本記事では、和歌山県田辺市の職員採用試験の面接対策で必要な、田辺市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
田辺市役所の面接試験では、「なぜ田辺市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「これまでの経験を市の仕事でどう活かすのか」といった質問が想定されます。令和8年度夏試験の一般事務職は、第二次試験と第三次試験がいずれも個別面接で、しかも合否は段階ごとに仕切り直され、前の段階の得点は持ち越されません。
面接での受け答えが、そのまま最終の結果を決める試験です。
ここで整理した事実を材料に、自分の関心と田辺市政の接点を組み立ててみてください。
第1部|自治体研究編
田辺市の特徴
面接の答えを組み立てる前に、田辺市がどういう市なのかを確かめておきましょう。(時間のない方はここだけでもご覧ください)
- 和歌山県の南西部に位置し、紀伊半島の内陸まで市域が延びる。奈良県の十津川村・野迫川村とも境を接する。
- 総面積1,026.89km²は和歌山県全域のおよそ22%を占め、県内第1位。市の説明では東西約46キロメートル、南北約47キロメートルの広がりがある。
- 平成17年5月1日に、田辺市・龍神村・中辺路町・大塔村・本宮町の5市町村が合併して現在の市が誕生した。
- 人口は66,157人(令和8年1月1日現在)で、和歌山市に次いで県内2番目の規模。県全体のおよそ7.4%にあたる。
- 世界遺産に登録された熊野古道・熊野本宮大社と、龍神温泉を市域に擁する。
- 「みなべ・田辺の梅システム」は平成27年12月15日に世界農業遺産に認定された。市の花もウメである。
- 和歌山県が令和8年に公表した想定では、最大クラスの巨大地震で市内最大震度7、最大津波高12メートルが見込まれている。
- 平成23年9月の紀伊半島大水害では、市内の大杉観測所で総雨量1,998ミリを観測した。地震・津波と豪雨の両方に備える必要がある市域である。
田辺市の基礎データ
自治体研究では、統計を細かく暗記することより、市の広さと人の分布から、暮らしの条件を言葉にできることのほうが面接で効きます。
人口と年齢構成、市域の広さ、境を接する自治体は下の表のとおりです。田辺市の規模は、数字で見るとより際立ちます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 66,157人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 65歳以上人口 | 23,237人(高齢化率35.1%) |
| 75歳以上人口 | 13,767人(総人口の20.8%) |
| 総面積 | 1,026.89km²(和歌山県総面積4,726.29km²の約21.7%で県内第1位) |
| 人口密度 | 約64人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 市域の広がり | 東西約46km・南北約47km |
| 隣接自治体 | 新宮市・みなべ町・印南町・日高川町・白浜町・上富田町・有田川町・古座川町(和歌山県)、十津川村・野迫川村(奈良県) |
| 市の花・木 | ウメ(花)・ウバメガシ(木) |
総人口・65歳以上人口・75歳以上人口は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の数値です。国勢調査をもとにした和歌山県の統計とは調査の基準が異なりますので、両者を並べて増減を計算しないようご注意ください。市域の広がりは田辺市の公表資料、面積・隣接自治体・市の花木は当研究会が整理した基礎データによります。
広さと人口密度が示すもの
1,026.89平方キロメートルに66,157人ですから、人口密度は1平方キロメートルあたり約64人です。県内で最も広い市域に、県内2番目の人口が薄く分布しているという構図になります。
紀伊半島の内陸まで市域が延びていますから、海沿いの市街地と山あいの集落では、住まいも移動も条件がまったく違います。
県と並べて見る年齢構成
同じ住民基本台帳ベース(令和8年1月1日現在)で見ると、和歌山県全体の高齢化率は34.2%、75歳以上の割合は20.4%です。田辺市はそれぞれ35.1%・20.8%で、高齢化率で0.9ポイント、75歳以上の割合で0.4ポイント県を上回ります。
差は大きくありませんが、市域が広いぶん、同じ高齢化率でも支える手間は変わります。移動時間のかかる地域にどう手を届かせるかが、この市の行政サービスの中心的な問いになります。
田辺市の経済・産業
梅の産地としての厚み
