本記事では、高知市職員採用資格試験の面接対策で必要な、高知市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
高知市役所の面接では、「なぜ高知市を志望したのか」、「市職員として何に取り組みたいのか」、「自分の経験を高知市政のどこで生かすのか」といった質問が想定されます。
上期の上級事務でいえば、総合得点1,000点のうち700点が人物を直接評価する科目に配分されている試験です。市を具体的に知っているかどうかが、そのまま得点の大半に効いてきます。
なお、第2部で扱う試験の構成と配点は、令和8年度の上期(上級事務)と下期(初級事務Ⅰ)の試験案内で確認できる範囲のものです。
高知市は上期・下期の年2回体制で、回次と区分によって科目も配点も違います。どの回のどの区分の話なのかを意識しながらお読みください。
第1部|自治体研究編
高知市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは高知市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 高知県の県庁所在地であり、平成10年4月に四国で最初の中核市へ移行した市。中核市指定に関する政令の公布は平成9年10月。
- 中核市への移行と同時に高知市保健所が開設された。開設時は4課10係99人の体制で、地域保健課・食品環境課・健康づくり課・食肉衛生検査所が置かれた。
- 人口は308,542人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。高知県全体654,213人の47%前後が、この1市に集まっている。市自身も、県民人口の4割以上が暮らす地方中核都市として南四国の発展を支えてきたと説明している。
- 面積は309.00km²。市制施行は1889(明治22)年4月1日で、当時の面積は2.81km²、人口は2万1,823人だった。
- 平成17年1月に鏡村と土佐山村、平成20年1月に春野町を編入し、都市部に加えて中山間地域と広い田園地域を抱える市域になった。
- 境を接するのは南国市・土佐市・土佐郡土佐町・吾川郡いの町の4市町。
- 新(本)庁舎は平成28年からの建設工事を経て令和元年11月に竣工。耐震性の不備や老朽化、庁舎の狭あい化・分散化という旧庁舎の課題に対し、防災拠点となる庁舎の耐震化を重要課題として建てられた。県産材を使った丸太打設工法による地盤改良も採用されている。
- 市の鳥はセグロセキレイ、市民の花はトサミズキ、市民の木はセンダン。市章は「高」の漢字をデザイン化したもので、1920(大正9)年2月15日の制定。
高知市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「高知市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口規模、年齢構成、市域の広さ、中核市としての位置づけなど、市政の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 308,542人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 97,179人(31.5%、高知県全体は36.5%) |
| 75歳以上人口 | 57,816人(18.7%、高知県全体は22.2%) |
| 総面積 | 309.00km² |
| 人口密度 | 約999人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 世帯数 | 163,543世帯(令和7年4月1日現在・高知市公表) |
| 中核市への移行 | 平成10年4月(四国で最初。同時に高知市保健所を開設) |
| 市制施行 | 1889(明治22)年4月1日 |
| 隣接する市町 | 南国市・土佐市・土佐郡土佐町・吾川郡いの町 |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口と、比較に用いた高知県全体の値は、いずれも総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の数値です。世帯数は高知市の公表資料(令和7年4月1日現在。同資料の人口は310,029人)によります。国勢調査を基礎とする県の推計人口とは調査の基準が異なりますので、両者の数値を直接比べないでください。
数字から考えられる市政課題
高知市の高齢化率31.5%は、高知県全体の36.5%より5ポイント低く出ています。県内では若い部類に入る数字ですが、これを「余裕がある」と読むと足をすくわれます。
75歳以上が57,816人、人口の18.7%を占めており、5人に1人に近い水準だからです(いずれも令和8年1月1日現在)。
