本記事では、津市職員採用試験の面接対策で必要な、津市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
津市役所の面接試験では、「なぜ津市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。
令和8年度の6月試験(令和9年度採用予定)でいえば、事務職は第1次から第3次までの3段階で、個人面接を2回受け、そこにグループワーク、ケース記述試験、集団討議が加わります。人と向き合う場面と、書いて示す場面の両方が並ぶ選考です。
県庁所在地でありながら、人口では県内2番目。この少しねじれた位置関係が、津市という市の性格をよく表しています。
第1部|自治体研究編
津市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは津市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 三重県の県庁所在地でありながら、人口は県内14市のうち2番目です。住民基本台帳の人口は266,012人で、四日市市の305,085人に次ぎます(令和8年1月1日現在)。
- 市域は711.18km²で、県内14市のなかで最も広くなっています。住民基本台帳の人口を面積で割ると約374人/km²です。
- 東は伊勢湾に面し、西は県境を越えて奈良県の村に接する市です。接する自治体は7団体で、県内が鈴鹿市・亀山市・松阪市・伊賀市・名張市、県外が奈良県宇陀郡曽爾村・御杖村となっています。
- 65歳以上の割合は30.6%で、三重県全体の30.6%と同じ水準です。75歳以上は18.3%で、県全体の18.2%とほぼ重なります(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。
- 市内には津市立三重短期大学があり、令和8年度6月試験では第1次試験の三重会場としても使われます。
- 令和8年度の6月試験(令和9年度採用予定)は、事務職と保育士が3段階、技術職(土木・建築・電気)と保健師が2段階の構成です。
- 第1次試験の会場は三重会場と東京会場の2か所で、原則として居住地に最も近い会場が指定されます。
- 市の花はツツジ、市の木はケヤキ。市役所は津市西丸之内23番1号にあります。
津市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「津市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
津市の数字を読むときは、県全体の数字を横に置いてみてください。人口規模こそ県の6分の1ほどですが、年齢構成の割合はほとんど重なります。県の平均像がそのまま形になっているような市だ、という感触をまず持っておくとよいでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 266,012人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳。三重県内14市で2番目) |
| 65歳以上人口 | 81,407人(30.6%。三重県全体も30.6%) |
| 75歳以上人口 | 48,559人(18.3%。三重県全体は18.2%) |
| 総面積 | 711.18km²(県内14市で最も広い) |
| 人口密度 | 約374人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 鈴鹿市・亀山市・松阪市・伊賀市・名張市、奈良県宇陀郡曽爾村・御杖村 |
| 市役所所在地 | 津市西丸之内23番1号 |
| (参考)三重県の人口 | 1,724,891人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳) |
総人口と65歳以上・75歳以上の人口および割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。三重県全体および県内他市の数値も同じ統計によるもので、割合の分母にもこれを用いています。国勢調査や県が別に公表している推計人口とは調査の基準が異なりますので、それらの数値と並べて増減を計算することはできません。総面積・隣接自治体・市役所所在地は当研究会が整理した基礎データによるもので、人口密度は上記の住民基本台帳人口から算出しています。
数字から考えられる市政課題
65歳以上30.6%という数字は、三重県全体の30.6%と一致します。75歳以上の18.3%も、県全体の18.2%とほぼ変わりません。県の年齢構成を切り出して縮めたような姿だといえます。県内には、四日市市や鈴鹿市のように県平均より若い市も、南部のように県平均を大きく上回る市もあります。そのなかで津市は、どちらにも寄っていません。
この位置には利点と難しさが両方あります。県全体の課題がそのまま市の課題として現れるぶん、県の方針と市の仕事がかみ合いやすい。
