本記事では、南相馬市職員採用試験の面接対策で必要な、南相馬市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
南相馬市役所の面接試験では、「なぜ南相馬市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。令和8年度の高校卒程度【通常枠】では第二次試験と第三次試験の二度にわたって個人面接が課され、いずれも1人30分程度と案内されていますので、話す準備にあてる時間を早めに確保しておきたいところです。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と南相馬市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
南相馬市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは南相馬市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 人口は54,791人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)、面積は398.58km²。福島県の県土13,783.90km²のおよそ2.9%、県人口のおよそ3.2%にあたる。
- 人口密度は137人/km²。県全体の平均およそ123人/km²をわずかに上回るが、県庁所在地の福島市(341人/km²)や郡山市(409人/km²)とは大きな開きがある。
- 隣り合うのは相馬市、相馬郡飯舘村、双葉郡浪江町の3自治体だけ。県内の市のなかでも、接する自治体の数が少ない部類にあたる。
- 市役所は原町区本町二丁目にあり、市の花はさくら、市の木はけやきと定められている。
- 令和8年度の受験案内は冒頭で「震災と原発事故から16年目を迎え、より長期的な視点を見据えた創造的復興への取り組みを推進しています」と述べ、「こうした取り組みにともに挑戦できる方を募集します」と結んでいる。
- 職員採用試験を実施するのは人事委員会ではなく南相馬市職員試験委員会(市役所総務部総務課内)である。
- 市は職員募集パンフレット「若武者求ム。」を、公式サイトの職員採用情報ページで公開している。
- 高校卒程度には【通常枠】と【学校推薦枠】の2つがあり、それぞれ別の受験案内が公表されている。
- 申込は市ホームページからの電子申請のみで、受験案内に「電子申請以外は受け付けません」と明記されている。
南相馬市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「南相馬市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口規模、市域の広さ、隣り合う自治体など、南相馬市の位置づけを説明できる項目を整理しました。南相馬市単独の市民経済計算や財政指標は、当研究会では確認できていないため、比較の物差しとして福島県全体の数値もあわせて示します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 54,791人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 総面積 | 398.58km²(福島県のおよそ2.9%) |
| 人口密度 | 137人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 市役所所在地 | 福島県南相馬市原町区本町二丁目27番地 |
| 隣接自治体 | 相馬市、相馬郡飯舘村、双葉郡浪江町(3自治体) |
| 市の花・市の木 | さくら/けやき |
| (参考)福島県の総人口 | 1,699,510人(令和8年6月1日現在の推計) |
| (参考)福島県の総面積 | 13,783.90km²(北海道、岩手県に次いで全国3番目) |
| (参考)福島県の高齢化率 | 31.7%(2020年国勢調査ベース) |
南相馬市の面積・所在地・隣接自治体・市の花・市の木は、自治体の公表値による数値で、市公式の推計人口との照合は済んでいません。実際の受験や提出書類で数値を用いる際は、市公式サイトの最新値をご確認ください。福島県の総人口は県の現住人口調査月報(令和8年6月1日現在)、総面積と全国順位は県公式「県のすがた」、高齢化率は福島県人口ビジョンに示された2020年国勢調査ベースの値です。県の平均人口密度と、県土・県人口に占める市の比率は、これらの公表値から当研究会が算出しました。市と県で数値の時点が異なるため、おおよその水準感として捉えてください。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。
数字から考えられる市政課題