「みなべ・田辺の梅システム」は、平成27年12月15日にFAO本部(ローマ)で開かれた会議において世界農業遺産に認定されました。みなべ町の公式サイトは、みなべ・田辺地域の梅の年間生産量が約4.3万トン(2012年)で日本の梅生産量の概ね半分を占め、就労人口の約70%が梅の生産と関連産業に従事して、約700億円の梅産業を形成していると説明しています。(出典:みなべ・田辺の梅システム|みなべ町公式)
ここで押さえておきたいのは、認定されたのが「梅」ではなく「梅システム」だという点です。斜面の地形を活かした栽培の仕組みや、それを支える人の営みまで含めて評価されています。
産品ではなく仕組みが遺産になっていると理解しておくと、産業振興や観光の志望動機を語るときに、話の入り口が一段深くなります。
和歌山県の農業のなかで
和歌山県の農業産出額は1,135億円で全国28位、うち果実が790億円を占めます。うめの収穫量64,400トン(令和4年産)、みかん147,800トン、かき39,700トン(ともに令和3年産)は、いずれも全国1位です。
県の果実産出額の背後に、田辺の梅があるという位置づけになります。田辺市の花にウメが選ばれているのも、この土地と梅の結びつきによるものです。(出典:都道府県の農林水産業の概要|農林水産省)
世界遺産と観光
田辺市は、世界遺産に登録された熊野古道と熊野本宮大社、そして龍神温泉を市域に持ちます。和歌山県全体の令和6年の観光入込客総数は約3,273万人(前年比102.5%)で、うち宿泊客は約506万人泊。
外国人宿泊客数は510,293人泊(前年比133.2%)と、感染症の流行前を超えて過去最高を記録しました。熊野古道は、歩くために遠方から人が来る観光資源です。
日帰りではなく滞在してもらう観光をどう組み立てるかが、市の観光行政の焦点になります。(出典:和歌山県観光客動態調査|令和6年速報値)
県の産業構造と道路網
和歌山県の製造品出荷額等は2兆3,835億円、事業所数1,465、従業者数50,917人です(令和3年経済センサス‐活動調査、従業者4人以上の事業所)。化学工業4,466億円(構成比18.7%)、鉄鋼業4,290億円(同18.0%)、石油製品・石炭製品製造業4,272億円(同17.9%)が上位を占め、県北部の臨海部に基礎素材型の産業が集まる構造です。
県南部にあたる田辺市の経済は、この構図とは別の軸で語る必要があります。(出典:和歌山県の工業の概要|令和3年経済センサス‐活動調査)
道路については、近畿自動車道紀勢線(紀勢自動車道)の有田インターチェンジから印南インターチェンジまでの区間が2021年12月に完成しました。さらに、紀伊半島一周高速道路のミッシングリンクとされる「すさみ串本道路」が2027年夏の開通を予定しています。
県南部の交通は、この10年で大きく形を変えつつあります。
田辺市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、田辺市が向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題は何だと思いますか」と聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
広い市域に同じ水準のサービスを届ける
県内第1位の市域は、行政の側から見れば移動距離と拠点配置の問題になります。平成17年に合併した旧5市町村は、それぞれ地形も産業も人口の分布も違いました。
どこに住んでいても同じ水準の行政サービスを受けられる状態をどう保つかが、この市の根本的な課題です。窓口の配置、公共交通、医療や福祉の拠点、学校の統合。
どの分野を志望するにしても、広さという条件から逃れられません。
人口減少と、山あいの集落の維持
高齢化率35.1%、75歳以上の割合20.8%(令和8年1月1日現在)は、いずれも和歌山県全体をわずかに上回ります。和歌山県総合計画(令和8〜12年度)の原案は、県人口が1990年の約107万人から約30年で85%に減り、今後30年の減少スピードは約2倍に加速して2050年には58%の約63万人になると見通しています。
生産年齢人口は2050年に高齢者人口とほぼ同数まで縮む予測です。人口が薄く広がる市では、この縮小が集落単位で現れます。(出典:和歌山県総合計画(令和8〜12年度)原案)
南海トラフ地震と津波への備え
和歌山県が令和8年に公表した地震動予測と津波浸水想定によると、最大クラスの巨大地震(南海トラフ巨大地震)で、田辺市の市内最大震度は7、最大津波高は12メートル、津波高1メートルの最短到達時間は12分と想定されています。12分という時間は、避難の判断を迷う余地がほとんどないことを意味します。
なお、人的・物的な被害の想定については、県は今後公表するとしています。(出典:地震動予測及び津波浸水想定|和歌山県(令和8年公表))
豪雨と山地災害への備え
平成23年9月の台風第12号による紀伊半島大水害では、県内で記録的な大雨となり、田辺市の大杉観測所では総雨量1,998ミリを観測しました。県はこの災害で、表層崩壊や深層崩壊に伴う河道閉塞、土石流のほか地すべりも発生したとしています。
