本記事では、鳥羽市職員採用試験の面接対策で必要な、鳥羽市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
鳥羽市役所の面接試験では、「なぜ鳥羽市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。令和9年4月採用の後期募集は、第一次試験が筆記、第二次試験が口述試験ほかという2段階の構成です。
しかも第一次の職務基礎力試験について、市は特別な準備や勉強の必要のない試験だと説明しています。何で見られるかは、はっきりしています。
海に開き、島を抱える市。その条件は、採用の案内にまで顔を出しています。
第1部|自治体研究編
鳥羽市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは鳥羽市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 住民基本台帳の人口は16,049人です(令和8年1月1日現在)。市域は107.34km²で、人口を面積で割ると約150人/km²になります。
- 有人離島が4島(答志島・神島・菅島・坂手島)あり、市営定期船が佐田浜と4離島の6漁港を結んでいます。答志島は鳥羽港の北東約2.5kmにある市内最大の島で、答志・答志和具・桃取の3集落からなります。
- 神島は鳥羽港の北東約14kmにあり、4島で最も遠い島です。伊勢湾口に位置し、愛知県の伊良湖岬からは西方約3.5kmという距離関係にあります。
- 接する自治体は3団体で、伊勢市・志摩市のほか、海上を隔てて愛知県田原市と隣り合っています。
- 65歳以上の割合は41.9%、75歳以上は24.3%で、三重県全体の30.6%・18.2%を大きく上回ります(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。
- 南海トラフ地震の被害想定では、理論上最大クラス(L2)で沿岸最大津波高24m、30cmの津波の到達時間は最短3分と予測されています。
- 令和9年4月1日採用については前期募集と後期募集が実施され、そのほかに船員(航海及び機関)と看護師職の通年募集が行われています。
- 市の花はハマナデシコ、市の木はヤマトタチバナ。市役所は鳥羽市鳥羽三丁目1番1号にあります。
鳥羽市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「鳥羽市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
人口1万6千人台という規模と、4割を超える高齢化率、そして4つの有人離島。この3点を頭に置くと、鳥羽市役所の仕事がどういう性質のものか、おおよその想像がつきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 16,049人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳) |
| 65歳以上人口 | 6,723人(41.9%。三重県全体は30.6%) |
| 75歳以上人口 | 3,904人(24.3%。三重県全体は18.2%) |
| 総面積 | 107.34km² |
| 人口密度 | 約150人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 有人離島 | 4島(答志島・神島・菅島・坂手島)。市営定期船が佐田浜と4離島の6漁港を結ぶ |
| 隣接自治体 | 伊勢市・志摩市、愛知県田原市(海上を隔てて隣接) |
| 市役所所在地 | 鳥羽市鳥羽三丁目1番1号 |
| (参考)三重県の人口 | 1,724,891人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳) |
総人口と65歳以上・75歳以上の人口および割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。三重県全体の数値も同じ統計によるもので、割合の分母にもこれを用いています。国勢調査や県が別に公表している推計人口とは調査の基準が異なりますので、それらの数値と並べて増減を計算することはできません。総面積・隣接自治体・市役所所在地は当研究会が整理した基礎データによるもので、人口密度は上記の住民基本台帳人口から算出しています。
数字から考えられる市政課題
65歳以上41.9%、75歳以上24.3%。市民のほぼ4人に1人が75歳を超えているということです。
