本記事では、高松市職員採用試験の面接対策に必要な、高松市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点をまとめています。高松市は採用区分を複数の枠に分けて実施しており、本記事は令和8年度の大学卒等・事務を軸に整理し、他の枠や職種との違いも併記します。
高松市役所の面接では、「なぜ高松市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「高松市の課題をどう見ているか」といった質問が想定されます。
この市の事務系区分は、第2次試験で集団面接を受け、第3次試験で個別面接を受ける二段構えの人物試験になっています。
一度の面接で完結しない分、話の一貫性が問われる設計です。以下に並ぶ数字や計画名は、覚え込むために載せているのではありません。
事務の採用予定34人程度という枠の中で、自分がどの部署のどんな仕事に手を挙げるのか。それを決めるための材料として読んでください。
第1部|自治体研究編
高松市の特徴
まず、高松市がどういう権限と規模を持つ市なのかを押さえておきましょう。(時間が足りないときは、この節を先に読んでください)
- 香川県の県庁所在地であり、平成11年4月1日に中核市へ移行した市。市役所は番町一丁目に置かれている。
- 中核市への移行により、県から約2,500項目の事務権限が移譲されている。市独自の保健所を設置する保健所設置市でもある。
- 住民基本台帳人口は415,718人(令和8年1月1日現在)。同じ時点の香川県全体は931,812人で、県人口の4割超がこの市に住んでいる。
- 市域は375.54km²で、人口密度は約1,107人/km²。
- 高齢化率は28.9%で、香川県全体の32.2%を下回る。県内では相対的に若い年齢構成を保っている市。
- 高松港は四国と本州を結ぶ海上交通の要衝で、令和5年の船舶乗降人員は206万人と全国4位。
- 令和7年3月、第7次高松市総合計画の策定に伴い「高松市職員人財育成ビジョン」を改定し、求められる職員像を7項目で示している。
- 採用試験は大学卒等・短大高校卒等・SPI枠・事務【障がい者対象】・経験者対象・早期募集枠に分かれる。大学卒等の事務は34人程度の募集。
- 事務系は第1次から第3次までの三段階選考。第1次試験の配点は職種ごとに公表されている。
- 市の花はツツジ、市の木は黒松。
高松市の基礎データ
統計を隅々まで暗記する必要はありません。高松市を語るうえで外せないのは、県人口の4割超を抱え、県から移された権限で保健所まで動かしているという規模と役割の組み合わせです。
この規模が、後で見る採用試験の枠の多さにも直結しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 415,718人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 120,254人(28.9%/香川県全体は32.2%) |
| 75歳以上人口 | 71,302人(17.2%/香川県全体は19.2%) |
| 総面積 | 375.54km² |
| 人口密度 | 約1,107人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 市役所所在地 | 高松市番町一丁目8番15号 |
| 市の位置づけ | 香川県の県庁所在地。平成11年4月1日に中核市へ移行し、保健所を設置 |
| 隣接する自治体 | 坂出市、さぬき市、木田郡三木町、綾歌郡綾川町、仲多度郡まんのう町、徳島県美馬市、香川郡直島町、小豆郡土庄町、小豆島町、岡山県玉野市(海をはさんで隣接) |
| 市の花・市の木 | ツツジ/黒松 |
人口・年齢別人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)によります。総面積・隣接自治体・市の花木は、当研究会が整理した基礎データによります。住民基本台帳による人口と国勢調査による人口は調査の基準が異なるため、この表の数値を国勢調査の数値と並べて増減を語ることはできません。
数字から考えられる市政課題
年齢構成を見ると、高松市の高齢化率28.9%は、同じ時点の香川県全体(32.2%)を3.3ポイント下回ります。
75歳以上の割合も17.2%で、県全体の19.2%を下回ります。
県内では若い側に位置する市です。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)
ただし、比率が低いことと人数が少ないことは別です。65歳以上は120,254人、75歳以上は71,302人。
これは県内のどの市よりも大きな数字です。