南相馬市の規模感は、人口密度を県内で並べてみるとつかめます。福島県全体の1,699,510人と13,783.90km²から計算すると県平均はおよそ123人/km²ですから、137人/km²の南相馬市はこれをわずかに上回ります。
ところが福島市の341人/km²、郡山市の409人/km²と並べれば3分の1から4割ほどの水準で、隣の相馬市(160人/km²)も下回ります。
県の平均は超えているのに、県内の主要な市と比べれば人が薄く広がっているという中間の位置づけが、この市の地理的な前提です。(出典:福島県現住人口調査月報|令和8年6月1日現在)
もう一つの前提が、県全体の人口の動きです。福島県の人口は1998年の約214万人をピークに減少が続き、2024年10月1日現在の推計人口は約174万人まで下がりました。
26年間でおよそ40万人が減り、ピーク時の約8割になった計算です。令和8年6月の1か月だけを見ても、当月の人口増減は1,503人の減で、内訳は自然減が1,409人、社会減が94人でした。
減少の大半が自然減だという点に、この県の局面が表れています。
高齢化率は2020年の国勢調査ベースで31.7%。1980年の10.5%、2010年の24.9%から一貫して上がってきました。
県の推計では、現状の趨勢が続けば総人口は2040年に145万人、2070年には85万人まで減るとされ、これに対して県は2040年に150万人程度の維持を人口目標として掲げています。県全体の見通しのなかに市を置いてみると、答えはたとえば次のようになります。(出典:福島県人口ビジョン|令和6年12月更新)
南相馬市の経済・産業
福島県の経済規模と南相馬市の位置
先に触れたとおり、南相馬市単独の市民経済計算は確認できていません。ここでは市が属する福島県全体の姿を土台に、地域経済を整理します。
- 福島県の県内総生産は名目8兆3,950億円(令和5年度)。経済成長率は名目6.7%・実質5.4%。
- 1人当たり県民所得は321万5千円(令和5年度)。
- 令和5年度は、第1次産業が農業等の増加、第2次産業が製造業の増加、第3次産業が電気・ガス・水道・廃棄物処理業等の増加により、各産業とも県内総生産が増えた。
つまり、「8兆円規模の県経済が、3つの産業分野そろって伸びた局面にある」という前提を押さえておくと、産業振興や雇用の話題に対応しやすくなります。(出典:福島県民経済計算|令和5年度)
ここで気をつけたいのは、これらがすべて県の数字だということです。県全体の数字を見るのは、自分が働く場所がどれくらいの経済のなかに置かれているかを見積もるためだと考えてください。
隣接する浪江町の研究拠点と、国家プロジェクトの背景
南相馬市が接する3自治体のひとつ、双葉郡浪江町には、令和5年4月に福島国際研究教育機構(F-REI、エフレイ)が設立されました。
福島をはじめ東北の復興と、日本の科学技術力・産業競争力の強化に貢献する「創造的復興」の中核拠点と位置づけられた国の法人で、研究分野はロボット、農林水産業、エネルギー、放射線科学・創薬医療と放射線の産業利用、原子力災害に関するデータや知見の集積・発信の5つです。(出典:福島国際研究教育機構の5つの研究分野|令和5年4月設立)
その背景にあるのが福島イノベーション・コースト構想です。東日本大震災・原子力災害で失われた浜通り地域等15市町村の産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトと説明されています。
南相馬市の受験案内が掲げる「創造的復興」という言葉は、こうした県と国の取り組みと同じ語彙の上に置かれている、と読むことができます。(出典:福島イノベーション・コースト構想|ふくしま復興情報ポータルサイト)
面接でこの分野に触れるときの注意点は一つです。「隣に大きな研究拠点がある」で話を終わらせないこと。
市役所の仕事は研究そのものではなく、そこで暮らす人の届出を受け、税を計算し、道路や施設を保つことです。新しい産業基盤ができたあとに市民の生活側で何が必要になるのか、という順序で考えると、市職員としての言葉になります。
市税の賦課徴収という仕事から見える地域経済
受験案内は、行政事務職の職務内容を「各種施策の企画立案や事業推進、庶務・経理・市税の賦課徴収等の一般行政の事務に従事します。」と説明しています。
ここに市税の賦課徴収が名指しされていることは、地域経済を語るうえで見逃せません。市の収入は、市内で働く人の所得と、事業を営む人の活動から生まれます。
県の経済統計を読むときも、この視点を持っておくと話が具体的になります。県全体の総生産が伸びたという事実は、そのまま南相馬市の税収が伸びたことを意味しません。
市域の経済がどう動いているかは、市の広報紙や決算資料で確かめる必要があります。数字を借りてくるのではなく、確かめに行く姿勢のほうが、面接では評価されます。
