本記事では、さぬき市職員採用試験の面接対策に必要な、さぬき市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点をまとめています。さぬき市は医療職以外の採用試験を年2回に分けて実施しており、本記事は令和8年度の6月試験・事務(大学卒)を軸に整理し、9月試験との違いも併記します。
さぬき市役所の面接では、「なぜさぬき市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「さぬき市の課題をどう見ているか」といった質問が想定されます。ただしこの市の6月試験は、事務系の第1次試験に教養試験がなく、第2次試験に集団討論が入ります。知識を詰める準備と、人前で話す準備の配分が、他の市とは変わってきます。
以下に挙げる数字や地名は、暗記の対象として並べているのではありません。事務(大学卒)の採用予定7名程度という枠の中で、自分がどの仕事を引き受けられるのか。その手がかりを拾うつもりで読んでください。
第1部|自治体研究編
さぬき市の特徴
最初に、さぬき市がどんな条件を抱えた市なのかを一望しておきましょう。(時間のない方はここだけでも目を通してください)
- 香川県の東部に位置し、県都の高松市と隣り合う市。本庁はJR志度駅から約500mの志度に置かれている。
- 住民基本台帳人口は43,490人(令和8年1月1日現在)。同じ時点の香川県全体は931,812人。
- 市域は158.62km²で、人口密度は約274人/km²。
- 西は高松市と木田郡三木町、東は東かがわ市と接し、南は讃岐山脈を越えて徳島県の美馬市・阿波市に、海をはさんで小豆郡小豆島町に接する。
- 本庁のほかに寒川庁舎(総合支所)と、津田・大川・長尾の3つの出張所を持つ。出張所の開庁日は月曜・水曜・金曜で、開庁時間は午後5時まで。
- 医療職以外の採用試験は6月試験と9月試験の2回に分けて実施される。6月試験は大学卒・短大卒・職務経験者対象など、9月試験は高校卒が中心。
- 6月試験の事務系区分では、教養試験に代えて職務能力試験が課される。
- 6月試験の第2次試験は作文試験・適性検査・集団討論・面接試験の4種目。9月試験の高校卒区分では集団討論が課されない。
- 初任給は事務(大学卒)・土木(大学卒)が237,600円、事務(短大卒)が222,600円。勤務時間は平日午前8時30分から午後5時15分まで。
- 市の花はコスモス、市の木はマツ。
さぬき市の基礎データ
統計を細かく覚え込む必要はありません。さぬき市で意味を持つのは、県都の隣にありながら、高齢化は県全体よりはっきり進んでいるという二面性のほうです。
この二面性が、あとで見る庁舎の配置とも、採用試験の設計とも噛み合ってきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 43,490人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 17,206人(39.6%/香川県全体は32.2%) |
| 75歳以上人口 | 10,455人(24.0%/香川県全体は19.2%) |
| 総面積 | 158.62km² |
| 人口密度 | 約274人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 市役所所在地 | さぬき市志度5385番地8(JR志度駅から約500m) |
| 庁舎・出張所 | 志度の本庁/寒川庁舎(総合支所)/津田・大川・長尾の各出張所(月曜・水曜・金曜の午後5時まで) |
| 隣接する自治体 | 高松市、東かがわ市、木田郡三木町、徳島県美馬市、徳島県阿波市、小豆郡小豆島町(海上で隣接) |
| 市の花・市の木 | コスモス/マツ |
人口・年齢別人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値です。総面積・隣接自治体・市の花木は、当研究会が整理した基礎データによります。なお、住民基本台帳と国勢調査では調査の基準が違うため、この表の数値を国勢調査の結果と突き合わせて増減を論じることはできません。
数字から考えられる市政課題
年齢構成に目を向けると、さぬき市の高齢化率39.6%は、同じ時点の香川県全体(32.2%)を7.4ポイント上回ります。75歳以上の割合も24.0%で、県全体の19.2%との開きは4.8ポイント。
市民の4人に1人近くが75歳以上という構成です。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)
香川県全体でも人口減少は続いており、県の人口移動調査によれば令和6年中の人口増減は8,504人の減で、25年連続の減少となりました。ただしさぬき市の年齢構成は、その県平均よりさらに一歩先を行っています。県都の隣という立地の利点が、そのまま人口構成の若さにはつながっていないということです。