割合では余裕があるように見えて、支える人数の絶対量は県内で最も重いのが高松市の立場だということです。
福祉や医療を志望分野にするなら、この二重性を押さえておきましょう。
高松市の経済・産業
海上交通の要衝としての高松港
高松港は香川県のほぼ中央部に位置し、四国と本州を結ぶ海上交通の要衝として、商港・観光港・工業港の機能を併せ持つ総合港湾です。
令和5年の入港船舶隻数は29,183隻で全国12位、船舶乗降人員は206万人で全国4位。令和6年の国際コンテナ貨物量は37,794TEUでした。
人の乗り降りで全国4位という数字が、この港の性格を最もよく表しています。離島と本土をつなぐ航路が、日常の交通として機能しているということです。(出典:高松港の概要|令和5年・令和6年)
一方で、県は燃料油価格の高騰等を背景に離島航路の存続を交通課題として挙げ、存続に向けた緊急要望などの対応を行っています。乗降人員全国4位という数字と、航路を維持できるかという課題は同じ話の表と裏です。
交通政策を志望分野にするなら、この両面を一続きで語れるようにしておきましょう。
県のものづくりと、県都の役割
県の産業政策のページによれば、香川県は自県の産業を説明するとき、金属製品・一般機械器具・電気機械器具・輸送用機械器具・精密機械器具からなる「ものづくり基盤技術産業」を軸に置きます。
この分野は県の製造業のなかで事業所数・従業者数・製造品出荷額等・付加価値額のいずれも第1位で、建設機械や造船、自動車部品、電機機械の分野に国内トップクラスの企業が中核として存在し、溶接や切削加工、組込みソフトウェア、金属プレス加工といった基盤技術が蓄積されているとしています。
県都である高松市は、これらの企業の生産現場そのものというより、本社機能や商業、業務の集積を担う側に立ちます。県内の他の市町で生まれた製品や技術が、人とお金の動きとして高松に集まる構図です。
商工や企業誘致を語るなら、市単独の産業振興ではなく、県全体の産業の中でこの市がどんな機能を持つのかという視点を持っておきましょう。
観光の拠点が市内にあるということ
令和6年の香川県への県外観光客入込数は9,262千人で、前年比3.5%の増加でした。
県が主要観光地として集計する4か所のうち、栗林公園(746千人)と屋島(628千人)は高松市内にあります。合わせて137万人以上が、市内の2か所を訪れている計算です。(出典:香川県観光客動態調査報告書|令和6年)
さらに、瀬戸内の島々を舞台に3年に1度開かれる瀬戸内国際芸術祭には、会期中に国内外から約100万人が訪れるとされます。島へ渡る人の多くが高松港を通るため、この芸術祭は市の交通・宿泊・受入体制の話でもあります。
観光を志望分野にするなら、名所の紹介ではなく、人の流れをさばく側の課題として組み立てましょう。
高松市の主な行政課題
規模と機能がここまで積み上がると、引き受ける課題の重さも変わってきます。高松市について押さえておきたいのは、次の5つです。
県全体の人口減少を、県都としてどう受け止めるか
香川県は、県が公表する「かがわ人口ビジョン」(令和2年3月改訂版)で、令和42年に人口約77万人を維持することを目標としています。
しかし実際の減少は令和元年6,030人減、令和2年7,337人減、令和3年9,022人減、令和4年8,110人減と目標値を下回るペースで進み、県は急速な少子高齢化による年金・医療・介護等の将来の財政負担増を課題として公式に認識しています。
高松市の高齢化率は県平均を下回りますが、県内の他市町から人が集まった結果としての「若さ」であれば、県全体が縮むほどその流入も細ります。(出典:かがわ人口ビジョン・地方版総合戦略|令和6年)
三つの地震で県内最大級の被害を想定されている
香川県が令和7年9月2日に公表した地震・津波被害想定は、高松市にとって最も重い数字が並びます。
南海トラフの最大クラス(L2)の冬・深夜のケースで、市の死者数は建物倒壊310人・津波1,100人・災害関連死450〜900人。
津波による死者1,100人は県内で最も多い想定で、揺れによる建物全壊も5,400棟と推計されています。
中央構造線断層帯の地震では揺れによる全壊が3,700棟と県内最大、長尾断層帯の地震でも揺れ全壊1,200棟・建物倒壊による死者70人と推計されます。(出典:香川県地震・津波被害想定|令和7年9月2日公表)
三つの想定すべてで県内の上位に来るのは、人口と建物がこの市に集中しているからです。防災を語るなら、危険が特別に大きい土地だからではなく、集まっている量そのものが被害の大きさをつくるという構造から説明できるようにしておきましょう。
高潮という、実際に起きた被害
想定だけではありません。
平成16年8月30日から31日にかけての台風第16号では、大潮の満潮と台風の接近が重なって高潮が発生し、高松港と宇野港で観測史上最高潮位を記録しました。