南相馬市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、南相馬市が向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
「創造的復興」という長い時間軸
南相馬市の課題を語るとき、最初に置くべきなのは市自身の言葉です。令和8年度の受験案内は募集の冒頭で、市が「震災と原発事故から16年目」を迎え、「より長期的な視点を見据えた創造的復興」に取り組んでいると述べ、ともに挑戦できる人を募っています。
震災と原発事故は、この市では過ぎ去った出来事ではなく、採用の入口でいまも語られている現在進行形の課題です。
受験生として気をつけたいのは、扱い方です。過度に感情的な物言いも、逆に一言も触れないという構えも、どちらも不自然になります。
市が公表している言葉に沿って、「16年目」という時間の長さと、「より長期的な視点」という表現をそのまま受け止めるところから始めてください。
自分がその途中から加わる立場であることを踏まえた言い方であれば、誠実さは伝わります。
人口減少と高齢化が同時に進む局面
基礎データの章で見たとおり、福島県の人口は1998年の約214万人から2024年には約174万人まで落ちました。高齢化率は1980年の10.5%、2010年の24.9%、2020年の31.7%と一貫して上がり、県の推計では趨勢が続けば2070年に85万人まで減るとされています。
県人口ビジョンはこの動きが引き起こす問題として、地域経済では人手不足や消費市場の縮小による経済活力の低下、地域社会では地域コミュニティや社会保障など様々な分野で従来の水準を保つことが難しくなることを挙げています。
必要とされる行政サービスの量と、それを支える職員や財源の見通しが、逆の方向へ動きはじめる局面だということです。
南相馬市で仕事を語るなら、増やす話だけでなく、限られた人手をどこに厚く置くかという判断まで視野に入れておきましょう。
過疎地域という県の構造
福島県では、過疎地域の高齢化率が39.2%(2020年)と、県全体の31.7%を7.5ポイント上回っています。
過疎地域は県人口の13.9%にあたる一方、県土の面積では54.9%を占めます。人口の1割強が、県土の半分以上に散らばって暮らしている計算です。
県人口ビジョンは、過疎化の進行によって買い物・生活交通・医療・子育て・教育といった日常生活に欠かせないサービスの維持が難しくなること、町内会や自治会、消防団などの共助の機能や小中学校の維持が困難になることを課題として認識しています。
南相馬市の市域398.58km²は、隣の相馬市(197.79km²)のおよそ2倍にあたります。
そこに54,791人が暮らしているのですから、市役所まで来ること自体に時間がかかる市民がいるという前提から市政を考える必要があります。
地震と津波への備え
福島県は令和元年度から4年度にかけて地震・津波被害想定調査を実施し、福島盆地西縁断層帯を震源とする地震(M7.8)、会津盆地東縁断層帯を震源とする地震(M7.7)、想定東北地方太平洋沖地震(M9.0)、各市町村直下の地震(M7.3)を想定しました。
このうち想定東北地方太平洋沖地震(M9.0)では、県内の死者1,651人、全壊・焼失31,971棟、県内津波の最大遡上高23.5m、1週間後の避難者数155,053人と算出されています。
比較の材料として、同じ調査は東日本大震災の実績も並べています。県内の津波最大波高21.1m、最大震度6強、全壊15,435棟、直接死1,605人。
想定は、この実績の延長線上に置かれた数字です。(出典:福島県地震・津波被害想定調査結果の概要)
ただし、これらはいずれも福島県全体の想定値・実績値であって、南相馬市単独の被害想定ではありません。
面接で防災に触れるときは、その断りを入れたうえで、398.58km²の市域で避難所を開け、被害を把握して回る市職員の側から何ができるかへ話を進めると、地に足のついた説明になります。
復興と通常の市政を同時に回す財政
市単独の財政指標も同じく確認できていませんが、市政が置かれた土台は県の予算からある程度読み取れます。
福島県の令和8年度一般会計当初予算の総額は1兆2,606億円(対前年度比212億円の減)で、このうち復興・創生分として1,970億円が計上されています。
総額の1割強が、いまも復興・創生の名のもとに動いているということです。(出典:福島県一般会計当初予算|令和8年度)
県人口ビジョンは、さらに先の懸念も示しています。高齢化に伴う社会保障関連経費の増加や、老朽化した社会インフラの維持・更新費用の増加によって歳出と歳入の均衡をとることが難しくなり、財政の硬直化が進むおそれがあると指摘しています。
人口減少で職員のなり手が減り、行政サービスの水準を保つことが難しくなるおそれも挙げています。働き手そのものが足りなくなる未来が、県の公式文書に書き込まれています。
