本記事では、奈良市職員採用試験の面接対策で必要な、奈良市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

奈良市役所の面接試験では、「なぜ奈良市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。令和7年度(令和8年4月採用予定)の奈良市職員採用試験案内では、口述試験が2回課され、それぞれの配点まで公表されていますので、何がどれだけ重く見られるのかを先に知ったうえで準備を始められます。

本記事で扱う試験の構成と配点は、この令和7年度の案内で確認できた範囲のもので、記述は一般事務職を基準にしています。土木職・建築職・化学職は第2次試験に専門試験が加わりますので、該当する方はご自身の職種の記載もあわせてご確認ください。

第1部|自治体研究編

奈良市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは奈良市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 奈良県の県庁所在地であり、平成14年4月1日に全国で29番目の中核市となった市。
  • 人口は344,742人(令和8年1月1日現在)。県の総人口のおよそ27%が、この1市に集まっている。
  • 県内の市町村では人口が最も多く、2番目に多い橿原市の約3倍の規模(同日現在)。
  • 市域の面積は276.94km²で、奈良県全体の約7.5%にあたる。人口密度は約1,245人/km²。
  • 隣接するのは生駒市・大和郡山市・天理市・桜井市・宇陀市・山辺郡山添村に加え、京都府の4市町村と三重県伊賀市。2つの府県と境を接している。
  • 中核市への移行にともない、保健所が処理する事務や民生行政、都市計画等、環境保全行政に関する事務権限が県から移った。
  • 高齢化率は32.6%、75歳以上は68,411人(19.8%)。いずれも奈良県全体とほぼ同じ水準(令和8年1月1日現在)。
  • リニア中央新幹線は、昭和48年11月の基本計画決定の時点から「奈良市附近」が主要な経過地とされており、県内では奈良市・大和郡山市・生駒市の3市が中間駅の設置を要望している。
  • 市の花はナラノヤエザクラ、市の木はイチイガシ。

奈良市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値を大量に暗記する必要はありませんが、「奈良市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、34万人という人口の内訳と市域の広さに、奈良県全体の値を添えました。奈良市は県人口のおよそ27%を占める市ですので、市の数字と県の数字がどこで重なるのかを見比べてみてください。

項目内容
総人口344,742人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口112,505人(総人口の32.6%)
75歳以上人口68,411人(総人口の19.8%)
総面積276.94km²(奈良県全体の約7.5%)
人口密度約1,245人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
隣接自治体生駒市、大和郡山市、天理市、桜井市、宇陀市、山辺郡山添村、京都府木津川市、京都府相楽郡笠置町、京都府相楽郡精華町、京都府相楽郡南山城村、三重県伊賀市
市役所所在地〒630-8580 奈良県奈良市二条大路南一丁目1番1号
市の花・市の木市の花はナラノヤエザクラ、市の木はイチイガシ
(参考)奈良県の総人口1,293,345人(令和8年1月1日現在)
(参考)奈良県の高齢化率32.7%(同日現在。75歳以上は19.8%)

総人口・年齢別人口・高齢化率および県内の順位は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の市区町村別の値です。面積・隣接自治体・市の花木は公表値をもとに整理し、人口密度はこの表の総人口と面積から当研究会が算出しました。奈良県が別途公表している国勢調査ベースの人口は調査の基準が違いますので、この表の数値と組み合わせて増減を求めることはできません。

数字から考えられる市政課題

奈良市の数字でまず目に留まるのは、高齢化率32.6%が奈良県全体の32.7%とほとんど重なっていることです。75歳以上の割合にいたっては、市も県も19.8%で同じ値になります(いずれも令和8年1月1日現在)(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)。

県内で最も人口の多い市でありながら、年齢の構成は県の平均像をそのまま縮めたような形をしています。

言い換えれば、県全体で起きていることが、そのまま最も大きな人数で現れる市だということです。

65歳以上が112,505人、そのうち75歳以上が68,411人ですから、高齢者のおよそ6割が75歳以上という内訳になります。

中核市として保健所の事務まで市が担っていますので、健康や医療、介護に関わる判断を市の中で完結させる場面が日常的に生じます。県内最大という規模と中核市の権限は、次のように結べます。

「奈良市は34万人が暮らす県内で一番大きな市だと知りました。ただ、65歳以上の方の割合は3割を超えていて、県全体とほとんど変わらないそうです。人数が多いぶん相談も多いと思いますので、保健所を市が持っている強みを生かせる仕事に関わってみたいです」