三重県全体の30.6%・18.2%と比べると、65歳以上で11ポイント以上、75歳以上で6ポイント以上の開きがあります。県が令和22年の姿として示している高齢化率は36.9%です(出典:三重県人口減少対策方針|令和5年8月)。
この推計は国勢調査を基準にしていますので、住民基本台帳による鳥羽市の数字と厳密に並べることはできませんが、県が20年後に想定する高さの水準で、鳥羽市はすでに日々の行政を回しています。
ここに、島という条件が重なります。人口1万6千人台の市に4つの有人離島があり、島と本土は市営定期船で結ばれています。
高齢化と、海で隔てられた居住地。この二つが同時に効いてくる市だということです。買い物も通院も、本土側の住民とは前提が違います。
福祉や地域振興を志望分野にするなら、支援の中身より先に、届け方を考える癖をつけておいてください。面接では、鳥羽市の数字を次のようにつないで話せます。
鳥羽市の経済・産業
宿泊が数字に出る市
令和6年の県全体の観光レクリエーション入込客数は35,082千人(前年比99.9%)、観光消費額は5,236億円(前年比107.3%・354億円増)でした。主要観光地点の入込客数では、鳥羽市旅館街が1,605千人で県内の上位に入っています。
地域別に見ると、鳥羽市が含まれる伊勢志摩は10,872千人です(出典:三重県観光レクリエーション入込客数|令和6年)。
県の統計に「旅館街」という単位で名前が出てくることが、この市の産業の性格をよく示しています。日帰りで通り過ぎる場所ではなく、泊まる場所として数えられているということです。
宿泊が中心だということは、行政の仕事にも影響します。宿泊施設が集まる地域では、上下水道、ごみ、交通、そして災害時の対応まで、観光客の数を織り込んで設計しなければなりません。
住んでいる人の数と、その日そこにいる人の数が大きく違う市です。観光を志望分野にするなら、集客の企画より、受け入れる側の仕組みに関心を向けたほうが、市の実務に近づきます。
伊勢志摩という圏域のなかで
鳥羽市は伊勢市と志摩市に接しています。参考までに、隣接する伊勢市にある伊勢神宮では、第63回神宮式年遷宮が令和15(2033)年秋の遷御に向けて進行中で、約8年間にわたり33の祭りと行事が執り行われる予定です(参考:第63回神宮式年遷宮の行事日程|神宮公式サイト)。
圏域全体に人が動く年が続くということでもあります。
鳥羽市単独の話ではありませんが、宿泊を担う市として無関係ではいられません。近隣自治体で起きることが、そのまま自分の市の来訪者数に響くという関係を押さえておいてください。
県の産業統計との距離
県全体の姿も一応押さえておきましょう。令和2年の製造品出荷額等は県全体で約10兆円、全国9位です。
分野別では電子部品・デバイス・電子回路が全国シェア11.7%で全国1位、輸送用機械器具が全国6位となっています(出典:三重県の製造品出荷額等(工業統計・経済センサス)|令和2年)。ただし、これらの工場が集まっているのは県北部です。
鳥羽市の志望動機を県の製造業の話から組み立てると、この市の実像から離れます。県の数字は背景として置き、話の中心は海と島と宿泊のほうに置いてください。
鳥羽市の主な行政課題
面接で「市の課題」を問われたとき、鳥羽市の場合はどこから話せばよいのでしょうか。押さえておきたい論点を4つに絞りました。
3分で来る津波と、24mという高さ
三重県が令和8年3月に公表した南海トラフ地震被害想定では、理論上最大クラス(L2)の場合、鳥羽市の沿岸最大津波高は24m、沿岸に30cmの津波が到達するまでの最短時間は3分、1mの津波の到達時間は8分と予測されています。県全体では、L2で死者数約50,000人、うち津波による死者が約41,000人と推計されており、建物全壊・焼失は約222,000棟です(出典:三重県南海トラフ地震被害想定|令和8年3月)。
今回の想定には、先に起きた地震のあとで残りの想定震源域が動く「半割れケース」も新たに加えられました。3分で逃げ切れる場所に、どれだけの人がいるか。
この問いが、鳥羽市の防災の出発点になります。島の集落では、本土から支援が届くまでの時間も別に考えなければなりません。
島の暮らしを支える仕組み
答志島、神島、菅島、坂手島。4つの有人島があり、市営定期船が佐田浜と4離島の6漁港を結んでいます(参考:鳥羽市の離島振興について|鳥羽市公式サイト)。
定期船は観光の足である前に、島に住む人の生活の足です。通院も、通学も、買い物も、船の時刻に規定されます。
鳥羽市が船員(航海及び機関)を通年で募集しているのは、この仕組みを市自身が担っているからです。交通政策が、そのまま福祉政策であり教育政策でもあるという重なり方をしています。