介護・医療・見守りの需要が重くなる層が、すでにこれだけの厚みを持っています。
もう一つ、高知市には市域の成り立ちという事情があります。平成17年と平成20年の編入で、市は都市部と中山間地域の両方を持つことになりました。
人口密度は市全体の平均で約999人/km²ですが、市街地と山あいの集落では、実際の密度はこの平均から大きく離れます。同じ制度でも、届け方は地域によって変わります。
高知市の上級事務は、第2次試験の個人面接に500点を置いています。そこで求められるのは統計の暗唱ではなく、数字を自分の関心につなげた話し方です。
たとえば、次のような答え方ができます。
高知市の経済・産業
はじめにお断りしておくと、高知市だけを対象にした市民経済計算の公表を、公表資料からは確認できません(当研究会調べ)。ここでは、県全体の産業の姿と、県都に集まっている機能から、高知市の経済を説明できる形に整理します。
経済・産業構造の概要
- 高知県の農業は温暖多照の気候を生かした施設園芸が柱。県は「土佐を代表する園芸11品目」として、シシトウ、キュウリ、ナス、米ナス、ショウガ、ピーマン、オクラ、小ネギ、ミョウガ、ニラ、アールスメロンを挙げている。
- 森林の占める割合は全国平均67%に対して84%で全国1位。人工林率65%、森林面積594,090ha(令和4年3月31日現在)で、林業が基幹産業の一つ。
- 700キロメートルを超える海岸線を持ち、遠洋・近海のかつお・まぐろ漁業に加え、定置網漁業や魚類養殖業などの沿岸・沖合漁業が営まれている。
- 県の財政力指数は0.26140で、全国47都道府県中46位(令和5年度)。全国平均0.49126の53.2%にとどまる。
つまり、一次産業の比重が大きい県のなかで、人口と消費と行政機能が高知市の一点に集まっているという構造です。県内で採れたもの・作られたものが集まり、売られ、県外へ出ていく結節点が高知市だと捉えておくと、産業振興や雇用の話題に対応しやすくなります。(出典:高知県の農林水産業/都道府県別の森林率・人工林率|令和4年/都道府県決算状況調(高知県分)|令和5年度)
県都に集まる機能と、中核市が持つ権限
高知市の経済を語るうえで外せないのが、中核市であることの意味です。
平成10年4月の移行と同時に高知市保健所が開設され、地域保健課・食品環境課・健康づくり課・食肉衛生検査所の4課10係99人で業務が始まりました。
準備には時間がかかっており、平成7年4月に保健所対策班、平成8年4月に保健所準備班が置かれています。(出典:高知市保健所の概要 総論編|令和7年度版)
これは行政の組織図の話にとどまりません。飲食店の営業許可も、食中毒が起きたときの調査も、感染症への対応も、高知市では市の窓口で完結します。
事業者と直接向き合う場面が多いということでもあります。
他の一般市では県が担う衛生分野の仕事が、高知市では市の仕事になっているという点は、志望動機を具体化するときの足場になります。
観光の現在地
令和4年(2022年)に高知県を訪れた県外観光客の入込数は3,707千人と推計され、コロナ前の令和元年の約8割まで戻りました。
一人当たりの県内消費額(客船を除く)は26,076円、県外観光客の総消費額は96,634百万円です。
注目したいのは交通手段の内訳で、自動車による入込が全体の約9割を占めます。(出典:県外観光客入込・動態調査報告書|令和4年)
県は全長約810キロメートルの「四国8の字ネットワーク」の整備を進めており、高知東部自動車道・高知南国道路は平成28年4月に高知龍馬空港インターチェンジまで開通して、高知市内と空港のアクセス性が向上しました。観光の話題では、訪問先を挙げるところで止めず、車で来る9割の人が市内でどう時間とお金を使うのか、というところまで踏み込みたいところです。
県が掲げる「地産外商」との関係
高知県は、県外・海外から外貨を獲得する取組である「地産外商」を産業振興の柱に据え、産業振興計画と元気な未来創造戦略を推進しています。
県内市場だけに頼らず外に売りに出るという発想です。高規格道路網の整備も、この戦略と対になっています。
運ぶ道がなければ、外へは出せないからです。
高知市の受験生にとって重要なのは、この「外へ売る」拠点機能の多くが県都に集まっている点です。産業振興でも、移住でも、観光でも、志望分野に関わらず、県の戦略と市の現場が接する場所として説明できます。
高知市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、高知市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
人口減少と、県全体で進む「負の連鎖」
高知県の推計人口は令和5年10月1日現在で66万6,293人で、1年間に9,417人(1.4%)減りました。内訳は自然動態が8,133人減、社会動態が1,284人減で、減少の主因は自然減です。