奈良市の経済・産業

経済・産業構造の概要

  • 奈良県の総人口は令和7年国勢調査の速報集計で1,269,180人。前回(令和2年)調査から55,293人(4.2%)減り、全国順位は27位となった(前回29位)。
  • 同じ速報集計の世帯数は544,878世帯で、前回調査から103世帯(0.02%)の減少。全国順位は30位。
  • 県の推計人口年報では、市部の人口が1,013,933人、郡部が260,263人。人口は市部に集まっている(令和7年10月1日現在)。
  • 県の人口密度は345.2人/km²で、市部797.0人、郡部107.6人と大きく開きがある(同日現在)。
  • 奈良県は靴下の主要産地で、ソックス類の出荷額の全国シェアは約57%。繊維産業は県の製造業の事業所数の約16%、従業者数の約9%を占める。

つまり、県全体では人が市部に寄り集まりながら、その総数はすでに減りはじめているという構造です。県庁所在地であり県内で最も人口の多い奈良市は、この市部の中心に位置しています(出典:令和7年国勢調査 奈良県の人口速報|令和7年)。

人口が減る速さと、その内訳

県の推計人口年報によると、令和6年10月から令和7年9月までの1年間で奈良県の人口は10,898人減りました。

内訳は、自然増減が11,321人の減少(出生6,544人・死亡17,865人)、社会増減が423人の増加(転入28,889人・転出28,466人)です。減少をつくっているのは転出ではなく自然減だということが、この内訳からはっきり読み取れます(出典:奈良県推計人口年報|令和7年10月1日現在)。

転入を増やす施策だけでは追いつかない構造だという理解は、志望動機を組み立てるうえでの前提になります。

地場産業は産地ごとに分かれている

奈良県の地場産業は、産地が市町村単位で分かれているのが特徴です。靴下は広陵町が生産量日本一、鹿革と毛皮は宇陀市が全国唯一の産地、三宅町は野球用のグラブとミット、吉野町と下市町は吉野杉や桧の端材を使った割り箸というように、それぞれの土地に根を張った産業が並んでいます(出典:奈良県の地場産業|平成28年経済センサス)。

産業振興に関心があるなら、市内の事業所の数を増やすという発想だけでなく、県内各地に散らばる産地と県庁所在地が持つ機能をどう結び付けるか、という角度も持っておきたいところです。

観光の規模をどう受け止めるか

奈良県の観光入込客数は令和6年に約4,362万人で、コロナ禍前の水準に近づいています。訪日外国人の県内訪問者数は同じ令和6年で約314万人、全国7位という規模です(出典:奈良県の観光データ|令和6年)。

観光を志望分野にするなら、名所を挙げるだけでは足りません。

人が集まることで市の側に何が起きるのか、ごみや交通、宿泊、案内、そして住民の暮らしとの折り合いまで考えておくと、答えに厚みが出ます。

内陸県という条件と、交通をめぐる長い議論

奈良県は紀伊半島の中央部にある内陸県で、海に面しておらず港湾を持ちません。県土は吉野川を境に北の低地帯(奈良盆地)と南の山岳地帯に分かれ、南部の山地が県の総面積3,690.94km²の6割強を占めています。

物流や産業立地の条件が海運を持つ県とは違うということであり、その条件を変えうる案件として長く議論されてきたのがリニア中央新幹線です。

県の説明によれば、昭和48年11月の基本計画決定の時点から「奈良市附近」が主要な経過地とされ、平成23年5月の整備計画決定で駅は各都道府県に1駅ずつ置くと定められました。

県は昭和54年に建設促進の期成同盟会を設立し、令和6年7月には三重県・大阪府と連携会議を設けています。

市名がそのまま経過地として挙がっている以上、まちづくりの話題でこの論点に触れる場面は十分に想定されます。

奈良市の主な行政課題

ここまでの数字を踏まえると、奈良市が向き合っている課題の輪郭が見えてきます。面接で「市の課題」を問われたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

県と足並みをそろえて進む高齢化

奈良市の65歳以上人口は112,505人、うち75歳以上が68,411人です(令和8年1月1日現在)。高齢化率32.6%、75歳以上の割合19.8%は、いずれも奈良県全体の32.7%・19.8%と並びます。

県平均より進んでいるわけではないが、人数の規模は県内で最も大きいという位置づけです。

中核市として保健所が処理する事務を市が担っている以上、感染症対策や母子保健、食品衛生といった分野の判断が、県を経由せず市の中で下されます。人数の多さと権限の重さが重なる場所だと考えてください。

