本記事では、東近江市職員採用試験の面接対策で必要な、東近江市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

東近江市役所の面接試験では、「なぜ東近江市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。東近江市は求める人物像を採用パンフレットに明記し、受付期間内に面接カードを提出しなければ受験できないという形で、選考の入り口から人物を見る設計をとっています。

以下で扱う試験の構成は、令和8年度の前期試験(令和9年4月1日採用)で募集された上級事務職を中心とするものです。同じ職種でも前期試験と中期試験では募集の枠が分かれており、重複して受験することはできません。志望する回次を決めたうえで読み進めてください。

第1部|自治体研究編

東近江市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは東近江市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 平成17年2月11日に市制を施行した市で、総面積388.37平方キロメートルは滋賀県の総面積の約9.7%にあたる。東西約33.3キロメートル、南北約26.4キロメートルに広がる。
  • 人口は110,677人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。住民基本台帳の人口を総面積で割ると、1平方キロメートルあたり約285人となる。
  • 65歳以上の割合は27.9%、75歳以上は15.7%。同じ統計による滋賀県全体は27.3%・15.8%で、65歳以上は県を上回り、75歳以上はわずかに下回る。
  • 市域の東側は鈴鹿の山並みで、市制10周年を記念して「鈴鹿10座」(御池岳、藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳、イブネ、銚子ヶ口、日本コバ、天狗堂)を選定している。
  • 「東近江市五個荘金堂」は平成10年に国の重要伝統的建造物群保存地区へ選定された農村集落で、五個荘商人(近江商人)の出身地にあたる。面積は約32.2ヘクタール。
  • 保存地区の集落中心部には江戸後期から昭和前期の近江商人本宅群と伝統的な農家住宅が並び、外村家住宅は重要文化財に指定されている。
  • 消防は東近江行政組合消防本部が担い、近江八幡市・日野町・竜王町・愛荘町とともに2市3町の枠組みで運営されている。
  • 近江八幡市・彦根市・甲賀市・竜王町・日野町・愛荘町・多賀町と接するほか、県境をまたいで三重県のいなべ市・菰野町とも接する。

東近江市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「東近江市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

人口の規模と、その人口が広がっている範囲。まずこの二つを並べて見ると、市役所がどんな距離感で仕事をしているかが想像しやすくなります。

項目内容
総人口110,677人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)
65歳以上人口30,850人(27.9%。滋賀県全体は27.3%)
75歳以上人口17,421人(15.7%。滋賀県全体は15.8%)
総面積388.37km²(滋賀県の総面積の約9.7%)
市域の広がり東西約33.3km・南北約26.4km
人口密度約285人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
世帯数48,098世帯(令和8年4月1日現在の市公表値。同時点の市公表人口は110,336人)
市制施行平成17年2月11日
接している自治体近江八幡市・彦根市・甲賀市・竜王町・日野町・愛荘町・多賀町、三重県いなべ市・菰野町
市の花・市の木ムラサキ・イロハモミジ
市役所所在地東近江市八日市緑町10番5号

総人口と65歳以上・75歳以上の人口および割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。滋賀県全体の27.3%・15.8%も同じ統計によります。世帯数とその時点の人口は東近江市が別に公表している集計で、基準日が違いますので、住民基本台帳の値との差を増減として読むことはできません。国勢調査や県の推計人口についても、調査の設計が異なる以上、同じ土俵には載せられません。総面積・市域の広がり・市制施行日は東近江市の公表値、接している自治体・市の花と木・市役所所在地は当研究会が整理した基礎データによります。

数字から考えられる市政課題

東近江市の年齢構成には、少し変わった特徴があります。

65歳以上は27.9%と県全体の27.3%を上回る一方、75歳以上は15.7%で県の15.8%をわずかに下回ります(いずれも令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。

65歳から74歳の層が相対的に厚い、という読み方ができる並びです。後期高齢期に入る人がこれから増えていく時期にあたるとすれば、いま何を仕込むかで数年後の負荷が変わってきます。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

