本記事では、彦根市職員採用試験の面接対策で必要な、彦根市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

彦根市役所の面接試験では、「なぜ彦根市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。彦根市は、筆記も面接もすべての試験結果を選考の判断材料としたうえで、とくに面接試験による人物評価を重視すると公表している市です。

なお、本記事で扱う試験の構成は、彦根市が令和8年度の受験案内を公表していた上級土木技術・上級電気技術と図書館司書の内容です。彦根市の採用試験は職種によって二つの系統に分かれているため、上級一般事務を志望する方は自分の系統の受験案内を手元に置きつつ、以下の市政の材料を回答づくりに使ってください。

第1部|自治体研究編

彦根市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは彦根市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 琵琶湖の東岸に位置し、国宝の彦根城を核とする城下町。市役所は元町4番2号に置かれ、米原市・東近江市と、多賀町・甲良町・豊郷町・愛荘町の4町に接する。
  • 人口は110,489人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。面積は196.87平方キロメートルで、住民基本台帳の人口をこの面積で割ると1平方キロメートルあたり約561人となる。
  • 65歳以上の割合は26.5%、75歳以上は15.1%。同じ統計による滋賀県全体の値(27.3%・15.8%)を、どちらもわずかに下回る。
  • 仏壇・バルブ・ファンデーション(縫製)の三つを地場産業として掲げている。彦根仏壇は伝統的工芸品としての国の指定を業界で初めて受けた品目。
  • 彦根城の世界遺産登録に向けた手続きが段階を追って続いており、ユネスコの事前評価の結果概要は令和6年10月に公表された。
  • 観光では、滋賀県の令和5年の入込客数の上位に、黒壁ガラス館(長浜市)やめんたいパークびわ湖(野洲市)とともに彦根城が挙がっている。
  • 市の消防は彦根市消防本部が担い、その受け持ち区域には豊郷町・甲良町・多賀町が含まれる。市職員の勤務地も、本庁舎のほか福祉センター、くすのきセンター、消防本部、彦根城博物館などに広がる。
  • 滋賀県を代表自治体とする日本遺産「琵琶湖とその水辺景観」の構成自治体の一つ(平成27年認定、令和6年に認定継続)。

彦根市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「彦根市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、人口と年齢構成、市域の広さ、隣り合う自治体など、彦根市の話を数字から始められる項目に絞って並べました。

項目内容
総人口110,489人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)
65歳以上人口29,317人(26.5%。滋賀県全体は27.3%)
75歳以上人口16,686人(15.1%。滋賀県全体は15.8%)
総面積196.87km²
人口密度約561人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
世帯数52,382世帯(令和8年6月末現在の市公表値。同時点の市公表人口は110,230人)
隣り合う自治体米原市・東近江市・多賀町・甲良町・豊郷町・愛荘町
市の花・市の木はなしょうぶ・たちばな
市役所所在地彦根市元町4番2号

総人口と65歳以上・75歳以上の人口および割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。滋賀県全体の27.3%・15.8%も同じ統計によります。世帯数と同時点の人口は彦根市が公表している市独自の集計で、基準日が異なるため住民基本台帳の値との間で増減を計算することはできません。国勢調査や県の推計人口も調査の基準が違うため、これらの数値とそのまま並べて比べないでください。総面積・隣り合う自治体・市の花と木・市役所所在地は、当研究会が整理した基礎データによります。

数字から考えられる市政課題

彦根市の年齢構成は、滋賀県全体と比べるとわずかに若い側にあります。

65歳以上が26.5%、75歳以上が15.1%で、県の27.3%・15.8%をどちらも下回ります(いずれも令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。ただし、若さの余地があるという読み方より、後期高齢期に入る人が増えていく前の時間が残っている、という読み方のほうが市政の話には向きます。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

市が独自に公表している令和8年6月末の集計では、人口110,230人に対して世帯数は52,382世帯で、1世帯あたりおよそ2.1人です。

世帯の人数が小さくなるほど、家族の中だけで抱えきれない場面が増えます。介護、こどもの見守り、災害時の避難といった仕事が、市役所の側に寄ってくるということでもあります。