県は平成2年から自然減が始まったとしています。(出典:高知県推計人口年報|令和5年)
県の公式文書は、若年層の県外への転出超過が若年人口を減らし、それが婚姻件数や出生数の減少を加速させ、さらに若年人口が減るという「負の連鎖」が生じているという課題認識を示しています。
県民の半数近くが暮らす高知市にとって、これは県の問題ではなく市の問題です。転入・転出も、出生・死亡も、婚姻も、届出を受けるのは市の窓口だからです。
南海トラフ地震への備え
令和8年3月24日に公表された令和7年度〔高知県版〕の南海トラフ地震被害想定では、県全体の建物全壊は最大クラス(L2・陸側ケース④)の冬深夜で約204,000棟と見込まれています。市町村別に見ると、現状のままで死者が最大となるケース(冬深夜)の高知市の死者は11,000人という想定です。(出典:南海トラフ地震による被害想定(市町村ごとの被害)|令和7年度高知県版)
ただし、この数字は動かせるものとして示されています。
県は、津波による死者14,000人について、早期避難率が現状の73%から100%になれば2,000人まで減らせると明示しました。
内閣府が令和7年3月31日に公表した市町村別の最大津波高では、高知市は15メートルとされています。第1部で触れた新庁舎が防災拠点としての耐震化を重要課題に建てられたのも、この前提があってのことです。
都市部と中山間地域を、ひとつの市役所で担う
309.00km²という市域には、県内最大の市街地と、平成17年・平成20年の編入で加わった山あいの集落の両方が含まれます。
買い物の場所も、交通手段も、災害時に想定される事態も、同じ市内で大きく違います。ひとつの制度を市内全域に同じ形で下ろすと、どこかで無理が出るという構造を抱えているわけです。
地域ごとの事情に合わせて運用を変える判断が、日常的に求められます。
厳しい財政環境のなかでの運営
高知県の令和5年度決算に基づく実質公債費比率は11.7%(3か年平均・前年度から0.6ポイント増)、将来負担比率は177.3%(前年度から0.9ポイント増)です。
財政力指数は0.26140で全国46位でした。
これらは県の指標であって高知市の指標ではありませんが、自主財源に恵まれた地域ではないという環境のなかで市政が営まれていることは、押さえておく価値があります。
市自身の財政を語りたい場合は、高知市が公表している予算・決算の資料にあたってください。
県との役割分担をどう説明するか
高知市の受験生が必ず整理しておきたいのが、県と市の関係です。中核市への移行によって、県が担ってきた事務の一部が高知市に移りました。
保健所はその代表例です。一方で、南海トラフの被害想定も、人口減少対策の戦略も、産業振興計画も、県が枠組みを作っています。
同じ課題に対して、県と市が別の位置から関わっている。この構図を自分の言葉にできるかどうかが、後述する定番質問の答えを左右します。
高知市の重点政策|中核市の役割と県の戦略
高知市は中核市として、他の一般市より広い範囲の事務を自分の手で担っています。第2部の面接対策に入る前に、その役割と、県が掲げている方針を押さえておきましょう。
市が定めている計画の名称と最新版については、高知市の公式サイトで直接あたってください。
県が最重要課題に据えたもの
高知県は令和6年3月に「高知県元気な未来創造戦略」を策定し、人口減少問題を県政における喫緊に取り組むべき最重要課題と位置づけました。戦略の柱は、県外・海外へ売りに出る「地産外商」と、若年人口の減少が婚姻・出生の減少を招く連鎖を断つことです。(出典:高知県元気な未来創造戦略|令和6年3月)
市町村の現場に引き寄せると、この戦略が扱っている数字は、市民課の窓口や子育て支援の担当が日々受け取っている届出そのものです。県の戦略書を読むときは、そこに並ぶ指標が市役所のどの部署の仕事とつながるのかを意識しながら読むと、面接での使いどころが見えてきます。
職員の育て方に表れている市の考え方
高知市は、「めざす職員像」と「各階層に求められる役割と能力」を明示したうえで、「職場」「人事管理」「研修」が連携した総合的な人材育成システムによって人材育成に取り組んでいます。研修体系は職場研修、職場外研修、セルフチャレンジ(自己啓発)支援の3本立てで、階層別研修はこうち人づくり広域連合と連携して実施されています。(出典:高知市職員採用ガイド)
採用後の育て方を先に公表している市だという点は、面接での立ち回りにも関わります。入る前から完成している人を探しているのではなく、階層ごとに役割が上がっていく前提で職員を見ている、と読めるからです。
自己PRでは、いま何ができるかだけでなく、これまでどう伸びてきたかを語れるようにしておきましょう。
POINT|計画名を覚えることが目的ではない