もう一つは市域の広がりです。東西約33.3キロメートル、南北約26.4キロメートルという範囲に11万人が暮らし、東の端は鈴鹿の山並みに達します。

同じ市の中で、平地の住宅地と山あいの集落の両方を相手にするということです。移動の時間そのものが行政コストになる構造は、公共交通、除雪、施設の配置といった判断すべてに影響します。

たとえば面接では、東近江市の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。

「東近江市は11万人ほどの市ですけれども、東西で30キロを超える広さがあって、東の端は鈴鹿の山だと知りました。65歳以上の割合は3割近くで、県全体より少し高いと聞きました。同じ市の中でも、住んでいる場所によって必要なものはかなり違ってくるのだろうと思います」

東近江市の経済・産業

近江商人を生んだ土地

  • 「東近江市五個荘金堂」は平成10年に国の重要伝統的建造物群保存地区へ選定された。種別は農村集落で、面積は約32.2ヘクタール。
  • この地区は江戸時代中期頃から活躍した五個荘商人(近江商人)の出身地にあたる。
  • 集落中心部には、江戸後期から昭和前期の近江商人本宅群と伝統的な農家住宅が並ぶ。
  • そのうち外村家住宅は重要文化財に指定されている。

ここから読み取っておきたいのは、東近江市の商いの記憶が城下町ではなく農村から他国へ出ていった商人の側にあるということです。

地元で完結せず、外へ出て取引を広げ、稼いだものを本宅として地域に返す。この往復の形は、企業誘致や販路拡大を語るときの下敷きになります。(参考:東近江市公式サイト「五個荘金堂の町並み」)

山を資源として位置づける

東近江市は市制10周年を記念して、市域の東に連なる山から「鈴鹿10座」を選定しました。御池岳や藤原岳、御在所岳といった名の並びは、山が観光の対象であると同時に、市の一部として管理する対象でもあることを示しています。

山を扱う仕事には、登山者の安全、林業、鳥獣被害、水源の保全といった顔があります。自然を志望動機に使うなら、どの顔に関心があるのかまで決めておきましょう。(参考:東近江市公式サイト「鈴鹿10座」)

県の産業構造の中で見る

市単位の経済統計は限られるため、県の枠組みも押さえておきましょう。滋賀県の令和5年度の県内総生産(名目)は7兆3,625億円で、経済成長率は名目4.4%増・実質1.3%増と3年連続の増加。

産業別の構成比は第1次産業0.4%・第2次産業46.7%・第3次産業52.4%で、製造業だけで41.6%を占め、特化係数は2.02と全国値のおよそ2倍です。三重県と接する市域を持つ東近江市は、この製造業の厚い県の中で、隣県の経済圏とも接する位置にあります。(出典:滋賀県民経済計算|令和5年度)

東近江市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、東近江市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

これから重くなる高齢化

65歳以上27.9%に対し75歳以上15.7%という並びは、支える側にも数えられる年代がまだ厚いことを示します。

ただし滋賀県全体では総人口が2013年の約142万人をピークに減少へ転じており、国立社会保障・人口問題研究所の平成30年推計をもとにした県の総合戦略では、県の高齢化率は35%近くに達し、一部の市町では40%を超える可能性があるとされています。今が仕込みの時期だという認識は、面接で語る課題意識としても筋が通ります。(出典:人口減少を見据えた幸せが続く滋賀総合戦略(概要版))

平地と山あいで異なる暮らし

東西約33.3キロメートルの市域には、市役所のある八日市の市街地から鈴鹿の山ぎわの集落までが含まれます。バスの本数、買い物先までの距離、雪の量、携帯電話の電波。

どれをとっても地区ごとに条件が違います。市の課題を一言でまとめようとすると、この差が消えてしまいます。

地区によって答えが変わる、という前提を持てるかどうかが、この市を語るうえでの分かれ道です。

農村に残る町並みを誰が支えるか

五個荘金堂の保存地区は、農村集落として選定された点に特徴があります。観光地として整備された区画ではなく、農業と暮らしが続いてきた場所に近江商人の本宅群が残っている。