香川県内の被害は死者・行方不明者3人、負傷者6人、住家全壊1棟、半壊および一部損壊245棟、床上浸水5,872棟、床下浸水16,088棟。浸水した住家は2万棟を超えました。
港と市街地が近い都市にとって、高潮は過去の話ではありません。(参考:平成16年台風第16号による高潮|高松地方気象台)
水を他県の川に頼っているという条件
高松市の年間降水量の平年値は1,150.1mmで、四国の県庁所在地の平均(約1,897mm)を大きく下回ります。
そして市の水源は、市全体の約56%を吉野川(早明浦ダム)から導水した香川用水に依存しています。
市民の飲み水の半分以上が、県外を流れる川から来ているということです。
平成6年の列島渇水では、吉野川水系で139日間の取水制限が行われ、高松市は7月15日から8月15日にかけて午後4時から午後9時までの5時間給水を実施しました。(出典:高松市の水問題|高松市公式)
権限の広さに見合う人をどう集めるか
約2,500項目の事務を県から引き受けている市は、職種の幅もそれだけ広くなります。
令和8年度の大学卒等の採用試験では、全職種合計で募集55人程度に対し応募305人(競争率5.5倍)、受験218人。主力の事務は募集34人程度に応募208人で6.1倍でした。
一方、職種別に見ると事務(手話)は応募が0人、事務(司書)は募集1人程度に応募7人、事務(学芸員)は募集1人程度に応募8人にとどまります。専門性の高い区分ほど、母数は薄くなります。
中核市の事務を回すために必要な人材が、そのまま集まるわけではないということです。(出典:令和8年度高松市職員採用試験受験状況|令和8年度)
高松市の重点政策|総合計画と人財育成ビジョン
計画そのものの中身については、受験前に市の最新版にあたってください。ここでは、面接の場で使える形になっている部分に絞って取り上げます。
第7次総合計画とあわせて改定された人財育成ビジョン
高松市は令和7年3月、第7次高松市総合計画の策定にあわせて「高松市職員人財育成ビジョン」を改定しました。
前回の改定は平成29年3月ですから、8年ぶりの見直しです。
同ビジョンが掲げる目標は、「誇りと愛着(シビックプライド)を持つとともにチャレンジ精神に富み」、職員が日々の成長とやりがいや達成感を感じながら一人一人の能力を最大限発揮できる組織を目指すというものです。
計画の改定と職員像の見直しを同じタイミングで行ったという事実自体が、市がこの2つを一体で考えていることを示しています。(出典:高松市職員人財育成ビジョン|令和7年3月改定)
同ビジョンは、職員が意識すべき「3つの指向」として【独創】他を真似るのではなく自ら考え実行する、【未来】今日より明日を良くするために実行する、【世界】常に世界の中の高松を意識して実行する、を掲げています。3つとも「実行する」で終わっているのが特徴です。
考えることと実行することを分けていない書き方だといえます。
中核市であることの中身
高松市が平成11年4月1日に中核市へ移行して県から引き受けた事務は、福祉(保育所の設置認可、身体障害者手帳の交付、社会福祉法人の設立認可・指導、特別養護老人ホームの設置認可・指導など)、保健衛生(未熟児養育医療や身体障害児育成医療の給付、飲食店や環境衛生諸営業の許可・指導監視、感染症対策)、環境保全(大気汚染の防止、騒音・振動規制地域の指定、産業廃棄物処理業の許可や処理施設の設置許可・指導監督)、都市計画・建設(屋外広告物の設置制限、市街化区域内または市街化調整区域内の開発行為の許可)など、広い範囲に及びます。(出典:高松市の中核市について|平成11年4月1日移行)
市は、保健所を自ら設置したことで、それまで県の高松保健所が担っていた保健サービスが市の窓口に一元化され、保健・医療・福祉の連携による総合的な保健衛生行政が推進できるようになったと説明しています。
許可を出す側、監督する側に市が立つということは、住民や事業者と直接向き合う場面が増えるということでもあります。志望動機を組み立てるとき、この権限の重さに触れられると話に芯が通ります。
採用のしくみに続けて手を入れている
市の姿勢は、採用制度の手の入れ方にも表れています。令和7年度の採用試験からは技術職について、第1次試験の教養試験を廃止して専門試験のみとし、集団面接を廃止して個別面接を第2次試験で実施、三段階だった選考を二段階に改め、最終合格の発表を1か月程度前倒しする見直しが実施されました。
さらに令和8年度の採用試験からは、土木・建築・機械・電気を対象とする「早期募集枠」の新設、全職種を対象とするカムバック採用、技術職を対象とするリクルーター制度の導入が加わっています。
人が集まりにくい職種の入口を、2年続けて作り替えてきた市だといえるでしょう。
POINT|「中核市だから」で止めない