志望動機で「地域の足を守りたい」と言うなら、この市ではそれが具体的な職務として存在することを知っておいてください。
4割を超える高齢化率のもとでの行政
65歳以上41.9%、75歳以上24.3%という構成は、支える側と支えられる側の比率がすでに変わっているということです。地域の行事も、見守りも、消防団のような担い手も、同じ層の人たちが重ねて担っている場合が多くなります。
県が課題として挙げる令和22年の高齢化率36.9%、生産年齢人口約79万人という見通し(前掲の方針)は、鳥羽市にとっては未来の話ではありません。行政が肩代わりする範囲と、住民と一緒に続ける範囲の線引きを、その都度考え直す仕事になります。
若い世代がどこへ行くか
三重県人口減少対策方針は、転出超過数の約8割を15歳から29歳の若者が占めること、県内高校から大学へ進学した人のうち県内大学へ進む人が約2割にとどまること、県内高等教育機関卒業生の県内就職率が約5割であることを課題に挙げています(前掲の方針)。人口1万6千人台の市では、この流れが直接効きます。
ただ、鳥羽市の後期募集には一般事務職10人程度に加え、保育士、消防職、文化財専門員、社会福祉士または精神保健福祉士、看護師、技術職が並んでいます。市が自前で確保しようとしている職種の幅そのものが、この市の課題の一覧にもなっていると読めます。
重点政策|島と本土を同じ市として動かす
鳥羽市が令和9年4月採用の後期募集で公表した実施要項には、この市の運営方針が具体的な形で現れている箇所があります。
保育士の職務内容に「※離島の保育所へ勤務する場合もあります」、看護師の職務内容に「主として、市内診療所の看護業務に従事します。※離島の診療所へ勤務する場合もあります」と明記されているのです(出典:令和9年4月採用鳥羽市職員採用試験実施要項(後期募集)|令和9年4月採用)。島にも保育所があり、診療所があり、そこに市の職員が配置されているということです。
採用の案内に出ている運営の姿勢
人口1万6千人台の市が、4つの島それぞれの生活を成り立たせようとすれば、必要になるのは施設だけではありません。そこで働く人です。
市営定期船を動かす船員、島の保育所に立つ保育士、島の診療所で働く看護師。
鳥羽市が船員と看護師について通年で募集を続けているのは、欠員が出た瞬間に島の暮らしが止まる職種だからだと考えるのが素直です。行政計画の文書を読むより、この募集の並びを見るほうが、市が何を守ろうとしているかは早くわかります。
一般事務職に示された仕事の幅
もう一つ、実施要項が示している大事な情報があります。一般事務職の主な職務内容として、市は「企画、庶務、予算、税、保険、福祉、地域振興、社会基盤整備、教育行政等の様々な行政事務に従事します。」と書いています(前掲の実施要項)。
一つの職種の説明に、これだけの分野が並ぶ。採用予定は10人程度です。
分野ごとに人を張り付けられる規模ではないということが、この一文からそのまま読み取れます。志望動機を特定分野に絞って語るのは構いませんが、そこだけをやりたいという印象で終わらないよう気をつけてください。
募集の並びの次に読むもの
募集の並びから読み取れるのは、鳥羽市が人を切らせたくない職種はどれか、というところまでです。島の暮らしをこの先どう支えていくのかは、鳥羽市公式サイトの計画に書かれています。
一般事務職は10人程度の採用で、企画から教育行政まで幅広く担当します。
関心のある分野を読んだあと、その隣の分野にも目だけは通しておいてください。配属の希望を聞かれたときに、一つの分野しか答えられない状態を避けられます。
POINT|「島がある市」を観光の話で終えない
離島は鳥羽市の魅力ですが、面接で語るなら住んでいる人の側から見てください。船の時刻が生活を規定し、保育所も診療所も市の職員が支えています。観光資源としての島と、生活の場としての島。この二つを分けて話せると、受け答えが一段実務に寄ります。
悪い例「美しい島々を持つ鳥羽市の魅力を、全国に発信する仕事がしたいです」
改善例「島にお住まいの方は、通院も買い物も船の時間に合わせておられると聞きました。観光で来る人と、そこで暮らす人では必要なことが違うと思いますので、暮らしのほうを支える仕事に関わっていきたいです」
あわせて確認したい公式資料
鳥羽市は前期募集と後期募集、それに通年募集があります。まず自分が受ける募集の実施要項を開いてください。県の資料は、そのあとで背景を補うために使います。
- 自分が受ける募集(前期・後期・通年)の鳥羽市職員採用試験実施要項
- 鳥羽市の職員採用情報ページ(募集職種と試験方式の選択について案内されています)
- 鳥羽市の離島振興に関するページ(4島と市営定期船の関係を押さえるため)
