五島市消防本部を受験する方に向けて、面接に臨む前提となる組織研究の材料(本部の特徴・基礎データ・管轄地域の災害リスク・消防課題・重点方針)と、面接本番の流れ・想定される質問・評価の観点を1ページに整理しました。

五島市消防本部の採用試験では、「なぜ警察官や自衛官ではなく消防官なのか」「なぜ五島市消防本部を志望したのか」「島で暮らし続けながら働くことについてどう考えているか」といった、離島という土地への理解を確かめる質問が想定されます。五島市の消防吏員は市の職員採用試験の一区分として選考されるため、市の採用制度全体の枠組みを知っておくことが準備の出発点になります。

公式に確認できた事実だけを積み上げ、断定できない事項は断定しないまま整理していますので、自分の言葉で語れる状態づくりに役立ててください。

第1部|組織研究編

五島市消防本部の特徴

面接対策に入る前に、まずは五島市消防本部という組織の全体像をつかんでおきましょう。

  • 五島市消防本部は、長崎県五島市の全域を単独で管轄する消防本部である。消防本部と消防署は同一庁舎(五島市吉久木町628番地5)に置かれている。
  • 本庁舎のほかに富江出張所(五島市富江町富江165)を配置し、本部から離れた地域をカバーしている。
  • 五島市の消防吏員は、五島市総務企画部総務課人事班が実施する「五島市職員採用試験」の一区分である「消防士(高卒程度)」として採用される。消防単独の採用試験ではなく、市職員採用試験の枠組みの中に位置づけられている。
  • 令和8年度の「消防士」区分の採用予定人数は2名程度で、高等学校卒業又はこれと同等以上の学力を有することが求められる。
  • 消防吏員数は88人(うち女性1人・令和7年4月1日現在)である。
  • 普通自動車免許はオートマチック限定でも認められ、採用翌年度末までに取得できる見込みであれば受験できるという要件になっている。

五島市消防本部の基礎データ

数字を丸暗記する必要はありませんが、島ひとつを何人でどう受け持っているのかという感覚は、面接の土台として持っておきたいところです。

項目内容
管轄区域五島市(単独)
管内人口33,116人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
高齢化率43.5%(75歳以上率23.5%)
所在地五島市吉久木町628番地5(消防本部・消防署は同一庁舎)
出張所富江出張所(五島市富江町富江165)
消防吏員数88人(うち女性1人)※令和7年4月1日現在
出動件数火災21件・救急2,034件・救助10件(令和6年中)
採用試験の実施主体五島市総務企画部総務課人事班(市職員採用試験の「消防士(高卒程度)」区分)

管内人口・高齢化率は住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和8年1月1日現在)、消防吏員数・出動件数は総務省消防庁が公表する本部別データによります。(出典:全国の消防本部データ|五島市消防本部・令和7年4月1日現在等)年度によって数値・仕組みが変わる可能性がありますので、受験の際は最新の公表情報もあわせてご確認ください。

数字から見える五島市消防の役割

数字の並びで最も差が大きいのは火災と救急です。救急出動2,034件は火災出動21件のおよそ97倍にあたり、人口33,116人の島で日常業務の大部分を救急対応が占めていることが表れています。

高齢化率43.5%・75歳以上率23.5%(いずれも住民基本台帳・令和8年1月1日現在)という人口構成も、この需要の高さと重なります。

本庁舎から離れた地域は富江出張所が受け持っており、限られた2つの拠点で管内をどうカバーするかという構造そのものが、この本部の規模感を物語っています。

「五島市消防本部では、救急の出動が年間2,000件を超える一方で、火災は年間20件ほどだと聞きました。人口3万人余りの島で、限られた人数の吏員がこの需要にどう応えているのか気になります」

管轄地域の特性と災害リスク

管轄地域の全体像

11の有人島と52の無人島から成るという地理条件は、五島市消防本部にとって本庁舎と富江出張所という限られた拠点から管内をどこまでカバーできるかという課題に直結します。