だからこそ、家の継承、空き家、農業の担い手といった課題が、そのまま景観の維持と結びつきます。文化財を守るという話を、暮らしと生業の話としてつなげられると、志望動機に厚みが出ます。

災害への備えと広域の役割

滋賀県の地震被害想定は、琵琶湖西岸断層帯(マグニチュード7.8)や花折断層帯(同7.4)など内陸活断層の6ケースと、南海トラフ巨大地震を対象としています。被害が甚大とされる琵琶湖西岸断層帯地震(大津・南部・高島地域が中心。冬夕方のケース2)では、最大震度7、建物全壊38,504棟、死者1,992人、全避難者249,534人と想定されました。

この想定が中心に据えたのは湖西側の地域ですが、県は水害について「地先の安全度マップ」を県内ほぼ全域で公表しており、確率降雨ごとの浸水リスクは市域についても示されています。消防を2市3町の組合で運営していることも含め、備えは市の中だけで完結しません。(出典:滋賀県地震被害想定(概要版)|平成26年3月)

限られた人手で回す市役所

東近江市の組織は、市長直轄と14の部課、それに教育委員会事務局と行政委員会事務局で構成されています。広い市域と11万人の市民を、この体制で受け持っているということです。

市は令和8年10月から市役所の窓口業務時間を午前9時から午後4時30分までに変更します。職員の勤務時間そのものは変わりません。

開けている時間の使い方を見直す判断が現に行われているという事実は、行政運営の効率化を語るときの具体的な足がかりになります。

東近江市の重点政策|市民のしあわせを起点にした職員像

東近江市が目指すまちの姿は「うるおいとにぎわいのまち東近江市」で、自然と歴史・文化の恵みを磨き上げ、一人一人が豊かさを実感できるまちづくりを副題に置いています。この将来像と、次に見る職員像が同じ採用パンフレットの中でつながっている点が、この市の資料の読みどころです。(出典:東近江市職員採用パンフレット|令和8年度)

求める人物像は3つの動作で書かれている

市が採用パンフレットで掲げる求める人物像は、「市民のしあわせ」のために、自ら考え、行動する職員です。

そのうえで、次の3項目が示されています。抽象的な資質名ではなく、動作の形で書かれているのが特徴です。

  • 市民目線で考え、市民の声に耳を傾ける人
  • 現場を見て、仲間・市民と議論を尽くし方策をたてる人
  • 「行政のプロ」として全力でやり遂げる人

並べてみると、聞く、現場に出て議論する、やり遂げる、という順に仕事の流れがなぞられていることが分かります。議論を尽くす相手に「仲間」が明記されている点も見逃せません。

市民に向き合う力だけでなく、庁内で意見を戦わせながら案をまとめる力まで含めて書かれている、と読めます。パンフレットの表紙には「あなたの技術・知識・能力を必要としています」という一文も置かれています。

入った後の2年を先に見せている

東近江市は研修の設計も公表しています。1年目は採用前研修に始まり、新規採用職員前期研修、メンター研修を含むフォローアップ研修、採用後半年の振り返りをテーマとした意見発表と接遇を扱う後期研修。

2年目にもメンター研修と障害福祉研修が置かれています。資格や免許の取得費用については2分の1(上限2万円)の助成制度があり、令和7年度の実績は4件でした。

初任給は令和8年度前期試験の案内で、大学新卒者が24万7,104円程度と示されています。

POINT|3つの人物像を丸暗記しなくてよい

3項目をそらで言えることに、面接での価値はほとんどありません。関心のある分野を一つか二つに決めて、「①何が課題か → ②市はどんな状態をめざすか → ③いま動いている取り組み → ④市役所だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験をどう使えるか」を自分で追ってみましょう。そこで出てきた言葉が、面接カードに書ける中身になります。