さぬき市の経済・産業
全国で最も小さい県の、東の端
県が公表するプロフィールによれば、香川県の面積は1,876.83平方kmで全国で最も小さい県です。地形は半月型で、南部には讃岐山脈が連なり、北部には讃岐平野が広がって、平地と山地がおよそ相半ばしています。
気候は四季を通じて温暖少雨。さぬき市はこの県の東部にあり、158.62km²の市域に山と海の両方を抱えています。
県が小さいということは、市の仕事の相手が近いということでもあります。高松市とも、東かがわ市とも、三木町とも境を接し、南の山を越えれば徳島県、海を渡れば小豆島町。広域で連携しなければ回らない仕事が、日常の距離感の中にあるのがさぬき市の位置です。
県が誇るものづくりの層
香川県は自県の産業を説明するとき、金属製品・一般機械器具・電気機械器具・輸送用機械器具・精密機械器具からなる「ものづくり基盤技術産業」を軸に置きます。この分野は県の製造業のなかで、事業所数・従業者数・製造品出荷額等・付加価値額のいずれも第1位です。
建設機械、造船、自動車部品、電機機械などの分野に国内トップクラスの企業が中核として存在し、溶接や切削加工、組込みソフトウェア、金属プレス加工といった基盤技術が蓄積されているとしています。(出典:香川県の産業政策|令和6年)
商工や企業誘致を志望分野にするなら、県が積み上げてきたこの技術の層を前提に、市がその中でどう振る舞うのかを考えることになります。「企業を呼びたい」で止めず、県の産業政策と市の仕事の接点まで自分の言葉で言えるようにしておきましょう。
観光の人流と、県の顔であるオリーブ
令和6年の香川県への県外観光客入込数は9,262千人で、前年比3.5%の増加でした。
県が主要観光地として集計している栗林公園・屋島・琴平・小豆島の4か所には、合わせて4,464千人が訪れています(琴平2,111千人、小豆島979千人、栗林公園746千人、屋島628千人)。県内には人が集中する拠点があり、その周囲に暮らしの市があるという構図です。(出典:香川県観光客動態調査報告書|令和6年)
もう一つ、県が自らの象徴として挙げているのがオリーブです。明治41年に国が三重・鹿児島・香川の3県で試験栽培を始め、香川県では小豆島だけが栽培に成功しました。
県花・県木に定められ、県章のモチーフにもなっています。県は現在の栽培地として小豆島のほか高松市・坂出市・三豊市・宇多津町・多度津町と並べてさぬき市を挙げています。
県の象徴を実際に育てている市の一つだという事実は、観光や農政を語るときの足場になります。
さぬき市の主な行政課題
立地と数字を一度つなげておきます。さぬき市の行政課題は、次の4つに整理できます。面接で「市の課題は何ですか」と振られたときの引き出しにしてください。
県の目標を下回って進む人口減少
香川県は「かがわ人口ビジョン」(令和2年3月改訂版)で、令和42年に人口約77万人を維持することを目標に掲げています。
しかし実際の減少は令和元年6,030人減、令和2年7,337人減、令和3年9,022人減、令和4年8,110人減と、この目標値を下回るペースで進んでおり、県は急速な少子高齢化による年金・医療・介護等の将来の財政負担増を課題として公式に認識しています。
高齢化率39.6%のさぬき市は、この認識が最も具体的な形で表れる場所の一つです。(出典:かがわ人口ビジョン・地方版総合戦略|令和6年)
三つの地震に名指しされている市
香川県が令和7年9月2日に公表した地震・津波被害想定は、さぬき市にとって重い内容です。南海トラフの最大クラス(L2)の想定では、冬・深夜のケースで市の死者数は建物倒壊120人・津波520人・災害関連死60〜120人。
津波による死者520人は、高松市の1,100人に次いで県内で2番目の規模です。揺れによる建物全壊は2,000棟と推計されています。
地震の想定はこれだけではありません。中央構造線断層帯の地震では、さぬき市の揺れによる全壊が2,500棟と推計され、高松市3,700棟・三豊市3,300棟に次ぐ数字です。
さらに長尾断層帯の地震では、県全体の揺れ全壊3,400棟のうちさぬき市が950棟、建物倒壊による死者は60人と、被害が断層の近くに集中する形で推計されています。断層の名に、市内の地名が入っているという事実の意味は小さくありません。
津波と、二つの内陸型の揺れ。この三つを同時に抱えているのがさぬき市の防災の前提です。(出典:香川県地震・津波被害想定|令和7年9月2日公表)
水とため池をどう守るか
温暖少雨の気候は、そのまま水の乏しさでもあります。平成6年の列島渇水では、吉野川水系で6月29日から11月14日までの139日間にわたる取水制限が行われ、早明浦ダムは7月24日に利水貯水量がゼロになりました。
このとき、現在のさぬき市にあたる志度町・長尾町でも給水制限や減圧給水が実施されています。県は平成6年10月に水資源対策推進本部を設置し、平成8年3月に総合水資源対策大綱を策定しました。(参考:平成6年列島渇水の記録|国土交通省)
