本記事では、丸亀市職員採用試験の面接対策で必要な、丸亀市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
丸亀市役所の面接試験では、「なぜ丸亀市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。令和8年度の丸亀市職員採用試験は第1次から第3次までの3段階で行われ、第2次が集団討論等、第3次が個別面接という構成です。人物を確かめる場面が二度用意されている試験だといえます。
本記事で扱う試験の内容は、丸亀市が公表した令和8年度の受験案内にもとづくもので、行政事務(大学卒)を中心に整理しています。掲載内容を参考に、自分の強みや関心と丸亀市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
丸亀市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは丸亀市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 香川県の中讃地域に位置し、高松市に次いで県内で2番目に人口が多い市。北は瀬戸内海に面する。
- 人口は11万484人(令和8年1月1日現在)で、香川県全体(93万1,812人)のおよそ12%にあたる。
- 高齢化率は28.9%。香川県全体の32.2%を3.3ポイント下回り、県内8市では高松市と並ぶ水準にある。
- 市域の面積は111.83km²で、全国で最も面積の小さい香川県のおよそ6%。坂出市・善通寺市・宇多津町・綾川町・多度津町・まんのう町の6市町と陸続きで接する。
- 丸亀城は、石垣の高さ約60mが日本一とされ、天守は現存十二天守の一つ。
- 丸亀うちわの生産量は年間約8,300万本で、全国シェア90%。平成9年5月に国の伝統的工芸品に指定されている。
- 平成6年の渇水では、7月25日から10月4日まで午後11時から午前5時の断水が続いた。水の確保は、いまも香川県の行政を貫く前提になっている。
- 令和7年9月に公表された県の被害想定では、揺れによる建物の全壊棟数が、南海トラフ地震より中央構造線断層帯の地震のほうが多いと見込まれている。
丸亀市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「丸亀市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
面接で実際に使えるのは統計の量ではなく、話の前提として置ける数字です。丸亀市の場合は、人口と年齢構成、市域の広さ、そして誰と隣り合っているかの3点がそれにあたります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 110,484人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口(高齢化率) | 3万1,933人(28.9%/香川県全体は32.2%) |
| 75歳以上人口(75歳以上率) | 1万8,642人(16.9%/香川県全体は19.2%) |
| 総面積 | 111.83km²(香川県の約6.0%) |
| 人口密度 | 約988人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 坂出市・善通寺市・宇多津町・綾川町・多度津町・まんのう町、海を挟んで岡山県倉敷市・笠岡市・浅口市 |
| 市の花・市の木 | サツキ・ヤマモモ |
| 市役所の所在地 | 丸亀市大手町二丁目4番21号 |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口および香川県全体の割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の数値です。人口密度は同じ人口を総面積で割って当研究会が算出しました。総面積・隣接自治体・市の花木は、当研究会が整理した基礎データによります。国勢調査を基準とする人口・高齢化率とは集計の系列が異なるため、直接比較はできません。
数字から考えられる市政課題
丸亀市の年齢構成でまず目を引くのは、高齢化率が県平均を下回っていることです。香川県全体の32.2%に対して丸亀市は28.9%で、県内の他の市を見ると、東かがわ市44.3%、さぬき市39.6%、三豊市37.2%、坂出市35.2%、観音寺市34.6%と続きます。
