本記事では、紀の川市職員採用試験の面接対策で必要な、紀の川市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

紀の川市役所の面接試験では、「なぜ紀の川市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。令和8年度第1回の事務職Aでいえば、第2次試験が集団面接、第3次試験が個人面接という構成で、形式の違う面接を2回受けることになります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と紀の川市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|自治体研究編

紀の川市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは紀の川市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 和歌山県の北部に位置し、和歌山市・海南市・岩出市と、大阪府の泉南市・泉佐野市・貝塚市・岸和田市などに接する市。県境をまたいで9つの市町と境を接している。
  • 市域は228.21平方キロメートルと広い。総務省の住民基本台帳による令和8年1月1日現在の人口は58,287人で、人口密度は約255人/km²となる。
  • 人口規模は和歌山県内の市で3番目。市域の広さと人口の少なさが同居しているのが、この市の地理的な条件である。
  • 65歳以上の割合は34.5%で、和歌山県全体の34.2%とほぼ同じ水準。75歳以上の割合は19.9%で、県全体の20.4%をわずかに下回る。
  • 市の花はモモ、市の木はキンモクセイ。和歌山県は果実の産出額が農業産出額の7割近くを占める果実の県であり、紀の川市はその紀北地域にある。
  • 市役所は市の中央部の西大井にあり、JR和歌山線の打田駅から徒歩約10分。和歌山市とは和歌山電鐵貴志川線でも結ばれている。
  • 県内を東西に貫く京奈和自動車道は平成29年(2017年)に県内全線が供用され、紀北地域と奈良・京都方面がつながった。
  • 和歌山県が令和8年に公表した地震動予測では、紀の川市の最大震度は最大クラスの巨大地震で震度6強と想定されている。津波浸水想定の対象は沿岸20市町とされており、内陸に位置するこの市は対象外である。
  • 令和8年度第1回の職員採用試験では、事務職Aの採用予定15人程度に対して申込者は145人だった。

紀の川市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「紀の川市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、人口規模と年齢構成、市域の広さと密度、接している自治体の広がりなど、市政の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。

項目内容
総人口58,287人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口20,104人(34.5%、和歌山県全体34.2%)
うち75歳以上人口11,623人(19.9%、和歌山県全体20.4%)
総面積228.21km²
人口密度約255人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
接している自治体和歌山市、海南市、岩出市、かつらぎ町、紀美野町、大阪府泉南市、泉佐野市、貝塚市、岸和田市
想定される最大震度震度6強(最大クラスの巨大地震・和歌山県の令和8年公表値)
市の花・市の木モモ/キンモクセイ
市役所の所在地紀の川市西大井338番地(JR和歌山線 打田駅から徒歩約10分)

総人口・65歳以上人口・75歳以上人口とそれぞれの割合、および和歌山県全体の値は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。人口密度は、この表の総人口を面積で割って当研究会が算出しました。想定される最大震度は、和歌山県が令和8年に公表した地震動予測によるもので、人的・物的被害の想定は今後公表される予定とされています。国勢調査をもとに公表される人口は調査の基準が異なりますので、この表の値と国勢調査の値をつないで増減を計算することはできません。比べるときは、同じ基準の値どうしで行ってください。

数字から考えられる市政課題

この表で最初に目を留めてほしいのは、面積と人口密度の組み合わせです。228.21平方キロメートルの市域に5万8千人が暮らし、人口密度は約255人/km²。人が広く薄く分布している市です。

同じ人口規模でも、市街地に集まっている市と、集落が点在している市では、行政サービスの届け方がまったく違ってきます。(出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数|令和8年1月1日現在)

年齢構成は、65歳以上が34.5%、75歳以上が19.9%。和歌山県全体の34.2%・20.4%とほぼ並ぶ水準で、県の平均的な姿がそのまま現れている市だといえます。

