本記事では、天理市職員採用試験の面接対策で必要な、天理市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
天理市役所の面接試験では、「なぜ天理市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。天理市の一般事務職は三段階の選抜で、そのうち二段階が面接という構成です。
人物を見る場面が繰り返し置かれている試験だと考えてください。
本記事で扱う試験の構成は、令和8年度(令和9年4月採用予定)の天理市職員採用試験案内で確認できた範囲のもので、記述は一般事務職を基準にしています。技術職には年度単位の試験とは別に毎月実施される通年採用の枠がありますので、該当する方はそちらの案内もあわせてご確認ください。
第1部|自治体研究編
天理市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは天理市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 隣接するのは奈良市・桜井市・大和郡山市と、磯城郡の田原本町・三宅町・川西町。境を接するのはすべて奈良県内の自治体で、県外とは接していない。
- 人口は60,034人(令和8年1月1日現在)。奈良県内の12市の中では7番目の規模にあたる。
- 高齢化率28.6%は、奈良県全体の32.7%を4ポイント余り下回る(同日現在)。
- 75歳以上は10,143人(16.9%)で、こちらも県全体の19.8%より低い。
- 市域の面積は86.42km²、人口密度は約695人/km²。県内12市の中では人口密度が下から5番目で、人が広めに散らばって暮らしている。
- 職員採用試験を実施するのは天理市職員採用試験委員会(人事課内)。
- 年度単位の採用試験とは別に、技術職を対象とした通年採用を毎月実施している。
- 市の花はウメ、市の木はイチョウ。
天理市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値を大量に暗記する必要はありませんが、「天理市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、6万人という人口の内訳と市域の広さに、奈良県全体の値を並べました。県の平均像と天理市がどこでずれるのかに目を向けてみてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 60,034人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 17,193人(総人口の28.6%) |
| 75歳以上人口 | 10,143人(総人口の16.9%) |
| 総面積 | 86.42km² |
| 人口密度 | 約695人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 奈良市、桜井市、大和郡山市、磯城郡田原本町、磯城郡三宅町、磯城郡川西町 |
| 市役所所在地 | 〒632-8555 奈良県天理市川原城町605番地 |
| 市の花・市の木 | 市の花はウメ、市の木はイチョウ |
| (参考)奈良県の総人口 | 1,293,345人(令和8年1月1日現在) |
| (参考)奈良県の高齢化率 | 32.7%(同日現在。75歳以上は19.8%) |
総人口・年齢別人口・高齢化率および県内の順位は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の市区町村別の数値を用いています。面積・隣接自治体・市の花木は公表値をもとに整理し、人口密度はこの表の総人口と面積から当研究会が算出しました。奈良県が国勢調査をもとに公表している人口は、この表とは調査の基準が異なります。両者を突き合わせて増減を出すことはできませんので、比べる場合は同じ基準の値どうしで行ってください。
数字から考えられる市政課題
天理市の年齢構成は、奈良県の中では若いほうに位置します。高齢化率28.6%は県全体の32.7%を4.1ポイント下回り、75歳以上の割合も16.9%と県の19.8%より低い水準です(いずれも令和8年1月1日現在)(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)。
ただし、県より若いということは、これから高齢化が進む余地がそれだけ残っているということでもあります。
65歳以上が17,193人、そのうち75歳以上が10,143人という内訳は、高齢者の6割近くがすでに後期高齢の年代に入っていることを示します。
