員の活躍推進|消防庁

相馬地方広域消防本部の採用試験は「採用予定人員2名程度(男女を問いません)」と明記されており、性別を問わず門戸を開いているという姿勢も押さえておきたい事実です。

重点方針|本部の基本姿勢と全国の消防行政の動向

相馬地方広域消防本部は、年度ごとの基本姿勢を公式サイトに掲げています。令和8年度は「圏域の『安心・安全』を全員の力で更なる 高みへ」です。

第1部で見た震災時の受援の記録も、原子力災害への備えも、4市町村の消防を一つの組合で担うという体制の上に積み重ねられてきました。年度ごとの重点計画にあたる文書までは公表されていませんので、この基本姿勢と、消防庁が全国に向けて示している消防行政の動向の2つを、志望動機を組み立てる足場にするとよいでしょう。

全国的に進む主な取組

取組内容
女性職員の活躍推進令和7年4月1日現在の全国の消防吏員は168,230人。うち女性は6,386人で約3.8%にとどまり、国は令和8年度当初までに5%とする目標を掲げている
広域応援体制の強化令和6年4月1日現在、全国の消防本部の約99%にあたる718本部から6,661隊が緊急消防援助隊に登録済み。管内で完結しない備えの発想が全国の消防本部に共通して求められている
消防のデジタル化・省力化限られた人員を補う手段として、ドローンの活用など省力化に向けた取組が全国の消防本部で広がっている

全国的な取組の名前を覚えるだけでは、面接の場では説得力を持ちません。その取組が今なぜ求められているのかを理解し、相馬地方の実情と結びつけて話せることが評価につながります。自分がその一端をどう担えるかまで考えておくと、話に厚みが出ます。

POINT|基本姿勢を自分の言葉に置き換える

基本姿勢の文言をそのまま繰り返しても、面接では伝わりません。「全員の力で」という言葉が、どの場面のどんな動きを指すのかを自分なりに考え、そこに自分の経験を重ねて語ると、話がまとまりやすくなります。

悪い例「体を動かすことが好きなので、消防官に向いていると思います」

改善例「体力面では、体力試験の採点基準を確認しながら日々鍛えているところです。その上で、相馬地方広域消防本部が震災のときに全国から応援を受け入れた記録を読み、応援を受ける側の段取りを整える仕事があると知りました。作文と面接の両方で、自分の考えをきちんと言葉にできるよう準備していきたいです」

あわせて確認したい公式資料

下記の資料は、手続きを確認するためのものと、志望動機を固めるための材料になるものとに分けられます。後者にあたる資料は繰り返し読み込み、自分の考えとしてその場で語れるよう仕上げておきましょう。

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、相馬地方広域消防本部専用の面接想定問答集をご用意しています。相馬地方広域消防本部の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

相馬地方広域消防本部の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

相馬地方広域消防本部の面接の概要

ここからは、相馬地方広域消防本部の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

確認事項|第1次試験から体力試験が課されます

令和9年度採用分の受験案内によると、試験は第1次試験(教養試験・体力試験・適性検査)と第2次試験(作文試験・個別面接・身体検査)の6種目で構成されます。個別面接は「主として人物についての口述試験」と記載されています。試験の構成は年度によって変わる可能性があるため、受験の際は必ず志望年度の最新の受験案内でご確認ください。

相馬地方広域消防本部の面接の流れ

体力試験は第1次試験で実施され、種目は懸垂(女性は斜め懸垂)・腕立て伏せ・上体起こし・275m疾走の4種目です。この本部の特徴は、体力試験の採点基準を種目別に公表している点にあります。

種目男性の得点幅女性の得点幅
懸垂(女性は斜め懸垂)1回=20点 〜 18回=100点5回=10点 〜 50回=100点
腕立て伏せ15回=4点 〜 55回=100点10回=4点 〜 45回=100点
上体起こし25回=1点 〜 75回=100点15回=1点 〜 65回=100点
275m疾走66秒以内=5点 〜 47秒以内=100点69秒以内=5点 〜 50秒以内=100点

体力試験は上記4種目の総合得点で評価されます(令和9年度採用分の受験案内にもとづく)。試験の構成・基準は年度によって異なる可能性があります。受験の際は、必ず志望年度の最新の受験案内でご確認ください。