権限の広さを言えることが自治体研究の目的ではありません。分野を一つか二つに絞り、その分野の課題、高松市が描く到達点、進行中の取組、中核市としての役割、自分の経験の生かしどころという順に調べていくと、答えが具体的になります。
悪い例「中核市で仕事の幅が広いので、いろいろな経験を積みたいです」
改善例「高松市は保健所を自分で持っていると知りました。感染症の対応も市の窓口で完結すると聞きましたので、平時から地域の医療機関とつながりを作る仕事に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
面接の前に開いておきたい資料を挙げます。順番は、自分が話したい内容に近いものからで構いません。
- 高松市の職員採用のページと、自分が受ける枠の最新の受験案内
- 高松市職員人財育成ビジョン(求められる職員像7項目が載っています)
- 第7次高松市総合計画の最新版と、市の地域防災計画
- 香川県の地震・津波被害想定(令和7年に新しい想定が公表されています)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、高松市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。高松市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
高松市役所の面接の概要
ここからは、高松市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、差がつく質問への備え方を、公表資料と当研究会の分析にもとづいて整理していきます。
高松市役所の面接の流れ
令和8年度高松市職員採用試験を実施するのは高松市で、担当は本庁舎3階の人事課です。
事務系は第1次試験・第2次試験・第3次試験の三段階で進み、人物を見る場は第2次と第3次の2回に置かれます。
第2次試験の口述試験は集団面接等、第3次試験の口述試験は個別面接という組み立てです。
| 項目 | 内容(令和8年度・大学卒等) |
|---|---|
| 試験の段階 | 三段階。第1次試験 → 第2次試験 → 第3次試験。ただし土木・建築・機械・電気(大学・短大)は二段階。職種によっては第2次試験を省略する場合があります |
| 主な採用予定人員 | 事務34人程度、事務(福祉)・事務(心理)・事務(手話)・事務(司書)・事務(学芸員)各1人程度、土木・建築・機械・電気・農業各1人程度、消防1人程度、消防(救急救命士)2人程度、薬剤師(保健所)2人程度、獣医師2人程度、保健師1人程度 |
| 第1次試験の配点(事務・農業) | 教養試験50点(2時間)と専門試験50点(2時間)。いずれも択一選択式 |
| 第1次試験の配点(事務(福祉)・事務(心理)) | 教養試験50点(2時間)と専門試験50点(1時間30分) |
| 第1次試験の配点(事務(手話)・事務(司書)・事務(学芸員)・薬剤師) | 教養試験100点(2時間) |
| 第1次試験の配点(土木・建築・機械・電気・保健師) | 専門試験100点(土木等は2時間、保健師は1時間30分) |
| 第1次試験の配点(消防・消防(救急救命士)) | 教養試験70点(2時間)と適性検査30点(50分) |
| 事務の専門試験の出題分野 | 憲法、行政法、民法、経済学、財政学、社会政策、政治学、行政学、国際関係等 |
| 第2次試験の口述試験 | 土木・建築・機械・電気(大学・短大)以外の職種は集団面接等、これらの職種は個別面接 |
| 第2次試験の職種別追加種目 | 大学卒等では消防・消防(救急救命士)に体力測定。短大・高校卒等の枠では、保育教育士に実技試験Ⅰ(身体表現、音楽)、技能職員に実技試験Ⅱ(調理)が加わります |
| 第3次試験の口述試験 | 個別面接。消防系職種には身体検査(医療機関で検査を受け、市所定の身体検査書を提出)もあります |
| 口述試験の配点 | 第2次試験・第3次試験の配点は受験案内に記載がなく、公表されていません。最新の受験案内でご確認ください |
| 申込方法 | インターネット(高松市職員採用システム)のみ。持参・郵送は受け付けません(事務【障がい者対象】のみ郵送も可)。顔写真の登録が必要で、受験票はマイページから印刷します |
| 成績開示 | 希望する場合は受験申込みの段階で「職員採用試験成績通知請求書」をダウンロードして添付する必要があります。申込後に請求することはできません |
| 第1次試験の会場 | 高松市役所本庁舎または高松市防災合同庁舎。会場は試験日の約2週間前に市ホームページで発表されます |
この試験でまず意識したいのは、配点が公表されているのは第1次試験だけだという点です。
事務であれば教養50点と専門50点の合計100点。ここまでは数字で見えます。