悪い例「市民の声に耳を傾けられる職員になりたいです」

改善例「東近江市は東西で30キロを超える広さがあると知りました。同じ市でも山あいと市街地では困りごとが違うと思いますので、まずは現場に足を運んで、その場所の方の話を直接うかがうところから始めたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

ここに挙げた資料は、志望の中身に一番近いものから手をつければ足ります。読み終えたら、そこで知ったことを一つ、面接で使える一言にまとめてみてください。

  • 志望する職種・回次の試験案内(最新年度)。上級事務職は前期試験と中期試験で募集の枠が分かれています
  • 東近江市職員採用パンフレット(求める人物像、組織図、研修制度、初任給)
  • 東近江市の市の概要のページ(面積、市域の広がり、市制施行の経緯)
  • 五個荘金堂の町並みに関する市のページ(保存地区の性格と近江商人)
  • 滋賀県の県民経済計算・総合戦略(市を県の中に置いて見るとき)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、東近江市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。東近江市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

東近江市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

東近江市役所の面接の概要

ここからは、東近江市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

東近江市役所の面接の流れ

令和8年度の前期試験で募集された上級事務職は、1次試験と最終試験の2段階構成です。

1次試験の時点ですでに集団面接が組み込まれ、最終試験は個人面接だけで構成されます。筆記で絞ってから人物を見るのではなく、最初から並行して見ていく作りです。

項目内容(令和8年度前期試験・上級事務職/令和9年4月1日採用)
試験の段階1次試験と最終試験の2段階構成です
1次試験の内容職務基礎力試験、適性検査、集団面接の3種目。会場は東近江市役所です
職務基礎力試験の中身職務能力試験BEST-A(60分)と職務適応性検査BEST-P(20分)。BEST-Aは論理的に思考する力、文章を正確に理解する力、統計等の資料を分析する力、国内外の社会情勢への理解に関する基礎的な出題です
適性検査事務適性検査(10分)
集団面接グループごとに実施されます
最終試験個人面接(東近江市役所)
提出書類受付期間内に指定様式の面接カードを手書きで作成し、郵送・持参または採用プラットフォーム経由で提出します。紙の場合は両面印刷(A4)、データの場合はPDFです。受付期間内に提出がない場合は受験できません
受験の条件普通自動車第一種免許(AT限定を含む)を現に有するか、採用予定日前日までに取得見込みであることが必要です
採用予定(令和8年度前期試験)上級事務職は15人程度(前期試験および中期試験を合わせた人数)。ほかに保健師5人程度、福祉職5人程度、心理判定員と文化財専門員(歴史学)が若干名です
重複受験上級事務職は前期試験と中期試験を重複して受験することはできません。同一職種で同年度に不合格となった場合の再受験もできません

ここで効いてくるのが、受付期間内に手書きの面接カードを出さなければ、そもそも受験できないという条件です。願書とは別に、自分の言葉で書いた紙が選考の前提になっているということでもあります。

しかも1次試験では集団面接があり、最終試験は個人面接だけ。書いた内容は、グループの中で話すときにも、一対一で掘られるときにも、同じ土台として使われます。

カードの一行一行を、口で説明できる状態にしておく必要があります。

なお、市は職務基礎力試験について「基礎的な内容が出題されますので、特別な対策や勉強は不要です」と説明し、社会情勢に関する出題は公的部門の職員として必要な基礎知識やニュース等で報道された内容だとしています。

参考までに、令和7年度に実施された上級事務職の前期募集は、採用予定6人程度に対して申込67人、最終合格者6人で最終倍率4.7倍でした。ただし同年度は令和8年度前期試験とは段階の組み立てが異なりますので、倍率の規模感だけを受け取ってください。