一方で、極端な数字がないぶん、優先順位を外から示してもらえません。県の見通しでは、高齢化率が令和2年の29.9%から令和22年に36.9%へ、生産年齢人口が約103万人から約79万人へと移っていきます(出典:三重県人口減少対策方針|令和5年8月)。
ただし、この推計の基準は国勢調査です。先に見た住民基本台帳とは分母が異なりますので、水準を並べて増減を出すことはできません。
向きだけを受け取ってください。県が進む先を、津市もほぼ同じ速さでたどることになります。
もう一つ、711.18km²という県内最大の市域が効いてきます。人が減っていく一方で、道路も水道も学校も、広い面積の上に散らばったまま残るからです。
たとえば面接では、市の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。
津市の経済・産業
県庁所在地であるということ
津市の経済を語るとき、最初に置くべき条件は県庁所在地であることです。県の行政機能がここに集まり、それに伴う人の出入りがある。
ただし、その一点だけで押し切ると足元が甘くなります。県内で最も人口が多い市は四日市市であり、津市ではありません。
行政の中心と経済の中心が同じ場所にない県だということです。志望動機で「県の中心だから」と言うと、この事実を知らないまま話しているように聞こえてしまいます。
県庁所在地であることを使うなら、人口や経済の規模ではなく、県の機関と近い距離で仕事ができるという条件のほうへ話を寄せてください。
県の産業統計と、この市の読み方
背景として県全体の姿を押さえておきましょう。令和2年の製造品出荷額等は県全体で約10兆円、全国順位は9位、全国シェアは約3.5%です。
内訳は、電子部品・デバイス・電子回路が全国シェア11.7%で全国1位、輸送用機械器具が全国6位、化学工業が全国9位と続きます(出典:三重県の製造品出荷額等(工業統計・経済センサス)|令和2年)。三重県は製造業で立っている県です。
ただし、この出荷額を支えている工場の多くは県北部に集まっています。県の順位をそのまま津市の説明に転用すると、実像から離れてしまうということです。
津市について語るなら、県の合計値を借りるより、県の行政機能と、広い市域に散らばる暮らしの現場を、同じ市が同時に抱えているという構造から入るほうが、話が具体的になります。
観光と交流の位置づけ
県の観光統計では、令和6年の観光レクリエーション入込客数が35,082千人(前年比99.9%)、観光消費額が5,236億円(前年比107.3%・354億円増)となっています。
地域別では、津市が含まれる中南勢が5,844千人。北勢14,262千人、伊勢志摩10,872千人には及びません(出典:三重県観光レクリエーション入込客数|令和6年)。
県全体では人数がわずかに減った一方、消費額は7%以上伸びました。観光を志望分野にするなら、来訪者数で北勢や伊勢志摩と競う話ではなく、訪れた人にどれだけ使ってもらい、それをどう市内に残すかという組み立てのほうが、津市の位置には合います。
交通の条件
県は企業立地の案内で、新名神高速道路と東名阪自動車道が二重の高速ネットワークを形成していること、名阪国道の亀山から天理までの約70kmが無料区間であること、中部国際空港セントレアが24時間運用の国際空港であることを挙げています(参考:三重県の交通アクセス(企業立地案内)|2024年7月現在)。
津市に隣接する亀山市は、県がリニア中央新幹線の駅候補地として位置づけている市でもあります。名古屋から大阪までの区間は2037年以降の開業予定とされており、県は「三重県リニア基本戦略」(令和6年3月策定)に基づく取り組みを進めています(参考:三重県のリニア中央新幹線に関する取組|令和6年3月)。長い時間軸の話ですが、県庁所在地であり隣接市でもある津市にとっては、他人事の計画ではありません。
津市の主な行政課題
広い市域と、県の平均そのままの年齢構成。津市の課題は、この二つの条件から枝分かれしていきます。面接で「市の課題」と聞かれたときに使えるよう、4つに整理しました。
県内でいちばん広い市域を、どう維持するか
711.18km²という面積は、県内14市のなかで最大です。人口密度は約374人/km²で、市街地の密度と、山側や海沿いの集落の密度が同じ市のなかに同居しています。
人口が減っても、道路も水道も学校も広い面積の上に残り続けるという点が、この市の行政の前提条件です。施設の統廃合も、公共交通の維持も、どこかを立てればどこかが立たない話になります。
まちづくりや財政を志望分野にするなら、「効率化」という言葉で片づけず、誰にどう説明して決めるのかまで考えておいてください。
県の平均そのままの年齢構成
65歳以上30.6%、75歳以上18.3%という数字は、県全体とほぼ同じです。津市に特有の危機があるというより、県が抱えている問題が等身大で現れていると読むのが実態に近いでしょう。
県の人口減少対策方針が示す令和22年の高齢化率36.9%、生産年齢人口約79万人という見通し(前掲の方針)は、そのまま津市の20年後の輪郭でもあります。福祉や医療を志望分野にするなら、いま足りていないものより、20年後に足りなくなるものから逆算して話すほうが、この市には届きます。