高齢化が突出しているわけではありませんが、県自体が全国に先んじて人口減少局面に入った県ですから、平均並みという事実は決して軽くありません。

広い市域と、県平均並みの高齢化。この2つが重なると、移動手段の確保、医療や買い物へのアクセス、地域ごとの拠点の維持といった課題が同時に立ち上がります。

市の仕事を考えるときは、この掛け合わせから出発すると具体的になります。

紀の川市の現状を面接で語るなら、数字と課題をこうつなげて説明できます。

「紀の川市は、和歌山県内では3番目に人口の多い市ですけれども、面積が広い分、人口密度は1平方キロメートルあたり250人ほどだと知りました。65歳以上の方の割合も県の平均と同じくらいです。そうなると、市役所まで来ていただくのを待つのではなく、市の側から地域に出ていく形の仕事が増えていくのではと感じています」

紀の川市の経済・産業

経済・産業構造の概要

  • 市域228.21平方キロメートルに5万8千人台が暮らし、人口密度は約255人/km²。紀の川の流域に開けた平地と、その周囲の丘陵地で構成される。
  • 和歌山県の農業産出額は全国28位の1,135億円だが、そのうち790億円を果実が占める。みかん・うめ・かき・ハッサクは収穫量が全国1位である。
  • 県全体の製造業は製造品出荷額等2兆3,835億円(事業所数1,465、従業者数50,917人)で、化学工業18.7%、鉄鋼業18.0%、石油製品・石炭製品製造業17.9%と基礎素材型が上位を占める。その集積は臨海部にある。
  • 紀の川市には、京奈和自動車道と大阪府に接する立地、そしてJR和歌山線・和歌山電鐵貴志川線という2つの鉄道が通る。

つまり、「臨海部の重厚な製造業とは離れた場所で、果実を中心とする農業と、大阪・和歌山市への近さで成り立っている市」という位置づけを押さえておくと、産業振興や雇用の話題に対応しやすくなります。工場の誘致数を語る市ではなく、土地と人の使い方を語る市だと理解しておきましょう。(出典:経済センサス活動調査 和歌山県の工業|令和3年)

果実の県のなかの紀北

和歌山県では農業産出額1,135億円の7割近く、790億円を果実が生み出しています。収穫量はみかん147,800トン、うめ64,400トン、かき39,700トンで、いずれも全国1位です。

紀の川市の市の花がモモであることからもうかがえるとおり、この地域は果樹と結び付いた土地です。農業を志望分野にするなら、収穫量の多さではなく、担い手の年齢構成や販路づくり、耕作されなくなった農地の扱いといった、行政が関わる部分まで話を伸ばしましょう。(出典:農林水産省|都道府県の農林水産業の概要)

鉄道と道路の使い分け

紀の川市には、JR和歌山線が市域を東西に通り、和歌山電鐵貴志川線が和歌山市との間を結んでいます。市役所の最寄りは打田駅で、徒歩約10分の距離です。

一方、県南部へ延びるJRきのくに線については、人口減少と自動車の普及によって利用者が減少傾向にあると和歌山県が示しています。鉄道の置かれた条件の厳しさは、紀の川市を通る路線を考えるうえでも背景になります。

道路では、京奈和自動車道が平成29年に県内全線供用となり、紀北地域から奈良・京都方面への移動が変わりました。広い市域を、鉄道と道路と自家用車のどの組み合わせで支えるか。

交通を語るなら、この選択の話として組み立ててください。

観光と、県全体の人の流れ

和歌山県には令和6年に約3,273万人(前年比102.5%)が訪れました。内訳は日帰り客が約2,767万人、宿泊客が約506万人泊です。

外国人の宿泊は510,293人泊で前年比133.2%と伸び、コロナ禍前の水準を超えました。紀の川市は、高野山や白浜といった県内の観光地と大阪方面を結ぶ経路の途中にあたります。