上記の試験構成は、東近江市が令和8年度前期試験(令和9年4月1日採用)について公表した上級事務職の試験案内にもとづく内容です。保健師、福祉職、心理判定員、文化財専門員(歴史学)は1次試験の種目が職種ごとに異なります。配点についてはこの案内に記載がありません。試験の構成・日程・配点等は年度や回次・職種によって変わりますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の試験案内をご確認ください。

東近江市役所が求める人物像

東近江市の場合、求める人物像が採用パンフレットに動作の形で示されているため、面接での問われ方も想像しやすくなっています。「市民目線で考え、市民の声に耳を傾ける」「現場を見て、仲間・市民と議論を尽くし方策をたてる」「行政のプロとして全力でやり遂げる」。

この三つを面接対策の言葉に翻訳すれば、聞いた話、現場で見たもの、最後まで押し切った経験の三点が、それぞれ別の場面として必要になるということです。一つの経験ですべてを兼ねようとしないほうが、答えは具体的になります。

ここから先は、採用パンフレットに書かれている話ではありません。11万人の市民と388平方キロメートルの市域を、市長直轄と14の部課で受け持っているのが東近江市の役所です。

担当が細かく割られた大都市の役所とは、一人が抱える幅が違ってきます。しかも制度としては市内一律の答えを出しながら、現場では地区ごとの事情に合わせて運用することが求められます。

この二枚を同時に扱う場面が生まれやすい環境では、現場で聞いたことを庁内の議論に持ち帰れる人が力を発揮しやすいと見ています。求める人物像の二つ目に「現場を見て」と「議論を尽くし」が並んで書かれているのは、その表れと読めます。

準備の順序としては、面接カードを起点にするのが確実です。

手書きで作成し、受付期間内に提出しなければ受験できない書類ですから、そこに書いた事実がその年の自分の申告そのものになります。書ける経験を先に洗い出し、集団面接で30秒に縮める版と、個人面接で3分かけて掘り下げる版の両方を、同じ材料から用意しておきましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。東近江市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク面接カードは書きやすかったですか?手書きの面接カードが受験の前提になる市です。書いた内容を自分でどう捉えているか
② 動機・志望東近江市で働きたいと思った理由を教えてください周囲に市が多い地域です。近隣ではなくこの市を選んだ理由が、自分の言葉になっているか
③ 自己理解やり遂げられなかったことを一つ挙げてください「全力でやり遂げる」を人物像に掲げる市です。できなかった経験を正面から扱えるか
④ 経験・行動自分の目で確かめてから動いた経験を教えてください「現場を見て」が人物像に明記されています。伝聞で判断せず足を運んだ話があるか
⑤ 学業・経歴グループで意見をまとめた経験を話してください1次試験に集団面接がある市です。議論の中で自分がどの役回りを取るか
⑥ 適性・将来山あいの地区を受け持つことになったら、どう働きますか?東西33キロを超える市域を持つ市で、移動を含めた働き方が想像できているか
⑦ 公共性・社会性最近のニュースで、行政に関わると感じたものはありますか?職務基礎力試験に社会情勢の出題がある市です。日ごろの情報の取り方が表れます

この7つの並びは、受ける先が変わってもほぼそのまま当てはまります。誰もが対策してくる領域ですから、ここでの出来はスタートラインにすぎません。

評価が分かれるのは、この先に挙げる東近江市固有の問いのほうです。

合否を分けるのは「東近江市役所ならでは」の質問

「なぜ滋賀県庁ではなく、東近江市役所なのですか?」
「東近江市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

東近江市は隣接する市町が多く、周囲にも同じ規模の市があります。だからこそ二つ目の質問では、どこの市にも当てはまる答えを避けられるかどうかが試されます。

逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。ここでしか言えない答えの種になる東近江市の事実を5つ選び、扱い方と組にして並べました。