名称を暗記しても、面接では最初の一言で終わります。関心のある分野を一つか二つ決めて、「①市民のあいだで何が起きているのか → ②市はどこへ向かおうとしているのか → ③いま打っている手は何か → ④中核市だから市の手で決められる部分はどこか → ⑤その現場に自分の経験をどう差し出せるか」の順にたどってみてください。この順で調べた話は、掘られても続きます。
悪い例「高知市の南海トラフ対策に関わる仕事がしたいです」
改善例「県の想定では、早く逃げられれば津波の犠牲を大きく減らせると示されていました。避難訓練や避難路の周知など、住民の方が実際に動けるようにする仕事に関わりたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
入口になるのは次の5点です。受ける回と区分、それに関心のある分野によって、どれから当たるべきかは変わります。
- 高知市職員採用資格試験案内(受験する回・区分のもの。上期と下期で内容が異なります)
- 高知市職員採用ガイド(めざす職員像、研修体系、給料のモデル例を掲載)
- 高知市の総合計画をはじめとする市の主要な計画(市公式サイト掲載の最新版)
- 高知市の予算・決算に関する市の公表資料
- 令和7年度〔高知県版〕南海トラフ地震の被害想定(令和8年3月公表)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、高知市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。高知市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
高知市役所の面接の概要
ここからは、令和8年度の上期(上級事務)と下期(初級事務Ⅰ)の試験案内で確認できる内容をもとに、高知市の試験の形と面接への備え方を整理します。
上期・上級事務の試験の流れ
高知市職員採用資格試験は、上期と下期の年2回体制です。まず、上期の上級事務(一般行政事務・採用予定人員40名程度)から見ていきます。
総合得点1,000点のうち、人物を直接評価する科目の配点合計は700点です(公表されている配点表からの単純合計)。
| 項目 | 内容(令和8年度・上期・上級事務) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験 → 第2次試験の2段階 |
| 第1次試験 | 録画動画面接と教養試験(択一式)の2種目 |
| 録画動画面接 | 「主として人物の人柄や意欲等について録画動画を評価し、採点します」とされる試験。受験者が各自の都合の良い時間にスマートフォンまたはパソコンで専用のインターネットサイトへアクセスし、設定されている質問に対する回答を録画して送信する |
| 教養試験 | 一般的教養及び知能についての大学卒業程度以上の筆記試験(択一式) |
| 第2次試験 | 論文(1,000字程度・試験当日にテーマを発表)、適性検査(事務能力)、適性検査(パーソナリティ)、グループワーク、個人面接の5種目 |
| グループワーク | 複数の受験者が共同で企画作業を行い、成果を発表する試験 |
| 個人面接 | 主として人物の人柄や性格等についての個別面接 |
| 集団討論 | 令和8年度上期・上級事務の試験案内に、集団討論の記載はありません(集団で行う試験はグループワークです) |
| 提出書類 | 上期・上級事務の試験案内に、面接カードその他の提出書類に関する記載はありません。面接の資料になるのは、本登録の入力内容と、論文・適性検査(パーソナリティ)です |
| 申込方法 | インターネット申込み。事前登録(個人ID・パスワードの取得)と本登録の2段階方式。本登録の完了後、録画動画の送信まで終えた人に受験票交付メールが送られ、マイページから受験票を印刷する |
| 初任給(参考) | 給料月額232,000円から(行政職給料表1級25号給から) |
| 試験 | 種目 | 配点(令和8年度・上期・上級事務) |
|---|---|---|
| 第1次試験 | 録画動画面接 | 100点 |
| 第1次試験 | 教養試験(択一式) | 250点 |
| 第2次試験 | 論文(1,000字程度) | - |
| 第2次試験 | 適性検査(事務能力) | 50点 |
| 第2次試験 | 適性検査(パーソナリティ) | - |
| 第2次試験 | グループワーク | 100点 |
| 第2次試験 | 個人面接 | 500点 |
| 合計 | 総合得点 | 1,000点 |
上記は高知市の令和8年度上期・上級事務の試験案内に基づく内容です。論文と適性検査(パーソナリティ)は配点欄が「-」と表示され、試験案内には「論文・適性検査(パーソナリティ)は、面接等の資料として使用します」と明記されています。試験の構成・配点・区分は、回次や年度によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身が受ける回・区分の最新の試験案内をご確認ください。(出典:高知市職員採用資格試験案内(上期・上級事務)|令和8年度)