面接で新しい事業を提案する形で志望を語るなら、その財源と人手をどこから持ってくるのかという問いが返ってくることを、あらかじめ想定しておきましょう。
南相馬市の重点政策|受験案内が掲げる「創造的復興」
南相馬市の総合計画や重点施策の名称は、市の公式サイトの市政情報のページで最新のものを確かめられます。本記事では、市が受験案内と採用情報ページで公表している言葉と職務の姿から、市政を理解する土台をつくります。
受験案内の冒頭に置かれた市の宣言
令和8年度の受験案内は、募集の冒頭でこう述べています。「市では、震災と原発事故から16年目を迎え、より長期的な視点を見据えた創造的復興への取り組みを推進しています。こうした取り組みにともに挑戦できる方を募集します。」。
「復旧」ではなく「創造的復興」、しかも「より長期的な視点」という言葉が選ばれているところに、市の構えが表れています。(出典:南相馬市職員採用候補者試験受験案内(高校卒程度・通常枠)|令和8年度)
元に戻すのではなく、新しい形をつくる。それを短期の事業としてではなく、長い時間をかけて進める。
この2つの姿勢を採用の入口で明示している自治体は、そう多くありません。志望動機を組み立てるときは、この一文をどう受け止めたかを、自分の経験に接続して語れるようにしておきましょう。
受験案内が示す「南相馬市職員の仕事」
同じ受験案内は、職務内容や採用の条件についても具体的に記載しています。高校卒程度【通常枠】について、公表されている内容を整理すると次のとおりです。
| 項目 | 受験案内・採用案内の記載 |
|---|---|
| 行政事務職の職務内容 | 各種施策の企画立案や事業推進、庶務・経理・市税の賦課徴収等の一般行政の事務に従事します。 |
| 採用予定人員(高校卒程度) | 行政事務2名程度、土木1名程度、電気1名程度、行政事務(学校推薦枠)2名程度 |
| 給料月額 | 行政事務は210,600円(令和8年4月1日現在・高校新卒の場合)。ほかに扶養手当、通勤手当、期末勤勉手当等が支給要件に応じて支給されます |
| 受験資格(年齢) | 平成17年4月2日から平成21年4月1日までに生まれた方。大学(短期大学を除く)を卒業した方、または令和9年3月までに卒業見込みの方は受験できません |
| 採用の流れ | 合格者は職種ごとに作成する任用候補者名簿に高得点順に登載され、そのうちから欠員状況等に応じて採用が決定されます。名簿に登載されても欠員の関係で採用に至らない場合があります。採用期日は原則として令和9年4月1日 |
注目したいのは、行政事務の説明のなかで「各種施策の企画立案や事業推進」と「市税の賦課徴収」が一続きに並んでいるところです。
政策をつくる仕事と、市民一人ひとりのお金に向き合う仕事が、同じ職種の説明に収まっています。採用予定人員も行政事務2名程度ですから、少人数が幅広い分野を担うことが前提になっている、と読めます。
もう一つ、採用の流れの書き方にも目を留めておきましょう。名簿に登載されても採用に至らない場合があると明記されています。
合格が採用と同義ではないという前提は、志望度の高さを語るときの背景として知っておいて損はありません。
県の復興施策という背景
市が「創造的復興」を掲げる一方で、県は令和8年度の一般会計当初予算1兆2,606億円のうち1,970億円を復興・創生分として計上し、浜通り地域等15市町村を対象とする福島イノベーション・コースト構想を進めています。
県が方向と財源の枠組みを定め、市がそれを暮らしの単位まで運ぶ。この役割の違いを押さえておくと、志望理由の輪郭がはっきりします。
県と市の違いは、権限の上下ではなく市民との距離です。県の資料に目を通すのも、覚えるためではなく、南相馬市役所の仕事がどんな流れのなかに置かれているかをつかむためです。
POINT|計画名を言えなくても、面接の準備はできる
計画の名称を覚えることが自治体研究の目的ではありません。①人口54,791人・面積398.58km²・人口密度137人/km²という南相馬市の輪郭を知る → ②受験案内が掲げる「創造的復興」という言葉を、市自身の宣言として受け止める → ③その条件のもとで自分が携わりたい仕事を考える → ④市の公式サイトや広報紙で、実際に動いている取組を確かめる、という順で準備しましょう。
悪い例「南相馬市の復興に貢献したいです」
改善例「受験案内に、震災と原発事故から16年目で、長期的な視点で創造的復興に取り組んでいると書かれていました。私はまず市税や庶務の仕事で、市民の方の手続を正確に進められるようになりたいです。そのうえで、長く時間のかかる取り組みを途中から引き継いでいける職員になれるよう、記録の残し方から覚えていきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
- 南相馬市職員採用候補者試験の受験案内(自分が受ける区分・年度のもの。高校卒程度は【通常枠】と【学校推薦枠】で別に公表されます)