自然減が主因の人口減少

奈良県の推計人口年報では、令和7年10月1日現在で県内のすべての市町村で人口が減少したことが示されています。

県全体の合計特殊出生率は令和5年時点で1.21(全国平均1.20)、出生数は6,943人と過去最少を記録しました。

県の人口は1999年に約144万9千人でピークを迎えたのち減少に転じ、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2050年に約95万人になるとされています(出典:第3期奈良県まち・ひと・しごと創生総合戦略|令和6年)。

県庁所在地だから安泰という前提は成り立ちません。

若い世代の県外流出と未婚化

第3期の県総合戦略は、地域ブロック別の人口移動で東京圏への大幅な転出超過が続いていることを課題に挙げています。

あわせて、令和2年時点で25歳から39歳の女性の未婚率が42.9%と全国6位の高さにあり、未婚化と晩婚化が少子化の直接の要因になっていると指摘しています。

一方で外国人人口は令和6年に17,000人を超え、10年間でおよそ1.6倍に増えました。その増加のほとんどが生産年齢人口である点も、労働力の確保という文脈で押さえておきたい事実です。

人が減る話と、新しく入ってくる人の話は、同じ課題の裏表として扱えるようにしておきましょう。

内陸活断層による大規模地震への備え

内閣府がまとめた都道府県別の地震被害想定を並べると、奈良県で警戒されている地震の性格がはっきりします。県全体の想定は次のとおりです。

想定地震規模・最大震度県全体の想定被害
奈良盆地東縁断層帯の地震マグニチュード7.5・最大震度7死者数は最大5,153人、建物全壊114,209棟(揺れによるもの)
中央構造線断層帯の地震マグニチュード8.0・最大震度7死者数4,319人、建物全壊93,041棟(揺れによるもの)
生駒断層帯の地震マグニチュード7.5・最大震度7死者数4,257人、建物全壊93,543棟(揺れによるもの)
南海トラフの地震マグニチュード8.7・最大震度6弱死者数4人、建物全壊1棟(揺れによるもの)

この並びが示しているのは、奈良県では海溝型の地震より、内陸の活断層による地震のほうが桁違いに大きな被害を想定しているという点です(出典:都道府県による地震被害想定結果(概要)|奈良県想定)。

海に面していない県だからこそ、足元の断層への備えが中心になるということでもあります。被害想定は改定されることがありますので、受験前に県と市の防災部局が出している最新の資料もあわせて開いておきましょう。

県庁所在地であることの意味

奈良市には奈良県庁も置かれています。同じまちに県庁と市役所があるということは、受験生にとっては志望先が紛らわしいということでもあり、面接官にとっては「なぜこちらなのか」を確かめる格好の材料になるということでもあります。

実際、市の採用試験は奈良市職員任用試験委員会が実施しており、奈良県人事委員会が行う県の試験とは申込先も試験種目も配点も別です。

加えて奈良市は、京都府の4市町村と三重県伊賀市に接しています。

通勤や通学、観光の人の流れが府県の境をまたいで日常的に行き来しているということであり、市の仕事が市域の内側だけで完結しないという前提は、志望動機を組み立てるときに効いてきます。

重点政策|中核市・県庁所在地としての奈良市の役割

奈良市の政策を考えるときの軸になるのは、この市が保健所が処理する事務、民生行政、都市計画等、環境保全行政に関する権限を県から引き受けた側の自治体だという立ち位置です。

市は中核市への移行について、事務処理の期間が短くなり、迅速で効率的な、よりよい市民サービスを受けられるようになると説明しています(出典:中核市奈良(奈良市)|市公式)。

移譲された分野は、健康、福祉、まちのつくり方、環境という、いずれも住民の生活に直接触れるものばかりです。志望動機を練るときは、「県ではなく市だからできること」を、この移譲された分野の中から具体的に一つ拾ってみてください。

志望分野を絞り込む視点

計画の名前を覚えているかどうかは、自治体研究の成果ではありません。奈良市であれば、進みたい分野を一つ挙げ、それが県から移ってきた保健所、民生、都市計画、環境保全の仕事のどれに当たるのかを確かめてください。