海側の津波と、内陸の山地災害という性質の異なるリスクを同じ市域に抱えていることが、田辺市の防災の難しさです。(参考:平成23年台風第12号による災害の記録|和歌山県公式)
梅産業を誰が引き継ぐか
世界農業遺産に認定された梅の栽培は、斜面の地形を利用した手のかかる農業です。県計画の原案が示す生産年齢人口の縮小は、そのまま担い手の減少として効いてきます。
仕組みごと評価された産業だからこそ、栽培の技術と地域の暮らしをまとめて次に渡す必要があります。農業や地域振興を志望するなら、認定の事実を挙げるだけでなく、続けるための課題まで話せるようにしておきましょう。
田辺市の重点政策|合併市の広がりと、市が置く専門職
田辺市は市の各種計画を公式サイトで公開していますが、市がどこに力を入れているかは、市の成り立ちと職員の採り方からも読み取れます。ここでは、合併で生まれた市域の形と、令和8年度夏試験の採用予定という二つの事実から、市政の姿を見ていきます。
5つの市町村が一つになった市
現在の田辺市は、平成17年5月1日に田辺市・龍神村・中辺路町・大塔村・本宮町が合併して誕生しました。海に面した旧田辺市から、熊野本宮大社のある旧本宮町まで、性格の異なる地域が一つの市になっているということです。
東西約46キロメートル、南北約47キロメートルという広がりも、この経緯から生まれています。(出典:田辺市の概要|田辺市公式)
合併から20年以上が経ちましたが、地域ごとの条件の違いは地形として残ります。施設をどこに置き、どの機能を集約し、どの機能を地域に残すか。
こうした判断が、田辺市では継続的に問われ続けることになります。市が資料でそう説明しているわけではありません。
合併の経緯と1,026.89平方キロメートルという広さから、当研究会がそう読んでいるだけです。それでも、面接で「市の課題」を語るとき、この視点を持っているかどうかで話の解像度は変わります。
文化財と美術館に専門の枠を置いている
令和8年度夏試験の採用予定人数は、一般事務職(大卒程度)15人程度、一般事務職(社会人)5人程度、一般事務職(文化財専門員)1人程度、土木技術職2人程度、美術館学芸員1人程度でした。世界遺産の熊野古道を抱える市が、文化財専門員と美術館学芸員という枠を用意している点は、市の関心のありかを示しています。(参考:職員採用試験|田辺市公式)
一般事務職を志望する場合でも、この構成は知っておく価値があります。文化財や美術館の仕事が市の中にあるということは、事務職としてその分野の予算や事業に関わる可能性があるということだからです。
志望動機を観光や文化の側面から語る人は、専門職との役割の違いまで説明できると、話が具体的になります。
あわせて確認したい公式資料
面接までに一度は開いておきたい資料を挙げます。
- 田辺市職員採用試験の実施要綱(受験する回のもの)と、市の職員採用試験のページ
- 田辺市の総合計画をはじめとする市の主要な計画(市公式サイト掲載の最新版)
- 田辺市の地域防災計画・津波避難や土砂災害に関する市の公表資料
- 和歌山県総合計画(令和8〜12年度)と、県が令和8年に公表した地震動予測・津波浸水想定
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、田辺市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。田辺市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
田辺市役所の面接の概要
ここからは、令和8年度夏試験の実施要綱で確認できる内容をもとに、田辺市役所の一般事務職の試験の形と、面接への備え方を整理していきます。田辺市は令和8年度に夏試験と秋試験を実施しており、以下は夏試験の一般事務職(大卒程度・社会人)についての内容です。
田辺市役所の面接の流れ(夏試験・一般事務職)
試験は3段階です。第一次試験が基礎能力試験(SCOA)とパーソナリティ検査、第二次試験が面接試験、第三次試験が面接試験。
第二次・第三次はいずれも「人物、職務適性等についての個別面接」で、集団面接や集団討論の記載はありません。
ここで最も重要なのが、合否の決め方です。実施要綱は「第二次試験の合格者は、第二次試験の成績により決定し、第三次試験の合格者(最終合格者)は、第三次試験の成績により決定します。」と明記しています。
段階ごとに成績が仕切り直され、前の段階の得点は最終判定に持ち越されません。つまり、最終合格は第三次の個別面接の成績だけで決まります。
第一次の点数が良くても悪くても、そこから先には影響しないということです(ただしパーソナリティ検査の結果は、面接と合否判定の補助資料として用いられます)。