水が足りない土地では、ため池が農業を支えてきました。県の説明によれば、香川県のため池の数は全国第3位、ため池密度は6.5か所/km²で全国第1位です。
県内のため池総数は12,269箇所(令和3年4月現在)で、そのうち決壊すれば人的被害を与えるおそれのある「防災重点農業用ため池」が3,099箇所あります。農業の生命線が、同時に地震時の危険物にもなるという二重性を、この県の市町村は抱えています。
人を採れない区分がある
令和8年度6月試験の受験状況は、市の採用が置かれている現実を率直に示しています。事務(大学卒)は採用予定7に対し申込24で競争率3.43倍、最終合格は8人でした。
事務(職務経験者対象)は採用予定1に申込11で11.00倍と高い一方、事務(短大卒)は申込1で第1次試験の合格者が0人、土木(大学卒)は申込が0人でした。9月試験に土木(大学卒)の2次募集が置かれていることも、この結果と切り離しては読めません。
専門職と技術職の確保が、この規模の市にとって現実の難題になっています。(出典:令和8年度さぬき市職員採用試験受験状況|令和8年度6月試験)
さぬき市の重点政策|公表資料からたどれるもの
さぬき市が掲げる計画の本体については、受験前に市の最新版を確認してください。ここでは、当研究会が確認できた公表資料のうち、面接で使える形になっているものを取り上げます。
県の総合計画が置いている前提
香川県の総合計画は「『人生100年時代のフロンティア県・香川』実現計画」という名称で、人口減少や少子高齢化がなお深刻化していることに対応するため、令和5年10月に見直されました。
人生100年という言葉を計画名に据えた県で、高齢化率が県平均を7ポイント以上上回る市の職員として働く。この重なりは、志望動機を組み立てるときの素材になります。(出典:香川県「人生100年時代のフロンティア県・香川」実現計画|令和5年10月見直し)
窓口を三層で置くという判断
さぬき市は、志度の本庁のほかに寒川庁舎を総合支所として置き、さらに津田・大川・長尾の3か所に出張所を構えています。出張所の開庁は月曜・水曜・金曜、午後5時まで。
毎日ではないけれど、なくしてもいない。この判断のしかたに、市域の広がりと、そこで暮らす人の年齢構成の両方が反映されています。
採用試験の申込受付は本庁の総務部秘書広報課だけで行われ、寒川庁舎や各出張所では受け付けないという運用も、機能の役割分担がはっきりしていることの表れです。
採用試験の設計が示していること
市の考え方は、採用試験の組み立てにも表れています。6月試験の事務系区分では教養試験を課さず、代わりに職務能力試験を置いています。
市はこれを「地方行政への関心と理解、論理的に思考する力、文章を正確に理解する力、統計等の資料を分析する力、国内外の社会情勢への理解等を確認するための基礎的な内容」と説明しています。覚えた量ではなく、資料を読んで考える力を先に見るという設計です。
第2次試験で作文試験・集団討論・面接試験を並べていることとも、方向が揃っています。
POINT|「高齢化が課題です」で止めない
課題を挙げられることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つに絞り、①何が課題か、②市はどんな状態を目指すか、③いまどんな取組があるか、④市だからこそ担える役割は何か、⑤自分の経験や強みをどう生かすか、の順に調べていきましょう。
悪い例「高齢化が進んでいるので、高齢者福祉に取り組みたいです」
改善例「さぬき市は市民の4分の1近くが75歳以上だと知りました。出張所が週3日の開庁だと聞きましたので、開いていない日にどう届けるかを考える仕事に関わりたいです」
あわせて確認したい公式資料
面接前に一度は開いておきたい資料です。志望分野が決まっているなら、それに近いものから当たってください。
- さぬき市の職員採用のページと、6月試験・9月試験それぞれの最新の募集要項
- さぬき市が公表している総合計画の最新版
- さぬき市の地域防災計画と、市が公表しているハザードマップ
- 香川県の地震・津波被害想定(令和7年に新しい想定が公表されています)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、さぬき市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。さぬき市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
さぬき市役所の面接の概要
ここからは、さぬき市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、差がつく質問への備え方を、公表資料と当研究会の分析にもとづいて整理していきます。