県内で高齢化の進み方が最も緩やかな側にある市だという位置づけになります。
ただし、緩やかであることと、備えが要らないことは別です。75歳以上人口は1万8,642人で、率にすると16.9%。
丸亀市民のおよそ6人に1人が75歳以上という計算になります(いずれも令和8年1月1日現在)。介護や見守り、移動手段の確保といった仕事の量は、県内の他市より遅れて、しかし確実に増えていきます。
面接では、この二面性をそのまま話せると強くなります。
丸亀市の経済・産業
香川県の産業を支える「ものづくり基盤技術産業」
香川県は、金属製品・一般機械器具・電気機械器具・輸送用機械器具・精密機械器具に分類される製造業を「ものづくり基盤技術産業」と呼び、県の産業政策の中心に据えています。この分野は県内製造業の事業所数・従業者数・製造品出荷額等・付加価値額のいずれでも第1位です。
建設機械関連、造船関連、自動車部品関連、電機機械関連には国内トップクラスの企業が中核として存在し、溶接、切削加工、組込みソフトウェア、金属プレス加工といった技術が蓄積されています。(出典:香川県のものづくり基盤技術産業|香川県)
産業振興や企業誘致に関心があるなら、「大きな工場を呼ぶ」という発想の手前に、こうした技術の集積があることを押さえておきましょう。丸亀市の仕事も、県のこの構造の上に乗っています。
丸亀うちわという地場産業
丸亀市を語るうえで外せないのが、うちわです。生産量は年間約8,300万本で、全国で流通するうちわの9割が丸亀産。
平成9年5月には国の伝統的工芸品に指定されました。江戸時代のはじめに金毘羅参詣の土産物として作られたのが始まりとされ、参拝の道筋と地場の産業が結び付いて生まれた点にこの土地らしさがあります。(出典:丸亀うちわ|丸亀市公式)
面接でうちわの話をするときは、生産量を言うだけで終わらせないことです。全国シェア9割という数字は、裏を返せば、この産業が細れば代わりを担う産地がないということでもあります。
担い手をどう確保するか、観光や移住の入口としてどう見せるか、学校教育でどう扱うか。一つの地場産業が、産業振興と観光と教育の三つの窓口にまたがっているという捉え方をしておくと、志望分野が何であっても話をつなげられます。
丸亀城という資源
丸亀城は、慶長2年から5年をかけて生駒親正・一正父子が築いた平山城です。石垣の高さは約60mで日本一とされ、天守は全国に12しか残っていない現存天守の一つに数えられます。(出典:丸亀城|丸亀市公式)
観光の話をするときに忘れたくないのは、城が観光資源であると同時に行政が抱える構造物でもあるということです。日本一とされる高さの石垣は、そのまま維持管理の対象になります。
にぎわいづくりの側から城を語る人は多いのですが、丸亀市の職員として関わるなら、守る側の手間と費用がついて回ることまで含めて見ておく必要があります。観光を志望分野にするなら、名所を並べるのではなく、来てもらったあとに何が起きるかまで考えておきましょう。
丸亀市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を並べると、丸亀市がいま向き合っている問題の形が見えてきます。面接で「市の課題は何ですか」と聞かれたときに手ぶらにならないよう、5つに整理しました。
人口が減り続ける県の中での位置
香川県の人口は、令和6年中に8,504人減少し、25年連続の減少となりました(出典:香川県人口移動調査結果|令和6年)。
県は「かがわ人口ビジョン」(令和2年3月改訂版)で、令和42(2060)年に約77万人を維持することを目標に掲げています(出典:かがわ人口ビジョン|令和2年3月改訂版)。しかし県自身、令和元年6,030人減、令和2年7,337人減、令和3年9,022人減、令和4年8,110人減と、目標値を下回る推移が続いていることを課題として認めています(県の人口減少対策の資料による。数値が挙げられているのは令和4年までで、令和5年の減少数は示されていません)。
丸亀市の高齢化率が県平均より低いのは、この流れの外にいるからではありません。県全体で進んでいることが、丸亀市では他市より遅れて表れているということです。今のうちに何を仕込めるかという時間の使い方が、この市の政策判断を左右します。
海と内陸、二つの地震想定
令和7年9月2日、香川県が地震・津波の被害想定を新しくしました。南海トラフの最大クラスの地震(L2・冬深夜)における丸亀市の死者は、建物倒壊100人、津波180人、災害関連死90〜180人と推計され、揺れによる建物の全壊は1,700棟と見込まれています。