しかし第2次の集団面接と第3次の個別面接の配点は公表されていません。
見えている部分だけで合否が決まらない設計になっているということです。
筆記の到達点を数字で管理しつつ、人物試験については配点を推測せず、二段階を通しての一貫性で勝負するのが現実的な構えでしょう。公表されている第1次試験の側は、職種によって形が分かれます。
事務・事務(福祉)・事務(心理)・農業は教養50点と専門50点で半分ずつ。事務(手話)・事務(司書)・事務(学芸員)・薬剤師は教養100点のみ。
土木・建築・機械・電気と保健師は専門100点のみ。消防は教養70点に適性検査30点が加わります。
同じ市の同じ試験日でも、自分の区分の行に載っていない種目は勉強しなくてよい、ということです。事務は50対50ですから苦手なほうを捨てられませんし、教養だけ、あるいは専門だけで100点になる区分では、その一科目の仕上がりがそのまま第1次試験の結果になります。
消防を受けるなら、適性検査が参考扱いではなく30点として数えられる点を見落とさないでください。
上記の試験内容は、令和8年度高松市職員採用試験(大学卒等)の受験案内によります。試験区分・試験種目・配点・受験資格は年度によって変わることがありますので、受験の際は必ず最新の受験案内でご確認ください。(出典:令和8年度高松市職員採用試験受験案内|令和8年度)
受験者数と合格者数の目安
市は採用試験の受験状況を職種別に公表しています。自分が受ける区分でどのくらいの人数が動いているのかを、具体的に確かめられます。
| 区分 | 募集/応募/受験/合格の状況 |
|---|---|
| 事務(大学卒等) | 34人程度/208人(6.1倍)/139人(4.1倍)/105人。第2次試験は受験96人・合格68人 |
| 大学卒等の全職種合計 | 55人程度/305人(5.5倍)/218人(4.0倍)/142人。第2次試験は受験132人・合格94人 |
| 事務【職務経験者対象】 | 7人程度/108人(15.4倍)/99人(14.1倍)/21人。第2次試験は受験20人・合格14人 |
| 事務【行政実務経験者対象】 | 7人程度/64人(9.1倍)/56人(8.0倍)/21人。第2次試験の合格は14人 |
| 早期募集枠(土木・建築・機械・電気ほか) | 合計8人/37人(4.6倍)/最終合格8人(実競争率4.3倍) |
令和8年度高松市職員採用試験の受験状況として市が公表した数値です。
この表で目を引くのは、経験者を対象とする区分のほうが、新卒等を対象とする事務より高い倍率になっている点です。
事務が6.1倍であるのに対し、職務経験者対象は15.4倍。社会人からの応募が集まる市だということであり、新卒でこの市を受ける人にとっては、同じ職場を目指す相手の層が広いということでもあります。
この表は、配点が示されていない部分の重さを人数のほうから教えてくれます。事務は第1次試験の合格が105人。
第2次試験を受けた96人のうち合格は68人で、採用予定は34人程度です。事務の場合、第1次試験のあとに新しく加わる種目は集団面接と個別面接だけですから、105人を34人程度まで絞り込む過程で持ち込まれる新しい材料は、配点が公表されていない口述試験だけということになります。
第1次試験は100点満点の中で順位を伸ばす場ではなく、この105人に入るための関門です。合格ラインに手が届いた時点で学習量を打ち止めにし、そこから先の時間を集団面接と個別面接に回す判断を、早めにしておきましょう。
高松市役所が求める人物像
高松市は「高松市職員人財育成ビジョン」の中で、求められる職員像を7項目にまとめて公表しています。
①高松への愛着心を持っていること(高松を愛する心)②健康であること③コミュニケーション能力を持っていること④これまでの経験(仕事・人生)を活かし、職務を全うすること⑤コンプライアンス意識を持ち、公務員としての素養を兼ね備えていること⑥デジタルリテラシーを身に付けること⑦組織の一員であるという自覚を持つこと。
この7項目が、面接で見られているものの公式な一覧にあたります。並びを見ると、④に「これまでの経験(仕事・人生)を活かし」という文言が入っています。
職務経験者対象の区分が新卒対象より高い倍率になっている市が、職員像にもこの一文を置いています。前職や学生時代の経験を、そのまま持ち込んで使ってほしいという姿勢が読み取れます。
⑥のデジタルリテラシーも、近年の改定で加わった観点です。市はさらに、平成20年4月から「高松市職員CSクレド」として5つの精神と5つの行動指針を実践しています。
精神の側は「職務に対し情熱的である」「常に市民思考である」「プロフェッショナルである」「倫理を遵守する」「思いやりを持って職務に臨む」。行動指針の側は、さわやかな笑顔のあいさつ、わかりやすく丁寧な言葉遣いといった、窓口での振る舞いに落とし込まれた項目が並びます。