想定最大津波高4mという数字も、島という条件のなかで避難の時間をどう確保するかという論点につながります。

五島市が平成16年8月1日に福江市と南松浦郡5町の合併で誕生した経緯を踏まえると、旧町域ごとに集落の規模や高齢化の進み方にも違いがあると考えられ、管内を一律に捉えるのではなく地域ごとの実情を踏まえた対応が求められます。

五島市消防本部の主な消防課題

ここまでの数字と島の条件を重ねると、五島市消防本部が向き合う課題の輪郭が見えてきます。面接で取り出せる引き出しとして、次の4つを押さえておきましょう。

救急需要の増加

全国では令和6年中の救急出動が771万8,380件にのぼり、昭和38年の集計開始以降で最も多い件数となりました。(出典:令和7年版 救急・救助の現況)

五島市消防本部の年間2,034件(令和6年中)も同じ流れの中にあります。高齢化率43.5%という島の人口構成を踏まえると、救急需要は今後も高い水準で推移すると見込まれます。

離島という地理条件への対応

11の有人島と52の無人島から成る管内では、火災・救急のどちらでも本庁舎や出張所からの移動時間が課題になりやすいと考えられます。

船舶や気象条件に左右される場面もある離島の消防にとって、限られた人員でどう管内全域に対応するかは、本土の消防本部とは異なる視点が求められる論点です。

台風などの荒天時には船舶の運航が制限される場面も想定され、資機材の搬入や広域からの応援に時間がかかりうる点も、離島の消防に特有の条件だと考えられます。

予防・住宅防火

全国の住宅火災では、放火自殺者等を除く死者のうち65歳以上が74.5%を占めています(令和5年中762人)。(出典:令和6年版 消防白書)高齢化率43.5%の五島市でも、住宅用火災警報器の設置促進や高齢者宅を中心とした防火指導の重要性は高いと考えられます。

人材確保と女性消防吏員の活躍

五島市消防本部の吏員88人のうち、女性は1人です。

全国を見ると消防吏員168,230人のうち女性は6,386人で、割合は約3.8%。国は「令和8年度当初までに5%」という目標を掲げています(令和7年4月1日現在・出典:女性消防吏員の活躍推進|消防庁)。

採用予定が2名程度という小さな枠のなかで、性別を問わず応募の裾野をどう広げるかは、この本部が抱える人材面の課題です。

重点方針|五島市の総合計画と消防

五島市消防本部は、独立した重点方針の文書は公表していません(2026年9月時点・当研究会調べ)。

五島市の消防吏員は市職員採用試験の一区分として選考されており、消防の体制も、離島振興を含む五島市全体の行政運営の枠組みの中に位置づけられていると捉えるのが実情に沿っています。

長崎県の第3期まち・ひと・しごと創生総合戦略(令和8〜12年度)は、離島・半島地域で全国に先駆けて少子高齢化が進行していると位置づけ、生活インフラの維持・向上を主要課題のひとつに掲げています。(出典:第3期長崎県まち・ひと・しごと創生総合戦略|令和8年度〜令和12年度)

離島の消防体制も、こうした生活インフラの一部として維持・確保が求められる分野だと考えられます。

県内の離島市町村に共通するこの課題認識は、五島市消防本部にとっても、どの地域からの通報にも対応できる幅広い対応力と、限られた人員体制のなかで役割を果たし続ける責任感が特に問われる背景になっていると考えられます。

POINT|島の暮らしを支える仕事として語る

本部として公表された方針文書がなくても、離島振興という県全体の課題意識と、消防の仕事がどうつながるかを自分の言葉で整理しておくと、面接での答えに厚みが出ます。「①島が抱える構造的な課題は何か → ②消防としてどう関わるか → ③自分の経験・強みをどう重ねるか」の順で組み立てておきましょう。

悪い例「地元が好きなので、消防士として貢献したいです」

改善例「部活動でチームメイトの体調管理を任され、小さな変化に気づいて声をかける習慣が身につきました。五島市が離島特有の医療や救急体制の課題を抱えていると知り、この経験を救急対応にも生かしたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