注目すべきは、もう一つの想定です。中央構造線断層帯の地震では、丸亀市の揺れによる全壊は1,900棟、建物倒壊による死者は110人と推計されており、揺れの被害は南海トラフより中央構造線断層帯のほうが大きいと見込まれています。
県全体でも、この断層による揺れの全壊被害は中讃・西讃の内陸に厚く分布します。海側の津波だけを想定していると、この構図を見誤ります。(出典:香川県地震・津波被害想定(定量評価)概要版|令和7年)
水をめぐる前提条件
香川県の行政を語るうえで避けて通れないのが水です。平成6年の列島渇水では、吉野川水系の取水制限が6月29日から11月14日までの139日間に及び、早明浦ダムは7月24日に利水貯水量がゼロになりました。
丸亀市では7月25日から10月4日まで、午後11時から午前5時の断水が続きました。(出典:渇水対策の記録(吉野川水系)|国土交通省)
この経験を受けて県は平成8年に総合水資源対策大綱を策定し、渇水対策容量を持つダムの建設や香川用水調整池の整備につなげました。香川用水は徳島県の池田地点から年間2億4,700万m³を分水する仕組みで、内訳は農業用水1億500万トン、上下水道用水1億2,210万トン、工業用水1,990万トンです(出典:香川用水の概要|香川県)。
あわせて、県内のため池は1万2,269箇所(令和3年4月現在)、ため池密度は6.5か所/km²で全国第1位。決壊すれば人的被害のおそれがある防災重点農業用ため池は3,099箇所にのぼります。(出典:香川県のため池の総数|令和3年)
地場産業の担い手をどう確保するか
全国に流通するうちわの9割を占める産地であるということは、この産業が細れば代わりを担う場所がないということでもあります。伝統的工芸品は、職人が続かなければ技術そのものが途切れます。
市が関われるのは、販路づくり、後継者の育成、学校教育での扱い、観光や移住の入口としての見せ方といった間接的な手立てで、いずれも短期で結果が出るものではありません。志望動機でうちわに触れるのであれば、有名だという話の先に、続けるための仕組みまで想像が届いているかが分かれ目になります。
基礎自治体としての守備範囲
丸亀市は、政令指定都市や中核市のような特例的な区分には当たらない一般の市です。香川県内で保健所を設置しているのは高松市だけで、丸亀市域の保健所行政は県が担っています。
県と市のどちらが何を受け持つのかという線引きは、地味に見えて、志望理由の説明で必ず通る道です。「住民に近い」という言い方をするなら、近いとはどの仕事のことなのかまで自分で説明できる状態にしておきましょう。
丸亀市の重点政策|目指すべき職員像と香川県の実現計画
丸亀市が職員に何を期待しているかは、採用のページに掲げられた一つの方針にはっきり書かれています。「丸亀市人材育成基本方針」(平成26年3月改訂)が示す「目指すべき職員像」です。全ての職員に共通する目標として、次の4項目が挙げられています。(出典:丸亀市が目指すべき職員像|丸亀市公式)
- 市民感覚に優れた職員
高い共感性と広い視野、豊かな発想を持つ職員 - 柔軟かつ的確に対応する職員
社会の動き、時代の変化に対して、前例主義、現状維持に陥ることなく最善の解決策を見出す職員 - コミュニケーション能力に優れた職員
聞くこと、伝えることを通して、相手との信頼関係を築くことができる職員 - 決断する職員
プロフェッショナルの公務員として、失敗を恐れず、積極果敢にチャレンジしていく強い意思を持つ職員
4項目を並べて読むと、市が想定している職員の姿が浮かびます。市民の感覚を受け止め、前例に寄りかからず、相手と信頼を築いたうえで、最後は自分で決める。受け止める力と決める力の両方を一人の職員に求めている、という読み方ができます。
受験案内が示す問いの立て方
もう一つ、丸亀市の方向を読み取れる材料があります。受験案内に参考として掲載された令和7年度の作文試験の出題テーマです。
大学卒等は「魅力を活かしたまちづくり」(丸亀市の魅力を一つ挙げ、その魅力をまちづくりにどう活かすかについて記述してください。)、短大卒・高校卒等は「失敗を乗り越えた私の成長」について、というものでした。作文試験は「選考の参考資料として用います」と明記されています。(出典:丸亀市職員採用試験受験案内(大学卒業程度等)|令和8年度)
この出題は、市が受験者に何を考えさせたいかをそのまま示しています。魅力を知っているかではなく、魅力を一つ選び、それをまちづくりに接続できるか。面接で問われることも、結局は同じ形をしています。