20分という猶予を、どう使うか
三重県が令和8年3月に公表した南海トラフ地震被害想定では、理論上最大クラス(L2)の場合、津市の沿岸最大津波高は5m、沿岸に30cmの津波が到達するまでの最短時間は20分と予測されています。県南部の市町の多くが3分から4分とされていますので、比べれば時間はあります(出典:三重県南海トラフ地震被害想定|令和8年3月)。
ただ、20分あるということは、20分のあいだに何ができるかを設計しなければならないということでもあります。県全体では、L2で死者数約50,000人、うち津波による死者が約41,000人、建物全壊・焼失は約222,000棟(うち揺れによる被害約152,000棟)と推計されています(前掲の資料)。
同じ資料は、先に起きた地震のあとで残りの想定震源域が動く「半割れケース」を今回新たに想定に加えたとしています。一度で終わらない前提と、広い市域のどこに誰がいるかという問題が、津市では重なります。
若い世代が県外へ出ていく流れ
県が課題として名指ししているのは、転出超過数の約8割を15歳から29歳の若者が占めること、県内高校から大学へ進学した人のうち県内大学へ進む人が約2割にとどまること、そして県内高等教育機関の卒業生の県内就職率が約5割であることの3点です(前掲の方針)。県内の高等教育機関の収容力が低いという指摘は、県庁所在地である津市に直接かかってきます。
市内には市が設置した津市立三重短期大学があり、令和8年度6月試験では第1次試験の三重会場にもなっています。学ぶ場を市が持っているという事実は、この課題を語るときの具体的な足場になります。
若者支援や教育を志望分野にするなら、進学のときに出ていく流れと、就職のときに戻ってこられるかどうかを、別々の問題として扱ってください。
重点政策|採用の入口を7つに広げた市の判断
津市が公表している採用情報を見ると、この市が人の確保をどれだけ重く見ているかがわかります。
津市は6月試験のほかに、9月試験、障がい者対象試験、職務経験者対象試験、キャリアリターン試験、ディスカバリー採用試験、学校推薦枠(高等学校)試験を実施しています(出典:津市職員の募集について|令和8年度)。一つの試験に全員を集めるのではなく、入り方のほうを複数用意しているということです。
7つの入口が意味すること
並んでいる名称を見ると、対象がそれぞれ違うことがわかります。新卒だけでなく、民間で働いてきた人、一度県外へ出た人、高校からの推薦、障がいのある人。
受け皿の形を変えることで、届く相手を変えようとしている設計です。前の章で見た県の課題、つまり若い世代が進学や就職で県外へ出ていくという流れを踏まえれば、キャリアリターンという名前の試験が置かれている意味も読み取りやすくなります。
志望動機で「人口減少に取り組みたい」と話すつもりなら、市が自分たちの採用でも同じ問題に向き合っていることは知っておいて損がありません。
東京会場を置くという選択
6月試験の第1次試験には、三重会場のほかに東京会場があります。受験案内は「第1次試験の受験会場は、三重、東京会場のうち、原則、居住地に最も近い会場とします。」とし、東京会場は応募人数により三重会場となる場合があるとしています(出典:令和8年度津市職員採用試験(6月試験)受験案内|令和8年度)。
県外で暮らしている人が、移動の負担なく第1次試験を受けられるようにしてあるということです。ここから言えるのは、市外や県外からの受験が想定の外に置かれていないという一点です。
出身地の有無が選考にどう働くかは公表されていませんので、そこは推測せず、自分がなぜ津市なのかを説明できるようにしておきましょう。
7つの入口の先にある、仕事の中身
採用の設計から読めるのは、津市が誰にどう来てほしいと考えているか、というところまでです。実際にどんな仕事があるのかは、市が公式サイトで公表している計画の側に書かれています。
県内で最も広い市域を抱える市ですから、同じ分野でも中心部と周辺部では話が変わります。自分の関心に近い分野の計画を開き、そこで市がどの地域の何を課題として挙げているかまで見ておくと、「どんな仕事に取り組みたいか」への答えが津市の話になります。
POINT|「県庁所在地だから」で止めない
県庁所在地であることは事実ですが、それだけを志望理由にすると、県庁との違いを説明できません。津市の場合、県内で最も広い市域と、県の平均そのままの年齢構成という二つの条件が、市職員の仕事の中身を決めています。この条件のどこに自分が関わりたいのかまで進めてください。
悪い例「三重県の中心である津市で、県全体を支える仕事がしたいです」
改善例「津市は県内でいちばん広い市だと知りました。人が減っても道路や施設は広い範囲に残りますので、どこを残してどこを見直すかを、住んでいる方に説明しながら決めていく仕事に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