もう一つ、実施要綱は「それぞれの試験種目で、市が認める得点・基準に達しない場合は、順位にかかわらず不合格となります」としています。種目ごとに基準点があるため、どこか一つを捨てて臨む戦い方はできません。
| 項目 | 内容(令和8年度夏試験・一般事務職〈大卒程度〉/〈社会人〉) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第一次試験 → 第二次試験 → 第三次試験の3段階 |
| 第一次試験 | 基礎能力試験(SCOA)とパーソナリティ検査。いずれもテストセンター方式 |
| 基礎能力試験の内容 | 大卒程度は60分で、出題分野は文章読解能力、数的能力、論理的思考能力、一般常識、基礎英語。社会人は45分で、文章読解能力、数的能力、論理的思考能力。いずれも実社会で必要とされる基礎的な能力および学力の検査で、内容は大学卒相当です |
| パーソナリティ検査 | 約30分。職場での行動傾向やストレス傾向等に関する適性検査で、実施要綱は「面接試験及び合否判定の補助的な資料として用います。」と明記しています |
| 第二次試験 | 面接試験(人物、職務適性等についての個別面接) |
| 第三次試験 | 面接試験(人物、職務適性等についての個別面接) |
| 集団形式 | 令和8年度夏試験の実施要綱に、集団面接・集団討論の記載はありません |
| 合否の決め方 | 段階ごとのリセット方式。第二次試験の合格者は第二次試験の成績で、最終合格者は第三次試験の成績で決定します。加えて、各試験種目で市が認める得点・基準に達しない場合は順位にかかわらず不合格となります |
| 配点 | 試験種目ごとの配点・満点は実施要綱に記載がありません。最新の実施要綱でご確認ください |
| 採用予定人数 | 一般事務職(大卒程度)15人程度、一般事務職(社会人)5人程度、一般事務職(文化財専門員)1人程度、土木技術職2人程度、美術館学芸員1人程度 |
| 受験資格(年齢) | 一般事務職(大卒程度)は平成9年4月2日から平成17年4月1日までの間に生まれた人(飛び級入学等により大学を卒業した人、および令和9年3月末日までに卒業見込みの人は平成17年4月2日以降の生まれでも受験可)。一般事務職(社会人)は昭和62年4月2日から平成9年4月1日までの間に生まれた人 |
| 試験会場 | 第一次試験は全国のテストセンター会場で、受験期間内に自分で日時と会場を予約します。第二次・第三次試験は田辺市役所本庁舎です |
| 申込方法 | 自治体求人サイト「パブリックコネクト」で会員登録のうえ、マイページのプロフィール(基本情報、職歴、学歴等)を編集し、田辺市ページの「職員募集」から該当区分にエントリーします |
| 添付書類 | 顔写真データ(正面、脱帽で6か月以内に撮影したもの)と、各職種に応じた提出書類を撮影またはスキャンしたデータをエントリー時に添付します |
| 採用時期 | 令和9年4月1日、または令和8年10月1日。10月1日採用は、最終合格者のうち同日から勤務可能な人について市が必要と認め、本人の同意が得られた場合に限られます |
| 試験結果の開示 | 第一次・第二次試験の不合格者にはその段階までの、第三次試験の受験者には全段階の得点および順位を、各合格発表の日から1か月間、田辺市役所総務課(本庁舎5階)で開示します。本人確認書類と受験票の持参が必要です |
上記は、和歌山県田辺市の令和8年度夏試験の実施要綱に基づく一般事務職の内容です。試験の構成・区分・配点等は、年度や実施回によって異なります。受験の際は、必ずご自身が受ける区分の最新の実施要綱をご確認ください。(出典:田辺市職員採用試験実施要綱|令和8年度夏試験)
申込の段階で一つ、押さえておきたい案内があります。実施要綱は資格の記入について、受験する試験区分に関連しないものであっても可能な限りプロフィール欄に記入するよう求めています。
運転免許、簿記、語学の検定などが例として挙げられています。提出した情報が面接の話題になりうると考えて、書いた資格については取得の経緯を説明できるようにしておきましょう。
田辺市役所が求める人物像
田辺市の職員採用試験のページと令和8年度夏試験の実施要綱に当たったかぎりでは、「求める職員像」「求める人材」にあたる定型の文言は置かれていませんでした。市が言葉にしているのは、種目と合否の決め方までです。
ならば、そこに市の意図がいちばん濃く出ているはずです。実施要綱に書かれた種目と決め方から、当研究会が人物像を起こしました。
手がかりの一つは、第一次試験が公務員試験特有の科目ではなく、文章読解や論理的思考を中心とした基礎能力試験だという点です。もう一つは、第二次・第三次の面接がどちらも「人物、職務適性等についての個別面接」とされ、しかも段階ごとに成績が仕切り直されることです。
知識の蓄積より、人物と職務への適性を確かめることに重心が置かれた設計だと受け取ってよいでしょう。