- 三重県南海トラフ地震被害想定(沿岸の津波高と到達時間を押さえるため)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、鳥羽市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。鳥羽市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
鳥羽市役所の面接の概要
令和9年4月採用の後期募集の実施要項を読むと、この試験が何で決まるのかは早い段階で見当がつきます。ここからその中身を確かめていきます。
前期募集や通年募集は別の要項によるものですので、ご自身が受ける募集の要項とあわせて読んでください。
鳥羽市役所の試験の流れ
後期募集は、第一次試験が筆記、第二次試験が口述試験ほかという2段階です。ここで決定的に重要なのが第一次試験の性格で、全職種共通の職務基礎力試験について、市は試験に向けた特別な準備や勉強の必要のない試験だと説明しています。
つまり、この試験は受験者をふるいにかけるための知識量を競う場ではありません。採否を分ける材料の大半が、第二次試験の口述試験に集まる構成だということです。
| 項目 | 内容(令和9年4月採用・後期募集) |
|---|---|
| 段階構成 | 第一次試験(筆記)と第二次試験(口述試験ほか)の2段階 |
| 第一次試験 | 全職種共通で職務基礎力試験(職務能力試験・職務適応性検査)。市は特別な準備や勉強の必要のない試験と説明しています |
| 職務能力試験の内容 | 論理的に思考する力、文章を正確に理解する力、統計等の資料を分析する力、国内外の社会情勢への理解等を認識するための基礎的な内容に関する択一式による試験 |
| 職務適応性検査の内容 | 公的部門の職員としての職務への適応性について、性格傾向の面からみる択一式による検査 |
| 第一次試験の受験方式 | 申込時に、一斉試験方式(試験日に会場へ集合。会場は鳥羽市役所西庁舎)とテストセンター方式(全国47都道府県・約200カ所の会場で試験期間中の都合のよい日時に受験)のいずれかを選択します |
| 第二次試験(一般事務職) | 口述試験(個人面接) |
| 第二次試験(他職種の追加科目) | 保育士、技術職、社会福祉士または精神保健福祉士は専門試験が加わります。消防職には体力試験が加わります |
| 配点 | 実施要項に、口述試験(個人面接)の配点・満点・合否判定の比重の記載はありません |
| 提出書類 | 「面接カード」という名称の書類はありません。WEB申込の本登録で住所や学歴等の必要項目に回答すると、その内容によってエントリーシートが作成されます。合格者は卒業証明書、学業成績証明書、各種免許・資格証、健康診断書等を提出します |
| 受験票 | A4サイズのコピー用紙に原則カラー印刷して持参。一斉試験方式は本人が署名して第一次試験に、テストセンター方式は第二次試験に持参します |
| 申込方法 | 原則としてパソコン・スマートフォン等からのWEB申込のみ |
| 採用予定人員 | 一般事務職10人程度、保育士2人程度、消防職4人程度、文化財専門員1人、社会福祉士または精神保健福祉士1人、看護師1人程度、技術職(土木)若干名、技術職(建築)若干名 |
| 他の募集 | 令和9年4月1日採用については前期募集と後期募集が実施され、そのほか船員(航海及び機関)・看護師職の通年募集が行われています |
構成を並べると、力を入れる先は自然に定まります。第一次試験は特別な勉強を要さないと市が明言し、第二次試験は一般事務職なら口述試験(個人面接)だけ。
面接の一回で、ほぼすべてが決まる試験だと考えて準備してください。配点は公表されていませんので比重を断定はできませんが、科目の並び方が示しているものは明確です。
上記の試験構成は、鳥羽市が公表している令和9年4月採用鳥羽市職員採用試験実施要項(後期募集)および職員採用情報ページにもとづく内容です。第二次試験の口述試験は個人面接であり、集団面接や集団討論(グループディスカッション)の記載は実施要項にありません。体力試験は消防職に加わる科目で、一般事務職には課されません。近隣自治体との共同実施や統一試験に関する記載はなく、テストセンター方式は民間の試験サービスの会場を利用するものであって共同実施を意味しません。なお、鳥羽市と志摩市は隣接する別団体で、職員採用試験もそれぞれ独立して実施されています。試験の構成・配点等は年度や募集によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください(出典:鳥羽市職員採用情報|令和8年度)