さぬき市役所の面接の流れ
令和8年度さぬき市職員採用試験を実施するのはさぬき市で、窓口は総務部秘書広報課です。医療職以外は6月試験と9月試験の2回に分かれ、区分によって第2次試験の中身が変わります。
6月試験では作文試験・適性検査・集団討論・面接試験の4種目が第2次試験に置かれ、9月試験の高校卒区分では集団討論が課されません。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 試験の実施回 | 医療職以外は6月試験と9月試験の2回。第2次試験の構成が回によって異なります |
| 6月試験の区分と採用予定 | 事務(大学卒)7名程度、事務(短大卒)1名程度、事務(職務経験者対象)1名程度、土木(大学卒)1名程度、社会福祉士2名程度 |
| 9月試験の区分 | 事務(高校卒)、事務(高校卒障がい者対象)、土木(高校卒)、土木(大学卒)の2次募集の4区分(令和9年4月1日採用予定) |
| 6月試験・第1次(事務の3区分) | 職務能力試験(1時間)と事務適性検査(説明等を含め20分)。教養試験は課されません |
| 6月試験・第1次(土木(大学卒)) | 専門試験(2時間)と事務適性検査。出題は数学・物理、応用力学、水理学、土質工学、測量、土木計画(都市計画を含む。)、材料・施工 |
| 6月試験・第1次(社会福祉士) | 専門試験(1時間30分)と事務適性検査。出題は社会福祉概論(社会保障を含む。)、社会学概論、心理学概論 |
| 職務能力試験の内容 | 「地方行政への関心と理解、論理的に思考する力、文章を正確に理解する力、統計等の資料を分析する力、国内外の社会情勢への理解等を確認するための基礎的な内容について、択一式による筆記試験」と定義されています |
| 6月試験・第2次 | 作文試験、適性検査、集団討論、面接試験の4種目 |
| 9月試験・第2次(事務(高校卒)・土木(高校卒)) | 作文試験、適性検査、面接試験の3種目。集団討論は課されません |
| 集団討論の内容 | 「集団での討論により、課題に対する理解力、表現力、協調性、積極性等について試験を行います」と示されています |
| 面接試験の内容 | 「個別面接により、主として人物について試験を行います」と示されています |
| 配点 | 6月試験・9月試験のいずれの募集要項にも、各種目の配点(得点配分)は書かれていません。最新の募集要項でご確認ください |
| 提出書類 | 受験申込書(写真1枚を貼付)と返信用封筒。第1次試験合格者は指定する日までに最終学校の卒業証明書または卒業見込証明書を提出します。面接カードやエントリーシートについては募集要項に記載がありません |
| 試験会場・申込先 | 第1次試験の会場はさぬき市役所本庁。申込みは持参・郵送(簡易書留)・インターネットの3方式で、受付は本庁3階の総務部秘書広報課のみ |
この試験でまず意識したいのは、第1次試験の段階から「読んで考える力」を測りに来ている点です。事務系区分に教養試験がなく、代わりに置かれた職務能力試験は、統計資料の分析や社会情勢の理解を含むと市が説明しています。
そして第2次試験では、書く力を作文試験で、話し合う力を集団討論で、人物を個別面接で見る。知識の量ではなく、受け取った情報をどう扱うかが一貫して問われる構成です。
集団討論で「協調性」と「積極性」が並んで挙げられていることにも、その姿勢が出ています。
上記の試験内容は、令和8年度さぬき市職員採用試験の6月試験および9月試験の募集要項によります。試験区分・試験内容・受験資格は年度や実施回によって変わることがありますので、受験の際は必ず最新の募集要項でご確認ください。(出典:令和8年度さぬき市職員採用試験募集要項|令和8年度6月試験)
試験の成績がどう返ってくるか
さぬき市では、不合格になった場合でも本人が請求すれば、試験成績が郵送で通知されます。第1次試験の不合格者に通知されるのは総合得点と順位、そして種目別の得点。
第2次試験の不合格者に通知されるのは順位のみです。請求は、受験票の右下に印刷された「請求ラベル」を返信用封筒に貼って行います。
第1次試験については、どの種目で落としたのかまで数字で分かるということです。複数年かけて挑む場合、この情報は次の準備を組み立てる材料になります。
さぬき市役所が求める人物像
令和8年度の募集要項と、さぬき市の職員採用のページ。この2つの本文に、「求める人物像」をまとめて掲げた項目はありませんでした。
そのかわり、この市は評価の観点を試験種目ごとに書き分けています。集団討論では課題に対する理解力・表現力・協調性・積極性、面接試験では主として人物、作文試験では表現力・思考力・構成力・創造力。
市が見たい能力を、種目ごとに言葉にして示している市だといえます。
協調性と積極性が同じ試験の中に並んでいる理由までは、募集要項に説明がありません。そこは市の条件から補って読むことになります。