田辺市の場合、その適性はまず「地域差を扱えるか」という形で現れます。旧5市町村はそれぞれ地形も生業も違いますから、一つの制度をそのまま全域に当てはめると、どこかで無理が出ます。
海沿いの市街地で通る説明が、山あいの集落では通らない。そうした場面に出くわしたとき、原則を捨てるのでも押し通すのでもなく、違いの理由をつかんで手当てを考えられるかどうか。
一般事務職(大卒程度)15人程度という採用予定も、広い市域を担う人員を継続して確保しておきたいという事情の表れだと読めます。
人口66,157人という規模も、この読みを裏づけます。顔と名前が結びつきやすい規模ですから、一度の不用意な受け答えが後々まで残ることもあります。
田辺市で暮らした経験がない人は、この市に決めた理由と、旧町村を含めた市域のどこに関心があるかを、あらかじめ言葉にしておいてください。
ここで、リセット方式の意味をもう一度考えてください。最終の合否は第三次の面接の成績で決まります。
二度の面接で同じ話題に触れても構いませんが、二度目のほうが深いところまで入られます。準備しておくべきなのは、二度目に耐えるだけの具体の量です。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。田辺市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、大きな抜けは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 緊張していますか? | 段階ごとに成績を仕切り直す試験。第三次でも第二次と同じ調子で話し出せるか |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 民間でも通る話で止まっていないか。1,000平方キロメートルを超える市域をもつこの市を選んだ理由まで届いているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 第一次でパーソナリティ検査を受ける試験。検査で示した行動傾向と、口で語る自己像がそろっているか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | 出来事の重さではなく、その場で何を判断しどう動いたか。二度の個別面接で角度を変えて確かめられる領域 |
| ⑤ 学業・経歴 | 学生時代に力を入れたことを教えてください | 基礎能力試験が文章読解と論理的思考を問う構成。学んだ中身を筋の通った形で言い直せるか |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 合併で5つの旧市町村を抱える市。本庁舎以外の地域での勤務も含めた働き方を受け止めているか |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 大卒程度の基礎能力試験には一般常識も含まれる。日ごろ社会の動きをどう受け止めているか |
ただし、ここまでは多くの受験者がたどり着く範囲です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「田辺市ならではの事情を踏まえた質問」です。
合否を分けるのは「田辺市役所ならでは」の質問
どちらの質問も、市を調べていない人には具体的な言葉が出せません。裏を返せば、手元に持っている材料の量が、答えの長さではなく密度に効く質問でもあります。
こうした質問に答えるための「田辺市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい田辺市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 市域の広さと合併 | 総面積1,026.89km²は和歌山県全域の約22%で県内第1位。平成17年5月1日に田辺市・龍神村・中辺路町・大塔村・本宮町の5市町村が合併して誕生した | 広さを大変さで片づけず、旧町村ごとに条件が違う前提で、何を揃え何を地域ごとに変えるべきかを述べます |
| 人口と年齢構成 | 住民基本台帳ベースで人口66,157人と県内2番目の規模、高齢化率35.1%、75歳以上20.8%(令和8年1月1日現在)。和歌山県全体を同じ指標でみると34.2%と20.4% | 人口規模と、1平方キロメートルあたり約64人という薄さを組み合わせ、支える手間の話へつなげます |
| 梅と世界農業遺産 | 「みなべ・田辺の梅システム」が平成27年12月15日に世界農業遺産に認定。地域の梅の年間生産量は約4.3万トン(2012年)で日本の生産量の概ね半分を占める | 特産品の紹介で終わらせず、認定されたのが栽培と暮らしの仕組みである点に触れて述べます |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 令和8年度夏試験は一般事務職(大卒程度)15人程度のほか、文化財専門員と美術館学芸員という専門の枠を置いている | 制度論を広げるより、市が自前で抱えようとしている分野に自分がどう加わりたいかを、経験に引きつけて述べます |