項目内容(令和9年度採用分)
試験の構成教養試験・体力試験・適性検査(第1次)、作文試験・個別面接・身体検査(第2次)
面接の種類個別面接(受験案内の定義は「主として人物についての口述試験」)
受験資格平成11年4月2日から平成21年4月1日までに生まれた方(学歴不問)
必要資格普通自動車運転免許(AT限定を除く)
体格的な制限受験案内のQ&Aで「特にありません」と明記。視力等の身体基準の記載はなし

提出書類は申込用紙兼受験票(本人の写真を貼付)と、指定の履歴書(自筆・写真貼付)1通です。配属先は消防本部と相馬消防署、南相馬消防署、小高分署、鹿島分署、新地分署、飯舘分署の7か所です。

合格者は採用候補者名簿に高得点順で記載されますが、欠員等の関係で名簿登載者全員が採用されるとは限らない点にも留意しておきましょう。勤務形態は交替制勤務(隔日勤務)と毎日勤務の2種類があり、交替制勤務は午前8時30分から翌日の午前8時30分までの24時間勤務です。

相馬地方広域消防本部が求める人材

相馬地方広域市町村圏組合の受験案内・公式サイトを見る限り、「求める人物像」を独自の文言で掲げている記載はありません(2026年8月時点)。かわりに参考になるのが、試験そのものの組み立てです。

体力試験の採点基準まで種目別に示しながら、個別面接では作文とあわせて人物面をじっくり見極める設計になっていることから、基礎学力・体力の両面での備えに加え、自分の考えを文章と言葉の両方で伝える力までが合否を左右する構成になっていると見ておくのが妥当です。体格的な制限を設けていないという事実も、多様な人材を受け入れる姿勢のあらわれだといえます。

あわせて、第1部で見た基本姿勢の「全員の力で」という言葉と、原子力災害まで含む備えの幅を重ねると、求められる資質の見当がつきます。震災時の受援も、県の原子力防災訓練も、他機関と組んで動く場面ばかりです。使命感を言葉で述べるだけでなく、チームの中で役割を果たした経験と、必要な知識を自分から学び直した経験を用意しておくと、話に厚みが出ます。

試験の種類が多岐にわたる分、自己PRも一言の宣言で終わらせず、その強みを発揮した場面と、そこで周囲がどう動いたかまで語れるようにしておきましょう。体力試験の得点幅が明確になっている分、体力面の準備状況を数字で説明できる状態にしておくことも、他の受験者との違いを示す材料になります。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。相馬地方広域消防本部の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日は会場まで、どんな経路でいらっしゃいましたか?緊張をほぐす何気ない会話に、素の受け答えと落ち着きが表れます
② 動機・志望なぜ消防官を、それも相馬地方広域消防本部を志望するのですか?消防官という仕事とこの地域を、自分の言葉で選べているか
③ 自己理解自分ではどんなところが弱みだと思いますか?自己分析の深さと、弱みとの向き合い方から人柄がうかがえます
④ 経験・行動大きな壁にぶつかった経験と、そのときどう行動したかを教えてください過去に実際に取った行動の事実から、現場対応力を確かめられます
⑤ 学業・経歴学校生活やアルバイトで、力を入れて取り組んだことは何ですか?経験の中身と、そこでの役割・行動を具体的に語れるか
⑥ 適性・将来体力試験の4種目のうち、得意なものと苦手なものは何ですか?交替制勤務と現場活動を続けるための体力・生活習慣・覚悟
⑦ 公共性・社会性消防官(公務員)に最も必要な資質は何だと思いますか?仕事の公共性への理解と、社会の出来事への当事者意識