観光を語るなら、市内の名所を数えるより、通り過ぎる人の流れをどう市内へ引き込むかという視点の方が、行政の仕事に近づきます。(出典:和歌山県観光客動態調査|令和6年(速報値))

紀の川市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、紀の川市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

県全体の人口減少という前提

和歌山県は1985年に全国に先んじて人口減少局面へ入りました。和歌山県総合計画(令和8〜12年度)の原案は、2050年にピーク時の約6割まで減る見通しと、生産年齢人口の減少が著しいことを「現状と課題」に挙げています。

減少のスピードは今後30年で過去30年の約2倍まで速まり、2050年には生産年齢人口と高齢者人口がほぼ並ぶと見込まれています。県全体では、令和6年4月から令和7年3月までの1年間に30市町村すべてで人口が減りました。(出典:和歌山県総合計画(令和8〜12年度)原案)

広い市域に人が薄く分布していること

人口密度約255人/km²という数字は、行政サービスの単価に直結します。同じ内容の窓口業務でも、移動の距離が長ければ職員の時間は多く要りますし、公共施設を地域ごとに維持すれば費用は積み上がります。

人が減っても市域は狭くならない。ここが、面積の広い市の行政運営でいちばん重い制約です。公共施設の配置や地域交通の話題は、この制約の上に立っています。

県平均並みに進む高齢化

65歳以上34.5%、75歳以上19.9%という水準は、和歌山県全体とほぼ同じです。県が全国に先んじて減少局面に入っていることを踏まえれば、平均並みであること自体が備えを要する状態だといえます。

しかも市域が広い分、支援を必要とする人のところまで距離があります。介護・医療・見守りの分野を志望するなら、制度の説明ではなく、距離をどう縮めるかという設計の話まで踏み込めるようにしておきましょう。

若い世代の県外流出

和歌山県総合計画の原案は、紀の川市を含む紀北地域について、2020年の通勤・通学流動が11,411人の流出超過で、うち他県への流出が14,934人にのぼることを示し、教育や就職を機に若者が県外へ出て社会減が拡大していることを課題に挙げています。大阪府に接し、府内の複数の市と境を接する紀の川市にとって、この近さは通勤の便利さでもあり、流出のしやすさでもあります。

両面をそろえて語れると、認識の解像度が伝わります。

震度6強を前提にした備え

和歌山県が令和8年に公表した地震動予測では、最大クラスの巨大地震(南海トラフ巨大地震)における紀の川市の最大震度は震度6強と想定されています。同時に公表された津波浸水想定は沿岸20市町を対象としており、内陸の紀の川市は対象に含まれません。

備えの中心になるのは津波ではなく、揺れによる被害と、その後の暮らしの立て直しです。広い市域で道路が寸断された場合に、地域ごとにどう自立して持ちこたえるか。

防災を語るなら、この視点を持っておきましょう。(出典:和歌山県|令和8年公表 地震動予測及び津波浸水想定)

紀の川市の重点政策|広い市域を支えるということ

重点政策について問われた場面で計画名を並べ立てても、評価にはつながりません。求められるのは、市がどんな条件のもとで判断を迫られているのかを説明できることです。

ここでは、当研究会が公表資料から確認できた事実を、3つの重心にまとめます。紀の川市の政策の重心は、広い市域に届くサービスの設計、果樹地帯としての土地の使い方、そして市役所の担い手の確保の3つです。

広い市域に届くサービスの設計

228.21平方キロメートルの市域に約255人/km²の密度で人が住むという条件は、施設の配置にも、移動手段にも、職員の動き方にも影響します。市役所の最寄りが打田駅で徒歩約10分という立地は、公共交通で来庁できる人にとっては便利ですが、鉄道の駅から離れた地域に住む人にとっては別の話です。