鳥羽市役所が求める人物像
確認した鳥羽市の後期募集の実施要項と職員採用情報ページには、「求める人材像」や「めざす職員像」にあたる公表文言は置かれていません。ただ、この市の場合は代わりになる記述があります。
一般事務職の主な職務内容として並べられた「企画、庶務、予算、税、保険、福祉、地域振興、社会基盤整備、教育行政等」という列挙と、保育士・看護師の職務内容に添えられた離島勤務の注記です。
市が書いているのはこの二つの記述までですので、そこから先は実施要項の言葉づかいをたどりながら、鳥羽市役所で働くとはどういうことかを考えてみます。採用予定10人程度の一般事務職に対して、これだけの分野が示されているということは、担当が数年で入れ替わり、そのたびに初めての制度を扱うことになるという意味です。
知っていることの量より、知らないことに出会ったときの動き方のほうが、この規模の市では効いてきます。
前例を探し、詳しい人に聞き、期限までに形にする。派手さのない力ですが、外部から見えにくいぶん、面接で確かめようとされる部分でもあります。
もう一つ、人口1万6千人台という規模には、別の意味もあります。職員と市民の距離が近く、島の集落まで含めれば、顔の見える関係のなかで仕事をすることになります。
相手が誰かを知っている状態で、それでも同じ基準で判断できるか。丁寧さと公平さの両方が要る環境だといえます。
では何を用意すればよいか。実際にやってきたことのなかから、初めての役割を任されて手探りで形にした経験を、一つ選び出しておくことです。
鳥羽市の後期募集は、一般事務職なら第二次試験の個人面接が唯一の口述の場になります。その一回で何度掘り下げられても答えが尽きない話を持っているかどうかが、そのまま結果に直結します。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。鳥羽市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 第一次試験はどちらの方式で受けられましたか | 一斉試験方式とテストセンター方式のどちらもありうる。答えようのある事実から、構えを解いて話し出せるか |
| ② 動機・志望 | 三重県内にも市役所は多くありますが、鳥羽市を選んだ理由を教えてください | 島を抱える市であることを、志望の理由に取り込めているか |
| ③ 自己理解 | WEB申込で入力した内容のうち、いちばん見てほしいのはどこですか | 入力内容からエントリーシートが作成される方式。自分の書いたものを把握しているか |
| ④ 経験・行動 | やったことのない役割を任されて、形にした経験はありますか | 一般事務職が企画から税、福祉、教育行政まで携わる市。未経験の分野への向き合い方 |
| ⑤ 学業・経歴 | これまでの学びや経験で、鳥羽市の仕事に生きそうなものはありますか | 職務基礎力試験では測らない部分を、口述試験で確かめにくる |
| ⑥ 適性・将来 | 勤務地や担当分野が想定と違っても続けられますか | 離島勤務のある職種を持つ市。勤務の条件を現実的に理解しているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近気になった、防災や地域交通に関するニュースはありますか | 津波と定期船という市の中心論点に、自分の関心を接続できるか |
ただ、この7つで差がつくことはあまりありません。受験者全員が対策してくる領域だからです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「鳥羽市ならでは」の質問です。
合否を分けるのは「鳥羽市役所ならでは」の質問
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
こうした質問に答えるための「鳥羽市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい鳥羽市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 島という条件 | 有人離島が4島(答志島・神島・菅島・坂手島)あり、市営定期船が佐田浜と4離島の6漁港を結ぶ。市は船員を通年で募集している | 島を観光資源として語らず、船が生活の足であるという側から入ってください。市が船員を自前で採用している事実まで触れると具体になります |