香川県の総合計画との関係
丸亀市の政策は、県が描く方向の内側にあります。香川県の総合計画は「『人生100年時代のフロンティア県・香川』実現計画」で、人口減少と少子高齢化の深刻化に対応するため令和5年10月に見直されました。
急速な少子高齢化によって年金・医療・介護などの社会保障にかかる将来の財政負担が増大することを、県は公式に課題として認識しています。自分がやりたい仕事を話すとき、丸亀市の事情と県の方向の両方に位置づけられると、志望の理由が一段深く聞こえます。(出典:人生100年時代のフロンティア県・香川 実現計画の見直し|令和5年10月)
POINT|4つの職員像は暗記するものではない
4項目を言えることに価値はありません。自分の経験のどれが、どの項目に当てはまるのかを対応させておくことが準備です。「①どんな場面だったか → ②自分はどう受け止めたか → ③何を決めて動いたか → ④相手や周囲がどう変わったか」の順で、一つのエピソードを整理してみてください。
悪い例「私はコミュニケーション能力に自信があります」
改善例「アルバイト先で常連のお客様の要望と店のルールがぶつかったとき、まず最後まで話を聞いて、その場で自分の判断でできる範囲を伝えました。結果として今もご利用いただいています。聞いたうえで決めるところまでが自分の役割だと考えています」
あわせて確認したい公式資料
丸亀市の準備で実際に開く価値があるのは、次の4点です。いずれも公式サイトから読めます。
- 丸亀市職員採用試験の受験案内(最新年度)
受験資格・試験科目・提出書類・採用予定人員が一つにまとまっています - 丸亀市人材育成基本方針と目指すべき職員像
4項目がどんな文脈で書かれているかを確かめられます - 丸亀市のハザードマップ・防災情報
南海トラフと中央構造線という二つの想定を、地図の形で把握できます - 「人生100年時代のフロンティア県・香川」実現計画
県全体の方向と、丸亀市が置かれた位置を重ねて理解できます
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、丸亀市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。丸亀市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
丸亀市役所の面接の概要
ここからは、令和8年度の受験案内で公表されている試験の構成と、当研究会の分析をあわせて、丸亀市役所の面接の姿を整理していきます。
丸亀市役所の面接の流れ
令和8年度の丸亀市職員採用試験は、第1次・第2次・第3次の3段階で実施されます。第2次試験は第1次試験の合格者のみ、第3次試験は第2次試験の合格者のみが対象です。
そして第2次が集団討論等、第3次が個別面接ですから、第1次を通過したあとに残っているのは、人物を確かめる試験だけということになります。
| 項目 | 内容(令和8年度・行政事務(大学卒)) |
|---|---|
| 試験の段階 | 3段階。第1次 → 第2次 → 第3次と、段階ごとに合格者のみが次へ進みます |
| 第1次試験の科目 | 教養試験(択一式。時事、社会・人文、自然に関する一般知識/文章理解、判断・数的推理、資料解釈)、専門試験(択一式。憲法、行政法、民法、経済学、財政学、社会政策、政治学、行政学、国際関係等)、適性検査、作文試験の4種目 |
| 第2次試験の科目 | 集団討論等。「主として人物、職務適性、対人関係能力等について評価します」とされています |
| 第3次試験の科目 | 個別面接。「主として人物、識見、職務適性等について評価します」とされています |
| 作文試験の扱い | 「選考の参考資料として用います」と明記されています |
| 配点 | 公表されていません |
| 申込・提出内容 | 丸亀市職員採用サイト(パブリックコネクト)での電子申請のみ。学歴欄に最終学歴を含むすべての学歴を、職歴欄に在学中のアルバイトを除いたすべての職歴を入力します |
| 併願の可否 | 応募できるのは1職種に限られます |