来てもらう前提の行政から、届ける前提の行政へどこまで寄せられるか。地域交通、公共施設、デジタル化といった分野は、この重心の上に乗っています。

果樹地帯としての土地の使い方

和歌山県の農業は果実が7割近くを占め、みかん・うめ・かきの収穫量は全国1位です。紀の川市はその紀北地域にあり、市の花にモモを掲げています。

果樹は一度植えれば何年も収穫が続く一方、担い手が代われば管理も途切れます。農地をどう次の世代へ渡すかは、産業政策であると同時に、土地と景観の政策でもあります。

農業・産業分野を志望するなら、この二面性に触れられるようにしておきましょう。

市役所の担い手の確保

3つ目は、受験生からは見えにくい重心です。紀の川市は職員採用試験の第1次試験をテストセンター方式で行い、受験者が全国約360か所の会場から希望する会場と日時を選べるようにしています。

申込は電子申請のみ、採用試験の管理には「パブリックコネクト」を使い、職員採用の公式LINEで合格発表の時期などを知らせています。事務職Aの受験資格は年齢要件のみで、学歴は問いません。

どこに住んでいる人でも、どんな学歴の人でも受けやすくするという一連の設計は、人材の確保が市の課題として扱われていることの表れだと読めます。

公表資料から確認できることそこから読める政策の重心面接での使いどころ
市域228.21平方キロメートル、人口密度は約255人/km²広い市域に届くサービスの設計やりたい仕事を「どこに住む市民に届くか」という言い方で説明する
65歳以上34.5%・75歳以上19.9%で、和歌山県全体とほぼ同水準県の平均的な速度で進む高齢化への対応突出していないことを、備えを整える時間があると読み替えて語る
県の農業産出額の7割近くが果実で、市の花はモモ果樹地帯としての土地と担い手の維持農業志望なら、農地の継承という角度から具体化する
第1次試験はテストセンター方式、事務職Aは学歴不問、申込は電子申請のみ幅広い層から職員を確保する工夫行政の効率化やDXを語るとき、身近な実例として引ける

POINT|計画の名称をすべて覚えなくてよい

計画の名前を覚えることに時間を使う必要はありません。関心のある分野を一つか二つに絞り、①何が課題なのか、②市はどんな状態を目指しているのか、③いま何が動いているのか、④市だからこそ担える役割は何か、⑤自分の経験や強みをどう生かすか、の順に調べを進めましょう。

悪い例「紀の川市の地域づくりに携わりたいです」

改善例「紀の川市は面積が広くて、地域ごとに事情が違うと思います。まずはそれぞれの地区に足を運んで話を伺いたいです。その上で、駅から離れた地域の方が買い物や通院で困らないように、移動の手段を地域の方と一緒に考えていく仕事に関わりたいと思っています」

あわせて確認したい公式資料

挙げた資料を全部押さえる必要はありません。面接で扱いたい分野にいちばん近いものを1つ選び、その中の数字と方針を、口に出して説明できるところまで仕上げれば十分です。

  • 紀の川市職員採用試験の最新の試験案内(受験する回と試験区分を必ず確認する)
  • 紀の川市の総合計画と、志望分野に関係する個別計画の最新版
  • 紀の川市の当初予算と、その説明資料
  • 和歌山県総合計画(令和8〜12年度)(県全体の人口動態と課題認識の背景)
  • 和歌山県が令和8年に公表した地震動予測および津波浸水想定

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、紀の川市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。紀の川市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

紀の川市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

紀の川市役所の面接の概要

ここからは、紀の川市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

紀の川市役所の面接の流れ

紀の川市の職員採用試験を実施するのは、市の総務部人材マネジメント課です。令和8年度第1回の事務職Aは第1次から第3次までの3段階で、試験種目ごとの配点まで公表されています。