そこがはっきりすると、県ではなく市を選んだ理由まで一続きに説明できます。

なお、総合計画をはじめとする市の計画は数年ごとに改まりますので、名称や年次は市の公式サイトで現行のものを直接確かめたうえで使ってください。

POINT|計画の名称を丸暗記しなくてよい

名称を並べるより、志望分野と奈良市の事情がどこで結び付くかを説明できるほうが、口述試験では効きます。

悪い例「歴史のあるまちである奈良市の魅力を、もっと多くの人に広めていく仕事がしたいです」

改善例「まずは窓口で市民の方の相談を受けたいです。その上で、奈良市は65歳以上の方が3割を超えていると知りましたので、保健所を市が持っている強みを生かして、健康の相談を早い段階で受け止める仕組みづくりに関わっていきたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

次の4つは、志望分野が決まっていない段階でも順に開いておく価値があります。読んだ内容を口頭で説明できる状態にしておきましょう。

  • 奈良市職員採用試験案内(自分が申し込む職種のもの。最新年度)
  • 奈良市の総合計画と、保健・福祉、都市計画、環境の分野別計画
  • 最新年度の当初予算と、市政運営に関する市長の説明
  • 奈良市の人口や世帯に関する統計(住民基本台帳の月報など)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、奈良市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。奈良市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

奈良市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

奈良市役所の面接の概要

ここからは、奈良市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、差がつく質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

奈良市役所の面接の流れ

令和7年度(令和8年4月採用予定)の試験案内によると、奈良市の採用試験は2段階です。第1次試験の中で総合適性試験、書類選考、口述試験(オンライン面接)の3種目を順に課し、第2次試験で口述試験(対面面接)を行います。

土木職・建築職・化学職は、第2次試験にさらに専門試験が加わります。

一般事務職の場合、専門試験がありませんので、公表された各種目の配点を単純に足すと400点満点になります。その内訳は、総合適性試験180点、書類選考20点、オンライン面接100点、対面面接100点です。

つまり口述試験2回の合計200点が、ちょうど全体の半分を占めるという設計になっています(出典:令和7年度奈良市職員採用試験案内|令和8年4月採用予定)。

もっとも、この内訳からわかるのは重さの順番までで、手をつける順番までは書かれていません。

令和7年度(令和8年4月採用予定)の一般事務職で見ると、点数が最も小さいのは書類選考の20点ですが、採点される中身が最も早く手を離れるのもこの20点です。

申込サイトのマイページに登録した基本情報や職歴、自己PRがそのまま読まれますので、申込の締切までに仕上げるほかありません。

逆に、単独では最も重い総合適性試験の180点は、基礎能力検査(言語、数理、理論、常識、英語)と事務能力検査という広い範囲を扱いますので、仕上がるまでに最も長い時間がかかります。

面接1回分の100点より80点重い種目だと考えれば、面接練習をいつから始めるかも、この180点の進み具合と並べて決めておくのが現実的です。

項目内容(令和7年度・令和8年4月採用予定・一般事務職を基準)
実施主体奈良市職員任用試験委員会が実施します。奈良県人事委員会が行う県の試験とは、申込先も試験種目も配点も別のものです
試験の段階2段階。第1次試験で総合適性試験 → 書類選考 → 口述試験(オンライン面接)を順に課し、第2次試験で口述試験(対面面接)を行います
総合適性試験SCOA。基礎能力検査(言語、数理、理論、常識、英語)と事務能力検査で構成される択一式。配点180点
書類選考エントリーシート等による書類選考で配点20点。申込サイトのマイページで基本情報、職歴・学歴、自己PR等を登録します。案内には、自己PRと大学の学部名の欄は任意表示になっているが書類選考の対象なので必ず入力するように、と明記されています
面接の種類口述試験が2回。第1次試験がオンライン面接(100点)、第2次試験が対面面接(100点)で、いずれも受験者個人を対象とする面接です。会場は奈良市役所
集団形式試験種類に集団討論・集団面接の記載はありません
専門試験土木職・建築職・化学職のみ、第2次試験で択一式100点が加わります
基準点各試験種類には最低限必要な得点を基準点として定めている場合があり、基準点に達しない試験が1つでもあれば、他の試験種類の成績にかかわらず不合格となります
採用予定人数一般事務職は10人程度
提出書類「面接カード」という名称の様式は受験案内にありません。最終合格後には、全員が最終学校の卒業証明書を提出します
成績開示各試験の結果(試験種類別得点及び各試験の順位)について、合否結果の発表から3か月以内に申込サイト内のメールで請求できます