たとえば面接では、彦根市の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。

「彦根市の人口は11万人ほどで、65歳以上の割合は2割半ばと、滋賀県全体よりは少し低い水準だと聞きました。ただ、1世帯あたりの人数は2人あまりと小さいので、家族の中だけでは支えきれない部分をどう受け止めるかが、これから大事になるのではと感じています」

彦根市の経済・産業

三つの地場産業

  • 彦根市が地場産業として紹介しているのは、仏壇・バルブ・ファンデーション(縫製)の三つ。
  • 彦根バルブは明治中期に始まり、百年あまりの歴史をもつ。鋳鉄製を中心に、小口径から人がくぐれる3メートルの大口径まで手がける。
  • 製品は仕切弁、バタフライ弁、ボール弁、玉形弁、消火栓と用途別に分かれ、年間生産高は250億円近くにのぼる。
  • 彦根仏壇は昭和50年5月、伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づく通商産業大臣指定を業界で初めて受けた。

つまり、暮らしの中で使う工芸品と、水道やプラントを支える産業用の部品を、同じ市内で職人の手からつくり続けてきたのが彦根市の産業です。観光の話題としてだけ城を語るのではなく、ものづくりの担い手が市内にいることまで押さえておくと、産業振興や雇用の話題に対応しやすくなります。(出典:彦根市公式サイト「彦根のバルブ」/彦根市公式サイト「彦根仏壇」)

滋賀県の産業構造の中で見る

市単位の経済統計は限られるため、県の枠組みも合わせて持っておくと説明の幅が出ます。滋賀県の令和5年度の県内総生産(名目)は7兆3,625億円で、産業別の構成比は第1次産業0.4%・第2次産業46.7%・第3次産業52.4%。

うち製造業だけで41.6%を占め、製造業の特化係数は2.02と全国値のおよそ2倍です。彦根市の地場産業が金属加工と縫製に及んでいることは、この県全体の性格の一部でもあります。(出典:滋賀県民経済計算|令和5年度)

観光と彦根城

滋賀県の令和5年の延べ観光入込客数は50,328,036人(前年比10.7%増)で、上位の観光地として黒壁ガラス館(長浜市)1,701,489人、めんたいパークびわ湖(野洲市)1,045,902人とともに、彦根城656,126人が挙げられています。

観光を語るときは、来訪者の数そのものより、その人たちが城下町のどこでお金を使い、市内の商いにどう回るのかという道筋まで考えておきましょう。(出典:滋賀県観光入込客統計調査(確定値)|令和5年)

彦根市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、彦根市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

高齢化の入り口にいる時間の使い方

彦根市の65歳以上の割合は26.5%(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)と、県全体の27.3%を下回りますが、滋賀県全体では総人口が2013年の約142万人をピークに減少へ転じています。

国立社会保障・人口問題研究所の平成30年推計をもとにした県の総合戦略では、県の総人口は126.3万人(2015年比10.6%減)、高齢化率は35%近くに達し、一部の市町では40%を超える可能性があるとされています。今の彦根市の数字は、この先の重さが来る前の準備期間にあたる、と受け止めておくのが実際に近いでしょう。(出典:人口減少を見据えた幸せが続く滋賀総合戦略(概要版))

彦根城の世界遺産登録という長い工程

彦根城は平成4年のユネスコ暫定一覧表記載に始まり、平成20年の市の推進室設置、平成26年から平成31年にかけての県市共同の学術検討、令和元年の県市協定締結と文化庁への推薦書原案提出、令和2年の県推進室設置と、30年をまたいで手続きが積み上げられてきました。

令和5年度にユネスコの事前評価制度へ申請し、その結果概要が令和6年10月に公表され、顕著な普遍的価値について世界遺産登録の可能性があると評価されました。市が掲載している想定では2027年の登録をめざすとされていますが、手続きが現在どこまで進んだかは市の最新の公表で確かめてください。(参考:彦根市公式サイト「彦根城の世界遺産登録」)