| 二つの災害リスク | 県が令和8年に公表した想定では、最大クラスの巨大地震で市内最大震度7、最大津波高12メートル、津波高1メートルの最短到達時間12分。平成23年9月の紀伊半島大水害では市内の大杉観測所で総雨量1,998ミリを観測 | 海側の津波と内陸の山地災害を分けて整理し、それぞれ市と市民が何を備えるべきかという形で述べます |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
田辺市は求める職員像にあたる文言を公表していませんので、選考の設計に照らして観点を整理します。第二次・第三次がいずれも人物と職務適性を確かめる個別面接で、しかも段階ごとに成績が仕切り直されることから、二度の面接それぞれで、独立して評価に足る中身を出せるかが問われていると考えてください。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 二度の面接に耐える具体の量 | 第二次で触れた話題に、第三次でどこまで深く入れるか | いちばんの持ち球を1つ決め、出来事の時系列と自分が下した判断を紙に書き出して手元に置く |
| 検査結果と語る自己像の一致 | パーソナリティ検査で示した行動傾向と、面接での自己申告がそろっているか | 検査で答えた自分の傾向を、面接では言い換えずにそのまま説明できるようにしておく |
| 広い市域で働く前提の受け止め | 合併で5つの旧市町村を抱える市で、どこに配属されても働けるという構えがあるか | 本庁舎から離れた地域の暮らしを一度調べ、そこで自分が何をしたいかを具体的な仕事の名前で言えるようにしておく |
なお、公務員の個別面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と掘り下げられることが多いです。田辺市は個別面接が2回あり、しかも最終判定は第三次の成績だけで行われます。
細部まで自分の言葉で語れる実体験に根ざした答えを用意しておいてください。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 受験する回の実施要綱を読み、3段階の構成と合否の決め方、自分が受ける区分の受験資格・採用予定人数・採用時期を確認する
- これまでの経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイト、社会人区分で受けるなら職務経験から、話せる具体例を1つずつ用意する
- 申込時のプロフィールに書いた資格や経歴を見返し、それぞれ取得や経験の経緯を口で説明できるようにしておく
- 自治体研究のインプットをする。この記事の第1部を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 声に出して練習する。最終判定が第三次の面接だけで行われる以上、同じ話題を二度目にどこまで深く語れるかが勝負になる。答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく
優先順位に注意
ステップ4とステップ5の自治体研究は、他の受験者と差をつけるための工程です。時間が足りないときは、ステップ2の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかの整理を先に済ませてください。自分のことを語れないまま市の知識だけを積んでも、面接の評価には結びつきません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、田辺市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
田辺市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
田辺市の令和8年度夏試験の一般事務職は、第二次・第三次がいずれも個別面接で、最終合格は第三次の成績だけで決まる仕切り直しの方式でした。配点も求める職員像も公表されていませんが、面接に二つの段階を割き、そのうち後の一つで最終判定を行うという設計そのものが、市が何を確かめようとしているかを示しています。
県内で最も広い市域に6万6千人あまりが暮らし、海の津波と内陸の山地災害の両方に備え、世界遺産と世界農業遺産を抱える市です。そこで自分は何をしたいのかを、二度の面接で語ることになります。
実施要綱は回ごとに更新されますので、受験の際はご自身の区分の条件を確かめたうえで準備を進めてください。