- 南相馬市の職員採用情報ページ(職員募集パンフレット「若武者求ム。」もここから確認できます)
- 電子申請の受付先であるパブリックコネクトの「南相馬市役所」ページ(会員登録と顔写真データの登録が必要です)
- 南相馬市公式サイトの市政情報・広報紙・各種計画のページ
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、南相馬市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。南相馬市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
南相馬市役所の面接の概要
ここからは、南相馬市役所の採用試験の構成と、面接で問われやすい質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
南相馬市役所の試験の流れ(高校卒程度【通常枠】)
令和8年度の高校卒程度【通常枠】の受験案内は、試験を第一次・第二次・第三次の三段階と定めています。
特徴が出ているのは面接の置き方で、第二次と第三次の二度にわたって「個人面接」が課され、いずれも「1人30分程度の個別面接」と明記されています。
第一次試験の試験種目はSPI試験のみで、教養試験・専門試験の記載はありません。
| 項目 | 内容(令和8年度・高校卒程度【通常枠】) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第一次試験・第二次試験・第三次試験の三段階 |
| 第一次試験の種目 | SPI試験。受験案内は「職員として必要な『思考・判断力』『新しい知識の吸収力』『コミュニケーション能力』『応用力』などの基礎能力試験」と説明しています。教養試験・専門試験の記載はありません |
| 第二次試験の種目 | 作文試験、個人面接、身体検査(持参方式)の3種目 |
| 作文試験の内容 | 「職員として必要な表現力・考え方等についての作文試験(800字程度)」 |
| 身体検査 | 医療機関の医師の検査を受け、その検査書(健康診断個人票)の提示に基づき、職務遂行に必要な健康度を有するかどうかを確認する検査。持参方式です |
| 第三次試験の種目 | 個人面接 |
| 面接の形式 | 第二次・第三次のいずれも試験種目名は「個人面接」で、内容は「1人30分程度の個別面接」。集団面接・集団討論の記載はありません |
| 合否の決め方 | 「各試験種目にはそれぞれ合格基準があり、一つでも基準に達しない場合には不合格となります。そのため総合得点が高くとも不合格となる場合があります。」と明記されています |
| 配点 | 試験種目ごとの得点配分、および人物試験の比重は、受験案内に記載がありません |
| 結果の開示 | 受験者本人が各次試験の「総合順位及び総合得点」を、合格者発表日から1か月間、総務部総務課人事給与係(市役所本庁舎3階)で請求できます(個人情報の保護に関する法律第77条第1項) |
| 申込方法 | 市ホームページからの電子申請のみ。受付先はパブリックコネクトの「南相馬市役所」ページで、会員登録と、3か月以内に撮影した顔写真データの登録が必要です。「電子申請以外は受け付けません」と明記されています |
この表から読み取れることが二つあります。ひとつは、面接が二度あることです。
1回目で人物の基礎を幅広く確認し、最終面接で志望度と考えの深さを確かめるのが一般的な役割分担ですから、同じテーマを別の面接官から角度を変えて問われる前提で備える必要があります。
もうひとつは、配点が公表されていないことです。ただし、点の内訳より重いのは、「各試験種目にそれぞれ合格基準があり、一つでも達しなければ不合格」と明記されている事実です。
総合得点で挽回するという発想が通用しない構造だからです。
上記は南相馬市の令和8年度職員採用候補者試験(高校卒程度【通常枠】)の受験案内にもとづく内容です。学校推薦枠は別の受験案内が公表されており、大学卒程度については、本記事の執筆時点で職員採用情報ページから募集要項・受験案内へのリンクを確認できませんでした。高校卒程度【通常枠】の構成を、大学卒程度・学校推薦枠・任期付職員・資格免許職にそのまま当てはめないでください。また、集団討論や集団面接の実施の有無、面接カードや自己PRシートにあたる事前提出書類の有無は、受験案内では確認できていません。試験の構成・区分・日程等は年度によって変わる可能性がありますので、受験の際は必ず最新の受験案内でご自身の受験する区分の情報をご確認ください。(出典:南相馬市職員採用情報|南相馬市)
南相馬市役所が求める人物像
「求める人物像」として項目立てされた公表文言を、市公式の範囲では見つけられていません。ただし南相馬市の場合、受験案内の冒頭に置かれた募集メッセージが、実質的にその役割を果たしています。