津市は採用試験の系統が多く、系統ごとに受験案内が分かれています。まず自分が受ける系統のものを開いてください。県の資料に手を伸ばすのは、そのあとで構いません。
- 自分が受ける系統(6月試験・9月試験・職務経験者対象試験など)の津市職員採用試験受験案内
- 津市の職員の募集についてのページ(実施している試験の一覧と申込方法が更新されます)
- 三重県人口減少対策方針(県内の高等教育機関の収容力という論点を押さえるため)
- 三重県南海トラフ地震被害想定(沿岸部の想定と時間の見込みを押さえるため)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、津市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。津市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
津市役所の面接の概要
令和8年度の6月試験(令和9年度採用予定)の受験案内を開くと、職種によって進む段階の数が違うことに気づきます。ここからは、その構成と、そこから決まる準備の配分を順に見ていきます。他の系統の試験は構成が異なりますので、ご自身が受ける系統の案内とあわせて読んでください。
津市役所の試験の流れ
6月試験でまず押さえるべきなのは、職種によって段階の数が違うという点です。事務職と保育士は第1次から第3次までの3段階、技術職(土木・建築・電気)と保健師は第2次試験が最終試験となる2段階です。
そして事務職には、口述試験(個人面接)が第2次と第3次で計2回、集団討議は第3次にのみ置かれています。1回の面接で決まる試験ではありません。
| 項目 | 内容(令和8年度・6月試験/令和9年度採用予定) |
|---|---|
| 段階構成 | 事務職および保育士は第1次から第3次までの3段階。技術職(土木・建築・電気)および保健師は第2次試験が最終試験となる2段階 |
| 第1次試験(事務職) | 教養試験、事務適性検査 |
| 第1次試験(技術職・保健師) | 教養試験、専門試験、職場適応性検査 |
| 第1次試験(保育士) | 教養試験、専門試験 |
| 教養試験の内容 | 時事、社会・人文及び自然に関する一般知識と、文章理解、判断・数的推理及び資料解釈に関する能力についての択一式(マークシート方式)。教養試験および技術職の専門試験の問題は高等学校卒業程度と明記されています |
| 職場適応性検査 | 公務員としての職業生活への適応性について、職務への対応や対人関係面での性格特性をみるための択一式(マークシート方式)の筆記検査 |
| 第2次試験(事務職) | 口述試験(個人面接)、実地試験(グループワーク)、ケース記述試験、職場適応性検査 |
| 第2次試験(保育士) | 実技試験(個人実技・グループワーク・レポート作成)、職場適応性検査 |
| 第2次試験(技術職・保健師=最終試験) | 口述試験(個人面接)、実地試験(グループワーク) |
| 第3次試験 | 事務職および保育士のみ実施。口述試験(個人面接)は事務職および保育士、集団討議は事務職のみ |
| 第1次試験の会場 | 三重会場(津市立三重短期大学ほか)と東京会場(ホテルルポール麹町)の2会場。原則として居住地に最も近い会場が指定され、東京会場は応募人数により三重会場となる場合があります |
| 配点 | 受験案内に、口述試験(個人面接)・集団討議・実地試験(グループワーク)の配点・満点・合否判定の比重の記載はありません |
| 提出書類 | 「面接カード」という名称の書類はありません。電子申請の入力内容がエントリーシートとして扱われ、第2次試験および第3次試験の受験日に最終学校卒業(見込)証明書等を提出します |
| 申込方法 | 原則として電子申請。マイページから受験票をA4白色用紙に印刷し、記載事項と受験資格を確認のうえ本人が署名して、各試験の受験時に持参します |
| 採用予定人数 | 事務職20人程度、技術職(土木)5人程度、技術職(建築)2人程度、技術職(電気)2人程度、保育士15人程度、保健師2人程度 |
| 事務職の受験資格 | 平成3年4月2日以降平成21年4月1日までに出生の人で、大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)・高等学校・中学校等を卒業(修了)した人、または令和9年3月卒業(修了)見込みの人(高等学校および中学校の卒業見込みを除く) |
科目の並びを追うと、確かめられる力の種類が広いことに気づきます。事務職の場合、個人面接で一対一の受け答えを、グループワークで集団のなかでの動き方を、集団討議で議論の運び方を、そしてケース記述試験で書いて整理する力を見られます。
話す力と書く力が、別々の場面で分けて問われているということです。配点は公表されていませんので比重を断定はできませんが、どれか一つが得意でも他が空白だと通りにくい設計だという読み方はできます。