ここまでの7つはどの消防本部でも問われる共通部分です。相馬地方を選んだ理由に踏み込めるかどうかは、次の固有質問で見えてきます。

合否を分けるのは相馬地方に固有の質問

「消防官を選んだのはなぜですか。警察官や自衛官という道もあったはずです」
「なぜ相馬地方広域消防本部を志望するのですか?」

1つ目は消防という職業そのものの理解を、2つ目は4市町村にまたがる管轄をどこまで理解しているかを確かめる質問です。

体力・教養・適性の3種目に加え、作文と個別面接で人物面を確かめる試験構成である分、それぞれの場面で語る内容の一貫性が問われます。

面接で使いやすい「相馬地方の事実」を絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい相馬地方の事実答え方のヒント
4市町村がつくる組合という仕組み相馬市・南相馬市・新地町・飯舘村の4市町村が共同で消防を運営(第1部1章)人口規模の違う4つの自治体を一つの体制で支えているという理解を、志望理由につなげて話せると差がつきます
体力試験の採点基準の公表懸垂・腕立て伏せ・上体起こし・275m疾走の4種目について、種目別の得点幅が示されている(第2部1章)数値目標が明確な分、日頃の準備の積み重ねを具体的な数字とともに語れると印象に残ります
高齢化率の高さ飯舘村47.5%など、4市町村ともに3割を超える高齢化率(第1部3・4章)数字の紹介で終わらせず、高齢化が進む地域を支える消防吏員として自分が何をしたいのかまで話すと印象に残ります
原子力災害への備えと管内の線引き原子力災害対策重点区域に含まれるのは南相馬市と飯舘村で、交付金による車両10台などが整えられている(第1部3章)管内が一律ではないという線引きを正確に押さえたうえで、その備えが何のためにあるのかを自分の言葉で語る
救急需要年間4,858件の救急出動があり、吏員1人あたりの負担も相応に大きい(第1部2・4章)件数を知っているだけでなく、限られた体制で対応する工夫まで自分の言葉で語れると説得力が増します
人材確保・女性吏員消防吏員150人のうち女性は2人。採用予定人員は「男女を問いません」と明記されている(第1部4章)性別を問わず門戸が開かれている点への理解を、自分の考えとして一言添えられると印象に残ります

使い方のコツは、6つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 消防官としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

相馬地方広域市町村圏組合は、体力試験の採点基準は公表していますが、教養試験・作文試験・個別面接の配点や合格基準は明らかにしていません。

体力試験の基準を明確にしながら、作文と個別面接で人物面を重ねて確かめるという構成から言えるのは、数値で測れる力と、数値では測れない人柄や考え方の両方が見られる試験だという点です。

過去の行動事実から入庁後の再現性を測るコンピテンシー評価を用いると組合が公表しているわけではありませんが、2つの場面で人物を確かめる構成である以上、行動の事実を軸にして語る準備は的を外しません

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
受け答えの一貫性作文で書いた考えと、個別面接で話す内容の間に、ぶれがないか回答を丸暗記するのではなく、経験してきた事実そのものを整理しておく
体力面の備え体力試験の4種目に向けて、日頃からどう体を鍛えているか公表されている得点幅を参考に、自分の現在地と目標をはっきりさせておく
相手への配慮と柔軟さ相手の年齢や立場を見て、自分の関わり方を変えた経験があるかアルバイトや部活動の中で、相手に応じて言葉遣いや接し方を変えた経験を思い出しておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新の受験案内を読み、試験職種と提出書類(申込用紙兼受験票・指定の履歴書)を確認する
  2. これまでの経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学業から、周囲と協力した具体例、自分から判断して動いた具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。体力試験の4種目に向けた実技の練習と、作文の練習も並行して進める

優先順位に注意

ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を消防の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で相馬地方の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、相馬地方広域消防本部専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

相馬地方広域消防本部の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。体力試験の得点幅が種目別に公表されている分、面接でも同じように、自分の考えを具体的な言葉に落とし込む準備を進めておくと、当日の安心感につながります。

相馬地方広域消防本部の想定問答集を見る

さいごに

相馬地方広域消防本部は、相馬市・南相馬市・新地町・飯舘村という4つの市町村が共同で支える消防本部です。試験は教養試験・体力試験・適性検査に続き、作文試験・個別面接・身体検査という第2次試験が置かれ、体力試験では種目別の採点基準まで公表されているという特徴があります。

試験の詳しい内容は毎年度見直される可能性がありますので、出願の前に相馬地方広域市町村圏組合の受験案内を確かめてください。

そのうえで、震災時に全国からの応援を受け入れた記録や、原子力災害対策重点区域を管内に含む本部としての備えまで押さえておくと、志望動機に自分の言葉が入ります。「圏域の『安心・安全』を全員の力で更なる 高みへ」という基本姿勢のもと、4つの市町村を守る一員として、皆さまが力を発揮される日が来ることを願っています。