上記は、丸亀市が公表した令和8年度受験案内にもとづく行政事務(大学卒)の内容です。行政事務(短大卒)・行政事務(高校卒)の第1次試験は教養試験(択一式)・適性検査・作文試験、土木(高校卒)・建築(高校卒)はSPI3(性格検査と基礎能力検査)に専門試験(択一式)と作文試験を加えた構成です。保育士・幼稚園教諭は第2次試験で実技試験(ピアノ演奏その他)が加わります。配点は公表されていません。試験の構成は年度や受験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の受験案内をご確認ください。
第2次と第3次で、案内の書き方が少しずつ違うところに目を留めてください。第2次の集団討論等は「主として人物、職務適性、対人関係能力等」、第3次の個別面接は「主として人物、識見、職務適性等」を評価するとされています。
両方に出てくるのは人物と職務適性の2つ。第2次にだけ書かれているのが対人関係能力で、第3次にだけ書かれているのが識見です。
準備を二段に分けるとすれば、この2語が手がかりになります。
対人関係能力のほうは、一人で練習していても示しようがありません。人の話を最後まで聞けるか、違う意見が出たときに自分の主張をどう扱うか、話が散らかったときに引き戻せるか。
誰かと話す場を実際につくって、そこで自分がどう振る舞うのかを確かめておく種類の準備です。
一方の識見は、物事をどう見て、なぜそう判断するのかという中身のこと。こちらは一人で考えを詰める作業が効きます。
第2次に向けては人と話す場を、第3次に向けては考えを掘る時間を確保する。そう配分しておくと、練習が空回りしません。
案内の文言が「集団討論」ではなく「集団討論等」である点にも注意が要ります。討論そのものに限る書き方ではなく、日時と会場も受験対象者へ別途通知されるとされています。形式を細かく決めつけて練習を組むより、他の受験者と同じ場に置かれて人物と対人関係能力を見られる、という共通の条件のほうを前提にしておくのが安全でしょう。
作文試験については、案内が扱いをはっきり書いています。「選考の参考資料として用います」という一文です。
作文の出来で第1次を押し切るという組み立てが成り立つ書き方ではありません。ただ、参考の資料として選考の場に残る文章であることも確かです。
だとすれば、作文に書いたことと面接で話すことが食い違っていないかどうかは、受験者の側で管理できる数少ない部分だといえます。
令和7年度の大学卒等のテーマが「魅力を活かしたまちづくり」だったことを踏まえるなら、丸亀市の魅力として何を選ぶかは、作文用紙に向かう前に決めておくほうがよいでしょう。第3次の個別面接で同じことを問われたときに、別の答えを出す理由はありません。
もう一点、押さえておきたい仕組みがあります。丸亀市は採用試験の成績を不合格者に限り通知しており、第1次試験は得点・順位・受験者数・適性検査結果(行政事務のみ)、第2次試験と第3次試験は得点・順位・受験者数が対象です。
請求できるのは各試験の合格発表日の翌日から30日間。届かなかったときに、どの段階でどう届かなかったのかを自分で確かめられる設計になっています。
丸亀市役所が求める人物像
第1部で見たとおり、丸亀市は「目指すべき職員像」として4項目を公表しています。市民感覚、柔軟かつ的確な対応、コミュニケーション能力、そして決断。
このうち面接で最も差が出やすいのは、失敗を恐れず積極果敢にチャレンジしていく強い意思、という4つ目の項目だと当研究会は考えています。前の3つは「そうありたい」と言えてしまいますが、決断だけは、実際に決めた場面がなければ語れないからです。
以下は市の文書に書かれている内容ではなく、令和8年度の採用予定人員という数字を出発点に当研究会が組み立てた読み方です。
短大卒・高校卒程度等でいえば、行政事務が短大卒と高校卒を合わせて2人程度、土木(高校卒)1人程度、建築(高校卒)1人程度、保育士・幼稚園教諭が合わせて7人程度です。保育士・幼稚園教諭を除けば、職種ごとに見て1人か2人という規模になります。
人口11万人台、面積111.83km²という条件で、この人数を毎年迎える。そうすると、同じ仕事を並んで担当する同僚は少なくなります。
前任者から引き継いだ分野を、残された資料を頼りに自分で立ち上げ直す場面が出てくるということです。加えて、市域が狭く隣接する6市町とも距離が近いぶん、市民との距離は県の職員より近くなります。
この2つが重なる職場では、知らない分野を短期間で扱えるようになる力と、相手の事情に合わせて説明の仕方を変えられることの比重が上がる、というのが当研究会の見立てです。
丸亀市の場合、それが表れているのが作文試験の出題です。「丸亀市の魅力を一つ挙げ、その魅力をまちづくりにどう活かすか」という設問は、知識ではなく、自分で選んで自分で接続する作業を求めています。