手仕事の担い手をどう引き継ぐか

仏壇もバルブも縫製も、工程の多くが人の手と経験に支えられてきた産業です。国の伝統的工芸品指定を業界で初めて受けたという事実は、裏返せば、指定から半世紀を経てなお同じ技術を保っている人がいるということでもあります。

技術の継承、販路、若い担い手の確保は、市の産業政策が正面から向き合う領域です。志望動機で産業に触れるなら、守るという言葉の内側を、担い手・販路・原材料のどれかまで具体化しておきましょう。

地震と水害への備え

滋賀県の地震被害想定は、琵琶湖西岸断層帯(マグニチュード7.8)や花折断層帯(同7.4)など内陸活断層の6ケースと、南海トラフ巨大地震を対象としています。このうち被害が甚大とされる琵琶湖西岸断層帯地震(大津・南部・高島地域が中心。冬夕方のケース2)では、最大震度7、建物全壊38,504棟・半壊83,856棟、死者1,992人、全避難者249,534人と想定されています。

彦根市はこの想定の中心地域ではありませんが、県全体の備えの水準を知る材料になります。水害の面では、県が独自の「地先の安全度マップ」で10年・100年・200年の各確率降雨ごとの浸水リスクを県内ほぼ全域について公表しています。(出典:滋賀県地震被害想定(概要版)|平成26年3月)

市域の外まで届く仕事がある

彦根市消防本部の受け持ち区域には、豊郷町・甲良町・多賀町という三つの町が含まれます。日本遺産「琵琶湖とその水辺景観」も、滋賀県と県内10市が名を連ねる枠組みです。

市役所の仕事は市境の内側で完結するとは限らず、近隣の町や県との調整が日常的に発生します。「なぜ県庁ではなく市役所なのか」に答えるときは、この二層の仕事の見え方を自分なりに整理しておくと足場になります。

彦根市の重点政策|市が職員に求める姿勢

彦根市には、職員に向けて考え方を示した文書として人材育成基本方針があります。

市はこの方針で、「変化に対応できる柔軟性を持ち、改革を実行する職員」を求める人物像に掲げています。抽象的な標語のようでいて、面接での問われ方を予想するうえでは扱いやすい言葉です。(出典:彦根市職員採用案内|令和8年度)

採用の設計に同じ考え方が通っている

彦根市は全職種に共通する説明として、筆記試験や面接試験などすべての試験結果を選考の判断材料としつつ、とくに面接試験による人物評価を重視していると明記し、人材育成基本方針の求める人物像に合う人を求めるとしています。

採用に関するQ&Aで「試験で重要視していることはありますか」と問いを立て、そこでも同じ趣旨を答えています。方針の言葉と選考の設計が地続きになっている、と読めます。

採用の実績にも同じ姿勢が出ています。令和8年度採用者のうち民間経験者は60%、新卒者は40%で、市は民間経験者と新卒者を限定せずに選考していると説明しています。

出身地も採用の条件にはしておらず、彦根市が好きな人、彦根市を今以上によくしたいという熱意がある人であれば大歓迎だとしています。市外の出身であることを引け目にする必要はなく、その分「なぜこの市か」を語る材料を自分で集めることが求められます。

入った後の設計も公表されています。彦根市は採用後3年間を集中育成期間と位置づけ、階層別研修や特別研修に加えて滋賀県市町村職員研修センター等への派遣研修を行っています。

令和6年度の育児休業取得率は男性職員42%・女性職員100%です。働き方の話題を志望動機に混ぜるなら、こうした数字まで見たうえで話すほうが説得力が出ます。

令和8年度に変わったところ

令和8年度は、過去の試験からの変更点も公表されています。

図書館司書では第2次試験の作文試験が廃止され、学芸員(考古学)では第2次試験までだった選考が第1次試験までに短縮されたうえで、第1次の集団面接と第2次の作文試験が廃止されました。書く試験の比重が減った分、口で答える場面の重みが増している職種がある、という受け止め方ができそうです。

POINT|三つの地場産業を並べて覚えなくてよい

名称を覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態をめざすか → ③いま動いている取り組み → ④市役所だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験をどう使えるか」の順で調べましょう。