「震災と原発事故から16年目を迎え、より長期的な視点を見据えた創造的復興への取り組みを推進しています。こうした取り組みにともに挑戦できる方を募集します。」。
この一文を面接対策の言葉に翻訳すると、「長い時間がかかる仕事を引き受ける構え」「前例のない課題に向かう挑戦する姿勢」「市民とともに進める協調性」のあたりが、評価されやすい資質になると考えられます。
もう一つ手がかりがあります。高校卒程度の採用案内ページには「高等学校での職業教育を通じ学んだ専門知識や技能、仕事に対する意識を入庁後即戦力として活かせる方」という記載があります。
ただしこれは学校推薦枠についての記述である可能性があり、【通常枠】の受験者がそのまま自分に当てはめる必要はありません。
いずれにせよ自己PRでは、資質を名乗るだけで終わらせず、その力を使って何を行い、周囲がどう変わったのかまで説明しましょう。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。南相馬市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 会場までの道のりはいかがでしたか | 構えていない問いかけへの返し方。声量や表情の初期値が、ここで一度確かめられます |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく市役所を選んだ理由を教えてください | 比べたうえでの選択になっているか。動機が自分のこれまでと地続きか |
| ③ 自己理解 | 自分の弱いところを一つ挙げて、どう付き合っているか教えてください | 弱さを言い切れるか。認めたうえで手を打っているところまで話せるか |
| ④ 経験・行動 | 思うようにいかなかった経験を一つ挙げて、そのとき何をしたか教えてください | 出来事の大きさではなく、その場面で自分がどこから手を動かしたか |
| ⑤ 学業・経歴 | 学校生活で力を入れたことを、事情を知らない人にも伝わるように話してください | 相手に合わせて言い換える力。学んだことを仕事へつなぐ視点 |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁して5年後、南相馬市役所でどんな仕事をしていたいですか | 市の仕事の広がりをどこまで見込んでいるか。希望どおりの配属でない場合の構え方 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近見聞きした出来事で、印象に残っているものはありますか | 社会の動きに目を向けているか。自分の受け止めを短い言葉にできるか |
ただし、この7カテゴリーは南相馬市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「南相馬市ならでは」の質問です。
合否を分けるのは「南相馬市役所ならでは」の質問
どちらも南相馬市の現状を知らなければ、その場で組み立てるのは難しい質問です。
裏を返せば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「南相馬市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい南相馬市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 市の規模と広がり | 人口54,791人・面積398.58km²・人口密度137人/km²。県平均のおよそ123人/km²は上回るが、福島市の341人/km²、郡山市の409人/km²とは大きな開きがあり、隣の相馬市の160人/km²も下回る | 数字を言って終わりにせず、「県平均は超えているが主要市とは開きがある」という中間の位置づけまで示します。398.58km²に5万人台という広がりは、窓口までの距離という具体的な話につなげられます |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 受験案内は行政事務の仕事を「各種施策の企画立案や事業推進、庶務・経理・市税の賦課徴収等の一般行政の事務」と説明。高校卒程度の行政事務の採用予定は2名程度 | 企画立案と市税の賦課徴収が同じ職種の説明に並んでいる点を引くと、市役所を選ぶ理由が実務に接地します。2名程度という採用規模も、一人が担う幅の広さを語る材料になります |
| 創造的復興 | 令和8年度の受験案内は冒頭で「震災と原発事故から16年目を迎え、より長期的な視点を見据えた創造的復興への取り組みを推進しています」と述べ、ともに挑戦できる方を募集すると明記している | 市が自ら掲げている言葉ですから、避けずに正面から受け止めます。ただし他人事の感想や過剰な美談にはせず、16年目という時間の長さと、自分がその途中から加わる立場であることを言葉にします |