配点の並びを見ると、この試験の性格がはっきりします。
第1次試験で最も重いのは教養試験の250点ですが、合否は総合得点で決まり、そこでは個人面接だけで500点、全体の半分を占めます。
録画動画面接の100点とグループワークの100点を足せば700点です。ここから引ける線は単純です。
教養試験を満点で通しても250点で、個人面接の配点のちょうど半分にしかなりません。択一の勉強に何か月をかけても、それで動かせる上限は250点で止まります。
学習計画を立てるときは、教養の点を伸ばす時間と、自分の経験を掘り起こして話せる形にする時間を、はじめから別枠で確保してください。
筆記を詰め終えてから後者に手をつけると、配点の重い側が本番直前の数週間に押し込まれます。
もう一つ、対策の前提になる記載があります。試験案内は、「一つでも未受験の試験科目がある場合は、試験全体を棄権したものとみなします」と明記しています。
加えて、録画動画の送信が受付期間内に完了していない場合は、以降の試験(教養試験を含む)を受験できないとも書かれています。つまり高知市の上級事務は、筆記より先に面接から始まる試験です。
撮り直しがきくうちに納得のいく動画を送っておくことが、そのまま第1次試験の対策になります。しかも、録画動画面接は人柄や意欲を、個人面接は人柄や性格を見る科目です。
録画のために用意した材料は、第2次でもそのまま使えます。録画の準備を100点分の作業と見積もらず、500点の科目の下ごしらえとして時間を取ってください。
なお、不合格だった場合には、総合得点・科目別得点・順位・受験者数・合格者数を記載した試験成績がマイページに通知されます(全科目を受験していない人には通知されません)。どの科目で届かなかったのかを自分で確認できる仕組みです。
下期・初級事務Ⅰの構成
下期は募集区分が大きく増えます。
令和8年度下期の区分は、初級事務Ⅰ、初級土木、初級建築、初級電気、初級機械、初級事務Ⅱ、保育士、薬剤師、上級事務(自己PR型)、民間企業等経験者(事務)、行政実務経験者(事務)、UIJターン枠の社会人経験者(土木・建築・電気・機械)、一般任期付職員(保健師)です。
ここでは高等学校卒業程度の初級事務Ⅰ(採用予定人員20名程度)を取り上げます。
| 項目 | 内容(令和8年度・下期・初級事務Ⅰ) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験 → 第2次試験の2段階 |
| 第1次試験の科目と配点 | 教養試験(高等学校卒業程度・択一式)160点、適性検査(事務能力)40点、適性検査(パーソナリティ)-、論文(1,000文字程度・試験当日にテーマを発表)-、集団面接200点 |
| 第2次試験の科目と配点 | 個人面接600点 |
| 総合得点 | 1,000点(うち人物を直接評価する科目は、集団面接200点と個人面接600点の合計800点) |
| 提出書類 | 面接カードを第1次試験当日に持参。試験案内掲載ページから印刷し、ボールペンを使用して自筆(かい書)で記入するよう指定されています |
| 初任給(参考) | 給料月額200,300円から(行政職給料表1級5号給から) |
上期との違いは2つあります。ひとつは、人物を直接評価する科目の配点が800点、総合得点の8割まで上がること。
もうひとつは、上期にはない面接カードの持参が求められることです。この2点は、準備の順番を上期と変えます。
初級事務Ⅰの第1次試験は、教養160点と適性検査40点の筆記に対して集団面接が200点で、点の重みが並びます。しかも面接カードの持参は第1次試験当日です。
筆記が仕上がってから面接に取りかかる組み方では、最初の段階で間に合いません。カードの下書きは筆記の勉強と並行して進め、書いた話をそのまま声に出せるところまで持っていってください。
控えを取って話す内容とずれないようにしておけば、その土台は第2次の個人面接600点でもそのまま使えます。
上記は高知市の令和8年度下期・初級事務Ⅰの試験案内に基づく内容です。面接カードの持参が指定されているのはこの区分であり、上期・上級事務の試験案内には提出書類の記載がありません。回次と区分で扱いが異なりますので、必ずご自身が受ける区分の最新の試験案内をご確認ください。
高知市の「めざす職員像」
高知市は、採用試験の案内に「求める人物像」という見出しを置いていません。公表されているのは、高知市人材育成基本方針に基づく「めざす職員像」の5項目で、高知市職員採用ガイドに掲載されています。
- 高い倫理意識を持ち市民に信頼される職員
- 市民の目線で考える職員
- 自ら学び育てる職員
- 挑戦し改革する職員