もう一点、押さえておきたいのが基準点の仕組みです。1つでも基準点に届かない種目があれば、他がどれだけ良くても不合格になります。

面接の配点が半分を占めるからといって面接の練習だけに寄せると、事務能力検査でつまずいて終わる、ということが起こり得ます。

申込はインターネットのみで、郵送や持参による受付はありません。

申込に使うのは民間の採用プラットフォームですが、これは複数の自治体が同じサービスを使っているだけで、近隣自治体との共同実施や統一試験の枠組みではありません。

なお、一般事務職の初任給は4年制大学卒で253,000円(地域手当を含む)、大学院卒で262,020円と案内に示されています。

上記の試験構成と配点は、奈良市の令和7年度職員採用試験案内(令和8年4月採用予定)に記載された内容にもとづくもので、一般事務職を基準に整理しています。土木職・建築職・化学職は第2次試験に専門試験が加わります。試験の構成・配点・日程は年度や職種によって変わりますので、受験の際は必ずご自身の職種の最新の受験案内でご確認ください。

奈良市役所が求める人物像をどう補うか

確認した奈良市の令和7年度職員採用試験案内(全8ページ)には、求める人物像や期待する職員像として定型化された記載が見当たりません。市の採用情報のページとあわせて、最新年度の案内に記載が加わっていないかは受験前に確かめておきましょう。

そのうえで本記事では、言葉で掲げられた人物像がない代わりに、配点の置き方が何を重く見るかを語っていると考えて読み解いていきます。

以下は、公表されている配点表を当研究会が読んだ結果です。点数そのものは市の資料に載っていますが、その置き方が何を意味するかまでは書かれていません。

まず、400点のうち200点が口述試験に置かれています。しかもその半分はオンライン、残り半分は対面と、形式が違います。

同じ人物を二度、違う条件で見るという設計ですから、場面が変わっても中身が変わらないことが確かめられていると読めます。

次に、書類選考の20点です。点数としては小さいものの、ここで登録する自己PRや職歴が、そのまま面接で参照される材料になります。

書いたことと話すことがずれれば、二度の面接のどちらかで必ず表に出ます。

見落としやすいのは、この2回が100点ずつで並んでいることです。1回目だから軽い、という置き方にはなっていません。

オンライン面接を対面までの前置きと見て練習を後回しにすると、口述試験200点の半分が手つかずのまま本番を迎えることになります。

語る材料は同じで構いませんので、練習の回数のほうを最初から二等分しておいてください。

もう一つ、市の成り立ちの側からも一つ挙げておきます。34万人という県内最大の人口を抱え、県庁所在地でありながら、2つの府県の自治体と境を接している。

しかも中核市として、保健所や都市計画、環境保全の事務まで市が抱えています。

市の判断で決められる範囲が広い一方、実際に動かすには周辺の自治体や地域の団体、事業者との調整が欠かせません。

そして一般事務職の採用予定は10人程度と、決して多い人数ではない。

だとすれば、限られた人数で、市の外の相手とも話をまとめながら、実行できるところまで持っていける人が力を発揮しやすい環境ではないかと当研究会は考えています。

ここまでを踏まえると、準備の焦点は一点に絞れます。奈良市の選考では、申込のときに登録した文章がまず書類選考で読まれ、その内容がオンライン面接と対面面接で二度たどり直されます。

同じ材料が、条件を変えて三度確かめられるということです。だとすれば準備の要は、場面ごとに話し方を作り分けることではありません。

書いたことと話すことが、どの場面でも同じ出来事を指している状態に整えておくことです。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。奈良市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク音声は問題なく聞こえていますか?1回目の面接がオンラインで行われる試験です。想定外の一言や機材のやり取りに、硬くならずに応じられるか
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?採用予定が10人程度という枠の中で、なぜこの仕事なのかを自分の経験から言えるか
③ 自己理解登録していただいた自己PRについて、詳しく教えてください書類選考の対象として自分が書いた内容と、口頭で語る人物像がそろっているか
④ 経験・行動これまでで最も苦労した経験と、その場でとった行動を教えてください苦労の大きさではなく、その場面で何を考えて動いたかという中身
⑤ 学業・経歴専攻の内容を、専門外の人にもわかるように説明してください相手に合わせて言い換える力。択一式の検査では測れない、伝える側の力
⑥ 適性・将来入庁後は、どんな仕事に取り組みたいですか?中核市として市が持っている事務の範囲を踏まえた希望になっているか
⑦ 公共性・社会性最近気になった、奈良市に関わる出来事はありますか?県全体の話と市の話を区別して受け止められているか