今のうちに手を打てる期間がある、という読み方をしておきましょう。いまのうちに手を打てるという読み方を、面接ではこう語れます。
天理市の経済・産業
県全体の人口が置かれている状況
- 奈良県の総人口は令和7年国勢調査の速報集計で1,269,180人。前回(令和2年)調査から55,293人(4.2%)減少し、全国順位は27位となった(前回29位)。
- 同じ速報集計の世帯数は544,878世帯で、前回調査から103世帯(0.02%)の減少。全国順位は30位。
- 県の推計人口年報では、市部の人口が1,013,933人、郡部が260,263人。人口密度は県全体で345.2人/km²、市部797.0人、郡部107.6人(令和7年10月1日現在)。
- 奈良県は靴下の主要産地で、ソックス類の出荷額の全国シェアは約57%。繊維産業は県の製造業の事業所数の約16%、従業者数の約9%を占める。
ここから読み取れるのは、世帯の数はほぼ横ばいなのに、人の数だけが4%を超えて減っているという形です。
世帯が小さくなりながら数を保っている、つまり一人暮らしや二人暮らしが増えているということでもあります(出典:令和7年国勢調査 奈良県の人口速報|令和7年)。世帯の単位が小さくなれば、行政が向き合う件数は人口の減り方ほどには減りません。
減っている分の中身
県の推計人口年報によると、令和6年10月から令和7年9月までの1年間で奈良県の人口は10,898人減りました。
内訳は自然増減が11,321人の減少(出生6,544人・死亡17,865人)で、社会増減はむしろ423人の増加(転入28,889人・転出28,466人)です(出典:奈良県推計人口年報|令和7年10月1日現在)。
転入と転出はほぼ釣り合っており、減っているのは生まれる人と亡くなる人の差の分だということです。移住施策だけでこの差を埋めるのは難しい、という前提を持っておきましょう。
県内に散らばる地場産業
奈良県の地場産業は、産地が市町村ごとに分かれています。靴下は広陵町が生産量日本一、鹿革と毛皮は宇陀市が全国唯一の産地、三宅町は野球用のグラブとミット、吉野町と下市町は吉野杉や桧の端材を使った割り箸というように、狭い県土の中に別々の産業が並んでいます(出典:奈良県の地場産業|平成28年経済センサス)。
産業に関心があるなら、県全体を一色で語らず、市町村ごとに違う顔があるという前提から考え始めてください。
人が広がって暮らす市域
天理市の人口密度は約695人/km²で、県内12市の中では下から5番目です。
人が市域に広がって住んでいるということは、一つの窓口や施設に集まってもらう形の行政サービスでは、届きにくい人が出てくるということでもあります。
移動の手段、施設の置き場所、情報の届け方といった論点は、この密度から自然に立ち上がってきます。志望分野が交通やまちづくり、地域福祉であれば、ここは話の入口として使えます。
観光と、海を持たない県という条件
奈良県の観光入込客数は令和6年に約4,362万人、訪日外国人の県内訪問者数は約314万人で全国7位という規模です(出典:奈良県の観光データ|令和6年)。
一方で奈良県は紀伊半島の中央部にある内陸県で、海に面しておらず港湾を持ちません。県土は吉野川を境に北の低地帯と南の山岳地帯に分かれ、南部の山地が県の総面積3,690.94km²の6割強を占めます。
人は多く訪れるが、物流の条件は海運を持つ県とは違う。この二つを合わせて頭に入れておくと、産業や観光の話題で表面的な答えを避けられます。
天理市の主な行政課題
ここまでの数字を踏まえて、天理市が向き合う課題を5つに整理しました。志望分野に近いものを一つ選び、そこだけは深く掘ってから本番に臨んでください。
すでに始まっている人口減少
令和7年10月1日現在の県の推計人口年報では、県内の市町村がそろって人口を減らしたことが示されています。
県全体で見ると、合計特殊出生率は令和5年時点で1.21(全国平均1.20)、出生数は6,943人と過去最少を記録しています。
県の人口は1999年の約144万9千人を頂点に減少へ転じており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2050年に約95万人とされています(出典:第3期奈良県まち・ひと・しごと創生総合戦略|令和6年)。
相対的に若い天理市も、この減少の外側にいるわけではありません。
若い年齢構成という持ち時間
高齢化率28.6%、75歳以上16.9%という水準は、県の平均より数年分だけ手前にいるということです。