ここで一つ選んだ魅力は、第2次の集団討論等では他の受験者の意見と突き合わせる材料になり、第3次の個別面接では、なぜそれを選んだのかという判断の理由まで掘られます。対人関係能力を見る場と識見を見る場に、同じ一つの素材が出てくるということです。
作文の設問が魅力を一つに絞らせている以上、たくさん並べることが答えになるわけではありません。丸亀市の仕事に届く経験を一つ定め、その選び方の理由まで説明できるようにしておけば足ります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。丸亀市の第2次・第3次で問われることも、おおむねこの見取り図の中に収まります。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 緊張していますか? | 身構えていない状態での受け答えのテンポ。作り込んだ言葉ではなく、その場で返す一言 |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 民間企業でも成り立つ理由で止まっていないか。1職種しか応募できない試験を選んだ筋道が通っているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 自分の癖を分かったうえで付き合えているか。集団討論等で対人関係能力が見られる以上、避けて通れない観点 |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | うまくいったかどうかではなく、途中で何を試し、何をやめたのか |
| ⑤ 学業・経歴 | 卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください | 専門の外にいる相手へ言葉を置き換えられるか。専門試験で扱う分野と地続きに説明できるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 丸亀市の仕事の範囲をどこまで具体的に見ているか。希望と違う配属になったときの構え |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 世の中の動きを自分の関心とつなぎ、短く言い切れるか |
ただし、この7つは当研究会が全国の想定問答を整理してできた区分です。枠が同じということは、集まる答えも似通うということでもあります。丸亀市の名前を別の市に入れ替えても成立してしまう回答は、次の質問で見分けられます。
合否を分けるのは「丸亀市役所ならでは」の質問
2問目は、丸亀市の受験者にとって特別な意味を持ちます。第1部で見たとおり、令和7年度の作文試験は「丸亀市の魅力を一つ挙げ、その魅力をまちづくりにどう活かすか」を問うていました。
市が筆記で問うたことを、面接でもう一度、口頭で確かめる形になっているわけです。1問目のほうも、県と市が受け持つ範囲を自分で切り分けられなければ言葉が続きません。
しかも丸亀市では、第2次の集団討論等で他の受験者と並んだあと、第3次の個別面接で同じことをもう一度問われます。準備の差が二度にわたって表に出るということです。
こうした質問に答えるための丸亀市の事実を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい丸亀市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と年齢構成の現在地 | 総人口11万484人、高齢化率28.9%、75歳以上率16.9%(令和8年1月1日現在)。香川県全体の高齢化率32.2%を3.3ポイント下回る | 県平均より緩やかだという事実から入り、それでも75歳以上が6人に1人という現在地まで一続きで話します |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 丸亀市は政令指定都市や中核市のような特例的な区分に当たらない一般の市。香川県内で保健所を設置しているのは高松市のみ | 制度の説明で終えず、県が受け持つ分野と市が受け持つ分野の境目を、自分がやりたい仕事の側から説明します |
| 防災・危機管理 | 令和7年9月公表の県の被害想定では、丸亀市の揺れによる全壊は南海トラフ(L2・冬深夜)1,700棟に対し、中央構造線断層帯の地震では1,900棟 | 海側の津波だけでなく内陸の断層も想定に入っていることに触れ、自分が暮らす場所の想定を確かめたうえで話します |