押さえてほしいのはその内訳です。第2次試験は100点満点のうち70点が集団面接、第3次試験も100点満点のうち70点が個人面接。

どちらの段階も、点数の7割が面接に置かれています。

項目内容(令和8年度第1回・事務職A)
試験の段階第1次試験・第2次試験・第3次試験の3段階
第1次試験基礎能力検査(SCOA)100点・60分。テストセンター方式で、全国約360か所の会場から希望する会場と日時を選んで受験します
適性検査第1次試験の合格者のみがWebで受検(35分程度)。公務員に求められる資質に関連する性格傾向の検査で、結果は第2次試験以降の参考とされます
第2次試験の種目と配点第1次試験結果30点(第1次試験の得点を換算)、集団面接70点。合計100点
第3次試験の種目と配点作文試験20点(1,000字程度・60分)、第2次試験結果10点(第2次試験の得点を換算)、個人面接70点。合計100点
面接の回数と形式第2次試験の集団面接と、第3次試験の個人面接の計2回。いずれも人物、能力、性格等についての面接です
作文試験の実施第2次試験の実施日に行いますが、採点されるのは第2次試験の合格者のみです
提出書類「面接カード」にあたる様式は試験案内に記載がありません。志望動機や自己PRは、電子申請での申込時に入力します
採用予定人員と申込状況採用予定15人程度に対し、申込者145人

配点の置き方から読み取れることは明確です。第1次試験のSCOAで得た100点は、第2次試験では30点に圧縮されます。

その第2次試験の成績も、第3次試験では10点にまで圧縮されます。筆記の得点差は段階が進むほど小さくなり、最後は面接の中身で決まる設計です。

加えて、各試験種目には合格基準があり、一つでも基準に達しない種目があれば、総合得点が高くても不合格となります。総合点で挽回できない種目がある、という点は必ず頭に入れておいてください。(出典:紀の川市職員採用試験案内|令和8年度第1回(事務職A))

面接が2回ある意味も考えておきましょう。第2次試験の集団面接は複数の受験者が同席する場で、他の人の発言を受けたうえで自分の考えを述べる場面が生まれます。

第3次試験の個人面接は一対一に近い形で、ひとつの話題を掘り下げられます。同じ経験を、短く要点だけ話す形と、細部まで展開する形の両方で用意しておくのが、この構成に対する備えです。

もう一点、作文試験の扱いも独特です。作文は第2次試験の実施日に書きますが、採点されるのは第2次試験に合格した人だけで、種目としては第3次試験の20点分にあたります。

つまり、集団面接を終えた直後に書いた文章を持ち込んだ状態で、個人面接に臨むことになります。作文と面接を別々の準備と考えず、同じ材料からつなげて用意しておきましょう。

受験のしやすさにも触れておきます。令和8年度第1回の第1次試験はテストセンター方式で、全国約360か所の会場から希望する会場と日時を選べました。

第2次試験と第3次試験の会場は市役所本庁舎です。申込状況は、事務職Aが採用予定15人程度に対して申込者145人。

申込の段階でおよそ10倍という水準でした。(出典:紀の川市|令和8年度第1回職員採用試験の申込状況)

上記の試験構成と配点は、紀の川市が公表した令和8年度第1回職員採用試験(事務職A)の試験案内にもとづくものです。土木職・保育士・保健師・手話通訳など他の試験区分は、これとは異なる構成で実施されます。試験の構成・配点・実施回は年度や試験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身が受ける区分の最新の試験案内をご確認ください。

紀の川市役所が求める人物像

「求める人物像」「求める人材像」といった名称で定型化された公表文言は、紀の川市の令和8年度第1回・事務職Aの試験案内の本文には見当たりませんでした。代わりに読み取れるのが、配点と受験資格の置き方です。

まず、事務職Aの受験資格が年齢要件のみで、学歴を問わないこと。次に、第1次試験を全国のテストセンターで受けられるようにしていること。

そして、両方の面接段階で配点の7割を人物に割いていること。どこで何を学んできたかではなく、面接の場で何を語れるかで選ぶという姿勢が、配点と受験資格の両面に表れています。