いま整えておけば間に合う施策と、後手に回ると取り返しがつかない施策を仕分けられるかどうかが、この持ち時間の使い方を分けます。地域包括ケアの体制づくり、公共施設の配置の見直し、担い手の確保といったテーマは、余裕のあるうちに手をつけるほど選択肢が広く残ります。
面接でこの話題に触れるなら、県より若いという事実だけで止めず、その先の一手まで言えるようにしておきましょう。
若い世代の県外流出と未婚化
第3期の県総合戦略が課題として挙げるのは、地域ブロック別の人口移動における東京圏への大幅な転出超過の継続です。
あわせて、令和2年時点で25歳から39歳の女性の未婚率が42.9%と全国6位の高さにあり、未婚化と晩婚化が少子化の直接の要因になっていると指摘しました。
一方、県内の外国人人口は令和6年に17,000人を超え、10年間でおよそ1.6倍に増えています。その増加のほとんどが生産年齢人口である点は、働き手をどう確保するかという文脈で押さえておきたい事実です。
内陸活断層による大規模地震への備え
内閣府がまとめた都道府県別の地震被害想定では、奈良県で最も大きな被害が見込まれるのが奈良盆地東縁断層帯の地震(マグニチュード7.5・最大震度7)で、県全体の死者数は最大5,153人、建物全壊は114,209棟(揺れによるもの)とされています。
中央構造線断層帯の地震(マグニチュード8.0・最大震度7)では死者4,319人・全壊93,041棟、生駒断層帯の地震(マグニチュード7.5・最大震度7)では死者4,257人・全壊93,543棟です。
これに対して南海トラフの地震(マグニチュード8.7)は県内の最大震度が6弱、死者4人・建物全壊1棟(揺れによるもの)と想定されています(出典:都道府県による地震被害想定結果(概要)|奈良県想定)。
奈良県で警戒されているのは海溝型の地震よりも足元の活断層だという点は、防災の話題に触れるなら外せません。
被害想定は改定されることがありますので、受験前に県と市の防災部局の最新資料もあわせて開いておきましょう。
限られた職員数で担う仕事の広さ
ここから先は、公表された数字を並べたうえでの当研究会の読み方です。令和8年度(令和9年4月採用予定)の採用予定は、一般事務職と一般事務職(職務経験者)を合わせて5名程度。
技術職や保育士・幼稚園教諭を含めても、1年に迎える新しい仲間はごく限られます。
6万人が暮らす市の行政を、この規模の組織が担っているということです。一人が受け持つ仕事の幅は、大きな市より広くなります。
異動のたびに未経験の分野に入り、調べながら形にしていく働き方が前提になる、と考えておいたほうが実態に近いはずです。
重点政策|6万人規模の市で職員が担う範囲
天理市の個別の計画名や事業名は年度によって入れ替わりますので、志望分野に近いものは市の公式サイトで現行版を直接開いて確かめてください。
ここでは、計画の名前より先に押さえておきたい、この市で働くことの中身のほうを整理します。手がかりになるのは、市が試験案内の中で示している人材育成の仕組みです。
天理市の新規採用職員は、奈良県市町村職員研修センターが行う新規採用職員研修や、法制執務・接遇などの専門研修に参加するとされています。
さらに専門的な研修の機会として、滋賀県大津市にある全国市町村国際文化研修所(JIAM)の研修にも参加を進めるとされています(出典:令和8年度天理市職員採用試験案内|令和9年4月採用予定)。
単独の市で研修体系を丸ごと抱えるのではなく、県内の市町村が共同でつくった仕組みと全国の機関を使って職員を育てる。小規模な市の人材育成は、こうした形で成り立っています。
志望分野を絞り込む視点
事業名を覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つに決めて、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指しているか → ③今どんな事業があるか → ④市役所だからこそ担える部分はどこか → ⑤自分の経験や強みをどう生かせるか」の順にたどってみてください。
天理市の場合、②と③は市の計画に、①は本記事の第1部で挙げた数字に、それぞれ手がかりがあります。
POINT|計画の名称を丸暗記しなくてよい
名称を挙げられることより、志望分野と天理市の事情がどこで結び付くかを説明できるほうが、二度の個人面接では効きます。
悪い例「天理市のよさを、もっと市外の人にも知ってもらえるような仕事がしたいです」
改善例「はじめは窓口の仕事から覚えたいと思っています。その上で、天理市は人が広めに散らばって住んでいると知りましたので、市役所まで来るのが難しい方にも届く形を工夫していく仕事に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