人口4万人台で、本庁と総合支所と3つの出張所を持ち、事務(大学卒)の採用予定が7名程度。この条件では、一人の職員に渡される仕事の範囲が広くなります。
窓口で受けた相談を、そのまま制度の側まで持っていくのも同じ人。週に3日しか開かない出張所まで含めて市域を見るとなれば、担当の線引きはゆるくならざるを得ません。
持ち込まれた話を、まず受け止めてから道筋をつけられる人が働きやすい環境になるはずです。周りに聞ける関係を自分からつくれること、つまり積極性と協調性の両方が要る、という話です。
もう一つ、人口4万人台の市では、職員の顔と名前が住民に覚えられます。出張所が週3日しか開いていない地域であればなおさら、その日に窓口にいた人が誰だったかは記憶に残る。
仕事の外での振る舞いまで含めて信用が積み上がる職場だ、ということです。だからこそ、志望動機を抽象的なまま置いておけません。
さぬき市という具体的な場所に対して、自分が何を面白いと思い、何を放っておけないと感じたのか。そこまで言葉にできているかどうかが、この市での準備の深さになります。
集団討論は、その場に誰が座るかで展開が変わります。段取りを決めて臨める種目ではありません。
用意した役回りを演じるより、これまで人と話し合ってきたときのやり方をそのまま持ち込むほうが、結果として通りがよいはずです。
作文で書いた文章、適性検査に出た傾向、討論での立ち回り、個別面接での受け答え。市はこれらを別々の種目として並べていますが、見ている先は一人の人間です。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。さぬき市の面接試験も、この見取り図の上で準備すれば基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 緊張していますか? | 同じ第2次試験で集団討論も課されるだけに、討論の場と個別面接とで別人になっていないか |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 香川県庁でも隣の高松市でもなく、さぬき市を選んだ理由まで届いているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 作文試験と適性検査が同じ第2次試験に並ぶため、書いたものや検査に出た傾向と、口で語る自己像がそろっているか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | 事務(大学卒)7名程度という採用規模のなかで、困難を一人で抱え込まずに周囲を動かせた跡が見えるか |
| ⑤ 学業・経歴 | 卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください | 職務能力試験で問われる資料の分析力を、自分の研究の説明でも示せるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 本庁・総合支所・出張所という配置のもとで、配属の幅を前提に働けるか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 職務能力試験が社会情勢の理解を含むだけに、出来事を市の暮らしに引き寄せて語れるか |
ここまでは、どの受験者もある程度は形にしてきます。さぬき市の選考で本当に効いてくるのは、この次に挙げる2問への答えです。
合否を分けるのは「さぬき市役所ならでは」の質問
1問目は、県都に隣接するさぬき市では特に答えにくい質問です。高松市も三木町も東かがわ市も通勤圏にあり、選択肢が並んでいる中でこの市を選んだ理由が問われます。
2問目も、調べていなければ観光案内のような答えになります。裏返せば、市の具体を握っているかどうかが、そのまま答えの厚みになる質問です。
答えの材料になる事実を、下の表に並べます。
| 質問テーマ | 知っておきたいさぬき市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 人口と年齢構成 | 住民基本台帳人口は43,490人、高齢化率39.6%、75歳以上の割合は24.0%(令和8年1月1日現在)。県全体ではそれぞれ32.2%と19.2% | 県との差をポイントで示したうえで、県都に隣接しながらこの構成である点まで踏み込みます |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 事務(大学卒)の採用予定は7名程度。本庁のほかに寒川庁舎(総合支所)と津田・大川・長尾の出張所を持つ | 県と市の役割の違いを論じるより、週3日開く出張所まで含めた現場の距離感に自分を置いて話します |
| さぬき市の魅力 | 香川県は面積が全国最小で、市は山と海の両方を市域に持つ。県が県花・県木とするオリーブの栽培地の一つでもある | 山と海の両方がある市域やオリーブに触れたあと、それを産業や観光へどう生かすかという見方を添えます |