- 高いコスト意識と経営感覚を持った職員
5項目のうち、受験生が見落としやすいのが最後の一つです。「高いコスト意識と経営感覚」が、めざす職員像の一角に置かれている点は、面接での話し方に直結します。
やりたいことを語るとき、必要な人手や費用、優先順位に一言でも触れられるかどうかで、印象は変わります。
ここまでが高知市の公表内容です。以下は、配点表と試験案内の記載を突き合わせて当研究会が整理した読み方であり、市の公式見解ではありません。
高知市は、県内で群を抜いて人口の多い県都でありながら、中核市として保健所まで自前で持っています。市域には合併で加わった中山間地域があり、南海トラフ地震では市内に大きな人的被害が想定されています。
制度を組み立てる側と、現場で人に会う側を、同じ市役所のなかで行き来する場面が多い自治体です。
この環境を前提にすると、面接で見られやすいのは2点になりそうです。ひとつは、市民、地域団体、事業者、県や周辺の市町村と足並みをそろえながら仕事を進められること。
もうひとつは、限られた人と予算のなかで、やりたいことを実行できる大きさに整えられることです。
上級事務の第2次試験にグループワークが100点で置かれているのも、前者の場面を再現する仕掛けとみておくと準備しやすくなります。
録画動画面接では、面接官と向かい合う前に、カメラに向かって一人で話すところから試験が始まります。上期の上級事務には提出書類がありませんから、そこで出せる材料は、自分が実際にやってきたことだけです。
保健所を持ち、中山間地域も抱える市役所で、その経験がどの場面に置き換わるのか。そこまで具体化できていれば、5項目のどれに近い人間かを自分で名乗る必要はありません。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。高知市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 今日は、どうやって会場まで来ましたか? | 張りつめた場でも普通の会話ができるか。録画動画面接を経て臨む第2次試験では、対面での間の取り方が新しい要素になります |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員、そのなかでも高知市役所なのですか? | 民間でも県庁でも成り立つ理由で止まっていないか。中核市の仕事に触れられているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所を教えてください | 自分を客観的に見られているか。短所を認めたうえで、その付き合い方まで話せるか |
| ④ 経験・行動 | これまでで一番苦労した経験と、そこで何をしたかを教えてください | 苦労の大きさそのものではなく、その場面で何を考え、どう動いたかという中身 |
| ⑤ 学業・経歴 | 学生時代に力を入れた学び(研究)を、専門外の人にも分かるように説明してください | 相手に合わせて言葉を選べるか。500点の個人面接では、説明の分かりやすさがそのまま評価に響きます |
| ⑥ 適性・将来 | 採用後は、どんな仕事に取り組みたいですか? | 市の仕事の見え方の細かさ。保健所業務を含む幅広い配属先を想定できているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近、気になったニュースを一つ挙げてください | 日々の報道を追えているか。県内の話題を選べれば、志望度の裏づけにもなります |
ただ、ここまでの7つは、どの自治体を受けても似た形で出てきます。上級事務の配点でいえば、この領域で取り切れるのは録画動画面接の100点まで。
500点の個人面接で効いてくるのは、次に挙げる高知市固有の問いのほうです。
合否を分けるのは「高知市役所ならでは」の質問
この2問は、上級事務の個人面接500点、初級事務Ⅰの個人面接600点という、最も配点の重い場面で出やすい問いです。高知市の場合、1問目には具体的な足場があります。
中核市として保健所を持ち、県が担ってきた事務の一部を市の側で引き受けている、という事実です。この足場に自分の関心を乗せられるかどうかで、答えの厚みが変わります。
第1部で扱った事実のうち、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい高知市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 平成10年4月に四国で最初の中核市へ移行し、同時に高知市保健所を開設。飲食店の営業許可、食中毒の調査、感染症への対応など、他の一般市では県が担う衛生分野の事務を市が持つ | 制度の説明で終えず、自分が関わりたい分野で県と市のどちらに仕事があるのかを確かめたうえで、市を選んだ理由を話します |