試験案内が受験心得として「試験の申込みをした方は、必ず受験するようお願いします」と、経費が市民の税金であることに触れながら書いているのも、この市の姿勢がうかがえる箇所です。

あわせて、当研究会の側から一つ補っておきたいことがあります。人口5万8千人台、事務職Aの採用予定15人程度という市役所では、一つの分野を受け持つ人数は多くありません。

しかも市域が228平方キロメートルと広く、地域によって暮らし方も抱える事情も違います。庁舎で資料をそろえるだけでは判断がつかず、その地域まで足を運んで初めて条件が分かる。

そういう場面が生まれやすい規模と広さです。分からないことを分からないまま置かずに現場へ確かめに行ける動き方は、この市では強く求められる傾向にあります。

その「現場」が地理的に散らばっているところが、紀の川市の難しさでもあります。駅の近くで暮らす人と、果樹畑の中の集落で暮らす人とでは、行政に求めるものが違います。

どちらの話も同じ重さで聞けるかどうかは、この市では心構えの問題ではなく、日々の仕事の進み方そのものを左右します。

紀の川市の選考は、電子申請で志望動機と自己PRを入力するところから始まり、集団面接、作文、個人面接と続きます。入力した文章、集団の場での発言、書いた作文、個人面接での説明。

この4つが同じ人物を指していれば、面接官の側は迷いません。場面ごとに別々の答えを用意するのは、むしろ逆効果です。

核になる経験をひとつ決めたうえで、短く言う版・書く版・掘り下げる版と、出し方だけを変えていくのがこの選考には合っています。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。紀の川市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク打田駅からは歩いて来られましたか?準備していない話題への返し方。集団面接では、他の受験者が話している間の姿勢まで場に出ます
② 動機・志望なぜ公務員を志望するのですか?民間でもできる説明で止まっていないか。電子申請で入力した志望動機と、口で話す動機が食い違っていないか
③ 自己理解あなたの短所(弱み)は何ですか?自分を客観視できているか。性格傾向の適性検査を経た選考なので、自己申告に無理がないか
④ 経験・行動これまでで最も苦労した経験と、どう乗り越えたかを教えてください苦境の大きさより、その場面で何を判断しどう動いたか。集団面接で短く述べた話を、個人面接で展開できるか
⑤ 学業・経歴これまでに力を入れて取り組んだことを教えてください事務職Aは学歴を問わない区分です。学校歴ではなく、取り組みの中身と、そこから何を得たかが見られます
⑥ 適性・将来入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか?市の仕事への理解の解像度。市長部局や教育委員会等の一般行政事務という幅の中で、希望どおりでなくても働けるか
⑦ 公共性・社会性最近関心を持ったニュースは何ですか?身のまわりの出来事と自分の関心をつなげ、簡潔に語れるか。1,000字の作文試験で問われる力とも地続きです

ここまでの7つは、どの自治体を受ける人でも一通り準備してくる領域です。欠けていれば不利になる一方で、そろえただけでは他と並ぶところで止まります。

差がつくのは、次に挙げる紀の川市そのものについての質問です。

合否を分けるのは「紀の川市役所ならでは」の質問

「なぜ和歌山県庁ではなく、紀の川市役所なのですか?」
「紀の川市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