次の4つは、受験の申込みを済ませた直後から手元に置いておきたいものです。読むだけで終わらせず、口に出して説明できるところまで持っていってください。
- 天理市職員採用試験案内(自分が申し込む職種のもの。最新年度)
- 天理市の総合計画と、志望分野に近い分野別の計画
- 最新年度の当初予算と、市長が示した市政運営の方針
- 天理市の人口や世帯に関する統計
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、天理市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。天理市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
天理市役所の面接の概要
ここからは、天理市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、差がつく質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
天理市役所の面接の流れ
令和8年度(令和9年4月採用予定)の試験案内によると、天理市の採用試験は第1次から第3次までの三段階です。
第1次試験は受験者全員がテストセンター方式の検査を受け、第2次試験では全員にパーソナリティ検査が課されたうえで、職種ごとに異なる種目が加わります。第3次試験は個人面接です。
一般事務職に絞ると、第2次試験で集団討論と個人面接、第3次試験でもう一度個人面接という並びになります。
つまり個人面接が計2回、集団討論が1回。三段階のうち二段階が人物を見る場面で占められている構成です。
| 項目 | 内容(令和8年度・令和9年4月採用予定・一般事務職を基準) |
|---|---|
| 実施主体 | 天理市職員採用試験委員会(人事課内)が実施します |
| 試験の段階 | 第1次試験・第2次試験・第3次試験の三段階です |
| 第1次試験 | 受験者全員が対象。テストセンター方式で、基礎能力検査(約1時間)と事務能力検査(約1時間)の計約2時間 |
| 第2次試験|一般事務職 | 第1次試験の合格者全員にパーソナリティ検査を課したうえで、集団討論と個人面接を実施します |
| 第2次試験|土木・建築技術職 | パーソナリティ検査に加えて、専門試験と個人面接です |
| 第2次試験|保育士・幼稚園教諭 | パーソナリティ検査に加えて、実技試験と個人面接です |
| 第3次試験 | 第2次試験の合格者全員を対象とする個人面接です |
| 配点 | 各試験種目の点数は、令和8年度の試験案内には示されていません。最新の受験案内でご確認ください |
| 採用予定人員 | 一般事務職と一般事務職(職務経験者)を合わせて5名程度、土木技術職3名程度、建築技術職若干名、保育士・幼稚園教諭5名 |
| 提出書類 | 「面接カード」や自己PRシートにあたる書類の記載はありません。第1次試験の合格者は、卒業(修了)証明書または卒業(修了)見込証明書と、写真(縦4cm・横3cm、上半身脱帽、正面向き)を提出します。保育士・幼稚園教諭は資格と免許の写しも提出します |
| 申込方法 | 天理市電子申請サービスを使ったインターネット申込のみで、郵送その他の方法では受け付けられません |
| 別枠|通年採用 | 土木・建築・電気・機械の技術職を対象に毎月実施されます。構成は同じく三段階ですが、対象が技術職のみのため集団討論はありません。指定の資格を持つ人は専門試験が免除されます |
ここで一点、準備の組み立てに関わる事実があります。各種目の配点が公表されていないため、どの試験で挽回するという計算は立ちません。
第1次試験の検査で余裕を作っておこうという発想も、面接だけ仕上げれば足りるという発想も、根拠を欠くことになります。三段階すべてを等しく通過すべき関門として扱うのが安全です。
なお、一般事務職の初任給は大学卒で245,920円(地域手当を含む)、勤務時間は週38時間45分の週休2日制と案内に示されています。
同一年度内に複数回の申込みや、市の他の採用試験と重ねての申込みはできません(参考:令和8年度天理市職員採用試験案内(通年採用)|令和8年度)。
上記の試験構成は、天理市の令和8年度職員採用試験案内(令和9年4月採用予定)に記載された内容にもとづくもので、一般事務職を基準に整理しています。技術職には年度単位の試験とは別に通年採用の枠があります。試験の構成・日程は年度や職種によって変わりますので、受験の際は必ずご自身の職種の最新の受験案内でご確認ください。
天理市役所が求める人物像をどう補うか