五島市消防本部の受験にあたっては、次の資料で自分の受ける区分の内容を確かめておきましょう。

  • 五島市職員採用試験の案内(消防士〔高卒程度〕区分の採用予定人数・受験資格・試験種目)
  • 五島市消防本部・消防署の組織と出張所配置に関するページ
  • 総務省消防庁が公表する本部別の吏員数・出動件数データ
  • 長崎県の人口・高齢化率、離島振興に関する公表資料

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、五島市消防本部専用の面接想定問答集をご用意しています。この本部の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

五島市消防本部の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

五島市消防本部の面接の概要

ここからは、五島市職員採用試験「消防士(高卒程度)」区分の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を整理していきます。

五島市職員採用試験「消防士」区分の流れ

令和8年度の試験は、第1次試験が基礎能力試験・職務適応性検査、第2次試験が作文試験・人物試験に加えて消防士のみに課される消防適性検査・体力検査・身体検査という構成です。

項目内容(令和8年度)
試験区分消防士(高卒程度)・採用予定人数2名程度
試験の段階第1次=基礎能力試験・職務適応性検査。第2次=作文試験・人物試験・消防適性検査・体力検査・身体検査(消防士のみ)
面接の種類「人物試験」とのみ表記。個別面接・集団討論のどちらに当たるかは公式サイト上で確認できず
身体要件視力は両眼で0.7以上・各眼で0.3以上、色彩識別能力があり聴力が正常であること
提出書類身体検査票。申込は受験申込サイト「パブリックコネクト」による

上記は五島市が公表する令和8年度の「消防士(高卒程度)」区分の受験案内にもとづく構成です。試験の構成・日程・配点等は年度によって異なる可能性があります。受験の際は、必ず最新の受験案内をご確認ください。(出典:五島市職員採用試験案内|五島市)

五島市消防本部が求める人材

五島市消防本部は、採用向けの「求める人物像」を明文では公表していません(2026年9月時点・当研究会調べ)。単独で市域全体を管轄する規模の本部では、署所の数が限られる分、一人の職員が消火・救急・予防といった複数の業務に幅広く関わりやすい構造があります。

特定分野への強い専門志向だけでなく、どの持ち場でも学び直して務める柔軟さと、少人数の当直体制で長い時間を共に過ごすうえでの協調性が評価されやすい場面が多いと考えられます。

採用予定人数が2名程度という規模の小ささを踏まえると、一人ひとりが担う役割の重みは大きく、個々の職員の対応力が組織全体の機能に直結しやすい環境だと考えられます。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。五島市消防本部の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日はどうやってこの会場まで来ましたか?緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えの自然さが表れます
② 動機・志望なぜ五島市消防本部を志望するのですか?消防官という仕事と五島という土地を、自分の言葉で選べているか
③ 自己理解あなたの長所と短所を教えてください自分を客観視できているか。弱みへの向き合い方に人柄が出ます
④ 経験・行動チームで何かに取り組んだ経験について教えてください過去の行動の事実。役割分担や周囲との関わり方が現場に通じるか
⑤ 学業・経歴高校生活で最も力を入れたことは何ですか?これまでの経歴の筋道。自分の経験を順序立てて説明できるか
⑥ 適性・将来島で長く暮らし、働き続けることについてどう考えていますか?離島という生活環境への理解と、長期的に働く覚悟の現実性
⑦ 公共性・社会性消防官という公務員に最も必要な資質は何だと思いますか?仕事の公共性への理解と、社会の出来事への当事者意識

7つの枠組み自体は、離島の本部でも本土の本部でも大きくは変わりません。差がつくのは、五島という島を選んだ理由を語れるかどうか、つまり次の固有質問への備え方です。

合否を分けるのは五島市消防本部に固有の質問

「警察官や自衛官という道もある中で、なぜ消防官という仕事を選んだのですか」
「五島市消防本部を志望する理由と、島のどこで力を発揮したいかを教えてください」

島のどこで力を発揮したいかまで聞かれるのは、11の有人島と52の無人島を本庁舎と富江出張所で受け持つ本部だからです。拠点が限られるなかで年2,034件の救急に応じている実情まで調べてあれば、答えは印象論から抜け出します。