| 年齢構成 | 65歳以上41.9%、75歳以上24.3%で、三重県全体の30.6%・18.2%を大きく上回る(令和8年1月1日現在の住民基本台帳) | 高いという事実で止めず、県が令和22年の姿として示す36.9%という水準に照らして話すと、緊急度の理解が伝わります |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 接する3団体のうち愛知県田原市とは海上を隔てて隣接。神島は伊勢湾口にあり、愛知県の伊良湖岬からは西方約3.5km | 住民に近いという一般論に、島の集落まで含めた「近さ」とは何かという具体を足してください |
| 防災 | 南海トラフ地震のL2想定で沿岸最大津波高24m、30cmの津波の到達時間は最短3分、1mの到達は8分 | 数字を並べるより、3分という時間で何ができるかという設計の話に進めてください。島の集落では支援到着までの時間も別問題です |
| 観光の実態 | 令和6年の主要観光地点で鳥羽市旅館街が1,605千人。伊勢志摩地域全体では10,872千人 | 宿泊が中心の市であることを踏まえ、来訪者数の話ではなく受け入れ側の仕組みの話に寄せると、行政の視点になります |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。鳥羽市は人材像を公表していませんので、ここでは後期募集の選考の設計と職務内容の記載に照らして、3つの観点を挙げます。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 未経験の仕事に手をつけられるか | 口述試験での深掘り。一般事務職は企画から税、福祉、教育行政まで幅広く従事すると示されています | 成果の大きさではなく、手探りだった時期に自分が最初にとった行動と、そこから完成までに変えた判断を話せるようにしてください |
| 勤務の条件を現実として受け止めているか | 離島勤務のある職種を持つ市での、配属や勤務地に関する質問 | 「どこでも大丈夫です」で終えず、島の暮らしや定期船の役割を調べたうえで答えられる状態にしておきましょう |
| 申込に書いた内容が口述でも通用するか | WEB申込の入力内容からエントリーシートが作成され、それを前提に口述試験が行われる | 申込の入力内容を控えておき、一文ごとに「これを掘られたら何を足すか」を書き添えておいてください。口述の機会は一度です |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
鳥羽市の後期募集では、一般事務職の口述試験は第二次試験の一度きりです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分が受ける募集(前期・後期・通年)と職種を決め、その実施要項で第二次試験の科目を確認する
- 第一次試験の受験方式を選ぶ。一斉試験方式なら鳥羽市役所西庁舎へ集合、テストセンター方式なら全国の会場から日時を選べる
- WEB申込の入力内容を作り込む。ここに書いたものがエントリーシートになり、口述試験の起点になる
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- この記事の前半から鳥羽市の事実を2つか3つ選び、口述試験のなかで自然に出せる形に短くまとめる
- 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく
優先順位に注意
ステップ5に時間をかけられるのは、ステップ3が終わってからです。申込内容の作り込みを最優先にしてください。市が第一次試験を特別な準備の要らない試験だと説明している以上、鳥羽市の選考は書いたものと口述試験にほぼ集約されます。申込の入力欄が、事実上の勝負の入口です。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、鳥羽市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
鳥羽市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和9年4月採用の後期募集では、一般事務職の場合、第一次試験は特別な準備を要さないと市が説明する職務基礎力試験、第二次試験は口述試験のみです。逃げ場のない構成ですが、裏を返せば、準備すべきものがはっきりしているということでもあります。
4つの島に人が暮らし、市が船員を自前で募り、保育所にも診療所にも職員を置いている市。津波が3分で届く海に面し、市民の4割以上が65歳以上である市。
その現実のどこに自分が入っていきたいのかを、掘られても崩れない一つの話として持っていく。それが、この試験に対する最短の準備になります。