この範囲は受験者の多くが同じように準備してきますので、得点差はあまり生まれません。二度の面接で他と分かれる材料は、次に挙げる奈良市固有の質問の側にあります。

合否を分けるのは「奈良市役所ならでは」の質問

「なぜ奈良県庁ではなく、奈良市役所を志望するのですか?」
「奈良市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

1問目は、奈良市では他の市より重みを持ちます。県庁と市役所が同じまちにあり、しかも試験を行う主体からして別だからです。

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「奈良市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい奈良市の事実答え方のヒント
なぜ県庁ではなく市役所か市の採用試験は奈良市職員任用試験委員会が実施し、申込先も試験種目も配点も県の試験とは別。奈良市は中核市として保健所の事務などを県から引き受けている役割分担の一般論で止めず、移譲された分野のうち自分が関わりたい仕事を一つ挙げて話す
中核市であること平成14年4月1日に全国で29番目の中核市へ移行。保健所が処理する事務、民生行政、都市計画等、環境保全行政の権限が県から移った移行した年より、市の判断だけで完結する仕事が増えたという中身に触れる
人口と年齢の内訳344,742人で県内最多。高齢化率32.6%、75歳以上19.8%は、県全体の32.7%・19.8%とほぼ同じ(令和8年1月1日現在)規模の大きさで終えず、県平均と重なる年齢構成が仕事の量にどう効くかを添える
地震への備え県の被害想定では、奈良盆地東縁断層帯の地震(マグニチュード7.5・最大震度7)が最大級。南海トラフの地震より内陸活断層の被害想定が大きい数字を並べるより、内陸県ならではの想定の形を押さえ、自分にできる備えを一つ挙げる
奈良市の魅力奈良県の観光入込客数は令和6年に約4,362万人。訪日外国人の県内訪問者数は約314万人で全国7位名所の紹介ではなく、人が集まることが市の仕事にどう跳ね返るかまで話す

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

奈良市の場合、何を見ようとしているかは選考の設計から読み取るのが早道です。400点のうち200点を口述試験に置き、しかも形式の違う面接を二度重ねるという組み方から当研究会が読み取るのは、いわゆるコンピテンシー評価と同じ発想、つまり用意してきた言葉ではなく経験の中身と行動の再現性を確かめようとする姿勢です。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
画面越しでも伝わる話し方第1次試験の口述試験はオンラインで行われ、100点が配分されている自分の受け答えを一度録画し、間の取り方と一文の長さを確かめておく
登録した書類と口頭の一致書類選考20点の対象である自己PRや職歴の登録内容が、面接での説明とそろっているか申込時に書いた文章を手元に置き、そこに書いた出来事だけで話が成り立つか読み返す
対面で掘り下げに耐える中身第2次試験は市役所での対面面接100点。同じ話題を別の角度から確かめられる一つの経験について、起きた事実、当時考えたこと、とった行動を分けて説明できるようにする
どの種目も落とさない安定感基準点に達しない試験が1つでもあれば、他の成績にかかわらず不合格となる面接の練習に偏らせず、SCOAの事務能力検査にも時間を割り振っておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

奈良市は口述試験が2回あり、形式が変わっても同じ人物として話が通るかどうかが見られます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを、時間をかけて用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。奈良市はオンラインと対面で面接の形式が変わりますので、その両方を最初から視野に入れて組み立てておくと迷いません。

  1. 最新年度の受験案内で、自分の職種の試験種目と配点を確認する(土木職・建築職・化学職は第2次試験に専門試験が加わります)
  2. 申込サイトに登録する内容を先に書き上げる。自己PRと学部名の欄は任意表示でも書類選考の対象ですので、必ず埋めておく
  3. 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い奈良市の事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  6. 同じ経験を二通りで話す練習をする。画面越しに向けては声の届き方と間を、対面に向けては掘り下げられた先の答えを、それぞれ用意しておく

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間が足りないなら、先に片づけるのはステップ2とステップ3です。申込時に登録する自己PRは、令和7年度の案内では書類選考20点の対象とされており、そこに書いた出来事がそのまま二度の面接の話題になります。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、奈良市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

奈良市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

奈良市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和7年度(令和8年4月採用予定)の一般事務職では、400点のうち200点が口述試験に置かれ、その半分はオンラインの画面越しに、残り半分は市役所での対面に配分されていました。

県内で最も多い34万人が暮らし、保健所の事務まで県から引き受けたこのまちで、自分は誰と組んで何を動かしたいのか。画面越しでも、机を挟んでも、同じ答えが返ってくるところまで、手持ちの経験を言葉にしていってください。