理念と、窓口での所作とを、同じ体系の中に置いているのがこの市の特徴です。
7項目とクレドを並べて眺めると、この市が人物試験を二段階に分けている理由にも見当がつきます。
受験案内にそう説明されているわけではありませんが、集団面接では③のコミュニケーション能力や⑦の組織の一員としての自覚が出やすく、個別面接では①の愛着心や④の経験の活かし方が問われやすくなります。どちらか一方だけを整えても足りない構造です。
約2,500項目の事務を県から引き受け、保健所まで自前で持つ市では、部署をまたいで人と組む場面と、担当として一人で説明を尽くす場面の両方が日常的に起きます。二段階の人物試験は、その両方を見るための形だと考えると納得がいきます。
大切なのは、集団面接向けの自分と個別面接向けの自分を別々に用意しないことです。集団面接で見せた立ち回りについて、第3次の個別面接で「なぜあのとき、そう動いたのですか」と問われても説明できる状態にしておきましょう。
そこまで地続きになっていれば、この市の選考は最後まで同じ線でつながります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。高松市の集団面接・個別面接も、この見取り図の上で準備すれば基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 緊張していますか? | 集団面接と個別面接という2つの場で、同じ調子の話し方を保てるか |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 香川県庁でもなく周辺の市町でもなく、中核市である高松市を選んだ理由まで届いているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 職員像を7項目まで具体に書き出している市で、そのどこに自分が届いていないかを率直に言えるか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | 職員像④が求める「これまでの経験を活かす」という観点に、実例で答えられるか |
| ⑤ 学業・経歴 | 卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください | 専門試験で問われる行政法や財政学の考え方を、話し言葉で説明できるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 市役所、保健所、消防局、病院局など勤務場所の幅を前提に働けるか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 職員像⑥のデジタルリテラシーも含め、社会の動きを市の仕事に引き寄せて語れるか |
応募208人が動く事務区分では、7カテゴリーを埋めた状態がようやく出発点になります。そこから先を分けるのが、次の2問です。
合否を分けるのは「高松市役所ならでは」の質問
1問目は、県庁所在地の市役所を受ける人にとって最も答えにくい質問です。
同じ市内に県庁があり、仕事の対象も重なって見えます。だからこそ、中核市として県から移された権限の中身にまで踏み込めるかどうかで差が出ます。
2問目も、栗林公園や屋島の紹介では答えになりません。
県都であることの利点と負荷を、同じ口で語れるかが試される質問です。
話の芯にできる事実を、下の表にまとめます。
| 質問テーマ | 知っておきたい高松市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と年齢構成 | 住民基本台帳人口は415,718人、高齢化率28.9%、75歳以上の割合は17.2%(令和8年1月1日現在)。香川県全体は32.2%と19.2%だが、65歳以上の人数は120,254人 | 比率では県より低いことと、人数では県内で最も多いことを両方示して話します |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 平成11年4月1日に中核市へ移行し、県から約2,500項目の事務権限が移譲された。保健所も市が設置している | 県と市の役割の違いを一般論で語らず、移譲された事務の具体名を1つか2つ挙げて説明します |
| 高松市の魅力 | 高松港は令和5年の船舶乗降人員が206万人で全国4位。栗林公園746千人・屋島628千人が市内にあり、瀬戸内国際芸術祭には会期中に約100万人が訪れるとされる | 名所を並べるのではなく、人が集まり通過する都市をどう運営するかという視点に置き換えます |