| 水をめぐる前提 | 平成6年の渇水では、丸亀市は7月25日から10月4日まで午後11時から午前5時の断水。県内のため池は1万2,269箇所(令和3年4月現在)で密度は全国第1位 | 香川の水は足りている前提で語れないものだという理解を示し、暮らしの基盤を保つ仕事として位置づけます |
| 丸亀市の魅力 | 丸亀城は石垣の高さ約60mが日本一とされ、天守は現存十二天守の一つ。丸亀うちわは年間約8,300万本で全国シェア90%、平成9年5月に国の伝統的工芸品指定 | 令和7年度の作文と同じ問いなので、魅力を挙げるだけで止めず、市政のどの仕事につなげるかまで用意しておきます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、丸亀市が掲げる「目指すべき職員像」に照らして、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 市民感覚(高い共感性と広い視野) | 相手の立場に立って動いた場面が、実際の出来事として出てくるか | 丸亀市の窓口に来る人を思い浮かべ、誰かの事情に合わせて自分のやり方を変えた経験を一つ、細部まで話せるようにしておく |
| 柔軟かつ的確な対応(前例主義に陥らない) | これまでのやり方を変えた経験と、変えると決める前に何を確かめたか | 「このままではまずい」と思った場面を、そう思った理由とあわせて書き出しておく |
| コミュニケーションと決断 | 第2次の集団討論等では聞く側に回る場面と決める場面の両方が、第3次の個別面接ではその判断の理由が問われる | 話した量ではなく、人の意見を受けて自分の考えをどこまで動かしたかを言えるようにしておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
丸亀市は第3次試験が個別面接ですから、そこまで残った受験者に対しては、この掘り方がより強く出ると考えておきましょう。細部まで自分の言葉で語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておくことが、そのまま対策になります。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新年度の受験案内を読み、自分が受ける職種の第1次試験の科目と、申込に必要な入力項目を確認する(学歴は最終学歴を含むすべて、職歴は在学中のアルバイトを除いたすべてを入力します)。あわせて、第2次と第3次で「評価します」と書かれている語がどう違うかも拾っておく
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- この記事の第1部を読み返し、丸亀市の年齢構成・二つの地震想定・水の前提・地場産業のうち、自分の志望に近い事実を2つか3つ選び、資料を見ずに口で言えるところまで持っていく
- 固有質問の対応表から材料を集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む。令和7年度の作文テーマ「魅力を活かしたまちづくり」を、そのまま口頭練習の題材に使う
- 声に出して練習する。集団討論等に向けては人の意見を受けたあとの一言を、個別面接に向けては掘り下げられたあとの一言を、練習のたびに書き足していく
優先順位に注意
ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、丸亀市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
丸亀市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度の丸亀市職員採用試験は、行政事務(大学卒)で見ると、第1次で筆記と作文、第2次で集団討論等、第3次で個別面接という3段階です。配点は公表されていませんが、第1次を通過したあとに控えているのは人物を確かめる試験だけで、しかもその場面が形式を変えて二度あります。
香川県全体より高齢化が緩やかな11万人のまちが、二つの断層と水の制約を抱えながらどこへ向かうのか。
そのなかで自分の経験がどこで働くのかを、受験案内が作文で問うている「魅力を活かしたまちづくり」という言葉に重ねて考えてみてください。
答えは、丸亀市の資料の中ではなく、あなたがこれまでにやってきたことの中にあります。