とくに1問目は、紀の川市では答えの中身の差が出やすい質問です。紀の川市は和歌山市・海南市・岩出市と、大阪府の4つの市に接しています。

県が担う仕事と、5万人台の市が担う仕事では、市民との距離が違いますし、隣接する市とも条件が違います。その違いを自分の言葉で説明できるかが問われます。

正解が一つに定まらない質問である以上、下調べの厚みがそのまま説得力の差になります。こうした質問に答えるための「紀の川市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい紀の川市の事実答え方のヒント
市の規模と広さ住民基本台帳による令和8年1月1日現在の人口は58,287人で県内の市では3番目。市域は228.21平方キロメートルで、人口密度は約255人/km²人口の順位で終わらせず、広さと密度の組み合わせが行政サービスに何をもたらすかまで話します
年齢構成65歳以上34.5%、75歳以上19.9%で、和歌山県全体の34.2%・20.4%とほぼ同じ水準「県の平均並み」という位置づけを、備えを整える時間がまだあると読み替えて語ります
なぜ県庁ではなく市役所か紀の川市は和歌山市・海南市・岩出市とかつらぎ町・紀美野町、大阪府の4市に接する。市役所はJR和歌山線の打田駅から徒歩約10分制度の説明ではなく、地域ごとに事情の違う市域で暮らしに近い仕事をしたいという判断の理由を語ります
防災・危機管理和歌山県が令和8年に公表した地震動予測で想定される最大震度は6強。津波浸水想定の対象は沿岸20市町とされ、内陸のこの市は入っていない津波の話に流れず、広い市域で道路が寸断された場合に地域がどう持ちこたえるかまで考えて話します
紀の川市の魅力県の農業産出額の7割近くを果実が占め、みかん・うめ・かきの収穫量は全国1位。市の花はモモで、市域は紀の川の流域に開けている特産品を挙げるだけでなく、果樹地帯を次の世代へどう渡すかという課題まで一続きで話します

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

紀の川市は求める人物像を定型の文言では示していません。代わりに物差しになるのが、種目ごとの配点です。

第2次試験の70点は集団面接に、第3次試験の70点は個人面接に置かれ、作文が20点を占めます。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
限られた時間で要点を出す力集団面接で、限られた持ち時間の中に自分の考えの芯を収められるか用意した経験談を、1分で話す版と3分で話す版の2通りに削り分けて練習しておく
他の人の話を受けて広げる力集団面接で、先に話した人と内容が重なったときにどう応じるか同じ質問への答えを2つ持っておき、片方が使えないときに切り替えられる状態にしておく
地域ごとの違いを前提に考える力個人面接で、市の課題をどの地域の話として捉えているかを掘られたときに答えられるか紀の川市の広さと人口密度を頭に置き、駅の近くと離れた地域で違いが出る場面を1つ挙げられるようにしておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。紀の川市の事務職Aは第3次試験に70点分の個人面接が置かれていますので、掘り下げに耐えられるかどうかが、そのまま得点差になります。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを、事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新の試験案内を読み、自分が受ける区分の段階構成と種目ごとの配点、そして合格基準の考え方を確認する
  2. これまでの経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイト・仕事から、具体的に話せる場面を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 電子申請で入力する志望動機と自己PRを書き、控えを残す。ここで使った材料を、そのまま面接と作文でも使えるようにそろえておく
  5. 自治体研究のインプットをする。この記事の前半を読み返して志望分野に近い紀の川市の事実を2〜3個選び、固有質問の対応表と合わせて「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 声に出して練習する。集団面接に向けて短く話す練習と、個人面接に向けて掘り下げられる練習を、同じ経験でそれぞれ行う

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、ステップ4の申込内容づくりを先に終わらせてください。紀の川市では第2次・第3次のどちらも配点の7割が面接ですので、市の知識を足すより、自分の経験を語れる状態にする方が点数に直結します。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、紀の川市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

紀の川市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

紀の川市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和8年度第1回の事務職Aでいえば、紀の川市の選考は、第2次試験も第3次試験も100点満点のうち70点が面接に置かれています。第1次試験のSCOAで取った点は段階が進むごとに圧縮され、最後に残るのは、集団の場で話したことと、一対一で掘り下げられたときに出てくる中身です。

228平方キロメートルの市域に人が広く分布し、高齢化は県の平均と並んで進む。その市で、自分がどの地域のどんな困りごとに手を伸ばしたいのか。

申込のときに書く言葉から個人面接で話す言葉までを一本につなげて、準備を積み上げていってください。