| 災害への備え | 南海トラフ最大クラス(冬・深夜)の想定死者は建物倒壊310人・津波1,100人で津波死者は県内最多。中央構造線断層帯では揺れ全壊3,700棟と県内最大。平成16年台風第16号の高潮では県内で床上浸水5,872棟 | 想定のケース条件を添えたうえで、集まっている人と建物の量が被害を大きくするという読み方を示します |
| 水の条件 | 市の水源の約56%を香川用水(吉野川・早明浦ダムから導水)に依存。年間降水量の平年値は1,150.1mmで四国の県庁所在地平均を大きく下回る | 県外の川に頼る構造を押さえ、渇水時に市が何を判断してきたかまで話をつなげます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
高松市は求められる職員像を7項目で公表しています。
ここまで具体的に並べている以上、面接はその7項目に自分の過去の行動を突き合わせる場だと見ておくのが妥当でしょう。土台にあるのはコンピテンシー評価の考え方で、確かめられるのは答えのまとまりではなく、その行動を実際にとったのか、たまたまではなかったのかという点です。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 高松への愛着を語れるか | 職員像①が挙げる「高松を愛する心」を、第3次の個別面接で具体に落として問われる | 市の施設名や行事名を並べるのではなく、自分がこの市の何を残したいのかを一つ決めておく |
| 人と組んで進められるか | 第2次の集団面接で、職員像③のコミュニケーション能力と⑦の組織の一員としての自覚が見られる | 反対意見が出たときに引き取って言い換えた経験を用意し、5人以上での討論を実際に試しておく |
| これまでの経験を仕事に接続できるか | 職員像④が求める経験の活かし方を、個別面接で掘られる | 職務経験者対象が15.4倍という市であることを踏まえ、学生時代の経験も「仕事に使える形」に言い換えておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。高松市は集団面接を経てから個別面接に進む分、集団面接での発言を起点に掘られる可能性もあります。
自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分が受ける枠(大学卒等、短大・高校卒等、SPI枠、事務【障がい者対象】、経験者対象、早期募集枠)を決め、その枠の最新の受験案内で職種・試験種目・受験資格を確認する
- 第1次試験の配点に合わせて学習計画を立てる。事務なら教養50点と専門50点で、専門は憲法・行政法・民法・経済学・財政学などが対象になる。教養だけ、あるいは専門だけで100点という区分もあるので、まず自分の職種の配点を確かめる
- 申込みの手順を早めに確認する。インターネット申込みのみで顔写真の登録が必要なうえ、成績開示を希望するなら申込みの段階で請求書を添付しなければならない
- これまでの経験を棚卸しする。学業、課外活動、アルバイトや職務経験から話せる具体例を1つずつ出し、人と組んで進めた場面を必ず1つ混ぜておく
- この記事の第1部と人財育成ビジョンの7項目を読み合わせ、自分の経験がどの項目に接続するのかを紙に書き出す
- 7カテゴリーの代表質問に一言メモで答えを作る。あわせて複数人で集団面接の練習をし、そこで話した内容を個別面接で掘られたときの返しまで用意する
優先順位に注意
ステップ3の申込み手続きは、実は最も期限に縛られる工程です。
成績開示の請求は申込みのときにしかできないため、後から取り返せません。
ステップ5の自治体研究は最後に乗せる工程なので、時間が足りないときはステップ4の経験の棚卸しを先に終わらせてください。7項目に自分を当てはめる作業も、語れる経験が手元にあってはじめて意味を持ちます。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、高松市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
高松市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度の高松市職員採用試験は、大学卒等の事務であれば第1次から第3次までの三段階で進み、第2次の集団面接と第3次の個別面接という二段構えで人物が見られます。
配点が公表されているのは第1次だけで、口述試験の重みは数字では示されていません。県人口の4割超が暮らし、県から約2,500項目の事務を引き受け、保健所も港も抱える県都。
その市役所で、集団の中にいるときの自分と、一人で説明するときの自分が同じ人として通るかどうか。人財育成ビジョンが挙げる7項目を手元に置きながら、自分の経験を見直しておきましょう。