悪い例「彦根市の伝統産業を守る仕事がしたいです」

改善例「彦根仏壇のように国の指定を受けた技術が市内に残っていますので、つくり手の高齢化が進む中で若い担い手にどう引き継ぐかを一緒に考える仕事に関わりたいです。まずは窓口や事務で市の仕組みを覚えて、そのうえで産業の担当に挑戦したいと思っています」

あわせて確認したい公式資料

下の資料は、志望の中身に近いものから一つずつ当たれば十分です。読んだあとに、自分の関心と結びつく箇所を口で説明できるかどうかを確かめてください。

  • 志望職種の受験案内(最新年度)。彦根市は教養試験を課す系統と適性検査を課す系統に分かれています
  • 彦根市職員採用案内(求める人物像・研修制度・採用実績・勤務地)
  • 彦根市の地場産業の紹介ページ(仏壇・バルブ・ファンデーション)
  • 彦根城の世界遺産登録に関する市の推進ページ
  • 滋賀県の県民経済計算・観光入込客統計調査(市を県の中に置いて見るとき)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、彦根市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。彦根市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

彦根市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

彦根市役所の面接の概要

ここからは、彦根市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

彦根市役所の面接の流れ

彦根市の採用試験は、職種によって教養試験を課す系統と適性検査を課す系統に分かれています。

令和8年度に受験案内が公表されていた上級土木技術・上級電気技術は後者にあたり、点数のつく種目が適性検査と個人面接の二つだけという構成でした。図書館司書は同じ適性検査の系統ながら、専門試験と集団面接を含む2段階の構成です。

項目内容(令和8年度・上級土木技術/上級電気技術・図書館司書)
試験の系統職種により「教養試験実施試験」と「適性検査実施試験」の2系統。上級土木技術・上級電気技術・図書館司書はいずれも適性検査を課す系統です
試験の構成(上級土木技術・上級電気技術)試験種目は適性検査(事務能力、性格)と面接試験(個人面接)の2種目のみ。第1回・第2回の年2回実施されます
試験の構成(図書館司書)第1次試験=適性検査(テストセンター)+専門試験+集団面接、第2次試験=個人面接(彦根市役所本庁舎)の2段階です
適性検査の中身全国47都道府県300か所以上のテストセンター方式。能力検査(多肢選択式)と性格・適応性検査で構成され、市は「公務員試験対策を必要としない内容」と説明しています
合否の決まり方各試験種目にそれぞれ合格基準があり、一つでも基準に達しない場合は不合格。得点および順位が上位であっても不合格となる場合があります
申込み彦根市電子申請サービスのみで受付。郵送・窓口での受付はなく、申込時に証明写真(縦4センチ・横3センチ程度、最近6か月以内に撮影した上半身・脱帽・正面向き)の添付が必要です
結果の開示受験者本人の口頭による開示請求により、試験の合計得点およびその順位が開示されます(合格発表の日から1か月間・事務局窓口のみ)
実施主体彦根市職員選考委員会(事務局は彦根市人事部人事課内)

ここで効いてくるのが、種目ごとに合格基準が置かれ、一つでも届かなければ順位に関係なく不合格になるという決まり方です。令和7年度の実績を見ると、上級土木技術は受験者2人・第1次合格2人・最終合格2人、上級電気技術は受験者1人・第1次合格1人・最終合格1人でした。

倍率だけを見れば競争は緩やかに映りますが、受験者が少ない年でも基準に届かなければ合格にはなりません。点数のつく種目が二つしかないうちの一つが個人面接ですから、そこで基準に届く受け答えができるかどうかが、合否を大きく左右します。

上記の試験構成は、彦根市が令和8年度に公表した上級土木技術・上級電気技術の受験案内および図書館司書の受験案内にもとづく内容です。彦根市の採用試験は職種によって教養試験を課す系統と適性検査を課す系統に分かれており、上級一般事務および上級一般事務(社会人経験者)については掲載期間の終了により本記事で試験構成を扱っていません。試験の構成・日程・配点等は年度や職種によって変わりますので、受験の際は必ずご自身の職種の最新の受験案内をご確認ください。