上記の試験構成は、津市が公表している令和8年度津市職員採用試験(6月試験・令和9年度採用予定)の受験案内および職員の募集についてのページにもとづく内容です。津市は6月試験のほかに9月試験、障がい者対象試験、職務経験者対象試験、キャリアリターン試験、ディスカバリー採用試験、学校推薦枠(高等学校)試験を実施しており、試験構成は系統ごとに異なりますので、この記事の内容を他の系統に当てはめないでください。また、津市役所の職員採用試験は津市総務部人事課が実施するもので、三重県庁の職員採用試験とは別の制度です。近隣自治体との共同実施や統一試験に関する記載は、受験案内・採用ページのいずれにもありません。試験の構成・配点等は年度や受験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
津市役所が求める人物像
津市の令和8年度6月試験の受験案内と、採用ページ「職員の募集について」には、「求める人材像」や「めざす職員像」にあたる公表文言は置かれていません。ですので、市の言葉として引用できるものはありません。代わりに手がかりになるのが、選考で何を確かめようとしているかという設計そのものです。
では、公表がないなかで何を見ればよいのか。津市の場合は、試験科目の並びが饒舌です。ここから先は、その並びを当研究会が読んだ内容になります。
人口26万人台で、県内で最も広い市域を持ち、県庁所在地でもある。この規模の市では、一つの課題が一つの部署では終わりません。
道路の維持も、公共交通も、高齢の市民の暮らしも、地域の団体や事業者、県や近隣市と手を組まないと形になりません。
庁内で完結する仕事より、外の相手と一緒に進める仕事のほうが多いという前提があります。
その前提を、津市は試験科目に翻訳しているように見えます。実地試験(グループワーク)は、初対面の相手と短時間で作業を組み立てる場面です。
集団討議は、意見が割れたときに議論を前へ進める場面です。ケース記述試験は、与えられた状況を読み、限られた条件のなかで実行できる形に落とす場面です。
人と組む力と、条件のなかで形にする力が、別々の種目に振り分けられていると読むこともできそうです。
実際の準備に落とすと、用意するものは二つです。誰かと組んで何かを進めた経験と、うまくいかない条件のなかで折り合いをつけた経験。
この二本があれば足ります。6月試験の事務職は、個人面接を2回受け、グループワークと集団討議とケース記述試験を通ります。
同じ経験を、話す場面と書く場面の両方で出せる状態にしておけば、この試験の形にはそのまま乗ります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。津市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 第1次試験はどちらの会場で受けられましたか | 三重会場と東京会場のどちらもありうる試験。事実の一言から、力の抜けた受け答えができるか |
| ② 動機・志望 | 三重県庁ではなく、津市役所を選んだ理由を教えてください | 県庁所在地であることを、県庁との違いの説明に転換できているか |
| ③ 自己理解 | 電子申請で入力した内容のうち、いちばん見てほしいのはどこですか | 入力内容がエントリーシートとして扱われる試験で、自分の書いたものを把握しているか |
| ④ 経験・行動 | 初対面の人と短い時間で何かを仕上げた経験はありますか | 第2次試験の実地試験(グループワーク)と地続きの質問 |
| ⑤ 学業・経歴 | これまでの学びや仕事のうち、津市の業務に近いと感じるものはありますか | 専門外の相手に伝わる言葉で説明できるか。ケース記述試験と共通する整理の力 |
| ⑥ 適性・将来 | 事務職の採用は20人程度ですが、希望と違う分野に配属されたらどうしますか | 県内最大の市域を持つ市で、担当分野が広く動くことを想像できているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近気になった、地方から若い世代が出ていくことに関わるニュースはありますか | 県が課題に挙げる若者の転出を、自分の関心につなげられるか |
ただ、この7つで差がつくことはあまりありません。受験者全員が対策してくる領域だからです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「津市ならでは」の質問です。
合否を分けるのは「津市役所ならでは」の質問
県庁所在地の市役所を受ける以上、1問目は避けて通れません。県庁も市役所も同じ市内にあるからこそ、違いを説明できるかどうかがそのまま志望度の確かさとして受け取られます。
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「津市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい津市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 県内での位置 | 県庁所在地でありながら、住民基本台帳の人口266,012人は四日市市の305,085人に次いで県内2番目(令和8年1月1日現在) | 行政の中心と人口の中心が一致していないという事実から入ると、県庁との役割の違いへ自然につながります |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 市域は711.18km²で県内最大。人口密度は約374人/km²で、市街地と山側・海沿いの集落が同じ市に同居する | 住民に近いという一般論に、広い市域のどこにいる住民のことを言っているのかという具体を足してください |