確認した天理市の令和8年度職員採用試験案内(年度試験と通年採用の2種)には、求める人物像や期待する職員像として定型化された記載が見当たりません。最新年度の案内に記載が加わっている可能性はありますので、市の採用情報のページとあわせて受験前に目を通しておいてください。
そのうえで本記事では、言葉ではなく試験種目の並べ方が、市の関心を示していると考えて読み解いていきます。
以下に述べるのは、試験案内に並んだ種目の一覧を当研究会が読み直して考えたことです。市の資料に書かれているのは種目の名前と順番までで、その意図までは示されていません。
一般事務職の第2次試験には、パーソナリティ検査、集団討論、個人面接の3つが同居しています。
検査で傾向を押さえ、討論で他者と噛み合う様子を見て、その日のうちに一対一で確かめる。そして翌段階でもう一度、別の場で個人面接を行う。一人の受験者を、条件を変えて何度も見るという組み方です。
取り繕った人物像では、どこかの場面で必ず縫い目が見えます。
市の側の条件も添えておきます。一年に迎える一般事務職は5名程度で、新規採用職員の研修は県内の市町村が共同でつくった機関が担っています。
単独では研修の体系を抱えきれない規模だということです。裏を返せば、教わる機会は限られ、配属先で覚えていく比重がそのぶん大きくなります。
一般事務職にだけ集団討論が課されているのも、この規模の組織で仕事を動かすときに、周囲と話をつけながら進められるかを先に見ておきたいからではないかと当研究会は考えています。
準備の的は、ここまでの読みから絞り込めます。集団討論で見せる振る舞いと、そのあと二度受ける個人面接で語る自分像。
この二つを別々に用意すると、両方が並ぶ第2次試験の場で、まっさきにずれが出ます。
討論での自分の動き方を、過去のどの経験で身につけたのかまで説明できる状態にしておけば、三段階を通して話が一本につながります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。天理市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | ここまでの試験はいかがでしたか? | 第2次試験には集団討論と個人面接が並びます。場の性格が変わっても構えを切り替えられるか |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 民間ではなく行政という選択が、6万人規模のまちで働く姿と結び付いているか |
| ③ 自己理解 | ご自身の短所を教えてください | 第2次試験で全員が受けるパーソナリティ検査の結果と、自分で語る人物像がかけ離れていないか |
| ④ 経験・行動 | 意見が分かれた場面で、どう折り合いをつけましたか | 集団討論で見られる力を、過去の実例でも示せるか |
| ⑤ 学業・経歴 | 学生時代に力を入れたことを教えてください | 個人面接が2回あります。同じ経験を、二度目は別の角度から語れるか |
| ⑥ 適性・将来 | 希望と違う部署に配属されたらどうしますか? | 職員数が限られる市で、未経験の分野を引き受ける構えがあるか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近気になったニュースはありますか? | 全国や県の話題を、6万人のまちの話に引き寄せて考えられるか |
この範囲は受験者の多くが同じように準備してきますので、大きな差はつきません。三段階を通じて他と分かれる材料は、次に挙げる天理市固有の質問の側にあります。
合否を分けるのは「天理市役所ならでは」の質問
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「天理市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい天理市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 市の採用試験は天理市職員採用試験委員会(人事課内)が実施。一般事務職の採用予定は職務経験者枠と合わせて5名程度という規模 | 広域と基礎自治体の役割分担を並べるより、少人数の組織で幅広く仕事を持つことをどう受け止めているかを語る |
| 人口と年齢の構成 | 60,034人で県内12市の7番目。高齢化率28.6%は県全体の32.7%を4.1ポイント下回り、75歳以上も16.9%と県の19.8%より低い(令和8年1月1日現在) | 県より若いという事実で終わらせず、その持ち時間で何を先に整えるかまで踏み込む |