高齢化率43.5%という人口構成も、島で消防を続けることの意味につながる材料です。

五島市消防本部を受ける場合に押さえておきたい事実を、答え方のヒントとあわせて整理しました。

質問テーマ知っておきたい五島市の事実答え方のヒント
島という管轄の理解11の有人島と52の無人島で構成され、本庁舎と富江出張所でカバーしている(詳細は第1部3章)島から島への移動にかかる時間や拠点の少なさに触れると、印象論で終わらない地域理解が伝わります
救急需要の増加令和6年中の救急出動2,034件は火災21件のおよそ97倍にのぼる(詳細は第1部2章・4章)倍率の大きさだけでなく、高齢化率43.5%という人口構成まで結びつけて話す
人材確保・女性吏員吏員88人のうち女性は1人(約1.1%)。全国平均は約3.8%(令和7年4月1日現在)(詳細は第1部4章)数字を比べた自分なりの見解を添えると印象に残ります
離島振興という背景長崎県は離島・半島地域で少子高齢化が全国に先駆けて進行していると位置づけている(詳細は第1部5章)県全体の課題認識と、消防の仕事のつながりを自分の言葉で説明する

使い方のコツは、4つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、〈事実 → 自分の問題意識 → 消防吏員としてやりたいこと〉という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

五島市消防本部は、各試験種目の配点や「求める人物像」を公表していません。配点や人物像が公表されていない以上、観点は公務員試験で広く使われる考え方、つまり応募者がこれまでに実際にとった行動の事実から入庁後の働きぶりを確かめる一般的な評価の枠組みを手がかりに整理するのが現実的です。

試験の段階で消防士のみに消防適性検査・体力検査・身体検査が課されていることからも、知識だけでなく現場で長く働ける総合的な力を確かめようとする姿勢がうかがえます。

下の3点は、それを島という管内の条件に引きつけて整理したものです。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
柔軟性・幅広い対応力特定の分野に限らず、いろいろな役割を引き受けて対応した経験があるか単独で全域を担う本部では持ち場が広がりやすい点を踏まえて答える
地域への理解島の地理や高齢化の実情を踏まえた志望動機になっているか有人島11・無人島52という管内の成り立ちや高齢化率など、具体的な数字を1つ以上そらで言えるようにする
協調性・当事者意識少ない人数で持ち場を分け合いながら、物事を前に進めた経験があるか部活動やアルバイトで自分が引き受けた役割を、当直体制の現場に置き換えて説明する

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 五島市職員採用試験の案内ページを確認し、消防士区分の受験資格・試験種目・申込方法(パブリックコネクト)を確認する
  2. これまでの経験を棚卸しする。高校生活・アルバイトから、周囲と協力して動いた具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。体力検査・身体検査に向けた準備も並行して進める

優先順位に注意

ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を消防の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。島の事実を並べられるだけでは足りず、自分の経験と結びつけて話せるかどうかが評価の分かれ目になります。

市職員採用試験の一区分として実施される五島市消防本部の採用試験では、消防士区分に固有の種目まで正確に押さえておくことが差につながります。独学で仕上げていく場合は、五島市消防本部専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

この本部の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。

五島市消防本部の想定問答集を見る

さいごに

五島市消防本部は、11の有人島と52の無人島から成る管内を、本庁舎と富江出張所という限られた拠点で支える組織です。

消防士区分の採用は市職員採用試験の枠組みの中にあり、消防士だけに課される消防適性検査・体力検査・身体検査が選考の要になります。

採用予定人数の少なさや、消防士だけに課される種目の存在は、他の受験生との差がつきやすいポイントでもあります。

公表されている事実が限られているからこそ、島の暮らしと自分の経験がどうつながるかを、自分の言葉で語れるように仕上げておきましょう。