彦根市役所が求める人物像

市が人材育成基本方針で掲げているのは「変化に対応できる柔軟性を持ち、改革を実行する職員」という一文です。

面接対策の言葉に翻訳すれば、①決まったやり方が通じない場面で手が止まらないこと、②「変えたほうがいい」と気づいた事柄について実際に手を動かしたこと、の二つが問われる、と読むことができます。気づきの鋭さより、その後に動いた事実のほうが確かめられる、と考えておきましょう。

もっとも、この一文からは仕事の中身までは見えてきません。以下は、人口11万人台という規模から当研究会が見ている構造です。

この規模の市では、部門が細かく分かれた大都市ほど担当が限定されず、一人が要綱を読み解くところから窓口で住民に説明するところまでを地続きで抱える場面が出やすくなります。彦根市の場合、勤務地が本庁舎だけでなく福祉センター、くすのきセンター、消防本部、彦根城博物館にまで広がっていることが、その幅の広さを具体的に示しています。

初めての分野でも自分で調べて形にする粘りと、相手が誰であっても崩れない丁寧さは、この環境では効きやすい資質だと見ています。

上級土木技術・上級電気技術の試験に限って言えば、点数のつく種目が適性検査と個人面接の二つしかありません。面接の一往復が結果に届くまでの距離が、それだけ短いということです。

持ち時間の短い試験ほど、話す材料は多いより深いほうが有利になります。学生時代や前職で自分が実際に動いた場面を三つか四つに絞り、そのどれが彦根市の仕事のどの場面と重なるかまで言えるようにしておきましょう。

重なりを説明できる材料が一つあれば、掘り下げが二段三段と続いても足元は崩れません。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。彦根市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日はどちらから来られましたか?申込みが電子申請だけで完結する市です。この数十秒が、市の職員と肉声で交わす最初のやりとりになります
② 動機・志望民間企業ではなく彦根市役所を選んだ理由を教えてください令和8年度採用者の6割が民間経験者という市です。他の進路と比べたうえでの選択になっているか
③ 自己理解ご自身の弱みは、仕事の場面でどう出ますか?適性検査を課す系統では、性格・適応性を見る検査が試験種目に入っています。取り繕った自己像と、答えの端々に出る素の反応がずれていないか
④ 経験・行動これまでで一番うまくいかなかったことと、そのあと何をしたかを教えてください「改革を実行する職員」という市の言葉に照らして、気づいたところで止まったのか、手を動かしたのか
⑤ 学業・経歴専攻(または前職)の内容を、その分野を知らない人にも分かるように説明してください専門を見る職種でも、その分野の外にいる相手に説明する場面があります。専門を専門でない相手の言葉に置き換えられるか
⑥ 適性・将来希望と違う部署に配属されたら、どう働きますか?勤務地が本庁舎から博物館や福祉の現場にまで広がる市で、どこに置かれても仕事を覚えていけるか
⑦ 公共性・社会性最近気になった彦根市の出来事はありますか?関心の矢印が市に向いているか。城の話に寄りすぎず、暮らしの側の話にも触れられるか

ここまでの7つは、受験先が変わっても大枠は動きません。だからこそ受験者の側も一通り備えてきますし、備えていること自体では差がつかない領域です。

差が開くのは次の、彦根市を知らなければ答えようのない質問のほうです。

合否を分けるのは「彦根市役所ならでは」の質問

「なぜ滋賀県庁ではなく、彦根市役所なのですか?」
「彦根市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

二つ目は、答えの中身より、どこまで具体に降りられるかが出る質問です。城と城下町の話は受験者の多くが用意してきますから、そこから先に自分の材料があるかどうかで開きが生まれます。

逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。面接で使いやすい形に絞って、彦根市の事実と答え方を並べました。