| 市域の広さと暮らし方 | 面積86.42km²に約695人/km²。県内12市の中では人口密度が下から5番目 | 移動の手段や施設の置き場所など、密度の低さが効いてくる分野に引き寄せて話す |
| 県全体の人口の動き | 令和7年10月1日現在で県内のすべての市町村で人口が減少。1年間の減少10,898人のうち、自然減が11,321人で社会増が423人 | 移住を増やすという答えに流れず、自然減が主因だという構造を踏まえた言い方をする |
| 地震への備え | 県の被害想定では奈良盆地東縁断層帯の地震(マグニチュード7.5・最大震度7)で県全体の死者数が最大5,153人。南海トラフの地震より内陸活断層の想定が大きい | 想定の大きさに触れたうえで、自分が生活者として今できる備えを一つ挙げる |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
天理市の場合、配点が示されていない以上、選考の設計から何を重く見ているかを読み取るしかありません。三段階のうち二段階に面接を置き、その一方に集団討論を加えるという組み方から当研究会が受け取るのは、いわゆるコンピテンシー評価と同じ姿勢、つまり用意した言葉ではなく経験の中身と行動の再現性を見ようとする構えです。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 議論を前に進める関わり方 | 一般事務職の第2次試験には集団討論が置かれている | 賛否を述べた記憶ではなく、話が止まった場面で自分が何をしたかを思い出しておく |
| 二度の個人面接で崩れない一貫性 | 第2次試験と第3次試験に、それぞれ個人面接がある | 同じ出来事を、短くまとめる型と細部まで話す型の二通りで用意する |
| 検査の傾向と語る人物像の重なり | 第2次試験の対象者全員にパーソナリティ検査が課される | 検査は取り繕わずに答え、そこで出た傾向と矛盾しない話を面接でする |
| 未経験の仕事を引き受ける構え | 一般事務職の採用予定は職務経験者枠と合わせて5名程度という規模 | 知らない分野を任されたときに自分がとった手順を、実例で説明できるようにする |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
天理市は個人面接が2回ありますので、同じ話題を別の面接官から掘られる前提で備えておきましょう。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを用意しておくことが、そのまま二度分の対策になります。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。天理市は三段階すべてに違う種目が置かれていますので、順番どおりに積み上げていくのが結局は近道です。
- 最新年度の受験案内で、自分が申し込む職種の試験種目を確認する(技術職には年度試験とは別に、毎月実施される通年採用の枠があります)
- テストセンター方式の検査に慣れておく。基礎能力検査と事務能力検査で計約2時間になりますので、通しで解く感覚をつかんでおく
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い天理市の事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
- 集団討論と個人面接を分けて練習する。討論では要点を短く述べる練習を、個人面接では同じ話題を二度掘られたときの返し方を用意しておく
優先順位に注意
自治体研究にあたるステップ5は、他の受験生に差をつけるための工程です。時間が足りないなら、先に片づけるのはステップ3とステップ6です。天理市には面接カードのような提出書類がありませんので、あなたという人物の情報は、その場の受け答えだけで伝わることになります。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、天理市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
天理市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度(令和9年4月採用予定)の一般事務職では、三段階のうち二段階が人物を見る場面に充てられ、その配点は公表されていませんでした。どこかで点を稼いでどこかを捨てる、という組み立てができない試験です。
6万人が暮らし、一年に迎える一般事務職が5名程度というまちで、自分は何を引き受ける気があるのか。
討論の席でも、二度の個人面接でも、同じ人物として受け取られるところまで、手持ちの経験を言葉にしていってください。