質問テーマ知っておきたい東近江市の事実答え方のヒント
市域の広さ総面積388.37km²は滋賀県の総面積の約9.7%。東西約33.3km・南北約26.4kmで、東側は鈴鹿の山並み広いという印象で終えず、移動の時間が行政の手間になるという具体に落とすと、仕事の理解として伝わります
人口と年齢構成人口110,677人、65歳以上27.9%・75歳以上15.7%(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。県全体の27.3%・15.8%と比べ、65歳以上は上回り75歳以上は下回る二つの割合の向きが違うことに触れられると、数字を自分で見た受験者だと分かります
近江商人の土地五個荘金堂は平成10年に国の重要伝統的建造物群保存地区へ選定された農村集落。五個荘商人の出身地で、外村家住宅は重要文化財観光資源としてではなく、外へ出て稼いだものを地域に返した商いの形として語ると、産業政策の話につながります
山という資源市制10周年を記念して鈴鹿10座を選定。御池岳、藤原岳、御在所岳などが含まれる登山者の安全、林業、鳥獣被害、水源保全のどれかを選んで話すと、自然を管理の対象として捉えていることが伝わります
広域で担う仕事消防は近江八幡市・日野町・竜王町・愛荘町とともに東近江行政組合消防本部の枠組みで運営されている市の仕事にも近隣と分け合う層があると述べると、県と市の役割を問う質問への答えに奥行きが出ます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

東近江市が採用パンフレットで掲げる3つの人物像に照らすと、面接で確かめられるのは、これまでに実際どう行動してきたかです。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
市民の声に耳を傾ける姿勢相手の話を最後まで聞いたうえで動いた場面を、具体的に問われます助けた話ではなく、要望と自分の考えが食い違ったときにどう扱ったかを一つ用意しておきます
現場を見て議論する力自分で確かめた事実をもとに、周囲とどう議論したかを追われます。集団面接はその場での実演にもなります調べた過程と、周囲の意見を受けて案が変わった過程を分けて話せるように整理します
やり遂げる力途中で投げ出したくなった場面から先を、時系列で聞かれます面接カードに書いた経験のうち一つを選び、終わりまでの経過を口で説明できるようにしておきます

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

東近江市の上級事務職は最終試験が個人面接だけで構成されますから、この掘り下げに割かれる時間はまとまった長さになります。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 志望する職種と回次を決める。上級事務職は前期試験と中期試験で募集の枠が分かれ、重複受験はできません
  2. 面接カードの様式を早めに入手し、受付期間を確認する。手書きでの作成と期間内の提出が受験の前提になります
  3. 面接カードに書く経験を3つ選び、それぞれ「聞いた話」「自分で見に行ったこと」「最後までやったこと」のどれに当たるかを整理する
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. この記事の第1部を読み返し、市域・近江商人の土地・山の中から志望に近い事実を2〜3個選んで、自分の言葉で説明できるようにする
  6. 同じ話を30秒版と3分版で言えるように練習する。1次の集団面接と最終の個人面接では、必要な長さが変わります

優先順位に注意

この市で最初に片づけるべきはステップ2と3です。面接カードが出ていなければ受験そのものができず、書いた内容は集団面接でも個人面接でも土台になります。ステップ5の自治体研究は、その土台の上に載せるものだと考えてください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、東近江市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

東近江市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

東近江市役所の想定問答集を見る

さいごに

本記事で扱った令和8年度前期試験の上級事務職は、1次試験と最終試験の2段階で、1次の時点から集団面接が組み込まれた構成でした。受験の前提として、手書きの面接カードを受付期間内に提出することも求められます。

書いて出したものが、集団の場でも一対一の場でも同じ土台として使われる試験だということです。東西33キロを超える市域と、そこに残る近江商人の本宅群と、東に連なる鈴鹿の山。

市が掲げる「市民のしあわせ」という言葉を、自分が見てきた具体と結びつけて語れるようになったとき、面接カードの一行は自分の志望の説明に変わります。中期試験を志望する方は、公表された自分の回次の試験案内で構成を確かめたうえで、ここまでの材料を組み直してください。