| 隣接自治体と広域の動き | 接するのは相馬市、相馬郡飯舘村、双葉郡浪江町の3自治体。浪江町には令和5年4月に福島国際研究教育機構(F-REI)が設立され、ロボットや農林水産業など5分野の研究を担う | 隣町の施設を紹介して終わりにしないことです。研究の成果が市民の暮らしにどう降りてくるか、そこで市役所が何を担うかという視点まで進めます |
| 防災 | 県の被害想定調査では、想定東北地方太平洋沖地震(M9.0)で県内死者1,651人、全壊・焼失31,971棟、県内津波の最大遡上高23.5m、1週間後の避難者数155,053人と算出。東日本大震災の実績は県内津波最大波高21.1m、直接死1,605人 | 県全体の数字で、市単独の想定ではないと断ってから使います。そのうえで、広い市域のどこに避難所を開け、誰が状況を確かめて回るのかという実務の側へ話を寄せます |
| 試験の性格 | 第二次と第三次に「1人30分程度の個別面接」が置かれる三段階構成。各試験種目に合格基準があり、一つでも達しなければ不合格。配点は非公表 | 30分の面接を二度受ける前提で、同じ話題を角度を変えて掘られても崩れない材料を用意します。総合得点での挽回が効かない構造だという理解も、準備の優先順位を決める助けになります |
使い方のコツは、6つ全部を覚えることではありません。志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、先ほど整理した「南相馬市で評価されやすい資質」に照らして、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 長い時間がかかることを引き受ける力 | 成果がすぐに出ない期間を、どう過ごしたか | 受験案内は「より長期的な視点を見据えた創造的復興」と書いています。半年、1年と続けたことを一つ選び、続けられた理由と、途中でやり方を変えた場面まで書き出しておく |
| 手続を正確に進める力 | 数字や書類の扱いで、確認をどこまで自分の手で行ったか | 行政事務の職務内容には庶務・経理・市税の賦課徴収が並びます。いずれも誤りが市民の負担に直結する仕事です。自分のミスに気づいて直した場面を、気づいた手順ごと話せるようにしておく |
| 前例のない場面で動く姿勢 | 誰も答えを持っていない状況で、最初にどこへ手をつけたか | 受験案内は「ともに挑戦できる方を募集します」と結んでいます。決まったやり方がないなかで自分が動き出した場面を一つ、当時の判断材料まで含めて用意しておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
南相馬市は第二次と第三次の両方に個人面接が置かれ、しかも1回あたり30分程度ですから、この傾向はより強く出ます。
自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分が受ける区分・年度の受験案内を読み、三段階の試験構成と、申込が電子申請のみであること(パブリックコネクトの会員登録と顔写真データが必要です)を確認する
- これまでの経験を棚卸しする。学業、部活動、アルバイト、地域での活動から、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 自治体研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、人口54,791人・面積398.58km²・人口密度137人/km²という南相馬市の輪郭と、受験案内が掲げる「創造的復興」という言葉を、自分の言葉で説明できるようにする
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 800字程度の作文で書きそうな内容を先に文章化し、30分の個人面接が二度あることを想定して、同じ話題を別の角度から問い直す練習をする
優先順位に注意
ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、南相馬市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
南相馬市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
南相馬市の高校卒程度【通常枠】の試験は、1人30分程度の個人面接が第二次と第三次に置かれ、各試験種目にはそれぞれ合格基準があります。どこか一つで基準に届かなければ、総合得点が高くてもそこで終わる構造です。
人口54,791人の市が、震災と原発事故から16年目という時間のなかで何を積み上げようとしているのか。受験案内の冒頭に置かれたあの一文を自分の言葉に置き直すところから、準備を始めてみてください。