| 災害への備え | 南海トラフ最大クラス(冬・深夜)の市の想定死者は建物倒壊120人・津波520人で、津波死者は県内2位。中央構造線断層帯で揺れ全壊2,500棟、長尾断層帯で揺れ全壊950棟・建物倒壊死者60人 | 想定のケース条件を添えたうえで、津波と内陸の揺れの両方に備えが要るという読み方を示します |
| 試験の受かりにくさと採りにくさ | 令和8年度6月試験では事務(職務経験者対象)が11.00倍だった一方、土木(大学卒)は申込0で9月に2次募集 | 職員の確保そのものが課題である点に触れ、自分がどの区分でどう戦力になるのかを具体的に語ります |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
さぬき市が職員像を一つの文言にまとめて掲げてはいないことは、先に見たとおりです。そこで評価の観点は、募集要項が種目ごとに挙げている観点、つまり集団討論の理解力・表現力・協調性・積極性と、面接試験の「主として人物」という書き方から読み取ることになります。
土台にあるのはコンピテンシー評価の考え方で、見られているのは答えの完成度ではありません。過去に自分が実際にとった行動と、それを再現できるかどうかです。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 話し合いの中で役に立てるか | 集団討論で、課題の理解と発言の出し方の両方が見られる | 結論を出す役だけでなく、論点を整理する役や時間を見る役でも動けるよう、複数人での練習を重ねる |
| 検査の結果と語る自己像が重なるか | 第2次試験の適性検査で出た傾向と、面接で口にする自己像がずれていないか | 検査で出そうな自分の癖を先に3つ書き出し、そのうち1つは面接でも口にできるようにしておく |
| 広い市域を前提に働けるか | 本庁・総合支所・出張所のどこに配属されても力を出せる根拠を語れるか | 事務(大学卒)7名程度という規模を踏まえ、頼まれていないのに引き受けた仕事の例を一つ持っておく |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
「主として人物について試験を行います」と明記しているさぬき市では、この掘り方はより深くなると見ておいたほうがよいでしょう。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分が受けるのが6月試験なのか9月試験なのかを確認し、その回の募集要項で区分・試験種目・受験資格を押さえる。第2次試験に集団討論が入るかどうかがここで決まる
- 第1次試験の対策をする。事務系は職務能力試験なので、統計資料の読み取りと文章理解、それに日々のニュースへの目配りが中心になる
- これまでの経験を棚卸しする。人と意見が割れた場面を最低ひとつ含めておくと、集団討論でも個別面接でも使える
- 第2次試験の適性検査を見据えて、自分の傾向を言葉にしておく。正直に答える前提で、その傾向を仕事にどう活かしてきたかまで用意する
- この記事の第1部を読み返し、志望分野に近いさぬき市の事実を2つか3つ、自分の言葉で説明できるようにする
- 7カテゴリーの代表質問に一言メモで答えを作る。6月試験を受けるなら、あわせて複数人で討論の練習をし、作文試験に向けて時間を計って書く練習も入れる
優先順位に注意
ステップ5の自治体研究は、最後に乗せる工程です。余裕がないなら、ステップ3とステップ4を先に片づけてください。討論の場で出てくるのは、準備した知識ではなく、その人がふだん人とどう話しているかのほうです。ステップ6の討論練習も、話す材料が自分の中にあってはじめて意味を持ちます。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、さぬき市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
さぬき市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
令和8年度のさぬき市職員採用試験は、医療職以外が6月試験と9月試験に分かれ、6月試験の第2次試験には作文試験・適性検査・集団討論・面接試験が並びました。9月試験の高校卒区分では集団討論が外れます。
自分が受ける回の構成を取り違えないところから準備は始まります。
そして第1次試験の成績は、請求すれば種目別の得点まで返ってきます。どこが足りなかったのかを数字で受け取れる市だということです。
県都の隣で、高齢化率は県より7ポイント以上高く、津波と二つの内陸型地震の想定を同時に抱える市。その市役所で自分に何ができるのかを、討論の場でも面接の場でも同じ言葉で言えるまで、経験を見直しておきましょう。