| 人口と高齢化の現在地 | 住民基本台帳(令和8年1月1日現在)で人口308,542人、高齢化率31.5%、75歳以上率18.7%。高知県全体の36.5%・22.2%より低いが、県人口の47%前後が高知市に集まっている | 県の数字と市の数字を混ぜずに話し、県内では若い部類でも75歳以上の実数は大きいという二面性に触れます |
| 南海トラフ地震への備え | 令和7年度〔高知県版〕の想定(令和8年3月公表)では、現状のままで死者が最大となるケース(冬深夜)の高知市に県内で最も大きな人的被害が見込まれる。県は早期避難率が73%から100%になれば県全体の津波による死者を大きく減らせるとしている | 被害の数字を挙げるだけで終わらず、避難率という動かせる数字に市の仕事がどう関わるかまで話します |
| 市域の成り立ち | 平成17年1月に鏡村・土佐山村、平成20年1月に春野町を編入。面積309.00km²のなかに、県内最大の市街地と中山間地域、広い田園地域が同居している | 「高知市の課題」を一つに決めつけず、地域によって課題の出方が違うという前提を置いてから答えます |
| 市の姿勢が表れているもの | 新(本)庁舎は令和元年11月竣工。耐震性の不備、老朽化、狭あい化、分散化という旧庁舎の課題を受け、防災拠点となる庁舎の耐震化を重要課題として建設された | 庁舎そのものより、災害時に司令塔が動き続けることを市がどれだけ重く見ているか、という読み方で使います |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、高知市が人材育成基本方針で掲げる「めざす職員像」に照らして、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 市民の目線で考える職員 | 相手の状況に合わせて動いた経験があるか。その場でどう判断したかを説明できるか | 初級事務Ⅰでは面接カードを自筆で持参します。相手が何に困っていたのかから書き起こし、書いた内容と口頭の説明がずれないようにしておきましょう |
| 挑戦し改革する職員 | 今のやり方に疑問を持ち、自分から手を動かして変えた経験があるか | 上級事務の第2次試験にはグループワークが100点で置かれています。変えようと思った理由と、周りをどう巻き込んだかを、その場で再現できる形にしておきます |
| 高いコスト意識と経営感覚を持った職員 | 限られた時間・人手・お金のなかで、優先順位をつけた経験があるか | めざす職員像に経営感覚を挙げている市です。何を後回しにして何を残したのか、その判断の理由を条件とセットで話せるようにします |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
高知市は上期・下期とも最後の科目が個人面接で、しかも配点が最も重い科目です。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 受ける回(上期・下期)と区分を決め、その試験案内で科目と配点を確認する。上級事務なら録画動画面接から始まること、初級事務Ⅰなら面接カードを第1次試験当日に持参することを、最初に頭へ入れておく
- これまでの経験を書き出す。学業、部活動やサークル、アルバイト、地域の活動から、話せる場面を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 自治体研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 声に出して練習する。上級事務には録画動画面接があるので、スマートフォンで自分を撮って見返すところまでやっておくと、本番の負担がぐっと減る
優先順位に注意
ステップ4と5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の書き出しと、その経験を高知市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、高知市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
高知市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
高知市の採用試験は、上期の上級事務なら総合1,000点のうち700点、下期の初級事務Ⅰなら800点が、人物を直接評価する科目に配分されています。
録画動画面接から始まり、最後は最も配点の重い個人面接で終わる形です。
この配点は、話し上手な人を選ぶ仕組みというより、自分がしてきたことを順を追って話せる人を選ぶ仕組みだと考えてよいでしょう。
県人口の半分近くが暮らす県都で、中核市として保健所まで担う市役所の仕事に、自分の経験がどう届くのかを、時間をかけて言葉にしていってください。