| 年齢構成 | 65歳以上30.6%は三重県全体の30.6%と一致し、75歳以上18.3%も県全体の18.2%とほぼ同じ(令和8年1月1日現在) | 県の平均とほぼ同じという事実を、県の20年後の見通し(高齢化率36.9%)と重ねると、いま動く理由まで話が届きます |
| 防災 | 南海トラフ地震のL2想定で沿岸最大津波高5m、30cmの津波の到達時間は最短20分。県全体では死者数約50,000人と推計されている | 時間の余裕があることを安心材料にせず、その20分に広い市域で何をするかという設計の話へ進めてください |
| 人の確保 | 6月試験のほかに9月試験、障がい者対象試験、職務経験者対象試験、キャリアリターン試験、ディスカバリー採用試験、学校推薦枠試験を実施 | 市が採用の入口を複数持っていることを、県の課題である若者の県外転出と結び付けて話すと、調べた範囲の広さが伝わります |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。津市は人材像を公表していませんので、ここでは6月試験の選考の設計に照らして、3つの観点を挙げます。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 初対面の相手と組めるか | 第2次試験の実地試験(グループワーク)と、第3次試験の集団討議での動き方 | グループワークと集団討議では求められる動きが違います。作業を分担する場面と、意見を戦わせる場面の両方を思い出しておいてください |
| 条件のなかで実行できる形にできるか | 第2次試験のケース記述試験と、個人面接での掘り下げ | やりたいことを述べる練習より、予算も人手も足りない前提で何を先にやるかを決めた経験を用意しましょう。津市の広い市域では、この判断が日常的に発生します |
| 書いた内容と話す内容が一致しているか | 電子申請の入力内容がエントリーシートとして扱われ、そこを起点に個人面接が2回行われる | 申込の入力画面を提出前に控えておき、書いた一文ごとに「これを掘られたら何を足すか」を書き添えておいてください |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
津市の事務職は個人面接が2回ありますので、同じテーマを別の面接官から角度を変えて問われる前提で臨んでください。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分が受ける系統を先に決める。6月試験のほかに9月試験、職務経験者対象試験、キャリアリターン試験などがあり、系統ごとに構成が違う
- 電子申請の入力内容を作り込む。ここに書いたものがエントリーシートとして扱われ、後の個人面接の起点になる
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- グループワーク・集団討議・ケース記述試験の3つを、それぞれ別の準備として分けて考える。話す練習だけでは書く場面に届かない
- この記事の前半から津市の事実を2つか3つ選び、個人面接でも集団討議でも出せる長さに短くまとめる
- 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく
優先順位に注意
自治体研究は差をつけるための工程ですが、津市ではその前に押さえておくものがあります。ステップ2の申込内容の作り込みと、ステップ4で書く場面の対策です。6月試験の事務職では、ケース記述試験という書く種目が独立して置かれていますので、面接の練習だけを重ねても届かない範囲が残ります。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、津市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
津市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度の6月試験でいえば、事務職は個人面接を2回受け、グループワークと集団討議で人と組む姿を見られ、ケース記述試験で書いて整理する力まで確かめられます。通る場面が多いということは、どこか一つで手を抜けないということです。
県庁所在地でありながら人口は県内2番目、市域は県内最大、年齢構成は県の平均そのまま。この位置に立つ市で、自分は誰と組んで何を形にしたいのか。
話す場面と書く場面で同じ答えが出せるようになったとき、6月試験の設計はむしろ味方になります。