質問テーマ知っておきたい彦根市の事実答え方のヒント
人口と年齢構成人口110,489人、65歳以上26.5%・75歳以上15.1%(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。県全体の27.3%・15.8%をどちらも下回る県より若いという事実で止めず、市が公表する世帯数52,382世帯まで見て、1世帯あたりが2人あまりだという話へつなぐと、暮らしの側から市政を語れます
なぜ県庁ではなく市役所か市職員の勤務地は本庁舎のほか福祉センター、くすのきセンター、消防本部、彦根城博物館などに広がる制度上の役割分担を説明するのではなく、住民と同じ場所に立つ仕事があることを、自分が見てきた現場の話と重ねて話します
彦根市の産業仏壇・バルブ・ファンデーション(縫製)が地場産業。彦根バルブは年間生産高250億円近く、彦根仏壇は昭和50年5月に業界で初めて国の伝統的工芸品指定を受けた三つを並べて言うところで止めず、担い手・販路・技術の継承のどれか一つまで踏み込むと、産業の話が観光の話とは別物であることが伝わります
彦根城と世界遺産令和6年10月に公表されたユネスコの事前評価で、顕著な普遍的価値について登録の可能性があると評価された。市の掲載する想定では2027年の登録をめざす登録の可否を予想するのではなく、めざす過程で市に生じる仕事(保存、景観、受け入れ体制)に目を向けると、観光の話が行政の話に変わります
災害への備え県の地震被害想定は内陸活断層6ケースと南海トラフ巨大地震が対象。県は独自の「地先の安全度マップ」で浸水リスクを県内ほぼ全域について公表している県の想定を借りて話すときは、どの想定のどのケースの数字かを言い添えます。数字の扱いが丁寧な受験者は、それだけで印象が変わります

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

彦根市が人材育成基本方針で示す「変化に対応できる柔軟性を持ち、改革を実行する職員」という言葉に照らすと、面接で確かめられるのは、これまでに実際どう行動してきたかです。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
変化に対応できる柔軟性予定どおりに進まなくなった場面で、何をやめ、何に切り替えたかを順に聞かれます途中で計画を変えた経験を一つ選び、変えた理由と、変えたあとに何が動いたかまで書き出しておきましょう
改革を実行する力気づいた問題について、誰にどう働きかけて動かしたのかを段階で追われます提案しただけで終わった話ではなく、手順や道具が実際に変わった話を用意します。規模は小さくてかまいません
幅の広い持ち場に耐える力希望と違う配属や、初めての分野を任された場合の働き方を問われます勤務地が本庁舎から博物館や福祉の現場まで広がる市であることを踏まえ、未経験の仕事を覚えたときの手順を具体的に話せるようにします

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

彦根市の技術職のように点数のつく種目が少ない試験では、この一往復ごとの重みがさらに増します。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 志望する職種の受験案内を探し、教養試験を課す系統と適性検査を課す系統のどちらに当たるのかを最初に確かめる
  2. 彦根市電子申請サービスでの申込みに備え、証明写真のデータを用意する(技術職の案内では縦4センチ・横3センチ程度、6か月以内の撮影。規格は自分の職種の案内で確かめる)。申込内容は面接での発言と食い違わないよう控えを残しておく
  3. 高校・大学・前職の経験を棚卸しし、自分が手を動かして何かを変えた場面を3つ選び出す
  4. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  5. この記事の第1部を読み返し、産業・城・人口の三つの中から志望に近い事実を2〜3個選んで、自分の言葉で説明できるようにする
  6. 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく

優先順位に注意

ステップ5で集める彦根市の材料は、ほかの受験者と差がつく部分です。ただし時間が足りないときは、ステップ3の経験の棚卸しを先に終わらせてください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、彦根市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

彦根市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

彦根市役所の想定問答集を見る

さいごに

彦根市の採用試験は職種で系統が分かれており、本記事で扱った上級土木技術・上級電気技術では、点数のつく種目が適性検査と個人面接の二つだけでした。市自身が、すべての試験結果を見たうえでとくに面接での人物評価を重視すると書いている試験でもあります。

城下町の来歴も、仏壇やバルブの手仕事も、それを守り継ぐ市役所の仕事として語れるところまで持っていければ、限られた面接の時間でも十分に伝わります。上級一般事務を志望する方は、系統の違う受験案内が公表され次第そちらを確かめたうえで、ここまでの材料を組み直してください。